説明

一括編組シールド付ケーブル

【課題】ケーブルの細径化・軽量化対応しながらも、安定したEMI特性と10万回以上の耐屈曲・捻回・U字スライド特性を満足する一括編組シールド付多心ケーブルを提供する。
【解決手段】中心導体の外周側に編組からなるシールド導体を有する一括編組シールド付ケーブル1において、シールド導体が金属線15と金属めっき糸とを組み合わせてなる一括編組シールド、またはシールド導体が金属線15と金属箔糸とを組み合わせてなる一括編組シールドにより形成されているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器の曲げ・捻回・スライドを伴う部分で信号伝送用として用いられる一括編組シールド付ケーブルに係り、特に、高いEMI特性を維持しながら、軽量且つ耐屈曲・捻回・U字スライド特性を有する一括編組シールド付ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の医療機器の曲げ・捻回・スライドを伴う部分で使用される一括編組シールド付ケーブルは、複数本の同軸線(信号用)や絶縁線(電源用)を集合させた集合体の外周にバインドテープを巻き付け、バインドテープの外周に一括編組シールドを設けて構成される。この一括編組シールドには、100%銅線編組或いは、錫めっき銅箔糸編組が使用されている。
【0003】
その理由は、100%銅線編組が使用される一括編組シールド付ケーブルは、EMI特性を抑制することに優れ、錫めっき銅箔糸編組が使用される一括編組シールド付ケーブルは、耐屈曲・捻回・U字スライド特性に優れているからである。
【0004】
近年は、医療機器の小型化・軽量化に加えて、データの高速伝送、高密度化が求められている。さらに、これらの医療機器の曲げ・捻回・スライドを伴う部分で使用される一括編組シールド付ケーブルの一括編組シールドには、細径・軽量且つ10万回以上の耐屈曲・捻回・U字スライド特性が求められている。
【0005】
また、信号線から放射される電磁波や、医療機器周辺の別の電子機器から放射される電磁波によって回路間に生じる電磁干渉(EMI:Electromagnetic Interference)を抑制することも必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−94041号公報
【特許文献2】特開平4−319205号公報
【特許文献3】特開2002−25355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、100%銅線編組が使用される一括編組シールド付ケーブルは、電磁干渉(EMI)を抑制するには効果的であるが、屈曲・捻回・U字スライドの各試験を行うと、編組素線の銅線同士の擦れにより、各試験とも10万回に達する前に疲労断線してしまうという問題がある。
【0008】
さらに、断線した後の素線先端は、針金のように尖っているため、バインドテープと同軸線の被覆を突き破り、同軸線の外部導体とショートを起こしてしまう。
【0009】
また、従来の錫めっき銅箔糸編組が使用される一括編組シールド付ケーブルは、25万回以上の耐屈曲・捻回・U字スライド特性には効果的であるが、100%銅線編組とは異なり、電磁干渉(EMI)を抑制する効果が不十分であるという問題がある。
【0010】
同じ素線径の100%銅線と錫めっき銅箔糸素線の直流導体抵抗を比較すると、100%銅線の直流導体抵抗は、錫めっき銅箔糸素線の直流導体抵抗の1/10である。そこで、錫めっき銅箔糸素線で構成された一括編組シールドの導体抵抗を100%銅線編組で構成された一括編組シールドの導体抵抗と同等にするためには、錫めっき銅箔糸素線を太くする方法がある。しかし、この方法ではケーブル全体の外径が太くなる上に、一括編組シールドの厚みが増えるため、軽量化に逆行してしまう。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記状況を鑑み、ケーブルの細径化・軽量化に対応しながらも、安定したEMI特性と10万回以上の耐屈曲・捻回・U字スライド特性を満足する一括編組シールド付ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、中心導体の外周側に編組からなるシールド導体を有する一括編組シールド付ケーブルにおいて、上記シールド導体が金属線と金属めっき糸とを組み合わせてなる一括編組シールド、または上記シールド導体が金属線と金属箔糸とを組み合わせてなる一括編組シールドにより形成されている一括編組シールド付ケーブルである。
【0013】
請求項2の発明は、前記一括編組シールドは、一方の方向に巻き付けてなる第1斜め持ちユニットと、該第1斜め持ちユニットと交差するように他方の方向に巻き付けてなる第2斜め持ちユニットとからなり、前記第1斜め持ちユニットは前記金属線からなり、前記第2斜め持ちユニットは前記金属めっき糸または前記金属箔糸からなる請求項1に記載の一括編組シールド付ケーブルである。
【0014】
請求項3の発明は、前記第1斜め持ちユニットが占める面積Aと、前記第2斜め持ちユニットが占める面積Bとの比率(A/(A+B))が40〜60%である請求項2に記載の一括編組シールド付ケーブルである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ケーブルの細径化・軽量化に対応しながらも、安定したEMI特性と10万回以上の耐屈曲・捻回・U字スライド特性を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係る一括編組シールド付ケーブルの横断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態の同軸ケーブルの横断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態の絶縁線の横断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態の一括編組シールド付ケーブルの一括編組シールドの外観図である。
【図5】屈曲試験の方法を示す図である。
【図6】捻回試験の方法を示す図である。
【図7】U字スライド試験の方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態に係る一括編組シールド付ケーブルを示す横断面図である。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態に係る一括編組シールド付ケーブル1は、同軸線(信号用)5と絶縁線(電源用)6とからなる電線群2を集合させた集合体3の外周に一括編組シールド4を有するものである。
【0020】
同軸線5は、図2に示すように、内部導体7と、内部導体7の外周に設けられた絶縁体(誘電体)8と、絶縁体8の外周に設けられた外部導体(シールド)9と、外部導体9の外周に設けられた被覆(ジャケット)10とからなる同軸ケーブルで構成される。
【0021】
内部導体7は、導線7aを複数本(図1では7本)、撚り合わせて形成された撚線である。
【0022】
絶縁線6は、図3に示すように、導体12と、導体12の外周に設けられた絶縁体(誘電体)13とからなる。
【0023】
導体12は、導体12aを複数本(図3では7本)、撚り合わせて形成された撚線である。また、図3では簡略化のため導体12aを7本の撚線で示したが、実際は19本の撚線とした。
【0024】
再び図1を参照し、集合体3は、複数(図1では12本で示したが、実際は48本)の同軸線5を集合させてその外周をテープで被覆した同軸ケーブルユニット14と、複数の絶縁線6を集合させてその外周をテープで被覆した絶縁線ユニット20とを中心介在としてのテンションメンバー21を中心にしてそれぞれ4対ずつ集合させたものである。
【0025】
この集合体3の外周には、バインドテープ(押し巻きテープ)22が巻き付けられる。バインドテープ22の巻厚は、0.05mmである。
【0026】
一括編組シールド4は、バインドテープ22の外周に設けられ、銅線からなる金属線15と銅めっきPET糸、または錫めっき銅箔糸からなる金属糸16とを組み合わせて構成される。より具体的には、図4に示すように、一括編組シールド4は、複数本の金属線15と複数本の金属糸16を互いに斜めに交差させながら編み込んだ左右方向の第1,第2斜め持ちユニット17,18で形成される。本実施の形態では、各斜めユニットの金属線15または金属糸16の持ち数を3とした。
【0027】
このとき、一方の斜め持ちユニットを金属線15からなる斜め持ちユニット17とし、他方の斜め持ちユニットを金属糸16からなる斜め持ちユニット18として一括編組シールド4を形成することが好ましい。これにより、金属線15からなる斜め持ちユニット17と金属糸16からなる斜め持ちユニット18の交差位置では、金属線15と金属糸16とが重なるように配置されるので、ケーブル全体を屈曲させて金属線15と金属糸16とが擦れあっても断線し難くなり耐屈曲性が向上するという優れた効果を奏するようになる。
【0028】
また、金属線15からなる斜め持ちユニット17と金属糸16からなる斜め持ちユニット18の角度βは40〜70度とすることが好ましい。その理由は、βが70度以上であるとケーブルは硬くなり、40度以下であると耐屈曲性が悪くなるためである。
【0029】
さらに、金属線15からなる斜め持ちユニット17が占める面積と、金属糸16からなる斜め持ちユニット18が占める面積との比率が40〜60%となるように構成されていることが好ましい。
【0030】
金属糸16からなる斜め持ちユニット18が占める面積Aと、金属線15からなる斜め持ちユニット17が占める面積Bとの比率A/(A+B)は、40〜60%が好ましく、特に50%が好ましい。比率が40%未満であると、金属線15が多くなって一括編組シールド導体の抵抗が低くなりノイズ特性が良くなるが、耐屈曲寿命が悪くなるおそれがあるからである。また、比率が60%を超えると、金属糸16が多くなって一括編組シールド導体の耐屈曲寿命は良くなるが、一括編組シールド導体の抵抗が大きくなってノイズ特性が悪くなってしまうからである。比率が50%であると、耐屈曲寿命と抵抗のバランスが一番良くなる。
【0031】
そして、一括編組シールド4の外周には、一括編組シールド4を被覆する外被(シース)19が設けられている。この外被19は、PTFEテープを巻き回したり、あるいは、ビニル(PVC)、シリコーン、ウレタンを押出し被覆することなどによって設けられる。
【0032】
本実施の形態の作用を説明する。
【0033】
本発明の一括編組シールド付ケーブル1では、一括編組シールド4が金属線15と金属糸16とを組み合わせてなるため、安定したEMI特性と耐屈曲・捻回・U字スライド特性とを両立することができる。
【0034】
また、一括編組シールド4は、複数本の金属線15と複数本の金属糸16を互いに斜めに交差させながら編み込んだ左右方向の斜め持ちユニット17、18で形成されるため、金属線15からなる斜め持ちユニット17と金属糸16からなる斜め持ちユニット18の交差位置では、金属線15と金属糸16とが重なるように配置されるので、ケーブル全体を屈曲させて金属線15と金属糸16とが擦れあっても断線し難くなり耐屈曲性などが向上する。
【0035】
金属線15からなる斜め持ちユニット17が占める面積と、金属糸16からなる斜め持ちユニット18が占める面積との比率が40〜60%であるため、安定したEMI特性と、耐屈曲・捻回・U字スライド特性を両立できる。
【0036】
本実施の形態においては、金属線15として銅線を用いたが、これに代えて錫めっき銅線、銀めっき銅線、アルミ線などの様々な金属線を用いてもよい。また、本実施の形態においては、金属糸16として銅めっきPET糸を用いたが、これに代えてアルミめっき、銀めっき、金めっきなどの金属めっきを施したPET糸、ポリエステル糸、ナイロン糸、アラミド繊維などの様々な金属めっき糸を用いてもよいし、または錫めっき銅箔糸などの金属箔糸を用いてもよい。
【0037】
また、本実施の形態においては、複数本の同軸線5や絶縁線6を内蔵した多心の一括編組シールド付ケーブルを説明したが、中心導体の外周に絶縁体層とシールド導体とジャケットとを順次形成してなる同軸ケーブルや、中心導体の外周にジャケットを形成してなる絶縁線を2本撚り合わせたものの外周にシールド導体とジャケットとを順次形成してなる2芯平衡ケーブル(Twinax)や、中心導体の外周にジャケットを形成してなる絶縁線を4本撚り合わせたものの外周にシールド導体とジャケットとを順次形成してなるQuad構造の4芯平衡ケーブルにも本発明の編組シールドを適用することができる。
【0038】
本実施の形態では、金属線15からなる斜め持ちユニット17と金属糸16からなる斜め持ちユニット18を交差させるように編み込んで一括編組シールド4を構成したが、金属線15と金属糸16とを混合した混合糸を編み込んで一括編組シールド4としてもよい。この場合、例えば、外径0.08mmの銅線と50D(デニール)の銅めっきPET糸の混合糸、または外径0.08mmの銅線と外径0.08mmの錫めっき銅箔糸の混合糸を用い、これを編み込んで一括編組シールド4とするとよい。
【実施例】
【0039】
次に本発明の実施例を説明する。本実施例では、以下の(1)〜(4)に示す一括編組シールド付ケーブルを用いて、機械特性の評価を行った。
【0040】
(1)従来の100%銅線編組の一括編組シールド付ケーブル
42AWGの導体を7本撚りあわせた外径0.075mmの内部導体を有する外径0.34mmの同軸ケーブルを192本集合させて、外径6.2mmの集合体を形成し、この外周にPTFEからなる厚さ0.05mmのバインドテープを巻き付け、さらにその外周に外径0.08mmの銅線からなる厚さ0.2mmの一括編組シールドを設けて、外径8.3mmの一括編組シールド付ケーブルを形成した。
【0041】
同様に、43AWG,44AWGの導体で構成された内部導体を有する一括編組シールド付ケーブルを形成した。
【0042】
(2)従来の錫めっき銅箔糸編組の一括編組シールド付ケーブル
42AWGの導体を7本撚りあわせた外径0.075mmの内部導体を有する外径0.34mmの同軸ケーブルを192本集合させて、外径6.2mmの集合体を形成し、この外周にPTFEからなる厚さ0.05mmのバインドテープを巻き付け、さらにその外周に外径0.08mmの錫めっき銅箔糸からなる厚さ0.2mmの一括編組シールドを設けて、外径8.3mmの一括編組シールド付ケーブルを形成した。
【0043】
同様に、43AWG,44AWGの導体で構成された内部導体を有する一括編組シールド付ケーブルを形成した。
【0044】
(3)本発明の銅線と銅めっきPET糸編組からなる一括編組シールド付ケーブル
42AWGの導体を7本撚りあわせた外径0.075mmの内部導体を有する外径0.34mmの同軸ケーブルを192本集合させて、外径6.2mmの集合体を形成し、この外周にPTFEからなる厚さ0.05mmのバインドテープを巻き付け、さらにその外周に外径0.08mmの銅線からなる第1斜め持ちユニットと、この第1斜め持ちユニットと交差する50D(デニール)の銅めっきPET糸からなる第2斜め持ちユニットとで形成された厚さ0.2mmの一括編組シールドを設けて、外径8.3mmの一括編組シールド付ケーブルを形成した。なお、銅線からなる第1斜め持ちユニットと銅めっきPET糸からなる第2斜め持ちユニットの面積比は1対1とした。
【0045】
同様に、43AWG,44AWGの導体で構成された内部導体を有する一括編組シールド付ケーブルを形成した。
【0046】
(4)本発明の銅線と錫めっき銅箔糸編組からなる一括編組シールド付ケーブル
42AWGの導体を7本撚りあわせた外径0.075mmの内部導体を有する外径0.34mmの同軸ケーブルを192本集合させて、外径6.2mmの集合体を形成し、この外周にPTFEからなる厚さ0.05mmのバインドテープを巻き付け、さらにその外周に外径0.08mmの銅線からなる第1斜め持ちユニットと、この第1斜め持ちユニットと交差する外径0.08mmの錫めっき銅箔糸からなる第2斜め持ちユニットとで形成された厚さ0.2mmの一括編組シールドを設けて、外径8.3mmの一括編組シールド付ケーブルを形成した。なお、銅線からなる第1斜め持ちユニットと錫めっき銅箔糸からなる第2斜め持ちユニットの面積比は1対1とした。
【0047】
同様に、43AWG,44AWGの導体で構成された内部導体を有する一括編組シールド付ケーブルを形成した。
【0048】
(屈曲試験)
図5に示すように、上述の(1)〜(3)の各一括編組シールド付ケーブルを試験体25として、その試験体25の一端部を固定し、他端部に荷重1kgfの錘26を吊り下げ、これら試験体25の左右に湾曲した形状の曲げ治具23を取り付け、この状態で、曲げ治具23を動かすことにより、試験体25の曲げ治具23のR部分24に位置する箇所に屈曲角度左右90度の曲げを加えた。試験体25の曲げ半径rは、25mmとし、図示矢印(1)、(2)、(3)、(4)の順に曲げ治具23を動かして1サイクル(1回)とした。試験速度は、単位時間に行われるサイクルの回数が30回/分とした。また、試験体25に常時数Vの電圧を加え、電流値が試験開始時に比べて20%低下した時点を破断とみなした。
【0049】
以上の方法により、上述した各一括編組シールド付ケーブルが何サイクルで破断するかを求めた。
【0050】
(捻回試験)
図6に示すように、試験体25の一箇所を回転しない固定チャック部28に取り付け、それより上部に長さ200mmの捻回部29を隔てた別の箇所を回転チャック部27に取り付ける。この状態で回転チャック部27を回転させることにより、捻回部に対して±180度の捻りを加える。回転チャック部27は、まず+180度回転して元に戻し、−180度回転して元に戻すというように、図示矢印(1)、(2)、(3)、(4)の順に動かして1サイクル(1回)とした。試験速度は、単位時間に行われるサイクルの回数が30回/分とした。また、試験体25に常時数Vの電圧を加え、電流値が試験開始時に比べて20%低下した時点を破断とみなした。
【0051】
以上の方法により、上述した各一括編組シールド付ケーブルが何サイクルで破断するかを求めた。
【0052】
(U字スライド試験)
図7に示すように、試験体25の片端を固定し、他端をスライド内幅が100mmになるように曲げる。ストローク幅は1500mmとし、図示矢印(1)、(2)の順で1サイクル(1回)とした。試験速度は、単位時間に行われるサイクルの回数が30回/分とした。また、試験体25に常時数Vの電圧を加え、電流値が試験開始時に比べて20%低下した時点を破断とみなした。
【0053】
以上の方法により、上述した各一括編組シールド付ケーブルが何サイクルで破断するかを求めた。
【0054】
(評価結果)
【0055】
【表1】

【0056】
表1に示すように、屈曲試験において、本発明の一括編組シールド付ケーブルは、屈曲試験を15万回以上行ってもケーブルの破断はなく、従来の錫めっき銅箔糸編組の一括編組シールド付ケーブルは、屈曲試験を25万回以上行ってもケーブルの破断はない。しかし、従来の100%銅線編組の一括編組シールド付ケーブルは、10万回に達する前に破断してしまう。
【0057】
捻回試験において、本発明の一括編組シールド付ケーブルは、捻回試験を15万回以上行ってもケーブルの破断はなく、従来の錫めっき銅箔糸編組の一括編組シールド付ケーブルは、捻回試験を20万回以上行ってもケーブルの破断はない。しかし、従来の100%銅線編組の一括編組シールド付ケーブルは、10万回に達する前に破断してしまう。
【0058】
U字スライド試験において、本発明の一括編組シールド付ケーブルは、U字スライド試験を10万回以上行ってもケーブルの破断はなく、従来の錫めっき銅箔糸編組の一括編組シールド付ケーブルは、U字スライド試験を20万回以上行ってもケーブルの破断はない。しかし、従来の100%銅線編組の一括編組シールド付ケーブルは、10万回に達する前に破断してしまう。
【0059】
よって、本発明の一括編組シールド付ケーブルの耐屈曲・捻回・U字スライド寿命は、医療機器の曲げ・捻回・スライドを伴う部分で使用される一括編組シールドに求められている10万回以上を満たしている。
【0060】
また、表1に示すように、本発明の一括編組シールド付ケーブルの外径と電気特性(静電容量、特性インピーダンス、減衰量)は、従来の100%銅線編組の一括編組シールド付ケーブルと従来の錫めっき銅箔糸編組の一括編組シールド付ケーブルと同等である。
【0061】
本発明の一括編組シールド付ケーブルの一括編組シールド抵抗は、従来の100%銅線編組の一括編組シールド付ケーブルの一括編組シールド抵抗の2倍以下、従来の錫めっき銅箔糸編組の一括編組シールド付ケーブルの一括編組シールド抵抗の1/5以下に抑えられている。
【0062】
よって、本発明の一括編組シールド付ケーブルはEMI特性に優れている。また、本発明の一括編組シールド付ケーブルは、一括編組シールド抵抗が低いため、一括編組シールド付ケーブルの細径化・軽量化に対応することができる。
【0063】
吸収クランプ法により、各一括編組シールド付ケーブルの10,50,100MHzにおけるシールド効果を確認した。本発明の一括編組シールド付ケーブルのシールド効果は、従来の錫めっき銅箔糸編組の一括編組シールド付ケーブルよりも優れており、従来の100%銅線編組の一括編組シールド付ケーブルと同等であった。よって、本発明の一括編組シールド付ケーブルは優れたシールド効果を有していることを確認できた。
【0064】
以上から、本発明の一括編組シールド付ケーブルは、銅線と銅めっき糸、または銅線と錫めっき銅箔糸を混合させることで、耐屈曲・捻回・U字スライド特性に優れる従来の錫めっき銅箔糸編組の一括編組シールド付ケーブルの優れたところと、EMI特性に優れる従来の100%銅線編組の一括編組シールド付ケーブルの優れたところが組み合わさり、耐屈曲・捻回・U字スライド特性に優れ、且つEMI特性に優れた一括編組シールド付ケーブルとなることが分かる。
【符号の説明】
【0065】
1 一括編組シールド付ケーブル
2 電線群
3 集合体
4 一括編組シールド
15 金属線
16 金属糸
17 斜め持ちユニット(第1斜め持ちユニット)
18 斜め持ちユニット(第2斜め持ちユニット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心導体の外周側に編組からなるシールド導体を有する一括編組シールド付ケーブルにおいて、
上記シールド導体が金属線と金属めっき糸とを組み合わせてなる一括編組シールド、または上記シールド導体が金属線と金属箔糸とを組み合わせてなる一括編組シールドにより形成されていることを特徴とする一括編組シールド付ケーブル。
【請求項2】
前記一括編組シールドは、一方の方向に巻き付けてなる第1斜め持ちユニットと、該第1斜め持ちユニットと交差するように他方の方向に巻き付けてなる第2斜め持ちユニットとからなり、前記第1斜め持ちユニットは前記金属線からなり、前記第2斜め持ちユニットは前記金属めっき糸または前記金属箔糸からなることを特徴とする請求項1に記載の一括編組シールド付ケーブル。
【請求項3】
前記第1斜め持ちユニットが占める面積Aと、前記第2斜め持ちユニットが占める面積Bとの比率(A/(A+B))が40〜60%であることを特徴とする請求項2に記載の一括編組シールド付ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−54398(P2011−54398A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201803(P2009−201803)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(300055719)日立電線ファインテック株式会社 (96)
【Fターム(参考)】