説明

一方向に配向されたポリマーテープの積層体を有する可とう性パネルを製造する方法

複数の個別の積層体を有する可とう性のパネルであって、該積層体は一方向に配向されたポリマーテープの少なくとも2つの単層が一緒に結合して形成されており、該ポリマーテープの方向は、全ての単層において同じであり、かつそれぞれの単層のポリマーテープは、隣接する単層のテープとは、ずれて配置されている可とう性パネルにおいて、積層体が上下に重ねて積層されており、かつそれぞれが分離された結合点または結合線によって固定されていることを特徴とする可とう性のパネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方向に配向されたポリマーテープの少なくとも2つの単層から形成された積層体を有する可とう性のパネル、および該パネルの製造方法に関する。本発明による可とう性のパネルは、耐衝撃性衣類のために使用することができる。
【0002】
耐衝撃性衣類は、耐衝撃性保護ベスト中のインサートとして硬質の板、たとえば金属、セラミック板またはポリマー板を有している。この種の衣類では、着用者が職務に就いている状況で必要とされる動きの自由を有することが保証できない。これらの比較的重い重量と並んで、ベストのインサートが可とう性を欠いているという事実により着心地は極めて悪い。
【0003】
代替案として、平坦なテキスタイル構造の多層からなる耐衝撃性保護衣類が存在する。アラミド繊維のファブリックは、耐衝撃性衣類の個々の保護層において頻繁に使用されている。さらに高い靱性を有するポリエチレン繊維から製造される織布またはその他のテキスタイル平面状構造物は、耐衝撃性衣類において使用するために提案されている。このような衣類は「ソフト・バリスティックス」とも呼ばれ、ボディー用防護具の重量を低減しながら着心地を改善し、かつ衝撃性能を維持もしくは強化することを目的としている。
【0004】
本発明の課題は、ボディー用防護具の重量を低減する一方で、着心地を改善し、かつ衝撃性能を維持するか、もしくは強化するという目下の目的を満たす、ソフト・バリスティックス用の適用で使用するための可とう性のパネルおよび可とう性のパネルの製造方法を提供することである。
【0005】
この課題は、複数の個別の積層体を有する可とう性のパネルであって、該積層体はポリマーテープの少なくとも2つの単層が一緒に結合して形成されており、該ポリマーテープの方向は全ての単層において同じであり、かつそれぞれの単層のポリマーテープは、隣接する単層のテープとは、ずれて配置されている可とう性パネルにおいて、積層体が上下に重ねて積層されており、かつそれぞれが分離された結合点または結合線によって固定されていることを特徴とする、可とう性のパネルによって解決される。
【0006】
本発明の課題はまた、複数の個別の積層体を有する可とう性のパネルの製造方法であって、該積層体はポリマーテープの少なくとも2つの単層が一緒に結合して形成されており、該ポリマーテープの方向は、全ての単層において同じであり、かつそれぞれの単層のポリマーテープは、隣接する単層のテープとは、ずれて配置されている可とう性パネルの製造方法において、積層体を上下に重ねて積層し、かつそれぞれが分離された結合点または結合線によって固定されていることを特徴とする、可とう性のパネルの製造方法によって解決される。
【0007】
分離された結合点または結合線によって、全表面積にわたって結合されているにもかかわらず、パネルは極めて高い可とう性を維持する。該パネルはパネルに与えられる衝撃エネルギーを、高いエネルギー吸収レベルで吸収する。
【0008】
結合点または結合線は、パネルの端部に配置されていても良い。有利には結合点または結合線は、パネルの中央に配置されている。しかし、積層された積層体を相互に固定する結合点または結合線が隣接する積層体中で整列していないことがさらに有利である。従って2つの積層体の結合点または結合線の位置は、2つの積層体に隣接する積層体の結合点または結合線からずれている。このようにして、より小さい、つまり内部の曲げ半径に供されて折り曲げたときに積層体の縮れが低減された、可とう性の高いパネルが得られる。本発明によるパネルの有利な実施態様では、積層体は結合点または結合線が交互になって、積層体の中央および積層体の端部において隣接する積層体に固定される。
【0009】
該積層体は相互に、糸により、たとえば縫われて、または編まれて固定されても良い。
【0010】
代替案として、積層体は相互にリベットによって、有利にはポリマー材料から製造されたリベットによって固定されていても良い。
【0011】
積層体は相互に溶接結合によって固定されていてもよい。溶接は、超音波溶接またはレーザー溶接により実施することができる。
【0012】
本発明によるパネルは、耐衝撃性保護ベスト中のインサートして使用することができる。しかしパネルが、該パネルから形状にフィットするソフトなボディー用防護具、つまり柔らかい耐衝撃性ベストを形成するような形状であることは有利である。
【0013】
外見においては、ボディー用防護具は、たとえばベストまたはジャケットの形で従来技術のボディー用防護具にならって仕上げることができる。
【0014】
本発明によるパネルの範囲内に含まれる個々の積層体は、10μm〜1500μm、有利には50μm〜1500μm、さらに有利には50μm〜1000μm、および最も有利には50μm〜500μmの厚さを有していてもよい。
【0015】
有利な実施態様では、該パネルは、少なくとも2つ、有利には少なくとも4つの個別の積層体が上下に積層されており、好ましくは少なくとも10の個別の積層体が、および最も有利には少なくとも50の個別の積層体が積層されている。本発明によるパネルは、100〜500の個別の積層体を有していてもよい。
【0016】
従来技術ではポリマーテープは、いわゆるハード・バリステック適用の硬質の耐衝撃材料のために使用されているのみである。たとえばUS5,578,370は、耐衝撃性保護用に適切な耐衝撃性パネルを開示している。このようなパネルは、交差する延伸された部材の2以上の重ね合わされたマットから形成される。2以上の交差したマットを重ね合わせた積層体は、この積層体を加熱して硬化させ、多層シート、つまりパネルが形成される。
【0017】
パネル中に含まれている積層体を形成しているテープは、パネル中に配置されている、つまり並列した関係で配置されており、かつテープの方向は、全ての単層において同じである。積層体の単層は、互いに一定の角度で交差していない。単層あたりのテープの数は、たとえば10まで、100まで、1000まで、あるいはまた10000まで、またはそれ以上であってもよい。単層は、それぞれの層のテープが、該層に上もしくは下で隣接する単層のテープとは、ずれて配置されるように積層される。このようにして、1の単層の隣接するテープの間の結合部は、該層の上もしくは下に隣接する単層のテープによって覆われる。該テープは相互に平行に配置されていてもよく、その際、1つの単層のそれぞれのポリマーテープは、これに隣接して配置されたポリマーテープとの重複部分を有する。
【0018】
本発明による方法で使用されるポリマーテープは、紡糸されたモノフィラメントであってもよい。ここで使用されるモノフィラメントという用語は、個別的に紡糸された、たとえば溶融紡糸またはゲル紡糸により紡糸された任意の単一フィラメントを含む。
【0019】
テープは、固体の状態の押出(SSE)で、または固体材料からの削り出し、その後の後延伸により製造してもよい。
【0020】
本発明による方法で使用されるポリマーテープは、ポリマーフィルムを細断または細長く切断することによって製造してもよい。ポリマーフィルムはカレンダリング、延伸または過剰の延伸(overdrawn)によって、必要とされる引張強さを有していてもよい。
【0021】
積層体は、ポリマーテープをプリテンショニングしてポリマーテープの第一の単層を形成し、かつ引き続き該ポリマーテープを一方向で平行に張設しながら位置決めして第一の単層の上に少なくとも1の第二の単層を、第一の単層を形成した方法と同様に形成し、このことにより、ポリマーテープの方向が全ての単層中で同じであり、かつそれぞれの単層のポリマーテープが、該単層の上もしくは下の隣接する単層のテープとは、ずれて配置されるようにポリマーテープの少なくとも2つの単層を積層し、かつこのようにして積層されたポリマーテープの単層を硬化して積層体を得ることによって製造してもよい。
【0022】
積層体は、ポリマーテープの方向が、全ての単層において同じであり、かつそれぞれの単層のポリマーテープが、該単層の上または下で隣接する単層のテープとは、ずれて配置されるように、2より多く、たとえば3、4または25までの、あるいは50までの、または100までのポリマーテープの単層が全て積層されたものを有していてもよい。
【0023】
積層体を形成する、積層された単層の硬化は、当業者に公知の方法で、有利には圧力および熱を、たとえばサーモカレンダリングによって、積層された単層に適用することによって実施する。
【0024】
本発明による方法のために使用されるテープが、少なくとも200MPaの引張強さを有することは有利であり、さらに有利にはポリマーテープは少なくとも400MPaの引張強さを有する。ポリマー材料および延伸率に依存して、ポリマーテープは、少なくとも800MPaおよび20GPaまでの引張強さを有していてよい。
【0025】
ポリマーテープの引張強さは、ASTM D638により測定される。
【0026】
テープは、ポリエチレン、超高分子ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリブタジエンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリビニルアルコール、ポリフェニリデンスルフィド、これらのポリマーのコポリマーおよびこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0027】
有利にはテープは熱可塑性樹脂材料により溶融結合される。この材料は、テープを形成した後でテープに適用してもよく、これはシース材料としてのテープと共に溶融紡糸されるか、または細断されてテープとなる前のポリマーフィルムに適用されてもよい。熱可塑性樹脂材料を適用するもう1つの可能性は、樹脂材料の支持体層を、積層体を形成する単層の間に配置することである。適切な樹脂材料は、ポリエチレン、超高分子ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリブタジエンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリビニルアルコール、ポリフェニリデンスルフィド、これらのポリマーのコポリマーおよびこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。さらに、エチレンアルキルアクリレートコポリマー(EAA)、エチレンビニルアセテートコポリマー(EVA)、エチレン−ブチルアクリレートコポリマー(EBA)、エチレンメチルアクリレートコポリマー(EMA)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LPDE)を使用することができる。ポリイソブチレン(PIB)またはポリウレタン(PU)をシース材料として使用することも可能である。これらのポリマーは、極めて柔軟であり得、かつ高い伸び率を有する。熱可塑性樹脂材料は、前記の材料の1つまたは前記の材料の混合物を有していてもよい。
【0028】
熱可塑性樹脂材料をポリマーテープ上に適用する前に、プライマーを接着促進剤としてテープの表面に適用してもよい。このような表面処理は、テープと熱可塑性樹脂材料との間の結合を強化する。適切なプライマーはたとえば塩素化ポリプロピレンであってもよい。プライマーの付加的な効果は、その後の加工工程におけるテープのフィブリル化の低減である。強化結合のために使用することができるその他の表面処理は、プラズマまたはコロナ処理を含む。
【0029】
溶融結合の代替案として、個々の積層体の少なくとも2つの単層を形成するポリマーテープは、感圧性接着剤によって結合することもできる。
【0030】
1のポリマー材料のみを含有するポリマーテープを、樹脂材料または接着剤の添加なしに硬化することもできる。該単層はこの場合、ポリマーテープの融点をちょうど下回る温度範囲で硬化される。このような方法は「熱間圧縮」として従来技術において公知である。
【0031】
本発明の文脈で使用されるテープという用語は、実質的に均一な幅と厚さを有し、円形の形以外の任意の形状を有することができる柔軟性のある、延伸された部材を意味する。テープの幅/高さ比は少なくとも2であり、有利には少なくとも5、およびさらに有利には少なくとも20である。前記のテープは、隣接するテープの側面がほぼ平行な状態で並列する関係で位置決めすることができる。該テープはスリットフィルムから得られてもよい。該テープはモノフィラメントであってもよい。本発明による方法により使用されるテープは、種々の横断面、たとえば四角い横断面または三角形の横断面を有していてよい。
【0032】
要求される引張強さを有する積層体を得るために、少なくとも1:5の延伸率でポリマーテープを延伸することが有利であり、さらに有利にはポリマーテープは少なくとも1:15の延伸率で延伸される。1:50以上の延伸率が特に有利である。
【0033】
モノフィラメントである四角いテープは有利には幅1.5mm〜10mmおよび厚さ20μm〜1500μmであってよい。フィルムを細長く切断することにより得られる四角いテープは、幅2mm〜300mmであり、厚さ1μm〜1000μm、有利には4μm〜50μmであってよい。三角形の横断面を有するテープは、幅および厚さが2〜10mmであってよい。
【0034】
パネルまたはパネルの製造方法のために使用される積層体は、積層体を形成するポリマーテープが全て同じ方向に存在するように上下に重ねて配置されてもよい。有利な実施態様では、上下に重ねた少なくとも1の積層体を、該積層体の上または下に置かれた隣接する積層体に対して逆転させ、さらに有利には少なくとも1の積層体を、該積層体の上または下に置かれた隣接する積層体に対して90゜回転させ、こうしてパネルの横方向において高い引張強さが得られる。積層体は、0゜および90゜が交互に入れ替わるように積層してもよい。該パネルは、同じ数の0°の積層体と、90゜回転された積層体とを有していてもよい。しかし、トップとボトムの積層体のみが、その他の積層体に対して90゜回転されていてもよい。
【0035】
本発明のもう1つの対象は、このようなパネルの特殊な使用を提供することである。
【0036】
本発明によるパネルは、エアーバッグを形成するために使用することができる。
【0037】
前記のとおり、本発明によるパネルは特に、耐衝撃性保護用衣類のために適切である。該パネルは、ソフト・バリスティックスとも呼ばれるソフトなボディー用防護具の適用において使用することもできる。
【0038】
いわゆる外傷性効果を防止するために、本発明によるパネルが、ボディー用防護具の身体側に衝撃吸収材を備えていることが有利である。
【0039】
本発明によるパネルは、1もしくは複数の突き刺し抵抗性の層または積層体を備えていてもよい。突き刺し抵抗性の層または積層体は、片方の、または両方の表面に備えられていてもよい。突き刺し抵抗性の層または積層体は、本発明による積層体と、突き刺し抵抗性の層または積層体が交互になった個々の積層体の間のサンドイッチ状の構造であってもよい。
【0040】
本発明によるパネルは、アラミド繊維または超高分子ポリエチレンの1もしくは複数の層を備えていてもよい。これらの層は、パネルの耐衝撃性能を強化し、かつこれらは片側の、または両側の表面に備えられていてもよい。アラミド繊維または超高分子ポリエチレンの層は、本発明による積層体と、アラミド繊維または超高分子ポリエチレンの層が交互に配置された個々の積層体の間のサンドイッチ状の構造であってもよい。アラミド層は有利には個々の積層体の間のサンドイッチ構造として、アラミド繊維の飛散を防止する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の個別の積層体を有する可とう性のパネルであって、該積層体は一方向に配向されたポリマーテープの少なくとも2つの単層が一緒に結合して形成されており、該ポリマーテープの方向は、全ての単層において同じであり、かつそれぞれの単層のポリマーテープは、隣接する単層のテープとは、ずれて配置されている可とう性パネルにおいて、積層体が上下に重ねて積層されており、かつそれぞれが分離された結合点または結合線によって固定されていることを特徴とする可とう性のパネル。
【請求項2】
積層体が糸によって相互に固定されていることを特徴とする、請求項1記載のパネル。
【請求項3】
積層体がリベットによって相互に固定されていることを特徴とする、請求項1記載のパネル。
【請求項4】
積層体が溶接結合によって相互に固定されていることを特徴とする、請求項1記載のパネル。
【請求項5】
パネルにアラミド繊維の1もしくは複数の層が備えられていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のパネル。
【請求項6】
パネルに超高分子ポリエチレンの1もしくは複数の層が備えられていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のパネル。
【請求項7】
衝撃保護用衣類のための、請求項1から6までのいずれか1項記載のパネルの使用。

【公表番号】特表2010−505647(P2010−505647A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530791(P2009−530791)
【出願日】平成19年9月29日(2007.9.29)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008500
【国際公開番号】WO2008/040511
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(507335414)ノファメーア ベスローテン フェンノートシャップ (7)
【氏名又は名称原語表記】Novameer B.V.
【住所又は居所原語表記】Kennedeylaan 10, NL−5466 AA Veghel, Netherlands
【Fターム(参考)】