説明

一方向間欠送りユニット

【課題】ラチェットホイールに一方向型トルクリミッタを組み込み、該トルクリミッタの内輪をハウジングに固定した一方向間欠送りユニットにおいて、稼動時におけるラチェットホイールの半径の製品ごとのばらつきを解消して送り精度を向上させることである。
【解決手段】ラチェットホイール1を通じて内輪3に作用するラジアル力Fを内輪3のポケット8間の柱部26で受けるように内輪3のハウジング4に対する固定を位置を位置決めピン29により定めるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インデックステーブル等の部品供給装置等における送りユニットとして使用される一方向間欠送りユニットに関し、特に送り精度の向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一方向間欠送りユニットの使用例として、部品搬送部材のカバーテープ巻取り装置を挙げることができる(特許文献1)。この場合の一方向間欠送りユニットは、ラチェットホイールにストッパレバーを係合させるとともに、回動板に取り付けたラチェット爪をラチェットホイールに係合させた構成であり、これによってラチェットホイールと一体のスプロケットを駆動し、キャリアーテープを一定方向に間欠送りするようになっている。
【0003】
また、キャリアーテープなどの被搬送物の送り方向に対し所要のトルクを付加し、併せて逆転防止を図るためにラチェットホイールに一方向クラッチ型のトルクリミッタを組み込んだ一方向間欠送りユニットに関し、本願の出願人は先に特許出願した(特願2004−195508号)。
【0004】
前記出願に係るものは、図7から図10に示したように、ラチェットホイール1の内径側に一方向クラッチ型のトルクリミッタ2が組み込まれる。該トルクリミッタ2は前記ラチェットホイール1と同軸の内輪3がハウジング4の凹部5に収納されるとともに、その内輪3の背面に設けた取付け軸部6(図9参照)が凹部5に貫通されナット7によりハウジング4に固定される。その内輪3の外径面に周方向に所定の間隔をおいて所要数のポケット8が形成され、各ポケット8の底面に形成されたカム面9と前記ラチェットホイール1の内径面との間で一定方向に狭小となるクサビ角θが形成される。
【0005】
前記ポケット8内にころ11とこれをクサビ角θの方向に付勢するばね12が収納され、前記ラチェットホイール1が前記クサビ角θと反対方向に所要のトルクで空転する方向Aを正回転の方向と定める。前記ラチェットホイール1の前面が揺動アーム13のボス部14でカバーされ、そのボス部14が前記内輪3の前面に設けた軸部15に揺動可能に嵌合される。上記ボス部14がワッシャ16を介してねじ10により抜け止めが図られる。
【0006】
前記揺動アーム13のボス部14の背面の偏芯位置において、ピン17により駆動爪18が取り付けられ、その駆動爪18がラチェットホイール1の内周面に形成された歯19に係合される。駆動爪18はボス部14との間に介在されたばね21により歯19に押し当てる方向に付勢される。ラチェットホイール1の外径面にスプロケット22が一体に設けられる。
【0007】
前記の揺動アーム13が矢印a方向に揺動されると、駆動爪18が歯19に噛み合ってラチェットホイール1を一定ピッチだけ矢印A方向に正回転させ、スプロケット22に係合されたキャリアーテープ23を1ピッチ分だけ送る。このとき、トルクリミッタ2は空転するが、ばね12とクサビ角θの大きさ等によって決定される大きさの空転トルクが発生する。逆に、揺動アーム13が矢印b方向に揺動されると駆動爪18は歯19の上を滑って同量だけ後退する。このときラチェットホイール1に逆転方向の力が加わるとトルクリミッタ2がロックし、その逆転を阻止する。
【特許文献1】特開2000−332490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した一方向間欠送りユニットは、ラチェットホイール1によりキャリアーテープ23等の被搬送物を常に一定量送ることが求められるが、従来の場合はラチェットホイール1の外径が回転時に変化することがあるため、送り量が変化する問題があった。
【0009】
即ち、従来のラチェットホイール1には、組立て時において内輪3の周方向の位置乃至姿勢が定まらず、製品ごとに区々であるため、図8(a)のように、ラジアル力Fが作用する負荷位置がころ11の部分であったり、図8(b)のように、ポケット8相互間のいわゆる柱部26であったりする。前者の場合のラチェットホイール1の半径をRとし、後者の場合の半径をR’とすると、R≠R’(一般にR>R’)となる。
【0010】
このように従来においては、組立て時における内輪3の周方向の位置が定まらなかったため、製品ごとに回転周長が変化し、そのため送り量にばらつきが生じる可能性があった。
【0011】
そこで、この発明は、内輪3の組込み時の位置を一定に保持できるようにすることによって製品ごとのばらつきを無くし送り量の精度を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題を解決するために、この発明は、上述したトルクリミッタの内輪にハウジングに対する位置決め手段を設けることとした。
【0013】
位置決め手段としては、内輪とハウジングに渡りピンを挿通する構成、内輪とハウジングの一部との凹凸嵌合部にDカット面が形成された構成等をとることができる。
【0014】
なお、負荷位置に対する内輪の位置との関係は、内輪外周面に形成されたポケット相互間の柱部が負荷位置にあるように定めることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、この発明においては、内輪固定型の一方向型トルクリミッタを組み込んだ一方向間欠送りユニットにおいて、その内輪のハウジングに対する組み込み位置乃至姿勢が製品ごとに定まり、ラジアル力が負荷される位置との関係が常に一定になるため、稼動時におけるラチェットホイール径の変化がなくなる。これにより、送り精度が安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面に基づいてこの発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0017】
図1から図3に示した第1の実施形態の一方向間欠送りユニットは、前述した従来の場合と同様に、ラチェットホイール1の内径側に一方向クラッチ型のトルクリミッタ2が組み込まれる。該トルクリミッタ2は前記ラチェットホイール1と同軸の内輪3がハウジング4の凹部5に収納され、ねじ10によりハウジング4に固定される。その内輪3の外径面に周方向に所定の間隔をおいて所要数のポケット8が形成され、各ポケット8の底面に形成されたカム面9と前記ラチェットホイール1の内径面との間で一定方向に狭小となるクサビ角θが形成される。
【0018】
前記ポケット8内にころ11とこれをクサビ角θの方向に付勢するばね12が収納される。また前記ラチェットホイール1が前記クサビ角θと反対方向に所要のトルクで空転する方向Aを正回転と定める。前記ラチェットホイール1の前面が揺動アーム13のボス部14でカバーされ、そのボス部14が前記内輪3の前面に設けた中心軸部15に揺動可能に嵌合される。つば付きのねじ10がボス部14、内輪3を貫通し、ハウジング4の凹部5の中心のねじ穴20に螺合により固定される。
【0019】
前記揺動アーム13のボス部14の偏芯位置においてボス部14の背面に取り付けられた駆動爪18がピン17により取り付けられ、その駆動爪18がラチェットホイール1の内周面の歯19に係合される。駆動爪18はボス部14との間に介在されたばね21により歯19に押し当てる方向に付勢される。
【0020】
前記内輪3の位置決め手段として、該内輪3の一部にその前面から背面に貫通する位置決め穴27が設けられるとともに、その位置決め穴27に対応したハウジング側位置決め穴28がハウジング4に設けられる(図2参照)。両方の位置決め穴27、28が一致した状態で位置決めピン29が嵌入され、ラジアル力Fを受ける負荷位置が柱部26に一致するように位置決めされる。
【0021】
以上述べた第1実施形態の一方向間欠送りユニットは、揺動アーム13が矢印a方向に揺動されると、駆動爪18が歯19に噛み合ってラチェットホイール1を一定ピッチだけ正回転(矢印A参照)させ、ラチェットホイール1のスプロケット22に掛けられたキャリアーテープ23を送る。このとき、トルクリミッタ2は空転するが、ばね12とクサビ角θの大きさ等によって決定される大きさの空転トルクが発生する。逆に揺動アーム13が矢印b方向に揺動されると駆動爪18は歯19の上を滑って同量だけ後退する。このときラチェットホイール1に逆転方向の力が加わるとトルクリミッタ2がロックしその逆転を阻止する。
【0022】
一方向間欠送りユニットの上記のごとき稼動時において、ラジアル力Fを受ける負荷位置が内輪3の柱部26に定まるので(図1参照)、ラチェットホイール1の半径Rはどの製品においても一定となり、送り精度が向上する。
【0023】
次に、図4から図6に示した第2実施形態のものは、位置決め手段を除く構造はすべて前述の第1実施形態の場合と同じであるので、同じ部分の説明は省略する。この場合の位置決め手段は、内輪3の背面にDカット形の嵌合凹部30が設けられ、これに対向したDカット形の嵌合凸部31がハウジング4の凹部5の中心に設けられる。この嵌合凹部30と嵌合凸部31との嵌合によって、ラジアル力Fを受ける負荷位置を内輪3の柱部26に定めることができる(図4参照)。これによって、前記の第1実施形態の場合と同様にラチェットホイール1の半径Rはどの製品においても一定となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態の正面図
【図2】図1のX−X線の断面図
【図3】同上の分解斜視図
【図4】第2実施形態の正面図
【図5】図4のX−X線の断面図
【図6】同上の分解斜視図
【図7】従来例の正面図
【図8】(a)図7の作用説明図、(b)図7の他の状態の作用説明図
【図9】図7のX−X線の断面図
【図10】同上の分解斜視図
【符号の説明】
【0025】
1 ラチェットホイール
2 トルクリミッタ
3 内輪
4 ハウジング
5 凹部
6 取付け軸部
7 ナット
8 ポケット
9 カム面
10 ねじ
11 ころ
12 ばね
13 揺動アーム
14 ボス部
15 軸部
16 ワッシャ
17 ピン
18 駆動爪
19 歯
20 ねじ穴
21 ばね
22 スプロケット
23 キャリアーテープ
26 柱部
27 位置決め穴
28 ハウジング側位置決め穴
29 位置決めピン
30 嵌合凹部
31 嵌合凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラチェットホイールの内径側に一方向クラッチ型のトルクリミッタが組み込まれ、該トルクリミッタは前記ラチェットホイールと同軸の内輪がハウジングに固定され、その内輪の外径面に周方向に所定の間隔をおいて所要数のポケットが形成され、各ポケットの底面に形成されたカム面と前記ラチェットホイールの内径面との間で一定方向に狭小となるクサビ角が形成され、前記ポケット内に転動体とこれをクサビ角の方向に付勢する弾性体が収納され、前記トルクリミッタと同軸状態に支持された揺動アームに駆動爪が取り付けられ、該駆動爪を前記ラチェットホイールに係合させてなり、前記揺動アームの一定方向への揺動によって前記駆動爪が該ラチェットホイールをクサビ角と反対方向に所要の空転トルクで空転させ、前記と逆方向への揺動によって前記トルクリミッタをロックさせ、そのロックによりラチェトホイールの逆回転を防止しつつ駆動爪を後退させるようにした一方向間欠送りユニットにおいて、前記トルクリミッタの内輪に前記ハウジングに対する位置決め手段を設けたことを特徴とする一方向間欠送りユニット。
【請求項2】
前記の位置決め手段が、前記内輪とハウジングに渡り挿通されたピンであることを特徴とする請求項1に記載の一方向間欠送りユニット。
【請求項3】
前記の位置決め手段が、前記内輪とハウジングの一部との凹凸嵌合部に形成されたDカット面であることを特徴とする請求項1に記載の一方向間欠送りユニット。
【請求項4】
前記内輪外周面に形成されたポケット相互間の柱部が負荷位置にあるように該内輪を位置決めしたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の一方向間欠送りユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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