説明

一時防錆剤組成物

【課題】液相部及び気相部において優れた腐食防止性を有する一時防錆剤組成物を提供すること。
【解決手段】トリアゾール類、またはそのアルカリ金属塩と、2−ホスホノブタン−1,2,4トリカルボン酸、またはそのアルカリ金属塩とを含んでおり、
前記トリアゾール類、またはそのアルカリ金属塩が0.1〜20質量%、前記2−ホスホノブタン−1,2,4トリカルボン酸、またはそのアルカリ金属塩が0.0005〜1質量%の濃度範囲で使用されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン製造後の品質検査時に充填される一時防錆剤組成物に関する。特には冷却系統をアルミニウムまたはアルミニウム合金によって構成したエンジンの冷却液として好適な一時防錆剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両のエンジンは、工場において製造された後に個々に品質検査が行われる。この品質検査では実際にエンジンを駆動して行なわれ、その際には、エンジンの冷却系統に冷却水が充填される。品質検査が終了したエンジンは、車両組立工場へと配送されて車両に搭載される。
【0003】
上記品質検査を終了した後、エンジンの冷却系統からは冷却水の抜き取りが行われるようになっている。しかし、エンジンの冷却系統からは冷却水を完全に抜き取ることはできず、冷却系統の一部には冷却水が残留することになる。このため、品質検査を終え、車両に搭載された後、再び冷却水が充填されないで長期に渡って放置された場合には、エンジンの冷却系統に錆が発生するおそれがあった。
【0004】
そこで、このような不具合の発生を回避するため、品質検査時にエンジンの冷却系統に防錆剤を含む市販のエンジン冷却液(例えば特許文献1参照)を充填する試みがなされている。また、品質検査時に冷却水を充填し、品質検査終了後、冷却水の抜き取った後に防錆剤を含む市販のエンジン冷却液を充填する試みもなされている。
【0005】
ところが、従来のエンジン冷却液を用いた場合、品質検査を終了した後、エンジンの冷却系統から冷却水の抜き取りが行われるため、冷却液と接触している表面では防錆効果が得られるものの、冷却液と接触していない気相部の金属表面の腐食を防止するにはその防錆効果は十分とはいえず、その改良が求められていた。
【0006】
このような要求に応えることを目的として特許文献2に記載の防錆剤組成物が提案された。特許文献2に記載の防錆剤組成物は、アゾールと安息香酸類と水とを含み、アゾールと安息香酸類との重量比(アゾール/安息香酸類)が1/3〜8/1であることを特徴とするものであり、液相部及び気相部において防錆効果を発揮するものである。
【特許文献1】特開平5−105871号公報
【特許文献2】特開2000−239867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、上述の先行技術をさらに改良し、液相部及び気相部において優れた腐食防止性を有する一時防錆剤組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、液相部及び気相部において優れた腐食防止性を有する一時防錆剤組成物において、
トリアゾール類、またはそのアルカリ金属塩と、2−ホスホノブタン−1,2,4トリカルボン酸、またはそのアルカリ金属塩とを含んでおり、
前記トリアゾール類、またはそのアルカリ金属塩が0.1〜20質量%、前記2−ホスホノブタン−1,2,4トリカルボン酸、またはそのアルカリ金属塩が0.0005〜1質量%の濃度範囲で使用されることを特徴とする一時防錆剤組成物をその要旨とした。
【0009】
請求項2記載の発明は、カルボン酸類、及びまたはそのアルカリ金属塩をさらに含んでおり、0.1〜20質量%の濃度範囲で使用されることを特徴とする請求項1記載の一時防錆剤組成物をその要旨とした。
【0010】
請求項3記載の発明は、カルボン酸類、及びまたはそのアルカリ金属塩が、芳香族一塩基酸、芳香族二塩基酸、脂肪族一塩基酸、脂肪族二塩基酸、及びその塩から選ばれるいずれか1種若しくは2種以上であることを特徴とする請求項2記載の一時防錆剤組成物をその要旨とした。
【0011】
請求項4記載の発明は、アルカリ土類金属により構成される化合物をさらに含んでおり、0.0001〜0.1質量%の濃度範囲で使用されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の一時防錆剤組成物をその要旨とした。
【0012】
請求項5記載の発明は、アルカリ土類金属により構成される化合物が、マグネシウム化合物、カルシウム化合物およびストロンチウム化合物の中から選ばれるいずれか1種若しくは2種以上であることを特徴とする請求項4記載の一時防錆剤組成物をその要旨とした。
【0013】
請求項6記載の発明は、アミン塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、及び亜硝酸塩を含有しないことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の一時防錆剤組成物をその要旨とした。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一時防錆剤組成物は、トリアゾール類、またはそのアルカリ金属塩と、2−ホスホノブタン−1,2,4トリカルボン酸、またはそのアルカリ金属塩とを含んでおり、前記トリアゾール類、またはそのアルカリ金属塩を0.1〜20質量%、前記2−ホスホノブタン−1,2,4トリカルボン酸、またはそのアルカリ金属塩を0.0005〜1質量%の濃度範囲として、これを品質検査時の冷却水として使用した場合、品質検査終了後、エンジンの冷却系統から冷却水の抜き取りを行なった後においても、残存する冷却水と接触する液相部において、また冷却水と接触しない気相部においても、トリアゾール類、またはそのアルカリ金属塩、並びに2−ホスホノブタン−1,2,4トリカルボン酸、またはそのアルカリ金属塩が協働して、冷却系統の腐食を効果的に防止することができる。特に本発明の一時防錆剤組成物を冷却系統をアルミニウムまたはアルミニウム合金によって構成したエンジンに適用した場合、これらトリアゾール類、またはそのアルカリ金属塩、並びに2−ホスホノブタン−1,2,4トリカルボン酸、またはそのアルカリ金属塩が、冷却系統を構成するアルミニウムまたはアルミニウム合金に対し、優れた腐食防止性を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一時防錆剤組成物(以下、単に組成物という)をさらに詳しく説明する。本発明の組成物は、トリアゾール類、またはそのアルカリ金属塩と、2−ホスホノブタン−1,2,4トリカルボン酸、またはそのアルカリ金属塩とを含有するものである。
【0016】
トリアゾール類、またはそのアルカリ金属塩は、本発明の組成物において、下記2−ホスホノブタン−1,2,4トリカルボン酸、またはそのアルカリ金属塩と共に気相部及び液相部において、優れた腐食防止性を導き出している。このような効果を発揮するトリアゾール類、またはそのアルカリ金属塩としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、4−フェニル−1、2、3−トリアゾール、2−ナフトトリアゾールおよび4−ニトロベンゾトリアゾール、並びにナトリウム塩、カリウム塩、或いはリチウム塩などを挙げることができる。その中でも、ベンゾトリアゾールやトリルトリアゾール、これらのアルカリ金属塩は、上記腐食防止性に優れると共に、入手容易性、取り扱い性、及び価格の面でより好ましい。
【0017】
トリアゾール類、またはそのアルカリ金属塩は、0.1〜20質量%の濃度範囲で使用される。トリアゾール類、またはそのアルカリ金属塩の濃度が0.1質量%を下回る場合、気相部及び液相部、特には気相部において十分な腐食防止効果を得ることができず、20質量%を上回る場合には、上回る分だけの効果がなく、不経済となる。
【0018】
一方、2−ホスホノブタン−1,2,4トリカルボン酸、またはそのアルカリ金属塩は、本発明の組成物において、上記トリアゾール類、またはそのアルカリ金属塩と共に気相部及び液相部において、優れた腐食防止性を導き出している。このような効果を発揮する2−ホスホノブタン−1,2,4トリカルボン酸のアルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、或いはリチウム塩などを挙げることができる。
【0019】
2−ホスホノブタン−1,2,4トリカルボン酸、またはそのアルカリ金属塩は、0.005〜1質量%の濃度範囲で使用される。2−ホスホノブタン−1,2,4トリカルボン酸、またはそのアルカリ金属塩の濃度が0.005質量%を下回る場合、気相部及び液相部、特には液相部において十分な腐食防止性を得ることができず、1質量%を上回る場合には、上回る分だけの効果がなく、不経済となる。
【0020】
本発明の組成物は、上記2成分のほかに、カルボン酸類、及びまたはそのアルカリ金属塩をさらに含有する形態を採ることができる。上記2成分に加え、カルボン酸類、及びまたはそのアルカリ金属塩を含有する形態とすることで、冷却系統の気相部及び液相部における腐食防止性をより一層高めることができる。このような効果を奏するカルボン酸類、及びまたはそのアルカリ金属塩としては、例えば芳香族一塩基酸、芳香族二塩基酸、脂肪族一塩基酸、脂肪族二塩基酸、及びそのアルカリ金属塩から選ばれるいずれか1種若しくは2種以上を挙げることができる。
【0021】
芳香族一塩基酸及びそのアルカリ金属塩としては、安息香酸、ニトロ安息香酸、ヒドロキシ安息香酸などの安息香酸類、p−トルイル酸、p−エチル安息香酸、p−プロピル安息香酸、p−イソプロピル安息香酸、p−tertブチル安息香酸などのアルキル安息香酸、一般式RO−C64−COOH(RはC1〜C5のアルキル基)で表されるアルコキシ安息香酸、一般式R−C64−CH=COOH(RはC1〜C5のアルキル基またはアルコキシ基)で表されるケイ皮酸、アルキルケイ皮酸、アルコキシケイ皮酸、またはそれらのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩を挙げることができる。中でも、安息香酸、p−トルイル酸、及びp−tertブチル安息香酸は金属、特には鉄系、アルミニウム系金属に対して優れた腐食防止性を有しており、これらの少なくとも1種が含まれていることが望ましい。
【0022】
また、芳香族二塩基酸及びそのアルカリ金属塩としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、またはそのナトリウム塩やカリウム塩などを挙げることができる。
【0023】
脂肪族一塩基酸及びそのアルカリ金属塩としては、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、ステアリン酸、またはそのナトリウム塩やカリウム塩などを挙げることができる。
【0024】
脂肪族二塩基酸、またはそのアルカリ金属塩としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピペリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン2酸、ドデカン2酸、ブラシル酸、およびタプチン酸、またはそれらのナトリウム塩、カリウム塩などを挙げることができる。中でもスベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン2酸およびドデカン2酸は、上記性能に優れるという点でより好ましい。
【0025】
カルボン酸類、またはそのアルカリ金属塩は、0.1〜20質量%の濃度範囲で使用されるのが好ましい。カルボン酸類、及びまたはそのアルカリ金属塩の濃度が0.1質量%よりも少ない場合、冷却系統の気相部及び液相部において、十分な腐食防止性が得られず、20質量%よりも多い場合には、20質量%を越えた分だけの効果が期待できないため、不経済となる。
【0026】
本発明の組成物は、さらにアルカリ土類金属により構成される化合物を含む形態を採ることもできる。上記化合物としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、或いはラジウムといった金属により構成されるものを挙げることができ、これらの化合物から選ばれるいずれか1種若しくは2種以上の混合物という形態で用いることができる。腐食防止性に優れる点でより好ましくは、該化合物を構成する金属がマグネシウム、カルシウム及びストロンチウムからなるものである。これらの化合物は、腐食防止性に一段と優れていて、しかも取り扱い性及び入手容易性に優れている。
【0027】
上記マグネシウムにより構成される化合物の具体例としては、例えば酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、チタン酸マグネシウム、タングステン酸マグネシウム、燐酸マグネシウム、燐酸二水素マグネシウム、燐酸マグネシウムアンモニウム、クロム酸マグネシウム、過マンガン酸マグネシウム、弗化マグネシウム、沃化マグネシウムなどの無機酸のマグネシウム化合物、蟻酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、プロピオン酸マグネシウム、酪酸マグネシウム、吉草酸マグネシウム、ラウリン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸マグネシウム、グルタミン酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、琥珀酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウム、酒石酸マグネシウム、酒石酸水素マグネシウム、マレイン酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、蓚酸マグネシウム、マロン酸マグネシウム、セバシン酸マグネシウム、安息香酸マグネシウム、フタル酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、マンデル酸マグネシウムなどの有機酸のマグネシウム化合物等を挙げることができる。
【0028】
カルシウムにより構成される化合物の具体例としては、蟻酸カルシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、酪酸カルシウム、吉草酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸カルシウム、グルタミン酸カルシウム、乳酸カルシウム、コハク酸カルシウム、リンゴ酸カルシウム、酒石酸カルシウム、マレイン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、マロン酸カルシウム、セバシン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フタル酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、マンデル酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、過マンガン酸カルシウム、クロム酸カルシウム、フッ化物、ヨウ化カルシウム、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、チタン酸カルシウム、タングステン酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸二水素カルシウムなどを挙げることができる。
【0029】
ストロンチウムにより構成される化合物の具体例としては、例えば酸化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、塩化ストロンチウム、弗化ストロンチウム、ヨウ化ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、タングステン酸ストロンチウム、燐酸ストロンチウム、燐酸二水素ストロンチウム、蟻酸ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、プロピオン酸ストロンチウム、酪酸ストロンチウム、吉草酸ストロンチウム、ラウリン酸ストロンチウム、ステアリン酸ストロンチウム、オレイン酸ストロンチウム、グルタミン酸ストロンチウム、乳酸ストロンチウム、コハク酸ストロンチウム、リンゴ酸ストロンチウム、酒石酸ストロンチウム、マレイン酸ストロンチウム、クエン酸ストロンチウム、蓚酸ストロンチウム、マロン酸ストロンチウム、セバシン酸ストロンチウム、安息香酸ストロンチウム、フタル酸ストロンチウム、サリチル酸ストロンチウム、マンデル酸ストロンチウムなどを挙げることができるが、その中でも、特に硝酸ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、燐酸ストロンチウムを挙げることができる。
【0030】
アルカリ土類金属により構成される化合物は、十分な腐食防止性を確保するため、0.0001〜5質量%の濃度範囲で使用されることが望ましい。この範囲よりも化合物の含有量が少ない場合、十分な腐食防止性を得ることができず、この範囲よりも化合物の含有量が多い場合には、範囲を上回る分だけの効果が期待できず、不経済となるからである。
【0031】
また本発明の組成物は、アミン塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、及び亜硝酸塩を含有しない形態を採ることができる。これらの物質は、人体に有害な物質を発生させたり、沈殿を生じさせて腐食防止性を低下させたり、金属の腐食を促進させたりするなどの弊害を有し、好ましくないからである。
【0032】
尚、本発明の組成物には、上記成分のほかに消泡剤や着色剤、従来公知の腐食防止剤を含ませたりすることもできる。
【0033】
本発明の組成物は、水をベースとしており、これに上記成分が所定割合で添加される。また水に代えて、または水と共に、アルコール類、グリコール類、或いはグリコールエーテル類をベースとして使用することもできる。
【0034】
尚、本発明の組成物は、エンジンの品質検査の方法に応じて、水で希釈した後に冷却系統に使用したり、希釈しないでそのまま冷却系統に使用したりする使用形態を採ることができる。
【0035】
尚、本発明は、下記実施例に限定されるものではなく、「特許請求の範囲」に記載された範囲で自由に変更して実施することができる。
【実施例】
【0036】
下記表1には、好ましい組成物の例として、イオン交換水をベースとし、このベース中に安息香酸ナトリウム、ベンゾトリアゾール、2−ホスホノブタン−1,2,4トリカルボン酸、及びリン酸を含んだ実施例1、並びにベース中に安息香酸ナトリウム、硝酸ストロンチウム、ベンゾトリアゾール、2−ホスホノブタン−1,2,4トリカルボン酸、及びリン酸を含んだ実施例2を挙げ、比較としてベースのみからなるものを比較例1、ベース中に安息香酸ナトリウム、ベンゾトリアゾール、及びリン酸を含んだものを比較例2として示した。これら実施例1及び2、並びに比較例1及び2の各サンプル液について、気相部及び液相部に対する腐食防止性、並びにアルミ伝熱面に対する腐食防止性を評価した。その試験結果を表2及び表3に示した。
【0037】
尚、気相部及び液相部に対する腐食防止性は、#320の耐水研磨紙によって研磨した鋳鉄(サイズ90mm×13mm×2mm)を試験片とし、この試験片を上記実施例1及び2、並びに比較例1及び2の各サンプル液に1分間浸漬し、浸漬後の試験片を試験管に入れ、さらに試験管に試験片が半分程度浸かるように各サンプル液を入れた。その後、50℃、湿度100%の雰囲気下に24時間放置し、試験片の発錆状態を、○:発錆10%未満、△:発錆10〜50%、×:発錆50%以上の基準で評価した。
【0038】
アルミ伝熱面に対する腐食防止性の評価試験は、JIS K 2234 アルミニウム鋳物熱交換面腐食性に準拠して行い、試験濃度は、希釈しない原液とし、これに塩素イオン100ppmを加えて実施した。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
表2から明らかなように、ベースのみからなる比較例1の場合、気相部、液相部のいずれにおいても著しい発錆が確認された。これに対し、実施例1及び2の各サンプル液は、気相部、液相部のいずれにおいてもその評価は○であった。
【0043】
また表3から、アルミ伝熱面に対する腐食防止性については、比較例2の質量変化が−1.94mg/cm2であったのに対し、実施例1が−0.14mg/cm2、実施例2が−0.10mg/cm2と僅かな変化に留まっていた。
【0044】
以上の結果から、本発明の組成物が、エンジンの冷却系統に対し、気相部及び液相部において優れた腐食防止性を有すること、特には冷却系統をアルミニウムまたはアルミニウム合金によって構成したエンジンの冷却液として有効であることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相部及び気相部において優れた腐食防止性を有する一時防錆剤組成物において、
トリアゾール類、またはそのアルカリ金属塩と、2−ホスホノブタン−1,2,4トリカルボン酸、またはそのアルカリ金属塩とを含んでおり、
前記トリアゾール類、またはそのアルカリ金属塩が0.1〜20質量%、前記2−ホスホノブタン−1,2,4トリカルボン酸、またはそのアルカリ金属塩が0.0005〜1質量%の濃度範囲で使用されることを特徴とする一時防錆剤組成物。
【請求項2】
カルボン酸類、及びまたはそのアルカリ金属塩をさらに含んでおり、0.1〜20質量%の濃度範囲で使用されることを特徴とする請求項1記載の一時防錆剤組成物。
【請求項3】
カルボン酸類、及びまたはそのアルカリ金属塩が、芳香族一塩基酸、芳香族二塩基酸、脂肪族一塩基酸、脂肪族二塩基酸、及びその塩から選ばれるいずれか1種若しくは2種以上であることを特徴とする請求項2記載の一時防錆剤組成物。
【請求項4】
アルカリ土類金属により構成される化合物をさらに含んでおり、0.0001〜0.1質量%の濃度範囲で使用されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の一時防錆剤組成物。
【請求項5】
アルカリ土類金属により構成される化合物が、マグネシウム化合物、カルシウム化合物およびストロンチウム化合物の中から選ばれるいずれか1種若しくは2種以上であることを特徴とする請求項4記載の一時防錆剤組成物。
【請求項6】
アミン塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、及び亜硝酸塩を含有しないことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の一時防錆剤組成物。

【公開番号】特開2008−248327(P2008−248327A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91714(P2007−91714)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000106771)シーシーアイ株式会社 (245)
【Fターム(参考)】