説明

一検体用多重培養装置

【課題】長期培地自動交換、効率的な培養方法、コンタミネーション、感染症等の対策に閉鎖系培養装置の開発、医療機器としての開発にモニタリングの遠隔操作を課題とした開発。
【解決手段】閉鎖系培養装置の培養容器蓋部分にダイヤフラムポンプ機能を装着、培地注入口は培養容器底部中央部に、湧出培地を四方に分散させるため、整流板を取り付け、排出口は培養容器上部に設け、長期培地交換と多孔体足場シートを回転させる多重培養法で、培養細胞シート面に付着した浮遊老廃物、沈下老廃物を離脱させ、培地内を回転移動する事で、培地との接触効率を促進させる。細胞培養状態をカメラ、pH測定装置を取り付け遠隔操作でモニタリングを可能にした一検体用多重培養装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体適合材料で構成した一検体用多重培養装置で細胞の増殖、分化を促し、生体組織の再生を誘導する培養装置と内視カメラ、pH測定装置を遠隔操作で培養状況の観察を行い、細胞培養を効率良く培養する方法を確立し人体の欠損組織の修復等に必要な細胞や組織を生体外で培養を行う培養装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体組織の再生誘導には二つの方法がある。一つは細胞を生体に直接移植する細胞移植治療であり、もう一つは、生体適合材料で構成した培養装置を利用して細胞の増殖、分化を促し、生体外で生体組織の再生を誘導する方法である。
【0003】
本発明は生体外で細胞・組織培養を培養装置で行う技術であり、培養装置は閉鎖系ヒト細胞培養装置や自動培地交換方法の安全性を保証できる培養装置の開発が重点課題とされている。
【0004】
通常の培養皿や培養フラスコ等、汎用的な培養容器による操作は、医師、研究者等の専門知識や熟練した技術が必要であり、人件費や管理費等が高騰し、再生培養物の単価は高価となり、医療事業の実現としては極めて困難な価格形態となる。
【0005】
細胞や組織の培養には培養液が用いられ、細胞・組織を収容する培養容器内の培養液中で細胞・組織を成長させるには培養液から細胞・組織に栄養分や酸素等を供給し、栄養分の供給や老廃物等の除去により、細胞・組織の成長を促進するため、培養液の交換は細胞・組織の培養に極めて重要な事柄であり広く自動化が求められている。
【0006】
荷重系軟骨(半月板等)の生体外培養に力学加圧刺激を負荷させる装置として、米国のハーバード大学の研究グループや東京大学の研究グループ(文献3)は静水圧培養装置を開発しており、静水圧刺激の培養システムとしてポンプで培地を介して圧力負荷を軟骨細胞への刺激負荷例を示しており、培地に負荷をかけ関節部内圧力に相当する圧力を負荷するという方法で軟骨細胞への刺激負荷例を示しており培地の交換もプランジャーポンプで行っている。
【0007】
血管培養の実験用装置については傾斜培養装置についての例が示されており、静脈血管内皮細胞を播種したガーゼと線維芽細胞を播種したガーゼを重ね、ガーゼを平板にのせ両端に培地の貯留槽が設けてあり、上側の培地槽にガーゼを垂らして先端を培地に湿るようにすると、毛管現象で端からガーゼは徐々に濡れていき、培地は下側の培地槽に流れ込み、この下側の培地槽に貯まった培地をポンプで上側の培地槽に戻し、連続的に培地を供給する実験装置もある。
【0008】
培養液の交換は細菌による感染症や汚染を防止するために、密封容器や閉鎖系循環回路が用いられるようになり、ベローズを用いた(特許文献1)、(特許文献2)の培地交換法やプランジャーポンプを用いた(特許文献3)やチューブポンプを用いた(特許文献4)培地交換法、さらに培養液の流れによる影響を防ぐためにチャンバー内を改良し整流にする(特許文献5)、モニタリングとしては培養容器内をカメラで撮影、培地のpHの測定にpH試薬を用いて確認する(特許文献6)方法等が有る。
【0009】
培養液を灌流させ培養液用流路構造を有す細胞培養チャンバーを積層する方法(特許文献7)や、細胞培養担体を挟持して細胞培養用カセット(特許文献8)もある。
【0010】
【特許文献1】特開平4−356184
【特許文献2】特開2004−89138
【特許文献3】特開2004−350557
【特許文献4】特開2006−264647
【特許文献5】特開2007−20493
【特許文献6】特開2007−110932
【特許文献7】特開2002−316136
【特許文献8】特開2007−167002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記のような従来技術の問題点を解決するとともに、NEDOのロードマップに示されている、再生医療培養装置として、小型化(研究機関における普及)、低価格装置の開発、カセット型培養容器の実用化、密封容器の開発、培養期間短縮化等が培養装置の開発指針として明確に示されている。さらに厚生労働省は再生医療用培養装置としては一検体一装置であること、検体の培養細胞、培養液と接した部品は廃棄処分とする事が望ましいとしている。
【0012】
本発明は一検体用多重培養装置で他検体の培養細胞と共有する部品等は無く、他検体の培養細胞とのコンタミネーションを未然に防ぎ、検体の培養細胞と接触した部品はすべて廃棄処分可能である。
【0013】
培養部は閉鎖系装置で細菌の侵入を防ぎ、培養部の組み立てをクリンベンチ内で滅菌作業を行い、さらに滅菌された密閉恒温ケース内に培養部装着もクリンベンチ内で行う。閉鎖系培養部と密閉恒温ケースで二重閉鎖を行った後、クリンベンチから取り出し、駆動装置付きコントローラー部を装着した二重閉鎖培養装置。
【0014】
再生医療の研究開発には内務省、文部科学省、経済産業省、厚生労働省の4省によっても推進されており、細胞培養システムの開発には、閉鎖系・全自動細胞培養装置の開発、防湿パッキンしたカメラ+遠隔操作技術による自動モニタリング装置の開発と明確に開発方向が示されており、こうした指針を本発明は解決すべき重点課題とした。
【0015】
本発明の開発の課題について発明者らは協議を重ね下記、記載事項を定めた。
1・自動培地交換(培養細胞に培地の流れによる侵害影響を未然に防ぐ)
2・効率的な培養方法(効果的な養分・酸素等の補給方法、培養時間の短縮)
3・感染症等の対策(献体の培養細胞・培養培地と接したパーツの廃棄)
4・閉鎖系・全自動培養装置
5・モニタリングの遠隔操作
これらの課題を解決するための第一段階として自動培地交換から着手した。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る培地交換方法は従来技術と全く異なった発想から独自の培地自動交換方法を開発した。培養容器蓋部分にダイヤフラムを取り付け、培養容器底面中央に培地注入口を設け、さらに少し間隔を開けた位置に整流板を装着し、上部排出口はダイヤフラム下横方向に設け、ダイヤフラムに直動アクチュエーターとジョイントで連動可能な状態に連結し、直動アクチュエーターを伸縮させることで培養容器内の培養培地に加圧、減圧を行い培地の排出、注入を行い培地を自動交換する。
【0017】
培地交換方法は手作業によるスポイド交換からピペットノズルで培養液を吸引、注入を繰り返す方法や、培養容器にプランジャーポンプ、遠心ポンプ、チューブポンプ、ダイヤフラムポンプ等を利用した方法が発表されているが、流入量や培養容器の形状によっては培養細胞を流出させ、また培地流による刺激が細胞に加わる事もあったが、培地交換を行う最も重要課題は培養中の細胞に無用なストレスを与えないことである。
【0018】
本発明の培地交換方法は培地排出時は培地注入側の逆流防止装置は閉じ、培地注入時は培地排出側の逆流防止装置は閉じており、培地の流れは外部ポンプからの注入時のように培養容器内の注入口から排出口までの流れは発生しない。本発明の培地交換方法は排出時は培養容器内にダイヤフラム挿入体積分の上部培地が排出され、底部の培地は流出する事はない。注入時はダイヤフラムの上昇体積分を注入するが、注入時は排出側の逆流防止装置は閉じており、培養容器内底部から注入されるが培地が排出口から流れ出ることはない。
【0019】
さらに培養容器内に湧出した培地は整流板にぶつかり四方に分散され、分散された注入培地は注入量分だけ培養容器内の培地を押し上げる。排出時は培養容器内培地は加圧され、注入培地はその場に留まり上部培地は排出され、注入培地は下方から上方に層になって移動する培地注入法で、従来の培地注入法とまったく異なった培地注入法となった。
【0020】
直動アクチュエーターは回転駆動(モーター)を回転カムとクランプで直動に変更する事で、直動アクチュエーターの形状が小型化でき、さらに回転カムとクランプの連動固定位置を変え、回転カムの中心からの固定距離でダイヤフラムの振幅を可変とし、培養容器内の培地交換量を変える事ができる。
【0021】
直動アクチュエーターのコントロ−ルの方法としては、電流をパルス的にON,OFFを繰り返し電流を間欠的に流し、ONの時間OFFの時間を調整する事で直動アクチュエーター(モーター)の回転時間の調整を行い、クランプの上下時間をカムの一回転時間で決定し、ダイヤフラムの振幅決定と一回転のカム駆動時間の決定を行う事で、一回転の駆動時間による培地交換量を決定する。
【0022】
上記、ダイヤフラムの振幅とクランプの直動時間の調整と、更に一日の直動アクチュエーターの駆動時間をタイマーで設定すると、一日の培地交換量が決定でき、アクチュエーターの振幅の幅、クランプ上下運動の時間設定と一日の駆動時間を決定する事で、1日の培地交換量が決定でき、さらに駆動日数を決めれば培地交換を長期間の自動交換が可能である。
【0023】
培養皿等で静置培養を行う場合、細胞に培地からの栄養、酸素等の供給は細胞シート上面からの一方向で行われ、静置培養の場合は老廃物等で新鮮な培地と培養細胞が効果的に栄養、酸素等を取り込んでいるとは言えない。
【0024】
重層培養についても、多孔体シート装着した足場の表裏に細胞を播種し、表面、裏面の二重培養が行われているが、裏面の培養細胞面に浮遊老廃物が付着し、培養液からの栄養分、酸素等の供給が阻害される。この浮遊老廃物を現在は培養容器の培養液を完全に抜き取る事で処理されているが、閉鎖系培養容器内では浮遊老廃物の排出は極めて困難である。
【0025】
本発明はその浮遊老廃物の処理に多孔体シート足場を反転させ、裏面を表面に反転させる事で浮遊老廃物を離脱させ、さらに足場固定部を極めて緩やかに回転させ、培養細胞と培地との接触効率を高め、栄養、酸素等の供給を潤沢にし、細胞培養の培養効率を高め培養期間の短縮化が望める。
【0026】
培養装置に直接ダイヤフラムポンプを備えたことで、本発明の自動培養装置の培地交換構造が極めてシンプルとなり、配管も培地槽から培養容器へ、培養容器から排出用培地槽への配管のみで、外部ポンプへの配管が不要で極めてシンプルな構造の培養装置である。
【0027】
シンプルな培養装置の培地槽、培養容器、排出用培地槽と配管、付属品は、すべて廃棄可能であり生体適合材料で柔軟性、耐久性を備えた合成樹脂製のバッグ(袋)を培地槽、排出用培地槽を使用することで、本発明の培養装置は培地が灌流する部分を、すべて密封状態が可能で完全閉鎖系培養装置となる。
【0028】
前記記載の閉鎖系培養装置であると同時に、一検体用多重培養装置であり、培養容器、培地槽、排出用培地槽の配管、逆流防止装置等の部品すべてが、一検体用装置であり、検体の培養細胞と他検体の培養細胞とがコンタミネーションの危険性は無い。
【0029】
培養容器から排出された培地のpH測定に、培地が排出側逆流防止弁を通過後の配管途中にpH測定用のセンサーを装着する。培養に使用された培地の状態を測定するセンサーからの信号を測定装置に送り、信号を分析、記録を行い、培養細胞の培養状態を遠隔操作で管理する。
【0030】
pH測定装置のセンサーを培養装置から逆流防止装置と排出用培地槽の配管途中に装着する事は、装着センサーの影響を培養容器内の細胞に影響を与えずに、pHの測定を遠隔操作が可能である。
【0031】
内視カメラを培養容器の側面に穴を開け、培養容器に直接、内視カメラを装着できるよう構成した生体適合透明材料(アクリル、ガラス等)のカメラ装着具を培養容器側面に装着し、内視カメラを生体適合透明材料(アクリル、ガラス等)のカメラ装着具に装着、培養容器内の細胞培養状態の情報をパソコンで、画像、解析、記録を行い培養容器内細胞の培養状況の情報をパソコンで遠隔操作を行いモニタリングを行う。
【0032】
培地の還流配管、灌流配管途中の注入配管の注入側逆流防止装置と培養容器注入側配管途中にチューブクランプを取り付け、培養容器排出側配管の排出側逆流防止装置までの途中にチューブクランプを付け、培養後に両方のチューブクランプを閉じ、逆流防止装置側のチューブを切断、2カ所の駆動装置のジョイントを外すと培養容器は閉鎖状態で培養装置から外せ、培養細胞を閉鎖培養容器内のままで手術室に、他の医療施設等や遠隔地の場合は滅菌恒温ケースに入れ移動、輸送が可能である。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る培養装置は小型でシンプルな構成で閉鎖系培養装置として長期間自動培地交換が行え、閉鎖環境で多孔体足場シートを回転させることで、表裏2面の重層培養も可能であり、培養容器に直接、内視可能なカメラを装着、pH測定装置のセンサーも備え、遠隔操作でモニタリングが可能で細胞・組織の分化、増殖を促進し細胞・組織の形成に効果的に働く可能性を秘めた培養装置である。
【0034】
上記、細胞自動培養装置は再生医療の現場で、有効性の確認等の研究が必要であるが、閉鎖系培養装置、長期培地交換、回転培養方法等の自動操作が可能で一検体用多重培養装置としてコンタミネーション、感染症等に細心の注意を基に開発を行っており、再生医療早期実現のサポートに十分可能な培養装置と想定する。
【0035】
培養施設でのCPC室の施設建造費や維持費は大変な費用がかかり、この施設費、維持費が直接、医療費に加算され、医療費は高騰となり、価格的にも問題が発生するだけでなく、将来、一般の病院への普及にも、大きな弊害となる。本発明の培養装置は培養部と密閉恒温ケースの二重閉鎖培養装置であるために、CPC室以外でも培養が行える可能性が高く、極めて有益な培養装置になりうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明に係る培養装置について具体的に実施例で説明するが、これら実施例が本発明を限定するものでない。
図1は本実施形態の還流式培養装置全体の構成図で、請求項1に記載した還流(循環)培養法である。培地を還流させるために請求項2に記載した方法で炭酸ガスインキュベーター1内の炭酸ガス等を排出培地に取り込み再利用しなければならない。培地を還流させる必要性は、生体の血流を生体外で再現するには、1分60回、24時間、3週間の培養期間、連続的に拍動流で供給しなければならない。その為に培地を循環させる還流自動培養装置が必要で、炭酸ガスインキュベーター1内に設置した培養部と駆動部の遠隔操作を行うコントローラー部である。
【0037】
請求項3に記載した培地を灌流させる培養装置で、培養部を閉鎖系とし、滅菌した恒温ケース内で培養を行い、恒温ケースを開閉せずに長期間培地交換を自動的に行う。直動アクチュエーター13でダイヤフラム23を上下させ、培養容器内を培地で充満させ、培養容器内の培地を加圧、減圧を行い、振幅、駆動速度、駆動時間を設定、培地の交換量を決定する。
【0038】
請求項3に記載された灌流式閉鎖系培養装置は培地槽11から培地を汲み出し、培養容器10を通過後に排出用培地槽12に排出される、その為に培地槽11の内部は減圧され、排出用培地槽12は排出用培地が注入され、排出用培地槽はだんだんと加圧状態になり背圧がかかり、圧力のバランスが崩れ培地の流れに悪影響を与える為、請求項4、請求項5に記載された方法で、培養装置全体の圧力バランスをとる。
【0039】
培養容器内の構造による培養容器内の培地注入法の特徴を図面4の培養容器断面図にて説明をする。培養容器上部排出口32は培養容器上部のダイヤフラム下方横に、培地注入口は培養容器底面中央注入口48に設け、すぐ上部に整流板24を設置したことで、培地注入時の湧出培地は整流板24で培地を四方に分散し、排出時は加圧され注入培地は底部にその状態で停止する。次の注入時に培養容器底面中央注入口48から同様に湧出され、先に注入された培地を押し上げる。
【0040】
前記記載された培地の流れを試作機での実験写真、図18、図19、図20にて説明する。直動用モーターは1分5回転、1回転培地注入量2.5cc、足場回転モーターは1分1回転で実験を行う。実験結果、培地注入口から吐出された培地は整流板24で四方に分散され培養容器底部に留まり、注入を続けると培地は下層から上方に層になって上昇する注入法となり非侵襲性の極めて穏やかな培地注入法となった。
【0041】
実験法は、培地槽から透明水を培養容器10内に満たした後、透明水を着色し培養容器10に注入。図18では整流板24まで、図19では足場より下面まで、図20では足場より上部まで注入、ここまで連続的に着色培地の注入を行う。培地は層になって注入される。
【0042】
図20で培地の注入を止め、回転足場外径20ミリ、足場の回転を1分1回転で10分間の駆動を行い足場による培地の攪拌影響の確認実験。図20の状態にまったく変化がなく培地の撹乱はなく、培地注入、足場回転による培養細胞への影響は極めて微弱と想定される。
【0043】
回転アクチュエーター14で細胞を播種した回転足場の回転速度を調節、回転停止等の設定を行う。カメラを培養容器10の側面に固定し、内視カメラからの情報を操作端末機(パソコン)4で 培養細胞の培養状況の映像、解析、記録を行い、pH測定センサーの情報をpH測定機に記録、分析を行う。モニター装置付き一検体用多重培養装置。
【0044】
培地の自動交換に付いて図1、図3を用いて詳細な説明を行う。
回転アクチュエーター(モーター)の回転数を1RPM〜70RPMの範囲のギヤードモーターを使用し、回転動力をカム20とクランプ21で上下直動運動に変え、クランプ下降時はダイヤフラム23を培養容器10内へ加圧、挿入させ、培養容器内の培地を排出させる。クランプ21上昇時は、ダイヤフラム23を上昇させ、培養容器10内を減圧、培養容器10内に培地を吸引する。
【0045】
培地量の決定は、クランプ21の直動運動を伝えるダイヤフラム23の振幅の幅とクランプ21の上下運動の1行程の時間と直動アクチュエーター13の駆動時間を決定することで上下運動の行程数が決定できる。
【0046】
培地量の自動交換の決定には、ダイヤフラム23の振幅とアクチュエーター(モーター)の回転制御にある。振動幅の決定にはカム20とクランプ21の固定位置にある、カム20の回転運動の中心からの位置で決まる。中心から4ミリの位置に固定すると振幅は8ミリとなる。
【0047】
直動アクチュエーター13に流す電源をON、OFFのパルス電流として流す。ONの時間を短く、OFFの時間を長くすると直動アクチュエーター13の動きは遅くなり、クランプ21の1行程の時間がかかり遅くなる。またONの時間を長く、OFFの時間を短くするとクランプの1行程が早くなる。
【0048】
試作機の図14の振幅を8ミリに決め、5PPMのアクチュエーター(モーター)を直動アクチュエーター13に電流を流し培地量を計測すると、1行程で2.5CCの培地を排出(交換量)し、1分間で12.5CCとなった。ONの通電時間0.5秒、OFFの切断時間0.5秒のサイクルを作り1RPMのアクチュエーター(モーター)で実験をする。2分で5行程になり、1分間の排出量6.25CCになった。
【0049】
実験結果から0.5秒の通電時間での交換量は6.25÷60で約0.104CCになり、パルス回路のONの通電時間を0.5秒、OFF停止時間を20秒と長くするサイクルで行うと、1分で約0.42CCとなり、さらにタイマーで一日の通電時間を設定することで一日の培地交換量が決定できる。1分0.42CCの時、一日の通電時間を10分に設定すると4.2CCの培地交換量となり、培養期間中培地交換が持続できる。培地注入については極めて微量な培地注入量になり、さらに整流板24で4方に分散され非侵襲性の極めて穏やかな培地の交換が可能となる。
【0050】
図5に記載された足場固定部26に多孔体足場シートをのせ、足場固定用0リング28で足場固定部26に固定し、細胞を播種後に培養容器に蓋部分を固定する。さらに足場支持体27を装着した回転足場固定具25を培養容器10の側面に装着、足場支持体27と回転アクチュエーター14のシャフトをジョイント19で連結し回転させる。
【0051】
回転アクチュエーター用コントローラー3で培地を満たした培養容器10内を回転足場固定具25を回転させ、細胞培養の裏培養面を表培養面と回転により表裏を入れ替え、裏面培養面に付着した浮遊老廃物を離脱させる。
【0052】
回転足場固定具25を回転させることで、培養容器10内の培地内を回転移動し、細胞培養面に新鮮な培地と接触させ、栄養、酸素を供給する。また足場固定部26を何段にも重ねることで、小さな培養容器10を有効的に活用できる。
【0053】
請求項16に記載された回転メッシュ円柱培養具29については、図7で説明する。培地通過可能な生体適合材のメッシュで円柱状に構成した。メッシュ円柱部内にアテロコラーゲンに細胞を播種した培養物や、3次元多孔体足場に細胞を播種した3次元培養物を挿入し、回転培養を行う。接着系細胞とメッシュとの接触面の位置を回転で変えることで接着系細胞を接着させず、培地からの栄養、酸素等の供給を3次元体の全方向から行う。
【0054】
足場回転速度のパルス波形はボリューム調整可能とし、回転速度を1分間70回転から1時間1回転の可変可能とし、図20の実験は1RPMで行い、培地の撹拌は殆ど発生はなく、回転による培地からの圧力等による培養細胞に悪影響は発生しないと思われる。
【0055】
図1、図2に記載の一検体用培養装置の培養容器10の内視カメラ装着具18に内視カメラを装着し、培養容器内部を撮影する。撮影時には回転足場固定具を回転させ、培養シートがカメラと正面にあるいは斜めに調整可能で、内視カメラに付けられた光源からの映像、反対側側面に取り付けられた光源からの透過量や細胞密度の解析を行い、過去の顕微鏡画像等の資料との比較を行う。
【0056】
さらに培養装置に取り付けられた光源は、一点のみでなく多くの部位に取り付ける事も可能であり、光源の波長も検討を重ね、撮影された画像の解析を行い、カメラ操作端末機の遠隔操作で細胞画像処理や画像データを取り込み、培養の状況分析、培養の進行解析、培地の流量、足場回転を決定する。
【0057】
pH測定器のセンサーを培養容器上部排出口32側の逆流防止装置15から排出用培地槽12までの配管途中にpHセンサー挿入容器17にpHセンサーを入れ、使用済み培地のpH変化量をpH測定機5に自動的に情報を送り、pH測定機で測定された結果を分析をして培地注入量を決定する。
【0058】
請求項20に記載された細胞播種治具33は回転足場に細胞播種方法として、図7、図8で説明する。図8は培養容器断面図、細胞播種治具断面図で足場固定部26を培地で漬した状態で、培養容器に細胞播種治具33を挿入、培養容器内径と細胞播種治具33とは外径に装着された気密用0リング35で密封され、足場固定部に細胞播種治具33を挿入接触させ、細胞混濁培地34を細胞播種治具33内部に注入、注入細胞混濁培地34は細胞播種治具33から培養容器10内に流れ出る事は無く、細胞は足場シートに沈下接着する。
【0059】
請求項21は請求項3の灌流式培養装置で、図9の培養部をクリンベンチ内でパーツを滅菌作業で組み立て、培地槽11に培地を注入、足場固定部26の足場シート44に細胞播種治具33で細胞を播種後に、図9に記載した状態に閉鎖系培養部を組み立てる。
【0060】
図9に記載された閉鎖系培養部をクリンベンチ内で図10に記載されたように、密閉恒温ケース36にカム20とクランプ21をジョイント19で連動固定、足場支持体27をジョイント19に固定することで培養部と密閉恒温ケース36で二重密閉とする。
【0061】
二重密閉した培養部をクリンベンチから取り出し、図11に示したように、密閉恒温ケース36から外部に出された駆動装置付きコントローラー部37とのコントローラー用ジョイント38で固定する。
【0062】
請求項22に記載された逆流防止装置15について図12と図13で説明する。注入口側と排出口側とに分けられ、図13は逆流防止装置の断面図で逆流防止用排出口40につながった補助排出口41を設け、球体弁42は比重の異なる、生体適合材の樹脂製、セラミック製、金属製で製造する。また注入口径を変えることでも培養容器に加える圧力を変化させることが可能である。注入口側の内部構造はすり鉢形状部43にする。
【0063】
逆流防止用排出口40側に補助排出口41を設けた事は、比重の軽い樹脂製の球体弁42を使用すると培地注入の勢いで浮き上げられ、球体弁42が逆流防止用排出口40を閉じて培地の流れに弊害を発生させることがあり、その解決策として補助排出口41を設けた、さらに逆流防止用注入口39をすり鉢形状部43とし、球体弁42が必ず逆流防止用注入口39に落ち込み逆流防止用注入口39を塞ぐ。
【0064】
逆流防止装置15の球体弁42の比重の異なる材質を利用する事は、培地に加える圧力を変化させる為で、比重の大きい球体弁42の場合はダイヤフラム23から培地に加える圧力が大きくなる。排出口径を変えることで、同じ重さの球体弁42でも培養容器内培地に加える圧力は可変となる。これらの圧力の選択は、動脈血管、荷重系軟骨等の培養に必要となる。この培養装置の重要な点は、逆流防止装置15の精度と培地槽11と排出用培地槽12の圧力差を発生させないことで、培地交換量を正確に行う事が可能となる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例に基づいて詳しく説明するが、本発明を限定するものではない。
図1は本発明の還流(循環)式培養装置の全体構成図で培地槽11から培養容器10へ、培養容器10から培地槽11の還流系培養装置の基本である。培地の交換は培養容器10に装着されたダイヤフラム23に直動アクチュエーター用コントローラー2で駆動時間、駆動回数を設定し直動アクチュエーター13を駆動しダイヤフラム23を上下させる。下降時は培養容器10内にダイヤフラム23の下降挿入体積分培地を排出、上昇時はダイヤフラム23を引き上げ培養容器10の増加体積分の培地を吸引をする。
【0066】
培養法は足場固定部26に足場シート44を固定し、足場シート44に細胞を播種し、回転アクチュエーター14にジョイント19で連動固定し、回転重層培養を行う。培地の流れは、培地槽11から逆流防止装置15を通り培養容器10に吸引され、排出時は培養容器10から逆流防止装置15を経て培地槽11に還流する。
【0067】
細胞培養後の培地を再利用の為、炭酸ガスインキュベーター1内の炭酸ガス、酸素等を培地に取り込む必要があり、請求項2に記載した方法で使用培地に炭酸ガスインキュベーター1内の気体との接触面を増加させ使用培地に炭酸ガス等を取り込み培地を循環させる。
【0068】
図2は本発明の灌流式培養装置の全体構成図で請求項3に記載された密閉恒温ケース36内での培養も可能で培地槽11から培養容器10に、培養容器10から排出用培地槽12に培地を灌流させ、培養部は閉鎖系培養装置となる。
【0069】
図1、図2の循環式、灌流式とも、培地量の決定には、直動アクチュエーター用コントローラー2から直動アクチュエーター13の上下移動距離を設定しダイヤフラム23の振幅を決め、ダイヤフラム23の振幅設定と一日の駆動時間を設定し、培養日数を決定する。
【0070】
図5の回転足場固定具25の足場固定部26に足場シート44を生体適合材の足場固定用0リング28で足場シート44を固定。回転足場挿入口から培養容器10内に挿入固定、細胞播種後に、足場支持体27と回転アクチュエーター14のシリンダーとジョイント19で連動固定する。回転アクチュエーター用コントローラー3で回転速度、一日の回転数の設定を行い、培養日数を決め回転アクチュエーター14に指令し、自動培養を行う。
【0071】
培養中、内視カメラを内視カメラ装着具18に固定する。内視カメラからの情報をカメラ操作端末機(パソコン)4に送り、撮影、解析、分析、記録等の処理を遠隔操作で行い、培養容器10内の細胞・組織の培養状況を観察する。
【0072】
培養容器10に内視カメラ装着反対側等に取り付けられた光源を利用して培養シートの光の透過率や反射率等、また光源のサイクルを変え、さらに回転足場固定具25を回転させ色々な方面からの映像を解析する。
【0073】
pHセンサー挿入容器17にpHセンサーを挿入、培養済み培地のpHを測定し、情報をpH測定機5に送り、pH測定の結果、培養状態を分析。
【0074】
図3は直動アクチュエーター13(回転)をカム20とクランプ21で直動運動に変える説明図面で、カム20とクランプ21を固定するクランプ固定位置22で、ダイヤフラム23の振幅を変えることができる。
【0075】
図4は培養容器10の断面図で培養容器の特徴を説明する。クランプ21の上下運動をクランプ安定具46を通過させ、ダイヤフラム23に伝える。クランプ安定具46はクランプ21の上下振幅に応じクランプ安定具46を上下安定具高さ調整ネジ47で調節する。
【0076】
ダイヤフラム23の上昇時は、培養容器底面中央注入口48から培地が注入され、整流板24で四方に分散し、培養容器上部排出口32に培地は層になって上昇する。足場固定部26に足場シート44を固定した足場支持体27をジョイント19で回転アクチュエーター14に固定させ、足場固定部26に固定した足場シート44を回転させる。
【0077】
図5は足場固定具25で足場固定部26に足場シート44を足場固定用0リング28で固定する足場支持体27の説明図。
【0078】
図6はメッシュ製回転円柱培養具29でメッシュ円柱部30内に軟骨細胞を播種したアテロコラーゲンや3次元多孔体足場を挿入し、回転培養を行い四方から培地と接触させる。
【0079】
図7、図8は本発明の培養容器10の断面図と回転足場固定具25に足場シート44を固定し、細胞を播種する細胞播種治具33の説明図である。
【0080】
培地を培地注入線まで入れ、細胞播種治具33を培養容器内10内に挿入、培養容器内面と細胞播種治具33の外径と装着された気密用0リング35で密封状態になり、細胞播種治具33内に細胞混濁培地34を注入、注入した細胞混濁培地34は細胞播種治具33から流れ出る事はなく、細胞は沈下し足場シート44に接着する。
【0081】
図9は灌流式培養装置の培養部で、培養部は完全閉鎖系培養部として組み立てる。
【0082】
図10は図9の閉鎖系培養部を密閉恒温ケース36内に挿入、ジョイント19で固定した図である。
【0083】
図11は図9の閉鎖系培養部を密閉恒温ケース36内に挿入した密閉恒温ケース36と駆動装置付きコントローラー部37をコントローラー用ジョイント38で固定した一検体用多重培養装置の完成図。
【0084】
図12、図13は本発明の逆流防止装置15で、球体弁42は生体適合材の樹脂、セラミック、金属等で、培養物により比重の異なる球体弁42を選別使用する。培地循環に抵抗を少なくする場合は比重の小さい樹脂製の球体弁42を利用すると、樹脂製の球体弁は比重が小さいために培地に押し上げられ、逆流防止装置15の逆流防止用排出口40を塞ぐ場合があり、培地の流れを止める事があった。その為に逆流防止用排出口40に接した補助排出口41を設けた。
【0085】
逆流防止装置15内の球体弁42の密度を変えた球体弁の利用や逆流防止用注入口39の口径を変えることで、培養容器10内の圧力を変えることができる。たとえば排出側逆流防止装置の逆流防止用注入口39の口径を注入側逆流防止装置15の逆流防止用注入口より小さくすれば、培養容器10内の圧力は注入時より排出時の圧力が大きくなる。
【0086】
本発明の閉鎖系培養装置の重要点は、培地槽11と排出用培地槽12との圧力バランスと逆流防止装置15の精密度である。循環配管の内径は4ミリ程度で逆流防止装置15は、従来の産業用に比較して極めて小型であり、専用の逆流防止装置15が必要で、弁も球体弁42を使用し、球体弁42に逆流防止用排出口40から圧力を受ければ、すり鉢形状部43から逆流防止用注入口39へ落ち確実に逆流防止用注入口39を塞ぐ。
【0087】
図18、図19、図20は本発明の実験装置での培地注入状態の写真で、培地が層になって上部に押し上げられている実験写真。本発明の最も重要な培地注入法である。
【0088】
図21は培養後に培養組織を目的の場所に移動する方法で、チューブクランプ16を閉じ、培養容器10を密封状態とし、培養容器10とクランプとの反対側チューブを切断し、培養容器全体を密封状態で目的の場所に移動。目的場所が遠隔地である場合は、密封培養容器を恒温ケースに入れ、密封状態で移動可能とした。
【産業上の利用可能性】
【0089】
再生医療は夢の医療として、1988年米国NSF主催の生体組織工学においてTE(TissueEngineering)関連の潜在的世界市場規模を48兆と予測し、1996年・FDA主導のTE製品認可統一基準作成準備のためワークショップが開催され、多くのTEベンチャー企業が設立された。
【0090】
国内においても夢の医療として研究者の成果を基に2.000年前後にTEベンチャー企業が創出し、厚生労働省から融資を受けたTEベンチャー企業も現れたが、まだ殆ど収益が見込めないのが現状である。
【0091】
細胞培養の基本原理は細胞・材料・刺激因子が基本的3要素といわれ、当面倫理的問題の解決等で胚性幹細胞(ES)細胞は別にして体性幹細胞や体細胞の分離・分化誘導技術は再生医療の出発点で、培養細胞源の確保、無血清培地の開発、3次元足場の材料の開発、細胞の分化・増殖に生化学的因子、物理刺激的因子である。
【0092】
これら細胞・材料・刺激因子が整い、研究室で細胞培養に熟知した研究者によって細胞・組織培養に成功し、その成果をすぐに事業化に利用達成される訳ではない。再生医療を早期実現させるためには、細胞に基盤をおく培養医療用具、すなわち安全性が保たれた環境下で無菌的、無人的に細胞・組織培養を可能にしてこそ産業上の利用が可能になり、培養医療用具の開発第一ステップとして、細胞・組織培養には培養媒体であるとともに栄養分や酸素の伝達媒体として培養液が用いられる。培養期間は数週間は必要であり、その間に細胞・組織培養に必要な栄養、酸素をいかに細胞に与えるかが重要な課題として、本発明の一検体用多重培養装置を開発した。
【0093】
再生医療用の培養装置は一検体、一装置、培養期間3〜4週間とした場合、一台の培養装置で年間20例程度の細胞・組織培養しか再生できず、生産装置としては極めて経済性が悪い、高価な培養装置であると培養装置の償却費がそのまま医療費に加算され、再生医療実現に安価な培養装置が強く望まれている。
【0094】
本発明のモニター装置付き一検体用培養装置は小型、軽量培養装置であり、さらに遠隔操作可能なモニタリング装置も備え、多重、多層培養シートの培養も可能であり、今後のモニタリングにより医療機器として成長させ、再生医療用培養装置としての認可の可能性を十分に期待できる培養装置である。
【0095】
再生医療の経済規模は前記の48兆とも言われ、そのうち培養装置や培地、足場等の経済規模も20〜30兆とも言われており、再生医療用培養装置として、医療の現場での確認が必要であるが、本発明の一検体用多重培養装置は再生医療用装置として十分な可能性を秘めている。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】 還流式培養装置全体構成図
【図2】 灌流式培養装置全体構想図
【図3】 培養容器と直動アクチュエーター、回転アクチュエーター連結図
【図4】 培養容器断面図
【図5】 回転足場固定具
【図6】 メッシュ製回転円柱培養具
【図7】 細胞播種治具側面図と培養容器断面図
【図8】 細胞播種治具断面図と培養容器断面図
【図9】 閉鎖系培養部
【図10】 密閉恒温ケース内に培養部固定図
【図11】 二重閉鎖系培養装置組構成図
【図12】 逆流防止装置側面図
【図13】 逆流防止装置断面図
【図14】 試作機培養装置正面写真
【図15】 試作機培養装置上面写真
【図16】 コントローラー写真
【図17】 回転足場2段治具写真
【図18】 培養容器培地注入実験、回転足場影響実験写真
【図19】 培養容器培地注入実験、回転足場影響実験写真
【図20】 培養容器培地注入実験、回転足場影響実験写真
【図21】 移動用培養容器写真
【符号の説明】
【0097】
1:炭酸ガスインキュベーター
2:直動アクチュエーター用コントローラー
3:回転アクチュエーター用コントローラー
4:カメラ端末操作機(パソコン)
5:pH測定器
10:培養容器
11:培地槽
12:排出用培地槽
13:直動アクチュエーター
14:回転アクチュエーター
15:逆流防止装置
16:チューブクランプ
17:pHセンサー挿入容器
18:内視カメラ装着具
19:ジョイント
20:カム
21:クランプ
22:クランプ固定位置
23:ダイヤフラム
24:整流板
25:回転足場固定具
26:足場固定部
27:足場支持体
28:足場固定用0リング
29:メッシュ製回転円柱培養具
30:メッシュ円柱部
31:培地挿入口
32:培養容器上部排出口
33:細胞播種治具
34:細胞混濁培地
35:気密用0リング
36:密閉恒温ケース
37:駆動装置付きコントローラー部
38:コントローラー用ジョイント
39:逆流防止用注入口
40:逆流防止用排出口
41:補助排出口
42:球体弁
43:すり鉢形状部
44:足場シート
45:通気管
46:クランプ安定具
47:上下安定具高さ調整ネジ
48:培養容器底面中央注入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸ガスインキュベーター内を滅菌、温度、湿度、酸素、二酸化炭素、窒素分圧等を制御した環境内で、細胞・組織を培養する装置で、培地槽から培養容器注入側に、培養容器排出側から培地槽に循環配管を行い、培地注入側配管と培地排出側配管の途中に逆流防止装置を備え、培養容器蓋部分に生体適合材料からなる伸縮可能な合成ゴム製のダイヤフラムを固定し、合成ゴム製のダイヤフラムに直動アクチュエーターのシリンダーと連動可能な状態にジョイントで連結し、直動アクチュエーターのシリンダーを伸縮させることで、合成ゴム製のダイヤフラムを介して培養容器内培地に加圧、減圧を行い、培養容器内の培地交換を行う。培養容器内部培地の減圧時は体積を膨張させ、培地が注入され、直動アクチュエーターのシリンダーを伸長させ合成ゴム製のダイヤフラムを培養容器内部側に挿入し、培養容器内培地の体積を縮小させ培地の排出を行い、培養容器内培地の自動交換を行う。培地注入口は培養容器底面中央から、培地排出口は培養容器上部側面から排出させる。培養容器底面中央培地注入口より上部に隙間をあけた位置に整流板を設け、注入培地を四方に分散させる。さらに培養容器側面から回転足場固定具を挿入できるように培養容器側面に挿入窓を設け、足場固定部にはシート状足場を固定し、足場固定部を足場支持体に装着した回転足場固定具を培養容器に固定する。培養容器に固定したシート状足場に培養細胞を播種する。回転足場固定具の足場支持体の一部は培養容器外部に出るように構成し、回転アクチュエーターのシリンダーにジョイントで連動可能な状態に固定する。培養容器にダイヤフラムポンプを備え、培地槽から培養容器へ、培養容器から培地槽へ培地を循環させ細胞・組織の還流培養を行い培養後は培養細胞、培養培地と接触したパーツすべてを廃棄処分可能とした一検体用多重培養装置。
【請求項2】
培養容器から培地槽に配管チューブはガス透過膜製で炭酸ガス、酸素等を排出培地に透過し、更に培養容器から排出培地を培地槽に返還注入前に排出培地を炭酸ガスインキュベーター内の気体と接触面を広くし炭酸ガス等を得るために、培地をシャワー状、あるいは凸面状に広げた面に流し培養槽に還流する請求項1記載の一検体用多重培養装置。
【請求項3】
温度調節可能な滅菌された密閉恒温ケース内で、生体適合材料の変形可能な容器で構成した培地槽から培養容器に配管を行い、培養容器から変形可能な容器で構成した排出用培地槽に配管を行い、細胞・組織を培養する培養容器に培地槽から培地注入側と培養容器から培地排出側に逆流防止装置を備え、培養容器蓋部分に生体適合材料からなる伸縮可能な合成ゴム製のダイヤフラムを固定し、合成ゴム製のダイヤフラムは直動アクチュエーターのシリンダーとジョイントで連動可能な状態に固定し、アクチュエーターのシリンダーを伸縮させることで、合成ゴム製のダイヤフラムを介して培養容器内培地を加圧、減圧を行い、培養容器内培地の体積を変化させ培地の交換を行う。培養容器内に培養容器底面中央部から培地を注入、培養容器底面中央注入口から隙間を置いた位置に整流板を設け、注入培地を四方に分散注入させる。排出時の培地は培養容器上部側面から排出させ培地の自動交換を行う。さらに培養容器側面から回転足場固定具を挿入できるように培養容器側面に挿入窓を設け、足場固定部にはシート状足場を固定、足場固定部に足場支持体を装着し培養容器に固定、固定したシート状足場に培養細胞を播種する。回転足場固定具の足場支持体の一部は培養容器外部に出るように構成し、回転アクチュエーターのシリンダーとジョイントで固定連動可能とする。培地槽から培養容器へ、培養容器から排出用培地槽に培地を灌流させ培養容器内培地の自動交換を行い細胞・組織の培養を行う。培養完了後は培養細胞・培養培地と接触したパーツすべてを廃棄処分可能とした一検体用多重培養装置。
【請求項4】
生体適合材の硬質ガラス等で構成した培地槽と排出用培地槽の蓋部分に生体適合材チューブで通気配管を行い、培地槽と排出用培地槽の圧力差が発生しないようにした閉鎖系培養装置で請求項3に記載された一検体用多重培養装置。
【請求項5】
閉鎖系培養装置として生体適合材料の合成ゴム製(ガス透過膜を含む)の培地槽、排出用培地槽を構成し、培地排出による減圧時に排出量に応じて容器が変形縮小する。排出用培地槽に排出培地を注入加圧時は排出培地槽が変形膨張し容器自身が減圧、加圧に対応する閉鎖系培養装置で請求項3に記載された一検体用多重培養装置。
【請求項6】
培地槽から培養容器注入口に配管されたチューブに逆流防止装置と注入口の間にチューブクランプを付け、更に培養容器排出口から逆流防止装置との配管チューブ途中にもチューブクランプを装着し、細胞・組織培養完了後にチューブクランプを閉めチューブを切断。アクチュエーターからジョイントを外し、培養容器から培養細胞・組織を取り出すことなく完全に閉鎖培養容器の状態で培養細胞・組織を培養施設から目的の場所に滅菌された恒温ケースに入れ移動させる事が可能な請求項1、請求項3に記載された一検体用多重培養装置。
【請求項7】
培養容器内底面中央の培地注入口から培地流入の影響を弱めるため、注入口に整流板を設ける。培養容器内部底面・培養容器内部側面と整流板の間には隙間を設け、培地注入後、進行方向を整流板によって四方へ流れを分散する事で、細胞・組織培養への培地流入による物理的影響を弱めた請求項1、請求項3に記載された一検体用多重培養装置。
【請求項8】
直動アクチュエーター(モーター)と回転アクチュエーター(モーター)に使用するギャードモーターの回転数をIRPM〜70RPMの範囲のギヤードモーター等を利用した請求項1、請求項3に記載された一検体用多重培養装置。
【請求項9】
培地交換量の決定は直動アクチュエーターのシリンダーと連動するダイヤフラムの振幅により培地流量が可変となる。アクチュエーター(モーター)からカムとクランプで直動に転換する。直動振幅を可変させるためには回転カムとクランプの連動固定点の位置を変える事で可能であり、回転カムの中心に近い固定点から離れた固定点の位置で振幅を可変とする。培地流量を回転カムとクランプの固定位置で、ダイヤフラムの振幅を可変とした請求項1、請求項3に記載された一検体用多重培養装置。
【請求項10】
請求項8、請求項9に記載された流量の変化に、さらに回転アクチュエーター(モーター)の回転速度で一定時間内の培地流量を決定する。回転速度を可変させるために、回転アクチュエーター(モーター)に流す電流をパルス状にON,OFFの時間調整で行う。ONの時間を短く、OFFの時間を長くすれば、一定時間内のアクチュエーター(モーター)の回転が遅くなり培地の流れが少量に、ONの時間が長く、OFFの時間を短くすると、回転アクチュエーター(モーター)の回転時間が早くなり、一定時間内の培地流量が多くなる。培地流量を回転アクチュエーター(モーター)の回転速度で培地流量を可変させる請求項1、請求項3に記載された一検体用多重培養装置。
【請求項11】
請求項8、請求項9、請求項10に記載された培地流量可変の方法に、タイマーで直動アクチュエーターの駆動時間を設定する。請求項8、請求項9、請求項10に記載された設定法と、一日の直動アクチュエーターの駆動時間をタイマー設定する事で、一日の培地交換量と培養期間が決定できる請求項1、請求項3に記載された一検体用多重培養装置。
【請求項12】
請求項8に記載されたモーターを1回転させる回転速度のコントロールは請求項10の方法と同様に電流をパルス的に流す。ONの時間を短く、OFFの時間を長くすることで、回転足場固定具の回転速度は遅くなり、ONの時間を長く、OFFの時間短くすることで足場の回転速度は速くなり、足場回転速度を可変可能とした請求項1、請求項3に記載された一検体用多重培養装置。
【請求項13】
請求項12に記載された1回転の回転時間と1日の回転回数を決定すると、1日の駆動時間が決定され、一日の駆動時間をタイマー設定することで、1日の足場回転数と培養期間が決定できる請求項1、請求項3に記載された一検体用多重培養装置。
【請求項14】
回転足場固定具はシート状足場固定部と回転アクチュエーター(モーター)と直結する足場支持体で構成し、シート状足場固定部は円形形状で、外形より2〜4ミリ小さく彫り込み、さらにその径より2〜5ミリ程度小さな貫通穴を開け、彫り込まれた部分に足場を乗せ、足場固定に生体適合材で構成された軟材樹脂(シリコン0リング等)で彫り込み穴外形より少し大きめの0リングでシリコン樹脂等の弾性を利用して培養足場を固定し、シート状足場の回転培養を行う請求項1、請求項3に記載された一検体用多重培養装置。
【請求項15】
請求項14に記載された回転足場固定具に細胞を播種したシート状足場固定部に間隔を開けた状態で、細胞を播種したシート状足場固定部を固定することで、2段、3段と重ねた多段多重培養が同一培養容器内で行える一検体用多重培養装置。
【請求項16】
回転足場固定具を生体適合材で培地通過可能な網目メッシュを円柱状にし、円柱状メッシュ両側に脱着可能な回転支持具で構成し、3次元多孔体足場やアテロコラーゲンに細胞を播種した3次元培養物を円柱状メッシュ内に挿入し、回転足場固定具を回転させる事で、培養細胞と円柱状メッシュ内側の接触部分の位置を変化させ、接着系細胞とメッシュの接着を阻止をする一検体用多重培養装置。
【請求項17】
培養容器側面に内視観測を行う窓を開け、その窓に生体適合透明部材に内視カメラを脱着可能な状態で装着し、培養容器内部をパソコン操作で画像、解析、分析、記録を行い、培養容器内の細胞培養の映像を遠隔操作で観察可能なモニター装置を装着した請求項1、請求項3に記載された一検体用多重培養装置。
【請求項18】
請求項17に記載された培養容器側面に内視カメラを装着した側面の反対側や、必要に応じて複数の光源を脱着可能な状態で装着する。細胞を播種した回転足場の角度調整を行い、内視カメラの反対側や側面からも、培養細胞・組織の培養状態の透過率や反射率等を各角度で培養状態の観察を行い、内視カメラ側光源と反対側光源を利用しモニタリングを行う請求項1、請求項3に記載されたモニター装置付き一検体用多重培養装置。
【請求項19】
上記記載の一検体用多重培養装置の培養容器から排出側配管に装着されている逆流防止装置から排出用培地槽との間に、pH測定装置のセンサーを装着し、培養後の排出培地測定を遠隔操作で確認、記録し、培養細胞の培養状態の確認を遠隔操作で行う請求項1、請求項3に記載されたモニター装置付き一検体用多重培養装置。
【請求項20】
細胞播種治具は、培養容器内径よりやや小さめ外形の円柱型で、内径を回転足場固定治具内径と、同等の貫通穴を開け、培養容器内径と細胞播種治具外径の気密性を保つ為に、外径の任意の場所にシリコンリング等を装着できるように溝を削り、気密用0リングを装着、培養容器内の回転足場固定具を水平状態にし、培地が足場シートを覆う程度に培地を注入後、気密用0リングを装着した細胞播種治具を回転足場固定治具上に接するように挿入、細胞播種治具内径部に細胞混濁培地の注入を行い、細胞を沈下させ足場シートに細胞を接着させる細胞播種治具。
【請求項21】
請求項3に記載された閉鎖系灌流培養装置は培養部、密閉恒温ケース、駆動装置付きコントローラーの3部分に分け、滅菌された培養部部品をクリンベンチ内で組み立て、クリンベンチ内で培地槽に培地を注入、培養容器の回転足場シートに細胞を播種後に閉鎖系培養部を組み立て、閉鎖系培養部を密閉恒温ケース内の駆動ジョイントに装着、閉鎖系培養部と密閉恒温ケースで二重閉鎖系構造とし、クリンベンチから取り出し、駆動装置付きコントローラーを密閉恒温ケースの外部に出されたコントローラー用ジョイントと連結し、二重閉鎖系培養装置とした請求項3に記載された一検体用多重培養装置。
【請求項22】
逆流防止装置は比重の異なる生体適合材(合成樹脂、セラミック、金属)で製造した球体弁を利用し、注入・排出方向を決定する。排出口に補助排出口を設け、注入口側は、すり鉢形状に構成し、球体弁が注入口に落ち込み逆流を阻止する。逆流防止装置の注入口径を変えることでも培養容器内の圧力を可変可能とする。球体弁は注入口径より大きな球体とした逆流防止装置で、請求項1、請求項3、に記載された一検体用多重培養装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−147678(P2012−147678A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135543(P2009−135543)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(505082774)株式会社大竹 (8)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】