説明

一液型ラジカル硬化性組成物の表面促進型硬化

本発明は、表面上で硬化させるためのラジカル硬化性組成物に関し、この組成物は、ラジカル硬化性成分と、このラジカル硬化性成分の硬化を開始させることができる開始剤成分とを含む。この開始剤は、少なくとも1つの金属塩とフリーラジカル生成成分とを含む。この組成物の金属塩は、前記表面で還元されるように選択される。金属塩の標準還元電位は表面の標準還元電位より高く、前記組成物を表面に接触して配置すると、金属塩が表面で還元されて、前記フリーラジカル生成成分と相互作用を起こし、これにより組成物のラジカル硬化性成分の硬化を開始させる。効率的な硬化のために、この組成物中には触媒成分を必要としない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面上で硬化させるための、安定な一液型ラジカル硬化性組成物、およびそのための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
還元−酸化(レドックス)ラジカル重合
レドックス重合は酸化プロセスと還元プロセスを伴う(Holtzclaw、H.F.;Robinson、W.R.;Odom、J.D.;General Chemistry 1991、第9版、Heath(発行)、44ページ)。遊離原子または分子内原子またはイオン状原子が1個の電子または複数の電子を失うと、この原子は酸化され、その酸化数は増加する。遊離原子または分子内原子またはイオン状原子が1個の電子または複数の電子を得ると、この原子は還元され、その酸化数は減少する。あたかも1つの原子が電子を獲得した後、別の原子は電子を提供し酸化されなければならないかのように、酸化と還元は常に同時に起こる。酸化還元対では、一方の化学種は還元剤として作用し、他方は酸化剤として作用する。レドックス反応が起こると、還元剤は別の反応物に電子を渡すまたは供与する。これにより、還元剤はこの反応物を還元する。したがって、還元剤それ自体は電子を失ったことにより酸化される。酸化剤は電子を受容または獲得し、還元剤を酸化させる。一方、それ自体は還元される。酸化還元対の2つの試薬の力について相対的な酸化力または還元力を比較することにより、どちらが還元剤であり、どちらが酸化剤であるかを決めることができる。還元剤または酸化剤の力は、これらの標準還元(Ered)または酸化(Eox)電位から決めることができる。
【0003】
レドックスラジカル重合は、例えば嫌気性アクリル系接着剤配合物の分野においては、確立された接着技術である(米国特許第2,628,178号、第2,895,950号、第3,218,305号、および第3,435,012号)。嫌気性接着剤配合物は、中でもねじロック、フランジ封止、構造接着、およびエンジンブロック封止を含めた広範囲の工業的用途で使用されている(Haviland、G.S.;Machinery Adhesives for Locking Retaining & Sealing、Marcel Dekker(発行)、New York 1986)。
【0004】
嫌気性接着剤系は、典型的には、ラジカル感受性モノマー、酸化剤および還元剤からなる(Rich、R.;Handbook of Adhesive Technology、Pizzi,A.&Mittal,K.L.編集、Marcel Dekker (発行)1994、29章,467〜479ページ)。典型的な酸化剤はヒドロペルオキシドであり、その中でクメンヒドロペルオキシド(CHP)が最も一般に用いられているが、t−ブチルヒドロペルオキシド(BHP)を含む他のヒドロペルオキシドも使用される。一般に、還元剤は、ジメチル−p−トルイジン(DMPT)、サッカリン(Moane,S.ら;Int.J.Adh.&Adh.1999、19巻、49〜57ページ)、またはアセチルフェニルヒドラジン(APH)(Rich,R.;Handbook of Adhesive Technology、Pizzi,A.&Mittal,K.L.編集、Marcel Dekker(発行)1994、29章、467〜479ページ)などのアミンの混合物からなる。
【0005】
遷移金属塩とヒドロペルオキシドとの既知の不適合性:
ヒドロペルオキシドは、酸化剤として、還元剤として、または両方としても作用することができる(Kharash,M.S.ら;J.Org.Chem.1952、17章、207〜220ページ)。ヒドロペルオキシドの酸化作用のいくつかのメカニズムには、1つの電子の引抜き、電子供与体からの電子対の引抜き、または受容体への酸素原子の供与が含まれる(Kharash,M.S.ら;J.Org.Chem.1952、17章、207〜220ページ)。
【0006】
ヒドロペルオキシドは、金属塩が低酸化状態で存在しても高酸化状態で存在しても不安定であることが知られている。この不安定性こそが、嫌気性アクリル系接着剤において開始成分として使用されたときに、ヒドロペルオキシドの反応性をもたらすものであると理解されている。図式1は、ヒドロペルオキシドの高酸化状態および低酸化状態における、遷移金属化学種によるヒドロペルオキシドの酸化的および還元的分解を示す。
【0007】
【化1】

【0008】
したがって、上に述べたアミン/有機還元剤配合物への代替案を提供する適当なヒドロペルオキシド適合性ラジカル硬化性配合物の必要性は依然として満たされていない。さらに、長期安定性を示しターゲット表面に塗布したときだけ硬化する一液型ラジカル硬化性組成物の必要性がある。
【0009】
既存のコーティング技術
E−コーティング(エレクトロコーティング/電着塗装)は、電流を使用して塗料を堆積させる塗装方法である。このプロセスは「反対物は互いに引きつけ合う」という原理で作用する。このプロセスは電解析出としても知られている。エレクトロコーティングの基本的な物理的原理は、反対の電荷を有する材料が互いに引きつけ合うということである。エレクトロコーティング系では、反対に帯電した塗料粒子の浴に浸漬した金属部品にDC電荷を印加する。塗料粒子は金属部品に引き寄せられ、塗料は部品上に堆積し、エレクトロコーティングが所望の厚さに達するまで、すべての表面上、すべての割れ目およびコーナーに均一な連続皮膜を形成する。この厚みで膜が部品を絶縁するので、引きつけ合う力は止まり、エレクトロコーティングプロセスは完了する。電荷の極性に応じて、エレクトロコーティングは陽極性または陰極性に分類される。この技術の主な欠点は、この技術がファラデーケージ効果の影響を受けるので、金属管内部などをコーティングすることができないことである。塗膜を架橋し硬化するためには材料を焼成することが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、代替のコーティング技術としてレドックス化学反応を利用することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様では、本発明は、表面上で硬化させるための、安定な一液型ラジカル硬化性組成物であって、
i)ラジカル硬化性成分と、
ii)フリーラジカル生成成分と、
iii)少なくとも1つの金属塩と
を含み、
前記少なくとも1つの金属塩の標準還元電位が前記表面の標準還元電位より高く、
前記組成物を前記表面に接触して配置すると、前記金属塩が、前記表面で還元されて、前記フリーラジカル生成成分と相互作用を起こし、これにより前記組成物の前記ラジカル硬化性成分の硬化を開始させるラジカル硬化性組成物を提供する。
【0012】
本明細書における標準還元電位とは、化学種が電子を獲得することによって還元される傾向を示す。標準還元電位は、以下の標準状態下で測定される:25℃、濃度1M、圧力1気圧、および純粋状態の元素。
【0013】
望ましくは、前記組成物の金属塩は遷移金属カチオンを含む。好適な金属には、銅、鉄、亜鉛およびこれらの組合せが含まれる。金属塩は、配位子で置換することができる。望ましくは、金属塩対イオンは、ナフテネート、エチルヘキサノエート、ベンゾエート、ニトレート、クロリド、アセチルアセトネート、ClO、BF、PF、SbF、AsF、(CB、(CGa、カルボラン、トリフリミド、ビス−トリフリミド、これらに基づくアニオンおよびこれらの組合せからなる群から選択することができる。さらに望ましくは、金属塩対イオンは、ナフテネート、エチルヘキサノエート、ベンゾエート、ニトレート、クロリド、アセチルアセトネート、ClO、BF、PF、SbFおよびこれらの組合せからなる群から選択することができる。好ましくは、金属塩対イオンは、ClO、BFおよびこれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0014】
金属塩の溶解度は、対イオンを変えること、金属塩の金属への配位子の付加および/または置換、ならびにこれらの組合せにより調整することができる。これにより、適切な溶解度が得られるので、表面と金属塩との間の効率的な電子移動が見られることになる。
【0015】
ラジカル生成成分は、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ヒドロペルオキシド前駆体、過硫酸塩およびこれらの組合せからなる群から選択することができる。好適な材料としては、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化水素、2−ブタノンペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、過酸化ラウロイル、2,4−ペンタンジオンペルオキシド、ペンタメチル−トリオキセパン[Trigonox(登録商標)311という商標名で販売されているものなど]、過酸化ベンゾイルおよびこれらの組合せが挙げられる。
【0016】
ラジカル硬化性成分は、望ましくは、アクリレート、メタクリレート、チオレン、シロキサン、ビニルからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有し、これらの組合せも本発明に包含される。好ましくは、ラジカル硬化性成分は、アクリレート、メタクリレート、チオレンおよびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有する。
【0017】
望ましくは、本発明の組成物が塗布される表面は、金属、金属酸化物または金属合金を含むことができる。さらに望ましくは、この表面は、金属または金属酸化物を含むことができる。好ましくは、この表面は金属を含むことができる。好適な表面は、鉄、鋼、軟鋼、グリットブラスト仕上げ軟鋼、アルミニウム、酸化アルミニウム、銅、亜鉛、酸化亜鉛、重クロム酸亜鉛、およびステンレス鋼からなる群から選択することができる。アルミニウムおよび酸化アルミニウムには、それぞれ、アルクラッドアルミニウム(低銅分)および酸化物除去アルクラッドアルミニウム(低銅分)が含まれる。望ましくは、表面は、鋼およびアルミニウムからなる群から選択することができる。鋼またはアルミニウム表面上で硬化させるための組成物において使用するのに好適な金属塩は、鉄塩、銅塩、亜鉛塩およびその組合せからなる群から選択することができ、但し、鉄塩、銅塩および亜鉛塩の対イオンは、ナフテネート、エチルヘキサノエート、ベンゾエート、ニトレート、クロリド、アセチルアセトネート、ClO、BFおよびこれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0018】
一般に、本明細書に開示された本発明の組成物は、追加のエッチング液または酸化物除去剤の必要なしに、酸化した金属面上で硬化することができる。しかし、本発明の組成物は、任意選択で酸化物除去剤を含むことができる。例えば、エッチング液または酸化物除去剤、例えば塩化物イオンおよび/または亜鉛(II)塩を含むものを本発明の配合物に含有させることにより、任意の酸化物層のエッチングが可能になる。これにより下方の(ゼロ酸化状態)の金属が露出することになる。この金属は、次に本発明のラジカル硬化性組成物の(遷移)金属塩を還元することができる十分な活性を有する。
【0019】
本明細書に記載のレドックスラジカル硬化性コーティング組成物は追加の還元剤を必要としない。この組成物は、レドックス反応に関与することができる金属基体(またはレドックス反応に関与することができる他の表面)と接触するまで安定であり、したがって従来の還元剤成分の役割を果たすものである。本発明のラジカル硬化性組成物は、通気性容器に貯蔵されたとき、一液型組成物として貯蔵安定性を有する。大量の本発明のラジカル硬化性コーティング組成物の安定性は、連続的撹拌および/または組成物中に空気をバブリングさせることによって向上させることができる。
【0020】
本発明の組成物は、効率的な硬化のために追加の触媒を必要としない。本発明は、組成物が塗布され硬化されることになる表面に対する開始剤成分の適切な選択を利用する。こうして、表面促進型レドックス化学反応を利用してラジカル硬化性組成物の硬化を開始することができる。しかし、表面と組成物の金属塩の間の電子移動をもたらすために、本発明による組成物が任意選択で触媒を含んでもよいことは理解されよう。これは、さらに大きな硬化速度が必要な場合に有用な可能性がある。好適な触媒としては遷移金属塩が挙げられる。
【0021】
本明細書に記述された本発明の組成物は、一般に接着剤、シーラントまたはコーティングとして有用であり、中でも金属接合、ねじロック、フランジ封止、および構造接着を含めた広範囲の工業的用途で使用することができる。
【0022】
本発明の組成物は、望ましい場合にはカプセル化することができる。好適なカプセル化技術としては、それだけに限らないが、コアセルベーション、ソフトゲルおよび共押出成形が挙げられる。
【0023】
あるいは、本発明の組成物は、事前塗布方式で使用することもできる。事前塗布という用語は、カプセル化した形の(通常はマイクロカプセル化されているが、必ずしもそうではない)材料を利用し、所望の基体上で前記カプセルを(例えば、水または有機溶媒を熱で除去すること、あるいはバインダーを光硬化することによって)乾燥させることができる液体バインダー系に分散させること、と解釈されるものであることが理解されよう。硬化性組成物(例えば充填カプセルの形状の例えば接着性液体など)を含有した材料の膜が残る。この硬化性組成物は、使用者がこの組成物を活性化したい場合、材料(例えばカプセル)を物理的に破裂させることにより放出し硬化させることができる。例えば、事前塗布ねじロック剤では、コーティングされたねじ部は、その逆ねじ部(例えばねじ受けまたはナット)と一緒にねじることにより活性化される。
【0024】
別の実施形態では、本発明は、ラジカル硬化性成分の硬化を開始するための開始剤パッケージであって、
i)フリーラジカル生成成分と、
ii)少なくとも1つの金属塩と
を含む開始剤パッケージに及ぶ。
【0025】
金属塩対イオンは、ナフテネート、エチルヘキサノエート、ベンゾエート、ニトレート、クロリド、アセチルアセトネート、ClO、BF、PF、SbF、AsF、(CB、(CGa、カルボラン、トリフリミド、ビス−トリフリミド、これらに基づくアニオンおよびこれらの組合せからなる群から選択することができる。さらに望ましくは、金属塩対イオンは、ナフテネート、エチルヘキサノエート、ベンゾエート、ニトレート、クロリド、アセチルアセトネート、ClO、BF、PF、SbFおよびこれらの組合せからなる群から選択することができる。好ましくは、金属塩対イオンは、ClO、BFおよびこれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0026】
本発明は、さらに、2つの基体を接合する方法であって、
(i)i)ラジカル硬化性成分と、
ii)フリーラジカル生成成分と、
iii)少なくとも1つの金属塩と
を含む組成物を前記基体の少なくとも1つに塗布するステップと、
(ii)前記組成物と結合を形成するように前記第1の基体と第2の基体を合わせるステップと
を含み、
前記少なくとも1つの金属塩の標準還元電位が、前記基体の少なくとも1つの標準還元電位より高い方法にも及ぶ。
【0027】
特定の一実施形態では、両方の基体とも金属を含む。第2の基体が第1の金属基体とは異なる金属基体を含む場合には、本発明の組成物は2種以上の金属塩を含むことができる。こうして、本発明は、2種以上の金属塩を含有させることによって異なる金属基体を接合することができる硬化性組成物も提供する。
【0028】
本発明の発明組成物の金属塩の金属は、その上でこれを硬化することになる金属面より反応性系列が低いことが望ましい。
【0029】
金属基体は、非金属基体にも接合することができる。例えば、軟鋼は、e−コート鋼材(e−コートとは、鋼などの金属面に電流を用いて電着される有機塗料である)に接合することができる。
【0030】
さらに、本発明の発明組成物は、金属部品などの部品上に(ポリマー)コーティングを形成するために利用することができる。
【0031】
本発明はさらに、
a)容器と、
b)本発明のラジカル硬化性組成物と
を含むパックに関する。但し、この容器は通気性である。
【0032】
さらに別の態様では、本発明は、表面をコーティングするための組成物および表面コーティング方法を提供する。架橋と硬化を表面上で直接行うことができ、したがって追加の焼成処理の必要がないことが想定される。さらに、このコーティング方法は、表面(例えば、管などの内部のコーティングを妨げるファラデーケージ効果を示す恐れがある表面)の内部のコーティングを可能にすることが想定される。
【0033】
別の態様では、本発明は、表面をコーティングするための、安定な一液型ラジカル硬化性コーティング組成物であって、
i)ラジカル硬化性成分と、
ii)フリーラジカル生成成分と、
iii)少なくとも1つの金属塩と
を含み、
前記少なくとも1つの金属塩の標準還元電位が前記表面の標準還元電位より高く、
前記組成物を前記表面に接触して配置すると、前記金属塩が、前記表面で還元されて、前記フリーラジカル生成成分と相互作用を起こし、これにより前記組成物の前記ラジカル硬化性成分の硬化を開始させるラジカル硬化性コーティング組成物を提供する。
【0034】
望ましくは、前記ラジカル硬化性コーティング組成物の金属塩は遷移金属カチオンを含む。好適な金属には、銅、鉄、亜鉛およびこれらの組合せが含まれる。金属塩は、配位子で置換することができる。望ましくは、金属塩対イオンは、ナフテネート、エチルヘキサノエート、ベンゾエート、ニトレート、クロリド、アセチルアセトネート、ClO、BF、PF、SbF、AsF、(CB、(CGa、カルボラン、トリフリミド、ビス−トリフリミド、これらに基づくアニオンおよびこれらの組合せからなる群から選択することができる。さらに望ましくは、金属塩対イオンは、ナフテネート、エチルヘキサノエート、ベンゾエート、ニトレート、クロリド、アセチルアセトネート、ClO、BF、PF、SbFおよびこれらの組合せからなる群から選択することができる。好ましくは、金属塩対イオンは、ClO、BFおよびこれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0035】
コーティング組成物のラジカル生成成分は、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ヒドロペルオキシド前駆体、過硫酸塩およびこれらの組合せからなる群から選択することができる。好適な材料としては、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化水素、2−ブタノンペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、過酸化ラウロイル、2,4−ペンタンジオンペルオキシド、Trigonox(登録商標)311(3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン、過酸化ベンゾイルおよびこれらの組合せが挙げられる。
【0036】
ラジカル硬化性成分は、望ましくは、アクリレート、メタクリレート、チオレン、シロキサン、ビニルからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有し、これらの組合せも本発明に包含される。
好ましくは、ラジカル硬化性成分は、アクリレート、メタクリレート、チオレンおよびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有する。
【0037】
本発明のラジカル硬化性コーティング組成物は、充填材、染料、顔料および潤滑要素を任意選択で含むことができることが理解されよう。さらに、ラジカル硬化性モノマーは、硬化性疎水性モノマー、二官能性モノマー、および加硫剤、硬化剤などを含めた二次的硬化性成分を含むように構成することができる。硬化性モノマーの変性を、堆積した膜の特性を調節するために利用することができる。これにより、以下の制御が容易になる:表面張力および極性、滑らかさ、立体規則性、色、硬度、耐引掻性、その後のコーティングおよび/または接着剤への表面反応性、ならびに、表面に堆積した膜自体の中でのさらなる反応または表面に堆積した膜とこれに接触している材料との間のさらなる反応を促進する、光、熱、湿気への反応性。
【0038】
ラジカル硬化性コーティング組成物中の金属塩の溶解度は、対イオンを変えること、金属塩の金属への配位子の付加および/または置換、ならびにこれらの組合せにより調整することができる。これにより、適切な溶解度が得られるので、表面と金属塩との間の効率的な電子移動が見られるようになろう。
【0039】
望ましくは、本発明の組成物が塗布される表面は、金属、金属酸化物または金属合金を含むことができる。さらに望ましくは、この表面は、金属または金属酸化物を含むことができる。好ましくは、この表面は金属を含むことができる。好適な表面は、鉄、鋼、軟鋼、グリットブラスト仕上げ軟鋼、アルミニウム、酸化アルミニウム、銅、亜鉛、酸化亜鉛、重クロム酸亜鉛、およびステンレス鋼からなる群から選択することができる。アルミニウムおよび酸化アルミニウムには、それぞれ、アルクラッドアルミニウム(低銅分)および酸化物除去アルクラッドアルミニウム(低銅分)が含まれる。望ましくは、表面は、鋼およびアルミニウムからなる群から選択することができる。
【0040】
鋼またはアルミニウム表面のためのラジカルコーティング組成物において使用するのに好適な金属塩は、鉄塩、銅塩、亜鉛塩およびその組合せからなる群から選択することができ、但し、鉄塩、銅塩および亜鉛塩の対イオンは、ナフテネート、エチルヘキサノエート、ベンゾエート、ニトレート、クロリド、アセチルアセトネート、ClO、BFおよびこれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0041】
本発明の発明コーティング組成物の金属塩の金属は、その上でこれを硬化することになる金属面より反応性系列が低いことがさらに望ましい。したがって、本発明の組成物は多くの異なる金属面上にコーティングすることができる。
【0042】
本明細書における「コーティング」という用語への言及はすべて、ポリマーの膜または表面へのコーティングを含むものと解釈される。さらに、下記の官能化ポリマーの膜またはコーティングへの言及はすべて、架橋および非架橋コーティングの両方に適用される。
【0043】
ラジカル硬化性成分を官能化して、重合した膜に望ましい特性を付与することができることが理解されよう。モノマーを変性してコーティングの以下の特性を制御することができる;表面張力および極性、滑らかさ、立体規則性、色、硬度、耐引掻性、ならびに、その後のコーティングおよび/または接着剤への反応性。さらに、官能化コーティングに光、熱、湿気などの刺激を与えて、表面に堆積したコーティング自体の中でのさらなる反応または表面に堆積したコーティングとこれに接触している材料との間のさらなる反応を促進することもできる。
【0044】
例えば、二重硬化系を形成するためにカチオン硬化性モノマーで官能化したラジカル硬化性モノマー;加硫剤、硬化剤などを含む第二の硬化性成分で官能化したラジカル硬化性モノマー;ならびに、表面張力および極性、滑らかさ、立体規則性、色、硬度、耐引掻性、その後のコーティングおよび/または接着剤への反応性、表面に堆積した膜自体の中でのさらなる反応または表面に堆積した膜とこれに接触している材料との間のさらなる反応を促進する、光、熱、湿気への反応性を制御するために官能化したコーティングが挙げられる。
【0045】
本明細書に記載のレドックスラジカル硬化性コーティング組成物は追加の還元剤を必要としない。この組成物は、レドックス反応に関与することができる金属基体(またはレドックス反応に関与することができる他の表面)と接触するまで安定であり、したがって従来の還元剤成分の役割を果たすものである。本発明のラジカル硬化性組成物は、通気性容器に貯蔵されたとき、一液型組成物として貯蔵安定性を有する。大量の本発明のラジカル硬化性コーティング組成物の安定性は、連続的撹拌および/または組成物中に空気をバブリングさせることによって向上させることができる。
【0046】
本発明のラジカルコーティング組成物は、効率的な硬化のために追加の触媒を必要としない。本発明は、コーティング組成物が塗布され硬化されることになる表面に対する金属塩成分の適切な選択を利用する。しかし、表面と組成物の金属塩の間の電子移動をもたらすために、本発明によるコーティング組成物が任意選択で触媒を含んでもよいことが理解されよう。これは、さらに大きな硬化速度が必要な場合に有用なことがある。好適な触媒としては遷移金属塩が挙げられる。
【0047】
重合/フィルム形成の速度は、表面と組成物中の金属塩の間の標準還元電位の差に比例する。架橋は、直接表面上で行われる。しかし、後重合焼成処理を行うことができることが理解されよう。
【0048】
本発明は、基体をコーティングする方法であって、
i)ラジカル硬化性成分と、
ii)フリーラジカル生成成分と、
iii)少なくとも1つの金属塩と
を含むコーティング組成物を前記基体に塗布するステップを含み、
前記少なくとも1つの金属塩の標準還元電位が前記表面の標準還元電位より高い方法をさらに提供する。
【0049】
本発明のラジカル組成物を利用して基体をコーティングする方法は、
i)コーティング組成物を塗布する前に基体を洗浄するステップと、
ii)本発明の前記コーティング組成物または前記コーティング組成物のエマルションに基体を浸漬するステップと、
iii)重合が完了した後、コーティングされた基体を洗い流すステップと
をさらに含むことができることが理解されよう。
【0050】
基体を洗浄するステップは、酸、塩基、洗剤、水溶液、水、脱イオン水、有機溶媒およびこれらの組合せを用いて洗うステップを含むことができる。ステップ(ii)で言及された、本発明のコーティング組成物のエマルションは、水性または有機エマルションを含むことができる。コーティングされた基体を洗い流すステップは、水で洗い流すステップ、および/またはコーティング/膜の特性に有利なリンス液で洗い流すステップを含むことができる。
【0051】
別の態様では、本発明は、
a)容器と、
b)本発明のラジカル硬化性コーティング組成物と
を含むパックに関し、但し、この容器は通気性である。
【0052】
本発明は、上記の方法を利用して基体に塗布されたコーティングにも及ぶ。この基体は金属とすることができる。
【0053】
別の態様では、本発明は、上記の方法を利用して基体に塗布されたコーティングを含む塗装物品にも及ぶ。この基体は金属とすることができる。本発明は、金属成分を含む基体に塗布されたコーティングを含む塗装物品をさらに提供する。
【0054】
さらに、この塗装物品は、これに塗布された硬化性組成物を有することができる。したがって、第2の基体と合わせることが容易になる。この塗装物品は、これに付着された第2の基体を有することができる。
【0055】
当業者によって理解されるように、本発明の組成物の金属塩は、金属塩のアニオンが重合/硬化プロセスの失活をもたらさないように選択されるであろう。
【0056】
適切な場合には、本発明の一実施形態の任意選択の特徴および/または追加の特徴のすべてを、本発明のもう1つの/その他の実施形態(複数可)の任意選択の特徴および/または追加の特徴と組み合わせることができることが理解されるであろう。
【0057】
本発明の追加の特徴および利点は、本発明の詳細な説明に記載されており、かつ本発明の詳細な説明および図面から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】25℃におけるグリットブラスト仕上げ軟鋼上の表面促進型トリエチレングリコールジメチルアクリレート重合のFTIR−ATRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
電気化学列は、その標準電位に基づいた、物質の酸化および還元力の尺度である。物質の標準電位は、水素電極に対する大きさである。負の標準(還元)電位を有する金属は、溶液中の水素イオンを減少させる熱力学的傾向がある。一方、正の標準電位を有する金属のイオンは、水素ガスによって還元される傾向がある。図式2(上記)に示した反応性列は電気化学列を拡張したものである。通常、反応性列でより高い位置に置かれた金属または元素だけが、反応性列において下位である別の金属または元素を還元することができる。例えば、鉄はスズを還元することができるが、カリウムを還元することはできない。
【0060】
反応性列の順序を、図式2に示したものと(変える)逆にすることができることを理解されたい。しかしながら、「より高い」および「より低い」という用語は、最も反応性が高いものを一番上に有し、最も反応性が低いものを一番下に有する反応性列のことであると理解されたい。本発明の文脈においていかなる場合も、金属塩の金属は、それが塗布される表面で還元されうるように選択されることを理解されたい。
【0061】
【化2】

【実施例】
【0062】
ラジカル組成物
接着剤配合物調製のための基本手順:
モノマー(10g)に所定量の金属塩と過酸化物開始剤を加えた。室温で連続撹拌して塩と過酸化物をモノマーに完全に溶解した。試料はすべて、調製および貯蔵中に光を遮断するためにカバーされていた。別段の指示がない限り、金属塩はすべて受け入れたままの水和した状態で使用した。金属塩について示した「mmol」値はすべて、無水物ベースで計算されている。用いたペルオキシドを希釈剤と混合した場合、計算はすべてモル当量を達成するのに必要なペルオキシドの有効濃度に基づいている。
【0063】
配合物を試験するための基本手順:
すべての接着剤配合物の試験について、ASTM E177およびASTM E6に基づく標準試験法を用いた。
装置
適切なロードセルを装備した引張試験機。
試験片
品質規格、製品または試験プログラムで指定される、重ね剪断片。
アセンブリ手順
1.5本の試験片がそれぞれの試験に使用された。
2.必要な場合には試料表面を調製した。例えば、軟鋼重ね剪断片は炭化ケイ素でグリットブラストした。
3.試験片は、アセンブリ前にアセトンまたはイソプロパノールで拭くことにより洗浄した。
4.それぞれの重ね剪断片上の接着面は322.6mmまたは0.5inであった。接着剤試料を塗布する前、これにマーキングする。
5.十分な量の接着剤を1つの重ね剪断片の調製された表面に塗布した。
6.第2の重ね剪断片を接着剤の上に置き、アセンブリは接着面のそれぞれの側部をクランプした。
試験方法
試験プログラムで指定したように硬化させた後、剪断強さを以下のようにして求めた。
1.試験片を、それぞれの端部の外側25.4mm(1インチ)をジョーが握るように、試験機のグリップに置いた。試験片の長軸は、グリップアセンブリの中心線を通って加えられる引張力の方向と一致させた。
2.アセンブリは、別段の定めがない限り、2.0mm/分または0.05インチ/分のクロスヘッド速度で試験した。
3.破断荷重を記録した。
以下の情報を記録した:
1.名称または番号を含めた接着剤の識別、およびロット番号。
2.基体および寸法を含めた、使用した試験片の識別。
3.試験片の調製に用いた表面処理。
4.硬化条件(通常は周囲の室温のみ、20〜25℃)。
5.試験条件(標準温度および圧力、すなわち室温)。
6.必要があれば状態調節(なし、接着する基体はすべて使用前に新たに調製された)。
7.5本以外の場合、試験片の数(通常は、それぞれの引用結果について5本の結果の平均)。
8.それぞれの試験片の結果。
9.すべての重複測定について平均剪断強さ。
10.品質規格、製品紹介または試験プログラムで必要な場合、それぞれの試験片の破損形態。
11.この方法から外れているものすべて。
【0064】
過酸化物成分
<実施例1>
Cu(BF(0.1g、0.42mmol)およびドデカノイルペルオキシド(0.33g、0.82mmol)を、トリエチレングリコールジメタクリレート(10g)に溶解した。
20℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:6.2N/mm
【0065】
<実施例2>
Cu(BF(0.1g、0.42mmol)および過酸化ベンゾイル(0.2g、0.82mmol)を、トリエチレングリコールジメタクリレート(10g)に溶解した。
20℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:6.5N/mm
【0066】
<実施例3>
Cu(BF(0.1g、0.42mmol)および3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン{Trigonox(登録商標)311}(0.14g、0.82mmol)を、トリエチレングリコールジメタクリレート(10g)に溶解した。
20℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:4.8N/mm
【0067】
<実施例4>
Cu(BF(0.1g、0.42mmol)およびクメンヒドロペルオキシド(0.13g、0.82mmol)を、トリエチレングリコールジメタクリレート(10g)に溶解した。
20℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:6.0N/mm
【0068】
<実施例5>
Cu(BF(0.1g、0.42mmol)および2,4−ペンタンジオンペルオキシド(0.1g、0.41mmol)を、トリエチレングリコールジメタクリレート(10g)に溶解した。
20℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:4.1N/mm
【0069】
モノマー成分
<実施例6>
Cu(BF(0.1g、0.42mmol)および過酸化ベンゾイル(0.2g、0.82mmol)を、ブタンジオールジメタクリレート(10g)に溶解した。
20℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:4.75N/mm
【0070】
<実施例7>
Cu(BF(0.1g、0.42mmol)および過酸化ベンゾイル(0.2g、0.82mmol)を、ヒドロキシエチルメタクリレート(10g)に溶解した。
20℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:5.0N/mm
【0071】
<実施例8>
Cu(BF(0.1g、0.42mmol)および過酸化ベンゾイル(0.2g、0.82mmol)を、ヒドロキシプロピルメタクリレート(10g)に溶解した。
20℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:5.0N/mm
【0072】
金属塩濃度
<実施例9>
Cu(BF(0.1g、0.42mmol)および過酸化ベンゾイル(0.1g、0.41mmol)を、トリエチレングリコールジメタクリレート(10g)に溶解した。
20℃で0.5分後の接着性能:
軟鋼ピン&カラー:8.5N/mm
20℃で5分後の接着性能:
軟鋼ピン&カラー:10.0N/mm
【0073】
<実施例10>
Cu(BF(0.02g、0.084mmol)および過酸化ベンゾイル(0.1g、0.41mmol)を、トリエチレングリコールジメタクリレート(10g)に溶解した。
20℃で0.5分後の接着性能:
軟鋼ピン&カラー:5.8N/mm
20℃で5分後の接着性能:
軟鋼ピン&カラー:10.0N/mm
【0074】
<実施例11>
Cu(BF(0.01g、0.042mmol)および過酸化ベンゾイル(0.1g、0.41mmol)を、トリエチレングリコールジメタクリレート(10g)に溶解した。
20℃で0.5分後の接着性能:
軟鋼ピン&カラー:9.0N/mm
20℃で5分後の接着性能:
軟鋼ピン&カラー:2.5N/mm
【0075】
金属塩成分
<実施例12>
Cu(ClO(0.08g)および過酸化ベンゾイル(0.1g、0.41mmol)を、トリエチレングリコールジメタクリレート(10g)に溶解した。
20℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:8N/mm
【0076】
<実施例13>
Cu(ナフテネート){ホワイトスピリット中8%}(0.08g)および過酸化ベンゾイル(0.1g、0.41mmol)を、トリエチレングリコールジメタクリレート(10g)に溶解した。
20℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:3.7N/mm
【0077】
<実施例14>
Cu(エチルヘキサノエート)(0.08g)および過酸化ベンゾイル(0.1g、0.41mmol)を、トリエチレングリコールジメタクリレート(10g)に溶解した。
20℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:3.2N/mm
【0078】
<実施例15>
Cu(ベンゾエート)(0.08g)および過酸化ベンゾイル(0.1g、0.41mmol)を、トリエチレングリコールジメタクリレート(10g)に溶解した。
20℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:5.7N/mm
【0079】
<実施例16>
Cu(NO(0.08g)および過酸化ベンゾイル(0.1g、0.41mmol)を、トリエチレングリコールジメタクリレート(10g)に溶解した。
20℃で72時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:2.0N/mm
【0080】
<実施例17>
CuCl(0.08g)および過酸化ベンゾイル(0.1g、0.41mmol)を、トリエチレングリコールジメタクリレート(10g)に溶解した。
20℃で72時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:4.5N/mm
【0081】
<実施例18>
Cu(アセチルアセトネート)(0.08g)および過酸化ベンゾイル(0.1g、0.41mmol)を、トリエチレングリコールジメタクリレート(10g)に溶解した。
20℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:2.6N/mm
【0082】
<実施例19>
Fe(ClO(0.08g)および過酸化ベンゾイル(0.1g、0.41mmol)を、トリエチレングリコールジメタクリレート(10g)に溶解した。
20℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:7.0N/mm
【0083】
<実施例20>
Zn(ClO(0.08g)および過酸化ベンゾイル(0.1g、0.41mmol)を、トリエチレングリコールジメタクリレート(10g)に溶解した。
20℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:7.0N/mm
【0084】
<実施例21>
Zn(BF(0.2g)および過酸化ベンゾイル(0.1g、0.41mmol)を、トリエチレングリコールジメタクリレート(10g)に溶解した。
20℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:7.8N/mm
【0085】
<実施例22>
Cu(BF(0.2g)、Zn(BF(0.2g)および過酸化ベンゾイル(0.1g、0.41mmol)を、トリエチレングリコールジメタクリレート(10g)に溶解した。
20℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:7.8N/mm
【0086】
<実施例23>
Cu(BF(0.2g)、Zn(ClO(0.2g)および過酸化ベンゾイル(0.1g、0.41mmol)を、トリエチレングリコールジメタクリレート(10g)に溶解した。
20℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:5.5N/mm
【0087】
<実施例24>
Fe(ClO(0.2g)、Zn(BF(0.2g)および過酸化ベンゾイル(0.1g、0.41mmol)を、トリエチレングリコールジメタクリレート(10g)に溶解した。
20℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:6.4N/mm
【0088】
<実施例25>
Fe(ClO(0.2g)、Zn(ClO(0.2g)および過酸化ベンゾイル(0.1g、0.41mmol)を、トリエチレングリコールジメタクリレート(10g)に溶解した。
20℃で24時間後の接着性能:
グリットブラスト軟鋼重ね剪断片:6.5N/mm
【0089】
ラジカルコーティング組成物:
本発明のラジカル硬化性配合物100mLを調製した。この配合物を、適切なサイズの浴に入れた。
【0090】
典型的なラジカル配合物:
a.トリエチレングリコールジメタクリレート(91%)
b.過酸化ベンゾイル(水ベース30%)(3%)
c.テトラフルオロホウ酸銅水和物(3%)
d.テトラフルオロホウ酸亜鉛水和物(3%)
【0091】
上記のコーティング配合物は例示のために挙げた代表的な配合物にすぎないことが、当業者によって理解されよう。このコーティング配合物は、コーティング配合物の最終用途に適したモノマー、金属塩、濃度などに変更することができる。
【0092】
金属基体(10×2.5cm)をアセトンで拭くことにより洗浄し、これらの配合物に浸漬した。金属基体は、これらの配合物を含む浴に沈めた。浸漬時間は、表面と組成物中の金属塩との間の標準電位の差、ならびに所望のコーティング厚み(自己限界厚み未満であることが必要な場合)に応じたものとした。コーティング/重合が完了した後、残存モノマーを洗浄により除去した。生成した膜をFTIR−ATRで分析した。
【0093】
ラジカル硬化性モノマーを用いた、グリットブラスト仕上げ軟鋼基体上のコーティングを図1に示す。トリエチレングリコールジメタクリレートモノマーは1635cm−1に特徴的なC=CのIR伸縮を有している。30秒間隔で試料を反復走査することにより、1635cm−1におけるトリエチレングリコールジメタクリレートC=CのIR伸縮強度が低下していることが分かる。これは、グリットブラスト仕上げ軟鋼の表面上に高分子コーティングが形成されていることを実証するものである。
【0094】
本発明に関して本明細書で使用された場合、「含む/含んでいる」(comprises/comprising)という用語および「有している/含んでいる」(having/including)という用語は、明示された特徴、整数、ステップまたは構成要素の存在を指定するために使用されるが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、構成要素またはこれらの群の存在または付加を排除しない。
【0095】
明確にするために別々の実施形態の文脈で記載された本発明の特定の特徴は、1つの実施形態として組み合わせて提供することもできることを理解されたい。逆に、簡潔にするために1つの実施形態の文脈で記載された本発明の様々な特徴は、別々にまたは任意の適切な下位の組合せとして提供することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面上で硬化させるためのラジカル硬化性組成物であって、
i)ラジカル硬化性成分と、
ii)フリーラジカル生成成分と、
iii)少なくとも1つの金属塩と
を含み、
前記少なくとも1つの金属塩の標準還元電位が前記表面の標準還元電位より高く、
前記組成物を前記表面に接触して配置すると、前記金属塩が、前記表面で還元されて、前記フリーラジカル生成成分と相互作用を起こし、これにより前記組成物の前記ラジカル硬化性成分の硬化を開始させるラジカル硬化性組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの金属塩が遷移金属カチオンを含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記遷移金属カチオンが、銅、鉄、亜鉛およびこれらの組合せから選択される、請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記金属塩が、ナフテネート、エチルヘキサノエート、ベンゾエート、ニトレート、クロリド、アセチルアセトネート、ClO、BF、PF、SbF、AsF、(CB、(CGa、カルボラン、トリフリミド、ビス−トリフリミド、およびこれらの組合せからなる群から選択される対イオンを含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記ラジカル開始成分が、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ヒドロペルオキシド前駆体、過硫酸塩およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記ラジカル開始成分が、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化水素、2−ブタノンペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、過酸化ラウロイル、2,4−ペンタンジオンペルオキシド、ペンタメチル−トリオキセパン、過酸化ベンゾイルおよびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記ラジカル硬化性成分が、アクリレート、メタクリレート、チオレン、シロキサン、ビニルおよびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記表面が、金属、金属酸化物または金属合金を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記表面が、鉄、鋼、軟鋼、グリットブラスト仕上げ軟鋼、アルミニウム、酸化アルミニウム、銅、亜鉛、酸化亜鉛、重クロム酸亜鉛、およびステンレス鋼からなる群から選択される、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
金属酸化物除去剤をさらに含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
前記金属酸化物除去剤が、塩化物イオン、亜鉛(II)塩およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項11に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
前記表面と前記金属塩の間の電子移動をもたらすための触媒をさらに含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
第1の金属基体を別の基体に付着させるための、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項14】
封止のための、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項15】
ねじロック、フランジ封止、金属接着、および/または構造接合における請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項16】
ラジカル硬化性成分の硬化を開始するための開始剤パッケージであって、
i)フリーラジカル生成成分と、
ii)少なくとも1つの金属塩と
を含む開始剤パッケージ。
【請求項17】
前記金属塩の対イオンが、ナフテネート、エチルヘキサノエート、ベンゾエート、ニトレート、クロリド、アセチルアセトネート、ClO、BF、PF、SbF、AsF、(CB、(CGa、カルボラン、トリフリミド、ビス−トリフリミド、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項16に記載の開始剤パッケージ。
【請求項18】
2つの基体を接合する方法であって、
(i)i)ラジカル硬化性成分と、
ii)フリーラジカル生成成分と、
iii)少なくとも1つの金属塩と
を含む組成物を前記基体の少なくとも1つに塗布するステップと、
(ii)前記組成物と結合を形成するように前記第1の基体と第2の基体を合わせるステップと
を含み、
前記少なくとも1つの金属塩の標準還元電位が、前記基体の少なくとも1つの標準還元電位より高い方法。
【請求項19】
少なくとも1つの基体が、金属、金属酸化物または金属合金を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つの基体が金属を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
a)容器と、
b)請求項1に記載のラジカル硬化性組成物と
を含むパック。
【請求項22】
前記容器が通気性である、請求項21に記載のパック。
【請求項23】
表面をコーティングするための硬化性コーティング組成物であって、
i)ラジカル硬化性成分と、
ii)フリーラジカル生成成分と、
iii)少なくとも1つの金属塩と
を含み、
前記少なくとも1つの金属塩の標準還元電位が前記表面の標準還元電位より高く、
前記組成物を前記表面に接触して配置すると、前記金属塩が、前記表面で還元されて、前記フリーラジカル生成成分と相互作用を起こし、これにより前記組成物の前記ラジカル硬化性成分の硬化を開始させる硬化性コーティング組成物。
【請求項24】
前記金属塩が遷移金属カチオンを含む、請求項23に記載のコーティング組成物。
【請求項25】
前記遷移金属カチオンが、銅、鉄、亜鉛およびこれらの組合せから選択される、請求項24に記載のコーティング組成物。
【請求項26】
前記金属塩が、ナフテネート、エチルヘキサノエート、ベンゾエート、ニトレート、クロリド、アセチルアセトネート、ClO、BF、PF、SbF、AsF、(CB、(CGa、カルボラン、トリフリミド、ビス−トリフリミド、およびこれらの組合せからなる群から選択される対イオンを含む、請求項23に記載のコーティング組成物。
【請求項27】
前記ラジカル生成成分が、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ヒドロペルオキシド前駆体、過硫酸塩およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項23に記載のコーティング組成物。
【請求項28】
前記ラジカル生成成分が、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化水素、2−ブタノンペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、過酸化ラウロイル、2,4−ペンタンジオンペルオキシド、3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン、過酸化ベンゾイルおよびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項23に記載のコーティング組成物。
【請求項29】
前記コーティング組成物の前記ラジカル硬化性成分が、アクリレート、メタクリレート、チオレン、シロキサン、ビニルおよびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有する、請求項23に記載のコーティング組成物。
【請求項30】
前記表面が、金属、金属酸化物または金属合金を含む、請求項23に記載のコーティング組成物。
【請求項31】
前記表面が、鉄、鋼、軟鋼、グリットブラスト仕上げ軟鋼、アルミニウム、酸化アルミニウム、銅、亜鉛、酸化亜鉛、重クロム酸亜鉛、およびステンレス鋼からなる群から選択される、請求項23に記載のコーティング組成物。
【請求項32】
基体をコーティングする方法であって、
i)ラジカル硬化性成分と、
ii)フリーラジカル生成成分と、
iii)少なくとも1つの金属塩と
を含むコーティング組成物を前記基体に塗布するステップを含み、前記少なくとも1つの金属塩の標準還元電位が前記基体の少なくとも1つの標準還元電位より高い方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法を利用して基体に塗布されたコーティング。
【請求項34】
請求項33に記載のコーティングと、基体とを含む塗装物品。
【請求項35】
硬化性組成物が塗布された、請求項34に記載の塗装物品。
【請求項36】
第2の基体と合わせた、請求項34に記載の塗装物品。
【請求項37】
第2の基体が付着した、請求項34に記載の塗装物品。
【請求項38】
a)容器と、
b)請求項23に記載のラジカル硬化性コーティング組成物と
を含むパック。
【請求項39】
前記容器が通気性である、請求項38に記載のパック。

【図1】
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【公表番号】特表2011−521064(P2011−521064A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510000(P2011−510000)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056256
【国際公開番号】WO2009/141443
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(501194879)ロックタイト (アール アンド ディー) リミテッド (25)
【氏名又は名称原語表記】LOCTITE (R & D) LIMITED
【Fターム(参考)】