説明

一部が埋もれたビーズ単層

【課題】一部が埋もれたビーズ単層の提供。
【解決手段】本発明は、特定のタイプの光学フィルム、このフィルムの製造方法、およびこのフィルムを含有するバックライトデバイスを提供する。このフィルムは、バインダー中に一部が埋もれたビーズの実質的に単層の配列を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光方向変換(re−directing)フィルム、バックライトに関し、および例えば、液晶ディスプレー(LCD)デバイスにおいてバックライトユニットと共に用いることができる光方向変換フィルム及びバックライトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、LCDデバイスにおけるバックライトユニット10であって、1以上の光源12(例えば冷陰極蛍光ランプ(CCFL)もしくは発光ダイオード(LED))、反射板11、光の拡散もしくはランベルト分布を(表面からの輝度出力が、すべての見える方向においてほぼ同じであるように)与えるためのディフューザ13、および視角の作用としての光の選択的再分配を与えるための光方向変換フィルム14を含む装置の概略図である。光方向変換フィルム14は、この光方向変換フィルムを通して拡散的に分配された光が通過した際、軸上の輝度強度が増加されるが、一方で、軸外強度が減少するように光を方向変換する働きを、反射板11と共にする。理想的なケースにおいて、これは、総光出力における変化をまったくともなわずに達成される。
【0003】
光方向変換フィルムの生成方法は、当業界において知られている。このようなフィルムの例は、ミネソタ州セントポールの3Mから入手しうるVikuitiフィルムとしても公知のプリズムフィルムである。これらのフィルムの構造および製造は、米国特許第6,581,286号に、さらに十分に記載されている。これらのフィルムは、平坦な面、および複数の三角形プリズムを含有する構造化された面を含む。これらのフィルムは、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する透明材料からなっている。これらのフィルムは、光の方向変換において効果的であるが、これらのフィルムの製造は、煩雑である。この方法は、ローラー上のダイヤモンド旋盤によって微小規模パターンを作製する工程、ついで押出し、またはキャストおよび硬化方法のどちらかによって、プラスチックシート上へこのパターンを転写する工程を含む。これらのフィルムの光方向変換能力は、微細構造、例えばプリズムの角度に非常に依存する。輝度強度対視角に関するこれらのフィルムの輝度出力プロフィールの任意の改変は、些細でなく高価なダイアモンド旋盤による全く新規なパターンの創作を要求する。
【0004】
国際公開第2005/109085号は、バックライトLCDにおける使用に好適な光方向変換フィルムの別のタイプについて記載している。ここでもまた、これらのフィルムは、平坦面および構造化面を含む。しかしながらこの場合、構造化面は、微小半球の密集した単層を含む。輝度強度における軸上利得(on−axis gain)に関してこれらのフィルムの光方向変換能力は、米国特許第6,581,286号に記載されたプリズムフィルムに匹敵しうることが示唆されているが、これらのフィルムの製造方法は概説されていない。
【0005】
国際公報第03/075085号は、国際公報第2005/109085号に記載されているタイプのフィルムが、接着性エラストマー基体の表面中へビーズを押し込むことによって製造されうることを示唆している。しかしながら、結果として生じるこのタイプのビーズ配向の証拠もないし、その結果として生じる光方向変換特性が、ディスプレービジネスの増大するニーズに合致するという証拠もない。
【0006】
米国特許出願公開第2005/0002204号は、国際公報第2005/109085号のものと同様の光方向変換フィルムについて記載している。しかしながら、このフィルムを形成するために必要とされるプロセスは、パターンを作成し、このパターンをプラスチックシートへ転写するために非常に多数の工程を含む、極端に冗漫なものである。パターンは、基体上全体に緩衝層をスピンコーティングし、この緩衝層の上全体にフォトレジスト層をコーティングし、光リソグラフィーによってフォトレジスト層をパターン化し、フォトレジスト材料を加熱して半球構造を形成し、最後にこれらの半球上全体へ金属層をスパッターコーティングすることによって作製される。このパターンはついで、マイクロインジェクション技術によってプラスチック上へ移される。このプロセスのような多工程プロセスは費用がかかり、大規模な大量生産には適していない。さらには、このフィルムの光方向変換特性を改変することは容易でない。如何なる改変も、新しいパターンを作製するために、多数工程を経る必要がある。
【0007】
米国特許第6,852,396号は、バックライトLCDにおけるディフューザ13すなわちディフューザシートとしての使用に適したフィルムについて記載している。このフィルムは、樹脂ビーズ、および非水性アクリル樹脂バインダー中に分散され、かつ透明ベースシート上にコーティングされた微細な無機充填剤材料からなっている。これらのビーズは、いかなる特定のパターンにも組み立てられず、このフィルムが、輝度強度における測定可能な軸上利得を与える証拠はない。
【0008】
国際公報第2005/052677号もまた、バックライトLCDにおけるディフューザ13すなわちディフューザシートとしての使用に適したフィルムについて記載している。このフィルムは、非水性バインダー樹脂、例えばアクリル樹脂中に分散され、かつ高透明性プラスチック上にコーティングされた透明球形有機ビーズからなっている。単分散ビーズもしくは低分散度のビーズが望ましいこと、およびビーズの積み重ねがあるならば、光拡散効率の低下があることが記載されている。散乱の減少(より小さいかすみ)によって、集積輝度強度の総計が、対照コーティングよりも改良されているが、このフィルムのなんらかの光方向変換能力(すなわち視角の作用としての出力輝度強度の変化)を得るために、ビーズの特定のパターンを用いるという示唆はない。
【0009】
好適な表面上に広げられた非常に均一な(単分散)微小球の液体縣濁液は、乾燥の間に液体が蒸発した時、密集した単層に自己集合する。乾燥促進される自己集合は、液体層中に一部浸漬された微小球間に現われる毛管引力に由来する。この毛管引力は、液体表面の変形、およびフィルム中の液体の高さが乾燥の間に低下するにつれて、微小球の表面での接触線の誘発された非対称によって引起こされる。この毛管引力は、液体−空気、もしくはより一般的には液体−気体界面における表面張力に正比例する。液体中の微小球の乾燥促進される自己集合に関するさらなる詳細な説明は、本明細書に参照により組み込まれる、2000年3月の、Aizenbergらの「フィジカル・リビュー・レターズ(Physical Review Letters)」、84巻、2997ページにおいて見ることができる。しかしながら、プラスチックシート上の微小球の密集した単層は、乾燥促進される自己集合によって比較的容易に得られるが、このようなフィルムは、光方向変換特性を示さない。国際公報第2005/109085号に記載されているように、微小球の代わりに微小半球の均一な密集された単層が必要とされる。
【特許文献1】米国特許第6,581,286号明細書
【特許文献2】国際公開第05/109085号パンフレット
【特許文献3】国際公開第03/075085号パンフレット
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0002204号明細書
【特許文献5】米国特許第6,852,396号明細書
【特許文献6】国際公開第05/052677号パンフレット
【非特許文献1】Aizenbergら著、「フィジカル・リビュー・レターズ」、84巻、2997ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
微小半球の密集された単層を作製するための自己集合手段は、ヤブおよびシモムラによって概説されている(ラングミュアー(Langmuir)、21巻、1709ページ、2005年、参照により本明細書に組み込まれる)。このプロセスにおいて、ポリマー溶液がまず、湿潤条件下でキャストされる。その後、凝縮された水滴が、ポリマー溶液の表面上で自己集合を受ける。球形細孔の密集した配置が、溶媒および水の完全な蒸発の時に得られる。ついで柱状構造の最密配置が、球形細孔のフィルムの上部層を剥がし取ることによって発生される。メス型として柱状構造の密集された配置を用いることによって、微小半球の密集された単層が形成される。ポリマー材料がその上全体にコーティングされ、硬化されてオス型を生じる。フィルムの光方向変換能力に関する情報は示されていないが、このようなフィルムが、LCDバックライトユニットに適した光方向変換特性を有しうることが考えられる。しかしながら、このフィルムの製造は、依然として冗漫であり、多数工程を必要とする。後者は、低コスト大量生産にとって望ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明の対象は、光方向変換フィルムとして、LCDのバックライトユニットにおける使用に好適なプラスチックシート上に、微小半球の密集された単層を作製するための簡素な低コストの方法である。本発明者らは、良好な光方向変換能力を有する、高屈折率の微小半球のかかる密集された単層が、一致する屈折率の水性ポリマーバインダー中の低多分散度の高屈折率微小球の自己集合によって、非常に簡単に調製されうることを見出した。微小球のためのキャリヤーとしての非水性媒体の代わりの水性媒体の使用は、毛管引力による自己集合を可能にするのに十分なほど高い表面張力を保証する。さらには、光線にふさわしい微小半球表面は、微小球に対する、屈折率の一致したポリマーバインダーの割合を単に調節することによって作製される。屈折率の一致したバインダー対微小球の割合を単に改変することによって、様々な光方向変換能力のフィルムを作製することも可能である。本発明の第二実施形態において、ポリマー溶液上の凝縮水滴の自己集合は、ポリマーフィルム中の微小半球空隙の密集された配置を生じるために用いられ、これはついで、微小半球構造の密集された単層を調製するためのメス型として用いられる。ヤブおよびシモムラの研究とは異なって、微小半球構造の密集された単層は、最少の工程数で得られる。
【0012】
本発明は、特定のタイプの光学フィルム、このフィルムの製造方法、およびこのフィルムを含有するバックライトデバイスを提供する。このフィルムは、バインダー中に一部が埋もれたビーズの実質的に単層の配列を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本明細書において用いられる場合、
「低多分散度」とは、変動係数(cv)が0.35未満であることを意味する。
「単層」とは、理論的な密集した最大のビーズ含量の少なくとも80%が、第一層中に含まれ、第一層中のビーズの数の5%未満が第二層中に存在することを意味する。
「一致した」屈折率とは、0.2以内を意味する。
「一部が埋もれた」とは、ビーズ表面の25〜75%が埋められていることを意味する。
「マイクロビーズ」、「微小球」、および「ビーズ」はすべて、1〜20μmの円の直径相当を有するポリマー楕円を意味する。
「微小半球」とは、一部が埋もれたビーズを意味するが、数学的な意味での全くの半球を意味するわけではない。
「バインダー重量%」または「バインダーwt%」とは、バインダーの重量を、バインダーの重量とビーズの重量の和で割って、100を掛けたものを意味する。埋められたビーズ表面の部分もしくはパーセンテージは、フィルム中のバインダーの測定された厚さ、およびフィルムの所与範囲中のビーズの平均サイズおよび平均数を知ることにより、フィルム中のバインダー重量%を基準にして決定することができる。
【0014】
本発明において有用なビーズは、所望のビーズ形状を得るのに好適な任意の方法で調製され得る。好適な方法は、縣濁重合法およびエマルジョン重合法、例えばThomas H.WhitesidesおよびDavid S.Rossによって「J.コロイド界面科学(J.Colloid Interface Science)」169、48−59(1995年)において記載されているような限定された合体技術である。
【0015】
前記限定された合体方法は、「縣濁重合」技術、および「ポリマー縣濁液」技術を包含する。本発明によるポリマー粒子の好適な調製方法は、限定された合体技術であって、1または複数の多付加重合可能なモノマーが、粒子縣濁剤を含有する水性媒体へ添加され、連続(水)相中に不連続(油滴)相を形成する技術による方法である。この混合物は、液滴のサイズを減少させるために、攪拌、均一化などによってせん断力に付される。せん断が停止された後、液滴表面コーティングにおける微粒子縣濁剤の安定化作用の結果として、液滴のサイズに関して平衡が達成され、ついで重合が完了されて、ポリマー粒子の水性縣濁液が形成される。このプロセスは、米国特許第2,932,629号、第5,279,934号、および第5,378,577号に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0016】
「ポリマー縣濁液」技術において、好適なポリマーが溶媒中に溶解され、この溶液は、安定剤としてコロイドシリカを含有する水溶液中に、微細な水不混和性液体液滴として分散される。平衡が達成され、液滴のサイズは、これらの液滴の表面をコーティングしているコロイドシリカの作用によって安定化される。溶媒が、蒸発または他の好適な技術によって液滴から除去され、その結果として、コロイドシリカの均一コーティングをその上に有するポリマー粒子を生じる。このプロセスはこの後、参照により本願明細書に組み込まれる、1989年5月23日に発行された米国特許第4,833,060号に記載されている。縣濁重合技術を用いた本発明の実施において、1または複数の任意の好適なモノマーが用いられ得る。例えば、スチレン、ビニルトルエン、p−クロロスチレン;ビニルナフタレン;エチレン性不飽和モノオレフィン、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、およびイソブチレンなど;ビニルハライド、例えば塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルベンゾエート、およびビニルブチレート;アルファ−メチレン脂肪族モノカルボン酸のエステル、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ドデシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−クロロエチルアクリレート、フェニルアクリレート、メチル−アルファ−クロロアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、およびブチルメタクリレートなど;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、ビニルエーテル、例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、およびビニルエチルエーテルなど;ビニルケトン、例えばビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、およびメチルイソプロピルケトンなど;ビニリデンハライド、例えばビニリデンクロライドおよびビニリデンクロロフルオライドなど;並びに、Nビニル化合物、例えばN−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、およびN−ビニルピロリドンジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、これらの混合物などが用いられ得る。
【0017】
縣濁重合技術において、所望の結果をもたらすために、開始剤、促進剤などを包含する他の添加物が、モノマー液滴へ、および全体の水相へ添加される。これは、米国特許第2,932,629号および第4,148,741号(これらのどちらも、参照により本明細書に組み込まれる)により詳しく開示されている。ポリマー縣濁プロセスに有用な溶媒は、ポリマーを溶解し、水と不混和性であり、かつポリマー液滴から容易に除去されるものであり、例えばクロロメタン、ジクロロメタン、エチルアセテート、塩化ビニル、メチルエチルケトン、トリクロロメタン、カーボンテトラクロライド、エチレンクロライド、トリクロロエタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、2−ニトロプロパンなどが挙げられる。特に有用な溶媒はジクロロメタンであり、その理由は、これが多くのポリマーにとって良好な溶媒であり、一方、同時にこれは、水と不混和性であるからである。さらにはその揮発性は、これが蒸発によって不連続相液滴から容易に除去されうるようなものである。
【0018】
ポリマー縣濁プロセスにおける様々な成分の、量およびそれらの相互の関係は、広範囲にわたり様々であり得るが、ポリマーと溶媒との比は、ポリマーと溶媒との組み合わせ重量の約1〜約80重量%の量において変化すべきであること、およびポリマーと溶媒との組み合わせ重量が、用いられた水の量に対して、約25〜約50重量%の量において変化すべきであることが一般に見出されている。コロイドシリカ安定剤のサイズおよび量は、コロイドシリカの粒子のサイズにより、また所望のポリマー液滴粒子のサイズにもよる。したがって、ポリマー/溶媒液滴のサイズが、高せん断攪拌によってより小さくされ、これらの液滴の制御されていない合体を防ぐため、およびその結果生じるポリマー粒子の均一サイズおよび狭いサイズ分布を達成するための固体コロイド安定剤の量は様々である。これらの技術は、非常に狭いサイズ分布を有する、0.5マイクロメートル〜約150マイクロメーターの範囲内のいずれか予め決定された平均直径を有する粒子を供給する。変動係数(米国特許第2,932,629号に記載されているような標準偏差と平均直径との比)は通常、約0.35より下である。
【0019】
これらのビーズを製造するために用いられる特定のポリマーは、着色されていてもよい水不混和性合成ポリマーである。好ましいポリマーは、任意の非晶質水不混和性合成ポリマーである。有用なポリマーの種類の例は、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、またはポリ(ブチルアクリレート)である。コポリマー、例えばスチレンとブチルアクリレートとのコポリマーも用いることができる。ポリスチレンポリマーが都合よく用いられ得る。
【0020】
高屈折率微小球サイズの分布は、相加平均によって割られた分布の標準偏差として規定される変動係数(cv)が、0.35未満、好ましくは0.2未満、最も好ましくは0.15未満であるようなものである。
【0021】
これらの微小球の直径は好適には、1〜20マイクロメートルの範囲内、より好適には4〜20マイクロメートルの範囲内、最も好適には6〜15マイクロメートルの範囲内にある。
【0022】
高屈折率ポリマー微小球は典型的には、連続バインダー中に分散される。好適な親水性バインダーは、自然発生の物質、例えばタンパク質、タンパク質誘導体、セルロース誘導体(例えばセルロースエステル)、ゼラチンおよびゼラチン誘導体、多糖類、カゼイン、並びに合成透水性コロイド、例えばポリ(ビニルラクタム)、アクリルアミドポリマー、ラテックス、ポリ(ビニルアルコール)およびその誘導体、加水分解ポリビニルアセテート、アルキルおよびスルホアルキルアクリレートおよびメタクリレートのポリマー、ポリアミド、ポリビニルピリジン、アクリル酸ポリマー、無水マレイン酸コポリマー、ポリアルキレンオキシド、メタクリルアミドコポリマー、ポリビニルオキサゾリジノン、マレイン酸コポリマー、ビニルアミンコポリマー、メタクリル酸コポリマー、アクリロイルオキシアルキルアクリレートおよびメタクリレート、ビニルイミダゾールコポリマー、ビニルスルフィドコポリマー、およびスチレンスルホン酸を含有するホモポリマーもしくはコポリマーのいずれも包含する。高屈折率を有する水溶性バインダー、例えばゼラチンが好ましい。
【0023】
これらのビーズおよびバインダーの屈折率は、1.2より大きく、より好適には1.3より大きく、最も好適には1.4より大きくあるべきである。
【0024】
ゼラチンは、コラーゲンと呼ばれる材料に由来する。コラーゲンは、高含量のグリシンおよびイミノ酸プロリンおよびヒドロキシプロリンを有する。これは、3つの平行鎖からできている三重らせん構造を有する。水中のコラーゲンが特定の温度以上に加熱された場合、これは変性してゼラチンを形成するであろう。濃縮ゼラチン溶液は、冷却された場合に剛性ゲルを形成する。この現象は、ゾル−ゲル転移または熱ゲル化として知られており、溶液中のゼラチン分子間の二次結合、例えば水素結合などの結果である。この特性は、ゼラチンに限定されるわけではないことに注目すべきである。例えば寒天、海草からの多糖、の水溶液も、冷却された場合に剛性ゲルを形成する。ゼラチンの部分的再生も、冷却された場合に発生する。後者は、三重らせんコラーゲン様構造の形成のことを意味する。ゼラチンが乾燥前に冷却固化(chill set)されない場合、これらの構造は形成されない。換言すれば、ゼラチンの分子は、このコーティングがゾル−ゲル転移温度より上の温度で乾燥される場合には、ランダムコイル立体配置に留まる。らせん構造の存在は、X線回折によって検出することができる。
【0025】
本明細書において総称的に用いられている場合、有用な「ゼラチン」は、アルカリ処理されたゼラチン(ウシの骨、または獣皮ゼラチン)、酸処理ゼラチン(ブタ皮ゼラチン)、魚皮ゼラチン、およびゼラチン誘導体、例えばアセチル化ゼラチン、およびフタル化ゼラチンを包含する。ゼラチンは、架橋剤が架橋するのを可能にするか、または固定剤が固定もしくは硬化するのを可能にするのに十分な分子量を有するかぎり、任意のタイプのゼラチンが用いられ得る。魚ゼラチンは、哺乳類ゼラチンと比較して、より低いイミノ酸含量を有する。ゾル−ゲル転移温度、もしくは熱ゲル化温度、または冷却固化温度は、イミノ酸含量がより少ない場合に、より低い。例えば、深海魚、例えばタラ、コダラ、もしくはポラックなどに由来するゼラチンの冷却固化温度は、ウシゼラチンのものよりも著しく低い。これらのゼラチンの水溶液は、約10℃まで流体のままであるが、一方、ウシゼラチンの溶液は、室温でゲル化する。単独で、またはゼラチンと組み合わせて利用されうる他の親水性コロイドは、デキストラン、アラビアゴム、ゼイン、カゼイン、ペクチン、コラーゲン誘導体、コロジオン、寒天、アロールート、アルブミンなどを包含する。さらに他の有用な親水性コロイドは、水溶性ポリビニル化合物、例えばポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ(ビニルピロリドン)などである。
【0026】
他の水溶性バインダー、例えばポリビニルアルコール(PVA)もしくはポリエチレンオキシド(PEO)は、ゼラチンに加えて、バインダーの微量成分として用いることができる。このような化合物は、写真用フィルムに関連した装置で好適に機械コーティング可能である。
【0027】
通常の界面活性剤が、層のコーティングを改良するために配合物へ添加されてもよい。界面活性剤は、通常の設計のものであってもよく、溶液の臨界ミセル濃度(CMC)に対応する濃度で提供される。好ましい界面活性剤は、Cytec Industries,Inc.から商業的に入手しうるAerosol OTである。
【0028】
好ましい実施形態において、ポリマー微小球およびゼラチンバインダーは、コーティングされ、かつ乾燥され、光方向変換フィルムの光学的性質を最適化する。1つの実施形態において、この層は、実質的な単層の微小半球領域を含有する最終コーティングを提供するためにコーティングされる。「実質的な単層」という用語は、光方向変換フィルムシートの平面に垂直な方向において、光方向変換シートの範囲の80%の上に、単一の層を超える領域がないことを意味すると、出願人によって規定されている。
【0029】
単層に必要とされるビーズ材料の量は、個々の微小球サイズを基準にした計算によって決定することができる。バインダー重量%は、所望の光学的応答を与えるように調節されうる。バインダー中に埋められる微小球の割合もしくはパーセンテージは、このフィルム中のバインダー重量%に関連付けられる。このフィルム中のバインダー重量%は、好適には15〜80%、より好適には20〜70%、最も好適には25〜60%の範囲内である。
【0030】
架橋剤もしくは硬化剤は、光方向変換フィルムの構造が自己集合によって形成された後、光方向変換フィルムの構造を保持するために用いられ得る。架橋が好ましいが、領域の密集された単層の構造を固定する他の方法も用いることができる。架橋剤の効果は、ゼラチン中の特定のアミノ酸残基の反応に基づいて特徴付けられ得る。例えば、ヒスタジンの量は典型的には、1,000あたり約4残基から、架橋時の1,000あたり2.5未満の残基へ減少される。同様に、ヒドロキシリシンの量は、1,000あたり約6.9残基から、1,000あたり約5.1未満の残基へ減少される。
【0031】
多くの従来の硬化剤がゼラチンを架橋することが知られている。ゼラチン架橋剤(すなわち硬化剤)は、用いられる固体乾燥ゼラチン材料の重量を基準にして、少なくとも約0.01重量%、好ましくは約0.1〜約10重量%の量で、より好ましくは約1〜約5重量%の量で含まれる(乾燥ゼラチンとは、例えばEastman Gel社から得られるような、膨張ゼラチンと比較した場合、周囲条件で実質的に乾燥したゼラチンを意味する)。1より多くのゼラチン架橋剤を、所望であれば用いることができる。好適な硬化剤は、無機、有機硬化剤、例えばアルデヒド硬化剤およびオレフィン硬化剤を包含しうる。無機硬化剤は、化合物、例えばアルミニウム塩、特にスルフェート、カリウムおよびアンモニウムミョウバン、アンモニウムジルコニウムカーボネート、クロム塩、例えばクロムスルフェートおよびクロムミョウバン、およびチタンジオキシドの塩、およびジルコニウムジオキシドを包含する。代表的な有機硬化剤もしくはゼラチン架橋剤は、アルデヒドおよび関連化合物、ピリジニウム、オレフィン、カルボジイミド、およびエポキシドを包含しうる。上述のように、好適なアルデヒド硬化剤は、ホルムアルデヒド、および2またはそれ以上のアルデヒド官能基を含有する化合物、例えばグリオキサール、グルタルアルデヒドなどを包含する。他の好ましい硬化剤は、ブロックアルデヒド官能基を含有する化合物、例えばテトラヒドロ−4−ヒドロキシ−5−メチル−2(1H)−ピリミジノンポリマー型のアルデヒド(Sequa、SUNREZ(登録商標)700)、1アンヒドログルコース単位、2グリオキサール単位からなるグリオキサールポリオール反応生成物を有する型のポリマー(Sequa Chemicals社から入手されるSEQUAREZ(登録商標)755)、DME−メラミン非ホルムアルデヒド樹脂、例えばSequa Chemicals社から入手されるセクアCPD3046−76、および2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン(DHD)を包含する。上述のように、活性オレフィン官能基を含有する硬化剤は、例えばビス−(ビニルスルホニル)−メタン(BVSM)、ビス−(ビニルスルホニル−メチル)エーテル(BVSME)、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジンなどを包含する。本発明の文脈において、活性オレフィン化合物は、隣接電子求引基によって活性化された、2またはそれ以上のオレフィン結合、特に非置換ビニル基を有する化合物として規定される(「写真プロセスの理論(The Theory of the Photographic Process)」、4版、T.H.James、1977年、Macmillan Publishing社、82ページ)。硬化剤の他の例は、標準的参考文献、例えば「写真プロセスの理論」、T.H.James、Macmillan Publishing社(ニューヨーク、1977年)、またはResearch Disclosure、1996年9月、389巻、IIB部(硬化剤)、またはResearch Disclosure、1994年9月、365巻、36544項、IIB部(硬化剤)において見ることができる。Research Disclosureは、英国ハンプシャーPO10 7DQ、エムズワース(Emsworth)、12ノースストリート、ダドリー(Dudley)ハウスの、Kenneth Mason Publication社によって出版されている。米国特許第3,689,274号、第2,994,611号、第3,642,486号、第3,490,911号、第3,635,718号、第3,640,720号、第2,992,109号、第3,232,763号、および第3,360,372号に開示されているように、オレフィン硬化剤が最も好ましい。
【0032】
活性オレフィン型の硬化剤のうち、好ましい種類の硬化剤は特に、2またはそれ以上のビニルスルホニル基を含む化合物である。これらの化合物は、以後、「ビニルスルホン」と呼ばれる。この型の化合物は、例えば米国特許第3,490,911号、第3,642,486号、第3,841,872号、および第4,171,976号を包含する多くの特許に記載されている。ビニルスルホン硬化剤は、コロイドを構成するポリマーを架橋するその能力の結果として、硬化剤として効果的であると考えられる。
【0033】
特定の条件下で、単分散微小球は、表面上に自然に自己集合して、密集された単層構造になる。このプロセスは、Denkovらによって詳細に記載されている(ネイチャー、361巻、26ページ、1993年)。微小球の縣濁液が表面上に広げられるとき、これらの微小球は当初、ランダムな無秩序または無相関分布になる。しかしながら乾燥の作用として、縣濁液中の液体のレベルが微小球の頂部に達したとき、これらの微小球を、密集された規則正または相関的構造に駆動する毛管力として公知の強い引力が存在する。毛管力の引力エネルギーは、熱エネルギーよりもはるかに大きい。毛管力の規模は、乾燥フィルムの空気−液体もしくは空気−コーティング界面における表面張力に正比例する。表面張力は、25ダイン/cmより大きいこと、より好適には、35ダイン/cmより大きいこと、最も好適には40ダイン/cmより大きいことが望ましい。同様に、微小球の横方向移動は、表面への強い引力によって、またはこれらが縣濁されている媒体の粘度の増加によって妨げられないことも重要である。バインダーがゼラチンであり、かつ液滴のコーティングされた層が、乾燥に先立って冷却固化されるならば、後者のことが起こる。
【0034】
図3に示されているように、ポリマー溶液のコーティングが湿潤雰囲気中で乾燥された時、ポリマー溶液32の表面上の凝縮水滴31が自己集合して密集された配置になることも可能である。この場合もまた、自己集合は、水−空気界面における表面張力によって駆動される。蒸発が完了した時、微小空隙または微小半球空隙の密集された配置を含有するポリマーフィルムが生じ、この場合、このポリマーフィルム中の空隙は、1〜50ミクロンの範囲の直径、および0.5〜25ミクロンの範囲の深さを有する半球形状を有する。微小空隙化ポリマーフィルム33はついで、この微小空隙化ポリマーフィルム上に、熱または放射線によって硬化されうる組成物34をキャストすることによって、微小半球配置を生じるためのテンプレートとして用いられてもよい。この硬化された組成物35は、手段、例えば洗浄または剥ぎ取りによって、光学または光方向変換フィルムとしての使用のために、微小空隙化ポリマーフィルムから分離される。この硬化された組成物は、1.2より大きい屈折率、より適切には1.3より大きい、最も適切には1.4より大きい屈折率を有する。微小空隙化ポリマーフィルムを調製するのに好適なポリマーは、ポリカーボネート、ポリスチレン、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、およびポリメチルメタクリレートをベースとするポリマーである。ポリカーボネートおよびポリスチレンが最も好適である。微小空隙化ポリマーフィルム上へのキャスティングに適した組成物は、Dow Corning CorporationのSylgard 184である。
【0035】
液滴もしくは微小球のランダム分布から出発して、二次元における密集された構造の形成は、二次元結晶化と呼ばれることがあり、液滴の単分散集団、もしくは低多分散度を有する微小球の集団を有する方がよい(Kumachevaら、フィジカル・リビュー・レターズ、91巻、1283010〜1ページ、2003年)。密集された構造を生じるのに十分に低い多分散度を有する高屈折率材料のポリマー微小球の集団は、限定された合体プロセスによって得ることができる。この密集された構造は、光学顕微鏡下で容易に観察可能である。さらにはこの密集された構造は、反復パターンもしくは周期性を有し、この反復距離は、可視光の波長のオーダーである。このようなパターンを有するコーティングは、可視光源、例えば可視光レーザーの前に置かれた時、フラウンホーファ回折を示す。フラウンホーファ回折の現象は、Lisenskyら、「化学教育ジャーナル(Journal of Chemical Education)」、68巻、1991年2月によって、より完全に記載されている。
【0036】
完全に単分散の液滴(0.1未満のcv)については、六方最密(HCP)構造が得られる。このような構造についての回折パターンは、斑点の形態である。小さいレベルの多分散度(0.1〜0.2のcv)があるならば、密集された構造の回折パターンは、単一環または1組の同心環の形態である。
【0037】
コーティングされた微小球の密集された単層構造は、バインダーを固定または架橋することによって保持されうる。
【0038】
最も単純な形態の典型的な光方向変換フィルムは、微小半球の密集された単層を支持するシートを含む。このシートは、基体を含む。基体は、ポリマー材料、例えばポリエステルプラスチックから形成されたコダック・エスター(Kodak Estar)フィルムベースから作ることができ、20〜200ミクロンの厚さを有する。例えば基体は、透明ポリエステルの80ミクロン厚さのシートであり得る。他のポリマー、例えば透明ポリカーボネートも用いることができる。
【0039】
この可撓性プラスチック基体は、任意の可撓性自立性プラスチックフィルムであり得る。
【0040】
この可撓性プラスチック基体は、自立性になるように、十分な厚さおよび機械的一体性を有していなければならないが、柔軟性をなくすほど厚くする必要はない。典型的には、この可撓性プラスチック基体は、厚さにおいて複合フィルムの中で最も厚い層である。その結果、この基体は、完全に構造化されたこの複合フィルムの機械的および熱的安定性を大体の場合決定する。
【0041】
この可撓性プラスチック基体材料のもう1つの有意な特徴は、そのガラス転移温度(Tg)である。Tgは、プラスチック材料がガラス状態からゴム状態へ変わるガラス転移温度と規定される。これは、この材料が実際に流れうる前のある範囲を含んでいてもよい。可撓性プラスチック基体に好適な材料には、比較的低いガラス転移温度、例えば150℃までの熱可塑性材料、ならびにより高いガラス転移温度、例えば150℃以上の可撓性プラスチックが包含される。可撓性プラスチック基体のための材料の選択は、要因、例えば製造プロセス条件、例えば堆積温度、およびアニール温度、ならびに、例えばディスプレー製造業者のプロセスラインにおけるような製造後条件に依存する。以下で考察されるプラスチック基体のいくつかは、少なくとも約200℃、およそ300〜350℃までの、より高いプロセス温度に、損傷をともなわずに耐えうる。典型的には、この可撓性プラスチック基体は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミド、セルロースアセテート、脂肪族ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリ(メチル(x−メタクリレート)、脂肪族もしくは環状ポリオレフィン、ポリアリーレート(PAR)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)、テフロンポリ(ペルフルオロ−アルボキシ)フルオロポリマー(PFA)、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)、ポリ(エーテルケトン)(PEK)、ポリ(エチレンテトラフルオロエチレン)フルオロポリマー(PETFE)、およびポリ(メチルメタクリレート)、および様々なアクリレート/メタクリレートコポリマー(PMMA)である。脂肪族ポリオレフィンは、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、およびポリプロピレン(延伸ポリプロピレン(OPP)を包含する)を包含しうる。環状ポリオレフィンは、ポリ(ビス(シクロペンタジエン))を包含しうる。環状ポリオレフィンは、ポリ(ビス(シクロペンタジエン))を包含しうる。好ましい可撓性プラスチック基体は、環状ポリオレフィンもしくはポリエステルである。様々な環状ポリオレフィンが、可撓性プラスチック基体に好適である。これの例は、日本合成ゴム株式会社(日本国東京)によって製造されているArton(登録商標)、ゼオンケミカルズL.P.(日本国東京)によって製造されているZeanor T、およびドイツクロンベルクのCelanese社によって製造されているTopas(登録商標)を包含する。Artonは、ポリマーのフィルムであるポリ(ビス(シクロペンタジエン))濃縮物である。あるいはまた、この可撓性プラスチック基体は、ポリエステルであってもよい。好ましいポリエステルは、芳香族ポリエステル、例えばAryliteである。
【実施例】
【0042】
実施例1(本発明)
この実施例は、本発明の方法による光方向変換フィルムの製造を例証する。
【0043】
スチレンとジビニルベンゼンとの混合物をベースとするポリマー微小球が、次のようにして調製された。
【0044】
ポリ−2−メチルアミノエタノールアジペート(0.225グラム)、蒸留水(70.5グラム)、およびカリウムジクロメート(0.028グラム)が、ビーカー中で組み合わされ、すべての固体が完全に溶解されるまで攪拌された。これに、シリカ粒子(デュポンからのLudox(商標))の水性分散液2.025グラムが添加され、混合物が攪拌された。
【0045】
スチレン(57グラム)、3グラムのジビニルベンゼン(55%活性)、およびデュポンからのVazo52開始剤2.025グラムが、第二ビーカーへ添加され、すべての固体が溶解されるまで攪拌された。
【0046】
有機相が水相と組み合わされ、約15分間攪拌された。エマルジョンを調製するために、この混合物はホモジナイザーを通された。エマルジョンはついでフラスコに入れられ、フラスコの温度は、重合反応を進行させるために50℃に調節された。16時間後、温度は85℃へ上げられ、フラスコは、さらに4時間、この温度に維持された。フラスコは、ついで室温まで冷却された。ポリマー微小球の縣濁液がフィルタークロス上へ注がれ、200グラムの蒸留水、ついで50グラムのメタノールで濯ぎ洗いされた。これらの微小球は、ついでトレーに載せられ、一晩、真空下60℃で乾燥された。乾燥機の温度は、ついで85℃に増加され、これらの微小球は、追加の48時間乾燥された。
【0047】
ポリマー微小球はついで、25重量%微小球を含有する縣濁液を生じるために、1重量%Aerosol OTを含有する水中に再分散された。これらの微小球の粒子サイズおよびサイズ分布は、クールター計数器を用いて決定された。平均サイズは、10.8ミクロンであり、標準偏差は1.2であった。標準偏差と相加平均の比として規定された変動係数(cv)は、0.11であった。
【0048】
これらの微小球をベースとする光方向変換フィルム(屈折率約1.59)は、次のように調製された。Aerosol OT(ゼラチンの重量を基準にして0.4重量%)を含有する魚皮ゼラチン(Norland Products Incorporatedのもの)の水溶液が、室温で、ゼラチンの下塗りがなされたポリエチレンテレフタレート(PET)のシート(屈折率約1.61)の表面上に広げられ、プラスチックシートの領域上全体へ乾燥ゼラチン(屈折率約1.52)の均一な厚さを与えた。コーティングは、54℃で10分間乾燥された。ついでポリマー微小球の縣濁液が、乾燥されたゼラチンバインダーフィルムの上全体にコーティングされた。ポリマー微小球の濃度が調節され、乾燥後に、ゼラチンバインダー中に一部浸漬された乾燥促進された自己集合によって、微小球の最密単層を生じた。ポリマー微小球の縣濁液は22℃でコーティングされ、このコーティングは、同じ温度で乾燥された。乾燥されたコーティングのサンプルは、ヘリウム−ネオンレーザー(Spectra Physicsモデル155A)に向き合って配置された。スクリーンがサンプルの後ろに置かれた。コーティングは、光のフラウンホーファ回折によって引き起こされたスクリーン上の回折環を示し、このことは、このコーティング中の微小球の規則正しい密集された単層を示している。
【0049】
図2は、光方向変換フィルム20の概略図を示している。この図面は、屈折率n2のバインダー22中に埋め込まれた屈折率n1の微小球21の密集された配置を示している。様々な光方向変換特性を有するフィルムが、複合フィルム(微小球およびバインダーを含む)中のバインダー重量%を単に変えることによって調製された。シャープのAquosTVバックライトユニットにおけるスラブ・ディフューザ(slab diffuser)に対する視角の作用としての輝度は、ELDIM EZコントラスト160R装置を用いて決定された。
【0050】
【表1】

【0051】
これらのフィルムすべてが、光を方向変換する能力を示し、軸上視覚(0度)についてのスラブ・ディフューザに対して輝度はより大きく、及び、大きい軸外角度でのスラブ・ディフューザに対して輝度はより低いことが明らかである。これらのフィルムが光を方向変換する能力は、組成に基づいて調節されうることは明らかである。例えば25重量%バインダーにおいて、軸上輝度は、スラブ・ディフューザ単独での輝度の119%であり、一方、60度の軸外角度において、輝度は、スラブ・ディフューザでの輝度の85%である。33重量%バインダーにおいて、対応値は、それぞれ122%および78%である。
【0052】
実施例2(本発明)
この実施例は、本発明の第二方法による光方向変換フィルムの製造を例証する。
【0053】
このケースでは、実施例1に記載されている手順と同様の手順によって調製された、純粋ポリスチレン微小球(12ミクロンの平均サイズおよび屈折率約1.59)の縣濁液が、Olin10G(ゼラチンの重量を基準にして1.7%)を含有する魚皮の水溶液と組み合わされ、ゼラチンの下塗りがなされたPET上の単一層としてコーティングされ、乾燥促進された自己集合によって乾燥された時にポリマー(ゼラチン)バインダー中の微小球の密集された構造を生じた。このコーティング中のバインダー重量パーセントは、33%であった。魚皮ゼラチンおよびOlin10Gの水性媒体は、約43ダイン/cmの表面張力を有していた。シャープのAquosTVバックライトユニットにおけるスラブ・ディフューザに対する軸上輝度は、1.21であり、このことは、フィルムが光を方向変換する著しい能力を示している。
【0054】
実施例3(対照)
この実施例において、光方向変換フィルムは、実施例1および2に記載されているプロセスと同様のプロセスを用いるが、水性媒体の代わりに非水性媒体中の微小球の分散液を用いて調製された。スチレンとジビニルベンゼンとの混合物をベースとするポリマー微小球は、実施例1においてのように調製された。これらはついで、ポリスチレン(Dow Corning Corporationからの#675W、屈折率約〜1.59)およびコーティング助剤(FC431)とともにトルエン中に分散された。ポリスチレン(Dow Corning Corporationからの#675W)の非水性媒体およびFC431は、約19.5ダイン/cmの表面張力を有していた。ついでこの混合物は、ゼラチンの下塗りがなされたPET上にコーティングされ、乾燥された。このコーティング中のバインダー重量パーセントは25%であり、微小球の濃度は、コーティングおよび乾燥した時にプラスチックシートの領域上全体に密集された単層を与えるように計算された。しかしながらこのケースでは、最密秩序の回折パターン特徴は、コーティングがレーザービームの前に保持された時、観察されなかった。実施例1および2に記載されているセットアップを用いて測定されたこのフィルムの軸上輝度利得は、1.15であった。すなわち、匹敵しうるバインダー重量パーセントでの水性コーティングにおいて得られたものよりも低く、このことは、このフィルムの低下した光方向変換能力を示している。
【0055】
実施例4(本発明)
この実施例は、本発明の第三方法による光方向変換フィルムの製造を例証している。
【0056】
ジクロロメタン中の23.8重量%ポリカーボネート(Bayer DPI1265)および0.1%FC431界面活性剤(ポリカーボネートの重量を基準にした)を含有する溶液が、PETシートの表面上へ452cm/mの被覆率で塗布された。湿潤コーティングがついで、温度および湿度が22℃および60%RHに制御されている閉鎖チャンバ中に直ちに挿入され、そこに5分間保持された。有機溶媒の蒸発後、このシートは、追加の5分間このチャンバ内に保持され、このチャンバは、残留水を除去するために窒素ガスでパージされた。その結果生じた微小空隙化ポリマーフィルムは、ついでPET基体から剥がされた。
【0057】
Sylgard184シリコーンエラストマーベース(Dow Corning Corporationからのもの)(屈折率約〜1.41)が、Sylgard硬化剤(同様にDow Corning Corporationからのもの)と、10:1重量比で組み合わされた。この混合物は、22℃で微小空隙化ポリマーフィルムの表面へ、151cm/mの被覆率で塗布された。ついでエラストマーが、100℃へ1時間加熱することによって型(mold)と接触して硬化された。型の押印をともなうこの硬化されたエラストマーフィルムはついで、剥ぎ取りによって型から剥離され、光方向変換特性について評価された。シャープのAquosTVバックライトユニットにおけるスラブ・ディフューザに対する軸上輝度は、1.16であり、これもまた、このフィルムが光を方向変換する著しい能力を示している。
【0058】
部品リスト
10.バックライトユニット
11.反射板
12.光源
13.ディフューザ
14.光方向変換フィルム
20.本発明のフィルム
21.一部が埋もれたビーズ
22.バインダー
30.本発明の方法およびフィルム
31.凝縮水滴
32.ポリマー溶液のコーティング
33.微小空隙化ポリマーフィルム
34.キャスト硬化性組成物
35.硬化された組成物
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】当技術分野の典型的なバックライトデバイスの概略図である。
【図2】本発明の方法による光方向変換フィルムの概略図である。
【図3】本発明の第二方法による方法および光方向変換フィルムの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルムの形成方法であって、
(a)(1)キャリヤー、(2)水分散性もしくは水溶性ポリマーバインダー、および(3)所望の屈折率および低い多分散度のビーズ集団を含むコーティングを、透明基体へ適用する工程であって、バインダーが、キャリヤーの除去をしたとき、ビーズの屈折率に実質的に一致した屈折率を有するように選択され、及び複数のコーティング成分の相対的割合が、キャリヤーの除去をしたときにバインダー中に一部が埋もれたビーズの実質的に単層の配列を提供するのに十分である工程、並びに
(b)キャリヤーをコーティングから除去して、バインダー中に一部が埋もれたビーズの実質的に単層の配列でコーティングされた基体を提供する工程
を含む方法。
【請求項2】
バインダー重量%が、所望の埋まり度合いを得るように選択され、これによって所望の角度の光分布を得ることができる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
バインダー重量%が15〜80%になるようにバインダー中に一部が埋もれたビーズの、実質的に単層の配列を提供するように、前記割合が選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
バインダー重量%が20〜70%になるようにバインダー中に一部が埋もれたビーズの、実質的に単層の配列を提供するように、前記割合が選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
バインダー重量%が25〜60%になるようにバインダー中に一部が埋もれたビーズの、実質的に単層の配列を提供するように、前記割合が選択される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
バインダーが、30℃より低いゾル−ゲル転移温度を提供するように選択される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
バインダーが、20℃より低いゾル−ゲル転移温度を提供するように選択される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
バインダーが、10℃より低いゾル/ゲル転移温度を提供するように選択される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
バインダーが、ゼラチンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
バインダーが、海洋種に由来するゼラチンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
バインダーが、魚ゼラチンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
ビーズの屈折率が、キャリヤー除去後のバインダーの屈折率の0.2以内である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
ビーズが、0.2未満の変動係数を有する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
ビーズが、0.15未満の変動係数を有する、請求項1記載の方法。
【請求項15】
キャリヤーが水である、請求項1記載の方法。
【請求項16】
バインダーが、架橋工程に付される、請求項1記載の方法。
【請求項17】
キャリヤーは、空気中における乾燥によって除去され、及び空気/コーティング界面における表面張力が、少なくとも25ダイン/cmである、請求項1記載の方法。
【請求項18】
ビーズおよびバインダーの屈折率が、少なくとも1.2である、請求項1記載の方法。
【請求項19】
光方向変換デバイスであって、順に
(a)光源、および
(b)光の進行方向に、水分散性もしくは水溶性ポリマーバインダー中に配置された、所望の屈折率および低多分散度のビーズ集団を含有する層を有する透明基体を含む光学フィルムであって、
ビーズの屈折率がバインダーと一致し、
ビーズ集団は、バインダー中に一部が埋もれたビーズを有するビーズの実質的に単層の配列中に存在するフィルム、並びに
(c)ビーズ集団の屈折率よりも少なくとも0.2低い屈折率を示す透明媒体
を含むデバイス。
【請求項20】
バインダーが、ゼラチンを含む、請求項19記載のデバイス。
【請求項21】
バインダーが、30℃未満のゾル−ゲル温度を有するゼラチンを含む、請求項19記載のデバイス。
【請求項22】
バインダーが、20℃未満のゾル−ゲル温度を有するゼラチンを含む、請求項19記載のデバイス。
【請求項23】
バインダーが、10℃未満のゾル−ゲル温度を有するゼラチンを含む、請求項19記載のデバイス。
【請求項24】
バインダーが、魚ゼラチンを含む、請求項19記載のデバイス。
【請求項25】
バインダーが、20重量%未満のイミノ含量を含むゼラチンである、請求項19記載のデバイス。
【請求項26】
ビーズが、1〜20μmの平均直径を有する、請求項19記載のデバイス。
【請求項27】
バインダー重量%が15〜80%になるようにバインダー中に一部が埋もれたビーズの、実質的に単層の配列を提供するように、ビーズおよびバインダーの割合が選択される、請求項19記載のデバイス。
【請求項28】
バインダー重量%が20〜70%になるようにバインダー中に一部が埋もれたビーズの、実質的に単層の配列を提供するように、ビーズおよびバインダーの割合が選択される、請求項19記載のデバイス。
【請求項29】
バインダー重量%が25〜60%になるようにバインダー中に一部が埋もれたビーズの、実質的に単層の配列を提供するように、ビーズおよびバインダーの割合が選択される、請求項19記載のデバイス。
【請求項30】
ビーズが楕円形である、請求項19記載のデバイス。
【請求項31】
ビーズが球形である、請求項19記載のデバイス。
【請求項32】
これらのビーズは、スチレン、アクリレート、メタクリレート、およびビニリデンクロライドから選択された1つをベースとするポリマーまたはコポリマーを含有する、請求項19記載のデバイス。
【請求項33】
ビーズが、「限定された合体」プロセスによって製造される、請求項19記載のデバイス。
【請求項34】
均一な照度を与え、光源の容姿を隠す拡散性成分が、光源(a)と光学フィルム(b)との間に配置されている、請求項19記載のデバイス。
【請求項35】
反射性偏光子をさらに含む、請求項34記載のデバイス。
【請求項36】
成分(d)が、画像を生じる画素化光ゲートデバイスを含む、請求項19記載のデバイス。
【請求項37】
水分散性もしくは水溶性ポリマーバインダー中に配置された所望の屈折率および低多分散度のビーズ集団を含有する層を有する透明基体を含む光学フィルムであって、
ビーズの屈折率がバインダーと一致し、
ビーズ集団が、バインダー中に一部が埋もれたビーズを有するビーズの実質的に単層の配列中に存在する、
光学フィルム。
【請求項38】
光学フィルムの形成方法であって、
(a)溶媒中のポリマーを含むコーティングを基体へ適用する工程、
(b)湿潤雰囲気中でコーティングを乾燥して、微小空隙化ポリマーフィルムを作製する工程、
(c)微小空隙化ポリマーフィルムの上に硬化性組成物をコーティングする工程、
(d)熱または放射線によって、硬化性組成物を硬化する工程、および
(e)硬化された光学フィルム組成物を微小空隙化ポリマーフィルムから分離する工程、
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−52273(P2008−52273A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−207530(P2007−207530)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(307010188)ローム アンド ハース デンマーク ファイナンス エーエス (51)
【Fターム(参考)】