説明

一酸化炭素の治療的供給

CO配位子、並びに付加的なハロゲン、単座及び/又は二座配位子を有するMn錯体を用いた、ヒト及びその他の哺乳動物に対する一酸化炭素の治療的供給のための化合物、薬剤組成物、並びに方法であって、かかる付加的配位子は、互いに関係したトランス位置を占めることがないように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト及びその他の哺乳動物に対する一酸化炭素の治療的供給(therapeutic delivery)のための化合物、薬剤組成物、並びに方法に関するものである。それら組成物及び化合物の他の用途は、臓器潅流(organ perfusion)のためのものである。特に、本発明は、また、ヒト及び他の哺乳動物の、体外の及び隔離された器官に対する、一酸化炭素の供給のための方法、化合物、並びに薬剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一酸化炭素(CO)は、一般的な定義によると、無色、無臭、無味、非腐食性の、空気とほぼ同じ密度を有する気体であって、我々を取り巻く環境において、最も一般的に遭遇する浸透力のある毒物である。曝露の度合いと時間により、COは、生物に対して、無数の衰弱及び有害な後遺の影響を招来する(参考文献1)(この背景技術の項の参考文献1〜9は、後の一覧表に示されている)。それらの影響のうち、最も即時的な且つ恐らく最も悪評の高いものは、血流中のヘモグロビンとの結合であり、それによって、心臓血管系の酸素運搬能力は急速に低下する。
【0003】
逆説的には、半世紀以上前には、人間において、少量ずつ絶え間なく形成されることが見出され(参考文献2)、また、ある病態生理学的条件の下においては、この内因性のCOの生産がかなり増加する場合があることが見出された(参考文献3〜5)。ヘモグロビン、即ちヘム依存性のたんぱく質が、生体内でのCOの産生のための基質として必要とされることの発見(参考文献6、7)、及びヘムオキシナーゼ酵素が、哺乳動物における、そのガス状の分子の発生にとっての重要な経路であるとの判別(参考文献8)は、血管系におけるCOの予期せぬ且つ未確認の役割についての初期の調査の基礎となった(参考文献9)。
【0004】
かかる領域において為された背景的な研究についての議論が、刊行物:WO 02/092075に報告されており、それは、本願発明者のうちの幾人かの業績に源を発している。また、一酸化炭素(CO)の有益な生理学的効果は、多くの他の刊行物においても認められ、報告されている。それら有益な生理学的効果の結果として、望ましい生理学的なサイトに対して、適当な割合で一酸化炭素の治療的な量を供給することにおいて用いられる方法や化合物を提供する多くの提案や研究を含む文献が存在する。
【0005】
WO 2003/000114(Beth Israel Deaconess Medical Center)は、一酸化炭素−酸素(O2 )気体混合物を器官に投与することを含む方法を記述しており、それは、移植処置のための器官のダメージを阻止することを助けている。
【0006】
同様に、WO 03/094932(Yale University) は、一酸化炭素ガスの発生のための幾つかの方法や各種の傷害の処置のために、患者に対して、かかるガスを後に投与する方法を開示している。
【0007】
WO 02/078684(Sangstat Medical Corporation)は、一酸化炭素発生化合物として、塩化メチレンを用いることにより、血管系の疾病を処置したり、炎症性及び免疫性の作用を調節するための方法や薬剤組成物を開示している。
【0008】
WO 02/092075やWO 2004/045598は、本願発明者の幾人かによるものであるが、それらは、生体内で若しくは生体外で、生理学的な目標サイトに対してCOを治療的に供給するための、一酸化炭素放出化合物(CORMs)である金属カルボニルを開示している。それらの刊行物に開示された遷移金属のカルボニル化合物のいくらかは、水に可溶性であり、薬剤組成物を処方するために望ましいものである。
【0009】
WO 03/066067(Haas, W. et al)は、疾患の処置及び/又は予防に用いるために、「CO含有有機金属錯体」を、一つのクラスの化合物として提案している。そのクラス内に入る有機金属の遷移金属−カルボニル化合物の一般的な例が、記載されている。それらの例の中で、以下の有機金属化合物についての一般式が、示されている:
【化1】

【0010】
また、次式の化合物も掲載されている。
【化2】

【0011】
これらMn−X−Mnブリッジを有する化合物は、本発明から明確に除外されている。
【0012】
WO 03/066067(Haas, W. et al)は、上記の化合物の何れの合成についても記述しておらず、また、それらの準備のための手法に関して、如何なる文献の参照も有していない。更に、この文献には、生体内で、若しくは生体外のCOの供給のために、それらの化合物を使用することを裏付ける上において、生物学的テストデータの如き証明が何等為されていないことに注目される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO 02/092075
【特許文献2】WO 2003/000114
【特許文献3】WO 03/094932
【特許文献4】WO 02/078684
【特許文献5】WO 2004/045598
【特許文献6】WO 03/066067
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以下に提供されたデータによって例示されている如く、本発明者等は、本発明に従う薬剤組成物や化合物が、生理学的ターゲットに対してCOを供給するために用いるのに適したものであり、また、比較的に高い放出率でCOを放出することが出来ることを見出したのである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って、本発明の第一の態様は、以下の式(I)にて示される化合物若しくはイオンを、活性成分(active ingredient)として含有し、或いは該(I)が化合物のときには、その製剤的に許容され得る塩を含み、また該(I)がイオンのときには、製剤的に許容され得る対イオンを更に含んでいる薬剤組成物を提供することにある:
Mn(CO)4XY ・・・ (I)
但し、X及びYは、互いに関係する分子においてトランス位置(trans position)を占めることはなく、そしてX及びYは同一若しくは異なるものであり、且つX及びYの各々は、ハロゲン及び、O及びSのうちの一つを介して結合するMnに対する単座配位子(monodentate ligand)から選択され、又はX及びYは、共に、O,S又はO及びSの両方を介して結合するMnに対する二座配位子(bidentate ligand)である。
【0016】
好ましくは、前記式(I)の化合物若しくはイオンは、単に、一つのMn原子を有している。即ち、Mn−Mn結合、或いは二つのMn原子間のブリッジ(架橋)を含む化合物が、好ましくは、除外される。
【0017】
他の具体例においては、前記式(I)の化合物又はイオンは、二つ又はそれ以上のMn原子を有している。好ましくは、そのMn原子は、ブリッジにて連結されている。しかしながら、かかる式(I)の最も好ましい化合物若しくはイオンは、単に、一つのMn原子を有している。
【0018】
前記式(I)の種(species)は、カチオン形態がCOの放出を阻害する可能性があるところから、好ましくは、中性若しくはアニオンである。
【0019】
前記式(I)の種の例としては、以下のものがある:
(a)
【化3】

[但し、各々のJは、O又はSから独立して選択され、好ましくは両方ともOであ り、R1,R2及びR3 の各々は、H(好ましくは、R1及びR2の両方がHであると いう訳ではなく、より好ましくは、R1及びR2の何れもがHではない)、1〜6個 のC原子を有するアルキル、若しくはアルケニル(又はハロゲンで置換され、又は −OH,−CN又は−NH2で置換され、また好ましくは、1〜4個のC原子を有 している)から独立して選択されるものであり、或いは、R2は上記と同様であり 、そしてR1及びR3は一緒になり、そして、それらが付いている炭素原子と一緒に なって、芳香族環構造、例えば、フェニルである。
この二座配位子の例としては、[R1−CO−CH−CO−R2-(そこで、例 えば、R1は−CH3であり、また、R2は−CF3である)がある]
(b) X及びYのうちの一つ、若しくは両方が、Mnに対して一つのS原子を介して結 合するジチオカルボキシレートであるか、或いは、X及びYが一緒になって、二つ のS原子を介して結合するジチオカルボキシレートであるような種、それら二つの ケースにおけるジチオカルボキシレートは、[S2CT]-である。
但し、Tは、−NR12[そこで、R1及びR2は、H及び、場合により置換され たアルキル(好ましくは、1〜6個のC原子を有する)から選択されるか、或いは 、R1及びR2は、場合により置換された、1〜3個のC原子を有するアルカン−ジ −イルによって共に与えられる]、或いは−OR(そこで、Rは、場合により置換 された、好ましくは1〜6個のC原子を有するアルキルである)である。
好ましい例は、以下に示される。他の例は:R−CO−N−CS2Mn(CO) 4(但し、Rは、1〜4個のC原子を有するアルキル、例えば、メチル若しくはエ チルである)であり、C25−O−CS2Mn(CO)4である。
(c) X及びYが、共に、次式の二座配位子によって与えられる種:
【化4】

但し、S及びOは、Mnに結合し、そしてTは、場合により置換された、1〜6 個のC原子(好ましくは、1〜4個のC原子)を有するアルキル若しくはアルケニ ル、−NR12[そこで、R1及びR2は、H及び、場合により置換されたアルキル (好ましくは、1〜6個のC原子を有する)から選択され、或いは、R1及びR2
、場合により置換されたアルカン−ジ−イル(好ましくは、2〜6個のC原子を有 する)にて共に提供される]、或いは−OR(但し、Rは、場合により置換された
、好ましくは1〜6個のC原子を有するアルキルである)である。
例としては、(CH32NCSOMn(CO)4や、RCSOMn(CO)4(但 し、Rは、好ましくは1〜4個のC原子を有するアルキルである)である。
(d) 二座配位子がMnに結合する次式を有する種:
【化5】

[但し、R1及びR2の各々は、独立して、−H、又は場合により置換された、1〜 6個のC原子を有するアルキル若しくはアルケニルであり、或いは、R1及びR2
、一緒になって、場合により置換された単環若しくは多環の芳香族基である]。
その例としては、以下のものがある。
【化6】

(e) R−SO2−Mn(CO)4
[そこで、−SO2の二つのO原子は、Mnに結合しており、そしてRは、場合に より置換された1〜6個のC原子、好ましくは1〜4個のC原子を有するアルキル 若しくはアルケニルである]
一つの例が、CH3−SO2−Mn(CO4)である。
(f) (RS)2Mn-(CO)4
[但し、各々のRは、場合により置換された1〜6個のC原子、好ましくは1〜4 個のC原子を有するアルキル若しくはアルケニルから、独立して選択される]
【0020】
請求項を含んで、この明細書において、アルキル、アルケニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アルカン−ジ−イル(alkane-di-yl)、アルケン−ジ−イル(alkene-di-yl)及び芳香族等のグループは、「場合により乃至は随意に置換された(optionally substituted)」として、特定されているが、その随意の置換基は、−COOH;−COOR’;−CONH2;−CONHR’;−CON(R’)2;−COR’;−F,−Cl,−Br,−I;−CN;−NO2;−OH;−OR’;−SH;−SR’;−O−CO−R’;−NH2;−NHR’;−N(R’)2;−NH−CO−R’;−NR’−CO−R’;−NR’−SO2H,−NH−SO2H;−NR’−SO2R’,−NR’−SO2H;−SO2R’;−OSO2R’;−C5-20アリール;−C1-7アルキル−C5-20アリール;−C1-7アルケニル−C5-20アリール(但し、R’は、随意に置換された、1〜6個のC原子を有するアルキル若しくはアルケニルである)から選択される。
【0021】
アルキル、アルケニル、アルカン−ジ−イル、アルケン−ジ−イル等の言葉は、6個若しくはそれ以上のC原子が存在し得る環状構造を含む、直鎖状及び分枝鎖状の基を示す。
【0022】
上記の定義(a)〜(f)に属する化合物は、それ自身、文献において知られてはいるが、薬剤用途としては、何等の示唆も為されていない、と信じられている。
【0023】
好ましくは、本発明の薬剤組成物において、
(i)X及びYの各々は、ハロゲン及び、下式から選択され:
【化7】

[但し、J1及びJ2の各々は、O及びSから独立して選択され、またQは、場合により置換されたアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル若しくはアリールアルケニルである]又は
(ii)一緒となったX及びYが、次式:
【化8】

[但し、J1,J2,J3及びJ4の各々は、O及びSから独立して選択され、そしてZは、随意に置換されたアルカン−ジ−イル若しくはアルケン−ジ−イルである]から選択された二座配位子であり、又は
(iii)一緒となったX及びYが、次式:
【化9】

[但し、R3及びR4の各々は、水素及び随意に置換されたアルキルから、独立して選択され、又はR3及びR4は、3〜6個のC原子を有する、随意に置換されたアルカン−ジ−イル若しくはアルケン−ジ−イル、又は−R5−O−R6−(但し、R5及びR6の各々は、1〜3個のC原子を有する、随意に置換されたアルカン−ジ−イルである)によって、共に与えられる]にて提供される。
【0024】
より好ましくは、前記Qは、1〜10個のC原子、好ましくは1〜4個のC原子を有するアルキル若しくはアルケニルであって、−COOH;−COOR’;−CONH2;−CONHR’;−CON(R’)2;−COR’;−F,−Cl,−Br,−I;−CN;−NO2;−OH;−OR’;−SH;−SR’;−O−CO−R’;−NH2;−NHR’;−N(R’)2;−NH−CO−R’;−NR’−CO−R’;−NR’−SO2H,−NH−SO2H;−NR’−SO2R’,−NR’−SO2H;−SO2R’;−OSO2R’;−C5-20アリール;−C1-7アルキル−C5-20アリール;−C1-7アルケニル−C5-20アリール(但し、R’は、1〜6個のC原子を有するアルキル若しくはアルケニルである)のうちの一つ若しくはそれ以上によって、随意に置換されたものであり、
前記Zは、1〜10個のC原子(好ましくは、1〜5個のC原子)を有するアルカン−ジ−イル若しくはアルケン−ジ−イルであって、−COOH;−COOR’;−CONH2;−CONHR’;−CON(R’)2;−COR’;−F,−Cl,−Br,−I;−CN;−NO2;−OH;−OR’;−SH;−SR’;−O−CO−R’;−NH2;−NHR’;−N(R’)2;−NH−CO−R’;−NR’−CO−R’;−NR’−SO2H,−NH−SO2H;−NR’−SO2R’,−NR’−SO2H;−SO2R’;−OSO2R’;−C5-20アリール;−C1-7アルキル−C5-20アリール;−C1-7アルケニル−C5-20アリール(但し、R’は、1〜6個のC原子を有するアルキル若しくはアルケニルである)のうちの一つ若しくはそれ以上によって、随意に置換されたものであり、そして、
前記R3及びR4の各々(Hではないとき)、R5及びR6は、−COOH;−COOR’;−CONH2;−CONHR’;−CON(R’)2;−COR’;−F,−Cl,−Br,−I;−CN;−NO2;−OH;−OR’;−SH;−SR’;−O−CO−R’;−NH2;−NHR’;−N(R’)2;−NH−CO−R’;−NR’−CO−R’;−NR’−SO2H,−NH−SO2H;−NR’−SO2R’,−NR’−SO2H;−SO2R’;−OSO2R’;−C5-20アリール;−C1-7アルキル−C5-20アリール;−C1-7アルケニル−C5-20アリール(但し、R’は、1〜6個のC原子を有するアルキル若しくはアルケニルである)のうちの何れか一つによって、随意に置換されている。
【0025】
好ましくは、前記Qは、随意に置換された、1〜4個のC原子を有するアルキル、又は随意に置換されたフェニルである。より好ましくは、Qは、未置換の、又は−OH,−OR’,−COOH,−COOR’,−NH2,−NH−COOH若しくは−NH−COOR’(但し、R’は、1〜4個のC原子を有するアルキル又はフェニルである)で置換された、1〜4個のC原子を有するアルキル、又はフェニルである。
【0026】
好ましくは、前記Zは、CH2,CH2CH2又はCH(CH3)である。
【0027】
好ましくは、前記R3及びR4は、各々、未置換の、又は−OH,−OR’,−COOH,−COOR’,−NH2,−NH−COOH若しくは−NH−COOR’(但し、R’は、1〜4個のC原子を有するアルキルである)によって置換された、1〜4個のC原子を有するアルキルから選択される。
【0028】
さらに、本発明は、活性成分として、上記で規定された化合物若しくはイオンを、医療において用いることからなるものである。
【0029】
第二の態様において、本発明は、下記式(II)にて表されるアニオンと対カチオンを有する化合物を提供する:
Mn(CO)4XY ・・・ (II)
[但し、X及びYは、相互に関係する分子においてトランス位置を占めるものではなく、且つX及びYは同一若しくは異なるものであり、そして、
(i)X及びYの各々は、−O−CO−Q(但し、Qは、随意に置換されたアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル若しくはアリールアルケニルである)から選ばれ、或いは、
(ii)一緒になったX及びYは、次式:
【化10】

(但し、Zは、随意に置換されたアルカン−ジ−イル若しくはアルケン−ジ−イルである)
から選ばれた二座配位子である]。
【0030】
この態様において、好ましくは、前記Qは、1〜10個のC原子、好ましくは1〜4個のC原子を有するアルキル若しくはアルケニルであって、−COOH;−COOR’;−CONH2;−CONHR’;−CON(R’)2;−COR’;−F,−Cl,−Br,−I;−CN;−NO2;−OH;−OR’;−SH;−SR’;−O−CO−R’;−NH2;−NHR’;−N(R’)2;−NH−CO−R’;−NR’−CO−R’;−NR’−SO2H,−NH−SO2H;−NR’−SO2R’,−NR’−SO2H;−SO2R’;−OSO2R’;−C5-20アリール;−C1-7アルキル−C5-20アリール;−C1-7アルケニル−C5-20アリール(但し、R’は、1〜6個のC原子を有するアルキル若しくはアルケニルである)の一つ若しくはそれ以上によって、随意に置換され、
前記Zは、1〜10個のC原子(好ましくは、1〜5個のC原子)を有するアルカン−ジ−イル若しくはアルケン−ジ−イルであって、−COOH;−COOR’;−CONH2;−CONHR’;−CON(R’)2;−COR’;−F,−Cl,−Br,−I;−CN;−NO2;−OH;−OR’;−SH;−SR’;−O−CO−R’;−NH2;−NHR’;−N(R’)2;−NH−CO−R’;−NR’−CO−R’;−NR’−SO2H,−NH−SO2H;−NR’−SO2R’,−NR’−SO2H;−SO2R’;−OSO2R’;−C5-20アリール;−C1-7アルキル−C5-20アリール;−C1-7アルケニル−C5-20アリール(但し、R’は、1〜6個のC原子を有するアルキル若しくはアルケニルである)のうちの一つ若しくはそれ以上によって、随意に置換されたものである。
【0031】
最も好ましくは、前記Qは、未置換のC1〜4のアルキルであり、そして前記Zは、未置換のC1〜4のアルカン−ジ−イルである。
【0032】
本発明の第三の態様においては、下記式(III)にて表される化合物若しくはイオンを、活性成分として含有し、又は該(III)が化合物のときには、その製剤的に許容され得る塩を含み、該(III)がイオンのときには、製剤的に許容され得る対イオンを更に含んでいる薬剤組成物を提供する:
【化11】

[但し、X,Y及びZは、各々、ハロゲン又は、O若しくはSを介して結合する単座配位子又は、O,S又はO及びSの両方を介して結合する二座配位子であり、そこでX,Y及びZは同一又は異なるものであり、そしてX,Y及びZは、二つのMn原子の両方に互いに関係するトランス位置を占めることはない]。
【0033】
好ましくは、前記(III)の種は、カチオン形態がCOの放出を阻害する恐れがあることから、中性若しくはアニオンである。
【0034】
前記式(III)の化合物若しくはイオンは、3つの架橋配位子を有して示されている。化合物若しくはイオン構造の古典的原子計数分析(classical electron-counting analysis)によれば、Mn−Mn金属結合は、何等存在していない。しかしながら、Mn原子間の距離(本発明における使用のために、化合物やイオンのX線結晶解析から得られるように)は、それらMn原子間の、ある形態の結合相互作用の存在を、排除してはいない。
【0035】
前記X,Y若しくはZが単座配位子であるとき、かかる配位子は、前記式(I)の化合物若しくはイオンにおいて、単座配位子X及びYに関連して記述された、好ましい配位子の中から選択され得る。
【0036】
前記X,Y若しくはZがハロゲンであるとき、かかるハロゲンは、好ましくは、Cl,Br若しくはIである。最も好ましくは、ハロゲンは、Clである。
【0037】
好ましくは、本発明(III)の薬剤組成物において、前記X,Y及びZの各々は、下記(i)、(ii)及び(iii)から選ばれる配位子である:
(i)
【化12】

及びA並びにBは、独立してO及びSから選択され、そしてWは、随意に置換された、アルケル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニルであり、又はWは、−N(R34)基[但し、R3及びR4の各々は、独立して、H及び、随意に置換されたアルキルから選択され、或いは、R3及びR4は、随意に置換された、3〜6個のC原子を有するアルカン−ジ−イル若しくはアルケン−ジ−イル、又は−R5−O−R6−(但し、R5及びR6の各々は、随意に置換された、1〜3個のC原子を有するアルカン−ジ−イルである)にて共に与えられる]である;
(ii)
【化13】

[但し、A1,A2,B1及びB2の各々は、独立して、O及びSから選択され、そしてZは、随意に置換されたアルカン−ジ−イル若しくはアルケン−ジ−イルである];及び
(iii)
【化14】

[但し、A及びBは、O及びSから独立して選択され、そして、R1及びR2の各々は、独立して、水素若しくは、場合により置換された、1〜6個のC原子を有するアルキル若しくはアルケニルであり、或いは、R1及びR2は、一緒になって、場合により置換された単環若しくは多環の芳香族基である]。
【0038】
より好ましくは、前記Wは、1〜10個のC原子、好ましくは1〜4個のC原子を有するアルキル若しくはアルケニルであって、−COOH,−CSOH;−COOR’;−CONH2;−CONHR’;−CON(R’)2;−COR’;−F,−Cl,−Br,−I;−CN;−NO2;−OH;−OR’;−SH;−SR’;−O−CO−R’;−NH2;−NHR’;−N(R’)2;−NH−CO−R’;−NR’−CO−R’;−NR’−SO2H,−NH−SO2H;−NR’−SO2R’,−NR’−SO2H;−SO2R’;−OSO2R’;−C5-20アリール;−C1-7アルキル−C5-20アリール;−C1-7アルケニル−C5-20アリール(但し、R’は、1〜6個のC原子を有するアルキル若しくはアルケニルである)のうちの一つ若しくはそれ以上によって、随意に置換されたものであり、
前記Zは、2〜10個のC原子(好ましくは、1〜5個のC原子)を有するアルカン−ジ−イル若しくはアルケン−ジ−イルであって、−COOH;−COOR’;−CONH2;−CONHR’;−CON(R’)2;−COR’;−F,−Cl,−Br,−I;−CN;−NO2;−OH;−OR’;−SH;−SR’;−O−CO−R’;−NH2;−NHR’;−NH(R’)2;−NH−CO−R’;−NR’−CO−R’;−NR’−SO2H,−NH−SO2H;−NR’−SO2R’,−NR’−SO2H;−SO2R’;−OSO2R’;−C5-20アリール;−C1-7アルキル−C5-20アリール;−C1-7アルケニル−C5-20アリール(但し、R’は、1〜6個のC原子を有するアルキル若しくはアルケニルである)のうちの一つ若しくはそれ以上によって、随意に置換されたものであり、そして、
前記R3及びR4の各々(Hではないとき)、R5及びR6は、−COOH;−COOR’;−CONH2;−CONHR’;−CON(R’)2;−COR’;−F,−Cl,−Br,−I;−CN;−NO2;−OH;−OR’;−SH;−SR’;−O−CO−R’;−NH2;−NHR’;−NH(R’)2;−NH−CO−R’;−NR’−CO−R’;−NR’−SO2H,−NH−SO2H;−NR’−SO2R’,−NR’−SO2H;−SO2R’;−OSO2R’;−C5-20アリール;−C1-7アルキル−C5-20アリール;−C1-7アルケニル−C5-20アリール(但し、R’は、1〜6個のC原子を有するアルキル若しくはアルケニルである)のうちの何れか一つによって、随意に置換されている。
【0039】
好ましくは、A及びBは同一であり、A1及びB1は同一であり、或いは、A2及びB2は同一である。A1,B1,A2及びB2は、全て同一であり得る。或いはまた、A1及びA2は同一であり、又はB1及びB2は同一である。
【0040】
好ましくは、前記X,Y若しくはZの各々は、下式のものである(但し、A,B及びWは、上記で定義された通りのものである):
【化15】

【0041】
最も好ましくは、X,Y及びZの各々は、ハロゲン、アセチル、若しくはチオアセチル配位子である。
【0042】
前記Wは、場合により置換された、1〜4個のC原子を有するアルキルであり得、又はWは、場合により置換されたフェニルであり得る。最も好ましくは、Wは、未置換の、又は−OH,−OR’,−COOH,−COOR’,−NH2,−NH−COOH若しくは−NH−COOR’(但し、R’は、1〜4個のC原子を有するアルキルである)で置換された、1〜4個のC原子を有するアルキルであり、或いはWは、フェニルである。Wは、1〜4個のC原子を有する未置換のアルキルであることが出来る。
【0043】
Zは、未置換のC1〜4アルカン−ジ−イルであり得る。好ましくは、Zは、CH2,CH2CH2若しくはCH(CH3)である。
【0044】
本発明の第三の態様に従うイオンの例は:[(OC)3Mn(μ−OCOCH33Mn(CO)3-である。このイオンは、また、以下のように表され得る:
【化16】

【0045】
本発明の第三の態様の組成物における使用のための好ましいイオンは、[Mn2(CO)6(Boc−アラニン)3-及び[Mn2(CO)6Cl3-を、上記のイオンに加えて含んでいる。
【0046】
本発明の第四の態様においては、以下の式(IV)を有する化合物若しくはイオンが提供される:
【化17】

[但し、X,Y及びZの各々は、O若しくはSを通じて結合する単座配位子であり、或いはO,S若しくはO及びSの両方を通じて結合する二座配位子であり、X,Y及びZは、同一若しくは異なるものであり、そしてX,Y及びZは、二つのMn原子の両方の周りで互いに関連したトランス位置を占めることはない]。
【0047】
この第四の態様がイオンを提供するとき、前記式(IV)の構造に関連して、全体的に、正若しくは負の電荷が存在していることが、理解されるであろう。かかる電荷は、−1、−2、若しくは−3の電荷であり得、或いは、+1、+2、若しくは+3の電荷であり得る。
【0048】
本発明の第三の態様の組成物における化合物若しくはイオンの単座配位子及び二座配位子にとって好ましいものは、また、本発明の第四の態様のアニオンの配位子にも適用される。好ましくは、第四の態様がイオンを提供するとき、かかるイオンは、製剤的に許容され得る対イオンを有している。
【0049】
本発明の薬剤組成物は、一般に、製薬的に受け入れられ得る賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤又は当業者に周知の他の材料を含有している。
【0050】
そのような材料は、非毒性であるべきものであり、また活性成分の効力を過度に阻害しないものである。担体若しくは他の材料の正確な機能は、投与の経路、例えば、経口の、静脈内の、経皮性の、皮下の、鼻の、吸入の、筋肉内の、腹腔内の若しくは座薬の経路に依存している。
【0051】
経口投与のための薬剤組成物は、錠剤、カプセル、粉末若しくは液体形態において存在し得る。錠剤は、ゼラチン若しくはアジュバント若しくは徐放性ポリマーの如き固形の担体を含むことが出来る。液状の薬剤組成物は、一般に、水、石油、動物若しくは植物油、鉱油又は合成油の如き液体キャリヤを含んでいる。生理食塩水、デキストロース若しくは他の糖類溶液、エチレングリコール、プロピレングリコール若しくはポリエチレングリコールの如きグリコールが含有せしめられ得る。他の溶媒の製剤的に許容され得る量が、また、含有せしめられ得、特に、組成物中に含有せしめられた所定の金属カルボニル化合物を溶解するために要請されるものである。
【0052】
静脈、皮膚若しくは皮下注射或いは罹患部位での注射のために、活性成分が一般に発熱物質の存在しない、且つ適当なpH、等張性及び安定性を有する非経口的に受け入れられ得る溶液の形態において存在する。当該技術において適切な技能を有する人であれば、使用するに適切な溶液、例えば、塩化ナトリウム注射、リンゲル注射、乳酸加リンゲル注射の如き等張なビヒクルを調製することは、申し分なく可能である。防腐剤、安定剤、緩衝剤、抗酸化剤及び/又は他の添加剤が必要に応じて含有せしめられる。無針注射のための配達システムが知られており、そして、そのようなシステムでの使用のための組成物が、適宜に調製され得る。
【0053】
投与は、好ましくは、予防的に有効な量若しくは治療的に有効な量(予防は治療と考えられ得るかもしれないが、そのようなケースがあるかもしれない。)、個体にとって利益を示すに充分な量において行なわれる。投与される実際の量及び投与の割合並びに時間的経過は、処置されているものの性質や重症度に依存する。処置の処方箋、例えば、投薬に関する決定等は、一般の開業医や他の医者の職務の範囲内にあり、そして、一般に、処置されるべき疾病、個々の患者の状態、配達の部位、投与の方法及び開業医に知られている他の要因を考慮に入れることとなる。
【0054】
上述した技法及びプロトコルの例は、「Remington's Pharmaceutical Sciences」 16th edition, Osol, A. (ed), 1980 において、見出され得るものである。
【0055】
本発明に従って薬剤組成物を処方するとき、活性成分及び/又は溶媒の毒性が考慮されなければならない。
【0056】
医薬の利益と毒性との間のバランスが考慮されるべきである。組成物の投薬及び処方は、一般に、提供される医薬の利益が成分の毒性による何等かのリスクに勝るように決定されることとなる。
【0057】
本発明の第五の態様は、上記で定義されたような本発明に従う薬剤組成物若しくは化合物を投与する工程を含む、COを哺乳動物に導入する方法である。このCOを導入する方法は、好ましくは、急性の、肺性の及び慢性の高血圧の如き高血圧症、放射線障害、内毒素ショック、炎症、喘息やリウマチ様関節炎の如き炎症関連疾病、高酸素症誘引障害、アポトーシス、癌、移植拒絶反応、動脈硬化、虚血後の器官障害、心筋梗塞症、アンギナ、出血性ショック、敗血症、陰茎勃起機能障害及び成人の呼吸困難症候群の処置のためのものである。
【0058】
ここに提供されたデータは、WO 02/092075及びWO 2004/045598において提示された働きを伸張したものである。それらの文献に提示された作用に基づいて、本発明の方法は、急性の、肺性の、且つ慢性の高血圧の如き高血圧症、内毒素ショック、炎症、喘息やリウマチ様関節炎の如き炎症性関連疾病、高酸素症誘引障害、癌、移植拒絶反応、動脈硬化、虚血後の器官障害、心筋梗塞症、アンギナ、出血性ショック、敗血症及び成人呼吸困難症候群の治療のためのものであることが望ましい。より好ましくは、高血圧症、内毒素ショック、炎症、喘息やリウマチ様関節炎の如き炎症関連疾病、虚血後の器官障害、心筋梗塞症及び敗血症の治療のための方法である。更により好ましいのは、高血圧症、虚血後の器官障害及び心筋梗塞症の治療のための方法である。
【0059】
また、本発明の、かかる態様は、体外若しくは隔離された器官の処置方法を含むものであって、それは、本発明に従う薬剤組成物に、該器官を接触せしめることからなるものである。金属カルボニルは、役に立つ一酸化炭素(CO)を生じさせて、虚血後の障害を制限する。本発明の方法において、処置される器官は、血液の供給から隔離された器官である。かかる器官は、例えば、臓器提供者の体外や臓器被提供者の体外にある供与された器官のように、体外に存在するものであり、或いはそれは、患者の体内に存在するという意味において、離隔され得るものであり、また外科手術の目的のために、血液の供給から離隔され得るものである。
【0060】
例えば、該器官は、循環器官、呼吸器官、泌尿器官、消化器官、生殖器官、神経器官、筋肉若しくは皮膚弁或いは生育可能な細胞を含む人工臓器であり得る。
【0061】
最も好ましくは、該器官は、心臓、肺、腎臓若しくは肝臓である。金属カルボニルを含む組成物との接触は、かかる器官を、組成物に、例えば浸漬したり或いはポンプで汲んだりして、晒す方法によって達成することが出来る。好ましくは、体に取り付けられた離隔された器官、即ち、バイパスされた器官は、組成物を用いて潅流される。体外に存在する器官は、好ましくは、組成物中に浸漬される。
【0062】
WO 02/092075やWO 2004/045598において、本発明者等の幾人かは、金属カルボニル化合物が、特定の疾病の処置において用いられ得ることを実証した。そして、それを更に展開することによって、本発明は、また、COを放出するための薬物の製造において、ここで記述されたような金属カルボニル化合物を生理学的ターゲット、特に、哺乳動物に対して用いることを提供して、生理学的作用、例えば、神経伝達若しくは血管拡張を刺激したり、或いは各種の処置のために提供される。その処置の対象としては、急性、肺性及び慢性の高血圧の如き高血圧症、放射線障害、内毒素ショック、炎症、喘息やリウマチ様関節炎の如き炎症性関連疾病、高酸素症誘引障害、アポトーシス、癌、移植拒絶反応、動脈硬化、虚血後の器官障害、心筋梗塞症、アンギナ、出血性ショック、敗血症、陰茎勃起機能障害及び成人の呼吸困難症候群である。そのような薬剤は、経口、静脈内、皮下、鼻、吸入、筋肉、腹腔若しくは座薬の経路によって投与するために適合される。好ましくは、本発明は、有機体に対して、皮膚若しくは粘膜を通じて金属カルボニル若しくはその分解生成物の供給を除外する。
【0063】
より好ましくは、ここに記述されるような金属カルボニル化合物の使用は、急性、肺性及び慢性の高血圧の如き高血圧症、内毒素ショック、炎症、喘息やリウマチ様関節炎の如き炎症性関連疾病、高酸素症誘引障害、癌、移植拒絶反応、動脈硬化、虚血後の器官障害、心筋梗塞症、アンギナ、出血性ショック、敗血症及び成人の呼吸困難症候群の処置のための薬剤の製造にある。更に好ましいのは、高血圧症、内毒素ショック、炎症、喘息やリウマチ様関節炎の如き炎症関連疾病、虚血後の器官障害、心筋梗塞症及び敗血症の治療のための薬剤である。更に好ましいのは、高血圧症、虚血後の器官障害及び心筋梗塞症の治療のための薬剤である。
【0064】
さらに、本発明は、ここに記述した金属カルボニルを、移植手術のための器官の保存及び/又は輸送の間等、体外で生存している哺乳動物の器官の処置において、例えば、潅流による処置において用いることを提供する。この目的のため、金属カルボニルは、溶解せしめられた形態において存在し、好ましくは、水性溶液において存在する。この生存器官は、心臓、腎臓、肝臓、皮膚若しくは筋肉組織片等の如き、生きている細胞を含む組織であり得る。
【0065】
本発明の第六の態様は、薬剤溶液を製造するためのキットである。このキットは、個々に記述されている化合物と、製剤的に受け入れられ得る溶媒とからなっている。ここに記述された化合物のいくつかは、溶解時にCOを放出する。それ故に、そのようなCORMの溶液における貯蔵は、CORMが分解し、或いは不活性となったり、生理学的ターゲットに対してCOを放出することが出来なくなったりするために、実用的ではない。そのようなCORMは、ヒト若しくは哺乳動物の患者に対して投与する前に、本発明に従うキットを用いて、直ちに調製されることが望ましいのである。
【0066】
定義
ここで用いられている「生理学的流体(physiological fluid )」なる語は、生理学的システムに対する薬剤投与に適した流体、例えば、水、或いは生理食塩水の如きもの、又は生理学的システムにおいて既に存在している流体、例えば血漿若しくは血液の如きものに、関係乃至は属する(pertain)。
【0067】
対イオン(Counter-ions)
対イオンとしては、毒性等を考慮して、適したものが採用され得る。カチオンの例としては、Na+,K+や、アンモニウム、置換アンモニウムのイオンがある。好ましくは、4級アンモニウムイオンにおいては、何等のHも、例えば、[Me4N]+や[Me3NCH2CH2OH]+における如く、Nに対して付いてはいない。以下の段落の次における Berge 及び Stahl の文献参照。
【0068】
本発明における使用のための対イオンの例には、また、[(15−crown−5)Na]+も含まれる。前記式(I)及び(III)の種は、また、[Ph3PNPPh3+のような対イオンを用いて準備され得る。上述せるように、本発明の組成物における対イオンは、製剤的に許容され得る対イオンであり、それ故に、[Ph3PNPPh3+を含む化合物若しくはイオンは、本発明の組成物における使用に適しているとは思われない。[Me4N]+,K+及び[コリン]+が、好ましい対イオンであり、[Me4N]+やK+が、最も好ましいものである。
【0069】
塩(Salts)
活性化合物の対応する塩、例えば、製剤的に受け入れられ得る塩を準備したり、精製したり、及び/又は取り扱ったりすることは、都合の良いことであり、或いは、望ましいことである。製剤的に受け入れられ得る塩の例としては、Berge et al., 1977,「Pharmaceutically Acceptable Salts, 」J. Pharm. Sci., Vol. 66, pp. 1-19 において、議論されている。
【0070】
例えば、化合物が、アニオン性であったり、或いは酸性基(例えば、−COOHは−COO-となり得、−CSOHは−CSO-又はCOS- となり得る)の如く、アニオン性となり得る官能基を有しているならば、塩は、適当なカチオンにて形成される。適当な無機のカチオンの例としては、これに限定されるものではないが、Na+ やK+ の如きアルカリ金属イオン、Ca2+ やMg2+ の如きアルカリ土類カチオン、及びAl3+ の如き他のカチオンが含まれる。 適当な有機カチオンの例としては、これに限定されるものではないが、アンモニウムイオン(即ち、NH4+ ) 及び置換されたアンモニウムイオン (例えば、NH3+ 、NH22+ 、NHR3+ 、NR4+ )が含まれる。
他に特定されない限り、特定の化合物に対する参照は、また、その塩形態のものを含んでいる。
【0071】
ソルベート(Solvates)
活性化合物の対応するソルベートを製造し、精製し、及び/又は取り扱うことが便利であり、或いは望ましいものであり得る。「ソルベート」の語は、ここでは、通常の意味において用いられ、溶質(例えば、活性化合物、活性化合物の塩)と溶媒との複合物として参照される。溶媒が水であるときには、ソルベートは、好都合には、水和物として参照され得る。
他に特定されない限り、特定の化合物に対する参照は、また、そのソルベート形態のものを含んでいる。
【0072】
配位子の配位(Ligand Co-ordination)
本発明の第一及び第二の態様に従う化合物及びイオンは、相互に関連する分子においてトランス(若しくは対向した)位置を占めることのない、配位子X及びYを有する化合物及びイオンに限定される。それら配位子X及びYが、相互に関連してシス(cis)位置を占めることとなることは、明らかなところである。
【0073】
相互に関連した分子においてトランス位置を占めることのない、配位子X及びYを有する8面体状のMn化合物若しくはイオンは、以下のように示され得るものである:
【化18】

【0074】
本発明の第三及び第四の態様に従う化合物及びイオンは、各Mn原子の周りで互いに関連してトランス位置を占めることのない、配位子X,Y及びZを有する化合物に限定される。それら配位子X,Y及びZが、互いに関連してシス位置を占めることは、明らかなところである。
【0075】
各Mn原子の周りで相互に関連してトランス位置を占めることのない、配位子X,Y及びZを橋絡することによって連結された、二つのMn原子を有する化合物内の一つのMn原子は、次のように示すことが出来る:
【化19】

【0076】
配位子X,Y及びZにおける破線は、それら配位子が、第二のMn原子に、それぞれ結合されていることを示していることが、理解されるべきである。かかる第二の原子は、前記第一のMn原子のそれと同一の配位子の配位を有している。
【0077】
この出願を通じて、医療処置への参照は、ヒト及び獣医学的処置の両方を含むことが意図され、そして薬剤組成物に対する参照は、ヒト若しくは獣医学的処置における使用のための組成物を含むことが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0078】
本発明を示す実験データは、添付の図面を参照して、ここに記述されており、そこにおいて:
【図1a−1k】本発明に従う幾つかの化合物と、幾つかの比較化合物についての溶解性情報、CO放出データ、CO伸縮周波数(stretching frequency)、細胞毒性データ及び抗炎症性データを提示する表である。
【図2】CO電極を用いて測定されたCORM−349,CORM371及びCORM−376からのCO放出の所要時間を示している。
【図3】グアニル酸シクラーゼ阻害剤ODQ及びグリベンクリミド(glibenclimide)(Gli)を用いて、(a)CORM−371;(b)CORM−376及び(c)CORM−376の濃度を変化させて処置した、予め収縮させたラットの大動脈の時間経過に伴う収縮の度合いを示している。
【発明を実施するための形態】
【0079】
発明の具体例及び実験データ
図1a〜1kにおいて、最初のカラムは、出願人によって内部的に用いられた識別番号を示している。
【0080】
図に記録されたデータは、次のように説明される:
(1)細胞毒性は、10,50若しくは100μMの各化合物を用いて、24時間の間インキュベートされた、RAW264.7マクロファージにおいて測定された。細胞生存率におけるロスが、コントロールの百分率として測定された。*は、100μMで検出された毒性を示し;**は、50μMで検出された毒性を示し;***は、10μMで検出された毒性を示している;「無」は、細胞が生きていることを示し、また、何等の毒性も100μMまで検出されなかったことを示している;N.P.は、分析が行なわれなかったことを示している。
(2)抗炎症作用は、リポ多糖(LPS)(1μg/ml)の存在下若しくは不存在下において、各化合物の10,50若しくは100μMを用いて、24時間の間インキュベートされた、RAW264.7マクロファージにおいて測定された。亜硝酸塩(nitrite)が、炎症の指示薬として用いられた。*は、100μMで検出された炎症の減少を示し;**は、50μMで検出された炎症の減少を示し;***は、10μMで検出された炎症の減少を示している;「無」は、炎症に関して、化合物の何等の影響も存在しなかったことを示している;N.P.は、分析評価が行なわれなかったことを示している。
(3)分離された大動脈環を用いた実験は、血管弛緩の程度を評価することで行なわれた。各化合物の100マイクロモル(100μM)が、予め収縮された環に添加され、そして、血管弛緩が、最初の収縮の%として評価され、そこでは、良好(+)若しくは大変良好(++)として示されている。記号:−は、何等の弛緩も検出されなかったことを示している。
【0081】
金属カルボニル錯体からのCOの放出が、カルボモノオキシミオグロビン(MbCO)へのデオキシミオグロビン(deoxy−Mb)の転化を測定することによって、分光光度法的に評価された。MbCOは、500〜600nmの間に特徴のある吸収スペクトルを有しており、遊離したCOの量を定量するために、540nmでの変化が用いられる。ミオグロビン溶液は、公知の濃度及びpHで作られたホスフェート緩衝液に、該蛋白質を公知の濃度で溶解せしめることによって、新たに調製された。亜ジチオン酸ナトリウム(0.1%)が添加されて、各々の読み取りに先立って、ミオグロビンがデオキシ−Mbに転化せしめられた。CORMは、ミオグロビン溶液への添加の前に、図1a〜1kの表の溶解性の欄に特定された溶媒に溶解された。
【0082】
金属カルボニル錯体からのCOの放出は、また、 World Precision Instrument (スチーブネージ、ハーツ、UK)から購入された、プロトタイプの電極を用いて検出された。そのCO電極は、膜被覆の電流測定センサであって、ナイトリック・オキシド(nitric oxide)(NO)センサに類似した基本操作原理に基づいて設計されたものである。実際に、かかるCOセンサは、平衡電位(poise potential)が異なる値(NOに対する860mVと対照したものとしてのCOに対する900mV)に設定されることにて提供される、電流信号の検出のための ISO−NO Mark II meter に接続され得るものである。原則的に、COは、ガス透過膜を通って拡散し、そしてそれから、作用電極上でCO2に酸化される。この酸化は、溶液中におけるCO濃度に直接に関係し得る大きさの電流を作り出すこととなる。COセンサは、標準曲線を生じるように、そして異なるpHと温度で、CORM化合物からのCO放出速度を演算するように用いられた。電極が異なるpHの溶液中に浸漬され、CORM化合物の添加に先立って、30分間平衡化された。実験は、 Grant W6 自動調温装置(ケンブリッジ)を用いて、所望の温度に維持された。この方法は、本願出願人の先の出願:WO 2005/114161に記載されている。
【0083】
細胞培養と生物学的分析
この分析は、「Sawle et. al., British Journal of Pharmacology (2005) 145, 800-810」に記載のものに対応しており、それに対する参照が為されるべきである。
【0084】
ネズミのRAW264.7単球マクロファージが、 European Collection of Cell Cultures (ソールズベリー、ウィルトシャー、UK) から購入され、そして、10%ウシ胎児血清、2mML−グルタミン、100単位ml-1ペニシリン、及び0.1mgml-1ストレプトマイシンで補足された Dulbecco's modified Eagle's medium (DMEM)中で培養された。培養物は、5%CO2、湿潤雰囲気中において、37℃に維持され、そして、実験が、大略80〜90%の集密にて、セル上で行なわれた。マクロファージは、各CORM(10,50及び100μM)の存在下、若しくは不在下において、LPS(1μgml-1)に対して24時間の間曝され、そして、亜硝酸塩レベルと細胞毒性とが、インキュベーションの終了時に決定された。亜硝酸塩レベルは、先に述べた(Foresti et al. J. Biol. Chem. 272, 18411-18417, (1997))ようなグリース法(Griess method)を用いて決定された。このパラメータの測定は、NO生成及び炎症の指示として、広く受け入れられている。簡単に言えば、24ウェル・プレートで培養された処理セルから培地が移され、96ウェル・プレート(ウェル当たり50μl)内に置かれた。グリース試薬がそれぞれのウェルに添加されて、反応が開始され、プレートは10分間振り動かされ、そして、吸光度が Molecular Devices VERSAmax plate reader にて、550nmで読み取られた。各々のサンプルにおける亜硝酸塩レベルが、亜硝酸ソーダ(セル培養媒体中0μM〜300μM)を用いて生じた標準カーブから算出された。細胞生存度は、 Alamar Blue 分析キットを用いて決定され、そして、先に述べた(Clark et al. Biochem. J. 348, 615-619, (2000))ように、製造者の指示(Serotec, UK)に従って行なわれた。分析は、酸化(青)形態から還元(赤)形態に変化するレドックス指示薬を用いて、生きている細胞の代謝能力を検出することを基本とするものである。赤い色の強度が細胞の代謝作用に比例し、570nmと600nmとの間の吸光度における差異として計算され、そしてコントロールの百分率として表示される。
【0085】
既に述べたように、細胞毒性は、各々の化合物の10,50若しくは100μMを用いて、24時間インキュベートされた、マウスのRAW264.7マクロファージにおいて測定された。細胞生存度におけるロスは、コントロールの百分率として測定された。
【0086】
先述の如く、抗炎症作用が、リポ多糖類(LPS)(1μg/ml)の存在下若しくは不在下において、各化合物の10,50若しくは100μMを用いて、24時間インキュベートされた、マウスのRAW264.7マクロファージにおいて測定された。培養培地における亜硝酸塩が、炎症のインジケータとして測定された。本発明の範囲内の化合物が、一般的に、抗炎症作用を示す一方、CORM350及びCORM379は、実施のテストにおいて、そのようではなかった。それら二つの化合物は、その迅速なCO放出のために、ここで論じられる処置において、有用な効果を有しているものと予測されている。
【0087】
CO放出速度は図1a〜1kに示され、ハーフタイム(分)として表されている。遅い放出速度(ハーフタイム>200分)が、比較化合物に対して示されている一方、速い放出速度(ハーフタイム<50分)が、本発明の範囲内の化合物には見出された。例えば、5つのカルボニル配位子を有するCORM309,310及び318は、4つのカルボニル配位子及び2つのハロゲン配位子を有する対応する化合物(CORM334,338,365)よりも更に長いCO放出時間を有している。3つのカルボニル配位子を有する化合物は、配位子の炭素原子或いは窒素原子がMnに結合している化合物と同様に、COをゆっくりと放出した。遅い放出は、また、Mn−Mn結合を有する化合物(CORM325)にも見出された。
【0088】
溶解性の情報は、Mn−CO錯体がアニオンであるイオン性の化合物が、一般に、生物学的な使用において有利となり得る水溶性であることを示している。CORM378の如き電荷のない錯体は、適当な配位子の存在によって水溶性と為され得る。
【0089】
CO伸縮周波数は、興味のあることである。一般に、弱い金属−CO結合に伴う高いCO伸縮周波数は、COの容易な放出を表すものであるが、そのことは、図1a〜1kにおける本発明の化合物の場合には表れない。
【0090】
試験された本発明の化合物は、主として低い若しくはゼロの細胞毒性を示した。細胞障害のある化合物でさえ、その利点が、その毒性より勝るか、或いは、その有益な効果が、非吸収性形態において、例えば、基質に結合せしめられる等して得られるか、の何れかにおいて、薬剤に用いるに適したものとなり得る。
【0091】
図1a〜1kが示しているように、本発明の化合物において、カルボニル以外の2つの配位子は、相互に関してトランス(対向した)Mn−結合位置を占めることはない。X線データは、CORM371において、配位子が、Oを介してではなく、Sを通じてMn原子に結合していることを示している。
【0092】
CORM371やCORM376に対する血管拡張データは、本発明者等の先の出願:WO 2004/045599において、先に記載されたようにして、測定された。これは、以下により詳細に記載されている。
【0093】
隔離されたラットの大動脈環(isolated rat aortic rings)の調製及び実験プロトコル
隔離された大動脈環の調製の方法が、以前に記述されている(Summut et al Br J Pharmacol 125: 1437-1444, 1998; Motterlini et al Circ Res 90: E17-E24, 2002)。胸部の大動脈が、 Sprague-Dawley ラット(350〜450g)から離隔され、そして、mMで、118NaCl、4.7KCl、1.2KH2PO4、1.2MgSO4・7H2O、22NaHCO3、11グルコース、0.03K+EDTA、2.5CaCl2を含み、10μMのインドメタシンで補足された冷 Krebs-Henseleit 緩衝液(4℃、pH7.4)で洗われた。各大動脈は、外膜組織が切り取られ、そして、環状部分(〜3mm長)が、中央の大動脈のセグメントから取り出された。各環は、それから、37℃に保たれた、連続的に95%O2−5%CO2のガスが供給される Krebs-Henseleit 緩衝液を含む9−mLの器官浴(organ bath)中にて、2つのステンレススチールのフックの間に取り付けられた。一つのフックは Grass FT03 等張力変換器(isometric force transducer)に取り付け、もう片方を、大動脈環の静止張力の制御のために、ソリに固定された。かかる環は、最初に、予め決定した最適条件である2gの静止張力の下に、30分間かけて平衡にさせた。張力の連続的な記録は、 Grass 7D ポリグラフ(Grass Instruments、クインシー、MA)を、 AcqKnowledgeTM ソフトウェア(Linton Instruments、ノーフォーク、UK)を使用した Biopac MP100 システムと組み合わせて行なわれた。各プロトコルを実行する前に、内部参照(internal reference)を供給し、且つ組織間の収縮性の感度における変異性を制御するために、該環が標準投与量のKCl(100mM)にて収縮させられた。YC−1(最終濃度5μM、30分間のプレインキュベーション)の有無により、CORM−3(25μM)の弛緩応答は、フェニレフリン(1μmol/L)にて予め収縮させた大動脈環において評価された。
【0094】
結果
図3(a)は、CORM−371が、それの大動脈環への添加に従って、収縮における濃度に依存した減少を惹起したことを示している。
図3(b)は、CORM−376が、それの大動脈環への添加に続く収縮において、濃度に依存した収縮を惹起したことを示している。対比において、iCORM−376(不活性な同等物)が実験において用いられたとき、収縮は、コントロールと同様に残っていた。
図3(c)は、グアニル酸シクラーゼODQの阻害剤が、CORM−376にて引出された血管弛緩作用を著しく阻害したことを示している。しかしながら、二つの異なる濃度でのグリベンクリミド(glibenclimide)によるATP−依存K+チャンネル(channnel)の阻害は、CORM−376−仲介拡張に影響していない。CORM−371とCORM−376の両方は、大動脈環モデルにおいて、良好な血管拡張剤である。CORM−376による弛緩の下にあるメカニズムは、cGMPを生成するために、COの放出とグアニル酸シクラーゼの活性化を含んでいるように思われる。ATP−依存K+チャンネルは、CORM−376−仲介拡張プロセスに関与しているとは思われない。
【0095】
合成
このセクションにおいて、番号[1],[2],[3]等は、後掲の参考文献を示している。それら参考文献の幾つかは、特定のMnアニオンや異なるカチオンを有する化合物を示している。
【0096】
以下のMrは、計算された分子量である。m/zは、質量分析法によって得られた分子量である。
【0097】
CORM−309[MnBr(CO)5] [1]
[Mn2(CO)10]の4.6g(0.0118mol)が、窒素下に、CCl4の50mlに溶解され、そして、その系が、室温で5〜10分間攪拌された。0.79ml(0.0152mol)のBr2が、それから、ゆっくりと(5〜10分)添加された。更に、かかる系は、40℃で1時間、反応させられた。これに続いて、溶媒が除去され、そして粗製物が、3倍の水で洗浄された。それから、それは、真空乾燥された。
【0098】
次いで、かかる粗製物は、CH2Cl2の〜150mlに溶解され、濾過され、そして、ヘキサンの〜60mlが添加された。それから、その溶液の容量が、ロータリ・エバポレータで〜25mlまで、生成物の沈殿が生じるポイントまで、ゆっくりと低減せしめられた。その後、濾過され、そして、冷石油エーテルの所定割合(40/60)で、洗浄された。4.913gのオレンジ色の固体が得られた。その収率は、76%であった。Mr=274.89。
【0099】
17O NMR(CD2Cl2):δ(ppm)383.0(CO),388.8(CO)
55Mn NMR(CD2Cl2):δ(ppm)−1139線幅(line width)560Hz
IR(CCl4)ν(cm-1):2135(m),2053(vs),2022(w),2002(s)
質量分析(m/z):274/276(M+),218/220(M+−2CO),190/192(M+−3CO),162/164(M+−4CO),134/136(M+−5CO)
元素分析:MnC55Br実測(計算)C:21.73(21.85),Br:29.05(29.07)
【0100】
CORM−310[MnI(CO)5] [2]
1%ナトリウムアマルガムが、窒素雰囲気下、 Schlenk チューブ内において準備された(6mlHg及び〜900mgNa)。これに対して、乾燥THF(テトラフドロフラン)の40mlが添加され、そして、2.00g(5.13mmol)の[Mn2(CO)10]が添加され、更に、その系が40分間激しく攪拌された。
【0101】
その緑色の不透明な「溶液」が、かかる第一の Schlenk チューブから、また、窒素雰囲気下に置かれた第二の Schlenk チューブに移行せしめられた。これに対して、20mlのTHFにおけるI2(2.650g,10.4mmol)の溶液が、一滴ずつ(〜30分)添加された。その溶液は、ゆっくりと、透明な濃赤色/褐色/オレンジ色の色に変化した。かかるI2溶液の完全な添加の後、更に、10分間の攪拌が続けられた。
【0102】
それから、溶媒がロータリ・エバポレータで除去された。その残渣が、1:1CH2Cl2/ヘキサン混合物の120mlで抽出された。次いで、その抽出物は濾過され、そして、溶媒がロータリ・エバポレータで除去された。
【0103】
生成物がヘキサンから−20℃で再結晶され、2.387gのオレンジ色の針状物を得た。収率は72%であった。Mr=321.89。
【0104】
17O NMR(CD2Cl2):δ(ppm)385.7(CO)
55Mn NMR(CD2Cl2):δ(ppm)−1472線幅680Hz
IR(CCl4)ν(cm-1):2127(m),2045(s),2016(m,sh),2004(s)
質量分析(m/z):322(M+),266(M+−2CO),238(M+−3CO),210(M+−4CO),182(M+−5CO)
元素分析:MnC55I実測(計算)C:18.64(18.66),I:39.68(39.42)
【0105】
CORM−312[PPN][Mn2(CO)6Cl3] [3]
200mg(0.87mmol)の[MnCl(CO)5]と、350mg(0.61mmol)のPPNClが、窒素下で1時間、10mlのCH2Cl2中において、共に還流させられた。室温に冷却した後、更に10mlのCH2Cl2が添加され、溶液から出てきた生成物が溶解された。それから、その溶液が濾過され、そして、50mlのヘキサンが添加された。
【0106】
生成物は、直ちに沈殿し出したが、その沈殿を完全に且つ確実に行なうために、45分間、その状態に保持されるようにした。かかる生成物は濾別され、ヘキサンで洗浄され、そしてそれから、真空乾燥された。429mgの鮮やかな黄色の固体が得られた。収率は100%であった。
【0107】
1H NMR(CD2Cl2):δ(ppm)7.47(メタ、パラ、Ph),7.61(オルト、Ph)
13C NMR(CD2Cl2):δ(ppm)127.0(ipso,N=108Hz),129.6(メタ、N=13Hz),132.2(オルト、N=11Hz),133.9(パラ),222.2(CO)
17O NMR(CD2Cl2):δ(ppm)383.3(CO)
55Mn NMR(CD2Cl2):δ(ppm)−267線幅3280Hz
質量分析(ES-)(m/z):299([Mn2(CO)335Cl3-);243([Mn2(CO)35Cl3-
IR(CH2Cl2)ν(cm-1):2024(s),1934(vs)
【0108】
この予備的な分析データに基づいて、生成物は、最初は、[PPN][Mn(CO)4Cl2]であると確認された。しかしながら、更なる分析、特にX線結晶構造分析により、かかる生成物が表題の構造を有していることが、明らかとなった。[Mn2(CO)6Cl3-の構造は、また、報告されている。 A. Sieker, A. J. Blake and B. F. G. Johnson, "New mixed carbonyl-nitro and -nitrito complexes of manganese and rhenium," J. Chem. Soc., Dalton Trans., 1996, 1419-27 を参照されたい。
【0109】
CORM−313[MnCl(CO)3(bpy)] [4]
115mg(0.5mmol)の[MnCl(CO)5](CORM−318)と、78mg(0.5mmol)の2,2’−ビピリジンとが、窒素下において、〜45分間、15mlのエーテル中において、共に還流せしめられた。この時間の間、生成物が沈殿して出た。
【0110】
それから、かかる系が、完全な沈殿を確実にするために、−20℃に冷却され、そして、生成物が濾過によって集められた。冷エタノールで数回洗浄され、そしてそれから、真空乾燥された。149mgのオレンジ色の固体が得られた。収率は90%であった。Mr=330.61。
【0111】
(m/z)(−Cl)295.1H(δ,ppm),7.55(H5),8.03(H4),8.17(H3),9.2(H6).
1H NMR(CD2Cl2):δ(ppm)7.55(t{J=6.1Hz},H5 1H),8.03(t{J=7.4Hz},H4 1H),8.17(d,{J=7.4Hz},H3 1H),9.2(d{J=4.9Hz},H6 1H)
13C NMR(CD2Cl2):δ(ppm)122.8(C3又はC5),126.6(C3又はC5),138.8(C4),153.6(C6),155.8(C2
17O NMR(CD2Cl2):δ(ppm)376.9(CO trans to Cl),382.7(COs trans to N)
55Mn NMR(CD2Cl2):δ(ppm)174線幅4950Hz
IR(THF)ν(cm-1):2025(vs),1935(s),1913(s)
質量分析(m/z):295(M+−Cl),246/248(M+−3CO),211(M+−3CO−Cl)
元素分析:MnC13823Cl実測(計算)C:46.88(47.23),H:2.20(2.44),N:8.34(8.47),Cl:10.79(10.72)
【0112】
CORM−318[MnCl(CO)5
方法(a) [1],[2]
2.00g(5.13mmol)の[Mn2(CO)10]が、窒素下で、氷浴中において、脱ガスされたCCl4の最小量(〜40ml)に溶解せしめられた。それから、CCl4のCl2飽和サンプル(12.5ml)が、平衡圧力滴下漏斗を用いて、攪拌下に、一滴ずつ(〜30分)添加された。この完全な添加の後、その系が、室温に温められるようにした。そして、更に4時間の間攪拌された。
【0113】
黄色い沈殿物が、確実に形成された。それが濾別され、そして、CCl4で数回洗浄され、更に、真空乾燥された。得られた生成物の質量は0.915gであった。収率は39%であった。
【0114】
17O NMR(CD2Cl2):δ(ppm)389.2(CO trans to Cl),381.5(CO trans to CO)
55Mn NMR(CD2Cl2):δ(ppm)−954線幅340Hz
IR(CCl4)ν(cm-1):2140(w),2055(vs),2024(w),1999(m)
質量分析(m/z):230/232(M+),174/176(M+−2CO),146/148(M+−3CO),118/120(M+−4CO),90/92(M+−5CO)
【0115】
方法(b) [5]
1.08g(2.76mmol)の[Mn2(CO)10]が、窒素下で、乾燥CH2Cl2の75mlに溶解せしめられた。4ml(0.048mol)のSO2Cl2が、それから、かなりゆっくりと(5〜10分)添加された。系が、幾らかの生成物が溶液から出てきて、そして、IRが、反応が完結していることを示すポイントまで、〜8日間反応するようにされた。
【0116】
溶媒が真空下で除去され、そして、残った固体がエタノールで数回洗浄され、更に真空乾燥された。1.225gの黄色の固体が得られた。収率は96%であった。
【0117】
CORM−322[MnBr(CO)3(2,2’−ビキノリル)] [6]
137mg(0.5mmol)の[MnBr(CO)5](CORM−309)と、115mg(0.45mmol)の2,2’−ビキノリルとが、窒素下で、〜3時間、10mlのエーテル中において、共に還流させられた。この時間の間、生成物が沈殿して出た。過剰の[MnBr(CO)5]が、エーテル中におけるビキノリルの不溶性のために用いられていることに注意されたい。
【0118】
それから、系が、−20℃に冷却されて、完全な沈殿が確実に為され、そして、生成物が濾過によって集められた。それは、冷エーテルで数回洗浄され、そしてそれから、真空乾燥された。206mgの濃赤色の固体が得られた。収率は96%であった。Mr=475.18。
【0119】
1H NMR(CD2Cl2):δ(ppm)7.78(t{J=6.0Hz}H6),8.03(t{J=6.8Hz}H7,H8),8.33(d{J=7.7Hz},H4),8.55(d{J=6.6Hz}H9),8.99(d{J=8.8Hz},H3
55Mn NMR(CD2Cl2):δ(ppm)283線幅3500Hz
IR(THF)ν(cm-1):2021(vs),1942(s),1912(s)
質量分析(m/z):395(M+−Br),339(M+−Br−2CO),311(M+−Br−3CO)
元素分析:MnC211223Br実測(計算)C:52.85(53.08),H:2.36(2.55),N:5.84(5.90),Br:16.87(16.82)
【0120】
CORM−324[MnBr(CO)3{P(OMe)32] [5]
150mg(0.542mmol)の[MnBr(CO)5]と、105mg/100μl(0.848mmol)のP(OMe)3とが、窒素下で、4時間、8mlのベンゼン中において、共に還流せしめられた。これに続いて、溶媒が除去されて、オレンジ色のオイルを与えた。これを、熱石油エーテル(40/60)から再結晶して、オレンジ色の固体を得た。
【0121】
しかしながら、かかる生成物は不純なものであり、それで、それは、クロマトグラフィによって精製された。シリカゲルのカラムが、石油エーテル(40/60)を用いて準備された(40×3cm)。バンド1(黄色)が、5:1石油エーテル/エーテルで溶出した。これは、[MnBr(CO)3{P(OMe)32]の mer−trans 異性体として、(IRによって)同定された。78mgの黄色/褐色の固体が得られた。収率は、30.8%であった。
【0122】
1H NMR(CD2Cl2):δ(ppm)3.80(CH3,N=11Hz)
13C NMR(CD2Cl2):δ(ppm)53.2(CH3),214.1(COs trans to P),218.7(CO trans to Br)
17O NMR(CD2Cl2):δ(ppm)373.5(CO),61.6(OMe)
55Mn NMR(CD2Cl2):δ(ppm)−1267線幅5100Hz
IR(Et2O)ν(cm-1):2054(w),1972(vs),1950(m)
質量分析(m/z):387(M+−Br),331(M+−Br−2CO)
元素分析:MnC91829Br実測(計算)C:22.80(23.15),H:3.45(3.88),Br:16.81(17.11)
【0123】
バンド2(黄色)が、3:1石油エーテル/エーテルで溶出した。これは、[MnBr(CO)3{P(OMe)32]のfac−異性体として、(IRによって)同定された。不確定な量の黄色オイルが得られた。IR(Et2O)ν(cm-1):2043(s),1977(s),1937(s)。
【0124】
バンド3(黄色)が、3:1の石油エーテル/エーテルで溶出した。これは、3置換生成物[MnBr(CO)2{P(OMe)33]として、(IRによって)同定された。25mgの黄色の固体が得られた。その収率は、8.2%であった。IR(Et2O)ν(cm-1):1979(s),1900(s)。
【0125】
CORM−325[Mn(CO)4(PPh3)]2 [7]
1.0g(2.6mmol)の[Mn2(CO)10]と、1.33g(5.2mmol)のPPh3とが、窒素下、2時間、20mlのペンタノール中において、共に、130℃に加熱された。この時間の間、溶液は赤色に変わり、そしてそれから、オレンジ色に変わり、更に、生成物が沈殿した。この系は、室温に冷却されて、それから、生成物が濾過によって集められた。それは、石油エーテルの幾らかの割合(40/60)で、洗浄された。
【0126】
生成物が、ベンゼン/ヘプタンから再結晶され、そしてそれから、ヘプタンと、更に石油エーテル(40/60)で洗浄された。二つの収獲が、オレンジ色固体の(0.511g及び0.332g)として得られた。総収率は38%であった。Mr=858.54。
【0127】
1H NMR(CD2Cl2):δ(ppm)7.45(mult、メタ、パラ3H),7.52(mult、オルソ2H)
13C NMR(CD2Cl2):δ(ppm)137.1(ipso,1CP=41.1Hz),133.0(オルソ、2CP=10.6Hz),130.3(パラ),128.9(メタ、3CP=9.4Hz),227.1(CO)
17O NMR(CD2Cl2):δ(ppm)380.7(CO)
31P NMR(CD2Cl2):δ(ppm)76.08(PPh3
55Mn NMR(CD2Cl2):δ(ppm)−2391線幅187Hz
IR(CH2Cl2)ν(cm-1):1985(m,sh),1953(vs)
質量分析(m/z):429(M/2+),401(M/2+−CO),317(M/2+−4CO),(−2PPh3,−2CO,+H+)279
元素分析:Mn2443028実測(計算)C:61.89(61.56),H:3.66(3.52)
【0128】
CORM−328[MnBr(CO)3(2,2’−ビピリジン)][7]
275mg(1mmol)の[MnBr(CO)5]と、172mg(1.1mmol)の2,2’−ビピリジン(即ち、やや過剰)とが、窒素下で、〜5時間、20mlのエーテル中において、共に還流せしめられた。反応は、[MnBr(CO)5]が、最早存在しなくなったことが明らかになるまで、IR分光検査法によって監視された。この時間の間に、生成物が沈殿して出た。
【0129】
それから、系が−20℃に冷却されて、完全な沈殿が確実とされ、そして、生成物が濾過によって集められた。それは、冷エーテルで数回洗浄され、そしてそれから、真空乾燥された。356mgのオレンジ色の固体が得られた。収率は、95%であった。Mr=375。
【0130】
1H NMR(CD2Cl2):δ(ppm)7.78(t{J=6.0Hz}H6),8.03(t{J=6.8Hz}H7,H8),8.33(d{J=7.7Hz},H4),8.55(d{J=6.6Hz}H9),8.99(d{J=8.8Hz},H3
17O NMR(CD2Cl2):δ(ppm)測定不能
55Mn NMR(CD2Cl2):δ(ppm)283線幅3500Hz
IR(THF)ν(cm-1):2021(vs),1942(s),1912(s)
質量分析(m/z):295(M+−Br),239(M+−Br−2CO),211(M+−Br−3CO)
元素分析:MnC211223Br実測(計算)C:52.85(53.08),H:2.36(2.55),N:5.84(5.90),Br:16.87(16.82)
【0131】
イソプロピル−ジアザブタジエン(iPr−DAB) [9] CORM−331にお ける使用
7.255g(0.05mol)のグリオキサル(40%水溶液)が、窒素下で、〜5−10mlの水に添加された。それから、10.9ml(0.128mol)のイソプロピルアミンが、激しく攪拌しつつ、一滴ずつ添加され、そして、反応が活発となった。更に、それは、〜2−3時間攪拌された。
【0132】
これに続いて、生成物が、3倍の割合のエーテルで抽出され、硫酸マグネシウムで乾燥され、そしてそれから、濾過された。生じた溶液が、ロータリ・エバポレータで乾燥に付されて、灰色/淡い褐色の固体を得た。これを、−80℃で、エーテルから再結晶した。1.268gの白色の針状物が得られた。収率は18%であった。
【0133】
CORM−331[MnCl(CO)3iPr−DAB)][10]
115mg(0.5mmol)の[MnCl(CO)5]と、70.2mg(0.5mmol)のiPr−DABとが、窒素下で、〜1時間、10mlのエーテル中において、共に還流させられた。この時間の間、生成物が沈殿して出た。
【0134】
次いで、系が−20℃に冷却されて、完全な沈殿が確実と為され、そして、生成物が濾過によって集められた。それは、冷エーテルで数回洗浄され、そしてそれから、真空乾燥された。140mgのオレンジ色の固体が得られた。収率は、89%であった。Mr=314。
【0135】
1H NMR(CD2Cl2):δ(ppm)1.56(s,CH3 12H),4.44(mult,iPr CH 2H),8.25(s、イミン CH 2H)
13C NMR(CD2Cl2):δ(ppm)22.6(iPr CH3),23.0(iPr CH3),64.6(iPr CH),159.4(C=N),216.4(CO trans to Cl),221.8(CO’s trans to N)
17O NMR(CD2Cl2):δ(ppm)378.4(CO trans to Cl),384.6(COs trans to N)
55Mn NMR(CD2Cl2):δ(ppm)131線幅3100Hz
IR(THF)ν(cm-1):2024(vs),1938(s),1916(s)
質量分析(m/z):223(M+−Cl−2CO)
元素分析:MnC111623Cl実測(計算)C:41.65(41.99),H:5.25(5.13),N:8.70(8.90),Cl:11.59(11.27)
【0136】
CORM−332[MnCl(CO)3(1,10−フェナントロリン−5,6−ジオ ン)]
115mg(0.5mmol)の[MnCl(CO)5]と、105mg(0.5mmol)の1,10−フェナントロリン−5,6−ジオン、dpqとが、窒素下で、〜11/2−2時間の間、10mlのエーテル中において、共に還流せしめられた。溶液は、最初に暗褐色に変わり、そしてそれから、黒色の沈殿物が生成した。
【0137】
それから、系が−80℃に冷却されて、完全な沈殿が確実とされ、そして、生成物が濾過によって集められた。それは、冷エーテルで数回洗浄され、そしてそれから、真空乾燥された。160mgの暗緑色/褐色の固体が得られた。収率は83%であった。Mr=384。
【0138】
1H NMR(CD2Cl2):δ(ppm)7.82(br,1H),8.63(br,1H),9.46(br,1H)
55Mn NMR(CD2Cl2):δ(ppm)270線幅5780Hz
IR(THF)ν(cm-1):2028(vs),1941(s),1918(s)
質量分析(m/z):349(M+−Cl)
元素分析:MnC15625Cl実測(計算)C:45.35(46.84),H:1.67(1.57),N:7.15(7.28),Cl:9.25(9.22)
【0139】
CORM−333[Mn(CO)4(2,2’−ビピリジン)][BF4] [10]
113mg(0.3mmol)の[MnBr(CO)3(2,2’−ビピリジン)](CORM−328)と、58mg(0.3mmol)のAgBF4とが、CO雰囲気下で、〜3−4時間、10mlの乾燥THF中において、共に攪拌された。反応の完了が、IRによって確認された。
【0140】
次いで、AgBr沈殿物が濾過によって除去され、そして、10mlのペンタンが添加された。系を−78℃に冷却して、「油状」の沈殿物が生じた。その後、全ての溶媒が除去され、そしてその残渣が、CH2Cl2の最小限の量に溶解され、ヘキサンが添加され、更に、系が、一晩中、冷凍機内に配置された。こうして、沈殿物が生成し、それは、濾過によって集められた後、ヘキサンで洗浄され、そしてそれから、真空乾燥された。68mgの黄色の固体が生成した。収率は55%であった。Mr=410。(m/z)(−BF4)323。
【0141】
55Mn NMR(CD2Cl2):δ(ppm)−289線幅1940Hz
IR(CH2Cl2)ν(cm-1):2127(w),2050(vs),1938(w),1947(vs)
質量分析(m/z):323(M+),295(M+−CO),239(M+−3CO),211(M+−4CO)
【0142】
CORM−334[コリン][Mn2(CO)6Cl3][3]
450mg(1.95mmol)のMn(CO)5Clと、223mg(1.60mmol)の塩化コリンとが、アルゴン下で、1.5時間、20−25mlの乾燥DCM(ジクロロメタン)中において、還流せしめられた。冷却を行なった後、更に20mlのDCMが添加されて、全ての生成物が確実に溶解せしめられるようにした。それから、それが濾過され、そして、ヘキサンが添加された。しかしながら、それは、生成物の「オイリング(oiling)」を生じた。このため、全ての溶媒が、ロータリ・エバポレータで除去された。
【0143】
幾つかの試みの後、幾らかの固体沈殿物が、−18℃でのDCM/ヘキサンからの再結晶によって形成された。
120mgの黄色/オレンジ色の固体が得られた。収率は25%であった。Mr=488.47。
【0144】
17O NMR(CD2Cl2):δ(ppm)384.9(CO)
IR(CH2Cl2)ν(cm-1):2026(s),1938(s),1929(s,sh)
元素分析:C1114Cl3Mn2NO7実測(計算)C:27.35(27.05),H:4.17(2.89),N:4.18(2.87),Cl:23.40(21.77)
【0145】
かかる予備的な分析データに基づいて、生成物は、最初は、[コリン][Mn(CO)4Cl2]として、同定された。しかしながら、追加の分析、特にX線結晶構造分析により、かかる生成物が、見出しの構造を有していることが、明らかとなった。その構造[Mn2(CO)6Cl3-は、また、報告されている。 A. Sieker, A. J. Blake and B. F. G. Johnson, "New mixed carbonyl-nitro and -nitrito complexes of manganese and rhenium," J. Chem. Soc., Dalton Trans., 1996, 1419-27.. を参照されたい。
【0146】
CORM−338[Me3NCH2CH2OH][Mn(CO)42
450mg(1.40mmol)の[Mn(CO)5I]と、301mg(1.30mmol)のヨウ化コリンとが、55℃で、36時間、15mlのメタノール中において、攪拌された(2時間後に記録されたIRスペクトルは、出発物質のかなりの量が残っていることを示した)。
【0147】
これに続いて、溶媒がロータリ・エバポレータで除去されて、黄色/褐色の「油状」の固体を与えた。この残渣がDCMに溶解されて濾過され、そしてそれから、ジエチルエーテルが添加された。これは、白色の固体(多分未反応のヨウ化コリン)を沈殿し、それは、濾別された。それから、溶媒がロータリ・エバポレータで除去され、そして、残渣が、再び、DCMに溶解された。次いで、少しのヘキサンが添加された。しかしながら、これは、生成物をオイルとして分離する結果となった。それ故に、全ての溶媒がロータリ・エバポレータで除去され、そして、生じた半固体状の残渣が、ジエチルエーテルで2回洗浄された。これにより、固体状の生成物を生じ、それは、真空乾燥された。
405mg(0.771mmol)のオレンジ色/褐色の固体が得られた。Mr=524.96。収率は、59%であった。
【0148】
1H NMR(CD2Cl2):δ(ppm)3.11(br,OH 1H),3.35(br,CH3 9H),3.68(br,CH2 2H),4.22(br,CH2 2H)
13C NMR(CD2Cl2):δ(ppm)55.29(t{J=3.9Hz},CH3),56.35(CH2),68.16(t{J=2.8Hz},CH2),213.26(CO),221.91(CO)
17O NMR(CD2Cl2):δ(ppm)377.3(CO),379.4(CO)
55Mn NMR(CD2Cl2):δ(ppm)−863線幅6650Hz
IR(CH2Cl2)ν(cm-1):2077(s),2002(vs),1984(s),1942(s)
質量分析(m/z):421(M-),393(M-−CO),365(M-−2CO),337(M-−3CO),309(M-−4CO)
元素分析:MnC914NO52実測(計算)C:20.62(20.59),H:2.55(2.69),N:2.57(2.67),I:48.61(48.35)
【0149】
[Mn(CO)5(SO3CF3)][11] CORM−349,369,370, 371,376,377,378,379を作るための使用
420mg(1.53mmol)の[MnBr(CO)5]と、490mg(1.90mmol)のAg(SO3CF3)とが、暗黒(箔に包まれたフラスコ)中において、窒素下で、〜3時間、20mlの乾燥CH2Cl2中において、共に攪拌された。反応が、IRによってモニターされた。この時間の後、全ての[MnBr(CO)5]が反応したことが明らかとなり、そこで、AgBrと過剰のAg(SO3CF3)とが、濾過(シンター+濾過助剤)によって除去された。
【0150】
それから、黄色の濾液が、その容量を減少させるために、箔で包んだフラスコ中において、ロータリ・エバポレータ上に配置された。そして、ヘキサンが添加され、次いで、その生成物が、ロータリ・エバポレータでの乾燥に付された。462mgの黄色い固体が得られた。収率は88%であった。生成物は感光性であることに注意。Mr=344。
【0151】
13C NMR(CD2Cl2):δ(ppm)118.9(q{J=318Hz},CF3),202.4(broad,CO)
17O NMR(CD2Cl2):δ(ppm)389.4(eq.CO’s),405.2(ax.CO)
55Mn NMR(CD2Cl2):δ(ppm)−228線幅4200Hz
IR(CH2Cl2)ν(cm-1):2158(w),2073(vs),2020(s)
質量分析(m/z):208(M+−CO),152(M+−3CO)
【0152】
[NMe4][アセテート][12] CORM−349における使用
これは、商業的に入手可能であるが、最も早い参考文献としては、[12]において見出すことが出来る。
【0153】
247mg(4.11mmol)の酢酸と、1.50g(411mmol)の[NMe4][OH](25wt.%のMeOH溶液)とが、40℃で、4時間、10mlのメタノール中において、攪拌された。これに続いて、溶液は濾過され、そしてそれから、溶媒がロータリ・エバポレータで除去されて、粘稠なオイルが生じ、そこにおいて、固体が形成されることが始まった。溶媒の最後の痕跡が高真空の下で除去されて、白色の固体が残り、それはエーテルで洗浄され、そして真空乾燥された。
480mgの白色の固体が生じた。収率は87.6%であった。
【0154】
CORM−349[Me4N][(OC)3Mn(μ−OCOCH33Mn(CO)3
150mg(0.436mmol)のMn(CO)5(SO3CF3)と、116mg(0.872mmol)の[Me4N][アセテート]とが、アルゴン下で、50−55℃で、3時間、8mlの乾燥THF及び2mlのメタノール中において、攪拌された。この時間の間、溶液の色は、少し暗い黄色/オレンジ色になった。
【0155】
これに続いて、溶媒がロータリ・エバポレータで除去されて、黄色/オレンジ色の半固体状残渣を与えた。これが、−18℃でDCM/エーテルから結晶化させられて、黄色の結晶生成物(123mg,0.232mmol)を与えた。収率は100%であった。
【0156】
この予備的なIRデータに基づいて、生成物は、最初は、[Me4N][(Mn(CO)4(OAc)2]として、同定された。しかしながら、追加の分析、特にX線結晶構造分析により、かかる生成物は見出しの構造を有していることが、明らかとなった。更に、質量スペクトルデータは、また、一つのMn原子よりも多くを有している生成物であることを裏付けている。
【0157】
Mr=529.21.
1H NMR(CD2Cl2):δ(ppm)2.29(s、アセテート CH3 6H),3.33(s,NMe4 12H)
13C NMR(CD2Cl2):δ(ppm)23.55(アセテート CH3),56.34(NMe4),176.15(C=O),224.20(CO)
17O NMR(CD2Cl2):δ(ppm)388.6(CO)
IR(CH2Cl2)ν(cm-1):2027(s),1930(vs)
質量分析(ES-)(m/z):455([Mn2(CO)6(OAc)3-);315([Mn2(CO)(OAc)3-又は[Mn2(CO)4(OAc)(OH)2-);257([Mn(CO)3(OAc)2-
元素分析:C1621Mn2NO12実測(計算)C:36.80(36.31),H:4.90(4.00),N:3.60(2.65)
アニオンの二量体構造は、X線結晶学によって確立されている。
【0158】
[NMe42[マロネート] CORM−350における使用
428mg(4.11mmol)のマロン酸と、1.50g(4.11mmol)の[NMe4][OH](MeOH中25wt.%溶液)とが、アルゴン下で、40℃、4時間、9mlのメタノール中において攪拌された。これに続いて、溶液は濾過され、それから、溶媒がロータリ・エバポレータで除去されて、「じめじめした(damp)」白い固体を与えた。これがエーテルで洗浄され、そしてそれから、真空乾燥された。
712mgの白い固体が生産された。収率は97.8%であった。
【0159】
CORM−350[Me4N][Mn(CO)4(マロネート)]
150mg(0.546mmol)のMn(CO)5Brと、117mg(6.00mmol)のAgBF4とが、アルゴン下で、〜2時間、8mlの乾燥THF中において、共に攪拌された。この時間の間、溶液の色は、より黄色となり、そして、黒く着色した沈殿物が形成された。「[Mn(CO)5(THF)][BF4]」の溶液が、セライトを通して濾過され、137mg(0.546mmol)の[Me4N][マロネート]が、THFの攪拌された懸濁液中に導かれた。
【0160】
かかる系は、暗い一晩中攪拌され、その後、黒く着色した沈殿物が存在する黄色の溶液となった。IRは、何等のペンタカルボニル出発原料も残っていないことを示した(即ち、2時間後に記録されたIRは、ペンタカルボニルの存在を示した)。濾過の後、溶媒がロータリ・エバポレータで除去され、そして、生成物がエーテルで数回洗浄された。
78mgの黒い黄色の固体が得られた。収率38.8%。
【0161】
CORM−363[Mn(CO)4Br(O2CCH2CO2H)][NMe4
150mg(0.546mmol)のMn(CO)5Brと、95mg(0.535mmol)の[Me4N][O2CCH2CH2CO2H)]とが、アルゴン下で、50℃、一晩中、12mlのMeOH中において、共に攪拌された。この後、それは濾過され、そして、溶媒がロータリ・エバポレータで除去されて、「じめじめした」黄色の固体を与えた。これはエーテルで洗浄され、そしてそれから、真空乾燥された。
196mgの黄色の固体が生産された。収率は86.4%であった。
【0162】
[NMe4][O2CCH2CH2CO2H] [13] CORM−364における使用
486mg(4.11mmol)のマロン酸と、1.50g(4.11mmol)の[NMe4][OH](MeOH中25wt.%溶液)とが、アルゴン下で、35℃、一晩中、9mlのメタノール中において攪拌された。これに続いて、溶液が濾過され、そしてそれから、溶媒がロータリ・エバポレータで除去されて、白色固体を与えた。これは、僅かなアセトンで洗浄され、そしてエーテルで洗浄され、更に真空乾燥された。
743mgの白色の固体が生産された。収率は94.4%であった。
【0163】
CORM−364[Mn(CO)4Br(O2CCH2CH2CO2H)][NMe4
100mg(0.364mmol)のMn(CO)5Brと、70mg(0.364mmol)の[Me4N][O2CCH2CH2CO2H)]とが、アルゴン下で、40−45℃で、一晩中、MeOH/DCM(7:3)中において、共に攪拌された。これに続いて、それは濾過され、それから、溶媒がロータリ・エバポレータで除去されて、「じめじめした」黄色の固体を与えた。これは、DCMとエーテルで洗浄され、そしてそれから、真空乾燥された。
130mgの黄色の固体が生産された。収率は81.6%であった。
【0164】
[(15−クラウン−5)Na][Br] CORM−365における使用
1.070g(4.86mmol)の15−クラウン−5(商業的に入手可能)と、500mg(3.78mmol)のNaBrとが、15mlのメタノール中において、50℃で、3時間、共に攪拌された。これに続いて、溶媒がロータリ・エバポレータで除去されて、固体の生成物を与えた。それは、エーテルで数回洗浄され、それから、真空乾燥された。
1.317gの白色固体が得られた。収率は83.9%であった。
【0165】
CORM−365[Mn(CO)4Br2][(15−クラウン−5)Na] [14 ],[3]
200mg(0.727mmol)のMn(CO)5Brと、219mg(0.678mmol)の[(15−クラウン−5)Na]Brとが、アルゴン下で、24時間、50−55℃で、10mlのMeOH中において、共に攪拌された。これに続いて、溶媒がロータリ・エバポレータで除去されて、オレンジ色/褐色の油状の残渣を与えた。これが、20mlのDCMに溶解され、濾過され、そしてそれから、ヘキサンが添加された。しかしながら、これは、生成物のオイリングアウトを生じた。
【0166】
それ故に、全ての溶媒がロータリ・エバポレータで除去されることにより、再び、油状の残渣が生じた。エーテルが添加され、それからロータリ・エバポレータで除去されて、凝固を始める残渣を与えた。少量のエーテルが、それから添加され、固体の生成物が単離された。これがペンタンで洗浄され、それから真空乾燥された。
256mgのオレンジ色の固体が得られた。収率は66.2%であった。
【0167】
CORM−368 Mn(CO)4(η2−S2CNEt2) [15],[16]
150mg(0.436mmol)のMn(CO)5(SO3CF3)と、98mg(0.436mmol)のNa[S2CNEt2]・3H2O(商業的に入手可能)とが、アルゴン下で、35℃、4時間、8−9mlのアセトン中において、攪拌された。それから、溶媒がロータリ・エバポレータで除去されて、黄色の残渣が残され、それが、エーテルで抽出された。溶媒の除去により、黄色の固体が得られた。これが、(a)−18℃、2日間、ペンタンから再結晶され(33mgの黄色固体を与えた)、及び(b)−78℃で、〜1時間、ヘキサンから再結晶された(55mgの淡色の黄色い固体を与えた)。更に、29mgが残渣から得られた。
合計収率は117mgで、85.1%であった。
【0168】
1H NMR(CD2Cl2):δ(ppm)1.28(t{J=7.2Hz},CH3 3H),3.75(q{J=7.0Hz},CH2 2H)
13C NMR(CD2Cl2):δ(ppm)11.99(CH3),43.99(CH2),206.37(CS2),211.67(CO),216.92(CO)
17O NMR(CD2Cl2):δ(ppm)367.3(CO),380.0(CO)
55Mn NMR(CD2Cl2):δ(ppm)−1031線幅2690Hz
IR(CH2Cl2)ν(cm-1):2086(m),2007(vs),1990(s),1947(s)
質量分析(m/z):203(M+−4CO)
元素分析:MnC910NS24実測(計算)C:34.35(34.29),H:3.15(3.20),N:4.41(4.44),S:20.56(20.34)
【0169】
CORM−369[コリン][Mn(CO)42] [3]
450mg(1.40mmol)のMn(CO)5Iと、301mg(01.30mmol)のヨウ化コリンとが、15mlのメタノール中において、55℃で、36時間、攪拌された(2時間後に記録されたIRは、かなりの量の出発材料が残っていることを示した)。
【0170】
これに続いて、溶媒がロータリ・エバポレータで除去されて、黄色/褐色の「油状」固体を与えた。この残渣が、DCMに溶解されて濾過され、そしてそれから、エーテルが添加された。これがクラッシュされて、白色固体(多分未反応のヨウ化コリン)が生じ、それが濾別された。溶媒が、それから、ロータリ・エバポレータで除去され、そして、残渣が、再び、DCMに溶解せしめられた。次いで、少量のヘキサンが添加された。しかしながら、これは、生成物をクラッシュして、オイルとして取り出すこととなった。それ故、全ての溶媒がロータリ・エバポレータで除去され、そして、生じた半固体状の残渣が、エーテルで二度洗浄された。これで、固体の生成物が生じ、それが真空乾燥された。
405mgのオレンジ色/褐色の固体が得られた。収率は59.3%であった。
【0171】
1H NMR(CD2Cl2):δ(ppm)3.35(br,NMe3),3.69(br,CH2),4.18(br,CH2
13C NMR(CD2Cl2):δ(ppm)54.0(NMe3),56.6(CH2),68.5(CH2),211.6(CO),219.8(CO)
IR(CH2Cl2)ν(cm-1):2092(w),2015(vs),1989(s),1943(s)
質量分析(m/z):215(M-−4CO)(1:2:1観察ピークの割合、即ち79Br/81Br)
【0172】
[Me4N][Boc−アラネート] CORM−370における使用
778mg(4.11mmol)のBoc−アラニンと、1.50g(4.11mmol)の[NMe4][OH](メタノール中25wt.%溶液)とが、10mlのメタノール中において、アルゴン下で、35℃、一晩中、攪拌された。これに続いて、溶液は濾過され、そしてそれから、溶媒がロータリ・エバポレータで除去されて、「じめじめした」白色の固体を与えた。これが、少量のアセトンで洗浄され、そしてエーテルで洗浄され、それから真空乾燥された。
1.007gの白色固体が生産された。収率は93.4%であった。
【0173】
CORM−370[Me4N][Mn2(CO)6(Boc−アラネート)3
150mg(0.436mmol)のMn(CO)5(SO3CF3)と、220mg(0.837mmol)の[Me4N][Boc−アラネート]とが、8mlの乾燥THFと2mlのメタノール中において、アルゴン下、50−55℃で、3時間、攪拌された。この時間の間、溶液の色は、少し黒い黄色/オレンジ色となった。
【0174】
これに続いて、溶媒がロータリ・エバポレータで除去されて、黄色/オレンジ色の半固体状残渣を与えた。これがDCMに溶解されて、セライトを通じて濾過され、副生物の[Me4N][SO3CF3]が除去され、そしてそれから、エーテルが添加されて、生成物が沈殿させられた。しかしながら、ゲル様の沈殿物が形成され、そこでそれは、セライト上に集められて、エーテルで数回洗浄され、そしてそれから、DCMでセライトを通じて洗浄された。ロータリ・エバポレータでの溶媒の除去及びそれからの真空乾燥により、209mgのオレンジ色/黄色の固体生成物が提供された。収率は100%であった。
【0175】
1H NMR(CD2Cl2):δ(ppm)0.92(s、アラニン CH3),1.55(s,tBu CH3),3.47(s,v.broad,NMe4),4.09(アラニン CH),8.52(s,v.broad,NH)全てのシグナルは、非常にブロードである。スペクトルは、それ程有用でない。
13C NMR(CD2Cl2):δ(ppm)19.5(アラニン CH3),27.9(tBu CH3),56.7(NMe4),78.6(アラニン CH),83.4(tBu CMe3),155.5(C=O),160.3(C=O),222.1(CO)全てのシグナルは、ブロードである。
17O NMR(CD2Cl2):δ(ppm)385.5(CO),386.8(CO)
IR(CH2Cl2)ν(cm-1):2032(s),1919(vs),1747(w),1701(m),1630(s)
質量分析(m/z):653([Mn2(CO)6(Boc−アラネート)2−H+-);515([Mn(CO)3(Boc−アラネート)2-);515([Mn(CO)3(Boc−アラネート)−H+-
元素分析:C3454Mn2418実測(計算)C:46.31(44.55),H:7.00(5.95),6.83(6.11)
【0176】
予備的分析データに基づいて、生成物は、最初は、[Me4N][Mn(CO)4(Boc−アラネート)2]として、同定された。しかしながら、追加の分析により、生成物が見出しの構造を有していることが、明らかとなった。
【0177】
[NMe4][チオアセテート] CORM−371における使用
商業的に入手可能である。
418mg(5.49mmol)のチオ酢酸と、2.00g(5.49mmol)の[NMe4][OH](MeOH中25wt.%溶液)とが、12mlのメタノール中において、一晩中、35℃で、攪拌された。これに続いて、系が濾過され、そしてそれから、溶媒がロータリ・エバポレータで除去されて、灰色がかった白の固体状残渣を与えた。これが、エーテルで数回洗浄され、そしてそれから、高真空下で乾燥された。
782mgの灰色がかった白い固体が得られた。収率は95.4%であった。
【0178】
CORM−371[Me4N][Mn(CO)4(チオアセテート)2
150mg(0.436mmol)のMn(CO)5(SO3CF3)と、128mg(0.857mmol)の[Me4N][チオアセテート]とが、8mlの乾燥THFと2mlのメタノール中において、アルゴン下、50−55℃で、4.5−5時間、攪拌された。この時間の間、溶液の色は、やや黒い黄色/オレンジ色となった。
【0179】
これに続いて、溶媒がロータリ・エバポレータで除去されて、黄色/オレンジ色の半固体状残渣を与えた。これが、DCM/エーテルから−18℃で結晶化させられて、91mgの黄色の結晶性生成物を与えた。収率は55.7%であった。Mr=391.34。
【0180】
1H NMR(CD2Cl2):δ(ppm)2.41(s、チオアセテート CH3 6H),3.35(s,NMe4 12H)
13C NMR(CD2Cl2):δ(ppm)34.78(チオアセテート CH3),56.27(t{J=3.7Hz},NMe4),205.79(C=O)
17O NMR(CD2Cl2):δ(ppm)369.2(CO),371.2(CO)
55Mn NMR(CD2Cl2):δ(ppm)−1318線幅1440Hz
IR(CH2Cl2)ν(cm-1):2073(m),1992(vs),1976(s,sh),1934(s)
質量分析(m/z):317(M-),289(M-−CO)
元素分析:MnC1218NS26実測(計算)C:37.72(36.83),H:4.63(4.64),N:3.83(3.58),S:16.06(16.39)[試料は、幾らかのDCMを含有している]
【0181】
CORM−376[K][(OC)3Mn(μ−OCOCH33Mn(CO)3
250mg(0.727mmol)のMn(CO)5(SO3CF3)と、143mg(1.45mmol)の酢酸カリウムとが、10mlのMeOH中において、アルゴン下、50℃で、15時間、共に攪拌された。これに続いて、溶媒がロータリ・エバポレータで除去されて、黄色い残渣を与えた。これが、酢酸エチルに溶解されて、セライトを通じて濾過されて、副生物のK[SO3CF3]を除去した。それから、エーテルが添加されて、生成物が沈殿した。それがシンター上に集められて、エーテルで数回洗浄され、そしてそれから、真空乾燥された。160mgの黄色の固体が得られた。収率56.7%。
【0182】
予備的分析データに基づいて、生成物は、最初は、[K][(Mn(CO)4(OAc)2]として、同定された。しかしながら、関連するCORM−349化合物に関する追加の分析、特にX線結晶構造分析により、生成物が見出しの構造を有していることが、明らかとなった。
【0183】
1H NMR(CD3CN):δ(ppm)2.37(s,CH3
13C NMR(CD3CN):δ(ppm)22.4(CH3),175.3(C=O),223.7(CO)
17O NMR(CD3CN):δ(ppm)387.9(CO)
IR(MeCN)ν(cm-1):2028(s),1931(vs),1919(s,sh),1661(m,C=O)
質量分析(ES-)(m/z):455([Mn2(CO)6(OAc)3-);315([Mn2(CO)(OAc)3-又は[Mn2(CO)4(OAc)(OH)2-);257([Mn(CO)3(OAc)2-
元素分析:C129KMn212実測(計算)C:29.90(29.17),H:2.69(1.84)
【0184】
Na[S2CN{CH2CH2OH}2] [18] CORM−378における使用
2.218g(55.5mmol)の粉末化NaOHが、アルゴン下で、40mlのEtOHに溶解された(これには少しの時間が掛かり、また、幾らかの加熱を要したことに留意)。5.830g(55.5mmol)のジエタノールアミンの溶液が、それから、これに添加された。
【0185】
氷/水浴における冷却と連続的な攪拌をもって、4.433g(58.2mmol)のCS2の12mlエーテル溶液が、一滴ずつ加えられた。これにより、溶液の色が薄い黄色/緑色に、直ちになることとなった。その完全な添加の後、系が、室温で1時間攪拌された。
【0186】
これに続いて、エーテルが添加されたが、これにより、油状の固体のように崩れる生成物を生じた。それ故、その上澄みが除去され、そして、生成物が温エタノールに溶解された。それは、それから、上澄み(主にエーテルであった)に注がれ、そしてそれから、それが冷却されたときに、白色の結晶性固体として沈殿した。そしてそれは、氷/水浴中において冷却されて、沈殿が完結された。生成物がシンター上に集められて、エーテルで数回洗浄され、そしてそれから、真空乾燥された。
7.715gの極僅かに灰色がかった固体が得られた。収率は68.5%であった。
【0187】
CORM−378 Mn(CO)4(η2−S2CN{CH2CH2OH}2
方法(a)
120mg(0.349mmol)のMn(CO)5(SO3CF3)と、71mg(0.349mmol)のNa[S2CN{CH2CH2OH}2]とが、7mlのアセトン中において、アルゴン下、45℃で、2時間、攪拌された。それから、溶媒がロータリ・エバポレータで除去されて、黄色い残渣が残された。それは、エーテルで抽出された。溶媒の除去により、黄色い油状の生成物を与えた。これが、エーテル/ペンタンから−18℃で再結晶され、65mgの黄色の結晶性固体を与えた。溶媒の容量を減少させ、また、より多くのペンタンを加えることで、36mgの第二の収穫物を得た。それらが、真空下で乾燥された。
合計の収量は101mgであり、83.4%となった。
【0188】
方法(b)
300mg(1.09mmol)のMn(CO)5Brと、222mg(1.09mmol)のNa[S2CN{CH2CH2OH}2]とが、15mlのアセトン中において、アルゴン下、60℃で、2時間、攪拌された。溶媒が、それから、ロータリ・エバポレータで除去されて、黄色い残渣が残された。それが、エーテルで抽出された。溶媒の除去により、黄色の油状生成物が与えられた。これが、エーテル/ペンタンから−18℃で再結晶されて、223mgの黄色の結晶性固体を与えた。溶媒の容量の低減と、より多くのペンタンの添加によって、71mgの第二の収穫物を与えた。それらが、真空下で乾燥された。
合計の収量が294mgとなり、77.7%となった。
【0189】
1H NMR(CD2Cl2):δ(ppm)4.00(s,both CH2
13C NMR(CD2Cl2):δ(ppm)54.27(CH2),60.25(CH2),210.10(CS2),211.29(CO),216.38(CO)
17O NMR(CD2Cl2):δ(ppm)368.4(CO),380.9(CO)
55Mn NMR(CD2Cl2):δ(ppm)−1001線幅5060Hz
IR(CH2Cl2)ν(cm-1):2087(m),2008(vs),1994(s),1950(s)
質量分析(m/z):347(M+),291(M+−2CO),263(M+−3CO),235(M+−4CO)
元素分析:MnC910NS26実測(計算)C:31.15(31.13),H:2.76(2.90),N:3.92(4.03),S:18.29(18.47)
【0190】
[NMe4][ベンゾエート]8 CORM−379のための使用
568mg(4.11mmol)の安息香酸と、1.50g(4.11mmol)の[NMe4][OH](MeOH中25%溶液)とが、8mlのメタノール中において、45℃で、4時間、攪拌された。これに続いて、溶液が濾過され、そしてそれから、溶媒がロータリ・エバポレータで除去されて、「じめじめした」白い固体を与えた。これが、数時間の間、高真空下に置かれて、凝固が完結された。それはそれから、少量のアセトンとジエチルエーテルで洗浄された。生じた生成物は、それから、真空下で乾燥された。
【0191】
601mg(3.08mmol)の白色の固体が生産された。Mr=195.26、収率75%。商業的に入手可能。また、「A. Pacheco, B. R. James, S. J. Rettig, Inorg. Chem., 1995, 34, 3477」を参照のこと。
【0192】
CORM−379[Me4N][Mn2(CO)6(ベンゾエート)3
150mg(0.436mmol)の[Mn(CO)5(SO3CF3)]と、169mg(0.863mmol)の[Me4N][ベンゾエート]とが、8mlの乾燥THFと2mlのメタノール中において、アルゴン下、50−55℃で、3時間、攪拌された。この時間の間、溶液の色は、やや黒い黄色/オレンジ色となった。
【0193】
これに続いて、溶媒がロータリ・エバポレータで除去されて、黄色/オレンジ色の半固体状残渣を与えた。これが、DCM/ジエチルエーテル/ペンタンから−18℃で結晶化されて、黄色の固体を与えた。
119mg(0.246mmol)の生成物が得られた。Mr=483.35、収率57%。
【0194】
1H NMR(CD2Cl2):δ(ppm)3.3(br,NMe4),7.31(br,Ph),7.43(br,Ph),7.92(br,Ph)
13C NMR(CD2Cl2):δ(ppm)56.98(NMe4),127.84(メタPh),128.73(オルトPh),130.86(パラPh),135.44(ipso Ph),177.7(C=O),224.08(CO)
17O NMR(CD2Cl2):δ(ppm)387.9(CO)
IR(CH2Cl2)ν(cm-1):2026(s),1913(vs),1606(m)
質量分析(m/z):641([Mn2(CO)6(O2CPh)3-);537([Mn2(CO)6(O2CPh)2(OH)]-);433([Mn2(CO)6(O2CPh)(OH)2-);381([Mn(CO)3(O2CPh)2-
元素分析:Mn23127NO12実測(計算)C:50.54(52.04),H:5.06(3.80),N:3.12(1.96)
【0195】
CORM−388[Mn(CO)4(S2COEt)]
150mg(0.546mmol)の[Mn(CO)5Br]と、88mg(0.546mmol)のK[S2COEt]とが、8−9mlのアセトン中において、アルゴン下、55℃で、〜1.5時間、攪拌された。それから、溶媒がロータリ・エバポレータで除去されて、黄色の残渣が残り、それが、ジエチルエーテルで抽出された。溶媒の除去により、黄色の固体が得られた。ヘキサンから、−18℃で、2日間の再結晶を試みたが、何等の固体も生じなかった。それ故、それは、−78℃で、〜1時間冷却され、生成物の沈殿を生じた。
120mg(0.416mmol)のオレンジ色の固体が生産された。Mr=315.25、収率76%。
【0196】
1H NMR(CD2Cl2):δ(ppm)1.48(t{J=7.1Hz},CH3 3H),4.63(q{J=7.0Hz},CH2 2H)
13C NMR(CD2Cl2):δ(ppm)13.5(CH3),68.6(CH2),226.7(CS2),210.2(CO),216.1(broad,CO)
17O NMR(CD2Cl2):δ(ppm)371.9(CO),383.4(CO)
55Mn NMR(CD2Cl2):δ(ppm)−964線幅3040Hz
IR(CH2Cl2)ν(cm-1):2094(m),2015(vs),2003(s),1959(s)
質量分析(m/z):288(M+
元素分析:MnC7525実測(計算)C:29.36(29.17),H:1.26(1.75),S:21.94(22.25)
更に詳細には、「H. Laufen, B. Meyn, K. G. Steinhaeuser, D. Vogel and R. Kramolowsky, J. Organomet. Chem., 1976, 112, C34」を参照のこと。
【0197】
Na[S2CNMe(CH2CO2Na)] CORM−401における使用
市場的に入手可能か、或いは「J. A. Beatty, M. M. Jones, D. J. Wilson and L. Ma, Chem. Res. Toxicol., 1992, 5, 568」に記載の方法に従って調製することが出来る。
【0198】
CORM−401[Mn(CO)4(S2CNMeCH2CO2H)]
500mg(0.0018mol)のMn(CO)5Brと、420mg(0.0018mol)のNaS2Cl(CH3)(CH2COONa)とが、36−40mlのメタノール中において、アルゴン下、40℃で、4時間、攪拌された。それから、溶媒が除去されて、黄色の固体が残された。その黄色の固体の水性溶液が、0.1MのH2SO4を用いて、pH2に酸性化されて、黄色の沈殿を生じ、それがH2SO4で洗浄され、そして乾燥された。
合計の収率は407mg(0.0012mol)であり、66.7%であった。Mr=331.21。
【0199】
1H NMR(CD2Cl2):δ(ppm)3.39(CH3 3H),4.62(CH2 2H)
13C NMR(CD2Cl2):δ(ppm)38.16(CH2),51.39(CH3),171.44(CO2H),211.36(CS2),210.97 216.51(br,CO)
IR(CH2Cl2)ν(cm-1):2088(m),2010(vs),1994(s),1951(s)
質量分析(m/z):331(M+),275(M+−2CO’s),247(M+−3CO’s),219(M+−4CO’s)
元素分析:MnC86NO62実測(計算)C:29.01(29.01),H:1.99(1.83),N:3.91(4.23),S:19.16(19.36)
【0200】
CORM−402[Mn(CO)4{S2P(OEt)2}]
Schlenk チューブにおいて、Mn(CO)5Br(550mg,2mmol)が、アルゴン下で、攪拌棒と共に配置された。ジエチルエーテル(30ml)が添加されて、黄色の溶液となった。それから、KS2P{OEt}2(450mg,2mmol)のジエチルエーテル(10ml)溶液が一滴ずつ添加され、そしてその溶液が、一晩中攪拌された。
【0201】
次の日に、溶液が濾過され、そして、溶媒がトラップ・トゥー・トラップ(trap-to-trap)にて除去されて、黄色の残渣を与えた。これが、溶出液として、ガソリンを用いたフルオロシル(Florosil)カラム(20×1cm)でのクロマトグラフィにかけられた。溶媒の除去により、純粋な生成物が鮮やかな黄色の固体として提供された。
【0202】
収率:468mg(66%)、Mr=352.21。
1H NMR(CD2Cl2):(ppm)4.05(m,2H),1.27(t,3H)
31P NMR(CD2Cl2):(ppm)91.0
13C NMR(CD2Cl2):(ppm)15.6(J=8Hz),64.0(J=6Hz)208.9,216.8(br,CO)
IR(CHCl3)(cm-1):2095(m),2020(vs),2003(s),1965(s)
また、「R. L. Lambert and T. A. Manuel, Inorg. Chem., 1966, 5, 1287」を参照のこと。
【0203】
背景技術の項での参考文献
[参考文献1]Piantadosi CA. Toxicity of carbon monoxide: hemoglobins vs. histotoxic mechanisms. In: Carbon monoxide. (Edited by Penney DG). 1996; Chapter 8.
[参考文献2]Sjostrand T. Endogenous formation of carbon monoxide in man under normal and pathological conditions. Scan J Clin Lab Invest1949 ; 1: 201-14.
[参考文献3]Coburn RF, Blakemore WS, Forster RE. Endogenous carbon monoxide production in man. J Clin Invest 1963 ; 42 : 1172-8.
[参考文献4]Coburn RF, Williams WJ, Forster RE. Effect of erythrocyte destruction on carbon monoxide production in man. J Clin Invest 1964; 43: 1098-103.
[参考文献5]Coburn RF, Williams WJ, Kahn SB. Endogenous carbon monoxide production in patients with hemolytic anemia. J Clin Invest 1966 ; 45: 460-8.
[参考文献6]Sjostrand T. The formation of carbon monoxide by in vitro decomposition of haemoglobin in bile pigments. Acta Physiol Scand 1952 ; 26: 328-33.
[参考文献7]Coburn RF, Williams WJ, White P, Kahn SB. The production of carbon monoxide from hemoglobin in vivo. J Clin Invest 1967 ; 46: 346-56.
[参考文献8]Tenhunen R, Marver HS, Schmid R. Microsomal heme oxygenase. Characterization of the enzyme. J Biol. Chem. 1969 ; 244: 6388-94.
[参考文献9]Scharf SM, Permutt S, Bromberger-Barnea B. Effects of hypoxic and CO hypoxia on isolated hearts. J Appl Physiol 1975 ; 39: 752-8.
【0204】
実験データの項での参考文献
1 WO 2005/114161
2 WO 2004/045599
3 Motterlini R, Clark JE, Foresti R, Sarathchandra P, Mann BE and Green CJ. Ca rbon monoxide-releasing molecules: characterization of biochemical and vascu lar activities. Circ Res 90: E17-E24, 2002.
4 Sammut IA, Foresti R, Clark JE, Exon DJ, Vesely MJJ, Sarathchandra P, Green CJ and Motterlini R. Carbon monoxide is a major contributor to the regulatio n of vascular tone in aortas expressing high levels of haeme oxygenase-1. Br J Pharmacol 125: 1437-1444, 1998.
【0205】
合成の項での参考文献
[1]E. W. Abel and G. Wilkinson, J. Chem. Soc. (London), 1959, 1501.
[2]M. H. Quick and R. J. Angelici, Inorg. Synth. 1979, 19, 161.
[3]R. J. Angelici, Inorg. Chem. 1964, 3, 1099.
[4]L. H. Staal, A. Oskam and K. Vrieze, J. Organomet. Chem. 1979, 170, 235.
[5]R. H. Reimann, and E. Singleton, J. Chem. Soc. (Dalton) 1973, 841.
[6]S. A. Moya, J. Guerrero, R. Pastene, I. Azocar-Guzman and A. J. Pardey, Po lyhedron, 2002, 21, 439.
[7]D. Drew, D. J. Darensbourg and M. Y. Darensbourg, Inorg. Chem. 1975, 14, 1 579.
[8]R. J. Angelici and D. L. Denton, Inorg. Chim. Acta, 1968, 2, 3.
[9](a) D. M. Haddleton, M. C. Crossman, B. H. Dana, D. J. Duncalf, A. M. Hemi ng, D. Kukulj and A. J. Shooter, Macromolecules, 1999, 32,2110. (b) D. M. Haddleton, D. J. Duncalf, D. Kukulj, M. C. Crossman, S. G. Jackson, S. A. F. Bon, A. J. Clark and A. J. Shooter, Eur. J. Inorg. Chem., 1998, 1799.
[10]L. H. Staal, A. Oskam and K. Vrieze, J. Organomet. Chem. 1979, 170, 235.
[11]J. Nitschke, S. P. Schmidt and W. C. Trogler, Inorg. Chem. 1985, 24, 197 2; S. P. Schmidt, J. Nitschke, W. C. Trogler, S. I. Huckett, and R. J. Ang elici, Inorg. Synth., 1989, 26, 113.
[12]G. Jander, E. Rusberg, H. Schmidt, Z. Anorg. Allg. Chem., 1948, 255, 238 .
[13]N. V. Ignat'ev and S. D. Datsenko, Russian J. Electrochem. (Translation of Elektrokhimiya), 1995, 31, 1235-39.
[14]El-Kholy and Ali El-Sayed, Egyptian Journal of Chemistry, 1981, Volume D ate 1979, 22, 23; A. Fischer, Zeitschrift fur Kristallographie, 1996, 211, 827;
[15]F. A. Cotton and J. A. McCleverty, Inorg. Chem. 1964, 3, 1398.
[16]D. Rehder, R. Kramolowsky, K. G. Steinhauser, U. Kunze and A. Antoniadis , Inorg. Chim. Acta, 1983, 73, 243.
[17]D. De Filippo, P. Deplano, F. Devillanova, E. F. Trogu and G. Verani, J. Organomet. Chem., 1973, 38, 560.
[18]P. Giboreau and C. Morin, J. Org. Chem., 1994, 59, 1205.
[19]J. A. Beatty, M. M. Jones, D. J. Wilson and L. Ma, Chem. Res. Toxicol., 1992, 5, 568.
[20]R. L. Lambert and T. A. Manuel, Inorg. Chem., 1966, 5, 1287.

【図1a】

【図1b】

【図1c】

【図1d】

【図1e】

【図1f】

【図1g】

【図1h】

【図1i】

【図1j】

【図1k】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)又は式(III)にて示される化合物若しくはイオンを、活性成分として含有し、そして該(I)又は該(III)が化合物のときには、それらの製剤的に許容され得る塩を含み、該(I)又は該(III)がイオンのときには、製剤的に許容され得る対イオンを更に含んでいる薬剤組成物:
Mn(CO)4XY ・・・ (I)
但し、X及びYは、互いに関係する分子においてトランス位置を占めることはなく、そしてX及びYは同一若しくは異なるものであり、且つX及びYの各々は、ハロゲン及び、O及びSのうちの一つを介して結合するMnに対する単座配位子から選択され、又はX及びYは、共に、O,S又はO及びSの両方を介して結合するMnに対する二座配位子である;
【化1】

但し、X,Y及びZは、各々、ハロゲン又は、O若しくはSを介して結合する単座配位子又は、O,S又はO及びSの両方を介して結合する二座配位子であり、そこでX,Y及びZは同一又は異なるものであり、そしてX,Y及びZは、二つのMn原子の両方に互いに関係するトランス位置を占めることはない。
【請求項2】
前記活性成分が、前記式(I)を有し、且つ
(i)X及びYの各々が、ハロゲン及び、次式:
【化2】

[但し、J1及びJ2の各々は、O及びSから独立して選択され、そしてQは、随意に置換されたアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル又はアリールアルケニルである]から選択され、又は
(ii)一緒となったX及びYが、次式:
【化3】

[但し、J1,J2,J3及びJ4の各々は、O及びSから独立して選択され、そしてZは、随意に置換されたアルカン−ジ−イル若しくはアルケン−ジ−イルである]から選択された二座配位子であり、又は
(iii)一緒となったX及びYが、次式:
【化4】

[但し、R3及びR4の各々は、水素及び随意に置換されたアルキルから、独立して選択され、又はR3及びR4は、3〜6個のC原子を有する、随意に置換されたアルカン−ジ−イル若しくはアルケン−ジ−イル、又は−R5−O−R6−(但し、R5及びR6の各々は、1〜3のC原子を有する、随意に置換されたアルカン−ジ−イルである)によって、共に与えられる]にて提供される
請求項1に従う薬剤組成物。
【請求項3】
前記Qは、1〜10個のC原子、好ましくは1〜4個のC原子を有するアルキル若しくはアルケニルであって、−COOH,−CSOH;−COOR’;−CONH2;−CONHR’;−CON(R’)2;−COR’;−F,−Cl,−Br,−I;−CN;−NO2;−OH;−OR’;−SH;−SR’;−O−CO−R’;−NH2;−NHR’;−NH(R’)2;−NH−CO−R’;−NR’−CO−R’;−NR’−SO2H,−NH−SO2H;−NR’−SO2R’,−NR’−SO2H;−SO2R’;−OSO2R’;−C5-20アリール;−C1-7アルキル−C5-20アリール;−C1-7アルケニル−C5-20アリール(但し、R’は、1〜6個のC原子を有するアルキル若しくはアルケニルである)のうちの一つ若しくはそれ以上によって、随意に置換されたものであり、
前記Zは、1〜10個のC原子(好ましくは、1〜5個のC原子)を有するアルカン−ジ−イル若しくはアルケン−ジ−イルであって、−COOH;−COOR’;−CONH2;−CONHR’;−CON(R’)2;−COR’;−F,−Cl,−Br,−I;−CN;−NO2;−OH;−OR’;−SH;−SR’;−O−CO−R’;−NH2;−NHR’;−NH(R’)2;−NH−CO−R’;−NR’−CO−R’;−NR’−SO2H,−NH−SO2H;−NR’−SO2R’,−NR’−SO2H;−SO2R’;−OSO2R’;−C5-20アリール;−C1-7アルキル−C5-20アリール;−C1-7アルケニル−C5-20アリール(但し、R’は、1〜6個のC原子を有するアルキル若しくはアルケニルである)のうちの一つ若しくはそれ以上によって、随意に置換されたものであり、そして、
前記R3及びR4の各々(Hではないとき)、R5及びR6は、−COOH;−COOR’;−CONH2;−CONHR’;−CON(R’)2;−COR’;−F,−Cl,−Br,−I;−CN;−NO2;−OH;−OR’;−SH;−SR’;−O−CO−R’;−NH2;−NHR’;−NH(R’)2;−NH−CO−R’;−NR’−CO−R’;−NR’−SO2H,−NH−SO2H;−NR’−SO2R’,−NR’−SO2H;−SO2R’;−OSO2R’;−C5-20アリール;−C1-7アルキル−C5-20アリール;−C1-7アルケニル−C5-20アリール(但し、R’は、1〜6個のC原子を有するアルキル若しくはアルケニルである)のうちの何れか一つによって、随意に置換されている
請求項2に従う薬剤組成物。
【請求項4】
前記Qが、随意に置換された、1〜4個のC原子を有するアルキル、又は随意に置換されたフェニルである請求項3に従う薬剤組成物。
【請求項5】
前記Qが、未置換の、又は−OH,−OR’,−COOH,−COOR’,−NH2若しくは−NH−COOR’(但し、R’は、1〜4個のC原子を有するアルキル又はフェニルである)で置換された、1〜4個のC原子を有するアルキルである請求項4に従う薬剤組成物。
【請求項6】
前記Zが、CH2,CH2CH2若しくはCH(CH3)である請求項2乃至請求項5の何れか一つに従う薬剤組成物。
【請求項7】
前記R3及びR4が、各々、未置換の、又は−OH,−OR’,−COOH,−COOR’,−NH2,−NH−COOH若しくは−NH−COOR’(但し、R’は、1〜4個のC原子を有するアルキルである)によって置換された、1〜4個のC原子を有するアルキルから選択される請求項2乃至請求項6の何れか一つに従う薬剤組成物。
【請求項8】
前記活性成分が、前記式(III)を有し、且つX,Y及びZの各々が、
(i)
【化5】

及びA並びにBは、独立してO及びSから選択され、そしてWは、随意に置換された、アルケル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニルであり、又はWは、−N(R34)基[但し、R3及びR4の各々は、独立して、H及び、随意に置換されたアルキルから選択され、或いは、R3及びR4は、随意に置換された、3〜6個のC原子を有するアルカン−ジ−イル若しくはアルケン−ジ−イル、又は−R5−O−R6−(但し、R5及びR6の各々は、随意に置換された、1〜3個のC原子を有するアルカン−ジ−イルである)にて共に与えられる]であり;及び
(ii)
【化6】

[但し、A1,A2,B1及びB2の各々は、独立してO及びSから選択され、そしてZは、随意に置換されたアルカン−ジ−イル若しくはアルケン−ジ−イルである]
から、独立して選択される請求項1に従う薬剤組成物。
【請求項9】
前記Wは、1〜10個のC原子、好ましくは1〜4個のC原子を有するアルキル若しくはアルケニルであって、−COOH,−CSOH;−COOR’;−CONH2;−CONHR’;−CON(R’)2;−COR’;−F,−Cl,−Br,−I;−CN;−NO2;−OH;−OR’;−SH;−SR’;−O−CO−R’;−NH2;−NHR’;−N(R’)2;−NH−CO−R’;−NR’−CO−R’;−NR’−SO2H,−NH−SO2H;−NR’−SO2R’,−NR’−SO2H;−SO2R’;−OSO2R’;−C5-20アリール;−C1-7アルキル−C5-20アリール;−C1-7アルケニル−C5-20アリール(但し、R’は、1〜6個のC原子を有するアルキル若しくはアルケニルである)のうちの一つ若しくはそれ以上によって、随意に置換されたものであり、
前記Zは、2〜10個のC原子(好ましくは、1〜5個のC原子)を有するアルカン−ジ−イル若しくはアルケン−ジ−イルであって、−COOH;−COOR’;−CONH2;−CONHR’;−CON(R’)2;−COR’;−F,−Cl,−Br,−I;−CN;−NO2;−OH;−OR’;−SH;−SR’;−O−CO−R’;−NH2;−NHR’;−N(R’)2;−NH−CO−R’;−NR’−CO−R’;−NR’−SO2H,−NH−SO2H;−NR’−SO2R’,−NR’−SO2H;−SO2R’;−OSO2R’;−C5-20アリール;−C1-7アルキル−C5-20アリール;−C1-7アルケニル−C5-20アリール(但し、R’は、1〜6個のC原子を有するアルキル若しくはアルケニルである)のうちの一つ若しくはそれ以上によって、随意に置換されたものであり、そして、
前記R3及びR4の各々(Hではないとき)、R5及びR6は、−COOH;−COOR’;−CONH2;−CONHR’;−CON(R’)2;−COR’;−F,−Cl,−Br,−I;−CN;−NO2;−OH;−OR’;−SH;−SR’;−O−CO−R’;−NH2;−NHR’;−N(R’)2;−NH−CO−R’;−NR’−CO−R’;−NR’−SO2H,−NH−SO2H;−NR’−SO2R’,−NR’−SO2H;−SO2R’;−OSO2R’;−C5-20アリール;−C1-7アルキル−C5-20アリール;−C1-7アルケニル−C5-20アリール(但し、R’は、1〜6個のC原子を有するアルキル若しくはアルケニルである)のうちの何れか一つによって、随意に置換されている
請求項8に従う薬剤組成物。
【請求項10】
前記活性成分が、前記式(III)を有し、且つX,Y若しくはZの各々が、下式:
【化7】

である請求項1、請求項8又は請求項9の何れか一つに従う薬剤組成物。
【請求項11】
前記活性成分が、前記式(III)を有し、且つX,Y及びZのうちの少なくとも二つが、同じものである請求項1、請求項8、請求項9又は請求項10の何れか一つに従う薬剤組成物。
【請求項12】
前記X,Y及びZが、同じものである請求項11に従う薬剤組成物。
【請求項13】
前記Wが、随意に置換された、1〜4個のC原子を有するアルキルであり、或いは前記Wは、随意に置換されたフェニルである請求項9又は請求項10に従う薬剤組成物。
【請求項14】
前記Wが、未置換の、又は−OH,−OR’,−COOH,−COOR’,−NH2,−NH−COOH若しくは−NH−COOR’(但し、R’は、1〜4個のC原子を有するアルキルである)で置換された、1〜4個のC原子を有するアルキルであり、又は前記Wが、フェニルである請求項13に従う薬剤組成物。
【請求項15】
[(OC)3Mn(μ−OCOCH33Mn(CO)3-,[Mn2(CO)6(Boc−アラニン)3-及び[Mn2(CO)6Cl3-のグループから選ばれた式を有するイオンを含む請求項1に従う薬剤組成物。
【請求項16】
前記対イオンが、[Me4N]+,K+若しくは[コリン]+である請求項8乃至請求項15の何れか一つに従う組成物。
【請求項17】
請求項1乃至請求項16の何れか一つにおいて規定された、前記式(I)若しくは前記式(III)を有する化合物若しくはイオンの、医療における使用。
【請求項18】
請求項1乃至請求項16の何れか一つに従う薬剤組成物を投与する工程を含む、生理学的に有効な物質として、哺乳動物内にCOを導入する方法。
【請求項19】
神経伝達又は血管拡張を刺激するための、或いは高血圧症、放射線障害、内毒性ショック、炎症、炎症関連疾病、高酸素症誘発障害、アポトーシス、癌、移植拒絶反応、動脈硬化、虚血後の器官障害、心筋梗塞、アンギナ、出血性ショック、敗血症、陰茎勃起機能障害及び成人呼吸困難症候群の何れかの処置のための請求項18に従う方法。
【請求項20】
体外の、若しくは離隔された器官の処置の方法にして、請求項1乃至請求項16の何れか一つに従う薬剤組成物に、かかる器官を接触させることを含む方法。
【請求項21】
金属カルボニルが利用可能な一酸化炭素(CO)を作り出し、虚血後の障害を制限する請求項20に従う方法。
【請求項22】
前記器官が、体外にある請求項21に従う方法。
【請求項23】
前記器官が、体内若しくは体に付いてはいるが、血液供給から分離されている請求項21に従う方法。
【請求項24】
前記接触工程が、前記器官を前記組成物と潅流することを含んでいる請求項20乃至請求項23の何れか一つに従う方法。
【請求項25】
神経伝達又は血管拡張を刺激するために、或いは高血圧症、放射線障害、内毒素ショック、炎症、炎症関連疾病、高酸素症誘引障害、アポトーシス、癌、移植の拒絶反応、動脈硬化、虚血後の器官障害、心筋梗塞、アンギナ、出血性ショック、敗血症、陰茎勃起機能障害及び成人の呼吸困難症候群の何れかの処置のために、請求項1乃至請求項16の何れか一つに規定される前記式(I)又は前記式(III)の化合物若しくはイオンの使用。
【請求項26】
体内又は体に付いた、しかし血液供給から分離された離隔器官において、虚血後の障害を制限するように分離された器官を処置するための請求項25に従う化合物の使用。
【請求項27】
経口の、静脈内の、皮下の、鼻の、吸入の、筋肉内の、腹腔内の、経皮の、若しくは座薬のルートによる投与のための薬剤の製造において、生理学的に有効な物質としてのCOによる神経伝達又は血管拡張の刺激のために、或いは高血圧症、放射線障害、内毒素ショック、炎症、炎症関連疾病、高酸素症誘引障害、アポトーシス、癌、移植拒絶反応、動脈硬化、虚血後の器官障害、心筋梗塞、アンギナ、出血性ショック、敗血症、陰茎勃起機能障害及び成人呼吸困難症候群の何れかの処置のために、請求項1乃至請求項16の何れか一つに規定された前記式(I)又は前記式(III)を有する化合物若しくはイオンの使用。
【請求項28】
固体形態にある請求項1乃至請求項16の何れか一つに規定される前記式(I)又は前記式(III)を有する化合物若しくはイオンと、製剤的に許容され得る溶媒とを含む、薬剤溶液を製造するためのキット。
【請求項29】
下記式(II)からなるアニオンと対カチオンを有する化合物:
Mn(CO)4XY ・・・ (II)
[但し、X及びYは、相互に関係する分子においてトランス位置を占めるものではなく、且つX及びYは同一若しくは異なるものであり、そして、
(i)X及びYの各々は、−O−CO−Q(但し、Qは、随意に置換されたアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル若しくはアリールアルケニルである)から選ばれ、或いは、
(ii)一緒になったX及びYは、次式:
【化8】

(但し、Zは、随意に置換されたアルカン−ジ−イル若しくはアルケン−ジ−イルである)
から選ばれた二座配位子である]。
【請求項29】
前記Qが、1〜10個のC原子、好ましくは1〜4個のC原子を有するアルキル若しくはアルケニルであって、−COOH,−CSOH;−COOR’;−CONH2;−CONHR’;−CON(R’)2;−COR’;−F,−Cl,−Br,−I;−CN;−NO2;−OH;−OR’;−SH;−SR’;−O−CO−R’;−NH2;−NHR’;−NH(R’)2;−NH−CO−R’;−NR’−CO−R’;−NR’−SO2H,−NH−SO2H;−NR’−SO2R’,−NR’−SO2H;−SO2R’;−OSO2R’;−C5-20アリール;−C1-7アルキル−C5-20アリール;−C1-7アルケニル−C5-20アリール(但し、R’は、1〜6個のC原子を有するアルキル若しくはアルケニルである)の一つ若しくはそれ以上によって、随意に置換され、
前記Zが、1〜10個のC原子(好ましくは、1〜5個のC原子)を有するアルカン−ジ−イル若しくはアルケン−ジ−イルであって、−COOH;−COOR’;−CONH2;−CONHR’;−CON(R’)2;−COR’;−F,−Cl,−Br,−I;−CN;−NO2;−OH;−OR’;−SH;−SR’;−O−CO−R’;−NH2;−NHR’;−NH(R’)2;−NH−CO−R’;−NR’−CO−R’;−NR’−SO2H,−NH−SO2H;−NR’−SO2R’,−NR’−SO2H;−SO2R’;−OSO2R’;−C5-20アリール;−C1-7アルキル−C5-20アリール;−C1-7アルケニル−C5-20アリール(但し、R’は、1〜6個のC原子を有するアルキル若しくはアルケニルである)のうちの一つ若しくはそれ以上によって、随意に置換されたものである請求項28に従う化合物。
【請求項31】
前記Qが、未置換のC1〜4のアルキルであり、そして前記Zが、未置換のC1〜4のアルカン−ジ−イルである請求項30に従う化合物。
【請求項32】
下記式(IV)にて表される化合物若しくはイオン:
【化9】

[但し、X,Y及びZの各々は、O若しくはSを通じて結合する単座配位子であり、或いはO,S若しくはO及びSの両方を通じて結合する二座配位子であり、X,Y及びZは、同一若しくは異なるものであり、そしてX,Y及びZは、二つのMn原子の両方の周りで互いに関連したトランス位置を占めることはない]。
【請求項33】
前記X,Y及びZの各々が、独立して、
(i)
【化10】

[そして、A及びBは、独立してO及びSから選択され、またWは、随意に置換されたアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニルであり、又はWは、−N(R34)基(但し、R3及びR4の各々は、独立して、H及び随意に置換されたアルキルから選ばれ、又はR3及びR4は、随意に置換された、3〜6個のC原子を有するアルカン−ジ−イル若しくはアルケン−ジ−イル又は−R5−O−R6−(但し、R5及びR6の各々は、随意に置換された、1〜3個の炭素数を有するアルカン−ジ−イルである)によって共に提供される)である];及び
(ii)
【化11】

[但し、A1,A2,B1及びB2の各々は、独立してO及びSから選択され、そしてZは、随意に置換されたアルカン−ジ−イル若しくはアルケン−ジ−イルである]
から選択される請求項32に従う化合物。
【請求項34】
前記X,Y若しくはZの各々が、
【化12】

である請求項32に従う化合物若しくはイオン。
【請求項35】
(i)溶媒中における嫌気性状態及び加熱の下でのMn(CO)5(SO3CF3)と[Me4N][アセテート]との反応(その生成物は、DCM中、2027cm-1(s)及び1930cm-1(vs)のCO伸縮周波数を有している);又は(ii)溶媒中における嫌気性状態及び加熱の下でのMn(CO)5(SO3CF3)と酢酸カリウムとの反応から得られる生成物。


【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−542612(P2009−542612A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517421(P2009−517421)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002483
【国際公開番号】WO2008/003953
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(505184609)ヘモコーム リミテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】HEMOCORM LIMITED
【出願人】(503420062)ユニバーシティ オブ シェフィールド (2)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF SHEFFIELD
【Fターム(参考)】