説明

一酸化炭素検知ユニットを備えた燃焼機器

【課題】燃焼機器で燃焼を行って停止した後、再度燃焼を開始することで天井付近に滞留している一酸化炭素が下降して室内に居る人に悪影響を与えるのを防止する一酸化炭素検知ユニットを備えた燃焼機器を提供する。
【解決手段】燃焼手段(バーナ3)及び該燃焼手段での燃焼を制御する制御手段を備えた燃焼機器(湯沸器1)と、室内の一酸化炭素濃度を検知する一酸化炭素検知センサーを備えた一酸化炭素検知ユニット8と、を備え、燃焼手段での燃焼を停止した後の所定時間、一酸化炭素検知ユニット8で検知した一酸化炭素濃度が所定値以下となるまで制御手段は燃焼手段での燃焼を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一酸化炭素検知ユニットを備えた燃焼機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、室内に設置される燃焼機器は、安全性を高めるために、不完全燃焼を検知すると燃焼を停止させる安全装置を備えている。
【0003】
一般的には、例えば室内に設置される湯沸器等の燃焼機器には、安全装置として、燃焼機器内の排気経路に一酸化炭素濃度を検知する一酸化炭素検知センサが設けてあるとともに、検知された一酸化炭素濃度を基に燃焼制御を行う制御装置が設けてある。所定濃度以上の一酸化炭素を検知すると、制御装置は、燃焼機器へ燃料ガスを供給する供給経路の遮断弁を閉じたりして、燃焼を停止させる等の処理を行うものである。
【0004】
この場合、燃焼排気中の一酸化炭素濃度を基に燃焼制御を行っていて、室内の空気中の一酸化炭素濃度は燃焼制御には反映されていなかった。燃焼機器で燃焼が行われると、燃焼排気中の一酸化炭素が僅かに室内に排出され、主に天井付近の空気の一酸化炭素濃度が高くなる。そこで、室内の一酸化炭素を検知するセンサを設けて燃焼制御に反映させるものが開発された(例えば特許文献1参照)。
【0005】
このものにあっては、室内の一酸化炭素濃度が所定値以上となると燃焼を停止して、室内の一酸化炭素濃度がそれ以上上昇するのを防止することで、室内に居る人の安全を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−178281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の安全装置を備えた燃焼機器において、燃焼機器で燃焼をある程度行って停止した後、時間をあけずに再度燃焼を開始すると、天井付近に滞留している一酸化炭素が下降して、室内に居る人に悪影響を与える惧れがあった。
【0008】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、燃焼機器で燃焼を行って停止した後、再度燃焼を開始することで天井付近に滞留している一酸化炭素が下降して室内に居る人に悪影響を与えるのを防止する一酸化炭素検知ユニットを備えた燃焼機器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような構成とする。
【0010】
請求項1に係る発明は、燃焼手段及び該燃焼手段での燃焼を制御する制御手段を備えた燃焼機器と、室内の一酸化炭素濃度を検知する一酸化炭素検知センサーを備えた一酸化炭素検知ユニットと、を備え、燃焼手段での燃焼を停止した後の所定時間、一酸化炭素検知ユニットで検知した一酸化炭素濃度が所定値以下となるまで制御手段は燃焼手段での燃焼を禁止することを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、一酸化炭素検知ユニットが一酸化炭素濃度に応じた電圧を制御手段に送信するものにおいて、電圧が所定値以下の場合には燃焼手段での燃焼を停止するとともに燃焼を禁止することを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、一酸化炭素検知ユニットは燃焼機器に対して着脱自在で、燃焼機器内の複数箇所のうちのいずれかに選択的に装着可能であるとともに、燃焼機器外に設置可能であることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明において、一酸化炭素検知ユニットを、燃焼機器の給気口よりも高く排気の影響を受けにくい位置に設置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に係る発明においては、燃焼を開始することにより天井付近に滞留している一酸化炭素が下降して室内に居る人に悪影響を与えるのを防止することができる。
【0015】
本発明の請求項2に係る発明においては、燃焼により実際の一酸化炭素濃度が高いにもかかわらず制御部は一酸化炭素濃度が高くないと判断して燃焼を継続し、一酸化炭素濃度が異常に高まるのを防止することができる。
【0016】
本発明の請求項3に係る発明においては、設置現場に応じて一酸化炭素検知ユニットを任意の箇所に設置することができる。
【0017】
本発明の請求項4に係る発明においては、燃焼排気の一酸化炭素の影響を直接受けず、人が居る場所での一酸化炭素濃度の代表値を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】湯沸器の概略構成図である。
【図2】一酸化炭素検知ユニットを備えた湯沸器を設置した室内の正面図である。
【図3】実験を行った時の湯沸器を設置した室内を示し、(a)は平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は側面図である。
【図4】実験の[0][1]〜[9]の箇所のCO濃度−時間の図である。
【図5】実験の[0][10]〜[18]の箇所のCO濃度−時間の図である。
【図6】実験の[0][19]〜[27]の箇所のCO濃度−時間の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明について以下に示す実施形態に基いて説明する。本実施形態では、燃焼機器は、室内に設置される湯沸器である。
【0020】
湯沸器1は、図1に示すように、外殻をなす略箱状をした本体ハウジング10内に燃焼室2を備えており、燃焼室2には、燃焼手段としてのバーナ3と、熱交換器4とが設けられる。バーナ3にはガス供給管31が接続され、ガス供給管31を介して都市ガス等の燃料ガスが供給されて燃焼を行う。バーナ3には燃料ガスに点火するための点火器(点火プラグ32)が設けてあり、マイクロコンピュータからなる制御部5により点火器での点火動作(すなわちスパーク放電)が制御される。制御部5は、電池6を電源として稼動するようになっており、電池6としては、マンガン電池、リチウム電池をはじめとする各種乾電池や、Ni−H電池、Ni−Cd電池をはじめとする各種蓄電池が挙げられるが、限定されない。
【0021】
ガス供給管31には、途中に安全弁として電磁弁33が設けてあり、電磁弁33は制御部5により開閉の制御が行われる。このように、制御部5によりバーナ3への燃料ガスの供給やバーナ3での点火が制御されて、制御部5が燃焼を制御する制御手段となっている。またガス供給管31には、途中に流量調節弁34が設けてあり、本体ハウジング10の前面に設けられる温度調節操作部としてのレバーや摘まみを操作することで燃料ガスの流量を変化させて、バーナ3の火力を調節することができる。
【0022】
熱交換器4の配管は、上流端に給水管71が接続されるとともに下流端に給湯管72が接続される。給水管71は水道等の水源に接続されるもので、途中に流量調節弁73が設けてあり、本体ハウジング10の前面に設けられる流量調節操作部を操作することで給水管71および給湯管72を流れる流量を調節することができる。給湯管72は、下流端が湯を吐出する吐出口74となるもので、途中に開閉弁75が設けてあり、本体ハウジング10の前面に設けられる出湯/停止操作部を操作することで開閉弁75を開閉して、出湯やその停止を行うことができる。また給湯管72の本体ハウジング10外に位置する部分76は変形性を有しており、湯の吐出方向を任意の方向に向けることができる。
【0023】
燃焼室2内には、下側にバーナ3、上側に熱交換器4の配管が配置される。そして、燃焼室2の下端部に開口している燃焼用空気の取入口21は、本体ハウジング10の左右両側の側壁部の下部(下端部付近)にそれぞれ形成される給気口11に連通しており、燃焼室2の上端部に開口している燃焼排気の排出口22は、本体ハウジング10の天壁部に形成される排気口12に連通している。
【0024】
本発明の湯沸器1は、図2に示すように、一酸化炭素検知ユニット8を備えている。一酸化炭素検知ユニット8は、上述した湯沸器本体とは別体のケーシング内に、一酸化炭素検知センサーと、センサー制御部と、電池装着部と、送信手段と、報知手段と、を備えている。
【0025】
一酸化炭素検知センサーは、空気中の一酸化炭素濃度を検知するもので、検知原理は特に限定されないが、本実施形態では電気化学式のセンサーを用いる。電気化学式のセンサーは周知であるため詳述しないが、対をなす電極間に介在する電解液が一酸化炭素と反応して、一方の電極でCO+HO→CO+2H+2eという反応が起こるとともに他方の電極で1/2O+2H+2e→HOという反応が起こって両電極間に起電力が生じるのを利用し、この起電力(出力電圧)の大きさから一酸化炭素濃度を計測するものである。
【0026】
センサー制御部はマイクロコンピュータからなり、一酸化炭素検知センサーの出力電圧を増幅する増幅回路を備えるとともに、送信手段や報知手段を制御するもので、電池装着部に装着される電池を電源として稼動する。電池としては上述した各種乾電池や各種蓄電池が挙げられるが限定されない。送信手段は、一酸化炭素濃度の情報を湯沸器本体の制御部に送信するもので、情報の送受信は有線と無線のいずれでもよい。本実施形態では有線であり、送信手段は、信号線9が接続される、一酸化炭素検知センサーの出力電圧を増幅してなる送信電圧の出力部である。報知手段は、検知された一酸化炭素濃度が所定値以上の場合に光や音声等により報知するもので、センサー制御部により制御される。
【0027】
湯沸器本体には、一酸化炭素検知ユニット8からの一酸化炭素濃度の情報を受信する受信手段が設けられるもので、本実施形態では信号線9の接続部である。受信手段で受信した一酸化炭素濃度の情報は制御部により処理される。
【0028】
湯沸器1は、制御部5により一酸化炭素濃度に基づいた燃焼制御が行われるもので、例えば検知された一酸化炭素濃度が所定値以上の場合に燃焼を停止する制御が広く一般的に行われている。バーナ3で燃焼を行うと、未燃成分として一酸化炭素が僅かに燃焼排気中に含まれるが、比重が空気より若干小さいため主に天井付近に滞留する。燃焼を継続すると一酸化炭素濃度が高くなっていく。ここで、実際に行った室内の一酸化炭素濃度を検知する計算の結果について図3〜図6に基づいて説明する。
【0029】
図3に実験を行った部屋を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。湯沸器1を図のように配置し、湯沸器1で燃焼を行った時の、燃焼開始時からの一酸化炭素濃度(ppm)を[0]〜[27]の28箇所で計測した。[1]〜[9]は部屋の前方(図3(a)の平面図の左方)で、左右位置は図3(b)に示すように、[1]〜[3]が左側の端部付近、[4]〜[6]が略中央部、[7]〜[9]が右側の端部付近、また上下位置は、図3(c)に示すように、[1][4][7]が天井付近、[2][5][8]が略中央部、[3][6][9]が床付近である。[10]〜[18]は部屋の略中央部(図3(a)の中央部)で、左右位置は図3(b)に示すように、[10]〜[12]が左側の端部付近、[13]〜[15]が略中央部、[16]〜[18]が右側の端部付近、また上下位置は、図3(c)に示すように、[10][13][16]が天井付近、[11][14][17]が略中央部、[12][15][18]が床付近である。[19]〜[27]は部屋の後方(図3(a)の右方)で、左右位置は図3(b)に示すように、[19]〜[21]が左側の端部付近、[22]〜[24]が略中央部、[25]〜[27]が右側の端部付近、また上下位置は、図3(c)に示すように、[19][22][25]が天井付近、[20][23][26]が略中央部、[21][24][27]が床付近である。また、[0]は湯沸器1の給気口11の一酸化炭素濃度である。
【0030】
燃焼開始後、1293秒経過時に燃焼を停止した。計測は、燃焼開始から2700秒まで行った。図4に[1]〜[9]の箇所の一酸化炭素濃度、図5に[10]〜[18]の箇所の一酸化炭素濃度、図6に[19]〜[27]の箇所の一酸化炭素濃度のグラフを示す。
【0031】
図4〜6より、天井付近の一酸化炭素濃度が高いのが分かる。燃焼を停止する直前、一酸化炭素濃度は1000ppmを越える箇所があるが、燃焼を停止して暫くすると一酸化炭素濃度は低下し始め、停止後10分程で概ね900ppm以下となり、緩やかに低下していく。また、上下方向略中央部と床付近は、燃焼停止後緩やかに上昇し、天井付近との濃度差が小さくなっていく。
【0032】
本発明では、制御部5により、燃焼手段(バーナ3)での燃焼を停止した後の所定時間、一酸化炭素濃度が所定値以下となるまで燃焼を禁止するように燃焼制御するものである。天井付近の空気の一酸化炭素濃度が高い状態で燃焼を開始すると、燃焼排気が上昇することで天井付近に滞留していた空気が室内の人が居る高さまで下降し、室内に居る人に悪影響を与える惧れがあるため、天井付近の空気の一酸化炭素濃度が高い状態では燃焼を禁止する燃焼制御を行う。所定値としては、1000ppm、900ppm、800pm等、任意に設定可能である。
【0033】
また、燃焼を停止した後の所定時間のみならず、任意の時点において、一酸化炭素濃度が所定値以上であれば、燃焼を禁止するように制御してもよい。
【0034】
また、本実施形態の一酸化炭素検知ユニット8は、寿命の自己診断機能を備えている。本実施形態では一酸化炭素検知センサーは電気化学式であるが、経年劣化により電解液が蒸発してしまうと、設計通りの出力電圧が出なくなる。そこで、制御部5は、燃焼開始後、一酸化炭素検知ユニット8からの一酸化炭素濃度の情報の電圧が零や所定値以下が所定時間継続する場合には、一酸化炭素検知センサーが有効でないと判断し、燃焼を禁止する制御を行う。一酸化炭素検知センサーが有効でないのに燃焼を行うと、実際の一酸化炭素濃度が高いにもかかわらず制御部5は一酸化炭素濃度が高くないと判断して燃焼を継続し、一酸化炭素濃度が異常に高まる惧れがある、という問題があるが、本実施形態では燃焼を禁止することで、前記問題を解決することができる。
【0035】
また、本実施形態の一酸化炭素検知ユニット8は、湯沸器本体とは別体であるため、任意の箇所に設置することができる。図3〜図6に示す実験から、給気口11での一酸化炭素濃度は、部屋の上下方向略中央部と床付近の一酸化炭素濃度と近く、人が居る場所での一酸化炭素濃度の代表値とみなせることが分かる。そこで、一酸化炭素検知ユニット8は本体ハウジング10内の給気口11の近傍に設置するのが好ましい。給気口11は本体ハウジング10の左右両側の側壁部に形成されていて、いずれの給気口11に設置するかは任意に選択可能である。また、本体ハウジング10を部屋の隅に設置する場合、いずれかの給気口11が壁により塞がれるような時でも、もう一方の給気口11は開放されるため、この側の給気口11に一酸化炭素検知ユニット8を設置すれば問題ない。
【0036】
また、一酸化炭素検知ユニット8を天井付近に設置すると、最も一酸化炭素濃度の高い箇所を計測することとなって安全上好ましい。また、一酸化炭素検知ユニット8を給気口11よりも高く排気の影響を受けにくい位置(例えば排気口12よりも低い位置等)に設置することで、燃焼排気の一酸化炭素の影響を直接受けず、人が居る場所での一酸化炭素濃度の代表値を検知することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 湯沸器
10 本体ハウジング
11 給気口
12 排気口
2 燃焼室
21 取入口
22 排出口
3 バーナ
31 ガス供給管
32 点火プラグ
33 電磁弁
34 流量調節弁
4 熱交換器
5 制御部
6 電池
71 給水管
72 給湯管
73 流量調節弁
74 吐出口
75 開閉弁
8 一酸化炭素検知ユニット
9 信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼手段及び該燃焼手段での燃焼を制御する制御手段を備えた燃焼機器と、室内の一酸化炭素濃度を検知する一酸化炭素検知センサーを備えた一酸化炭素検知ユニットと、を備え、燃焼手段での燃焼を停止した後の所定時間、一酸化炭素検知ユニットで検知した一酸化炭素濃度が所定値以下となるまで制御手段は燃焼手段での燃焼を禁止することを特徴とする一酸化炭素検知ユニットを備えた燃焼機器。
【請求項2】
一酸化炭素検知ユニットが一酸化炭素濃度に応じた電圧を制御手段に送信するものにおいて、電圧が所定値以下の場合には燃焼手段での燃焼を停止するとともに燃焼を禁止することを特徴とする請求項1記載の一酸化炭素検知ユニットを備えた燃焼機器。
【請求項3】
一酸化炭素検知ユニットは燃焼機器に対して着脱自在で、燃焼機器内の複数箇所のうちのいずれかに選択的に装着可能であるとともに、燃焼機器外に設置可能であることを特徴とする請求項1又は2記載の一酸化炭素検知ユニットを備えた燃焼機器。
【請求項4】
一酸化炭素検知ユニットを、燃焼機器の給気口よりも高く排気の影響を受けにくい位置に設置することを特徴とする請求項3記載の一酸化炭素検知ユニットを備えた燃焼機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−255961(P2010−255961A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108263(P2009−108263)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【出願人】(301066992)株式会社ハーマンプロ (145)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】