説明

丁番

【課題】扉や枠に取り付けるためのねじを具備し、取り付けに際し、ねじが脱落するおそれがなく、取付後は羽根部を扉、枠の取付面に密着できるようにした丁番を提供する。
【解決手段】丁番1の羽根部3に設けた取付孔5にねじ6を挿入する。ねじ6の先端には取付孔5よりも大径のプリセットワッシャー12を組み込む。プリセットワッシャー12が接する羽根部3には、取付孔5の周縁に広がる凹み部18が形成されている。上記ねじ6をねじ込むと、上記プリセットワッシャー12は、全体がこの凹み部18内に収納され、羽根部3の密着面11が扉7や枠8の取付面9に密着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉を枠に開閉自在に取り付けるための丁番に関する。
【背景技術】
【0002】
事務所、店舗、ホテル、集合住宅、戸建住宅等の建造物の玄関扉、室内扉、間仕切り扉、勝手口扉、括り付け家具の扉その他種々の場所で扉を枠に開閉自在に取り付けるために丁番が使用されている。この丁番は、一般的に、扉や枠に密着して取り付けられ一端に管部を有する一対の羽根部と、この管部を回動自在に連結する軸を有しており、羽根部に設けた取付孔にボルトやねじを通して扉や枠に取り付けている。取り付けに際しては、丁番に見合う大きさ、長さのねじを選択し、1本、1本袋から取り出して取付孔に差し込んだ後、ドライバーでねじ締めしているから、非常に手間がかかり、作業の途中でねじを落としてしまうことも多く、作業性の向上が求められていた。
【0003】
ねじやボルトの市場では、ねじやボルトに組み込む平座金、ばね座金等が落下しないよう予め平座金等を挿入した後にねじの先端側に取付けて座金の落下を防止するようにした座金脱落防止用ワッシャーが知られている(例えば特許文献1参照)。また、自動車部品の組立用として、ボルトを取り付けた後、後工程でナットを締め込むまでボルトが落下しないようボルトを保持するボルト脱落防止用ワッシャーも知られている。このような従来の脱落防止用ワッシャーは、使用に際して、ボルトの先端をナット或いは部品に形成されたねじ孔に直接差し込でねじ締めするものであるため、脱落防止用ワッシャーの位置が締め込みを完了する間際まで移動することがなく、そのため脱落防止用ワッシャーがねじやボルトから脱落する心配は殆どなかった。
【0004】
上述のような構成の脱落防止用ワッシャーをプリセットワッシャーとして丁番に用いるには、ボルト、ねじ等(以下単にねじという)を丁番の羽根部に設けた取付孔に差込み、取付孔の裏側に突出するねじの先端部分にプリセットワッシャーを取り付ければ、ねじの脱落は防止できるかもしれないが、そのままでは丁番として不都合である。すなわち、プリセットワッシャーは、梱包効率を考慮してねじの軸方向のどの位置に組み込まれているか判らないが、通常丁番を取り付ける際の手順として、羽根部を扉、枠の取付面に位置決めのために押し付けるから、この操作によりねじは先端が取付面に当って取付孔から抜け出る方向に押し戻される。このとき上記プリセットワッシャーは羽根部に当るので、ねじの最先端側に移動する。このように、プリセットワッシャーは、ねじが押し戻されたときにもねじから脱落しないことが必要である。さらに、重要なことは、丁番を扉、枠に取付けた状態で扉の荷重を安定状態で支えるためには丁番の羽根部と扉、枠の取付面は密着していなければならないが、従来のように、単にねじにプリセットワッシャーを設けると、プリセットワッシャーの厚み分だけ羽根部と取付面間に隙間が生じ、丁番を確実に固定することができず、扉の開閉が不安定になるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平7−1324号公報(請求項1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の解決課題は、上記のように脱落防止用のプリセットワッシャーを有するねじを用いた丁番であって、位置決め時に羽根部を扉等の取付面に押し当ててもプリセットワッシャーが落下するおそれがなく、ねじ締め後には羽根部と取付面が密着して安定状態に扉を保持できるようにした丁番を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、取付孔を有する羽根部と、該取付孔の一端側から該取付孔に挿入されたねじと、該取付孔の他端側に突出するねじの先部に取付けられ該取付孔より大径のプリセットワッシャーを具備し、該プリセットワッシャーに接する羽根部に取付孔の周縁に広がり該プリセットワッシャーを収納する大きさの凹み部を設けたことを特徴とする丁番が提供され、上記課題が解決される。
【0008】
また、本発明によれば、上記プリセットワッシャーは合成樹脂材料で外周面が傾斜する円板状に形成され、内方に上記ねじに弾性的に噛み合う爪を有し、上記凹み部にはプリセットワッシャーの外周の傾斜に応じて傾斜した内側面が形成されている上記丁番が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上記のように構成され、取付孔を有する羽根部と、該取付孔の一端側から該取付孔に挿入されたねじと、該取付孔の他端側に突出するねじの先部に取付けられ該取付孔より大径のプリセットワッシャーを具備し、該プリセットワッシャーに接する羽根部に取付孔の周縁に広がり該プリセットワッシャーを収納する大きさの凹み部を設けたから、上記丁番を扉や枠の取付部に固定する際、位置決めのために丁番の羽根部を取付面にあてがって押し付け、ねじが押し戻されてプリセットワッシャーがねじの先端側に移動しても、該プリセットワッシャーは凹み部に入り込み、ねじの最先端から抜け出すことはないので、脱落を防止できる。また、ねじを締め込んでいくと、上記プリセットワッシャーは凹み部内に収納され、羽根部の表面から突出しないようにでき、それにより羽根部と扉や枠の取付面を密着させることができ、扉を安定状態に取付けることができる。
【0010】
また、上記プリセットワッシャーを合成樹脂材料で外周面が傾斜する円板状に形成し、上記凹み部にもプリセットワッシャーの外周の傾斜に応じて傾斜する内側面を形成すると、プリセットワッシャーを上記取付孔の中心軸と同じ中心軸を持った位置に収納でき、羽根部を扉等の取付面に位置合わせしたとき、ねじのセンターが狂わず、安定状態でねじ締めでき、その上、内方に形成した爪が弾性的にねじ山に噛み合うので、ねじ山を損傷することもない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例を示し、丁番の正面図。
【図2】ねじを除去して羽根部を断面した丁番の側面図。
【図3】プリセットワッシャーを示し、(A)は平面図、(B)は断面図。
【図4】プリセットワッシャーとねじの関係を示し、(A)はねじを羽根部から浮かせた状態の説明図、(B)はねじを羽根部に着座させた状態の説明図、(C)はプレセットワッシャーが凹み部に入り込んだ状態の説明図。
【図5】丁番を扉や枠の取付部に取付ける工程を示し、(A)は羽根部を取付面にあてがった状態の説明図、(B)はねじをねじ込み始めた状態の説明図、(C)はねじを充分にねじ込んだ状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の丁番は、各種の丁番に適用することができるが、図1には建具の扉に使用した実施例が示されている。公知のように、丁番1は、一端に管部2を有する一対の羽根部3と、この羽根部3を回転可能に連結する軸4を具備し、羽根部3に設けた取付孔5にねじ6を通して扉7と枠8の各取付面9に羽根部3をそれぞれ固定し、扉7を開閉自在に枠8に保持する。
【0013】
図3、図4を参照し、上記ねじ6は取付孔5の一端側に広がるねじ締付面10側から挿入され、他端側の密着面11側に突出するねじ6の先端部にプリセットワッシャー12が組み込まれている。このプリセットワッシャー12は、合成樹脂材料で中心孔13を有する略円板状に形成され、外面14側に対し内面15側が小径になるように外周面16が傾斜し、中心孔13の内面には爪17が形成されている。この爪17は、ねじ6のねじ山に接しながら該ねじ山を傷めることなく軸方向に摺動できるよう弾性的に設けられ、上記外面14、内面15方向に多少変形できるよう爪17と上記内面15及び外面14から少し離れた位置に設けられ、該内面15、外面14との間には隙間a、bが形成されている。図3に示すように、実施例において爪17は半円形状に3個形成されているが、形状、個数、大きさ、厚さ等は適宜にすることができる。
【0014】
上記羽根部3の密着面11側の取付孔5の周縁には、上記プリセットワッシャー12を収納して該プリセットワッシャー12の体積を逃がすに充分な大きさの凹み部18が形成されている。図4に示すように、該凹み部18は、上記プリセットワッシャー12の外形状に応じて内側面19が傾斜しており、少なくとも上記プリセットワッシャー12の厚さよりも深い深さに形成されている。このような形状の凹み部18はさら孔状にさらもみ(座ぐり)することにより簡単に形成することができる。締付面10側の上記取付孔5の一端側には、ねじ6の頭部20を収納するためのさら孔21が形成され、該さら孔21と凹み部18の間には内面が直線状の取付孔5が現れている。
【0015】
上記のように本発明の丁番1の羽根部3の取付孔5には、締付面10側から予めねじ6が挿入され、密着面11側に突出するねじ6の先端側にプリセットワッシャー12を組み込むことにより、ねじ6は抜け止めされている。そして、取付に際して、図5に示すように、丁番1の羽根部3の密着面11を扉7及び枠8の取付面9にあてがって扉7や枠8に設けたねじ孔22に位置合わせするため押し付けると、同図(A)に示すように、ねじ6は先端が取付面9に当って浮き上がり、上記プリセットワッシャー12は取付面9に当りねじ山を摺動しながら凹み部18内に収納される。そのとき、図に示すように、ねじ6の先端と密着面11の間には間隙cが存するので、プリセットワッシャー12がねじから脱落することはない。なお、この間隙cが存在しなくてもプリセットワッシャー12は凹み部18内でねじ6と係合しているので、抜け落ちることはない。また、このとき、実施例のようにプリセットワッシャー12の外周面16と凹み部18の内側面19に傾斜を設けておくと、ねじ6のセンターが狂うことがない。
【0016】
したがって、同図(A)に示す状態からドライバーでねじ6をねじ込むと、プリセットワッシャー12は空回りしてねじ6は扉等に形成したねじ孔22内に進入し、同図(B)のようにねじ込まれる。そして、最終的に、ねじ6の頭部20は締付面10側に設けたさら孔21内に収納され、プリセットワッシャー12も密着面11側に設けた上記凹み部18内に収納され、羽根部3の密着面11から突出しないようにできる。したがって、羽根部3の密着面11を扉等の取付面9に密着させることができ、扉を安定状態で保持することができる。
【0017】
上記実施例は建具の丁番に使用した実施例示したが、本発明は、その他適宜部位で使用される各種の丁番に適用することができる。
【符号の説明】
【0018】
1 丁番
3 羽根部
5 取付孔
6 ねじ
7 扉
8 枠
9 取付面
10 締付面
11 密着面
12 プリセットワッシャー
17 爪
18 凹み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付孔を有する羽根部と、該取付孔の一端側から該取付孔に挿入されたねじと、該取付孔の他端側に突出するねじの先部に取付けられ該取付孔より大径のプリセットワッシャーを具備し、該プリセットワッシャーに接する羽根部に取付孔の周縁に広がり該プリセットワッシャーを収納する大きさの凹み部を設けたことを特徴とする丁番。
【請求項2】
上記プリセットワッシャーは中心孔を有し外周面が傾斜する円板状に形成され、上記凹み部にはプリセットワッシャーの外周の傾斜に応じて傾斜した内側面が形成されている請求項1に記載の丁番。
【請求項3】
上記プリセットワッシャーは合成樹脂材料で構成され、中心孔の内方には上記ねじに弾性的に噛み合う爪が設けられている請求項1または2に記載の丁番。
【請求項4】
上記爪は上記プリセットワッシャーの内面、外面から離れた位置に設けられている請求項1から3のいずれかに記載の丁番。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−7293(P2012−7293A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141448(P2010−141448)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(501433619)中西産業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】