説明

三ヨウ化カルボン酸芳香族誘導体の製造方法

三ヨウ化カルボン酸芳香族誘導体の製造方法
本発明は、イオパミドールであるX線造影媒体の中間体として有用な公知のカルボキサミド化合物、特に2,4,6-トリヨードイソフタル酸誘導体の製造方法に関連する。
該方法は、適切なN-スルフィニル中間体化合物と市販のα-ヒドロキシ酸又はその塩を反応させることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノスルフィニル誘導体とα-ヒドロキシ酸を縮合することにより、X線造影剤の合成に有用な中間体である、対応するアミド誘導体を得ることを含む、一般に三ヨウ化芳香族誘導体の製造方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
造影剤は、造影媒体としても知られるが、身体の特定の部分を強調し、見やすくするために、医療イメージングによる検査においてしばしば用いられる。その中では、X線造影媒体及びヨウ化非イオン性造影媒体、例えば、ジアトリゾ酸塩、ヨータラム酸塩、イオキシタラム酸塩、メトリゾ酸塩、イオヘキソール、イオメプロール (メルクインデックス, XIII Ed., 2001, No. 5071)、イオパミドール(メルクインデックス, XIII Ed., 2001, No. 5073)、イオペントール、イオプロミド、イソベルソール、イオキシラン、イオジキサノール、イオサルコール、イオグラミド、イオグルニド、イオグルアミド、アセトリゾ酸塩、ヨーダミド、イオセタミド、イオキサグル酸塩、イオトロラン、イオタスル、ヨージパミド、イオカルム酸塩、ヨードキサム酸塩、イオトロクス酸塩、イオトロラン等がある。類似のヨウ化造影剤のさらなる例としては、国際公開第94/14478号パンフレット(ブラッコ社)がある。そのような化合物の合成経路は複数あり、その中のいくつかは、芳香族アミノ誘導体を適切なα-ヒドロキシ酸誘導体と反応させ、対応するカルボキサミドに変換することにより特徴付けられる。1つの代表的な例は、開示されている、イオパミドールの製造方法に見られ、例えば、国際公開第02/44132号パンフレット、国際公開第96/37459号パンフレット、国際公開第96/37460号パンフレット、米国特許出願第5,362,905号公報、国際公開第97/47590号パンフレット、国際公開第98/24757号パンフレット、国際公開第98/28259号パンフレット及び国際公開第99/58494号パンフレットがある。一般的なイオパミドールの製造方法の一般的な参照例としては、例えば、下のスキームIに合成経路を示す:
【化1】

【0003】
スキームIによると、式(3)のアミノ誘導体を(2S)-2-(アセチルオキシ)プロパノイルクロライド(4)と適切な条件下反応させ、化合物(5)を得る。式(3)の化合物は、式(1)の出発物質を適切な塩素化剤、例えば、塩化チオニルと反応させることにより得られる。注目すべきことは、国際公開第96/37459号パンフレットに報告されているように、式(2)の中間体スルフィニル誘導体は塩素化工程により得られることである。それゆえ、式(5)の化合物は、さらに選択されたアミノアルコールと反応させ、本件ではセリノールとして知られる2-アミノ-1,3-プロパンジオールであり、ヒドロキシ基の部分を脱保護し、式(6)のイオパミドールを得る。
これらの後半の反応は、従来から当該分野において公知の方法のよって行われ、カルボキサミドを塩化アシル誘導体とアミノ化合物を反応させることによって製造するか、又はヒドロキシル基からアセチル保護基を解離させることによって行われる。
上述のスキームIにおいて、化合物 (4)は (2S)-2-ヒドロキシ-プロパン酸の活性型である、一般にL-乳酸として知られる化合物であり、そこに報告されているように適切にヒドロキシル基は保護されている。この観点から、化合物 (4)の製造は、下のスキームIIに示すとおり、市販の(2S)-2-ヒドロキシ-プロパン酸ナトリウム塩 (7)から出発して、更なる合成工程を要するため時間がかかることを注意すべきである:
【化2】

【0004】
スキームIIによると、最初のステップは、酸性条件下、化合物 (7)からL-乳酸 (8)に変換する反応である。それゆえ、得られた化合物は、ヒドロキシ基において保護され、対応するアセチル化中間体 (9)を得、これは一旦回収して精製され、カルボン酸基を適切な塩素化剤、典型的には塩化チオニルにより官能基化することによりさらに所望の塩化アシル (4)に変換される。
時間がかかることを除いては、スキームIIのプロトコールにより、中間体化合物の単離又は精製工程においていくつかの蒸留工程を経て、所望の化合物 (4)を得られる。さらに、上述の各ステップが従来の方法によって行われうるが、空気及び/又は湿度に敏感な試薬、例えば塩化チオニルは、それゆえ、少なくとも基質及び試薬を大容量に要する工業スケールにおいては面倒な条件設定が必要である。
そのことから、適切な中間体前駆体と、化合物 (4)と異なる化合物とを反応させることによる方法を含む手段により、高収率で高純度のイオパミドールの異なる製造方法を発明することは、特に有利である。
【0005】
この観点から、スルフィニル 誘導体とα-ヒドロキシ酸を反応させて、既知の芳香族カルボキサミド化合物を製造することは文献に報告されている。例えば、Bioorg. Med. Chem. Lett. 2006; 16; 4784-4787;及びBioorg. Med. Chem. Lett. 2007; 17; 6261-6265を参照されたい。そこには、α-ヒドロキシ酸部分を立体障害のないスルフィニル芳香族と反応させることが記載されている。同様に、Tetrahedron Lett. 2000; 41; 6017-6020;及びTetrahedron Lett. 1986; 27; 1921-1924には、公知のα-ヒドロキシ酸と適切なスルフィニル誘導体、N-スルフィニルアミン、又はさらにはN-スルフィニルアニリン誘導体として記載されている化合物の反応が記載されている。
興味深いことに、前述のすべての先行文献に報告されたN-スルフィニルアニリン、及びAr-N=S=O 化合物として示される化合物は、以下に示す本質的に単純な分子から得られている:
- Arがフェニルであるアニリンそれ自体;
- Arが、p-クロロ-C6H4-、p-メチル-C6H4-、p-ニトロ-C6H4-である1置換アニリン;又は
- Arが、2-フルオロ-4-メトキシカルボニルC6H3-又は2,4-ジクロロ-C6H3である2置換アニリン。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、我々の知る限り、立体障害のある化合物、特に全置換されたN-スルフィニルアニリン、いわゆるペンタ置換芳香族を出発物質とする、1ステップでのそのような合成方法は、公知のカルボキサミドの製造においては示されていない。この限りにおいて、上述の式(2)のスルフィニル誘導体が、3及び5位において2つのカルボニル部分によって置換され(例えば、-COCl基)及び、特に2、4及び6位において3つのヨウ素原子によって全置換された、特に立体障害のある置換基として知られている芳香族を有するイオパミドールの製造方法は示すに値する。
こうして我々は、1ステップで温和な反応条件下、立体障害のある全置換N-スルフィニルアニリンを、異なる合成経路を用いて適切なα-ヒドロキシ酸又はその塩とを反応させることができ、所望のカルボキサミド誘導体を得ることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
それゆえ、本発明においては、(4)の合成に関連する上述の欠点を避け、非常に有利なイオパミドールの製造方法を提供する。
このように、本発明は、式
【化3】

で示される化合物の製造方法を提供し、
(ここで、
R’は水素又は直鎖又は分岐のC1-C6アルキル基であり、1つ以上の保護されたヒドロキシ基によって任意に置換されていてもよく;
Rは、各場合においてすべて同一であるが、アルコキシ (-OR1)、アミノ (-NH2又は-NHR1)及び塩素原子からなる群から選択され;及びR1は、直鎖又は分岐のC1-C6アルキル基であり、任意に1つ以上のヒドロキシ基によって置換されていてもよい。)
該製造方法は、式(II)の化合物と、式(III)
【化4】

α-ヒドロキシ酸又はその塩を、適切な塩基の存在下反応させることを含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
第1の具体的態様としては、本発明は、
式(I)の化合物の製造方法であり、ここで該方法は、式(II)の化合物と(2S)-2-ヒドロキシ-プロパン酸又はその塩を、適切な塩基の存在下反応させることを含み:

【化5】

ここで、Rは、各場合において同一であり、アルコキシ-OR1、アミノ-NH2及び-NHR1及び塩素原子からなる群から選択され;
ここで、R1は、直鎖又は分岐のC1-C6アルキル基であり、任意に1つ以上の保護ヒドロキシ基によって置換されていてもよい。
さらに、実験項において詳述するが、本発明の方法によって、カルボキサミド誘導体の製造も可能であり、変換率は、対応する非ヨード化基質である場合に比べて、予想外に高い。
【0009】
それゆえ、本発明は、三ヨウ化ペンタ置換N-スルフィニルアニリンを、適切なα-ヒドロキシ酸又はその塩と反応させることにより、芳香族カルボキサミド及びそれらの誘導体を得る、新しい製造方法に関する。
上述の方法は、対応するアニリノと、以前報告したような煩雑な複数の工程を経て合成される化合物(4)を反応させる必要がなく、高収率及び純度で式(I)の化合物を製造できるので特に有利である。
重要なことは、式(I)の化合物は光学活性であるので、本発明は対応する光学活性なα-ヒドロキシ酸の前駆体又はその塩を出発物質とし、反応経路において光学配置を完全に保持することを考慮しなければならない。
明らかに、上述の工程は、乳酸又はその塩により、ヒドロキシ基を有する不斉炭素(*)における、あらゆる光学配置による式(I)の化合物
【化6】

(ここで、いかなる(S)又は(R)エナンチオマー又はさらには、それらのいかなる(R,S)ラセミ混合物[それぞれ(L)、(D)又は(L,D)としても特定される]であってもよい。)
の製造を含む。
【0010】
上述の化合物における本発明の工程によると、Rはアルコキシ基-OR1であり、ここでR1は直鎖又は分岐のC1-C6アルキル基であり、任意に1つ以上の保護ヒドロキシ基によって置換されていてもよい。さらに、別に定義しない限り、Rはアミノ基-NH2又は-NHR1であり、ここでR1は上に報告したとおりであり、又は塩素原子である。
本明細書中、別段に記載しない限り、用語「直鎖又は分岐のC1-C6アルキル」は、1ないし6炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル基を意味する。それらの例は、以下に限られないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ヘキシル等がある。
同様に、用語アルコキシ-OR1は、アルキル-オキシ基であり、ここでアルキルは、前述のとおりである。非限定的な直鎖又は分岐のアルコキシ基の例は、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ヘキシルオキシ等がある。
【0011】
用語「保護ヒドロキシ基」とは、特段に記載しない限り、あらゆるフリー(例えば、不保護)のヒドロキシ基自身による不必要な反応を抑制するために、当該分野において広く知られた置換基から選択されるものによって適切に保護されたヒドロキシ基を言う。該選択された保護基又は部分は、全工程においていかなる障害ともならず、ヒドロキシ基 (group or groups)に関連する無保護の形態で最終産物を得るのに容易に除去されなければならない。該保護基の非限定的な例としては、アルキルカルボニル、アリールカルボニル又はアリールアルキルカルボニル基を含むアシル基があり、ここでアルキルは上述された基である。好ましくは、ヒドロキシ保護基は、アルキルカルボニル基、例えばアセチル (-COCH3)がある。
さらに、適切な条件下、単一の保護基が同時に1つ以上のヒドロキシ基の保護に有効に用いられうる。同様に、例えば、ビシナルジオールの場合において、分子内環状アセタール又はケタールの形成により後者は適切に保護され、公知の適切な条件下、容易に除去できる。
有機化学における保護基の一般的な文献は、例えば、T. W. Green, Protective Groups in Organic Synthesis (Wiley, N.Y. 1981)を参照されたい。
したがって、カルボキサミド (I)及び(II)の場合においても、Rは、(-NHR1)であり、ここで、R1基は、前述した任意に1つ以上、例えば1又は2の保護ヒドロキシ基によって置換されていてもよい。
【0012】
上述より、式(I)及び(II)により特定される化合物に含まれるものは、例えば、イソフタル酸エステル (例えば、R = -OR1の場合)又はさらにはイソフタル酸 ジクロリド (例えば、R = -Clの場合)と呼ばれる、いくつかである。
同様に、Rがアミノ基を表す場合、イソフタル酸カルボキサミド(例えば、R = -NH2の場合)、例えば、N-アルキルカルボキサミド(例えば、R = -NHR1の場合)を含むものが、それゆえ本発明に含まれると考えられる。
好ましい態様としては、本発明は、式(II)の化合物を出発物質とする式(I)の化合物のうち、Rが塩素原子であるもの製造方法である。
更なる好ましい態様としては、本発明は、(II)を出発物質とする、式の化合物の製造方法(I)の化合物の製造であり、ここでRは-OR1及びR1は上述のとおりである。さらに好ましくは、R1は、直鎖又は分岐のC1-C4アルキル基、特にメチルである。
さらに好ましい態様としては、本発明は、
式(II)(ここで、Rは、-NH2又は-NHR1であり、R1が上に定義したとおりである。)の化合物を出発物質とし、
式(I)の化合物を製造する方法である。
【0013】
より好ましくは、R1は、直鎖又は分岐のC1-C4アルキル基であり、任意に1つ以上の保護ヒドロキシ基によって置換されていてもよい。このクラスにおいて、さらに好ましくは、R1は、-CH(CH2OH)2基であり、ここで、ヒドロキシ基は適切に保護されている。
式(I)の化合物又は、任意のヒドロキシ基を公知の方法により適切に脱保護することにより得られる又はそれらの前駆体は、式(I)の化合物は、診断用に用いられる有用な造影剤である。
典型的には、イオパミドールの合成例において、後者は、対応する式(I)の化合物の脱保護により得られるが、ここで、Rは-NHR1であり、R1は-CH(CH2OH)2であり、ここでいずれのヒドロキシ基も、例えばアセチル中間体により保護される:
【化7】

【0014】
前述したとおり、及び本発明の更なる側面として、本工程は、適切に式(II)の化合物と(2S)-2-ヒドロキシプロパン酸又はその塩を反応させることにより行われる。
適切な塩の例は、アルカリ金属塩又はアルカリ金属土類塩、好ましくはナトリウム塩、リチウム塩又はカリウム塩である。
さらにより好ましくは、本発明の工程は、高い光学純度の市販品のナトリウム塩の存在下行われる。反応の化学量論は、式(II)のスルフィニル基質及びα-ヒドロキシ酸又はその塩のモル比は、少なくとも1対1であるべきである。
しかし、好ましくは、反応は、過剰量の選択されたα-ヒドロキシ酸又は塩の存在下で行われることである。
式(II)の芳香族基質及び選択されたα-ヒドロキシ酸又はその塩はいずれも塩基、例えば、適切な有機塩基の存在下に反応させる。
好ましい塩基の例は、例えば、イミダゾール、1H-ベンゾトリアゾール又は1,2,4-トリアゾールであり、後者が特に好ましい。
【0015】
典型的には、塩基のモル量は、出発物質(II)に対して、約10%ないし約150%の範囲であり、例えば約110%である。
操作条件の観点から、及び特段に記載しない限り、適切な溶媒、好ましくは、従来有機合成において適用されてきたものから選択される非プロトン性溶媒の存在下で行われる。
例えば、N,N-ジメチルアセトアミド (DMAC)、N,N-ジメチルホルムアミドN,N−、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチル-2-ピロリドン (NMP)、アセトニトリル (CH3CN)、ジクロロメタン (DCM)等、並びにそれらの可能な混合物がある。
好ましくは、反応はDMAC又はDMSOの存在下で行われる。
X線造影剤又はそれらの中間体の製造方法に沿って、化合物 (II)から化合物(I)への反応は、約0℃ないし約40℃の範囲の温度で行われ、より好ましくは室温であり、それは約20℃ないし約25℃である。
反応時間は、約1ないし約10時間であるが、通常反応は約4時間で終了する。
本発明の更なる側面としては、化合物 (I)の製造方法は、適切な触媒の存在下に行われ得、化合物 (II)から(I)への変換速度を増加させるために必要となる場合に用いられる。
触媒の適切な例には、相間移動触媒、例えば、4級アンモニウム塩であり、テトラブチルアンモニウムブロミド ([N(Bu)4]+Br-)が好ましい。
【0016】
本工程の出発物質は、当該分野において知られており、従来の方法に従って製造され、例えば以下の段落において報告する。同様に、反応物質又は溶媒は、任意の触媒は、公知であり有機合成において従来から用いられている。
実用的な好ましい実施例のうち、本発明のプロセスは、以下のとおり行われる。
反応容器に、マグネティックスターラー及び温度測定装置を入れ、不活性ガス雰囲気下、適切な用量の化合物 (II)を、選択した温度において適切な非プロトン性溶媒系に溶解させる。
任意に適切な触媒とともに、適切な用量の塩基を反応混合物に加え、続いて溶液が得られるまで攪拌する。得られた(L)-乳酸又はその塩を混合物に加え、こうして得られた懸濁液を、反応が完了するまで一定時間、例えば数時間攪拌する。
反応の進行は、従来の方法によりモニターする(例えば、HPLC技術)。
【0017】
所望の式(I)の化合物は、高収率及び高純度で得られ、従来の方法により回収及び精製される。あるいは、場合によっては、診断用の最終化合物に向けて、直接工程を進める。
この観点から、式(I)の化合物、ここで、Rが塩素原子であるものは、造影剤、特にイオパミドールの中間体の合成に有用であり、上述したように、対応する式(II)の化合物を出発物質とするか、あるいは、その前駆体5-アミノ-2,4,6-トリヨードイソフタル酸から出発し、こうして式(II)の中間体の精製の必要なく本工程により得られる。
このように、以下からなる工程を含む5-[(2S)-2-ヒドロキシプロピオニルアミノ]-2,4,6-トリヨードイソフタル酸ジクロリドの製造方法もさらなる本発明の目的である:
(a) 5-アミノ-2,4,6-トリヨードイソフタル酸を適切な塩素化剤と反応させ、粗5-スルフィニルアミノ-2,4,6-トリヨードイソフタル酸ジクロリドを含む化合物を得;及び
(b) 工程(a)の粗生成物と(2S)-2-ヒドロキシ-プロパン酸又はその塩を、適切な塩基の存在下、以下のスキームに示す反応を行う:
【化8】

【0018】
上述の工程は、式(I)の化合物(ここで、Rは、前駆体5-アミノ-2,4,6-トリヨードイソフタル酸から得られる塩素原子であり、造影剤の合成に広く知られた中間体である。)を製造することを可能とするので、特に有利である。
塩素化剤は、カルボキシ基から対応する塩化アシル基への変換、及び反応性のN-スルフィニル基への変換のいずれにも用いられる。
様々な適切な塩素化剤が当該分野において知られており、本工程においても用いられる。その中で特に好ましくは、塩化チオニルであり;一般的な参考文献としては、以下を参照されたい:英国特許第1.472.050号公報; Pillai et al. J. Org. Chem. 1994; 59; 1344-50 and Harrie J.M. et al. Org. Proc. Res. Dev. 1999; 3; 38-43。
【0019】
工程(a)の操作条件は、広く当該分野において報告されており、例えば、出発物質と塩化チオニルを、任意に3級アミンの存在下、反応させるが、例示として開示する以下の文献を参照されたい;Bull. Korean Chem. Soc. 1990; 11; 494-496。同様に、Chidambaram et al. (Organic Process Research & Development 2002, 6, 632-636)は、4-アミノ-3-フルオロ安息香酸エチルエステルとSOCl2を反応させることにより4-アミノスルフィニル化合物の合成方法を開示する。一方、ドイツ国特許登録第1085648B号公報 (Lentia社)は、3-アミノ-2,4,6-トリヨード安息香酸と塩化チオニルを反応させることにより、中間体としての3-スルフィニルアミノ-2,4,6-トリヨード安息香酸・塩酸塩の合成を開示する。
工程(a)においては、様々な溶媒が用いられるが、好ましくは反応は、有機合成において通常知られたものから選択される非プロトン性溶媒、例えばとりわけ、ジクロロメタン (DCM)、トルエン等において行われる(一般的な参考文献としては、国際公開第96/37459号パンフレット)。
あるいは、工程(a)は、反応試薬及び溶媒のいずれとしても振舞う、塩化チオニルの存在下行われる。反応の終了時に過剰な塩化チオニルは、例えば真空蒸留により適切に除去される。
続く工程 (b)は、以前報告したとおり行われる。
【0020】
本発明の工程の出発物質は公知であり、例えば、水素化又はさらには市販の5-ニトロイソフタル酸の化学的還元に続く、芳香環のヨウ素化により、容易に従来の方法により製造できる(一般的な参考文献としては、国際公開第96/37458号パンフレットを参照されたい)。
さらに、本発明は造影剤、特にイオパミドールの工業的生産にも効率的に適用できることに言及する。
そのような便利な工程を経ることにより、スキームIに示す合成経路よりも少ない工程数により直接的に最終生成物が得られる。
それゆえ、本発明の更なる目的は、以前に開示した方法により得られる5-[(2S)-2-ヒドロキシプロピオニルアミノ]-2,4,6-トリヨードイソフタル酸ジクロリドを、従来の方法により2-アミノ-1,3-プロパンジオールと反応させることにより得られるイオパミドールの製造方法である;一般的な文献としては、国際公開第96/037460号パンフレット、米国特許出願第5,362,905号公報、国際公開第97/047590号パンフレット、国際公開第98/24757号パンフレット、国際公開第98/028259号パンフレット及び国際公開第99/058494号パンフレットを参照されたい。
本発明の工程は、一般的に適用でき、それゆえ、様々な芳香族基質にもぴったり適用でき、選択されたα-ヒドロキシ酸又はその塩と適切に反応できる。
【0021】
それゆえ、本発明の工程は、 広く報告されている操作条件によりイオパミドールの製造を可能とする。
上に引用したとおり、我々は、立体障害のある基質と、α-ヒドロキシ酸部分(例えば、乳酸)又はその塩の反応から、対応する非ヨウ素化及び部分的に置換された芳香族に比べてさらに高収率で縮合生成物を得られることを発見した。実施例1及び2に概説するとおり、スルフィニル誘導体から対応するアミド誘導体への変換収率は三ヨウ化基質を出発物質として考えると、立体障害の少ない非ヨウ素化基質の場合、88.8%から33.6%へと下がる。
以下の実施例は、本発明の工程をより説明することを意図してここに記載しており、記載しない限り、いかなる限定をするものでもない。
【0022】
実験項
以下の実施例による反応性生物は、以下の条件によるHPLC技術により分析した:
カラム: FLUOPHASE PFP (ペルフルオロフェニル) 100Å 5μm, 250×4.6 mm
温度: 40℃
移動相: A:水; B:アセトニトリル/メタノール 85:15
勾配溶出
検出 (UV): 245 nm
【実施例1】
【0023】
R = -OCH3の場合の化合物 (II)から化合物 (I)の製造
100 mLの反応容器に、マグネティックスターラー及び温度測定装置を入れ、窒素雰囲気下、20-25℃において化合物 (II) (10.44 g; 0.0165 mol)をDMAC (45 mL)に溶解させた。溶液を40℃に加熱し、1,2,4-トリアゾール (1.20 g; 0.0175 mol)を加え、溶液となるまで混合物を攪拌した。(2S)-2-ヒドロキシ-プロピオン酸ナトリウム塩 ((L)-乳酸ナトリウム塩、1.96 g; 0.0175 mol)を溶液に加え、得られた懸濁液を40℃で5時間攪拌した。
反応は、HPLCによりモニターした。反応の終了時、HPLC分析により、生成物(I)の用量は、88.8%を示した (HPLC領域%)。
【実施例2】
【0024】
比較例(comparative)
R = -OCH3である、対応する非ヨウ素化化合物 (I)の製造
非ヨウ素化基質5-(N-スルフィニルアミノ)イソフタル酸ジメチルエステル (II)で実施例1を繰り返した。
100 mLの反応容器に、マグネティックスターラー及び温度測定装置を入れ、窒素雰囲気下、非ヨウ素化化合物 (II) (4.08 g; 0.016 mol)を20-25℃でDMAC (90 mL)に懸濁させた。懸濁液を40℃に加熱した後、1,2,4-トリアゾール (1.20 g; 0.0175 mol)及び (L)-乳酸ナトリウム塩 (1.96 g; 0.0175 mol)を加え、混合物を40℃で3時間攪拌した。
反応はHPLCによってモニターした。反応終了時、HPLC分析により、非ヨウ素化化合物 (I)は、33.6% (HPLC領域%)を示した。
実施例1と2を比較すると、本発明の工程により、明らかに対応する立体障害の小さい基質に比べ顕著に、高い変換効率により所望の式(I)の化合物が予想外に得られることを示している。
【実施例3】
【0025】
R = -OCH3、-Cl又は-NHCH(CH2OCOCH3)2である、式(II)の対応する誘導体からの式(I)の化合物の製造
実施例1の実験工程により、様々な式(I)の化合物が以下の実施例により得られた。実験条件は以下の表1に示す。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

(ここで、
R’は、水素又は任意に1つ以上の保護ヒドロキシ基によって置換されていてもよい直鎖又は分岐のC1-C6アルキル基;
Rは、それぞれの場合においては同一であり、アルコキシ (-OR1)、アミノ (-NH2又は-NHR1)及び塩素原子からなる群から選択され;
R1は、任意に保護ヒドロキシ基によって1つ以上置換されていてもよい直鎖又は分岐のC1-C6アルキル基である。)
の化合物の製造方法であって、
式(II)
【化2】

の化合物
を式(III)
【化3】

のα-ヒドロキシ酸又はその塩と、塩基の存在下反応させる工程を含む方法。
【請求項2】
式I
【化4】

(ここで、
Rは、それぞれの場合においては同一であり、アルコキシ (-OR1)、アミノ (-NH2又は-NHR1)及び塩素原子からなる群から選択され;及び
R1は、任意に保護ヒドロキシ基によって1つ以上置換されていてもよい直鎖又は分岐のC1-C6アルキル基である)
の化合物の製造方法であって、式IIの化合物を(2S)-2-ヒドロキシ-プロピオン酸又はその塩とを適切な塩基の存在下反応させる工程を含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
Rが塩素原子である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
Rが-OR1及びR1が直鎖又は分岐のC1-C4アルキル基である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
R1がメチルである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
Rが- NH2又は-NHR1であり、R1が任意に保護ヒドロキシ基によって1つ以上置換されていてもよい直鎖又は分岐のC1-C4アルキル基である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
R1が-CH(CH2OCOCH3)2である請求項6記載の方法。
【請求項8】
(2S)-2-ヒドロキシ-プロピオン酸の塩が、リチウム、ナトリウム及びカリウム塩から選択される請求項2記載の方法。
【請求項9】
該(2S)-2-ヒドロキシ-プロパン酸塩が、ナトリウム塩である請求項8記載の方法。
【請求項10】
ヘテロ環塩基が、イミダゾール、1H-ベンゾトリアゾール及び1,2,4-トリアゾールから選択される請求項1ないし9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
該ヘテロ環塩基が1,2,4-トリアゾールである請求項10記載の方法。
【請求項12】
相間移動触媒の存在下行われる請求項1ないし11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
相間移動触媒がテトラブチルアンモニウムブロミドである請求項12記載の方法。
【請求項14】
化合物IIが5-アミノ-2,4,6-トリヨードイソフタル酸と硫黄含有塩素化試薬の存在下行われることにより得られ、該化合物IIを即時に(2S)-2-ヒドロキシ-プロピオン酸又はその塩と反応させ、式Iの5-[(2S)-2-ヒドロキシプロピオニルアミノ]-2,4,6-トリヨードイソフタル酸ジクロリドを得る請求項3記載の方法。
【請求項15】
請求項3又は14に記載の工程と、これに続く5-[(2S)-2-ヒドロキシプロピオニルアミノ]-2,4,6-トリヨードイソフタル酸ジクロリドと2-アミノ-1,3-プロパンジオールとの反応工程を包含するイオパミドールの製造方法。

【公表番号】特表2012−520844(P2012−520844A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500197(P2012−500197)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053186
【国際公開番号】WO2010/105983
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(504448162)ブラッコ・イメージング・ソシエタ・ペル・アチオニ (34)
【氏名又は名称原語表記】BRACCO IMAGING S.P.A.
【Fターム(参考)】