説明

三出力軸型の内燃機関

【課題】内燃機関装置内の同一燃焼室内で混合気を燃焼させ、該燃焼により爆発・膨張する燃焼ガスによって一対のピストンに機械的動力を与えてクランク軸に回転力を得ると共に、掃気される高速・高圧の燃焼ガス(動作気体)を利用してガスタービンを駆動してタービン軸に回転力を得る三出力軸型の内燃機関を提供する。
【解決手段】本発明の三出力軸型の内燃機関は、同一燃焼室内で混合気を燃焼させ、該燃焼により爆発・膨張する燃焼ガスによって、所定の傾斜角(90度〜160度)を有して略対向関係に位置する一対のピストンに機械的動力を左右其々に与え、該機械的動力をクランク機構を用いて回転方向に変換して左右其々のクランク軸に回転力を得ると共に、更に掃気される高速・高圧の燃焼ガス(動作気体)を利用してガスタービンを駆動し、該ガスタービンのタービン軸にも回転力を得る、三出力軸型の内燃機関である手段を採る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に関し、詳しくは、同一燃焼室内で混合気を燃焼させ、該燃焼により爆発・膨張する燃焼ガスによって一対のピストンに機械的動力を与えてクランク軸に回転力を得ると共に、掃気される高速・高圧の燃焼ガス(動作気体)を利用してガスタービンを駆動してタービン軸に回転力を得る三出力軸型の内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料を機関内部で燃焼させ、発生する熱エネルギーを機械的エネルギーに変換して動力を得る内燃機関は、基本サイクルによってオットーサイクル、ディーゼルサイクル、サバティサイクルに分けられ、点火方式によって電気火花点火、圧縮点火、焼玉点火に分けられ、吸排気方式によって4サイクル、2サイクルに分けられ、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンの基本的な作動原理として広く認識されている。
【0003】
上記のガソリンエンジンは、電気による火花を用いて点火する火花点火内燃機関や火花点火エンジンとも呼ばれるもので、主に、吸気・圧縮・点火(膨張)・排気の4つの工程をピストン2往復で終了する4ストロークエンジンと、前記4つの工程(吸排気同時の掃気)を一往復で終了する2ストロークエンジンとがあり、いずれも膨張現象がシリンダ内において、混合気の体積が最小となる付近で短時間に一気に行われ、燃焼容積がほぼ一定であることから定積燃焼サイクル、又はオットーサイクルと呼ばれるものである。その特徴は、排気量あたりの出力が大きく、また高速回転による運転も容易で、振動や騒音が少なく静寂性に優れていることから、主な用途としては乗用車、小型商業車、自動二輪車、小型船外機、小型作業機械などに広く利用されている。しかし、4ストロークエンジンでは、吸気工程や排気工程に大きな機械的エネルギー損失があり、2ストロークエンジンでは未燃焼ガスの排出や混合オイルの諸問題がある。
【0004】
他方、ディーゼルエンジンは、ピストンによって空気を圧縮し、シリンダ内の高温・高圧空気に燃料を噴射することで自己着火させるもので、ガソリンエンジン同様に、4ストロークエンジンと、2ストロークエンジンがある。但し、ディーゼルエンジンでは、火炎伝播速度がガソリンに比べて遅く、より低速のものがディーゼルサイクル(等圧サイクル)と呼ばれ、高速のものはサバテサイクル(複合サイクル)と呼ばれる。ディーゼルエンジンは内燃機関の中でも熱効率に優れ、低精製の燃料でも使用できて燃費が良い反面、シリンダ内の圧縮比が高くなることでエンジンの機械的強度が要求されることによって部品は重く嵩張り、部品コストも掛かる上、可動部重量による機械的運動エネルギーの損失も大きくなるため、ガソリンエンジンと比べると重量当たりの出力ならびにトルクが低く、高回転化が難しいという問題がある。
【0005】
このような問題点を解決すべく、従来からも上記のサイクル方式、点火方式、吸気方式の組み合わせや改良によって燃焼効率を上げようとする数多くの内燃機関の提案がなされている。例えば、4サイクルエンジンのシリンダに、下死点時付近で開口する開口部を設け、開口部の外側に連接してロータリー弁などの弁および第二の吸気ポートを設け、燃焼室の上部に点火プラグを設け、下死点時のピストン上面に沿って空気がシリンダ内に流入する様に、第二の吸気ポートを設定し、しかも開口部の掃気工程の開口時に閉弁する様に、前記ロータリー弁などをする。この構成により、負圧のシリンダ内に、ピストン上面に沿って第二の吸気ポートから空気が流入する。すると、シリンダ内の上部に混合気層が、下部に空気層が層状に形成される「内燃機関装置」(特許文献1参照)が提案されている。
【0006】
しかしながら、係る技術は、従来からの内燃機関同様に、燃焼室形成(圧縮)工程における圧縮や吸気工程における吸気はピストンに行わせているものである。また、前述のガソリンエンジンやディーゼルエンジンを始め、上記の「内燃機関装置」(特許文献1)の内燃機関も、シリンダ内の爆発・膨張エネルギーをクランク機構で構成される機械的伝達機構によって回転軸に伝達する構造であるため、エネルギー変換による機械的損失等が大きく、熱効率でいうと、ガソリンエンジンで約20〜26%程度であり、ディ―ゼルエンジンでも35〜45%程度に過ぎないものであった。
【0007】
一方、ガスタービンエンジンは、同一燃焼室内で混合気を燃焼させ、膨張する燃焼ガス(動作気体)によってタービンを回して回転エネルギーを得る内燃機関であり、重量や体積の割合には高出力のエネルギーが得られることから、主に航空機の動力源として広く用いられている。また始動時間が短く、非常用発電機の動力源としても一部に使われており、発生した高温高圧の燃焼ガスが遠心式又は軸流式タービン軸を回転させて動力源を発生させるものでる。該タービン軸は、圧縮機と連結していて圧縮機に圧縮動力を伝達して持続的に運動するもので、ガスタービンエンジンには燃焼ガスの熱エネルギーを全てタービンで回収して軸出力を取り出す方式と、燃焼ガスの熱エネルギーを残したまま膨張・排気し、推力を得る方式のジェットエンジンがある。広義的にはターボチャージャーも一種のガスタービンと言える。
【0008】
ガスタービンエンジンは、前述のガソリンエンジンやディ―ゼルエンジンなどと比較して軽量で比較的小さな体積で高出力が得られると共に、加速性能値を表すパワーウエイトレシオ(出力荷重比)に優れ、さらに低速回転時と高速回転時の燃料消費率の差が少ないことや、低周波の振動が少なく高めの周波数の騒音対策で済むことや、燃焼効率が内燃機関の中でもディ―ゼルエンジンに匹敵する35〜42%の数値を示すものである。また、小型軽量で始動時間が短く、定置型発電装置として今後その需要は高くなるものと予想されるものである。
【0009】
そこで、本出願人は、前述のガソリンエンジンとディ―ゼルエンジンとガスタービンエンジンの燃焼効率の利点を踏まえ、従来の内燃機関のようなシリンダ内の一回の爆発・膨張エネルギーをクランク機構の機械的伝達機構を介して出力軸とする同時に、混合気体の燃焼に伴う気体の膨張によって発生する気体エネルギーをガスタービンの機械的伝達機構に変換して出力軸として利用できるのではないかという着想の下、内燃機関装置内で発生する爆発・膨張エネルギーをより効率よく利用するためにはどのようにすればよいかという課題を解決すべく、内燃機関装置内の同一燃焼室内で混合気を燃焼させ、膨張する燃焼ガスによって一対のピストンのクランク軸と、ガスタービンのタービン軸の三出力軸に回転力を得る熱効率に優れた「三出力軸型内燃機関」の提案に至ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7-279670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、同一燃焼室内で混合気を燃焼させ、該燃焼により爆発・膨張する燃焼ガスによって一対のピストンに機械的動力を与えてクランク軸に回転力を得ると共に、掃気される高速・高圧の燃焼ガス(動作気体)を利用してガスタービンを駆動してタービン軸に回転力を得る三出力軸型の内燃機関を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、同一燃焼室内で混合気を燃焼させ、該燃焼により膨張する燃焼ガスによって、所定の傾斜角(90度〜160度)を有して略対向関係に位置する一対のピストンに機械的動力を左右其々に与え、該機械的動力をクランク機構を用いて回転方向に変換して左右其々のクランク軸に回転力を得ると共に、更に掃気される高速・高圧の前記燃焼ガスを利用してガスタービンを駆動し、該ガスタービンのタービン軸にも回転力を得る、三出力軸型の内燃機関であって、シリンダヘッドと、シリンダと、ピストンと、コンロッドと、クランク軸と、ハウジングケースと、ガスタービンと、から成り、前記シリンダヘッドには、燃料インジェクターとエアーインジェクターと点火プラグとを備え、前記シリンダには、側壁の所定位置に動作気体掃気用マニホールドと、該動作気体掃気用マニホールドの中央上部所定位置にガイド部とを備え、前記ピストンは、ピストンヘッド部がハイコンプレッションタイプで山形に突出しており、上死点において左右各々のピストンヘッドとシリンダヘッドの内壁により燃焼室を形成し、前記クランク軸は、軸芯が前記動作気体掃気用マニホールドと反対方向に所定距離だけオフセットするように其々前記ハウジングケースに内設されると共に、一対のクランク軸は往復動同調機構で連動され、前記ピストンと前記コンロッドと前記クランク軸の連結位置と、前記クランク軸の軸芯位置が上死点付近で直線状となる位置から燃焼・膨張行程側に10〜25度進角した位置で点火し、燃焼室形成(圧縮)工程と点火工程と燃焼・膨張行程と排気・掃気工程とを、前記ピストンが一往復サイクルで完了する構成であり、前記ガスタービンは、遠心式又は軸流式の回転圧縮機に連結されると共に、動作気体掃気用マニホールド内に配置されている手段を採る。
【0013】
また、本発明は、前記ガスタービンが前記動作気体掃気用マニホールド外に配置されている手段を採ることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る三出力軸型内燃機関によれば、一対の4サイクル燃焼機関が逆V字型(傾斜角=バンク角90度〜160度、より好ましくは110度〜130度)を有して配置されることによって、エンジン配置スペースを削減し、さらに対向位置に配置することによってエンジン駆動による動作振動を相殺し、さらに、タービンブレードを動作気体掃気用マニホールド内に円錐状に複数設けた構成を採用する場合は、該動作気体掃気用マニホールド内に背圧が掛かることになり、排気脈動による動作振動の抑制が図られるという優れた効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係る三出力軸型内燃機関によれば、燃焼特性が異なる広範囲の燃料に対応できるといった優れた効果を奏する。具体的に、例えば、火炎伝播速度の速い水素やガソリン等では、ピストンが上死点付近の容積一定状態で瞬間的に大きな力をクランク軸で得ることが可能であり、他方、火炎伝播速度の遅い軽油やプロパンガス等では、動作気体掃気用マニホールドに排気される過程でも燃焼による膨張圧力をタービンブレードで得ることが可能である。
【0016】
また、本発明に係る三出力軸型内燃機関によれば、シリンダ内の爆発・膨張エネルギーをクランク機構で構成される一対の機械的伝達機構によって回転軸に伝達する手段と、内燃機関装置内で発生する爆発・膨張による燃焼ガスを直接の動作気体として供給する手段を同時に得ることができるため、爆発・膨張行程で発生する爆発・膨張エネルギーを4サイクル燃焼機関とガスタービン燃焼機関に効率良く伝達することができ、燃焼効率(充填効率)ならびに排気効率の内燃機関を提供できるという優れた効果を奏する。
【0017】
また、本発明に係る三出力軸型内燃機関によれば、シリンダーに所定のバンク角(90度〜160度、より好ましくは110度〜130度の範囲内)を有すると共に、燃焼ガスの膨張方向に向かって動作気体掃気用マニホールドが設けられているため、排気開始直後からは燃焼ガスの膨張による圧力ベクトルに対してピストンヘッド表面が直交する関係になく、また、該圧力を二つのピストンヘッドで受けるため、ピストンヘッドに掛かる応力を極めて軽減でき、特に、燃焼圧力及び燃焼温度の高い水素等の燃料を用いる場合に問題となる耐久性向上にも資する効果を発揮する。さらにまた、係る構成の採用により、同一ボアのシングルピストン形式と比べてストロークが半分となることから、超ショートストローク化を実現でき、高回転型の内燃機関を提供できるという優れた効果を奏する。
【0018】
また、本発明に係る三出力軸型内燃機関によれば、シリンダ内の爆発・膨張エネルギーをクランク機構で構成される一対の機械的伝達機構によって回転軸に伝達する手段と、内燃機関装置内で発生する爆発・膨張による燃焼ガスを直接の動作気体として供給する手段を同時に得ることができるため、爆発・膨張行程で発生する爆発・膨張エネルギーを4サイクル燃焼機関とガスタービン燃焼機関に効率良く機械的伝達エネルギーを伝達することができるという優れた効果を奏する。
【0019】
また、本発明に係る三出力軸型内燃機関によれば、タービンブレードに高速・高圧の動作気体を供給して、内燃機関の回転数と無関係に過給できるターボチャージャーを駆動する方式に連動することができるため、排気タービン式ターボチャージャー特有のターボラグのない過給を行うことができるという優れた効果も奏し得る。
【0020】
また、本発明に係る三出力軸型内燃機関によれば、燃焼室の上方に設けられる燃料インジェクターとエアーインジェクターによって電子制御された燃料と圧縮空気を噴射させるため、種々のセンサーを用いて回転数や外気温度、或いは酸素濃度等といった諸条件から繊細な制御をさせて、より燃焼効率を上げることができるという優れた効果を奏し得る。
【0021】
また、本発明に係る三出力軸型内燃機関によれば、4サイクル燃焼機関の燃焼室で爆発・膨張した熱エネルギーを一対のクランク軸の回転力に変換すると共に、従来では損失とされた凡そ30%の熱エネルギーを有する燃焼ガスG(動作気体K)を動力源として、ガスタービン燃焼機関のタービンブレードを駆動することで排気損失を極めて小さくすることができるという優れた効果を奏し得る。
【0022】
また、本発明に係る三出力軸型内燃機関によれば、燃焼室の上方に設けられる燃料インジェクターにより燃料を燃焼室内に噴射するため、ガソリンの他にも、軽油、LPG、天然ガス、水素、メタノールなどの火炎伝播速度の速い燃料から遅い燃料まで広範な燃料を使用することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る三出力軸型の内燃機関の全体を示す模式的断面説明図である。(実施例1)
【図2】本発明に係る三出力軸型の内燃機関の燃焼室形成(圧縮)工程を示す模式的断面説明図である。
【図3】本発明に係る三出力軸型の内燃機関の点火工程を示す模式的断面説明図である。
【図4】本発明に係る三出力軸型の内燃機関の燃焼・膨張行程を示す模式的断面説明図である。
【図5】本発明に係る三出力軸型の内燃機関の排気・掃気工程を示す模式的断面説明図である。
【図6】請求項2に係る三出力軸型の内燃機関の実施形態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の三出力軸型の内燃機関は、同一燃焼室内で混合気を燃焼させ、該燃焼により膨張する燃焼ガスによって、所定の傾斜角を有して略対向関係に位置する一対のピストンに機械的動力を左右其々に与え、該機械的動力をクランク機構を用いて回転方向に変換して左右其々のクランク軸に回転力を得ると共に、更に掃気される高速・高圧の燃焼ガス(動作気体)を利用してガスタービンを駆動し、該ガスタービンのタービン軸にも回転力を得る、三出力軸型の内燃機関とする手段を採ったことを最大の特徴とするものである。以下、実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明に係る三出力軸型の内燃機関の全体を示す模式的断面説明図である。
本発明の三出力軸型の内燃機関10は、一対のピストン往復動を動力源とする4サイクル燃焼機関と、その燃焼室24で発生する掃気される燃焼ガスG(動作気体K)を動力源とするガスタービン燃焼機関で構成される三出力軸型の内燃機関であって、シリンダヘッド20とシリンダ30とハウジングケース70とピストン40とコンロッド50とクランク軸60とから成る4サイクル燃焼機関と、ガスタービン80を構成するタービンブレード81とタービン軸82からなるガスタービン燃焼機関で構成される。
【0026】
シリンダヘッド20の燃焼室24の上部には、ガソリン等の燃料Nを霧化状態あるいは気化状態で電子制御噴射する燃料インジェクター21と、コンプレッサー等で圧縮された圧縮空気Eを電子制御噴射するエアーインジェクター22と、電気的点火する点火プラグ23とを備えるものである。
【0027】
燃料インジェクター21は、内部に電気的に開閉するニードルバルブを備え、そのバルブがプランジャーコアと電磁石とスプリングの働きによって開くと先端の噴射口から燃料噴射ポンプ(高圧フューエルポンプ)から送られてくる高圧の燃料Nをエアーインジェクター22とのタイミングを計って電子制御噴射する筒内燃料噴射装置である。
【0028】
エアーインジェクター22は、内部に電気的に開閉するニードルバルブを備え、そのバルブがプランジャーコアと電磁石とスプリングの働きによって開くと先端の噴射口から空気圧縮ポンプ(エアーコンプレッサーポンプ)から送られてくる高圧の圧縮空気Eを電子制御によって噴射する筒内空気噴射装置である。
【0029】
シリンダ30は、シリンダブロック本体の中央下部に燃焼ガスGが排出される動作気体掃気用マニホールド32と、ガイド部31とを備えている。バンク角は90度〜160度、より好ましくは110度〜130度の範囲内となる。ガソリンや水素のような火炎伝播速度の速い燃料では膨張時間は瞬間的であり、ピストン40はこの瞬間的な圧力変化による下向きの応力を十分に受ければよく、シリンダ30内の密閉状態を確保するストローク限界位置は図面に示すような、わずかなガイド部31があればよい。但し、点火のタイミングを10〜25度の範囲で進角θさせているため、実際の上死点Hにおいてピストンヘッド41が該ガイド部31に衝突しないように、クリアランスCを確保しておくことはいうまでもない。なお、シリンダ30の冷却に関しては図示していないが、放熱板等のヒートシンクによる空令や水冷式などが考え得る。
【0030】
動作気体掃気用マニホールド32は、シリンダ30の側壁の所定位置に設けられ、該中央上部所定位置にガイド部31を備えて形成される。また、動作気体掃気用マニホールド32の内部通路の上部開口位置は、混合気の瞬間的な圧力変化による下向きの応力を十分に受け、ピストン40が降下し始めてから開口するような位置関係に配置し、動作気体掃気用マニホールド32の内部通路の底部開口位置は、ピストン40が下死点Lにおいて、ピストンヘッド41のなだらかな傾斜面と、連続して繋がるような通路断面を形成するように位置することによって、4サイクル燃焼機関の燃焼室24で爆発・膨張した熱エネルギーは、掃気される際に損失する凡そ30%の熱効率を有効利用して掃気される燃焼ガスG(動作気体K)を動力源としてガスタービン燃焼機関を駆動させるものである。
【0031】
ピストン40は、ピストンヘッド41の形状が動作気体掃気用マニホールド32側に向かって下方に傾斜するなだらかな曲面を形成する山形状に形成され、コンロッド50とクランク軸60とから成るクランク伝達機構よって往復動することで、燃焼ガスGを掃気するものである。なお、本発明に係るピストン40はシリンダ30内で混合気を圧縮するものではないのでコンプレッションリングは不要である。但し、図示はしていないが、オイルリングについては必要に応じて設けることは有効である。
【0032】
ピストンヘッド41は、所謂天頂部が山形に盛り上がったコンベックスヘッドに類似した形状を有するもので、動作気体掃気用マニホールド32側に向かって下方に傾斜するなだらかな曲面を形成する山形状に形成し、燃焼室24の爆発・膨張エネルギーをそのなだらかな曲面で、コンロッド50とクランク軸60とから成るクランク伝達機構と、シリンダ本体の中央下部に位置する動作気体掃気用マニホールド32に導く形状を有するものである。
【0033】
コンロッド50は、一端に、ピストン40と連結するためのピストンピン挿入部となるスモールエンド52を有し、他端には、クランク軸60と連結するためのクランクピンにより挿入部となるビックエンド53を設け、ピストン40の往復運動を回転運動に変える役割を果たすものである。
【0034】
往復動同調機構51(図示なし)は、一対のピストン40がクランク軸60に連結される位置と対向する位置に其々連結され、一対のピストン伝達機構を同調させるためにタイミングベルト、ギア、カムクランク軸、チェーン等によって連結同調されるものである。
【0035】
クランク軸60は、ハウジングケース70内のジャーナル部にメタルやベアリング等を介して内設され、該ジャーナル部は、軸芯62が動作気体掃気用マニホールド32と反対方向に所定距離Rだけオフセットさせた(従来のクランクシャフトをピストンピンの中心位置から僅かにずらしたオフセットシリンダの様なもの)位置に設けられる。また、コンロッド50との連結する外周円上の反対側に振動を防止するバランスウエイト61を設け、ピストン40やコンロッド50の重量に係る慣性力と相殺させて振動を抑え、直線的な動作をしようとするピストン40を滑らかな回転運動に変えるものである。なお、所定距離Rのオフセット量は、クランク軸60の軸芯62からコンロッド50のビッグエンド53の軸芯までの長さをMとしたとき、距離Rは、長さMにSin25(進角θの最大値)を乗じた値となる。
【0036】
ガスタービン80は、請求項1に係るガスタービン80では動作気体掃気用マニホールド32内に配置され、請求項2に係るガスタービン80では動作気体掃気用マニホールド32の外側出口に配置される。該ガスタービン80は、タービンブレード81を円周方向に複数配置した円盤状、又はこれを複数段設けて円錐状に構成され、燃焼室24で発生して掃気される高速・高圧の燃焼ガスG(動作気体K)の流体による運動エネルギーと、燃焼に伴う圧力エネルギーを利用してタービン軸82を駆動する。
【0037】
また、ガスタービン燃焼機関で得られる回転力は、例えば自動車に装着される場合は、エアーコンプレッサーや、オイルポンプ、カーエアコン、ラジエターファン、ターボチャージャーなどの動力源として4サイクル燃焼機関の出力を落とすことなく有効に利用されるものである。
【0038】
本発明に係る三出力軸型の内燃機関10は、燃焼室24の爆発・膨張エネルギーを機械的ならびに流動的な動作気体エネルギーに同時に変換して利用しようとするもので、燃焼室24の爆発・膨張エネルギーによって駆動するピストン40とコンロッド50とクランク機構とから成る4サイクル燃焼機関と、その燃焼室24で発生した掃気される高速・高圧の燃焼ガスG(動作気体K)を利用したガスタービン燃焼機関で構成されるものである。
【0039】
図2は、本発明に係る三出力軸型の内燃機関の燃焼室形成(圧縮)工程を示す模式的断面説明図である。
燃焼室形成(圧縮)工程は、燃焼室24での爆発・膨張エネルギーの慣性によってクランク軸60が上方に回転し、ピストンピンの位置にあるコンロッド50のスモールエンド52とクランク軸60の外周面に位置するコンロッド50のビックエンド53とクランク軸60の軸芯62が直線状になる位置までピストン40が上死点Hに向かってシリンダ30内を上昇し、シリンダ30の本体下部のガイド部31を塞いで燃焼室24が最小容積に形成したタイミングで、シリンダヘッド20に設けられている燃料インジェクター21とエアーインジェクター22によって燃料Nならびに圧縮空気Eが電子制御されて噴射される工程である。
【0040】
図3は、本発明に係る三出力軸型の内燃機関の点火工程を示す模式的断面説明図である。
点火工程は、燃焼室24が最小容積に形成され、ピストンピンの位置にあるコンロッド50のスモールエンド52とクランク軸60の外周面に位置するコンロッド50のビッグエンド53とクランク軸60の軸芯62が直線状となる位置から燃焼・膨張行程側に10〜25度進角θした位置でデェストリビューターによって配電される点火プラグ23が電気的点火される工程である。
【0041】
図4は、本発明に係る三出力軸型の内燃機関の燃焼・膨張行程を示す模式的断面説明図である。
燃焼・膨張行程は、燃焼室24内で爆発・膨張した燃焼ガスGは、ピストンヘッド41を下死点Lに向かって押し下げる爆発・膨張エネルギーでクランク軸60を下方に回転させると共に、ガスタービン80に掃気される燃焼ガスG(動作気体K)を排出する工程である。
【0042】
図5は、本発明に係る三出力軸型の内燃機関の排気・掃気工程を示す模式的断面説明図である。
排気・掃気工程は、燃焼室24の排気ならびに掃気を同時に行なうもので燃焼室24の爆発・膨張エネルギーによって4サイクル燃焼機関を作動させると同時に燃焼室24で発生した掃気される高速・高圧の燃焼ガスG(動作気体K)は、ピストン30の上端部の形状が下方に傾斜するなだらかな曲面を形成する山形状に導かれ、動作気体掃気用マニホールド32側に向かって勢いよく掃気され、連結する動作気体掃気用マニホールド32内に配置されるタービンブレード81ならびにタービン軸82を回転駆動させる工程である。
【0043】
以上で構成される内燃機関の燃焼サイクルを簡単に説明すると、ピストン40とコンロッド50とクランク軸60の連結位置と、クランク軸60の軸芯62位置が上死点H付近で直線状となる位置から膨張行程側に10〜25度進角θした位置で点火し、燃焼室24で発生した爆発・膨張エネルギーが4サイクル燃焼機関を作動させると同時に燃焼室24で発生した掃気される高速・高圧の燃焼ガスG(動作気体K)が動作気体掃気用マニホールド32から勢いよく掃気される一連の燃焼室形成(圧縮)工程と、点火工程と、燃焼・膨張行程と、排気・掃気工程をピストン40が一往復サイクルで完了する構成で形成されるものである。
【実施例2】
【0044】
図6は、請求項2に係る三出力軸型の内燃機関の実施形態説明図であり、ガスタービン80が前記動作気体掃気用マニホールド32の外側に配置されている構成の三出力軸型の内燃機関を示している。図6(a)は、請求項1に記載のガスタービン80のように、動作気体掃気用マニホールド32の内部に設けることができない大きさのガスタービン80を一機で駆動する状態を示し、図6(b)は、さらに大きなガスタービン80に複数機の前記三出力軸型の内燃機関を配置した構成の三出力軸型の内燃機関を示している。この場合、クランク軸60を連動させて回転動力を得るだけでなく、同期や排気順序を定めてバランスよくガスタービン80を駆動することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の三出力軸型の内燃機関は、小型軽量で高出力であることから、風力発電機の動力源としたり、タービンブレードに掃気される高速・高圧の燃焼ガス(動作気体)を供給して内燃機関の回転数と無関係に過給できるターボチャージャー、気球の高温膨張気体の供給装置など、多方面に利用することができるもので、本発明の三出力軸型の内燃機関の産業上の利用可能性は大とするものと解する。
【符号の説明】
【0046】
10 三出力軸型の内燃機関
20 シリンダヘッド
21 燃料インジェクター
22 エアーインジェクター
23 点火プラグ
24 燃焼室
30 シリンダ
31 ガイド部
32 動作気体掃気用マニホールド
40 ピストン
41 ピストンヘッド
50 コンロッド
51 往復動同調機構
52 スモールエンド
53 ビックエンド
60 クランク軸
61 バランスウエイト
62 軸芯
70 ハウジングケース
80 ガスタービン
81 タービンブレード
82 タービン軸
H 上死点
L 下死点
C クリアランス
R 所定距離
K 動作気体
N 燃料
E 圧縮空気
G 燃焼ガス
θ 進角



【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一燃焼室内で混合気を燃焼させ、該燃焼により爆発・膨張する燃焼ガスによって、所定の傾斜角(90度〜160度)を有して略対向関係に位置する一対のピストンに機械的動力を左右其々に与え、該機械的動力をクランク機構を用いて回転方向に変換して左右其々のクランク軸に回転力を得ると共に、更に掃気される高速・高圧の前記燃焼ガスを利用してガスタービンを駆動し、該ガスタービンのタービン軸にも回転力を得る、三出力軸型の内燃機関であって、
シリンダヘッドと、
シリンダと、
ピストンと、
コンロッドと、
クランク軸と、
ハウジングケースと
ガスタービンと、から成り、
前記シリンダヘッドには、燃料インジェクターとエアーインジェクターと点火プラグとを備え、
前記シリンダには、側壁の所定位置に動作気体掃気用マニホールドと、該動作気体掃気用マニホールドの中央上部所定位置にガイド部とを備え、
前記ピストンは、ピストンヘッドがハイコンプレッションタイプで山形に突出しており、上死点において左右其々のピストンヘッドとシリンダヘッドの内壁により燃焼室を形成し、
前記クランク軸は、軸芯が前記動作気体掃気用マニホールドと反対方向に所定距離だけオフセットするように其々前記ハウジングケースに内設されると共に、一対のクランク軸は往復動同調機構で連動され、
前記ピストンと前記コンロッドと前記クランク軸の連結位置と、前記クランク軸の軸芯位置が上死点付近で直線状となる位置から燃焼・膨張行程側に10〜25度進角した位置で点火し、
燃焼室形成(圧縮)工程と点火工程と燃焼・膨張行程と排気・掃気工程とを、前記ピストンが一往復サイクルで完了する構成であり、
前記ガスタービンは、遠心式又は軸流式の回転圧縮機に連結されると共に、動作気体掃気用マニホールド内に配置され、
ていることを特徴とする三出力軸型の内燃機関。
【請求項2】
前記ガスタービンが前記動作気体掃気用マニホールド外に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の三出力軸型の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−79583(P2013−79583A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218812(P2011−218812)
【出願日】平成23年10月2日(2011.10.2)
【特許番号】特許第4951143号(P4951143)
【特許公報発行日】平成24年6月13日(2012.6.13)
【出願人】(511205356)
【Fターム(参考)】