説明

三層麺の製造方法

【課題】機械製麺法により、滑らかさ、弾力性、歯切れ感などの食感、光沢や透明感などの外観、茹で伸びの遅さ、麺ほぐれなどの点において、手延べ麺類と同等以上の品質を有する麺類を製造しうる方法を提供すること。
【解決手段】内層用麺帯を2枚の外層用麺帯で挟んで複合圧延して三層麺帯を製造し、該三層麺帯を麺線に切り出して三層麺を製造する方法において、前記外層用麺帯として押出し麺帯を用い、前記内層用麺帯としてロール圧延麺帯を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三層麺の製造方法、詳しくは、外層用麺帯として押出し麺帯を、内層用麺帯としてロール圧延麺帯をそれぞれ用いた三層麺の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、麺帯機、複合機、圧延ロールなどを用いた機械製麺法が広く採用されている。また、押出機を用いて麺帯を製造する押出製麺法も知られている。
しかし、一般に、これらの機械製麺法では、手延べ麺類と比較して、滑らかさ、弾力性、歯切れ感などの食感、光沢や透明感などの外観、茹で伸びの遅さ、麺ほぐれなどの点において十分に満足しうる麺類が得られていない。
【0003】
このような従来の機械製麺法の欠点を解消する製麺方法として、内層用麺帯を2枚の外層用麺帯で挟んで複合圧延して三層麺帯を製造し、該三層麺帯を圧延した後、麺線に切り出して三層麺を製造する方法が知られている。
例えば、特許文献1には、外層をロール圧延麺帯とし、内層を圧延されていない麺帯とする三層麺の製造方法が記載されている。また、特許文献2には、内層が押出し麺帯で、外層が非押出し麺帯である三層麺が記載されている。また、特許文献3には、内層生地と外層生地の蛋白含有率に差がある三層麺の乾麺の製造方法が記載されている。また、特許文献4には、三層押出しによる三層麺の製造方法が記載されている。
これらの特許文献に記載されている三層麺は、従来の機械製麺法により得られる麺類に比較して品質が向上しているものの、十分に満足しうるものではなく、さらなる改良が求められている。
【0004】
【特許文献1】特開昭51−79749号公報
【特許文献2】特開平8−9909号公報
【特許文献3】特開平10−248510号公報
【特許文献4】特開平11−151071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、機械製麺法により、滑らかさ、弾力性、歯切れ感などの食感、光沢や透明感などの外観、茹で伸びの遅さ、麺ほぐれなどの点において、手延べ麺類と同等以上の品質を有する麺類を製造しうる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、種々検討した結果、三層麺の製造方法において、内層用麺帯を押出製麺法により製造し、外層用麺帯をロール圧延製麺法により製造することにより、上記目的を達成する麺類が得られることを知見し、斯かる知見に基づいて本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明は、内層用麺帯を2枚の外層用麺帯で挟んで複合圧延して三層麺帯を製造し、該三層麺帯を麺線に切り出して三層麺を製造する方法において、前記外層用麺帯として押出し麺帯を用い、前記内層用麺帯としてロール圧延麺帯を用いることを特徴とする三層麺の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の三層麺の製造方法によれば、滑らかさ、弾力性、歯切れ感などの食感、光沢や透明感などの外観、茹で伸びの遅さ、麺ほぐれなどの点において、手延べ麺類と同等以上の品質を有する三層麺を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の三層麺の製造方法について詳細に説明する。
本発明における外層用麺帯は、押出し麺帯である。押出し麺帯とは、製麺原料に加水して調製した麺生地を押出機で押し出して製造されたものであり、必要により、押し出した麺帯をロール等で圧延して厚みの調整をしてもよい。
【0010】
押出機としては、押出製麺法で従来用いられている押出機を用いることができ、たとえば、スパゲティ、マカロニ製造用の一軸押出機や二軸押出機等が用いられる。
麺生地の押出し条件は、常圧下でも良いが、減圧下で行うことが好ましく、より好ましくは、減圧度−0.08〜−0.10MPaの条件下で行う。
【0011】
外層用麺帯は、比重が1.3〜1.6g/cm3 であることが好ましく、比重が1.5〜1.6g/cm3 であることがより好ましい。外層用麺帯の比重が低すぎると、麺帯組織が緻密にならず、滑らかな食感や、光沢・透明感のある外観等を付与するのに十分ではなく、また外層用麺帯の比重が高すぎると、麺帯組織が緻密になりすぎ、食感が硬くなりすぎ、また、その後の圧延等の製麺性が困難になる。
外層用麺帯の比重の調整は、押出しノズル・ダイスの形状や、ミキシング・押出し時の真空度等により行うことができる。
【0012】
外層用麺帯を製造するための外層用製麺原料としては、麺類の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、小麦粉(薄力小麦粉、中力小麦粉、準強力小麦粉、強力小麦粉、デュラム小麦粉)、そば粉、澱粉類(タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉、甘薯澱粉、及びそれらの化工澱粉等)、米粉、山芋粉等の穀粉類を用いることができる。
また、外層用製麺原料には、必要に応じて、製麺の際に従来から用いられている添加剤、例えば、食塩、かん水(かん粉)、酵素、乳化剤、増粘剤、防腐剤、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸、油脂類、調味料、香辛料、着色料等を配合してもよい。
外層用製麺原料への加水量は、穀粉類100質量部に対し、好ましくは28〜40質量部、より好ましくは33〜38質量部である。
【0013】
本発明における内層用麺帯は、ロール圧延麺帯である。ロール圧延麺帯とは、製麺原料に加水して調製した麺生地をロール圧延して製造されたものである。
ロール圧延の条件は、急激な圧延を避けるのが好ましく、より好ましくは、圧延比を30〜50%とする。なお、ここでいう圧延比は次式から算出する値である。圧延比(%)=(圧延前厚み−圧延後厚み)/(圧延前厚み)。
【0014】
内層用麺帯は、比重が1.0〜1.3g/cm3 であることが好ましく、比重が1.1〜1.2g/cm3 であることがより好ましい。内層用麺帯の比重が低すぎると、麺帯組織が脆く、製麺性が困難になり、また内層用麺帯の比重が高すぎると、外層用麺帯との組織の差が小さく、硬く、歯切れの悪い食感となる。
内層用麺帯の比重の調整は、麺帯複合時のロール間隙やロール圧力等により行うことができる。
【0015】
内層用麺帯を製造するための内層用製麺原料としては、麺類の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、外層用製麺原料として例示した前記の穀粉類や添加剤と同様のものを適宜用いることができる。内層用製麺原料と外層用製麺原料とは、同じものでもよく、異なっていてもよい。
内層用製麺原料への加水量は、穀粉類100質量部に対し、好ましくは28〜45質量部、より好ましくは33〜40質量部である。
【0016】
三層麺の製造は、まず、上記内層用麺帯(ロール圧延麺帯)を、2枚の上記外層用麺帯(押出し麺帯)で挟んで複合圧延して三層麺帯を製造する。
複合圧延は、常法により行うことができ、内層用麺帯の圧延同様、急激な圧延を避けるのが好ましい。
【0017】
上記三層麺帯は、三層麺帯全体の厚みに対して、内層の厚みが30〜95%、2つの外層の合計厚みが5〜70%であるのが好ましく、内層の厚みが50〜90%、2つの外層の合計厚みが10〜50%であるのがより好ましい。2つの外層の厚みは、異なっていてもよいが、同程度の厚みであるのが好ましい。
内層の厚みが厚すぎると、硬く、歯切れの悪い食感となり、また内層の厚みが薄すぎると、滑らかな食感や、光沢・透明感のある外観が得られない。
【0018】
三層麺帯の麺線への切り出しは、常法により行うことができる。
麺線への切り出し後、麺線を乾燥し、得られた乾麺を熟成させることが好ましい。麺線の乾燥条件は、クラック、短麺、縦割れの発生につながる急激な乾燥を避け、乾燥後水分を10〜15%まで低下させるのが好ましい。
上記熟成は、乾麺を温度60〜70℃の雰囲気下に24〜60時間保管するのが好ましく、乾麺を温度60〜65℃の雰囲気下に48〜54時間保管するのがより好ましい。このように熟成させることによって、特に、弾力性、歯切れ感、茹で伸びの遅さ、麺ほぐれを一層改善することができる。
【0019】
本発明により得られる三層麺は、生麺、乾麺、半乾燥麺、蒸し麺、茹で麺、冷凍麺、油揚げ麺、即席麺等、いずれの形態でもよい。また、麺の種類も、特に制限されず、例えば、素麺、うどん、きしめん、冷麦、中華麺、日本そば等のいずれであってもよい。
【実施例】
【0020】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら制限されるものではない。
【0021】
実施例1
〔外層用麺帯の製造〕
準強力小麦粉100質量部に対し、10%食塩水36質量部を加え、ピンミキサーにて10分間ミキシングを行い、得られた麺生地を減圧度−0.08MPaの条件下で、一軸押出機により押出して、厚み3.0mm及び比重1.5g/cm3の外層用麺帯を得た。
〔内層用麺帯の製造〕
準強力小麦粉100質量部に対し、10%食塩水36質量部を加え、ピンミキサーにて10分間ミキシングを行い、得られた麺生地をロールにて複合圧延し、厚み6.0mm及び比重1.1g/cm3の内層用麺帯を得た。
〔三層素麺の製造〕
上記内層用麺帯を、2枚の上記外層用麺帯で挟んで、常法に従い、複合圧延して三層麺帯を得た。このとき、三層麺帯は、三層麺帯全体の厚みに対して、内層の厚みが50%で、2つの外層の合計厚みが50%であった。
得られた三層麺帯を最終麺線厚みが1.0mmになるよう、圧延比30〜50%で圧延し、切刃(#28丸刃)を用いて麺線とした。
この麺線を常法に従い、緩やかな条件下で乾燥し、三層素麺を得た。
〔三層素麺の熟成〕
得られた三層素麺を包装後、温度60℃の雰囲気で48時間熟成させた。
【0022】
比較例1
〔外層用麺帯の製造〕
準強力小麦粉100質量部に対し、10%食塩水36質量部を加え、ピンミキサーにて10分間ミキシングを行い、得られた麺生地をロールにて複合圧延し、厚み3.0mm及び比重1.1g/cm3の外層用麺帯を得た。
〔内層用麺帯の製造〕
準強力小麦粉100質量部に対し、10%食塩水36質量部を加え、ピンミキサーにて10分間ミキシングを行い、得られた麺生地を減圧度−0.08MPaの条件下で、一軸押出機により押出して、厚み6.0mm及び比重1.5g/cm3の内層用麺帯を得た。
〔三層素麺の製造〕
上記内層用麺帯を、2枚の上記外層用麺帯で挟んで、常法に従い、複合圧延して三層麺帯を得た。このとき、三層麺帯は、三層麺帯全体の厚みに対して、内層の厚みが50%で、2つの外層の合計厚みが50%であった。
得られた三層麺帯を最終麺線厚みが1.0mmになるよう、圧延比30〜50%で圧延し、切刃(#28丸刃)を用いて麺線とした。
この麺線を常法に従い、緩やかな温湿度条件下で乾燥し、三層素麺を得た。
〔三層素麺の熟成〕
得られた三層素麺を包装後、温度60℃の雰囲気で48時間熟成させた。
【0023】
試験例1
実施例1及び比較例1で得られた三層素麺を2分30秒茹で、冷水にさらした後、食感(滑らかさ、弾力性、歯切れ感)、外観(光沢、透明感)、茹で伸び、麺ほぐれの点について、下記の評価基準に従ってパネラー5名で評価を行った。
その結果の平均値は表1のとおりであった。
【0024】
◎食感(滑らかさ、弾力性、歯切れ感)の評価基準
5:非常に良い。
4:良い。
3:普通。
2:悪い。
1:非常に悪い。
【0025】
◎外観の評価基準
5:光沢、透明感が非常に強い。
4:光沢、透明感が強い。
3:光沢、透明感あり。
2:光沢、透明感が乏しい。
1:光沢、透明感が非常に乏しい。
【0026】
◎茹で伸び
5:非常に遅い。
4:遅い。
3:普通。
2:早い。
1:非常に早い。
【0027】
◎麺ほぐれ
5:非常に良い。
4:良い。
3:普通。
2:悪い。
1:非常に悪い。
【0028】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層用麺帯を2枚の外層用麺帯で挟んで複合圧延して三層麺帯を製造し、該三層麺帯を麺線に切り出して三層麺を製造する方法において、前記外層用麺帯として押出し麺帯を用い、前記内層用麺帯としてロール圧延麺帯を用いることを特徴とする三層麺の製造方法。
【請求項2】
前記外層用麺帯が、比重が1.3〜1.6g/cm3 のものであり、前記内層用麺帯が、比重が1.0〜1.3g/cm3 のものである請求項1に記載の三層麺の製造方法。
【請求項3】
さらに、前記麺線を乾燥し、得られた乾麺を温度60〜70℃の雰囲気で24〜60時間熟成させる請求項1又は2に記載の三層麺の製造方法。