説明

三峰性結晶内構造を有する改変Y型ゼオライト、それを製作する方法、及びその使用

本発明は、改変フォージャサイト構造のY型ゼオライトに関し、その結晶内構造は、少なくとも1つのミクロ細孔ネットワーク、2〜5nmの平均直径を有する小型メソ細孔の少なくとも1つのネットワーク、及び10〜50nmの平均直径を有する大型メソ細孔の少なくとも1つのネットワークを有し、これら種々のネットワークが相互接続されている。本発明はまた、それらゼオライトを含む微粒子、及び特に水素化分解としての原油処理方法におけるそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒の分野、特にフォージャサイト構造のY型ゼオライトに関する。
【背景技術】
【0002】
種々のゼオライトは、構造及び特性の違いに基づいて区別される。触媒の分野で一般的に使用される幾つかの構造を下に記述する。
【0003】
Y型ゼオライト(FAU)は、その構造が、12員環(12個の陽イオン(Si4+及びAl3+)及び12個の陰イオンO2−が環に存在する)で形成されたチャネルにより相互接続されている大型空洞を有する、大型細孔三次元ゼオライトである。
【0004】
ベータゼオライト(BEA)は、12員環から全方向に形成された細孔を含む大型細孔三次元ゼオライトである。
【0005】
ゼオライトZMS−5(MFI)は、10員環により形成されたジグザグ型チャネルにより相互接続されている(この構造が事実上三次元であるとみなされるのは、このためである)、10員環により一方向に形成された細孔を含む、中型細孔の事実上三次元のゼオライトである。
【0006】
モルデン沸石(MOR)は、チャネルが一方向にのみ伸長した12員環により形成されており、8員環により形成された小型ポケットをこれらチャネル間に有する、大型細孔ゼオライトである。
【0007】
フェリエライト(FER)は、10員環により形成された主チャンネルを含み、それが8員環により形成された副チャネルを介して相互接続されている、中型細孔次元のゼオライトである。
【0008】
ゼオライトは、クラッキング、特に水素化分解、FCC、及びオレフィンクラッキングなどの酸触媒反応、特にパラフィン及びオレフィンの異性化反応、及びメタノール転換技術、例えばMTO、MTP、及びMTGでも広く使用される重要な触媒物質である。
【0009】
これらの反応において、ゼオライト及び特にそれらのミクロ細孔性構造は、良好な触媒能力、良好な安定性、及び/又は良好な選択性を得るための決定的要因であることが多い。
【0010】
しかしながら、ミクロ細孔性構造は欠点を有する場合もあり、例えば、ゼオライト結晶中での分子のアクセスが不良であり、触媒作用中に試薬及び/又は生成物が不要に吸着する。これら立体障害により、反応中にゼオライトのミクロ細孔性容積のアクセシビリティが低減され、そのためある場合には、効率がやや低い、又は非能率的な使用を招き得る。
【0011】
従って、触媒効率を向上させるための重要な要因の1つは、試薬及び/又は生成物に十分なアクセシビリティを提供するゼオライトを得ることである。
【0012】
想定される解決策の中には、ゼオライト結晶のサイズを低減することを挙げることができる。しかしながら、この解決策は、必ずしも産業上応用可能であるとは限らない。
【0013】
別の戦略は、ゼオライトのミクロ細孔性結晶中に、メソ細孔(2〜50nm)で構成される二次細孔系を生成することにある。伝統的には、例えば熱水処理、酸浸出技術、又はEDTA若しくは(NHSiFに基づく化学処理を使用した脱アルミニウム化により、メソ細孔をゼオライト結晶又は準ゼオライト結晶に導入する。
【0014】
近年、種々の代替技術が提案されている:
− メソ細孔性ゼオライト材料の壁面を再結晶させること、
− 陽イオン性ポリマーマトリクスをメゾスコピックな規模で調製すること、
− 有機ケイ素タイプのゼオライト前駆物質によりメソ細孔性材料を構築すること、及び
− メソ細孔を形成するためのマトリクスを使用してゼオライト種晶を直接組立てること。
【0015】
これらの手法の幾つかにより、触媒性の向上がもたらされている。しかしながら、これらの技術は非常に複雑であり、非常に高価な有機マトリクスの使用を伴う。従って、これらの材料の工業的使用は、特にそれらが非常に高価なために、依然として非常に限定的である。
【0016】
さらに、ある従来技術では、非常に特殊な条件、並びに/又は有害及び/若しくは汚染試薬、高価な試薬の使用が要求される場合があり、並びに/又は大量生産が可能ではない場合がある。
【0017】
最後に、ある技術では、触媒の特徴の良好な制御が可能ではなく、例えばメソ細孔性が「無作為」又は最適化されていないか、又はそうでなければメソ細孔の幾つかが空洞であり、つまりそれらは外部からアクセス可能ではないか又は容易にアクセス可能ではない。
【0018】
さらに、最近は、結晶内メソ細孔を形成するための代替的技術は、アルカリ性媒体中での脱ケイ素化処理からなる。
【0019】
例えば、J.C.Groenら、Microporous Mesoporous Mater.114巻(2008年)93頁には、事前に脱アルミニウム化処理をせずに調製されたゼオライトに対して実施された、ベータゼオライトのアルカリ処理について記述されている。室温では、メソ細孔の形成は事実上観察されない。約318Kのより高温の場合のみ、メソ細孔形成の観察が可能である。
【0020】
他の論文は、ゼオライトZMS−5(J.C.Groenら、JACS 127巻(2005年)10792頁)、又はMFI、BEA、FER、及びMOR(J.C.Groenら、Microporous Mesoporous Mater.69巻(2004年)29頁)のアルカリ処理に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
そこで、本発明は、上記で言及した問題の全て又は幾つかを解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
第1の態様によると、本発明の対象は、その結晶内構造が、ミクロ細孔の少なくとも1つのネットワーク、2〜5nmの平均直径を有する小型メソ細孔の少なくとも1つのネットワーク、及び10〜50nmの平均直径を有する大型メソ細孔の少なくとも1つのネットワークを有し、これら種々のネットワークが相互接続されている、改変フォージャサイト構造のY型ゼオライトである。
【0023】
従って、本発明の改変Y型ゼオライトは、三峰性結晶内細孔性を有しており、つまり異なる平均直径を有する細孔の3つのネットワークが各結晶内に存在する。
【0024】
参考までに、Y型ゼオライトは、一般的に、平均直径が0.7〜1.4nmのミクロ細孔を有する。
【0025】
特に、本発明による改変Y型ゼオライトは、有利には、1以上、特に1.20以上、又は1.60以上でさえあり、特には1.80以上、さらに特には2以上である、大型メソ細孔容積(Vl)に対する小型メソ細孔容積(Vs)の比率Vs/Vlを有する。
【0026】
本発明によるゼオライトは、100ppm以下、特に50ppm以下であるナトリウム(Na)含量を有していてもよい。
【0027】
本ゼオライトは、25以下、特に24以下、又は23以下でさえあり、特には22以下、さらに特には21以下であり、任意で20.5以下であるSi/Al原子数比を有していてもよい。
【0028】
また、Si/Al比は、40以下、特に35以下、又は30以下でさえあってもよく、特には28以下、さらに特には25以下であってもよい。
【0029】
Si/Al原子数比は、6以上、特に8以上、又は10以上でさえあってもよく、特には11以上、さらに特には12以上であってもよい。
【0030】
また、Si/Al比は、15以上、特に17以上、又は18以上でさえあってもよく、特には19以上、さらに特には20以上であってもよい。
【0031】
改変Y型ゼオライトは、0.20ml/g以上、特に0.25ml/g以上、特には0.35ml/g以上、又は0.40ml/g以上でさえあるメソ細孔容積を有していてもよい。
【0032】
用語「メソ細孔容積」は、2〜50nmの平均直径を有するメソ細孔の容積を意味し、この場合は、小型及び大型メソ細孔の容積の合計を表す。
【0033】
詳細には、本発明によるゼオライトは、0.10ml/g以上、特に0.15ml/g以上、特には0.20ml/g以上、又は0.25ml/g以上でさえある小型メソ細孔容積(Vs)を有していてもよい。
【0034】
また、改変Y型ゼオライトは、0.20ml/g以下、特に0.18ml/g以下、特には0.16ml/g以下、又は0.125ml/g以下でさえあってもよく、特には0.10ml/g以下であるミクロ細孔容積を有していてもよい。
【0035】
メソ細孔/ミクロ細孔容積比は、1以上、特に1.5以上、特に3以上、又は3.5以上でさえあってもよく、特には4以上、さらに特には4.5以上、又は5以上でさえあってもよい。
【0036】
改変Y型ゼオライトは、200m/g以上、特に250m/g以上、特には300m/g以上、又は350m/g以上でさえあり、特には400m/g以上の外部表面積Sextを有していてもよい。
【0037】
TPD NHにより測定された酸性部位の密度は、0.25mmol/g以下、特に0.23mmol/g以下、特には0.22mmol/g以下、又は0.21mmol/g以下でさえあってもよい。
【0038】
改変Y型ゼオライトは、X線回折図に示すY型ゼオライトの特徴ピークを有する。これらのピークは、以下の面間距離に対応する:d=13.965、8.552、7.293、5.549、4.655、4.276、3.824、3.689、3.232、2.851、2.793、及び2.578Å(Collection of simulated XRD powder patterns for zeolites、改訂第5版、M.M.J Treacy及びJ.B.Higgins著、Elsevier編参照)。
【0039】
本発明による改変Y型ゼオライト、又は特に総重量に対して少なくとも20重量%の本発明による改変Y型ゼオライトを含む複合材料は、下記ステップにより調製することができる:
a)Y型ゼオライト又は特に総重量に対して少なくとも20重量%の含量でY型ゼオライトを含む複合材料を、例えば0.001〜0.5Mの範囲の濃度の少なくとも1つの強塩基、特にNaOH若しくはKOH、及び/又は弱塩基、特に炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどを含む塩基性水溶液と共に、磁気撹拌又は機械撹拌しながら室温で懸濁するステップ、
b)得られたY型ゼオライトをろ過し、溶媒、特に極性溶媒、例えば純粋な蒸留水でそれを洗浄するステップ、
c)任意で、洗浄したゼオライトを乾燥するステップ、
d)洗浄され、任意で乾燥されたゼオライトを、特に0.01〜0.5Mの範囲の濃度のNHNO溶液、特に水溶液と撹拌しながら接触させるステップ、
e)ゼオライトを蒸留水で洗浄して中性pHにするステップ、
f)得られたゼオライトをか焼する(calcining)ステップ、及び
g)ゼオライトを回収するステップ。
【0040】
この生成物は、5以上、40以下のSi/Al原子数比、及び/又は0.22ml/g以上のメソ細孔容積を有する改変Y型ゼオライトの生成を可能にする。
【0041】
さらに、このプロセスは、出発ゼオライトと比べて、以下を有するY型ゼオライトの生成を可能にする:
− 少なくとも0.05ml/g、特に少なくとも0.1ml/g、特には少なくとも0.15ml/g、又は少なくとも0.21ml/gでさえあるメソ細孔容積の増加、
− 少なくとも0.05ml/g、特に少なくとも0.1ml/g、及び特には少なくとも0.15ml/gの小型メソ細孔容積の増加、
− 少なくとも0.05ml/g、特に少なくとも0.075ml/g、特には少なくとも0.10ml/g、又は少なくとも0.15ml/gでさえあるミクロ細孔容積の減少、及び/又は
− 少なくとも2、特に少なくとも4、特には少なくとも6、又は少なくとも10でさえあるSi/Al原子数比の減少、
− 少なくとも50m/g、特に少なくとも100m/g、特には少なくとも150m/g、又は少なくとも240m/gでさえある外部表面積(Sext)の増加、及び/又は
− 少なくとも0.05mmol/g、及び特に少なくとも0.1mmol/gの、TPD NHによる酸性示標の減少。
【0042】
ステップa)において、水溶液/ゼオライト及び特にY型ゼオライト重量比は、20〜100、特に30〜80、特には40〜60の範囲であってもよく、又は約50でさえあってもよい。
【0043】
ステップa)の溶液の塩基濃度は、0.001〜0.5M、特に0.005〜0.2、特に0.01〜0.1の範囲であってもよく、又は約0.05Mでさえあってもよい。
【0044】
ステップd)において、NHNO溶液/Y型ゼオライト重量比は、5〜75、特に10〜50、及び特には20〜30の範囲であってもよく、又は約25でさえあってもよい。
【0045】
ステップd)の溶液のNHNO濃度は、0.01〜0.5M、特に0.05〜0.4、特には0.1〜0.3の範囲であってもよく、又は約0.2Mでさえあってもよい。
【0046】
最も具体的には、出発物質は、少なくとも1つの脱アルミニウム化、特には部分的な処理、例えば酸処理及び/又は水蒸気処理を受けたY型ゼオライトである。これらの処理は、(i)材料の酸性度を低減すること、(ii)理論的には純粋にミクロ細孔性である初期材料のメソ細孔性を、たとえわずかであっても増加させることを可能にする。最も具体的には、これら処理は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5601798号に記述されているものに対応する。
【0047】
このプロセスは、第1のろ過前に、溶液を中和するステップを含むこともできる。これにより、脱ケイ素化の停止が可能になる。この脱ケイ素化は、メソ細孔性、特に過剰なメソ細孔性の生成という結果をもたらす場合がある。この段階において、メソ細孔性のこの生成は、特にそれが過剰である場合に問題である可能性があり、ゼオライト結晶構造の喪失、例えばミクロ細孔性の喪失を引き起こし、材料の固有活性の低減を引き起こす場合がある。
【0048】
この中和ステップは、特に大量生産時の工業的条件下では、水又は任意のタイプの酸、例えば硫酸で洗浄することにより実施することができる。
【0049】
有利には、塩基性溶液及び/又はNHNO溶液と接触(懸濁)させるステップは室温で行われ、特には、いかなる加熱も必要としない。
【0050】
本発明の目的では、用語「室温」は、18〜25℃の範囲の温度、及び特には20℃の温度を意味する。
【0051】
ステップa)において、塩基性溶液との接触は、5〜120分間、特に10〜60分間、及び特には15〜30分間継続させてもよい。
【0052】
接触させている期間中、懸濁液を、特に磁気撹拌又は機械撹拌により撹拌してもよい。
【0053】
乾燥ステップは、70℃以上、特に75℃以上、又は80℃以上でさえある温度で実施してもよい。乾燥ステップは、1〜36時間、特に3〜24時間、及び特には8〜15時間の範囲であってもよい。
【0054】
乾燥ステップは、ゼオライトの重量がもはや変化しなくなるまで、特には、t時点でのゼオライト重量と2時間加熱した後のこのゼオライト重量との差異が、ゼオライト重量に対して0.1重量%未満だけ異なるまで継続してもよい。
【0055】
乾燥は、空気下で実施してもよく、又は不活性雰囲気下で実施してもよい。
【0056】
NHNO溶液と接触させるステップd)は、2〜24時間、特に3〜12時間、及び特には4〜8時間継続してもよく、又は約4時間さえ継続してもよい。
【0057】
か焼ステップf)は、400℃以上、特に450℃以上、又は500℃以上でさえある温度で実施してもよい。加熱は、2〜8時間、特には3〜6時間、又は約5〜7時間さえ継続してもよい。
【0058】
加熱は、0.5〜2℃/分及び特に1℃/分の温度上昇を含んでいてもよい。
【0059】
加熱は、空気中又は不活性雰囲気中で実施してもよい。
【0060】
上述のプロセスにより、出発Y型ゼオライトのミクロ細孔容積の30%未満、特に40%、特には45%、又は50%でさえあるミクロ細孔容積を有するY型ゼオライトを得ることが可能である。
【0061】
上述のプロセスにより、出発Y型ゼオライトのメソ細孔容積の30%を超える、特に35%、特には40%、又は45%でさえあるメソ細孔容積を有するY型ゼオライトを得ることが可能である。特には、メソ細孔容積の増加は、本質的に小型メソ細孔の生成による。
【0062】
言うまでもなく、本発明は、上述のプロセスにより得ることができるY型ゼオライトにも関する。
【0063】
本発明の別の態様によると、本発明は、任意で、アルカリ処理により生成される結晶欠陥の修復に関し、これらの欠陥は、NH離脱により測定される酸性部位の密度の減少をもたらす。この修復は、穏やかな水蒸気処理(van Donkら、Generation, Characterization, and Impact of Mesopores in Zeolite Catalysts. Catalysis Reviews、2003年、45巻(2):297〜319頁を参照)により実施してもよく、これにより、NHのTPDにより測定して0.25mmol/gを超える酸性度値がもたらされる。
【0064】
本発明の別の態様によると、本発明の対象は、粒子、特には、本発明による改変Y型ゼオライト及びシリカ又はアルミナなどの少なくとも1つの結合剤を含む触媒粒子である。これらの粒子は、触媒金属を含むこともできる。
【0065】
これらの粒子は、上述のアルカリ処理プロセスに従って、改変Y型ゼオライト及びシリカ又はアルミナなどの少なくとも1つの結合剤を混合することにより調製することができる。
【0066】
これらの粒子を調製するためのプロセスは、触媒金属の固定化ステップ、例えば吸着ステップを含むこともできる。
【0067】
これらの主題は、触媒の巨視的成形、つまりシリカ又はアルミナタイプの結合剤を使用した改変材料の成形に対応する。これにより、例えば、典型的な工業用反応器、例えば固定床式反応器中で材料を直接使用することが可能になる場合がある。この成形は、押出しにより実施することができるが、固定床又は移動床反応器での使用に適合させることができるビーズ又は他の巨視的形状の巨視的成形を可能にすることもできる。
【0068】
詳細には、アルカリ処理プロセスは、特に固定床又は移動床反応器でそのまま使える粒子の形態、特に押出し形態又はビーズ形態の、少なくとも1つの改変(脱アルミニウム化プロセス後の)Y型ゼオライト及び結合剤を含む組成物に適用することができる。
【0069】
これにより、複合材料(複合材料=ゼオライト+結合剤)中に存在するY型ゼオライトのメソ細孔容積を増加させることができる。
【0070】
本発明の別の態様によると、本発明の対象は、本発明による改変Y型ゼオライト及び任意で触媒、特に触媒金属を含む触媒である。この金属は、固定化ステップ、例えば含浸ステップによりゼオライトに沈着させることができる。
【0071】
挙げることができる触媒金属の中には、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、及びタングステンがあるが、他の遷移金属でもよい。
【0072】
本発明の別の態様によると、本発明の主題は、上述のような少なくとも1つのゼオライトを含む触媒、又はそのようなゼオライト及び任意でそれに支持された触媒を含む複合材料である。
【0073】
本発明の別の態様によると、本発明の対象は、石油又は重質残油を処理するためのプロセスにおける、特にFCCにおける水素化転換触媒としての、例えば水素化分解又は水素化異性化触媒としての、本発明による触媒又は粒子の使用である。
【0074】
本発明の対象は、上述のように触媒金属をゼオライトに含浸させる少なくとも1つのステップを含む、触媒を製造するためのプロセスでもある。
【0075】
種々の特徴を測定するために使用される方法は、一般的に標準技術である。より具体的には、本発明の文脈では下記技術が使用された:
i)化学的組成、詳細にはSi/Al原子数比及びナトリウム含量は、原子吸光分光法により決定した(CNRS中央分析部門、ソレーズ)。
ii)ゼオライトの構造は、コバルトのKα12線を使用し、Bruker社製Advance D8型の回折計を使用して、5〜50°の2シータ角のスペクトルを記録したX線回折(XRD)により定義した。
iii)吸着及び離脱の測定は、Micrometrics社製Tristar3000型機器を用いて液体窒素の温度で行った。各測定の前には、試料を、窒素下、300℃で840分間脱気した。
iv)ゼオライトの微細構造は、100kVの電圧で操作したJeol社製1200EXII顕微鏡を使用して、透過型電子顕微鏡法(TEM)により観察した(拡大率20 000〜120 000)。
v)電子断層撮影研究は、200kVの電圧でTecnai 20型機器を使用して、透過型電子顕微鏡で実施した。一連の画像は、19 000又は29 000の拡大率で、−75〜75°の角度範囲及び1°の傾斜インクリメントの明視野画像条件下で取得した。三次元再構成は、IMODソフトウェアを使用して、一連の取得傾斜から計算した。
vi)外部表面積(Sext)、ミクロ細孔容積(Vmicro)、及びメソ細孔容積(Vmeso)により定義される組織構造上の特性は、当業者に周知の方法を適用することにより、Micromeritics社製ASAP 2000/2010型機器を用いて77Kで記録された吸着等温線から、窒素容積測定により定義した(Barett,E.P.;Joyner,L.G.;Halenda,P.P. J.Am.Chem.Soc.1951年、73巻、373〜380頁、Rouquerol,F.;Rouquerol,J.;Sing. K.Adsorption by powders and porous solids;Academic Press:San Diego、1999年)。
vii)触媒の酸性度は、離脱したアンモニアを導電率により分析することにより、100〜650℃でのアンモニアの昇温離脱法(Thermally Programmed Desorption of ammonia)(TPD NH)によって確立した(Niwa,M.;Iwamoto,M.;Segawa,K. B.Chem.Soc.Jpn 1986年、59巻)。
【0076】
これから、添付の非限定的な図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】市販のY型ゼオライト(HY30)及び本発明による2つのゼオライト(HYA及びHYB曲線)の窒素吸着等温線を示す図であり、窒素吸着容積(cm/g)は、窒素分圧(P/P)の関数として表されている。
【図2】市販のY型ゼオライト(HY30)及び本発明による2つのゼオライト(HYA及びHYB曲線)について測定された吸着BJHのdV/dlogD曲線を細孔直径(nm)の関数として示す図である。
【図3】図3,3A,3Bはそれぞれ、市販のY型ゼオライト(HY30)及び本発明による2つのゼオライト(HYA及びHYB)のTEM−3D画像を示す図である。
【図4】図4及び4Aは、市販のゼオライト及び本発明によるゼオライト(HYA)の結晶の三次元再構成を示す図である。
【図5】その一方で、図5および5Aは、これら同じ市販のゼオライト及び本発明によるゼオライトの開放細孔性の三次元再構成を示す図である。
【図6】その一方で、図6および6Aは、これら同じ市販のゼオライト及び本発明によるゼオライトの閉鎖細孔性の三次元再構成を示す図である。
【図7】本発明による処理で起こり得る効果を示すスキームである。
【図8】転換度(重量%)を、市販のY型ゼオライト(HY30/Pt)を含む触媒による、及び本発明による触媒(HYA/Pt)によるn‐ヘキサデカンの水素化分解温度(℃)の関数として示す図である。
【図9】C6/C10比を、市販のY型ゼオライト(HY30/Pt)を含む触媒による、及び本発明による触媒(HYA/Pt)によるn‐ヘキサデカンの水素化分解で得られた転換度の関数として示す図である。
【図10】市販のY型ゼオライトを含む触媒により、及び本発明による触媒により、75%の転換度で得られたスクアラン水素化分解生成物の分布(重量%)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0078】
Zeolyst Int.社からCBV760という名称で販売されているY型ゼオライトを、本明細書ではHY30と称する。HY30の窒素吸着は、図1に示されており、HY30の特徴は表1に示されている。
【0079】
このY型ゼオライトは、改変Y型ゼオライトを得るための処理前に、脱アルミニウム化を受けた。このY型ゼオライトは、28.4のSi/Al比、TPD NHにより測定された0.32mmol/gの酸性度、及び50ppm未満のNa含量を有する。
【0080】
実施例1:改変Y型ゼオライト(HYA)の調製
化合物HY30を以下のアルカリ処理にかける:
− HY30(2g)を、室温で15分間撹拌しながら0.05MのNaOH水溶液(50ml)と接触させ、
− その結果生じた生成物をろ過し、中性pHが得られるまで水で洗浄し、
− ろ過した生成物を、80℃で12時間乾燥し、
− 0.20MのNHNO水溶液(50ml)を、乾燥した生成物に添加し、全体を室温で5時間撹拌したままにし、
− 得られた生成物を、蒸留水(3×50ml)で洗浄し、
− その後生成物を、空気流動下で4時間(1℃/分の温度勾配)500℃でか焼し、
− その後、生成物HYAを回収する。
【0081】
生成物HYAは、24.8のSi/Al比、TPD NHにより測定された0.20mmol/gの酸性度、及び50ppm未満のNa含量を有する。
【0082】
実施例2:改変Y型ゼオライト(HYB)の調製
化合物HY30を以下のアルカリ処理にかける:
− HY30(2g)を、室温で15分間撹拌しながら0.10MのNaOH水溶液(50ml)と接触させ、
− その結果生じた生成物をろ過し、中性pHが得られるまで水で洗浄し、
− ろ過した生成物を、80℃で12時間乾燥し、
− 0.20MのNHNO水溶液(50ml)を、乾燥した生成物に添加し、全体を室温で5時間撹拌したままにし、
− 得られた生成物を、蒸留水(3×50ml)で洗浄し、
− その後生成物を、空気流動下で4時間(1℃/分の温度勾配)500℃でか焼し、
− その後、生成物HYBを回収する。
【0083】
生成物HYBは、20.5のSi/Al比、TPD NHにより測定された0.21mmol/gの酸性度、及び50ppm未満のNa含量を有する。
【0084】
化合物HY30、HYA、及びHYBの特徴付け
窒素吸着による特徴付け
HY30、HYA、及びHYBの窒素吸着等温曲線は、図1に示されている。
【0085】
等温線の各々にヒステリシスループが存在することは、試料の各々にメソ細孔が存在することを実証する。
【0086】
この図1に示されている等温線を比較すると、特に最高相対圧力での吸収量の増加は、アルカリ処理により、HY30と、HYA、HYBとの間で全孔隙率の増大が引き起こされることを示す。
【0087】
加えて、NaOH濃度がより高いと、細孔性はより大きくなる。
【0088】
最低相対圧力では、ミクロ細孔性に対応する窒素吸着は、化合物HY30と弱塩基性化されたHYA試料とで異なっているようには見えない。HYB試料をより苛酷にアルカリ処理することにより、ミクロ細孔容積の減少及びさらに大きなメソ細孔性がもたらされる。
【0089】
メソ細孔性の発生は、細孔サイズ分布のBHJ(Barret−Joyner−Halenda)分析により確認する。この分析は、等温線の吸着部分から導き出され、図2に示されている。
【0090】
この図2により示されているように、BHJ吸着は、2つの別個のミクロ細孔サイズの帯域を明確に示す:
− 3nmを中心とする「小型メソ細孔」の帯域
− 30nmを中心とする「大型メソ細孔」の帯域。
【0091】
化合物HY30(アルカリ処理無し)から化合物HYA(穏やかなアルカリ処理)、次いで化合物HYB(苛酷なアルカリ処理)へと、小型メソ細孔に対応するピーク強度は著しく増加するが、大型メソ細孔に対応するピーク強度は、わずかに増加するに過ぎず、それに伴ってわずかに幅が広がった。
【0092】
この形状のBHJ吸着曲線は、化合物のアルカリ処理が、本質的に小型メソ細孔の形成を誘導するが、大型メソ細孔の容積の増加はそれほど顕著ではないことを示す。さらに、2つのタイプのメソ細孔のサイズは、アルカリ処理条件に依存しないと考えられる。
【0093】
表1は、HY30、HYA、及びHYBの特徴を示す。特に、対応する小型及び大型メソ細孔の容積は、選択された直径範囲のBHJ吸着部分の積分から導き出される。
【表1】

a t−プロットから計算されたメソ細孔の表面積及び外部表面積、
b t−プロットにより得られたミクロ細孔容積、
c 直径が2〜50nmである細孔のBHJ dV/dD吸着曲線を積分することにより得られたメソ細孔の容積、
d 直径が2〜8nmである細孔のBHJ dV/dD吸着曲線を積分することにより得られた小型メソ細孔の容積、
d 直径が8〜50nmである細孔のBHJ dV/dD吸着曲線を積分することにより得られた大型メソ細孔の容積、
f 直径が50nmを超える細孔のBHJ dV/dD吸着曲線を積分することにより得られたマクロ細孔の容積、
g p/po=0.99で吸着した容積、
h BHJ dV/dlogD吸着曲線から得られた細孔サイズ分布。
【0094】
X線回折及び透過型電子顕微鏡(TEM)による特徴付け
X線回折解析により、出発化合物HY30と比べて、穏やかなアルカリ処理を受けたHYA試料の結晶化度の保存が確認される。
【0095】
より苛酷なアルカリ処理を受けたHYB試料は、長距離結晶秩序の部分的な破壊を示すが、試料の全体的な結晶化度は保存されており、特徴ピークは依然として存在する。Y型ゼオライトの形態を、窒素の物理吸着及び電子顕微鏡法によっても確認する。
【0096】
TEM顕微鏡写真は、Y型ゼオライトの大型結晶が、苛酷なアルカリ処理後でさえ、依然として完全性を保っていることを示す。チャネル及び球体形態のメソ細孔の存在は、粒子内部全て、粒子を貫通し粒子の外側表面と内側を接続するチャネルで観察される。さらに、アルカリ処理を受けた試料は、出発化合物HY30とは対照的に、スポンジに類似した構造を有すると考えられる。TEM顕微鏡写真では、細孔間の結合並びに細孔の形状及び一般的サイズを識別することは可能ではない。
【0097】
電子断層撮影法(3D−TEM)による特徴付け
従来のTEM顕微鏡法とは対照的に、電子断層撮影法により、研究試料の複雑な細孔構造の内部構造をより良好に観察することが可能になる。窒素の物理吸着により実証された三峰性構造という結果を確認するために、試料を3D−TEM解析にかけ、選択された粒子の3次元(3D)再構成を得た。
【0098】
図3、3A、及び3Bは3つの試料の各々の3D再構成による断面を示す。観察される断面は、0.5〜0.8nmの厚さを有するため、従来のTEM顕微鏡写真の場合のような、重複特徴による影響を受けない。
【0099】
最も明るい領域が細孔に対応し、暗い領域が中実材料を表す。
【0100】
図3は、試料HY30の厚さ0.82nmの断面を示し、この試料がさらされている蒸気及び酸処理は、窒素の物理吸着により示されるように、広範囲の直径を有するチャネル及び球体形態の大型メソ細孔の生成の主な原因である。チャネル形状のメソ細孔は、外側から内側へと粒子を横断及び貫通する。孤立した空洞の存在も確認される。窒素の物理吸着では、小型メソ細孔が、大型メソ細孔の容積と事実上同一の容積で存在することは示されるものの、孤立した空洞は存在しないと考えられる。
【0101】
図3Aは、中程度のアルカリ処理を受けた試料HYAの厚さ0.82nmの断面を示す。新しい一連の小型メソ細孔が出現し、チャネル及び空洞形態のメソ細孔の壁面はより不規則である。小型メソ細孔の形成及びそれらの直径(2〜5nm)は、高精度で測定することができ、窒素の物理吸着から得られた結果と一致する。さらに、出現した小型メソ細孔は、粒子の容積全体にわたって均一に分布し、相互接続しているように見える。
【0102】
図3Bは、苛酷なアルカリ処理を受けた試料HYBの厚さ0.54nmの断面を示す。小型メソ細孔数の増加が観察され、窒素の物理吸着の結果が確認される。わずか1.2nmの小さな直径を有する細孔を観察することができ、これらの小型メソ細孔の一般的な密度は、化合物HYAよりも大きいように見える。試料HYAの場合、粒子全体の3D再構成は、これらの小型メソ細孔が相互接続されていることを示している。
【0103】
図4〜6及び4A〜6Aは、それぞれ化合物HY30及びHYAの開放及び閉鎖細孔性の視覚化を可能にする。
【0104】
開放細孔性(図5及び5A)は、メソ細孔を介して結晶の外側表面からアクセス可能な全てのメソ細孔を示す。
【0105】
閉鎖細孔性(図6及び6B)は、ミクロ細孔を介してのみ結晶の外側表面からアクセス可能なメソ細孔を示し、従ってこれらの図は空洞を表す。
【0106】
図4及び4Aは、それぞれ解析されたHY30及びHYAの結晶の全容積を表す。図5、5A、6、及び6Aでは、暗帯域は、結晶内メソ細孔を表す。
【0107】
図5A及び6Aは、HYA結晶のメソ細孔系が、実質的に結晶の容積全体に対応しているが、HY30のメソ細孔システムの場合はそうではなく、明らかにより小さい(図5)ことを示す。さらに、HYA結晶中の空洞数は、アルカリ処理を受けていないY型ゼオライト(HY30)と比べて、かなり低減されている。
【0108】
メソ細孔を介してHYA結晶の外側表面からアクセス可能なメソ細孔の容積が非常に大きいことは、これらのメソ細孔が相互接続されていることを示唆する。従って、HYAのメソ細孔系は向上されており、HY30の場合よりも良好な相互接続性を示す。
【0109】
結論
種々の特徴付けにより、本発明による改変Y型ゼオライトの特定のメソ細孔性構造を実証した。
【0110】
水蒸気処理してその後酸処理することにより(HY30)、本質的に、約30nmの、チャネル及び空洞形態のメソ細孔の生成がもたらされる。
【0111】
さらにアルカリ処理することにより、小型メソ細孔の新しいネットワークの形成がもたらされる。従って、本発明による改変ゼオライトは、図7に模式的に示されているように、ミクロ細孔、小型メソ細孔、及び大型メソ細孔を含有する「三峰性」細孔系を有する。
【0112】
この理論により束縛されることは望まないが、ミクロ細孔及びメソ細孔、及び特に形成された新しい細孔のこれら種々のネットワーク(小型メソ細孔のネットワーク)は相互接続されている(メソ細孔のネットワークはミクロ細孔を介して相互接続されている)ことが、3D−TEM解析から明らかであり、これにより、通常は直面する分子拡散の制限を低減することが可能になり、以下の例により示されているように、本発明によるゼオライトの触媒能力の増大をもたらすだろう。
【0113】
実施例3:触媒 − n‐ヘキサデカンの水素化分解
触媒は、触媒の総重量に対しておよそ0.3重量%のPt負荷がもたらされるように白金塩溶液に含浸することにより、HY30(HY30/Pt)、及びHYA(HYA/PT)から調製する。
【0114】
触媒を以下の条件下で試験した:
WHSV:1〜4h−1
/HC:3〜4mol/mol;
圧力:20bar;
温度:170〜350℃;
触媒量 〜1.3g(φ180〜425μm)
【0115】
生成物を、GC HP社製5890シリーズ2型(無極性HP−1カラム、30m、0.53mm、2.65μm)のガスクロマトグラフを用いてオンラインで分析した。
【0116】
図8は、転換度を、HYA/Pt及びHY30/Ptの温度の関数として示す。HYA/Pt触媒の活性における利得は、n‐ヘキサデカンの水素化分解の場合、約10〜20℃程度である。240℃では、n‐ヘキサデカンの水素化分解の反応速度は、HYA/Ptの場合、HY30/Ptより4倍を超えて速く、それぞれ4.1×10-4g.s−1.g−1及び0.9g.s−1.g−1である。
【0117】
図9は、C6/C10比を、n‐ヘキサデカン(C16)の水素化分解の転換度の関数として示す。
【0118】
この図は、C16のクラッキングの場合、C8の対称的分布により定義される、より良好な水素化分解挙動を示す(I.E.Maxwellら、Handbook of Heterogeneous Catalysis、第4巻、Wiley−VCH、Weinheim 1997年、2017頁により定義されているように)。クラッキング対称性は、C6/C10比(mol/mol)により特徴付けることができ、「理想的水素化分解」の場合、それは約1でなければならない。
【0119】
このクラッキング対称性は、二次クラッキングの発生又はガスの製造が、転換度の範囲全体にわたって著しく低減されるという事実を反映している。
【0120】
HYA/Ptは、理想的な水素化分解挙動に近いとみなすことができ、C6/C10比は、転換度の範囲全体にわたって1に非常に近い。
【0121】
実施例4:触媒 − スクアランの水素化分解
スクアランの水素化分解も試験した。
【0122】
スクアラン(又はヘキサメチルテトラコサン)は、30個の炭素原子を含むパラフィンタイプの有機分子であり、それら炭素原子うちの6個は、それぞれ2、6、10、15、19、及び23位のメチル基に存在する。その立体容積は、ヘキサデカンの立体容積よりも大きく、ある程度までは、水素化分解負荷用のモデル分子(高分子量)として使用することができる。触媒は、触媒の総重量に対しておよそ0.3重量%のPt負荷がもたらされるように白金塩溶液に含浸することにより、HY30(HY30/Pt)、及びHYA(HYA/Pt)から調製する。
【0123】
触媒を以下の条件下で試験した:
WHSV:1〜4h−1
/HC:3〜4mol/mol;
圧力:20bar;
温度:170〜350℃;
触媒量 〜1.3g(φ180〜425μm)
【0124】
生成物を、HP5975Cタイプ(HP−5 30m、0.25mm、0.25μmキャピラリーカラム)のクロマトグラフを用いてオンラインで分析した。
【0125】
スクアラン水素化分解生成物の対称性も著しく向上する。
【0126】
図10は、75%の転換度で測定したHY30/Pt及びHYA/Ptの収率分布を示す。
【0127】
この図10は、二次クラッキングへの寄与が著しく低減し、従ってガス生産が著しく低減され、選択性も向上し、変転度が同様である場合、中間留分の収率が増加することを示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変フォージャサイト構造のY型ゼオライトであって、その結晶内構造が、少なくとも1つのミクロ細孔ネットワーク、2〜5nmの平均直径を有する小型メソ細孔の少なくとも1つのネットワーク、及び10〜50nmの平均直径を有する大型メソ細孔の少なくとも1つのネットワークを有し、これら種々のネットワークが相互接続されているY型ゼオライト。
【請求項2】
前記大型メソ細孔の容積(Vl)に対する前記小型メソ細孔の容積(Vs)の比率Vs/Vlが、1以上、特に1.20以上、又は1.60以上でさえあり、特には1.80以上であり、さらに特には2以上である、請求項1に記載の改変ゼオライト。
【請求項3】
0.20ml/g以上、特に0.25ml/g以上、特には0.35ml/g以上、又は0.40ml/g以上でさえある総メソ細孔容積を有することを特徴とする、請求項1及び2のいずれかに記載のゼオライト。
【請求項4】
0.20ml/g以下、特に0.18ml/g以下、特には0.16ml/g以下、又は0.125ml/g以下でさえあり、特には0.10ml/g以下のミクロ細孔容積を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のゼオライト。
【請求項5】
1以上の、特に1.5以上の、特には3以上の、又は3.5以上でさえある、特には4以上の、さらにより特には4.5以上の、又は5以上でさえある総メソ細孔容積/ミクロ細孔容積比を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のゼオライト。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のゼオライトと、シリカ又はアルミナなどの少なくとも1つの結合剤とを含む、特には触媒性粒子である、粒子。
【請求項7】
前記粒子の総重量に対して少なくとも20重量%のゼオライトを含む、請求項6に記載の粒子。
【請求項8】
触媒金属も含む、請求項6又は7に記載の粒子。
【請求項9】
石油又は重質残油を処理するためのプロセスにおける、例えば水素化分解又は水素化異性化用の特にFCC水素化転換触媒としての、請求項6〜8の一項に記載の粒子の使用。
【請求項10】
請求項1〜5の一項に記載の改変Y型ゼオライト又は複合材料を調製するためのプロセスであって、前記複合材料が、特には総重量に対して少なくとも20重量%である、請求項1〜5の一項に記載の改変Y型ゼオライトを含み、
a)Y型ゼオライト、又は特には総重量に対して少なくとも20重量%の含量でY型ゼオライトを含む前記複合材料を、例えば0.001〜0.5Mの範囲の濃度の少なくとも1つの強塩基、特にNaOH若しくはKOH、及び/又は弱塩基、特に炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどを含む塩基性水溶液と共に、磁気撹拌又は機械撹拌しながら、室温で懸濁するステップと、
b)得られたゼオライトをろ過し、溶媒、特に極性溶媒、例えば純粋な蒸留水でそれを洗浄するステップと、
c)任意で、洗浄したゼオライトを乾燥するステップと、
d)洗浄され、任意で乾燥されたゼオライトを、特に0.01〜0.5Mの範囲の濃度のNHNO溶液、特に水溶液と撹拌しながら接触させるステップと、
e)ゼオライトを蒸留水で洗浄して中性pHにするステップと、
f)得られたゼオライトをか焼するステップと
g)ゼオライトを回収するステップと、
を含むプロセス。
【請求項11】
ステップa)において、水溶液/Y型ゼオライト重量比が、20〜100、特に30〜80、特には40〜60の範囲であってもよく、又は約50でさえあってもよいことを特徴とする、請求項10に記載の調製プロセス。
【請求項12】
ステップd)において、NHNO溶液/Y型ゼオライト重量比が、5〜75、特に10〜50、特には20〜30の範囲であってもよく、又は約25でさえあってもよいことを特徴とする、請求項10又は11に記載の調製プロセス。
【請求項13】
出発物質が、少なくとも1つの脱アルミニウム化処理、特には部分的な処理、例えば少なくとも1つの酸及び/又は水蒸気処理を受けたY型ゼオライトであることを特徴とする、請求項10〜12のいずれか一項に記載の調製プロセス。
【請求項14】
第1のろ過前に溶液を中和するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項10〜13のいずれか一項に記載の調製プロセス。
【請求項15】
出発ゼオライトに比べて、
− 少なくとも0.05ml/g、特に少なくとも0.1ml/g、特には少なくとも0.15ml/g、又は少なくとも0.2ml/gでさえあるメソ細孔容積の増加、
− 少なくとも0.05ml/g、特に少なくとも0.075ml/g、特には少なくとも0.10ml/g、又は少なくとも0.12ml/gでさえあるミクロ細孔容積の減少、及び/又は
− 少なくとも2、特に少なくとも4、特には少なくとも6、又は少なくとも8でさえあるSi/Al原子数比の減少を示すY型ゼオライトの生成を可能にすることを特徴とする、請求項10〜14のいずれか一項に記載の調製プロセス。
【請求項16】
触媒を固定化するステップ、特に触媒金属を含浸するステップをさらに含む、請求項10〜15のいずれか一項に記載の調製プロセス。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図4A】
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【図5】
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【図5A】
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【図6】
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【図6A】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−513359(P2012−513359A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541577(P2011−541577)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052668
【国際公開番号】WO2010/072976
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(503438322)トタル・ラフィナージュ・マーケティング (8)
【出願人】(511149924)セントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シオンティフック (1)
【Fターム(参考)】