説明

三次元の物体を層状に製造するための装置と方法及びモールド

【課題】粉末状のポリマーから成るモールドを形成するためのレーザ焼結方法において、ポリマー材料がレーザの焦点における局所的な温度ピークによって損傷することを解決する手段を提供する。
【解決手段】レーザビーム2がスキャンシステム4によって粉末表面5に偏向される前に、適切なビーム成形装置3によって変形されるようにする。ビーム成形装置3としては屈折型ビーム成形器、ホモジナイザ等を用いることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元の物体を層状に製造するための装置と方法、並びにこの装置又は方法により製造されるモールドに関する。
【背景技術】
【0002】
プロトタイプを迅速に準備することが最近頻繁に課される課題である。これを実現する方法として、ラピッドプロトタイピング(Rapid Prototyping)/ラピッドマニュファクチャリング(Rapid Manufacturing)又は積層造形法(Additive Fabrication)が挙げられる。特に適している方法は、粉末状の原材料を基礎として、また選択性の溶融及び硬化によって所望の構造が層状に製造されるものである。そのような方法においては、溶融された領域を包囲する粉体層が十分な支持効果を提供するので、張り出し部及びアンダーカットにおける支持構造を省略することができる。同様に、支持部を除去する後処理も省略される。この方法は小ロット生産にも適している。製造空間温度は、製造プロセス中に層状に製造される構造体に変形が生じない選定される。
【0003】
ラピッドプロトタイピング/ラピッドマニュファクチャリングに非常に良く適している方法は選択性のレーザ焼結(粉末造形;Selective Laser Sintering)である。粉末状のポリマーから成るモールドを形成するためのレーザ焼結方法(ラピッドプロトタイピング)は特許明細書US 6136948及びWO 96/06881(いずれもDTM社による出願)に詳細に記載されている。その用途のために多数のポリマー及びコポリマー、例えばポリアセテート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、イオノマー及びポリアミドが必要とされる。
【0004】
上述の方法における問題は、ポリマー材料がレーザの焦点における局所的な温度ピークによって損傷することである。局所的な温度ピークはポリマーの分子鎖を破壊する虞がある。更には処理時に、ポリマー材料の成分がレーザの焦点における温度ピークによって放出されることがある。放出された物質はプロセスを妨害する。何故ならば、それらの物質はレンズ又はパイロメータのような重要な構成部材に堆積し、またそれらの機能に障害を生じさせるからである。レーザエネルギを単に低下させることは問題の解決にとって有用ではない。何故ならば、そのようにレーザエネルギを低下した場合には、粉末材料を高速に十分に溶融するためには、十分なエネルギが供給されないからである。この措置によってプロセス時間が著しく延長される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】US 6136948
【特許文献2】WO 96/06881
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の課題は、レーザ焼結プロセスを改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
装置に関しては、装置がビーム成形システムを備えていることによって課題を解決する。
【0008】
方法に関しては、ポリマー粉末の選択性の溶融又は焼結をレーザによって行い、焦点における出力密度に関するレーザの最大値が焦点における出力密度の平均値を超えて50%未満であることによって課題を解決する。
【0009】
モールドに関しては、モールドが本発明による装置又は本発明による方法によってポリマー粉末から製造されることによって課題を解決する。
【発明の効果】
【0010】
驚くべきことに、この問題はレーザの焦点における適切な出力密度分布もしくはエネルギ密度分布によって解決できることが分かった。
【0011】
本発明の第1の対象は、少なくともレーザを備えている、三次元の物体を層状に製造するための装置であり、この装置はビーム成形システムを備えている。有利には、ビーム成形システムによって、焦点における出力密度に関する最大値が焦点における出力密度の平均値を超えて50%未満、有利には20%未満、特に有利には10未満に調整される。
【0012】
驚くべきことに、レーザの焦点における出力密度の最大値が全体の焦点にわたる出力密度に関する値を50%以上上回らないように出力密度分布が構成される場合には、それによって分子量減成を回避できることが分かった。レーザビームに関して一般的なほぼガウス形状のレーザ出力分布(電磁界の振幅は伝播軸との距離が大きくなるに連れ指数的に低下する)はこの要求を満たすものではなく、むしろ分子量減成が観測される。特に本発明による装置は、ビーム成形システムを設けるだけで、コーティング装置における比較的大規模な改造を行う必要なく、本発明による利点を達成することができるという利点を有している。
【0013】
基本的には、当業者には公知であるあらゆるビーム成形システムが本発明による装置に適しており、また有利にはその種のビーム成形システムは屈折型ビーム成形器(Refraktiven Beam Shaper)及び/又はホモジナイザである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による装置の一つの実施の形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による装置の一つの実施の形態が図1に示されている。つまり、物体を層状に製造するための装置は製造容器9を備えている。この製造容器内では、実質的に平坦であり、且つ、製造容器の上端に対して実質的に平行に配向されている上面を備えている支持体7が配置されている。支持体7は製造すべき物体6を支持するために構成されている。支持体7を(図示していない)高さ調整装置によって垂直方向に移動させることができる。粉末材料が供給及び硬化される平面は作業平面5を形成する。レーザ1からはレーザビーム2が送出され、このレーザビーム2がスキャンシステム4によって粉末表面5に偏向される前に、適切な装置3によって変形される。
【0016】
製造容器の温度を調整することができる、及び/又は、製造容器を不活性ガス、例えばアルゴンでもって不活性化することができる。
【0017】
本発明の別の対象は、ポリマー粉末から三次元の物体を層状に製造するための方法であり、この方法においてはポリマー粉末の選択性の溶融又は焼結がレーザによって行われ、焦点における出力密度に関するレーザの最大値は焦点における出力密度の平均値を超えて50%未満である。有利には、焦点における出力密度に関する最大値は焦点における出力密度の平均値を超えて20%未満、特に有利には10%未満である。
【0018】
本発明による方法においては、焦点における出力密度分布が特にビーム成形器によって調整され、有利には上記において述べたように装置内のビーム成形器によって調整され、特に有利には屈折型ビーム成形器及び/又はホモジナイザを用いたビーム成形が行われる。
【0019】
基本的には、当業者には公知であるいずれのポリマー粉末も本発明による装置又は本発明による方法への使用に適している。適しているものとして、特に熱可塑性材料及び熱弾性材料、例えばポリエチレン(PE,HDPE,LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド、ポリエステル、ポリエステルエステル、ポリエーテルエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリアルキレンテレフタレート、特にポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアセタール、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリスチロール(PS)、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルフォン、サーモプラスチックポリウレタン(TPU)、ポリアリールエーテルケトン、特にポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリアリールエーテルエーテルエーテルケトン(PEEEK)又はポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリーレンスルフィド、特にポリフェニレンスルフィド(PPS)、サーモプラスチックポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリビニリデンフルオライド、並びに、それらの熱可塑性材料のコポリマー、例えばポリアリールエーテルケトン(PAEK)/ポリアリールエーテルスルホン(PAES)−コポリマー、混合物および/またはポリマーブレンド、が挙げられる。特に有利には、ポリマー粉末は少なくとも一つのポリアミド、特にポリアミド12を含んでいる。
【0020】
通常の場合、動作時には先ず、製造すべき物体6の形状に関するデータがコンピュータにおいて構造プログラム等に基づいて作成又は記憶される。それらのデータは物体の製造のために、物体がその寸法に比べて薄い水平方向の複数の層に分割され、例えばデータセットの形態の形状データ、例えばCADデータがそれら複数の層の各々に対して準備されるように処理される。各層に関するデータの作成及び処理を各層の製造前に行なうことができるか、又は各層の製造と同時に行なうこともできる。
【0021】
続いて、先ず、製造プラットフォーム7が高さ調整装置を用いて、製造プラットフォーム7の表面が製造空間の表面を有する平面に位置している一番高い位置にまで運ばれ、続いて、第1の材料層の所定の厚さの値分だけ降下され、それにより、生じた区間内では凹み領域が形成されており、この凹み領域は側方ではその区間の壁によって境界付けられており、下方では製造プラットフォーム7の表面によって境界付けられている。更には、例えばアプリケータ8を用いて、硬化すべき材料の第1の層が所定の層厚でもって、前述の区間及び製造プラットフォーム7によって形成されている中空室又は凹み領域内に形成され、必要に応じて加熱装置によって適切な動作温度、例えば100℃から360℃、有利には120℃から200℃、特に有利には140℃から160℃に加熱される。続いて制御ユニット4は、偏向された光ビーム2が連続的に層のあらゆる箇所に入射し、その入射箇所において材料を焼結または溶融させるように偏向装置を制御する。そのようにして、先ず固い基底層を形成することができる。第2のステップにおいては、製造プラットフォーム7が高さ調節装置を用いて一つの層の厚さ分だけ降下され、アプリケータ8を用いて、その降下によって生じる区間における凹み領域内に第2の材料層が形成され、必要に応じて再び加熱装置によって加熱される。
【0022】
一つの実施の形態においては、偏向された光ビーム2が前述の区間の内面に接している材料層の領域上にのみ入射し、その入射箇所において材料層が焼結により硬化するように、制御ユニット4によって偏向方向が制御される。材料層の硬化によって、約2mmから10mmの壁厚を有する第1のリング状の壁層が生じ、この壁層は層の残存する粉末材料を完全に包囲している。従って制御装置のこの部分は、各層における物体の形成と同時に、製造すべき物体6を包囲している容器壁を形成するための装置を表している。
【0023】
上記と同じやり方で、次の層の層厚の分だけ製造プラットフォーム7を降下し、材料を供給し、また加熱を行なった後に、物体6自体の製造を開始することができる。続いて、制御ユニットに記憶されている、製造すべき物体6の座標に応じて硬化されるべき層の位置に偏向された光ビーム2が入射するように、制御ユニット4は偏向装置を制御する。後続の層においても同様のプロセスが実施される。焼結されていない残存する材料と共に物体を包囲し、従って製造プラットフォーム7の降下時に作業台の下への材料の流出を阻止する容器壁の形態のリング状の壁領域が所望のように製造されると、物体の各層において前述の装置を用いて、リング状の壁層がその下にあるリング状の壁層の上に焼結される。EP 1037739に応じた交換容器又は固定式に取り付けられている容器が使用される場合には、壁の作成を省略することができる。
【0024】
冷却後に製造された物体を装置から取り出すことができる。
【0025】
本発明による装置でもって任意のモールドも簡単に製造することができる。従って、本発明による装置又は本発明による方法を用いてポリマー粉末から製造されたモールドも同様に本発明の対象である。特に有利には、本発明により製造されたモールドはISO307(Schott社 AVS Pro、溶媒 酸性m−クレゾール、容積測定法、二重測定、溶解温度100℃、溶解時間2h、ポリマー濃度5g/l、測定温度25℃)に準拠する、溶液粘度を有しており、この溶液粘度は使用されるポリマー粉末の溶液粘度に比べて10%以上小さくはない。
【0026】
更なる説明がなくとも、当業者であれば上記の記載を最も広範な範囲において利用できることが分かる。従って、有利な実施の形態及び有利な実施例は例示的に開示されたものに過ぎず、何らかの制限を課す開示として理解されるべきではない。
【0027】
以下では、複数の例に基づき本発明を詳細に説明する。本発明の代替的な実施の形態は同様のやり方で得られる。
【0028】
例:
本発明の範囲においては、表1に挙げた複数の測定方式が使用され、それらの測定方式は、技術的に可能である限りにおいて、使用される材料の特性の検出にも得られた生産物に関する特性の検出にも使用される。
【表1】

【0029】
いずれの例においても、DE19747309に準拠する、後縮合できないポリアミド12(PA12)粉末が表1に挙げた粉末特性値を用いて処理される。いずれの例も以下の説明及び図1に応じて処理される。製造チャンバ9は155℃で180分間予熱される。その後、製造チャンバ内の温度が高められ、それにより粉末表面の温度は168℃になる。最初の照射の前に、40の層が照射無しで形成される。本発明によるものではない例においては、レーザ1からレーザビーム2がスキャンシステム4を用いて、(168℃に)温度調整され(アルゴンにより)不活性化された粉末表面5に偏向される。本発明による例においては、レーザビーム2がスキャンシステム4を用いて、(168℃に)温度調整され(アルゴンにより)不活性化された粉末表面5に偏向される前に、レーザビーム2が先ず適切な装置3を用いて変形される。
【0030】
照射すべきコンポーネントは製造フィールドの中心に位置決めされる。一辺の長さが50mmの正方形の面が輪郭照射無しで溶融される。その後、製造プラットフォーム7が0.15mmだけ降下され、コーティング装置8によって新たな粉体層が100mm/sの速度で塗布される。それらのステップは三次元コンポーネント6の高さが6mmになるまで繰り返される。照射の終了後には、装置の加熱素子がスイッチオフされて冷却フェーズが開始される前に、更に40の別の層が形成される。一つの層に対してその都度必要とされる時間は、全体の製造プロセスの間に40秒を下回る。
【0031】
少なくとも12時間の冷却時間後にコンポーネントが取り出され、付着している粉末が取り除かれる。コンポーネントの中心にあるコアからは、更なる検査のためのサンプルが取り出される。このサンプルの溶液粘度が、ISO307(検査装置 Schott社 AVS Pro、溶媒 酸性m−クレゾール、容積測定法、二重測定、溶解温度100℃、溶解時間2h、ポリマー濃度5g/l)に準拠して求められる。そのようにして求められた溶液粘度はポリマーの分子質量に関する尺度を表す。
【0032】
ここで、レーザの焦点における出力密度分布は、全ての例において、ISO13694に準拠するPRIMES有限会社のFocusMonitorを用いて測定される。レーザ出力はISO11554に準拠して、Coherent Deutschland有限会社のLM-1000を用いて測定され、ここでは平均的な出力が表される。レーザビームの焦点は製造フィールドの中心において、ISO11146(二次モーメント法)に準拠して測定される。検査装置はその都度、粉末表面の高さにある焦点直径が0.3mmであるように構成される。出力密度の平均値は、レーザ出力がレーザ焦点の面積によって除算されることによって求められる。測定は実験室において23℃/50%の大気湿度で実施される。例におけるレーザの出力制御は制御装置を用いて行なわれ、この制御装置はPWM方式で動作するものであり、これによってレーザのパルス状の出力が生じる。
【0033】
例1(本発明によるものではない)
レーザ(CO2、波長10.6μm)として、MCA Micro Controller Applications社のレーザマルチコントローラLCT3001と、Synrad社のDC-5電源装置とを用いる、Universal Laser Systems社のULR-50を使用する。スキャナは、Scanlab社のvarioSCAN 60を用いるpowerSCAN 50を使用する。PWMのクロック周波数は2kHzであり、デューティ比は40%である。レーザの照射エネルギは60mJ/mm2(レーザ出力20.6W、スキャン速度1144mm/s、照射線間隔0.3mm)である。全体の焦点にわたる平均出力密度29.1kW/cm2が測定された。出力密度の最大値は64.3kW/cm2である。コンポーネントサンプルの溶液粘度はISO307に準拠して1.55が求められる。
【0034】
例2(本発明によるものではない)
ここでは、MCA Micro Controller Applications社のレーザマルチコントローラLCT3001と、Heim Electronic社のDL1600電源装置とRaylase社のSS-20スキャナとを用いる、Optotools社のOTF150-30-0.2ダイオードレーザ(波長980nm)を使用する。PWMのクロック周波数は2kHzであり、デューティ比は40%である。レーザエネルギのより良い吸収のために、PA12粉末に0.1%Printex Alphaを混合する。レーザの照射エネルギは60mJ/mm2(レーザ出力52.6W、スキャン速度2922mm/s、照射線間隔0.3mm)である。全体の焦点にわたる出力密度74.4kW/cm2が測定された。出力密度の最大値は184.8kW/cm2である。コンポーネントサンプルの溶液粘度はISO307に準拠して1.54が求められる。
【0035】
例3(本発明によるものではない)
ここでは、MCA Micro Controller Applications社のレーザマルチコントローラLCT3001と、Heim Electronic社のDL1600電源装置と、Raylase社のSS-10スキャナとを用いる、IPG社のELR-100-1550ファイバレーザ(波長1550nm)を使用する。PWMのクロック周波数は2kHzであり、デューティ比は40%である。レーザエネルギのより良い吸収のために、PA12粉末に0.1%Printex Alphaを混合する。レーザの照射エネルギは60mJ/mm2(レーザ出力42.1W、スキャン速度2338mm/s、照射線間隔0.3mm)である。全体の焦点にわたる出力密度59.6kW/cm2が測定された。出力密度の最大値は144.2kW/cm2である。コンポーネントサンプルの溶液粘度はISO307に準拠して1.55が求められる。
【0036】
例4(本発明)
レーザとして、MCA Micro Controller Applications社のレーザマルチコントローラLCT3001(PWMクロック周波数2kHz,デューティ比40%)と、Synrad社のDC-5電源装置とを用いる、Universal Laser Systems社のULR-50を使用する。レーザビームをMolTech有限会社のpiShaper 7_7_10.6を用いて変形する。レーザビームの変形後に、このレーザビームをScanlab社のvarioSCAN 60を用いるpowerSCAN 50スキャナによって粉末表面へと偏向する。レーザの照射エネルギは60mJ/mm2(レーザ出力20.4W、スキャン速度1133mm/s、照射線間隔0.3mm)である。全体の焦点にわたる出力密度28.8kW/cm2が測定された。出力密度の最大値は30.5kW/cm2である。コンポーネントサンプルの溶液粘度はISO307に準拠して1.58が求められる。
【0037】
例5(本発明)
ここでは、MCA Micro Controller Applications社のレーザマルチコントローラLCT3001と、Heim Electronic社のDL1600電源装置とを用いる、Optotools社のOTF150-30-0.2ダイオードレーザ(波長980nm)を使用する。PWMのクロック周波数は2kHzであり、デューティ比は40%である。レーザビームをMolTech有限会社のpiShaper 6_6_TiSを用いて変形し、続いてRaylase社のSS-20スキャナを用いて粉末表面に偏向する。レーザエネルギのより良い吸収のために、PA12粉末に0.1%Printex Alphaを混合する。レーザの照射エネルギは60mJ/mm2(レーザ出力52.5W、スキャン速度2916mm/s、照射線間隔0.3mm)である。全体の焦点にわたる出力密度74.3kW/cm2が測定された。出力密度の最大値は78.1kW/cm2である。コンポーネントサンプルの溶液粘度はISO307に準拠して1.58が求められる。
【0038】
例6(本発明)
ここでは、MCA Micro Controller Applications社のレーザマルチコントローラLCT3001と、Heim Electronic社のDL1600電源装置とを用いる、IPG社のELR-100-1550ファイバレーザ(波長1550nm)を使用する。PWMのクロック周波数は2kHzであり、デューティ比は40%である。レーザビームをMolTech有限会社のpiShaper 6_6_1550を用いて変形し、続いてRaylase社のSS-10スキャナを用いて粉末表面に偏向する。レーザエネルギのより良い吸収のために、PA12粉末に0.1%Printex Alphaを混合する。レーザの照射エネルギは60mJ/mm2(レーザ出力42.0W、スキャン速度2333mm/s、照射線間隔0.3mm)である。全体の焦点にわたる出力密度59.4kW/cm2が測定された。出力密度の最大値は62.5kW/cm2である。コンポーネントサンプルの溶液粘度はISO307に準拠して1.58が求められる。
【0039】
例7(本発明)
レーザとして、MCA Micro Controller Applications社のレーザマルチコントローラLCT3001(PWMクロック周波数2kHz,デューティ比40%)を用いる、Universal Laser Systems社のULR-50を使用する。レーザビームをLaser Components有限会社のBeam Shapers TH-205-A-Y-Aを用いて変形する。レーザビームの変形後に、このレーザビームをScanlab社のvarioSCAN 60を用いるpowerSCAN 50スキャナによって粉末表面へと偏向する。レーザの照射エネルギは60mJ/mm2(レーザ出力20.5W、スキャン速度1138mm/s、照射線間隔0.3mm)である。全体の焦点にわたる出力密度29.0kW/cm2が測定された。出力密度の最大値は30.5kW/cm2である。コンポーネントサンプルの溶液粘度はISO307に準拠して1.59が求められる。
【0040】
例8(本発明)
レーザとして、MCA Micro Controller Applications社のレーザマルチコントローラLCT3001(PWMクロック周波数2kHz,デューティ比40%)を用いる、Universal Laser Systems社のULR-50を使用する。レーザビームをLaser Components有限会社のRD-202-A-Y-Aを用いて均一化し、Laser Components有限会社のBeam Shapers TH-205-A-Y-Aを用いて変形する。レーザビームの変形後に、このレーザビームをScanlab社のvarioSCAN 60を用いるpowerSCAN 50スキャナによって粉末表面へと偏向する。レーザの照射エネルギは60mJ/mm2(レーザ出力20.3W、スキャン速度1144mm/s、照射線間隔0.3mm)である。全体の焦点にわたる出力密度28.7kW/cm2が測定された。出力密度の最大値は29.5kW/cm2である。コンポーネントサンプルの溶液粘度はISO307に準拠して1.6が求められる。
【0041】
ビーム変形によって、レーザの焦点における著しく均一な出力密度分布を達成することができる。出力ピークを回避することによって、溶液粘度によって測定される、分子量減成を回避もしくは低減することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともレーザを備えている、三次元の物体を層状に製造するための装置において、
該装置はビーム成形システムを備えていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記ビーム成形システムは焦点における出力密度に関する最大値を、焦点における出力密度の平均値を超えて50%未満に調整する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ビーム成形システムは、屈折型ビーム成形器及び/又はホモジナイザである、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
ポリマー粉末から三次元の物体を層状に製造するための方法において、
前記ポリマー粉末の選択性の溶融又は焼結をレーザによって行い、焦点における出力密度に関するレーザの最大値は焦点における出力密度の平均値を超えて50%未満であることを特徴とする、方法。
【請求項5】
前記焦点における出力密度に関する最大値は、前記焦点における出力密度の平均値を超えて20%未満である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記焦点における出力密度に関する最大値は、前記焦点における出力密度の平均値を超えて10%未満である、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記焦点における出力密度分布をビーム変形によって調整する、請求項4乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ビーム変形を屈折型ビーム成形器及び/又はホモジナイザを用いて行なう、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置又は請求項4乃至8のいずれか一項に記載の方法を用いてポリマー粉末から製造されることを特徴とする、モールド。
【請求項10】
ISO307に準拠して、使用されるポリマー粉末に比べて10%以上小さくない溶液粘度を有する、請求項9に記載のモールド。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−22965(P2013−22965A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−163136(P2012−163136)
【出願日】平成24年7月23日(2012.7.23)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】