説明

三次元人工支持体及びその製造方法

【課題】本発明は、組織の再生能力が強化された人工支持体及びその製造方法に関するものである。
【解決手段】本発明の一実施例による人工支持体は、生分解性合成高分子−ヒドロゲル(hydrogel)層を交互に積層して、格子状に形成する。このとき、前記生分解性合成高分子−ヒドロゲル層は、生分解性合成高分子及びヒドロゲルを含む複数の生分解性合成高分子−ヒドロゲルユニットを、一定の間隔をおいて、配置して形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元人工支持体及びその製造方法に関するものであって、より詳しくは、生分解性高分子及びヒドロゲルで形成された三次元人工支持体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組織工学(Tissue Engineering)分野は、損傷された臓器を再生するために、患者の組織から少量採取した細胞を体外で大量培養した後、三次元組織に分化させ、これを組織及び器官に再生させる技術分野であって、最近、組織工学分野と関連し、損傷された人体の多様な組織と器官の機能を復元するために、多様な接近方式で研究が進められている。
【0003】
組織工学において、組織の三次元培養のためには、細胞が三次元環境として認識できる人工支持体を必要とするが、このような人工支持体は、細胞の円滑な接着、増殖及び分化を誘導できるように、適切なECM(Extra Cellular Matrix)構造を有していなければならない。また、細胞の移動、新陳代謝の促進及び栄養分の供給のための血管浸透のために、適切な大きさで互いに連結された多孔性の三次元構造を有さなければならず、組織再生期間の間その形態を維持できるほどの適切な強度が維持されなければならない。
【0004】
従来、このような三次元人工支持体を得るために、塩発泡法、相分離法、塩浸出法、乳化凍結乾燥法などの方法を用いたが、このような方法で製造された人工支持体は、多孔性構造の空隙の大きさ、位置及び空隙率などの調節が難しいという限界がある。また、人工支持体内の空隙間の連結性を高めるために空隙率を大きく高めることによって、機械的強度もまた低くなる問題が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、上述した背景技術の問題点を解決するためのものであって、その目的は、生分解性高分子とヒドロゲル(hydrogel)とを融合して、組織の再生能力が強化された人工支持体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施例による人工支持体は、生分解性合成高分子−ヒドロゲル(hydrogel)層を交互に積層して、格子状に形成され、前記生分解性合成高分子−ヒドロゲル層は、生分解性合成高分子及びヒドロゲルを含む複数の生分解性合成高分子−ヒドロゲルユニットを一定の間隔をおいて配置して、形成される。
【0007】
前記生分解性合成高分子−ヒドロゲルユニットは、対向する一対の生分解性合成高分子ラインの間に、ヒドロゲルラインを介在して形成される。
【0008】
前記生分解性合成高分子は、ポリ乳酸(Poly−lactic Acid、PLA)、ポリグリコール酸(Poly−glycolic Acid、PGA)、ポリカプロラクトン(Polycaprolactone)及びポリラクチック・コグリコール酸(Poly−lactic−co−glycolic Acid、PLGA)の少なくとも一つを含む。
【0009】
前記ヒドロゲルは、水溶性であり、コラーゲン(Collagen)、ゼラチン(Gelatin)、キトサン(Chitosan)、アルギン酸(Alginic Acid)またはヒアルロン酸(Hyaluronic Acid)のいずれか一つである。
【0010】
前記ヒドロゲルの内部に、細胞の成長及び機能を調節可能な成長因子を内在し、前記ヒドロゲルの内部に内在された前記成長因子は、転換性成長因子−βTGF−β、骨形成蛋白質(BMP)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)または上皮細胞成長因子(EGF)のいずれか一つである。
【0011】
また、前記ヒドロゲルの内部に再生しようとする細胞が内在される。
【0012】
本発明の一実施例による人工支持体の製造方法は、第1シリンジ及び第2シリンジに、それぞれ、生分解性合成高分子及びヒドロゲルを注入する注入ステップ、前記第1シリンジに注入された前記生分解性合成高分子を噴射して、一定の間隔をおいて複数の生分解性合成高分子ラインを形成する第1噴射ステップ、前記第2シリンジに注入された前記ヒドロゲルを噴射して、前記複数の生分解性合成高分子ラインの間に、ヒドロゲルラインと空隙を交互に形成して、生分解性合成高分子−ヒドロゲル層を形成する第2噴射ステップ、及び、前記第1噴射ステップと前記第2噴射ステップを繰り返して、前記生分解性合成高分子−ヒドロゲル層を交互に積層する積層ステップを含む。
【0013】
また、前記注入ステップの後、前記第1シリンジ及び前記第2シリンジに連結された温度制御機によって、前記生分解性合成高分子及び前記ヒドロゲルの温度を制御する温度制御ステップをさらに含む。
【0014】
前記生分解性合成高分子は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン及びポリラクチック・コグリコール酸の少なくとも一つを含む。
【0015】
前記ヒドロゲルは、水溶性であり、コラーゲン、ゼラチン、キトサン、アルギン酸またはヒアルロン酸のいずれか一つである。
【0016】
前記ヒドロゲルの内部に、細胞の成長及び機能を調節可能な成長因子を内在し、前記ヒドロゲルの内部に内在した前記成長因子は、転換性成長因子−βTGF−β、骨形成蛋白質(BMP)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)または上皮細胞成長因子(EGF)のいずれか一つである。
【0017】
また、前記ヒドロゲルの内部に、再生しようとする細胞を内在する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の実施例によれば、細胞の接着能力及び接着した細胞の増殖能力を向上することができ、人工支持体の機械的強度を改善可能であって、人工支持体の形状及び空隙の大きさを調節することができる。
また、多軸積層システムの自動化システムを活用して、工程速度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例により製造した人工支持体を拡大して示す写真である。
【図2】本発明の一実施例により人工支持体を製造するための多軸積層システムの構成を概略的に示す図である。
【図3】本発明の一実施例により人工支持体を製造する工程を示すフローチャートである。
【図4a】本発明の一実施例により人工支持体を製造する過程を順に示す図である。
【図4b】本発明の一実施例により人工支持体を製造する過程を順に示す図である。
【図4c】本発明の一実施例により人工支持体を製造する過程を順に示す図である。
【図4d】本発明の一実施例により人工支持体を製造する過程を順に示す図である。
【図4e】本発明の一実施例により人工支持体を製造する過程を順に示す図である。
【図5】本発明の一実施例により製造した人工支持体で細胞増殖した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施例について、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、詳しく説明する。一方、図において、各構成要素の大きさは説明の便宜のために任意的なものであって、本発明が必ず図示されたものに限定されることではない。
【0021】
図1は、本発明の一実施例により製造した人工支持体を拡大して示す写真である。以下、図1を参照しながら、本実施例による人工支持体について具体的に説明する。
【0022】
現在、広く用いられる生分解性合成高分子から製造された人工支持体は、細胞に完璧な三次元的環境を提供することができず、相対的に表面の疎水性の性質によって初期細胞注入時に細胞損失が大きくなるなど、細胞親和度が低い限界がある。
【0023】
一方、ヒドロゲル(hydrogel)は、多量の水分を含有できる三次元の親水性の高分子網状構造を有する物質であって、少なくは全体重量の20%、多くは95%以上の水を吸収することができる。このような天然高分子は、天然物質、動物、人体などに由来する高分子であって、非常に優れた生体適合性を有する。
したがって、ヒドロゲルから製造された支持体は、移植後の炎症反応が少なく、生分解性に優れており、組織工学用支持体として多く用いられる。また、水溶液環境下で細胞またはペプチド、蛋白質、DNAなどを保護することができ、細胞に栄養源を供給したりまたは分泌生成物の伝達が容易であり、細胞接着リガンドを容易に修飾できる長所を持っている。
しかし、ヒドロゲルのみで支持体を形成する場合、低い機械的強度によって軟組織再生などにのみその使用が限定され、生分解性の動きの側面でも体内酵素によって容易に分解できるため、組織が再生するまで十分な支持体の役割を果たすことができない問題が発生する。
【0024】
このような限界を克服するために、本実施例による人工支持体は、生分解性合成高分子及びヒドロゲルを全て含んで形成される。具体的には、生分解性合成高分子及びヒドロゲルを含む複数の生分解性合成高分子−ヒドロゲル層を形成し、これを交互に積層することによって、格子状に形成される。
【0025】
このとき、生分解性合成高分子は、ポリ乳酸(Poly−lactic Acid、PLA)、ポリグリコール酸(Poly−glycolic Acid、PGA)、ポリカプロラクトン(Polycaprolactone、PCL)及びポリラクチック・コグリコール酸(Poly−lactic−co−glycolic Acid、PLGA)の少なくとも一つを含む。つまり、前記材料のいずれか一つを用いて、生分解性合成高分子を構成することができ、あるいは二つ以上の材料を混合して用いることもできる。
【0026】
また、ヒドロゲルに応用可能な天然高分子としては、コラーゲン(Collagen)、ゼラチン(Gelatin)、キトサン(Chitosan)、アルギン酸(Alginic Acid)、ヒアルロン酸(Hyaluronic Acid)等がある。
【0027】
一方、細胞の成長及び機能を調節可能な成長因子をヒドロゲルの内部に封入して、人工支持体を形成することもできるが、このとき、成長因子としては、転換成長因子−◎TGF−◎、骨形成蛋白質(BMP)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、上皮細胞成長因子(EGF)等が用いられる。このような成長因子をヒドロゲルの内部に内在させることによって、組織再生を増進することができる。また、ヒドロゲルの内部に、再生しようとする細胞を封入して人工支持体を形成することもできる。このとき、前記成長因子を一緒に封入してもよい。
【0028】
このように生分解性合成高分子にヒドロゲルを融合して人工支持体を形成することによって、細胞の接着能力及び接着した細胞の増殖能力を向上することができ、さらに機械的強度の問題も解決することができる。
【0029】
図2は、本発明の一実施例による人工支持体を製造するための製造システムを概略的に示す図であり、図3は、このような製造システムを用いて人工支持体を製造する工程を示すフローチャートであり、図4a〜図4eは、本発明の実施例により人工支持体を製造する過程を順に示す図である。以下、これらを参照しながら、本発明の一実施例による人工支持体及びその製造方法について、具体的に説明する。
【0030】
図2に示されているように、人工支持体の製造システムは、多軸積層システム100を用いて三次元形状の人工支持体200を形成する。
【0031】
多軸積層システム100は、人工支持体の材料を既設定された太さで噴出する積層ヘッド150を備える。積層ヘッド150は、材料が流入し、これを保管するシリンジ(syringe)151、シリンジ151に流入した材料を噴射するノズル153、及び、材料の温度を適切に維持するヒータ155を含む。本実施例では、2つの積層ヘッド150のシリンジ151に、それぞれ、生分解性合成高分子とヒドロゲルが注入され、それぞれのノズル153を通じて噴射されることによって、人工支持体200が形成される。
【0032】
このような積層ヘッド150をx軸とy軸とからなる平面座標だけでなく、上下方向のz軸にも動かせるために、多軸積層システム100は、積層ヘッド150をx軸方向に動かせるx軸変位移動部120、積層ヘッド150をy軸方向に動かせるy軸変位移動部130、積層ヘッド150をz軸方向に上下に動かせるz軸変位移動部140を、それぞれ備える。つまり、このような多軸積層システム100は、作業テーブル110に人工支持体の材料をマトリクス方式で積層することによって、形状化しようとする複雑な三次元形状の人工支持体200を製造することができる。
【0033】
製造しようとする人工支持体200の形状などは、データモデル20を介して統合制御装置10に入力される。このとき、人工支持体200のデータモデル20は、3Dキャド(CAD)データで入力するために、三次元形状の人工支持体200の各座標値が設定されることが好ましい。
【0034】
統合制御装置10は、人工支持体200の三次元形状データモデルによって多軸積層システム100の作動を制御する。これによって、多軸積層システム100は、統合制御装置10から伝達される人工支持体200の三次元形状データにより、積層ヘッド150を設定しようとする座標値に動かせながら、人工支持体の材料、つまり、生分解性合成高分子とヒドロゲルを交互に噴射する。
【0035】
温度制御機30は、多軸積層システム100の積層ヘッド150に連結され、積層ヘッド150のシリンジ151の温度を制御する。
具体的に、温度制御機30は、積層ヘッド150に取り付けられたヒータ155と連結され、これを制御することによって、積層ヘッド150のシリンジ151内の生分解性合成高分子とヒドロゲルを既設定された温度で加熱または維持する。これによって、生分解性合成高分子とヒドロゲルの人工支持体の材料は、噴射するのに適した状態に変化または維持され、積層ヘッド150のシリンジ151を通じて既設定された太さで噴射される。
一方、温度制御機30は、多軸積層システム100だけでなく、統合制御装置10にも連結され、積層ヘッド150の動きに連係して動作する。
【0036】
圧力制御機40は、多軸積層システム100の積層ヘッド150に連結され、積層ヘッド150に伝達される圧力を制御する。つまり、圧力制御機40は、積層ヘッド150の圧力伝達機に伝達される圧力を制御する手段であって、積層ヘッド150のノズル153を通じて噴出される生分解性合成高分子及びヒドロゲルの噴射速度を異にすることができる。
本実施例による圧力制御機40は、空圧方式によって、積層ヘッド150の圧力伝達機に圧力を伝達する。このために、三次元人工支持体の製造システムは、積層ヘッド150の圧力伝達機に直接圧力を加える空圧機50を備えており、この空圧機50は、圧力制御機40によって作動する。このとき、空圧機50は、多軸積層システム100の各軸に独立して連結され、各軸別に多様に空圧を調節することができる。
【0037】
このように多軸積層システム100を用いた人工支持体の製造システムは、一般的な単一軸システムとは異なって、互いに独立して、位置、温度及び圧力の制御が可能な4つの軸が取り付けられたシステムであって、このような製造システムを用いて、人工支持体の形状及び空隙の大きさなどの調節が可能となる。
【0038】
図3を参照すれば、本実施例による人工支持体を製造する方法は、生分解性合成高分子及びヒドロゲルを、それぞれ、シリンジに注入するステップ(S10)、一定の間隔をおいて生分解性合成高分子を噴射する第1噴射ステップ(S20)、生分解性合成高分子ラインの間にヒドロゲルを噴射する第2噴射ステップ(S30)、及び、生分解性合成高分子−ヒドロゲル層を交互に積層するステップ(S40)を含み、温度制御機によって、シリンジに注入された生分解性合成高分子及びヒドロゲルの温度を制御する温度制御ステップをさらに含む。
【0039】
このような人工支持体の製造方法について、図4a〜図4eを参照しながら、より具体的に説明する。
【0040】
まず、人工支持体200を形成するために、データモデル20からデータを統合制御装置10に伝達する。統合制御装置10は、伝達されたデータに基づいて温度制御機30、圧力制御機40及び各軸方向への変位移動部120,130,140を制御する。
【0041】
2つの積層ヘッド150のシリンジ151に、それぞれ、生分解性合成高分子及びヒドロゲルを注入した後、温度制御機30及びヒータ155によって、これらが噴射されるのに適した状態が維持されるようシリンジ151の温度を調節する。このとき、前述したように、生分解性合成高分子としては、PLA、PGA、PCL及びPLGAのいずれか一つまたは二つ以上を混合して用いることができ、ヒドロゲルとしては、コラーゲン、ゼラチン、キトサン、アルギン酸及びヒアルロン酸のいずれか一つを用いることができる。
【0042】
一例として、生分解性合成高分子は、PLA及びPGAの比率が85:15であるPLGAとPCLとを90度で混合した材料を、温度制御機30及びヒータ155によって120度に維持することによって、粘度を有する状態で溶融して用いることができ、ヒドロゲルは、パウダ状のヒアルロン酸を蒸溜水と混合して、ゲル状態となるようによく混ぜて、適切な粘度を維持しながら用いることができる。このとき、ヒドロゲルは、熱によって材料の性質が変質できるため、熱を加えない。
【0043】
その後、積層ヘッドが変位移動部120,130,140及び圧力制御機40の制御を受けて、積層ヘッド150の噴射ノズル153を通じて、作業テーブル110上に生分解性合成高分子とヒドロゲルを交互に噴射することによって、人工支持体200を形成する。一方、本実施例では、生分解性合成高分子とヒドロゲルを噴射するにおいて空圧を用い、用いられる空圧は、約650kPaである。
【0044】
図4a及び図4bを参照すれば、第1噴射ステップ(S20)では、生分解性合成高分子を既設定された間隔をおいて複数のラインにかけて噴射する。これによって、複数の生分解性合成高分子ライン210が形成される。また、生分解性合成高分子ライン210の間にヒドロゲルを噴射させるために適切な高さを有するように、図4bのように、生分解性高分子を複数回積層する。本実施例では、生分解性合成高分子ライン210の一層の高さが約100μmであり、これを3〜4回積層して、300μm〜400μmの高さとなるようにする。
【0045】
図4cは、ヒドロゲルを噴射する第2噴射ステップ(S30)を示すものであって、第2噴射ステップ(S30)では、間隔をおいて生分解性合成高分子ライン210を形成することによって、その間に形成された空隙にヒドロゲルを噴射して、複数のヒドロゲルライン220を形成するが、ヒドロゲルを噴射する噴射ノズル153の位置が空隙の真ん中になるように制御することによって、正確な位置に噴射することができる。このとき、空隙を一つずつとばしてヒドロゲルを噴射するが、これは、人工支持体200内に酸素及び栄養分をやり取りできる空隙が必要となり、これを確保するためのものである。このような方式で、第1噴射ステップ(S20)及び第2噴射ステップ(S30)を経て、一層の生分解性合成高分子−ヒドロゲル層240が形成される。つまり、生分解性合成高分子−ヒドロゲル層240は、生分解性合成高分子ライン210とヒドロゲルライン220とを含む生分解性合成高分子−ヒドロゲルユニット230が一定の間隔で配置され、その間に空隙を形成することによって行われる。
【0046】
積層ステップ(S40)は、第1噴射ステップ(S20)及び第2噴射ステップ(S30)を繰り返して、生分解性合成高分子−ヒドロゲル層240を複数積層するステップである。図4dを参照すれば、一層を積層した後、全体的に90度回転させて次の層を積層することによって、人工支持体200が格子状をなすようにする。このような積層ステップ(S40)を所望する高さになるまで繰り返して行うことによって、図4eのように、格子状の人工支持体200を製造することができる。一例として、2mm高さの人工支持体を得るためには、300μm〜400μm高さの生分解性合成高分子−ヒドロゲル層240を5〜6回積層する。
【実施例】
【0047】
本実施例による人工支持体の効果を検証するために、次のような実験を行った。本実験のために、生分解性合成高分子にPCL及びPLGAを用い、ヒドロゲルにヒアルロン酸を用いた場合と、ゼラチンを用いた場合とに分けて、前述した人工支持体の製造方法によって人工支持体を製造した。また、実験のために、前骨芽細胞(pre−osteoblast)であるMC3T3−E1細胞を用い、人工支持体当たり10個の細胞を播種した。細胞増殖の評価のために、cell counting kit−8を用い、7日までの増殖評価を行った。
【0048】
図5は、前記実験による細胞増殖の結果を示すグラフであって、ヒドロゲルが内在されている人工支持体の細胞の接着能力及び接着された細胞の増殖能力が、ヒドロゲルを含まない人工支持体よりも優れていることを確認することができる。
【0049】
これによって、本実施例による生分解性合成高分子とヒドロゲルとを含む人工支持体が細胞増殖に優れた効果を奏することを確認することができ、前述したように機械的強度も改善することができる。また、人工支持体の内部に組織の再生を助ける成長因子を細胞と一緒に封入することによって、組織再生の効能を極大化することができる。
【0050】
上記したように、本発明を好ましい実施例により説明したが、本発明は上述した実施例に限定されない。生分解性合成高分子部分のパターンまたはヒドロゲルの噴射位置を自由に調節することができ、多軸積層システムを用いることによって、格子状以外の他の形態の人工支持体を製造することもできる。つまり、本明細書の特許請求の範囲の概念と範囲から外れない限り、多様な修正及び変形が可能であることは、本発明の属する技術分野における当業者であれば容易に理解できるだろう。
【符号の説明】
【0051】
10 統合制御装置
20 データモデル
30 温度制御機
40 圧力制御機
50 空圧機
100 多軸積層システム
110 作業テーブル
150 積層ヘッド
151 シリンジ
153 ノズル
155 ヒータ
200 人工支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の生分解性合成高分子−ヒドロゲル(hydrogel)層を交互に積層して、格子状に形成された人工支持体であって、
前記生分解性合成高分子−ヒドロゲル層は、生分解性合成高分子及びヒドロゲルを含む複数の生分解性合成高分子−ヒドロゲルユニットが間隔をおいて配置されて形成されたことを特徴とする人工支持体。
【請求項2】
前記生分解性合成高分子−ヒドロゲルユニットは、対向する一対の生分解性合成高分子ラインの間に、ヒドロゲルラインを介在して形成されたことを特徴とする請求項1に記載の人工支持体。
【請求項3】
前記生分解性合成高分子は、ポリ乳酸(Poly−lactic Acid、PLA)、ポリグリコール酸(Poly−glycolic Acid、PGA)、ポリカプロラクトン(Polycaprolactone)、及びポリラクチック・コグリコール酸(Poly−lactic−co−glycolic Acid、PLGA)の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の人工支持体。
【請求項4】
前記ヒドロゲルは、水溶性であることを特徴とする請求項1に記載の人工支持体。
【請求項5】
前記ヒドロゲルは、コラーゲン(Collagen)、ゼラチン(Gelatin)、キトサン(Chitosan)、アルギン酸(Alginic Acid)またはヒアルロン酸(Hyaluronic Acid)のいずれか一つであることを特徴とする請求項4に記載の人工支持体。
【請求項6】
前記ヒドロゲルの内部に、細胞の成長及び機能を調節可能な成長因子が内在されることを特徴とする請求項1に記載の人工支持体。
【請求項7】
前記ヒドロゲルの内部に内在された前記成長因子は、転換性成長因子−βTGF−β、骨形成蛋白質(BMP)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)または上皮細胞成長因子(EGF)のいずれか一つであることを特徴とする請求項6に記載の人工支持体。
【請求項8】
前記ヒドロゲルの内部に、再生しようとする細胞が内在されることを特徴とする請求項1に記載の人工支持体。
【請求項9】
第1シリンジ(syringe)及び第2シリンジに、それぞれ、生分解性合成高分子及びヒドロゲルを注入する注入ステップ、
前記第1シリンジに注入された前記生分解性合成高分子を噴射して、一定の間隔をおいて複数の生分解性合成高分子ラインを形成する第1噴射ステップ、
前記第2シリンジに注入された前記ヒドロゲルを噴射して、一対の生分解性合成高分子ラインの間に、ヒドロゲルラインが介在した生分解性合成高分子−ヒドロゲルユニット、及び空隙が交互に形成された生分解性合成高分子−ヒドロゲル層を形成する第2噴射ステップ、及び
前記第1噴射ステップと前記第2噴射ステップを繰り返して、前記生分解性合成高分子−ヒドロゲル層を交互に積層する積層ステップ、
を含むことを特徴とする人工支持体の製造方法。
【請求項10】
前記生分解性合成高分子は、ポリ乳酸(Poly−lactic Acid、PLA)、ポリグリコール酸(Poly−glycolic Acid、PGA)、ポリカプロラクトン(Polycaprolactone)、及びポリラクチック・コグリコール酸(Poly−lactic−co−glycolic Acid、PLGA)の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項9に記載の人工支持体の製造方法。
【請求項11】
前記ヒドロゲルは、水溶性であることを特徴とする請求項9に記載の人工支持体の製造方法。
【請求項12】
前記ヒドロゲルは、コラーゲン、ゼラチン、キトサン、アルギン酸またはヒアルロン酸のいずれか一つであることを特徴とする請求項11記載の人工支持体の製造方法。
【請求項13】
前記ヒドロゲルの内部に、細胞の成長及び機能を調節可能な成長因子を内在させることを特徴とする請求項9に記載の人工支持体の製造方法。
【請求項14】
前記ヒドロゲルの内部に内在した前記成長因子は、転換性成長因子−βTGF−β、骨形成蛋白質(BMP)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)または上皮細胞成長因子(EGF)のいずれか一つであることを特徴とする請求項13に記載の人工支持体の製造方法。
【請求項15】
前記ヒドロゲルの内部に、再生しようとする細胞を内在させることを特徴とする請求項9に記載の人工支持体の製造方法。

【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図4e】
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【図5】
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【図1】
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【公表番号】特表2013−512950(P2013−512950A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543032(P2012−543032)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【国際出願番号】PCT/KR2011/001516
【国際公開番号】WO2011/115381
【国際公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(506376458)ポステック アカデミー−インダストリー ファンデーション (28)
【Fターム(参考)】