説明

三次元加速度計を備えた健康状態診断システム

【課題】本発明の課題は体の特定部位の三次元移動情報を計測することによって、より幅広い診断が可能な、しかも単純な構成で且つ安価に実現できる健康状態診断システムを提供することにある。
【解決手段】本発明の三次元加速度計を備えた健康状態診断システムは、体の特定部位に取り付けられる三次元加速度センサーチップと、該三次元加速度センサーの検出値を三次元成分毎に積分することにより三次元の速度と位置の変化を算出する手段と、体の特定部位に対応した比較データを蓄積した記憶部と、算出した三次元の速度または位置の変化情報を前記比較データと対比させた結果を表示する手段とからなるものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は体の動きを計測し、その情報を解析して診断やリハビリに用いる三次元加速度計を備えた健康状態診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
体の動きを計測し、その情報を解析して健康状態診断を行う健康状態診断システムとしては直立姿勢に現われる重心動揺を計測する重心計(特許文献1)や、汎用のコンピュータシステムにペンの描画を位置情報として読取る手段を取りつけ、脳・神経系疾患の病状診断、投薬処方及び機能回復訓練のための支援システム(特許文献2)等が知られている。
現状の重心計はプレート(三角形あるいは四角形の台)の各隅の下に3〜4つの荷重検出計(ひずみゲージ、または荷重センサー)を一定間隔で設置し、それぞれのセンサー荷重比で重心位置(Center Of Pressure:2次元X,Y値)を求める計測装置である。直立姿勢に現われる重心動揺を重心計を用いて記録し、その記録の肉眼的観察、計測、解析結果から、直立姿勢制御機構の解明、生理的ならびに病的平衡機能の把握、めまい・平衡障害的の診断や経過観察などを行うものである。
【0003】
特許文献2に示されている脳・神経系疾患の病状診断、投薬処方及び機能回復訓練のための支援システムは、モデル図形・文字をなぞる動作の過程で取得するデータを処理することによって、より詳細な診断、より適切な投薬処方、より効果的なリハビリを支援できるシステムを構築することを目的としたもので、それを達成するため、この脳・神経系疾患の病状診断、投薬処方及び機能回復訓練のための支援システムは、汎用のコンピュータシステムにペンの描画を位置情報として読取る手段を取りつけ、被検患者の描画作業の運動軌跡を時間経過情報と共にコンピュータに取りこむと共に所定パラメータを演算処理する機能と、該パラメータについて健常者の標準的数値並びに脳・神経系疾病特有の現象・症状を表す数値とを有するデータベースと、被検者の所定パラメータと前記データベースから抽出設定された対比する所定のパラメータ値を指標としてグラフ表示させる機能とを備えるものであり、また、図形を被検者がなぞる描画作業を分析して、機能回復訓練を支援するというものである。
【0004】
現在の重心計と脳・神経系疾患の病状診断、投薬処方及び機能回復訓練のための支援システムはいずれも二次元の移動情報を検出するものであって、三次元の移動情報を計測することはできない。一方、体の特定部位の三次元移動情報を計測するシステムとしては非特許文献1のような手法が知られている。これは体の特定部位にマーカーを取り付けカメラによって時系列で撮影してその撮像情報から時系列的な位置変化を解析するというものである。体の特定部位の三次元移動情報を得ることができるが、装置が大がかりになると共に、画像情報に基づく解析作業の負担が大きく主として研究室向けの仕様であり、一般使用向きの汎用技術ではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、体の特定部位の三次元移動情報を計測することによって、より幅広い診断が可能な、しかも単純な構成で且つ安価に実現できる健康状態診断システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の三次元加速度計を備えた健康状態診断システムは、体の特定部位に取り付けられる三次元加速度センサーチップと、該三次元加速度センサーの検出値を三次元成分毎に積分することにより三次元の速度と位置の変化を算出する手段と、体の特定部位に対応した比較データを蓄積した記憶部と、算出した三次元の速度または位置の変化情報を前記比較データと対比させた結果を表示する手段とからなるものとした。
また、本発明の三次元重心計システムは、頭頂部、頸椎、上肢、下肢を含む体の複数特定部位に取り付けられる三次元加速度センサーチップと、該三次元加速度センサーの検出値を三次元成分毎に二回積分することにより各部位についての三次元位置の変化を算出する手段と、該算出された各部位の三次元位置の変化情報から健康状態を解析する手段と、該解析結果を表示する手段とからなるものとした。また、その構成に加え、体の複数特定部位に対応した比較データを蓄積した記憶部と、前記算出された各部位の三次元位置の変化情報を前記比較データと対比させた結果を表示する手段を備えたものを提示する。
【0007】
本発明の三次元加速度計を備えた脳・神経系疾患の病状診断システム又は投薬処方若しくは機能回復訓練のための支援システムは、指先に取り付けられる三次元加速度センサーチップと、該三次元加速度センサーの検出値を三次元成分毎に積分することにより三次元の速度と位置の変化を算出する手段と、指先で描写するテストパターンと該テストパターンを描写した比較データを蓄積した記憶部と、算出した三次元の速度または位置の変化情報を前記比較データと対比させた結果を表示する手段とからなるものとした。
そして、上記で採用する比較データは健常者データ、各レベルの病者若しくは障害者データ、過去の自己データのいずれか又はこれらの組み合わせとした。
【発明の効果】
【0008】
本発明の三次元加速度計を備えた健康状態診断システムでは、体の特定部位に取り付けられる三次元加速度センサーチップは小片(10×10×2mm程度の寸法)であり、三次元の速度と位置の変化を算出する手段と、体の特定部位に対応した比較データを蓄積した記憶部と、算出した三次元の速度または位置の変化情報を前記比較データと対比させた結果を表示する手段は通常のパソコンを用いて実現可能なものであるから、三次元加速度センサーの出力がパソコン入力可能な形態となっていれば基本的にはチップとパソコンを接続するだけで実現できる。極めて単純な構成で且つ安価に体の特定部位の三次元の速度または位置の変化情報計測が実現できる。しかも三次元の情報が得られることで幅広い健康状態診断に対応することができる。
【0009】
本発明の三次元重心計システムでは、頭頂部、頸椎、上肢、下肢を含む体の複数特定部位に取り付けられる三次元加速度センサーチップは小片(10×10×2mm程度の寸法)であり、三次元加速度センサーの検出値を三次元成分毎に二回積分することにより各部位についての三次元位置の変化を算出する手段と、該算出された各部位の三次元位置の変化情報から健康状態を解析する手段と、該解析結果を表示する手段は通常のパソコンを用いて実現可能なものであるから、このシステムも三次元加速度センサーの出力がパソコン入力可能な形態となっていれば基本的にはチップとパソコンを接続するだけで実現できる。従来のプレートに荷重センサーを設置して計測する重心計(600mm程度の正三角形、または長方形で10kg程度の重量)に比べ、極めて単純な構成で且つ安価に体の特定部位の三次元の速度または位置の変化情報計測が実現できる。従来の重心計はプレートを設置する平坦な場所で一定範囲の広さが必要であるが、加速度計を使った本システムは場所を選ばない。計測方法も従来の直立又は坐位形態という制限が無くベッドの上でも歩行形態でも実施できる。この様に多様形態での三次元の情報が得られることで幅広い健康状態診断に対応することができる。また、各部位の揺れを総合することで、現状の重心計が出力する重心データに相関係数が限りなく1に近い値も算出できるので、従来データとの対比も可能である。
また、その構成に加え、体の複数特定部位に対応した比較データを蓄積した記憶部と、前記算出された各部位の三次元位置の変化情報を前記比較データと対比させた結果を表示する手段を備えたものにあっては健康状態診断が容易となる。
【0010】
本発明の三次元加速度計を備えた脳・神経系疾患の病状診断システムも同様で、指先に取り付けられる三次元加速度センサーチップは小片(10×10×2mm程度の寸法)であり、該三次元加速度センサーの検出値を三次元成分毎に積分することにより三次元の速度と位置の変化を算出する手段と、指先で描写するテストパターンと該テストパターンを描写した比較データを蓄積した記憶部と、算出した三次元の速度または位置の変化情報を前記比較データと対比させた結果を表示する手段は通常のパソコンを用いて実現可能なものであるから、三次元加速度センサーの出力がパソコン入力可能な形態となっていれば基本的にはチップとパソコンを接続するだけで実現できる。
従来の装置ではプレートを設置する机など平坦な場所で一定範囲の広さが必要であるが、本発明の加速度計を使ったシステムは場所を選ばず、被検者が寝ている状態でも計測可能である。そして、従来装置はモデル図形をなぞったときの2次元情報(X,Y)しか得られないが、三次元加速度計を使った本発明は奥行のパラメータを加えた、X,Y,Zと3次元情報を得られるので、より幅広い診断が可能となる。すなわち、空間で三次元のテストパターンをなぞるには、空間認識とテストパターンの大きさや形状の記憶、記憶と認識を実現する高次脳機能を使ったフィードバック能力を必要とするため、従来の装置では得られなかった、複雑な認知機能の評価、訓練が可能となる。また、紙面上のテストパターンをなぞることもできるため、従来装置と同様の使用ができ、従来装置による過去データとも直接比較ができる。
上記の本発明を三次元加速度計を備えた投薬処方の支援システムや機能回復訓練のための支援システムとして用いる場合も、その診断結果データの使用形態を異にするだけで上記の脳・神経系疾患の病状診断システムの場合と同様である。
【0011】
そして、本発明では比較データとして健常者データ、各レベルの病者若しくは障害者データ、過去の自己データのいずれか又はこれらの組み合わせを記憶部に蓄積しておき、計測データと対比させて診断材料とする形態を採用しているので、適正な診断を容易に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の基本構成を示すシステムブロック図である。
【図2】本発明の三次元加速度計を備えた健康状態診断システムの実施形態例を説明する図である。
【図3】本発明の三次元加速度計を備えた健康状態診断システムの最もシンプルな実施形態例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明の基本構成は図1のシステムブロック図に示すように、三次元加速度センサー1及び演算処理部3、プログラムとデータ記憶機能を備えた記憶部4、キーボードのような入力手段5そして表示部6を備えたパーソナルコンピュータ10、及び三次元加速度センサー1の出力をパーソナルコンピュータ10に入力可能な信号形態に変換する変換部2とからなる。この発明で用いられる三次元加速度センサー1は体の所望部位に安定的に取り付ける必要から小型平板状のチップ形態のものが用いられる。因みに、この種の部品として10×10×3mm程度のものが流通されておりこれを用いて実施することができる。三次元加速度センサーチップ1が取り付けられた部位の動きはx,y,z直交座標の三次元成分に分割された加速度情報として検出される。自明のことながら加速度情報は1回積分すれば速度情報が得られ、2回積分すれば変位情報が得られる。そしてx,y,z直交座標の三次元成分を合成することにより、方向を持ったベクトル情報で得ることができる。変位量はその部位のサンプリング時間毎の相対位置変化を逐次示すものであり、初期位置に対して順次その変位量を重ねていけばその部位の動きが把握できる。また、複数の部位に三次元加速度センサーチップ1が取り付けられた場合、各部位の初期位置が既知であれば単なる部位の動きだけではなく、部位間の相対変位すなわち、体の動きを把握することができる。
【0014】
本発明の基本動作を説明すると、三次元加速度センサーチップ1が出力する検出信号はまずコンピュータ10が扱うことができる信号形態に変換部2によって変換される。この変換部2には例えばUSBドライバーと三次元加速度センサーチップ1が出力する検出信号がアナログ信号であった場合にはこれをデジタル情報に変換する変換器、出力する検出信号が微弱である場合には増幅するアンプなどが内臓されている。この検出信号は記憶部4に格納されているプログラムによって、演算部3において1回積分されてその部位の速度情報を得、更に積分されて変位量を得る。この得られた情報は記憶部4のデータ記憶領域に蓄積される。続いて前記プログラムによって特定される比較情報を記憶部4のデータ記憶領域に蓄積されている比較情報データベースから読み出し、当該検出データと対比して表示部6に表示させる。この表示は被検者の健康状態を判断しやすいように、グラフ形態や表形態で表示させるのが好ましい。その比較データが健常者とのボーダーを示すデータであれば、被検者が健常者であるか否かの判断がし易い。また、各レベルの病者若しくは障害者データであれば被検者の病状若しくは障害度が判定しやすく、被検者の過去の自己データであれば被検者の状態の推移が判定できる。また、この比較データは1つではなく、これらを複数備えていれば多様な判定や診断が可能となる。入力手段5はどの様な試験やデータ処理を実施するのかプログラムの選択や、比較データの選択、被検者のID情報などの入力作業を担うものである。
【0015】
図2に本発明に係る「三次元加速度計を備えた健康状態診断システム」の3つの実施形態について説明する。図中Aは三次元加速度センサーチップ1が出力する検出信号を直接にコンピュータ10に有線接続してリアルタイムで検査とその結果表示を行う形態Iを示したものである。この形態では三次元加速度センサーチップ1の出力信号をコンピュータ10で扱える形態にするために必要な処理をUSB制御コントローラBOX2bで行う。このUSB制御コントローラBOX2bが備えていなければならない機能要素は、3チャンネルアンプ、USBドライバー、AD変換器である。体の特定部位に取り付ける三軸加速度センサー1はその部位の3軸方向成分に分離された加速度を検出し、USB制御コントローラBOX2bに送信する。信号を受けたUSB制御コントローラBOX2b内では3軸方向成分毎に信号を増幅し、アナログ信号をデジタル信号に変換し、更にコンピュータ10のUSB端子で受信可能な形態に信号を変換してコンピュータ10に出力する。計測信号を受けたコンピュータ10はプログラムに従い演算部3において1回積分されてその部位の速度情報を得、更に積分されて変位量を得る。この得られた情報は記憶部4のデータ記憶領域に蓄積される。続いて前記プログラムによって特定される比較情報を記憶部4のデータ記憶領域に蓄積されている比較情報データベースから読み出し、当該検出データと対比して表示部6に表示させる。この一連の動作がリアルタイムで実行される。USB制御コントローラBOX2bは被検者に安定した状態で装着させる必要があり、手首や足首に取り付けるリストバンド型やベルトに装着する形態が採られる。
【0016】
図2のBに示すものは三次元加速度センサーチップ1が出力する検出信号を直接にUSB制御コントローラBOX2bに有線接続すると共に無線でコンピュータ10に送信してリアルタイムで検査とその結果表示を行う形態IIを示したものである。この形態では三次元加速度センサーチップ1の出力信号をコンピュータ10に無線送信できる形態にするために必要な処理をUSB制御コントローラBOX2bとUSB受信機2cで行う。このUSB制御コントローラBOX2bが備えていなければならない機能要素は、3チャンネルアンプ、AD変換器に加え、バッテリーと無線(Bluetooth)送信器である。無線の種類としては近接したデバイス(機器)とデバイスの間を2.4GHzの周波数帯を用いて電波での情報のやりとりを行う、Bluetoothが推奨である。コンピュータ10のUSB端子にはUSB受信機2cが差し込まれ、コンピュータ10の無線信号の受信を可能とする。体の特定部位に取り付ける三軸加速度センサー1はその部位の3軸方向成分に分離された加速度を検出し、USB制御コントローラBOX2bに送信する。信号を受けたUSB制御コントローラBOX2b内では3軸方向成分毎に信号を増幅し、アナログ信号をデジタル信号に変換して無線(Bluetooth)発信器から無線搬送波に変調させて無線発信する。コンピュータ10はUSB端子に接続されたUSB受信機2cで無線信号を受信してデータ信号を復調しコンピュータ10に入力する。計測信号を受けたコンピュータ10はプログラムに従い演算部3において1回積分されてその部位の速度情報を得、更に積分されて変位量を得る。この得られた情報は記憶部4のデータ記憶領域に蓄積される。続いて前記プログラムによって特定される比較情報を記憶部4のデータ記憶領域に蓄積されている比較情報データベースから読み出し、当該検出データと対比して表示部6に表示させる。この一連の動作がリアルタイムで実行される。この形態はコンピュータ10がUSB制御コントローラBOX2bと有線接続する必要が無く、被検者はUSBコードによる制限を受けることが無く、より自然な形で検査が行える利点がある。ただし、三次元加速度センサーチップ1とUSB制御コントローラBOX2bが必要とする電源をコンピュータ10から供給することができないので、USB制御コントローラBOX2b内にバッテリーを備える必要がある。
【0017】
図2のCは三次元加速度センサーチップ1が出力する検出信号を直接有線接続されたUSB制御コントローラBOX2bに送信すると共に、必要なデータ処理を施したのち検出データをこのUSB制御コントローラBOX2b内に一旦記憶蓄積しておくデータロガー方式のオフライン実施形態を示したものである。この形態では三次元加速度センサーチップ1の出力信号をUSB制御コントローラBOX2b内に一旦記憶蓄積しておくと共にコンピュータ10に入力できる形態にするために必要な処理をリストバンド型USB制御コントローラBOX2bで行う。このUSB制御コントローラBOX2bが備えていなければならない機能要素は、3チャンネルアンプ、AD変換器、USBドライバーに加え、バッテリーと、演算機能を果たしデータをメモリに蓄積/読み出しするためのCPUとメモリである。このUSB制御コントローラBOX2bは計測信号を蓄積した状態でコンピュータ10のある場所に運ばれ、その出力端子とコンピュータ10のUSB端子間がUSBコードで接続される。データ信号を受けたコンピュータ10はプログラムに従いこの受信した情報を記憶部4のデータ記憶領域に蓄積すると共に、前記プログラムによって特定される比較情報を記憶部4のデータ記憶領域に蓄積されている比較情報データベースから読み出し、当該検出データと対比して表示部6に表示させる。この一連の動作がリアルタイムで実行される。上記の例ではUSB制御コントローラBOX2bで必要なデータ処理を施したのち検出データをこのUSB制御コントローラBOX2b内に一旦記憶蓄積しておく形態を示したが、検出した加速度データを積分処理することなく単に加速度データとして記憶蓄積しておき、コンピュータ10の中で積分して速度情報と変位情報を得るような形態であってもよい。この形態は検査時にコンピューター10の存在が必須ではないので、試験を行う者が出先にコンピューター10を持参する必要が無く、帰ってから自室のコンピュータでデータ処理と結果表示を行えばよいので、出張検査に最適である。また、この形態でも三次元加速度センサーチップ1とUSB制御コントローラBOX2bが必要とする電源をコンピュータ10から供給することができないので、USB制御コントローラBOX2b内にバッテリーを備える必要がある。
以上の説明では図2に示した3つの実施形態は1つの三次元加速度センサーチップ1をUSB制御コントローラBOX2bに有線接続するものとして示したが、体の複数箇所にセンサーを取り付ける場合には複数チャンネルの入力端子が配備されたされたUSB制御コントローラBOX2bが用いられる。従って、その場合でも被検者が装着しなければならないUSB制御コントローラBOX2bは1つである。
【0018】
図3に示す形態は、もっともシンプルな本発明の実施形態である。三次元加速度センサーチップ1が出力する検出信号を3チャンネルアンプ2aに有線接続し、該3チャンネルアンプ2aの出力端子とコンピュータ10のUSB端子に接続されるAD変換ボード2d間を有線接続してリアルタイムで検査とその結果表示を行う形態を示したものである。この形態では三次元加速度センサーチップ1の出力信号を該3チャンネルアンプ2aで増幅すると共に、コンピュータ10で扱える形態にするために必要な処理をAD変換ボード2dで行う。このAD変換ボード2dが備えていなければならない機能要素は、USBドライバーとAD変換器である。体の特定部位に取り付ける三軸加速度センサー1はその部位の3軸方向成分に分離された加速度を検出し、3チャンネルアンプ2aに送信する。信号を受けた3チャンネルアンプ2aは3軸方向成分毎に信号を増幅して、AD変換ボード2dに送る。信号を受信したAD変換ボード2dはアナログ信号をデジタル信号に変換し、更にコンピュータ10のUSB端子で受信可能な形態に信号を変換してコンピュータ10に出力する。計測信号を受けたコンピュータ10はプログラムに従い演算部3において1回積分されてその部位の速度情報を得、更に積分されて変位量を得る。この得られた情報は記憶部4のデータ記憶領域に蓄積される。続いて前記プログラムによって特定される比較情報を記憶部4のデータ記憶領域に蓄積されている比較情報データベースから読み出し、当該検出データと対比して表示部6に表示させる。この一連の動作がリアルタイムで実行される。被検者に安定した状態で装着させる必要があるものは、三軸加速度センサー1のみとすることができる。ただし、この形態において体の複数箇所にセンサーを取り付ける場合には複数の信号線を3チャンネルアンプ2aと接続させて試験を行うことは被検者に負担がかかるので、この3チャンネルアンプ2aも体に装着する形態が好ましい。その場合、3チャンネルアンプ2aの入力端にはマルチプレクサを配置して信号ラインの多チャンネル切替をすれば1つの3チャンネルアンプ2aを共通使用することが可能である。
【実施例1】
【0019】
本発明の三次元加速度計を備えた健康状態診断システムを重心計として用いる実施例を示す。従来の重心計はプレートに3〜4つのひずみゲージ、または荷重センサーを一定間隔で設置し、それぞれのセンサー荷重比で2次元のx,y値として重心位置(Center Of Pressure:以下COPと略称する。)を求める計測装置である。それを、本発明のシステムを適用して重心計を実現させれば安価で簡易な三次元の重心計システムを実現させることが可能である。荷重センサーのかわりに本発明の三次元加速度センサーを使って三次元の加速度情報を得る。すなわち、人の体は頭部、胴部、左右の上肢、左右の下肢毎に異なる動きが可能な構造となっていることから、本発明の三次元加速度センサーを例えば、頭頂部、頸椎、上肢(肘)、下肢(膝)等の重心移動を検知するに適した体の部位に取り付ける。体のひねりを検知する場合には左右の肩部にも取り付けるとよい。取付は体の表面にチップ状のセンサー平面部を密着させた形態でテープ等で固定する。センサーの取り付け方向はバラバラとなるため、各センサーの三次元成分の地球座標変換を可能とするため、まず、検査を始める前に各センサーの初期方位を検出しておく。ここで地球座標とは水平面上に直交するx,y座標軸(好ましくは被検者の前後方向と左右方向)を、そして鉛直方向にz座標軸を設定したものをいう。体の重心位置変動を計測する場合には各センサーが取り付けられた部位の初期位置を前記の地球座標系で検出しておく。
【0020】
センサーが取り付けられた各部位の三次元加速度情報を2回積分して各部位の変位情報を算出する。サンプリング時間間隔で変位量が算出されるので、初期位置を原点として順次算出される変位量を重ねてゆけばサンプリング毎の瞬時位置が追跡できる。この情報は体の各部位毎に得ることができる。このようにして各部位の三次元位置情報が順次得られるので、これらの情報を総合することにより従来の重心計システムはプレート上における人体の状態を考慮しない総合のCOPを算出するだけであったが、本発明のシステムでは体の動きや重心位置の変化を三次元情報として割り出すことができる。また、各部位の揺れをz軸成分を除いて総合することで、従来の重心計が出力するCOPに相関係数が限りなく1に近い値も算出できる。この値を使えば従来装置で得た過去データとも対比して診断することも可能である。
【0021】
本発明の三次元加速度計を使ったシステムは総合のCOPのみならず、被験者の姿勢の状態(側湾症:若年性、背中、腰の曲がり:老人性)における各部位の揺れを計測することができる。従来の重心計システムでは患者の形態(側湾症:若年性、背中、腰の曲がり:老人性)を考慮せず一応にCOP値のみを診断材料に使っているが、三次元加速度計を使った本発明に係る重心計は患者の形態情報を得ることができるので、この姿勢の計測を加味して値を算出できることから、さらに詳細な診療が可能となる。
正しい姿勢は健康と直接結びついているので、診断材料として重要な事項であり、注意する必要があります。人の背骨は、重力に対抗して、重い頭を支え、身体を動かした時のショックを吸収するために、穏やかなS字を描いた構造になっています。理想的な姿勢を真横から見ると、重力線が「耳から肩−股関節−膝−くるぶし」を結んだ線を通っています。軽くあごを引き、背筋、膝をきちんと伸ばし、頭を上に引っ張られているようなイメージを持つことにより、正しい姿勢を作ることができる。この正しい姿勢は、脊柱起立筋に代表される抗重力筋群とインナーマッスルと呼ばれる大腰筋によって支えられている。 しかしながら、家事などの立ち仕事を長年続けたことで、背中に疲労が蓄積し、筋肉がひきつれを起こし老人性の背中、腰の曲がりを発症します。この症状は肩の奥にあるひきつれた筋肉を緩め、背中から腰の筋肉、靭帯を緩めていくことにより劇的改善されます。この患者さんに従来の重心計システムで検査を行った場合、治療前の測定では重心の揺れが大きく耳鼻科等で平衡機能等の評価に使われている診断基準では平衡機能に支障のない患者であるにもかかわらず、病的との判断がなされます。ところが上記の治療がなされた後は重心の位置は頸椎の真下に移動し、揺れ幅もばらつきが減少し安定する。その結果、従来の重心計システムで検査を行った場合正常と判断される。このようになんら、平衡機能障害の治療を施すことなく、病状が治癒したような誤った判断がなされてしまう。しかし本発明のかかる三次元加速度計を使った重心計システムを使えば、姿勢の変化を定量化できるとともに、治療の前と後で体の揺れをはかることで姿勢改善結果を数値として表現できるし、治療前の重心の揺れ平衡機能障害によるものではなく、単に老人性の背中、腰の曲がりが原因であったことを正しく診断することができる。
【実施例2】
【0022】
本発明の三次元加速度計を備えた健康状態診断システムを脳・神経系疾患の病状診断システム又は投薬処方若しくは機能回復訓練のための支援システムとして用いる実施例を示す。従来の脳・神経系疾患の病状診断システム又は投薬処方若しくは機能回復訓練のための支援システム(以下これをARTシステムと略称する。)はデジタイザー、タブレット、タッチパネル等の媒体にペンまたは指でモデル図形(予め用意された図形:直線、円、四角、サイン曲線...)をなぞるシステムであるが、本発明のARTシステムでは3軸加速度計を使い安価で簡易なシステムにすることができる。すなわち、指先に本発明に係る3軸加速度センサーを装着すればよく、イメージしたモデル図形を空間に描くといった形態でARTシステムとしての使い方が実施できる。従来のARTはモデル図形をなぞったときの二次元情報(x,y)しかないが、三次元加速度センサーを使った本発明に係るARTは(x,y,z)と3次元情報を得ることができる。空間にモデル図をなぞるには、空間認識とモデル図形の大きさや形状の記憶、記憶と認識を実現する高次脳機能を使ったフィードバック能力を必要とする。そのため、従来のARTでは得られなかった、複雑な認知機能の評価、訓練が可能となる。すなわち、従来のARTには無い、奥行のパラメータを得られることで、診断の幅が広がった。
【0023】
本発明に係るARTは紙面上でモニタ上のモデル図形をなぞることもできるため、従来のARTとしてもそのまま使用できる。したがって、従来のARTで得た過去データとの対比を簡単に行うことが可能である。
また、紙面上やモニタ上のモデル図形(犬、猫、円、四角、星といった図形)を見せるだけで、個人の任意イメージをいかに具現化できるかも検査できることから、いままでできなかったイメージする能力を定量化することで現時点で行われている投薬や訓練効果を見ることができる。また、イメージトレーニングも可能となる。
【0024】
本発明に係る三次元加速度計を備えた健康状態診断システムによれば、試験形態についても重体のようにプレート上に静止状態で起立したり坐ったりの姿勢をとることに限らず、平面歩行や、階段歩行、障害物を設置したコースを歩行したり、ベッド上で座ったり、ラジオ体操のような決まった運動動作を実行させたりといった多様な形態の中での体の動きを把握することが可能となるので、診断の範囲が広がり適正な健康状態を診断することができる。しかもセンサーと変換器そしてパソコンという構成で実現できるのでコンパクトな形態で安価に提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明に係る三次元加速度計を備えた健康状態診断システムによれば、身体の各部位の動きを容易に把握することができるので、健康状態診断の分野に限られず、スポーツ選手の体の動かし方、舞踊家や役者の動作を探求することにも容易に応用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 三次元加速度センサー 2 変換器
2a 3チャンネルアンプ 2b USB制御コントローラBOX
2c USB無線受信機 2d AD変換ボード
3 演算処理部 4 記憶部
5 入力手段 6 表示装置
10 パソコン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特開平7−250822号公報 「重心動揺計」 平成7年10月3日公開
【特許文献2】特開2002−369818号公報 「脳・神経系疾患の病状診断、投薬処方及び機能回復訓練のための支援システム」 平成14年12月24日公開
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】Proc. SPIE(国際光工学会), Vol. 6375, 63750B (2006);Online Publication Date: 12 October 2006,Conference Date:Tuesday 3 October 2006

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体の特定部位に取り付けられる三次元加速度センサーチップと、該三次元加速度センサーの検出値を三次元成分毎に積分することにより三次元の速度と位置の変化を算出する手段と、体の特定部位に対応した比較データを蓄積した記憶部と、算出した三次元の速度または位置の変化情報を前記比較データと対比させた結果を表示する手段とからなる三次元加速度計を備えた健康状態診断システム。
【請求項2】
頭頂部、頸椎、上肢、下肢を含む体の複数特定部位に取り付けられる三次元加速度センサーチップと、該三次元加速度センサーの検出値を三次元成分毎に二回積分することにより各部位についての三次元位置の変化を算出する手段と、該算出された各部位の三次元位置の変化情報から健康状態を解析する手段と、該解析結果を表示する手段とからなる三次元重心計システム。
【請求項3】
体の複数特定部位に対応した比較データを蓄積した記憶部と、前記算出された各部位の三次元位置の変化情報を前記比較データと対比させた結果を表示する手段を備えたものである請求項2に記載の三次元重心計システム。
【請求項4】
指先に取り付けられる三次元加速度センサーチップと、該三次元加速度センサーの検出値を三次元成分毎に積分することにより三次元の速度と位置の変化を算出する手段と、指先で描写するテストパターンと該テストパターンを描写した比較データを蓄積した記憶部と、算出した三次元の速度または位置の変化情報を前記比較データと対比させた結果を表示する手段とからなる三次元加速度計を備えた脳・神経系疾患の病状診断システム又は投薬処方若しくは機能回復訓練のための支援システム。
【請求項5】
体の特定部位に取り付けられる三次元加速度センサーチップは無線送信機能を備えた体に装着可能な制御ボックスに接続されると共に、パソコンにUSB受信機を接続し、前記制御ボックスから送信される無線信号を受信してデータ処理を実行させる請求項1乃至4のいずれかに記載の健康状態診断システム。
【請求項6】
比較データは健常者データ、各レベルの病者若しくは障害者データ、過去の自己データのいずれか又はこれらの組み合わせである請求項1,3,4,5のいずれかに記載の健康状態診断システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−178841(P2010−178841A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23760(P2009−23760)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(599091704)株式会社ユニメック (5)
【Fターム(参考)】