説明

三次元地形データ高精度化装置、三次元地形データ高精度化方法及びプログラム

【課題】立体写真から構築された三次元地形データにおける、水領域に発生したノイズを除去する。
【解決手段】任意の一つの水領域の範囲を指定する水領域指定部13と、三次元地形データの各部分の高さの分布特徴を表す特徴量を抽出する特徴抽出部14と、水領域内の特徴量と三次元地形データの各点の特徴量とを比較し、候補水領域と非水領域とに分割する分割部15と、候補水領域から水領域を検出する水領域検出部16と、検出した各水領域に隣接する周辺の非水領域の標高によって、水領域の補正平面を生成し、該補正平面で前記水領域検出部16の検出した水領域を置換する平面生成部17と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元地形データ高精度化装置、三次元地形データ高精度化方法及びプログラムに係り、更に詳しくは、立体写真から構築された三次元地形データにおいて、三次元情報演算のステレオマッチングミスのため水領域に発生したノイズに対して、前記ノイズを除去する三次元地形データ高精度化装置、三次元地形データ高精度化方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
異なる視点から撮影することにより得られた1組2枚の立体写真において、一方の写真中の各点に対して、他方の写真中に前記点と同じの地表点を表す対応点を捜索し、一方の写真の点と他方の写真の対応点の視差に基づいて、前記点の高さ情報を算出する処理を、各点に関して行うことで、三次元地形データを生成する手法がよく用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
対応点の捜索処理は、例えば面積相関法などを用いて、一方の写真中の点に対して、他方の写真中に前記点と周辺輝度分布や周辺色分布の相似度が一定程度に達したら、前記点の対応点と認める処理である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平8−16930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2枚の立体写真の一方の写真中の各点に対して、他方の写真中の対応点を探索し、一方の写真中の点と他方の写真中の対応点の視差に基づいて三次元地形データを生成する方法によれば、地表における現在の点の周辺範囲の空間的な輝度変化や彩色変化がある特徴点、例えば横断歩道白線の端に対して、例えば面積相関法などを用いることで、他方の写真中から対応点を正しく抽出することが可能となる。
【0006】
しかしながら、海、湖、沼、川などの水領域では、水面における特有のテクスチャがあるため、水面上の点に対してその対応点を正しく抽出できなくなる。
【0007】
その原因は、水領域の内部ではどこの局所範囲においても、空間的に輝度や彩色の変化パターンがほとんど同じであるので、例えば面積相関法を用いて、一方の写真中の点に対して、他方の写真中に、前記点と周辺輝度分布や周辺色分布の相似度が一定程度に達する点が一つ以上になることで、本当の対応点を正しく抽出することが保証できなくなるためである。
【0008】
そのため、その後に視差の計算と高さの算出にはミスが発生する。これは前記の三次元情報演算のステレオマッチングミスである。その結果、三次元地形データの水領域に高さのノイズが発生する。
【0009】
本発明は、立体写真から構築された三次元地形データにおいて、水領域に発生したノイズを除去し、三次元地形データの精度の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る三次元地形データ高精度化装置は、
立体写真から構築された三次元地形データにおいて、三次元情報演算のステレオマッチングミスのため水領域に発生したノイズを除去する三次元地形データ高精度化装置であって、
入力された前記三次元地形データに水領域の有無を判定する判定手段と、
任意の一つの水領域の範囲を指定する水領域指定手段と、
前記三次元地形データの各部分の高さの分布特徴を表す特徴量を抽出する特徴抽出手段と、
前記特徴抽出手段を用い、前記指定された任意の一つの水領域内の特徴量を求め、その水領域内の特徴量を水領域の判定標準値として扱い、前記三次元地形データにおける各点の特徴量と前記判定標準値を比較し、その差が所定値以下の場合にその点が候補水領域に属していると判定し、逆の場合に非水領域に属していると判定するという処理で、上記三次元地形データの各点を候補水領域と非水領域とに分割する分割手段と、
前記分割手段の結果に基づいて前記候補水領域の中の一定の面積を持つ連結領域を水領域として検出する水領域検出手段と、
前記水領域検出手段の検出した各水領域に隣接する周辺の非水領域の標高によって、該水領域検出手段の検出した水領域の境界線と接合する補正平面を生成し、該補正平面で前記水領域検出手段の検出した水領域を置換する平面生成手段と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の第2の観点に係る三次元地形データ高精度化方法は、
立体写真から構築された三次元地形データにおいて、三次元情報演算のステレオマッチングミスのため、水領域に発生したノイズを除去する三次元地形データ高精度化方法であって、
入力された三次元地形データに水領域の有無を判定する判定工程と、
任意の一つの水領域の範囲を指定する水領域指定工程と、
前記三次元地形データの各部分の高さの分布特徴を表す特徴量を抽出する特徴量抽出工程と、
前記特徴抽出手段を用い、前記指定された任意の一つの水領域内の特徴量を計算し、その特徴量は水領域の判定標準値として扱い、前記三次元地形データにおける各点の特徴量と前記判定標準値を比較し、その差が所定値以下の場合にその点が候補水領域に属していると判定し、逆の場合に非水領域に属していると判定するという処理で、上記三次元地形データの各点を候補水領域と非水領域とに分割する分割工程と、
前記分割手段の結果によって候補水領域の中の一定の面積を持つ連結領域を水領域として検出する水領域検出工程と、
前記水領域検出工程で検出した各水領域に隣接する周辺の非水領域の標高によって、該水領域検出工程で検出した水領域の境界線と接合する補正平面を生成し、該補正平面で前記水領域検出工程で検出した水領域を置換する平面生成工程と、
を含むことを特徴とする。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の第3の観点に係るプログラムは、
コンピュータを、
立体写真から構築された三次元地形データにおいて、三次元情報演算のステレオマッチングミスのため水領域に発生したノイズを除去するために、
入力された前記三次元地形データに水領域の有無を判定する判定手段と、
任意の一つの水領域の範囲を指定する水領域指定手段と、
前記三次元地形データの各部分の高さの分布特徴を表す特徴量を抽出する特徴抽出手段と、
前記指定された任意の一つの水領域内の前記特徴量を求め、その水領域内の特徴量を水領域の判定標準値として扱い、前記三次元地形データにおける各点の特徴量と前記判定標準値を比較し、その差が所定値以下の場合にその点が候補水領域に属していると判定し、逆の場合に非水領域に属していると判定するという処理で、上記三次元地形データの各点を候補水領域と非水領域とに分割する分割手段と、
前記候補水領域の中の一定の面積を持つ連結領域を水領域として検出する水領域検出手段と、
前記検出した各水領域に隣接する周辺の非水領域の標高によって、該検出した水領域の境界線と接合する補正平面を生成し、該補正平面で前記検出した水領域を置換する平面生成手段と、
として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、立体写真から構築された三次元地形データにおける、ノイズの多く含まれる水領域を抽出し、代わりにスムーズな平面で表現することで、高精度の三次元地形データを生成することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る三次元地形データ高精度化装置を示すブロック図である。
【図2】三次元地形データの例を示す図である。
【図3】(a)及び(b)は、水領域の範囲を指定する方法を示す図である。
【図4】分割部と水領域検出部の処理例を説明するものであり、(a)は候補水領域に属している点の連結領域を抽出した後の結果を示し、(b)は(a)で示された各候補水領域における、一定面積の連結領域で内部の小さい非水領域を除去した後の結果を示す図である。
【図5】水領域の境界線の拡張を示す説明図である。
【図6】三次元地形データ高精度化装置の動作を説明するフローチャートである。
【図7】三次元地形データ高精度化装置をコンピュータで実現する場合の、物理的な構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る三次元地形データ高精度化装置10を示すブロック図である。
【0016】
この三次元地形データ高精度化装置10は、データ入力部11と、判定部12と、水領域指定部13と、特徴抽出部14と、分割部15と、水領域検出部16と、平面生成部17と、ディスプレイ等の表示部18と、マウスやキーボード等の指示入力部19とを、備えている。
【0017】
データ入力部11には、外部装置から三次元地形データが入力される。この三次元地形データは、例えば立体航空写真からステレオマッチング手法を用いて、三次元地形データを生成するソフトウェアからの出力データである。
【0018】
図2は、三次元地形データの例を示す図である。
図2の三次元地形データには、複数の独立した水領域41と、他には山間部42と、ビルと家屋などの建築物43等が含まれている。データ入力部11に入力された三次元地形データは、表示部18に表示される。
【0019】
表示部18に三次元地形データを表示することにより、三次元地形データに水領域41が含まれるか否かをユーザーが認識できる。水領域41が三次元地形データに含まれる場合、ユーザーが指示入力部19を用いて水領域41が三次元地形データに含まれることを入力する。これにより、判定部12は、三次元地形データの中に水領域41があると判定する。尚、ユーザーが水領域41の有無を入力する以外に、三次元地形データの特徴から、三次元地形データの中に水領域41が含まれることを判定してもよい。逆に、水領域41が三次元地形データに含まれない場合、ユーザーが指示入力部19を用いて水領域41が三次元地形データに含まれないことを入力する。これにより、判定部12は、三次元地形データの中に水領域41がないと判定する。
【0020】
また、ユーザーは、指示入力部19を用いて、表示部18に表示された三次元地形データに対して任意の一つの水領域41の範囲を指定する。水領域指定部13は、データ入力部11から入力された三次元地形データに対して、ユーザーの指定した水領域41の範囲を指定する。
なお、水領域指定部13には、任意の一つの水領域41に対して、図3(a)に示されるように、水領域41の境界線に沿い、水領域41の内部の全域を指定してもよいし、図3(b)に示されるように、この水領域41の内部の部分領域を指定してもよい。
特徴抽出部14は、水領域指定部13で指定された水領域41の範囲内のデータに対して、特徴量を抽出し、抽出された特徴量を分割部15に送り、分割部15がその特徴量に基づいて候補水領域と非水領域とに分割する。
【0021】
特徴抽出部14は、三次元地形データの各部分の高さの分布特徴を表す特徴量を抽出する。三次元地形データにおける、ノイズがある水領域41には他のスムーズな表面と異なるテクスチャパターンがあるので、水領域41の高さのテクスチャパターンと他のスムーズな表面を区別できる特徴量を抽出する。例えば、時間―周波数の特性及び局所の方向性がうまく取得できるCurvelet変換の係数に基づき、いくつかの統計的な数値を並べた特徴ベクトルを特徴量として抽出する。
【0022】
分割部15は、特徴抽出部14の抽出した特徴量ベクトルを用いて、三次元地形データを候補水領域と非水領域の2つの部分に分割する。分割部15は、まずユーザーが水領域指定部13に指定した任意の一つの水領域41の、ステレオマッチングミスのため発生したノイズを含んでいる部分の高さの分布特徴を表す特徴量を抽出する。
次に、分割部15は、三次元地形データ中の各点の特徴ベクトルとユーザーから指定された水領域41の特徴ベクトルを比較し、2つのベクトルの距離が一定程度以下の場合に候補水領域に属していると判定し、逆の場合に非水領域に属していると判定し、三次元地形データの分割を行う。
【0023】
水領域検出部16は、分割部15で抽出した候補水領域に属している点から一定面積の連結領域を抽出し水領域として認定する。水領域検出部16は、まず候補水領域に属している各点を連結した連結領域を抽出する。抽出した連結領域の中で、面積が一定以上の領域を候補水領域とする。そして、候補水領域の中に、面積の一定割合以下の、例えば20分の1の以下の、小さい非水領域が含まれる場合、候補水領域内の特徴量には一定のノイズの影響があると考え、小さい非水領域を除去する。つまり、小さい非水領域を候補水領域に変換する。
【0024】
以上の処理を通して、特徴量のノイズの影響を削減し、より完全的な領域を抽出することができる。そして、処理後の各候補水領域が水領域として認定される。
【0025】
図4は、分割部15と水領域検出部16の処理例を示す説明図である。
図2の三次元地形データに対して、分割部15が分割を行い、水領域検出部16が連結領域を抽出すると、図4(a)のように、4つの領域41(a),領域41(b),領域41(c),領域41(d)が得られる。得られた領域41(a)〜41(d)のうちの、一定以上の面積を持つ領域を抽出すると、3つの領域51(a)〜51(c)が候補水領域として抽出される。
【0026】
3つの領域51(a)〜51(c)から小さい非水領域を除去すると、図4(b)のように、非水領域を含まない領域61(a)〜61(c)が水領域として抽出される。
【0027】
平面生成部17は、水領域検出部16で水領域として抽出した領域61(a)〜61(c)の周りの高さを分析し、正確の高さを持つスムーズな平面を補正水表面として生成し、領域61(a)〜61(c)の範囲内に補正水表面を埋めるという処理を行う。
【0028】
平面生成部17は、まず、水領域検出部16で検出した水領域の領域61(a)〜61(c)の境界線を抽出する。水領域である領域61(a)〜61(c)の内部には常にマッチングエラーのせいでノイズが発生すると考え、領域61(a)〜61(c)の境界線にもノイズが発生する可能性があると考える。そのため、境界線における各点の高さを分析するのではなく、境界線の外側に存在する一定範囲の非水領域の高さに基づき、補正水表面の係数を求める。具体的には、各境界線の各点を水領域の外側へ所定距離、拡張する処理を複数回行う。
【0029】
各点の拡張方向はその点における境界線の法線の方向と平行である。拡張の程度は、ステップ単位に扱え、例えば、1回の拡張で3ピクセル単位に拡張する。境界線の各点を拡張する毎に、各点に対応する新しい位置の高さを記録し、所定回数に拡張した後、一連の高さの数値を取得する。その一連の数値の平均値は元の境界線点の高さとして扱える。
【0030】
上述の方法で、領域61(a)〜61(c)の周りの非水領域の高さの分析から得られる境界線の各点の高さを、三次元空間の平面方程式AX+BY+CZ=Dに代入し、最小二乗法で三次元空間の平面方程式平面の四つの係数を取得する。つまり、三次元空間の平面を表す方程式の平面係数A,B,C,Dの値を算出する。
【0031】
そして、平面係数に基づき平面を生成し、境界線の内部の範囲に補正水表面で埋めることを行う。一例として、図5示されるように、水領域の境界線である曲線Curve(a)は、第1回の拡張の後の位置は曲線Curve(a1)となり、第2回の拡張の後の位置は曲線Curve(a2)となり、第3回の拡張の後の位置は曲線Curve(a3)となる。曲線Curve(a)での点Pは、第1回の拡張の後に曲線Curve(a1)のP1の位置となり、第2回の拡張の後に曲線Curve(a2)のP2の位置となり、第3回の拡張の後に曲線Curve(a3)でのP3の位置となる。3次元の直交座標(X,Y,Z)の表記で各点の座標を表すと、その中のZは各点の高さである。平面生成部17は、境界線でノイズの影響があると考え、平面生成のため、点Pでの高さを本来の値Z(P)の代りに、Z(P1),Z(P2),Z(P3)の平均値を使う。
【0032】
なお、厳密に考えると、水表面には波などがあるので平面ではないが、三次元地形データに水表面が平面としてモデル化されても地形分析の応用に対して影響がないと考えられる。
【0033】
図6は、三次元地形データ高精度化装置10の動作を説明するフローチャートである。この図6を参照しつつ、三次元地形データ高精度化装置10の動作について説明する。
【0034】
三次元地形データ高精度化装置10は、データ入力部11に三次元地形データが入力されると、図6のフローチャートに示される一連の処理を開始する。
最初のステップS101では、入力された三次元地形データには最低でも一つの水領域があるか否か例えばユーザーが判断する。そして、最低でも一つの水領域がある場合には(ステップS101:YES)、ステップS102の処理が実行され、水領域が一つもない場合には(ステップS101:NO)、何の処理もしないで終了する。
【0035】
ステップS101に続くステップS102では、入力された三次元地形データ中に任意の一つの水領域がユーザーによって、指定される。
【0036】
ステップS102に続くステップS103では、特徴抽出部14が、データ入力部11に入力された三次元地形データの各点に周りの高さ分布の特徴を表す特徴量のベクトルを抽出する。
【0037】
ステップS103に続くステップS104では、分割部15が、ステップS102で抽出された特徴量に基づき、三次元地形データにおける各点の特徴量と指定された水領域の特徴量と比べ、候補水領域に属しているか非水領域に属しているかと判別し、三次元地形データを候補水領域と非水領域に分割する。
【0038】
ステップS104に続くステップS105では、水領域検出部16が、候補水領域に属している点を連結し、一定面積以上の連結領域を水領域として検出する。
【0039】
ステップS105の次のステップS106では、平面生成部17が、各水領域の境界線を水領域の外側に複数回に拡張し、境界線の各点から、毎回の拡張で着いた新しい位置での高さを求め、その平均値を元の境界線の点の高さとして使い、水領域の表面を表す補正平面を作成し、補正平面で境界線の内部領域を埋める。
【0040】
以上説明したように、本実施形態では、高さの分布特徴を表す特徴量に基づいて、三次元地形データを候補水領域と非水領域に分割する。そして、一定面積以上の連結領域である候補水領域を水領域として抽出し、水領域の境界線を外側へ拡張し、水領域の周辺の高さに基づいて水領域の補正平面を生成する。これにより、水領域の内部は、スムーズな平面で表すことができる。したがって、三次元地形データの精度を向上することが出来る。
【0041】
なお、本実施形態では、図2又は図4を参照すると分かるように、三次元地形データの範囲内に、3つの水領域があることとしたが、これに限らず、実際の地形状況によって、1つ以上の水領域がある場合でもよいし、1つの水領域もない場合でもよい。
【0042】
また、本実施形態では、水領域の境界線を外側に拡張したとき、ピクセル単位に拡張した後の位置で水領域の周辺の高さ情報を取り、その後ピクセルの高さ情報から水領域の補正平面の係数を計算することに設定したが、これに限らず、境界線で一定間隔のサンプリング点を設定してもよい。この場合にも、精度を保証する上に、一定間隔のサンプリング点を使うことにより、処理速度を向上することが出来る。このため、最終的に、水領域の補正平面の係数を取得し、補正平面を生成することが可能となる。
【0043】
また、本実施形態では、水領域の境界線を外側に拡張するとき、拡張程度はステップ単位に扱え、1回の拡張で3ピクセル単位に拡張することとしたが、これに限らず、三次元地形データの解像度が非常に高く、隣り合うピクセル間の実際距離は非常に短く、例えば2cm、かつ周りの三次元データの変化があまり激しくない場合には、1回の拡張に4ピクセル単位以上に拡張するようにしても良い。
【0044】
また、例えば、三次元地形データの解像度が低く、隣り合うピクセル間の実際距離が遠く、1ピクセル単位の拡張が幅広い範囲にまたがる場合や、水領域の周りに高さデータの変化が激しい場合などには、1回の拡張に2ピクセル単位以下で拡張するようにしても良い。
【0045】
また、本実施形態では、図5を参照すると分かるように、水領域の境界線が外側に拡張するとき、境界線を外側に3回拡張し、拡張の後の位置で曲線Curve(a1)〜曲線Curve(a3)から境界線での各点の高さを算出することとしたが、これに限らず、三次元地形データの解像度が非常に高く、隣り合うピクセル間の実際距離は非常に短く、例えば2cm程度であり、かつ周りの三次元データの変化があまり激しくない場合には、4回以上の境界線拡張に設定しても良い。また、例えば、三次元地形データの解像度が低く、隣り合うピクセル間の実際距離は遠く、1ピクセル単位の拡張でも幅広い範囲にまたがる場合や、水領域の周りに高さデータの変化が激しい場合などには、2回以下の境界線拡張にしても良い。
【0046】
また、本実施形態では、三次元地形データが1組2枚の異なる視点から撮像された立体航空写真からステレオマッチングを行った結果データとして説明したが、これに限らず、ステレオマッチング用の立体視写真は、衛星写真がデジタル化されることにより形成された画像であってもよい。
【0047】
また、本実施形態では、Curvelet変換の係数に基づき生成した特徴ベクトルで三次元地形データの各部分の高さの分布特徴を表現したが、これに限らず、他の方法、例えば、Wavelet変換の係数を用いてもよい。
【0048】
また、本実施形態の三次元地形データ高精度化装置10は、汎用のコンピュータを用いても実現できる。
図7は、三次元地形データ高精度化装置10をコンピュータで実現する場合の、物理的な構成の一例を示すブロック図である。
コンピュータで実現された三次元地形データ高精度化装置10は、図7に示されるように、制御部21と、入出力部22と、表示部23と、操作部24と、主記憶部25と、外部記憶部26とを備える。
【0049】
入出力部22、表示部23、操作部24、主記憶部25及び外部記憶部26は、いずれも内部バス20を介して制御部21に接続されている。
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)等から構成され、外部記憶部26に記憶されている制御プログラム30に従って、三次元地形データ高精度化処理を実行する。
【0050】
入出力部22は、無線送受信機、無線モデムまたは網終端装置、及びそれらと接続するシリアル・インターフェース又はLAN(Local Area Network)インターフェース等から構成される。入出力部22を介して、三次元地形データを受信し、また高精度化した結果を送信できる。
【0051】
表示部23は、CRT(Cathode Ray Tube)またはLCD(Liquid Crystal Display)等から構成され、入力三次元地形データ、水領域の範囲や三次元地形データ高精度化結果を表示する。
【0052】
操作部24はキーボード及びマウスなどのポインティングデバイス等と、キーボード及びポインティングデバイス等を内部バス20に接続するインターフェース装置から構成されている。操作部24を介して、三次元地形データの入力、送受信などの指示、表示する処理結果の指示などが入力され、制御部21に供給される。
【0053】
主記憶部25はRAM(Random Access Memory)等から構成され、外部記憶部26に記憶されている制御プログラム30をロードし、制御部21に提供するとともに、制御部21の作業領域として用いられる。
【0054】
外部記憶部26は、フラッシュメモリ、ハードディスク、DVD−RAM(Digital Versatile Disk Random Access Memory)等の不揮発性メモリから構成され、前記の処理を制御部21に行わせるための制御プログラム30を予め記憶し、また、制御部21の指示に従って、この制御プログラム30が記憶するデータを制御部21に供給し、制御部21から供給されたデータを記憶する。
【0055】
図1に示される三次元地形データ高精度化装置10の、特徴抽出部14、分割部15、水領域検出部16及び平面生成部17の処理は、制御プログラム30が、制御部21、入出力部22、表示部23、操作部24、主記憶部25及び外部記憶部26等を資源として用いて処理することによって実行される。
その他、前記ハードウェア構成やフローチャートは一例であり、任意に変更及び修正が可能である。
【0056】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限定されない。
【0057】
(付記1)
立体写真から構築された三次元地形データにおいて、三次元情報演算のステレオマッチングミスのため水領域に発生したノイズを除去する三次元地形データ高精度化装置であって、
入力された前記三次元地形データに水領域の有無を判定する判定手段と、
任意の一つの水領域の範囲を指定する水領域指定手段と、
前記三次元地形データの各部分の高さの分布特徴を表す特徴量を抽出する特徴抽出手段と、
前記特徴抽出手段を用い、前記指定された任意の一つの水領域内の特徴量を求め、その水領域内の特徴量を水領域の判定標準値として扱い、前記三次元地形データにおける各点の特徴量と前記判定標準値を比較し、その差が所定値以下の場合にその点が候補水領域に属していると判定し、逆の場合に非水領域に属していると判定するという処理で、上記三次元地形データの各点を候補水領域と非水領域とに分割する分割手段と、
前記分割手段の結果に基づいて前記候補水領域の中の一定の面積を持つ連結領域を水領域として検出する水領域検出手段と、
前記水領域検出手段の検出した各水領域に隣接する周辺の非水領域の標高によって、該水領域検出手段の検出した水領域の境界線と接合する補正平面を生成し、該補正平面で前記水領域検出手段の検出した水領域を置換する平面生成手段と、
を備えることを特徴とする三次元地形データ高精度化装置。
【0058】
(付記2)
前記平面生成手段は、前記水領域検出手段の検出した各水領域の境界線を元の位置から該水領域の外側へ拡張し、該拡張した位置の非水領域の高さに基づき前記水領域の補正平面を生成することを特徴とする付記1に記載の三次元地形データ高精度化装置。
【0059】
(付記3)
立体写真から構築された三次元地形データにおいて、三次元情報演算のステレオマッチングミスのため、水領域に発生したノイズを除去する三次元地形データ高精度化方法であって、
入力された三次元地形データに水領域の有無を判定する判定工程と、
任意の一つの水領域の範囲を指定する水領域指定工程と、
前記三次元地形データの各部分の高さの分布特徴を表す特徴量を抽出する特徴量抽出工程と、
前記特徴抽出手段を用い、前記指定された任意の一つの水領域内の特徴量を計算し、その特徴量は水領域の判定標準値として扱い、前記三次元地形データにおける各点の特徴量と前記判定標準値を比較し、その差が所定値以下の場合にその点が候補水領域に属していると判定し、逆の場合に非水領域に属していると判定するという処理で、上記三次元地形データの各点を候補水領域と非水領域とに分割する分割工程と、
前記分割手段の結果によって候補水領域の中の一定の面積を持つ連結領域を水領域として検出する水領域検出工程と、
前記水領域検出工程で検出した各水領域に隣接する周辺の非水領域の標高によって、該水領域検出工程で検出した水領域の境界線と接合する補正平面を生成し、該補正平面で前記水領域検出工程で検出した水領域を置換する平面生成工程と、
を含むことを特徴とする三次元地形データ高精度化方法。
【0060】
(付記4)
前記平面生成工程では、前記水領域検出工程で検出した各水領域の境界線を元の位置から該水領域の外側へ拡張し、該拡張した位置の非水領域の高さに基づき前記水領域の補正平面を生成することを特徴とする付記3に記載の三次元地形データ高精度化方法。
【0061】
(付記5)
コンピュータを、
立体写真から構築された三次元地形データにおいて、三次元情報演算のステレオマッチングミスのため水領域に発生したノイズを除去するために、
入力された前記三次元地形データに水領域の有無を判定する判定手段と、
任意の一つの水領域の範囲を指定する水領域指定手段と、
前記三次元地形データの各部分の高さの分布特徴を表す特徴量を抽出する特徴抽出手段と、
前記指定された任意の一つの水領域内の前記特徴量を求め、その水領域内の特徴量を水領域の判定標準値として扱い、前記三次元地形データにおける各点の特徴量と前記判定標準値を比較し、その差が所定値以下の場合にその点が候補水領域に属していると判定し、逆の場合に非水領域に属していると判定するという処理で、上記三次元地形データの各点を候補水領域と非水領域とに分割する分割手段と、
前記候補水領域の中の一定の面積を持つ連結領域を水領域として検出する水領域検出手段と、
前記検出した各水領域に隣接する周辺の非水領域の標高によって、該検出した水領域の境界線と接合する補正平面を生成し、該補正平面で前記検出した水領域を置換する平面生成手段と、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【0062】
(付記6)
コンピュータを、前記平面生成手段として機能させる際に、
前記検出した各水領域の境界線を元の位置から該水領域の外側へ拡張し、該拡張した位置の非水領域の高さに基づき前記水領域の補正平面を生成させることを特徴とする付記5に記載のプログラム。
【符号の説明】
【0063】
10 三次元地形データ高精度化装置
11 データ入力部
12 判定部
13 水領域指定部
14 特徴抽出部
15 分割部
16 水領域検出部
17 平面生成部
18 表示部
19 指示入力部
20 内部バス
21 制御部
22 入出力部
23 表示部
24 操作部
25 主記憶部
26 外部記憶部
30 制御プログラム
41,41(a)〜41(d) 水領域
42 山間部
43 建築物
51(a)〜51(c) 候補水領域
61(a)〜61(c) 水領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体写真から構築された三次元地形データにおいて、三次元情報演算のステレオマッチングミスのため水領域に発生したノイズを除去する三次元地形データ高精度化装置であって、
入力された前記三次元地形データに水領域の有無を判定する判定手段と、
任意の一つの水領域の範囲を指定する水領域指定手段と、
前記三次元地形データの各部分の高さの分布特徴を表す特徴量を抽出する特徴抽出手段と、
前記特徴抽出手段を用い、前記指定された任意の一つの水領域内の特徴量を求め、その水領域内の特徴量を水領域の判定標準値として扱い、前記三次元地形データにおける各点の特徴量と前記判定標準値を比較し、その差が所定値以下の場合にその点が候補水領域に属していると判定し、逆の場合に非水領域に属していると判定するという処理で、上記三次元地形データの各点を候補水領域と非水領域とに分割する分割手段と、
前記分割手段の結果に基づいて前記候補水領域の中の一定の面積を持つ連結領域を水領域として検出する水領域検出手段と、
前記水領域検出手段の検出した各水領域に隣接する周辺の非水領域の標高によって、該水領域検出手段の検出した水領域の境界線と接合する補正平面を生成し、該補正平面で前記水領域検出手段の検出した水領域を置換する平面生成手段と、
を備えることを特徴とする三次元地形データ高精度化装置。
【請求項2】
前記平面生成手段は、前記水領域検出手段の検出した各水領域の境界線を元の位置から該水領域の外側へ拡張し、該拡張した位置の非水領域の高さに基づき前記水領域の補正平面を生成することを特徴とする請求項1に記載の三次元地形データ高精度化装置。
【請求項3】
立体写真から構築された三次元地形データにおいて、三次元情報演算のステレオマッチングミスのため、水領域に発生したノイズを除去する三次元地形データ高精度化方法であって、
入力された三次元地形データに水領域の有無を判定する判定工程と、
任意の一つの水領域の範囲を指定する水領域指定工程と、
前記三次元地形データの各部分の高さの分布特徴を表す特徴量を抽出する特徴量抽出工程と、
前記特徴抽出手段を用い、前記指定された任意の一つの水領域内の特徴量を計算し、その特徴量は水領域の判定標準値として扱い、前記三次元地形データにおける各点の特徴量と前記判定標準値を比較し、その差が所定値以下の場合にその点が候補水領域に属していると判定し、逆の場合に非水領域に属していると判定するという処理で、上記三次元地形データの各点を候補水領域と非水領域とに分割する分割工程と、
前記分割手段の結果によって候補水領域の中の一定の面積を持つ連結領域を水領域として検出する水領域検出工程と、
前記水領域検出工程で検出した各水領域に隣接する周辺の非水領域の標高によって、該水領域検出工程で検出した水領域の境界線と接合する補正平面を生成し、該補正平面で前記水領域検出工程で検出した水領域を置換する平面生成工程と、
を含むことを特徴とする三次元地形データ高精度化方法。
【請求項4】
前記平面生成工程では、前記水領域検出工程で検出した各水領域の境界線を元の位置から該水領域の外側へ拡張し、該拡張した位置の非水領域の高さに基づき前記水領域の補正平面を生成することを特徴とする請求項3に記載の三次元地形データ高精度化方法。
【請求項5】
コンピュータを、
立体写真から構築された三次元地形データにおいて、三次元情報演算のステレオマッチングミスのため水領域に発生したノイズを除去するために、
入力された前記三次元地形データに水領域の有無を判定する判定手段と、
任意の一つの水領域の範囲を指定する水領域指定手段と、
前記三次元地形データの各部分の高さの分布特徴を表す特徴量を抽出する特徴抽出手段と、
前記指定された任意の一つの水領域内の前記特徴量を求め、その水領域内の特徴量を水領域の判定標準値として扱い、前記三次元地形データにおける各点の特徴量と前記判定標準値を比較し、その差が所定値以下の場合にその点が候補水領域に属していると判定し、逆の場合に非水領域に属していると判定するという処理で、上記三次元地形データの各点を候補水領域と非水領域とに分割する分割手段と、
前記候補水領域の中の一定の面積を持つ連結領域を水領域として検出する水領域検出手段と、
前記検出した各水領域に隣接する周辺の非水領域の標高によって、該検出した水領域の境界線と接合する補正平面を生成し、該補正平面で前記検出した水領域を置換する平面生成手段と、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項6】
コンピュータを、前記平面生成手段として機能させる際に、
前記検出した各水領域の境界線を元の位置から該水領域の外側へ拡張し、該拡張した位置の非水領域の高さに基づき前記水領域の補正平面を生成させることを特徴とする請求項5に記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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