説明

三次元映像表示装置および視差バリア形成位置制御方法

【課題】簡易に二次元画像と三次元画像との表示を切り替えることができる三次元映像表示装置を提供する。
【解決手段】映像データと音声データとを有するコンテンツを再生する。ここではコンテンツとして二次元映像と三次元映像とが格納されているものとする。コンテンツの最初が二次元映像であれば、それが再生される(S11〜S12)。コンテンツが二次元映像から三次元映像に切替るときに、音声信号に含まれる切替信号が出力され、それが検出されると(S13でYES)、ディスプレイ上に液晶シャッタによって三次元映像を表示するための視差バリアが形成されて、三次元映像が再生される(S14)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は三次元映像表示装置および視差バリア形成位置制御方法に関し、特に、2次元画像と3次元画像とを表示できる三次元映像表示装置および視差バリア形成位置制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特殊な眼鏡を用いて三次元画像を表示する三次元映像表示装置が市販されている。また、最近は、眼鏡を用いることなく三次元画像を表示する装置も開発されている。このような三次元映像表示装置においては、三次元画像は迫力があり、見る人がこれを楽しめるが、この画像と文字とが同時に表示された場合に、文字等が非常に見にくいという問題がある。
【0003】
このような問題を解消するために、三次元映像表示装置の画面上の一部分にのみ立体画像を表示し、画面上の他の部分には通常の2次元画像を表示する技術が、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されている。特許文献1によれば、画像データに埋め込まれた視点数データに基づいて液晶表示素子を制御して、三次元画像を表示するときは視差バリアを自動的に必要な箇所に形成している。
【0004】
一方、特許文献2によれば、モード変換部によって、映像データに含まれる信号によって視差バリアの形成を制御し、画面上の所望の位置に必要に応じて三次元画像を表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−73049号公報
【特許文献2】特開2007−13914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の裸眼で立体視が可能な三次元表示装置において、所望の位置に二次元又は三次元画像を表示するためには、映像信号に二次元画像か三次元画像かのデータを埋め込む必要があった。そのため、画像の一部にデータの切替信号を埋め込む必要があり、特殊な装置が必要であるという問題があった。
【0007】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、簡易に二次元画像と三次元画像との表示を切り替えることができる三次元映像表示装置および視差バリア形成位置制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る三次元映像表示装置は、周波数を有する信号を用いて視差バリアスクリーン上において視差バリアを形成する位置を制御する。
【0009】
好ましくは、周波数を有する信号は超音波信号である。
【0010】
周波数を有する信号を用いて視差バリアスクリーン上において視差バリアを形成する時間を制御してもよい。
【0011】
視差バリアを形成する位置は、視差バリアスクリーンの一部であってもよい。
【0012】
視差バリアスクリーンの一部は映像を構成する画素単位であってもよい。
【0013】
三次元映像表示装置はスピーカを含み、周波数を有する信号はスピーカから出力されてもよい。
【0014】
この発明の他の局面においては、視差バリア形成位置制御方法は、視差バリアスクリーン上に形成される視差バリアの位置を制御する。視差バリア形成位置制御方法は、周波数を有する信号を用いて視差バリアスクリーン上の視差バリアを形成する位置を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、三次元映像表示装置の画像の切替を周波数を有する信号を用いて視差バリアスクリーン上において視差バリアを形成する位置を制御するため、簡単に多くの切り替え信号を作成できる。
【0016】
その結果、簡易に二次元画像と三次元画像との表示を切り替えることができる三次元映像表示装置および視差バリア形成位置制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の原理を説明するためのブロック図である。
【図2】この発明の原理を説明するための図である。
【図3】三次元映像表示装置のフローチャートである。
【図4】コンテンツ作成装置の構成を示す図である。
【図5】コンテンツ作成装置の要部を示すブロック図である。
【図6】コンテンツ作成装置における映像と音声との関係を示す図である。
【図7】コンテンツ作成装置のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、この発明の原理について説明する。図1はこの発明に係る三次元映像表示装置の原理を説明するための模式的ブロック図である。図1を参照して、この発明に係る三次元映像表示装置10は、映像を表示するディスプレイ11と、ディスプレイ11の上に設けられ、信号に応じて三次元表示用の視差バリアを形成する液晶シャッタ12と、装置全体を制御する制御部を有するパソコン13と、パソコン13に接続された音声を出力するスピーカ14と、スピーカ14からの音声信号を受けて液晶シャッタ12に視差バリアを形成するか否かの切替信号を出力する切替回路15と、パソコン13に接続され、ディスプレイ11上で再生するコンテンツを格納するコンテンツ格納部16とを含む。以上のように、この実施の形態においては、三次元映像表示装置10は視差を用いて画像を立体表示するための視差バリアを用いたもので、眼鏡を必要としない装置である。また、ここで再生されるコンテンツは二次元映像と三次元映像とを含むものとする。
【0019】
ディスプレイ11上にはコンテンツ格納部16に格納されたコンテンツに応じて、通常の二次元映像と立体表示のための三次元映像とが表示される。この映像に同期して音声がスピーカ15から出力される。このとき、音声信号には予め、映像が二次元から三次元に切替るときの第1の周波数を有する第1信号と、映像が三次元から二次元に切替るときの第1の周波数と異なる第2の周波数を有する第2信号とが埋め込まれている。切替回路15はこれらの第1信号と第2信号とを検出する。切替回路15はこの信号に応じて、第1信号を検出すれば液晶シャッタ12を用いてディスプレイ11上に視差バリアスクリーンを形成し、第2信号を検出すれば視差バリアスクリーンを形成しない。
【0020】
次に、上記原理の応用例について説明する。図2は、この応用例を説明するための図であり、液晶シャッタ12と切替回路15とを示している。応用例では、スピーカ14からは異なる6つの周波数を有する音波a〜fが出力され、ディスプレイ11上に載置される液晶シャッタ12はディスプレイ11上において横2列、縦3行の6つの領域A〜Fに区分されているものとする。
【0021】
図2を参照して、切替回路15はスピーカ14からの6つの異なる周波数a〜fを検出可能である。切替回路15は6つの異なる周波数と液晶シャッタ12上の6つの領域を対応させる回路を有している。すなわち、切替回路15は図2に示すように、周波数a〜fを検出すると、それに応じて、液晶シャッタ12の上の領域A〜Fのいずれか領域に三次元映像を表示するための視差バリアを形成する。
【0022】
なお、ここでは、周波数信号を6個としたが、これに限らないことはいうまでもない。また、液晶シャッタ12の領域の区分も同様であり、区分すべき領域は任意のサイズが可能であり、小さい場合は一画素単位でもよいし、大きい場合は液晶シャッタ12の全面であってもよい。また、切替回路15から液晶シャッタ12への信号の送信は、有線で行なってもよいし、無線で行なってもよい。
【0023】
また、コンテンツに文字情報が含まれるときに、文字を表示する部分のみを二次元映像とし、他の部分を三次元映像としてもよい。
【0024】
次に、図1に示した構成の三次元映像表示装置の動作について説明する。図3はこの動作を説明するためのパソコン13のCPUが行なう動作を示すフローチャートである。図3を参照して、まず、通常の二次元映像が再生されている(ステップS11、以下、ステップを省略する)。映像が続いている間にスピーカ14から三次元映像への切替信号が出力されると(S13でYES)、切替回路15は液晶シャッタ12に対して信号を出力して視差バリアを形成する。これによって、三次元映像表示装置には三次元映像が表示される(S14)。なお、ここでは、液晶シャッタ12はその全面に視差バリア形成するものとする。
【0025】
この状態でさらに二次元映像への切替信号が出力されると(S15でYES)、二次元映像が再生される(S11)。
【0026】
この状態で映像が終了すると(S12でYES)、処理も終了する。
【0027】
なお、ここでは、液晶シャッタ12において、全領域に視差バリアを形成した場合について説明したが、これに限らず、図2で説明したように、所望の領域にのみ、視差バリアを形成してもよい。
【0028】
次に、このような音声信号を含む映像信号の作成方法について説明する。図4はこの発明の一実施の形態に係る、音声信号を含む映像信号を作成するコンテンツ作成装置を示すブロック図である。図4を参照して、コンテンツ作成装置20は、画像を表示するディスプレイ21と、ディスプレイ21の上に設けられ、信号に応じて三次元表示用の視差バリアを形成する液晶シャッタ22と、装置全体を制御する制御部を有するパソコン23とを含む。
【0029】
図5は図4に示したコンテンツ作成装置20のパソコン23の構成を示すブロック図である。図5を参照して、パソコン23は、パソコン23全体を制御するCPU231と、CPU231に接続され、映像信号と音声信号とを含むコンテンツを格納するコンテンツ格納部232と、コンテンツ格納部232に格納されたコンテンツを再生するコンテンツ再生部233と、後に説明する切替信号を挿入する切替信号挿入部234と、切替信号挿入部234によって挿入された切替信号を含めたコンテンツを記録する記録部235とを含む。
【0030】
図6はこの実施の形態におけるコンテンツ作成装置20において処理される映像信号31と音声信号32との時間的変化を示す模式図である。図6を参照して、映像信号31はコンテンツAとコンテンツBとを含むものとする。ここでコンテンツAは二次元映像31aと三次元映像31bとが連続した映像を含む。コンテンツBは二次元映像のみである。これらコンテンツは音声信号として左音声信号32aと右音声信号32bとを伴っている。また、映像信号切替信号33,34も示している。
【0031】
映像信号と音声信号とは時刻t0で開始され、時刻t1でコンテンツAが二次元映像から三次元映像に切替る。また、時刻t2でコンテンツAからコンテンツBに切替る。したがって、時刻t1に二次元映像から三次元映像に切替る映像切替信号33が挿入され、時刻t2に三次元映像から二次元映像に切替る映像切替信号34が挿入されている。
【0032】
次に、この実施の形態におけるコンテンツ作成装置20における動作について説明する。図7はパソコン23のCPU231が、図6に示した複数のコンテンツデータを用いて、ユーザが2次元映像と三次元映像とを切替える処理を行なう動作を示すフローチャートである。図6および図7を参照して、まず、図6に示す映像データと音声データとを有するコンテンツAをコンテンツ格納部231から取出してコンテンツ再生部232で再生する(S21)。ここではコンテンツデータとしてコンテンツAとコンテンツBとが格納されているものとする。コンテンツデータの終了を確認しつつ(S22でNO)、二次元映像31aの入力を受付る(S23)。
【0033】
ユーザがコンテンツAにおいて、二次元映像31aから三次元映像31bに切替る瞬間を確認すると、ユーザは切替信号挿入部233から二次元映像から三次元映像への切替信号33(第1信号)を挿入する(S24)。この切替信号は音声信号に付加される。その後三次元映像がコンテンツ再生部232で再生される(S25)。
【0034】
ユーザは次に二次元映像であるコンテンツBが再生されるのを待って切替信号挿入部233から三次元映像から二次元映像への切替信号34を挿入する(S26)。この切替信号(第2信号)も音声信号に付加される。コンテンツBの再生が終了すると(S22でYES)、切替信号が付加された音声信号と映像信号とからなるコンテンツデータを記録部234に記録する。
【0035】
なお、切替信号33,34としてはある一定の周波数パターンを有する音波信号を数10m秒挿入するが、これに限るものではない(切替信号の入力方法があればその内容をご連絡下さい)。
【0036】
このように作成された音声信号とそれに同期した映像信号とを含むコンテンツを図1に示した三次元映像表示装置10で再生する。パソコン13からのコンテンツデータによって、映像をディスプレイ11上に表示し、音声をスピーカ14から出力する。スピーカ14からの周波数信号に応じて切替回路15は、三次元映像であれば、液晶シャッタ12を用いてディスプレイ11上に視差バリアを形成し、二次元映像であれば、液晶シャッタを作動させずにディスプレイ11上を透明にする。
【0037】
このとき、ディスプレイ11上の任意の位置に液晶シャッタ12で視差バリアスクリーンが形成される。液晶シャッタ上の任意の位置に視差バリアスクリーンを形成する方法はたとえば、次のとおりである。
【0038】
音声データに二次元映像から三次元映像への切替を指示する信号を挿入する時に、周波数を変えることによって視差バリアスクリーンを形成する位置を変えるようにする。具体的には、周波数によって、液晶シャッタの上半分、下半分、右半分、左半分とか、中央部のみとか、周辺部のみとかを切替える。
【0039】
たとえば、10kHzは上半分、11kHzは下半分、12kHzは右半分、13kHz左半分、14kHzは中央部のみとする。その持続時間も周波数の属性としてもよい。
【0040】
さらに、たとえば、ディスプレイ(液晶シャッタも同じ)の左上隅の座標を(0,0)とし、右下隅の座標を(1000,500)とし、各座標位置を周波数で決定するようにしてもよい。
【0041】
なお、この周波数信号は、人の耳に聞こえない超音波信号であってもよい。
【0042】
また、上記実施の形態においては、切替回路として通常のスピーカを用いて、音声信号に含まれる周波数信号を検出する場合について説明したが、これに限らず、特定の周波数信号(たとえば、特定周波数の超音波)のみを選択的に受信可能なセンサで切替信号を検出してもよい。この場合、それぞれが異なる周波数を受信可能な複数のセンサを用いてよい。また、これらをスピーカと併用してもよい。
【0043】
また、上記実施の形態においては、音声信号に周波数信号を挿入する場合について説明したが、これに限らず、映像信号に周波数信号を挿入してもよい。
【0044】
また、上記実施の形態においては、周波数信号をスピーカから出力する場合について説明したが、これに限らず、コンテンツに含まれる周波数情報に基づいて、自動的に液晶シャッタを制御して視差バリアを形成してもよい。
【0045】
また、上記実施の形態においては、パソコンに液晶シャッタ付きのディスプレイとスピーカとが接続された構成を例にあげて説明したが、これに限らず、これらが一体化された装置であってもよい。
【0046】
また、上記実施の形態においては、三次元映像表示装置で再生されるコンテンツとして、コンテンツ格納部に格納可能なものを例にあげて説明したが、これに限らず、通常の放送されるコンテンツに周波数信号が挿入されていてもよい。
【0047】
また、周波数を有する信号を用いて視差バリアスクリーン上において視差バリアを形成する時間を制御してもよい。
【0048】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
この発明に係る三次元映像表示装置は、簡単な構成で所望の位置にのみ視差バリアを形成することができるため、三次元映像表示装置として有利に利用される。
【符号の説明】
【0050】
10 三次元映像表示装置、11,21 ディスプレイ、12,22 液晶シャッタ、13,23 パソコン、14 スピーカ、15 切替回路、16 コンテンツ格納部、231 CPU、232 コンテンツ再生部、233 切替信号挿入部、234 記録部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数を有する信号を用いて視差バリアスクリーン上において視差バリアを形成する位置を制御することを特徴とする、三次元映像表示装置。
【請求項2】
前記周波数を有する信号は超音波信号である、請求項1に記載の三次元映像表示装置。
【請求項3】
周波数を有する信号を用いて視差バリアスクリーン上において視差バリアを形成する時間を制御することを特徴とする、請求項1または2に記載の三次元映像表示装置。
【請求項4】
前記視差バリアを形成する位置は、視差バリアスクリーンの一部である、請求項1〜3のいずれかに記載の三次元映像表示装置。
【請求項5】
前記視差バリアスクリーンの一部は映像を構成する画素単位を含む、請求項4に記載の三次元映像表示装置。
【請求項6】
前記三次元映像表示装置はスピーカを含み、前記周波数を有する信号は前記スピーカから出力される、請求項1〜5のいずれかに記載の三次元映像表示装置。
【請求項7】
視差バリアスクリーン上に形成される視差バリアの位置を制御する視差バリア形成位置制御方法であって、周波数を有する信号を用いて視差バリアスクリーン上の視差バリアを形成する位置を制御することを特徴とする、視差バリア形成位置制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−93600(P2012−93600A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241686(P2010−241686)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(505197540)株式会社フェール木谷 (1)
【Fターム(参考)】