説明

三次元測定方法及び装置

【課題】ワークの三次元形状の計測を、インラインで、かつ小型、低コストにて、しかも高精度に行なうことのできる三次元形状測定方法及び装置を提供する。
【解決手段】三次元座標が既知のマスタMを用いてワークWの三次元形状を測定する方法(比較測定技術を用いる測定方法)を適用して、インラインでの使用を可能とし、構成の小型・低コスト化を可能とした。マスタM及びワークWを同一の三次元座標系に固定し、それらを、相互位置関係を変えることなく同時に走査させながらワークWの三次元座標を繰り返し測定するようにして、比較測定技術を用いる測定方法でありながらワークWの三次元形状測定を高精度化した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元座標が既知のマスタを用いてワークの三次元形状を測定する三次元形状測定方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気自動車やハイブリッドカーに用いられるモータコイル等のワークの三次元形状、寸法につき、インラインで低コストかつ高精度に測定したい場合があるが、従来、この種の測定技術としては特許文献1に記載のものがあった。
これは、ワークの測定点にプローブを当接し、そのX、Y、Z座標値を、ワークの測定点と同様の測定点におけるマスタのX、Y、Z座標値(既知)と比較してその減算値を求め、計測するという、いわゆる比較測定技術を用いる測定方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2790554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、マスタを用いずに直接、三次元形状を測定できる三次元測定機が有する課題、つまり、高精度ではあるが測定時間が長くインラインでの使用に適さず、また、構成が大型で高コストになるという課題は解消されるが、次のような問題があった。
すなわち、上記従来技術では、測定時の走査に伴い機械的な位置ズレが生じ、また、マスタ、ワークの交換時に位置ズレ(セット状態の誤差)が生じる。このため、巾や寸法といった相対値の計測の利用に留まり、ワークの三次元形状の計測を高精度に行なうには自ずと限界があった。
【0005】
本発明は、上記のような実情に鑑みなされたもので、ワークの三次元形状の計測を、インラインで、かつ小型、低コストにて、しかも高精度に行なうことのできる三次元形状測定方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、三次元形状測定方法及び装置を下記各態様の構成とすることによって解決される。
各態様は、請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも本発明の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴及びそれらの組合わせが以下の各項に記載のものに限定されると解釈されるべきではない。また、1つの項に複数の事項が記載されている場合、それら複数の事項を常に一緒に採用しなければならないわけではなく、一部の事項のみを取り出して採用することも可能である。
【0007】
以下の各項のうち、(1)項が請求項1に、(2)項が請求項2に、(3)項が請求項3に、各々対応する。(4)項は請求項に係る発明ではない。
【0008】
(1)三次元座標が既知のマスタを用いてワークの三次元形状を測定する三次元形状測定方法であって、前記マスタとワークとを同一の三次元座標系に固定する第1工程と、この第1工程により固定された前記ワークの三次元座標を前記マスタに対する相対測定値から計算する第2工程と、前記マスタとワークとをその相互位置関係を変えることなく同時に走査させながら該ワークの三次元座標を繰り返し測定する第3工程とを具備することを特徴とする三次元形状測定方法。
ワークの三次元形状は、前記第3工程により測定されたワークの三次元座標群に基づいて計算により求められる。
(2)前記マスタとワークとを同一の三次元座標系に固定する際のマスタとワークとの位置決めは、二次元平面に重ねて載置されたマスタ及びワークの隣接する2辺の、前記二次元平面に突設された複数本の位置決めピンへの押し当てにより行なわれることを特徴とする(1)項に記載の三次元形状測定方法。
マスタ及びワークの隣接する2辺の一方の辺の長さが他方の辺の長さよりも長い場合には、その程度に応じて長い辺に対応する側の位置決めピンを複数本突設してもよい。
(3)三次元座標が既知のマスタを用いてワークの三次元形状を測定する三次元形状測定装置であって、前記マスタとワークとを同一の三次元座標系に固定するためのセット台と、このセット台に固定された前記ワークの所望箇所の三次元座標を測定するための測定手段と、この測定手段による測定値の前記マスタに対する相対測定値から前記ワークの三次元座標を計算する計算手段と、前記マスタとワークとをその相互位置関係を変えることなく同時に走査させる走査手段とを具備し、この走査手段によって前記マスタとワークとを位置関係を変えることなく同時に走査させながら前記計算手段によって前記ワークの三次元座標を繰り返し測定してそのワークの三次元形状を測定することを特徴とする三次元形状測定装置。
ワークの三次元座標の測定には、例えば、ワークへの当接によりその座標、変位等を測定する探触子を備えた測定手段が用いられる。
(4)前記マスタとワークとは同一のセット台の上面に重ねて載置され、このセット台の上面には複数本の位置決めピンが突設され、この複数本の位置決めピンのうちの少なくとも2本は、前記マスタ及びワークの各々隣接する2辺が押し当てられることにより、それらマスタ及びワークを同じ位置に位置決め可能に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の三次元形状測定方法。
マスタ及びワークの隣接する2辺の一方の辺の長さが他方の辺の長さよりも長い場合には、その程度に応じて長い辺に対応する側の位置決めピンを複数本突設してもよい。
本項に記載の発明によれば、マスタとワークとを同一の三次元座標系に固定する際の両者の位置決めを容易に行なえる。
【発明の効果】
【0009】
(1)項に記載の発明によれば、三次元座標が既知のマスタを用いてワークの三次元形状を測定する方法(比較測定技術を用いる測定方法)を適用したので、インラインで、かつ小型、低コストにてワークの三次元形状を測定できる。また、マスタ及びワークを同一の三次元座標系に固定し、かつ、それらを、相互位置関係を変えることなく同時に走査させながらワークの三次元座標を繰り返し測定するようにしたので、測定時の走査に伴い機械的な位置ズレが生じたり、マスタ、ワークの交換時に位置ズレを生じさせることがない。すなわち、ワークの三次元形状の計測を、インラインで、かつ小型、低コストにて、しかも高精度に行なうことのできる三次元形状測定方法を提供できる。
(2)項に記載の発明によれば、マスタとワークとを同一の三次元座標系に固定する際の両者の位置決めを容易に行なえる。
(3)項に記載の発明は、(1)項に記載の発明を装置として具現化したもので、ワークの三次元形状の計測を、インラインで、かつ小型、低コストにて、しかも高精度に行なうことのできる三次元形状測定装置を提供できる。
なお、(4)項に記載の発明は、本発明(特許請求の範囲に記載した発明)ではないので、上記課題を解決するための手段の欄に、その効果を述べた。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明方法の一実施形態に用いられる三次元座標測定方法の説明図であって、(a)は平面図、(b)は(a)図中のA−A´線断面図、(c)は(a)図中のB−B´線断面図、(d)はワークの斜視図である。
【図2】本発明方法が適用された三次元形状測定装置の一実施形態における三次元形状測定のための走査・多点・多部位測定(各ステーションにおける測定)の説明図であって、(a)は平面図、(b)は(a)図の右側面図である。
【図3】図2中の短辺外巾測定位置における短辺外巾測定の説明図であって、(a)は平面図、(b)は正面図(マスタ、ワークは切断面を示す)である。
【図4】図2中の短辺内巾測定位置における短辺内巾測定の説明図であって、(a)は平面図、(b)は正面図(マスタ、ワークは切断面を示す)である。
【図5】図2中の長辺外巾測定位置における長辺外巾測定の説明図であって、(a)は平面図、(b)は側面図(マスタ、ワークは切断面を示す)である。
【図6】図2中の長辺内巾測定位置における長辺内巾測定の説明図であって、(a)は平面図、(b)は側面図(マスタ、ワークは切断面を示す)である。
【図7】図2に示す走査・多点・多部位測定によるワークの三次元形状測定の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。なお、各図間において、同一符号は同一又は相当部分を示す。
図1及び図2に示すように、本発明方法が適用された三次元形状測定装置は、三次元形状の測定対象であるワークWと三次元座標が既知のマスタMとを同一の三次元座標系に固定するためのセット台1を備える。
【0012】
図示例では、ワークWは断面長方形の帯状導体が4層積層巻回された四角筒状のコイルである。このコイル(ワークW)は、設計図上は各層同一寸法で、同軸的に(各層が大きさ、位置を揃えて)形成されている。ここでは、コイル全体(ワークW)が設計図通り形成されているか否かの判定のために、その三次元形状の測定が行なわれる。
上記マスタMは、測定対象であるワークWの設計図に基づいて正確に作成された三次元形状を有したコイルである。ここでは、ワークWであるコイルの各層は設計図上、同一寸法であるので1層分の三次元形状を有した疑似のコイルである。
【0013】
セット台1の上面(X−Y平面)には、同上面に重ねて載置される上記マスタM及びワークW(詳しくはコイル最下層)を同じ基準位置に位置決め固定するために、複数本、図示例では3本のX−Y位置決めピン2(2a〜2c)が突設されている。3本のX−Y位置決めピン(以下、位置決めピンと略記する。)2a〜2cのうち、少なくとも2本は、マスタM及びワークWの各々隣接する2辺に当接してそれらを同じ位置に位置決め可能に配置されている。
この共通の位置決めピン2a〜2cで位置決めされたマスタM及びワークWは、クランパ(図示せず)によってセット台1を含めて一体に固定される。これによりマスタM及びワークWは、同一の三次元座標系に固定される。
【0014】
本実施形態においては、ワークWの三次元形状測定のための走査・多点・多部位測定を、短辺外巾3断面、短辺内巾3断面、長辺外巾1断面及び長辺内巾1断面と、合計8ステーション移動し、後述する線ア〜クに沿った100箇所以上の三次元座標をミクロンオーダで測定する。以下、このような測定について説明する。
なお、上記の短辺外巾(又は内巾)とはワークW(四角筒状のコイル)の対向する一対の短辺の外周(又は内周)相互間を指し、長辺外巾(又は内巾)とは同ワークWの対向する一対の長辺の外周(又は内周)相互間を指す。また、図1(d)において、線ア〜ウは短辺外巾3断面に係る測定点を結ぶ各線を、線エ〜カは短辺内巾3断面に係る測定点を結ぶ各線を、線キは長辺外巾1断面に係る測定点を結ぶ線を、線クは長辺内巾1断面に係る測定点を結ぶ線を、各々示す。各線ア〜ウ、エ〜カ、キ、クは各一対有する短辺及び長辺のうちの一方側についてのみ示し、他方側の同線ア〜ウ、エ〜カ、キ、クは図示を省略してある。
【0015】
図2中、I.は、セット台1の上面に位置決めピン2a〜2cを用いて位置決めされたマスタM上に、ワークWを同じ位置決めピン2a〜2cを用いて位置決めし、固定するワークセット位置を示す。
II.〜V.は、順に短辺外巾、短辺内巾、長辺外巾及び長辺内巾の各測定位置を示す。
図2〜図6に示すように、各測定位置II.〜V.には、セット台1に固定されたワークWの予め決められた箇所(所定箇所)の三次元座標を測定するための測定手段3及び走査手段4が配置されている。
【0016】
図2〜図6に示すように、各測定手段3は、ワークWに当接してその三次元座標を測定するための探触子5及びこの探触子5が組込み固定された測定台6を左右側に一対備える。一対の測定台6は共通の測定台座7上に載置、固定されている。
各測定手段3は、各探触子5を、各々測定台6を介してX方向に移動させるためのバネ(測定押付け具)8及びエアーシリンダ(戻し具)9を備える。
走査手段4は、探触子5を、測定台座7及び測定台6を介してZ(高さ)方向に移動させるためのZ走査サーボ4a、及び探触子5をセット台1を介してY方向に移動(相対移動)させるためのY走査サーボ4bを備える。Y走査サーボ4bは、図2から分かるように、位置I.〜V.に亘って共通(Y走査サーボ4bは1台)である。
【0017】
各探触子5のX、Y、Z方向の移動量、換言すれば位置(座標)は、電気マイクロメータ、マグネスケール等からなる3つの電気式の移動量測定器10(X方向の移動量測定器:電気マイクロメータのみ図示)によって高い精度で測定される。例えば、Y方向の移動量は、マグネスケールによって10μm以下の繰返し精度で測定される。
Y走査サーボ4b及びZ走査サーボ4aは、ワークWの三次元形状を測定する際のマスタMとワークWとを位置関係を変えることなく一体に、つまり同時にY、Z方向について走査させる。
なお、図2中の11は、Z走査サーボ4a等を固定する共通の装置ベッドである。
【0018】
各移動量測定器10の測定値、つまり、探触子5のX、Y、Z方向の各位置の測定値は、計算手段(図示せず)に入力される。この計算手段は、各移動量測定器10(測定手段3)の測定値の、上記マスタMに対する値(相対測定値)からワークWの三次元座標を計算する。
例えば、図1(b)に示すように、セット台1の上面に位置決め固定されたマスタMの短辺外巾測定点(長辺側の外周)に探触子5を当接させたときのX座標X1が30.439(基準位置X=0から+方向に30.439mm離れた位置)であったとする。そしてその探触子5を、同ワークWの下から3層目の短辺外巾測定点(長辺側の外周)に当接させたときの探触子5のX方向移動量(変位)が基準位置X=0方向(−方向)に1.200mmであった場合、30.439−1.200を計算する。すなわち、ワークWの上記短辺外巾測定点(長辺側の外周)のX座標X1´=29.439を求める。
【0019】
このように、本実施形態に係る三次元形状測定装置は、走査手段4によってマスタMとワークWとを位置関係を変えることなく一体に、つまり同時に走査させながら計算手段によってワークWの三次元座標を繰り返し測定(計算)し、同ワークWの三次元形状を測定するものである。
【0020】
次に、図2〜図7を参照してワークWの三次元形状測定の手順を説明する。
図3〜図6は、図2中の測定位置II.〜V.における短辺外巾、短辺内巾、長辺外巾及び長辺内巾の各測定の様子を示す図で、各図において、(a)は平面図、(b)は(a)図中の探触子位置における一部切断正面図である。
まず、図2中のワークセット位置I.にセット台1を移動(Y移動)し、同セット台1の上面にマスタM及びワークWを形状を合わせて重ねて載置し、各々位置決めピン2a〜2cに押し当て、この状態で同マスタM及びワークWを一体にクランプしてセットする(図7中、ステップ701、702)。
【0021】
続いて、セット台1を図2中の短辺外巾測定位置II.に移動(Y移動)させる(図7中、ステップ703)。この際のセット台Y変位、マスタY座標はメモリに記憶される(図7中、ステップ704、705)。
短辺外巾測定位置II.では、図3に示すように短辺外巾が測定される。
すなわち、まず、左右の測定台6がマスタ測定位置へ上昇移動される(同ステップ706)。続いて、エアーシリンダ9のエアーを抜き、バネ8によって探触子5をマスタMの左右長辺側の外周に各々当接させ(同ステップ707)、当接時のX方向移動量測定器10の測定値、つまりマスタX変位をメモリに記憶する(同ステップ708)。
【0022】
次に、エアーシリンダ9にエアーを入れて探触子5を元の待機位置に戻す(同ステップ709)。続いて、左右の測定台6がワーク(コイル)Wの第1層目(図中、最下層)の測定位置へ上昇移動される(同ステップ710)。この際の左右の測定台変位(第1層目Z設定値)はメモリに記憶される(同ステップ711)。
続いて、エアーシリンダ9のエアーを抜き、バネ8によって探触子5をワーク(コイル)Wの第1層目の長辺側の外周に各々当接させ(同ステップ712)、当接時のX方向移動量測定器10の測定値、つまりワーク(コイル)Wの第1層目X変位をメモリに記憶する(同ステップ713)。
次に、エアーシリンダ9にエアーを入れて探触子5を元の待機位置に戻す(同ステップ714)。
【0023】
以下、上記のステップ706〜714をワーク(コイル)Wの全層分について繰り返し、実行する。また、ワーク(コイル)Wの各層について、図1(d)中の各線ア〜ウに沿った多点について測定が実行され、各測定点のX変位は、その測定の際のY変位、Z設定値と共にメモリに記憶される。
【0024】
次に、上記のステップ706〜714がワーク(コイル)Wの全層分について繰り返されたか(4層繰返し測定が完了か)否かが判定され(同ステップ715)、全層分、繰り返されてなければ同ステップを繰り返し、全層分、繰り返されていれば、ワーク(コイル)Wの全層分の短辺外巾の測定を完了する。
マスタX変位及びワーク(コイル)Wの全層における各測定点のX変位、Y変位、Z設定値及びこれらX変位、Y変位、Z設定値によって計算されたX、Y、Z座標値はメモリに記憶される(図7中、ステップ716、717)。
【0025】
短辺外巾測定位置II.における全測定が終わると、セット台1は図2中の短辺内巾測定位置IIIに移動(Y移動)される(図7中、ステップ718)。この移動後のセット台Y座標はメモリに記憶される(図7中、ステップ719)。
この短辺内巾測定位置III.では、図4に示すように短辺内巾が測定される。この短辺内巾測定位置III.における測定手順は、短辺外巾測定位置II.における測定手順(ステップ706〜717=SA)とほぼ同様であるが、ここでは、ワーク(コイル)Wの各層について図1(d)中の各線エ〜カに沿った多点についての測定が行われる。
この短辺内巾測定位置III.において、マスタX変位及びワーク(コイル)Wの全層における各測定点のX変位、Y変位、Z設定値及びこれらX変位、Y変位、Z設定値によって計算されたX、Y、Z座標値はメモリに記憶される(図7中、ステップ720、721)。
【0026】
短辺内巾測定位置III.における全測定が終わると、セット台1は図2中の長辺外巾測定位置IVに移動(Y移動)される(図7中、ステップ722)。移動後のセット台Y座標はメモリに記憶される(図7中、ステップ723)。
長辺外巾測定位置IV.では、図5に示すように長辺外巾が測定される。この長辺外巾測定位置IV.における測定手順は、短辺外巾測定位置II.における測定手順(SA)とほぼ同様であるが、ここでは、ワーク(コイル)Wの各層について図1(d)中の線キに沿った多点についての測定が行われる。また、上記ステップ707に相当するステップでは、各探触子5をマスタMの短辺側の外周に各々当接させ、当接時のY方向移動量測定器の測定値、つまりマスタY変位をメモリに記憶する。
長辺外巾測定位置IV.において、マスタY変位及びワーク(コイル)Wの全層における各測定点のY変位、X設定値、Z設定値及びこれらY変位、X設定値、Z設定値によって計算されたX、Y、Z座標値はメモリに記憶される(図7中、ステップ724、725)。
【0027】
長辺外巾測定位置IV.における全測定が終わると、セット台1は図2中の長辺内巾測定位置V.に移動(Y移動)される(図7中、ステップ726)。移動後のセット台Y座標はメモリに記憶される(図7中、ステップ727)。
長辺内巾測定位置V.では、図6に示すように長辺内巾が測定される。この長辺内巾測定位置V.における測定手順は、長辺外巾測定位置IV.における測定手順(SA)とほぼ同様であるが、ここでは、ワーク(コイル)Wの各層について図1(d)中の線クに沿った多点についての測定が行われる。
長辺内巾測定位置V.において、マスタY変位及びワーク(コイル)Wの全層における各測定点のY変位、X設定値、Z設定値及びこれらY変位、X設定値、Z設定値によって計算されたX、Y、Z座標値はメモリに記憶される(図7中、ステップ728、729)。
その後、セット台1を図2中のワークセット位置I.に戻す(図7中、ステップ730)。
【0028】
以上の測定手順で得られたワークWの各測定点におけるX、Y、Z座標値はメモリから読み出され、読み出された多数のX、Y、Z座標値に基づいてワークWの三次元形状を計算により求め、同ワークWの三次元形状の測定を終了する(図7中、ステップ731)。
【0029】
上述した実施形態によれば、ワークWの三次元形状測定に、三次元座標が既知のマスタMを用いて測定する方法(比較測定技術を用いる測定方法)を適用したので、インラインで、かつ小型、低コストにてワークWの三次元形状を測定できる。
また、マスタM及びワークWを同一の三次元座標系に固定し、それらを、相互位置関係を変えずに同時に走査させながらワークWの三次元座標を繰り返し測定するようにした。これによれば、測定時の走査に伴い機械的な位置ズレが生じたり、マスタM、ワークWの交換時に位置ズレを生じさせることがなく、比較測定技術を用いながらも、三次元形状を高精度に測定できる。更に、各測定位置II.〜V.毎にマスタMを用いて補正しつつワークWの座標を測定するので、ワークWの三次元形状を一層、高精度に測定できる。
また、マスタMとワークWとを同一の三次元座標系に固定する際のマスタM及びワークWの位置決めを、セット台1の上面に重ねて載置されたマスタM及びワークWの隣接する2辺の、セット台1の上面に突設された複数本の位置決めピン2への押し当てにより行なうようにした。これによれば、マスタMとワークWとを同一の三次元座標系に固定する際の両者の位置決めを容易に行なえる。
【符号の説明】
【0030】
1:セット台、2(2a〜2c):X−Y位置決めピン、3:測定手段、4:走査手段、4a:Z走査サーボ、4b:Y走査サーボ、5:探触子、6:測定台。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元座標が既知のマスタを用いてワークの三次元形状を測定する三次元形状測定方法であって、
前記マスタとワークとを同一の三次元座標系に固定する第1工程と、
この第1工程により固定された前記ワークの三次元座標を前記マスタに対する相対測定値から計算する第2工程と、
前記マスタとワークとをその相互位置関係を変えることなく同時に走査させながら該ワークの三次元座標を繰り返し測定する第3工程とを具備することを特徴とする三次元形状測定方法。
【請求項2】
前記マスタとワークとを同一の三次元座標系に固定する際のマスタとワークとの位置決めは、二次元平面に重ねて載置されたマスタ及びワークの隣接する2辺の、前記二次元平面に突設された複数本の位置決めピンへの押し当てにより行なわれることを特徴とする請求項1に記載の三次元形状測定方法。
【請求項3】
三次元座標が既知のマスタを用いてワークの三次元形状を測定する三次元形状測定装置であって、
前記マスタとワークとを同一の三次元座標系に固定するためのセット台と、
このセット台に固定された前記ワークの所望箇所の三次元座標を測定するための測定手段と、
この測定手段による測定値の前記マスタに対する相対測定値から前記ワークの三次元座標を計算する計算手段と、
前記マスタとワークとをその相互位置関係を変えることなく同時に走査させる走査手段とを具備し、
この走査手段によって前記マスタとワークとを位置関係を変えることなく同時に走査させながら前記計算手段によって前記ワークの三次元座標を繰り返し測定してそのワークの三次元形状を測定することを特徴とする三次元形状測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−251897(P2012−251897A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125200(P2011−125200)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】