説明

三次元細胞培養体チップ及びその使用方法

【課題】三次元培養細胞体が配置されたバイオチップの提供。
【解決手段】三次元細胞培養体チップであって、基板と、前記基板上に空間的に離れて配置される2つ以上の三次元細胞培養体とを備え、前記三次元細胞培養体は前記基板の法線方向に積層された少なくとも2層の細胞層を有し、前記三次元細胞培養体の基板投影形状を含む最小円の直径が10μm〜20mmである三次元細胞培養体チップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元細胞培養体チップ及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数種類の生理活性物質、DNA、タンパク質がスポット状に基板上に配置されるバイオチップは、様々なアッセイ・測定の効率の向上や“ハイスループット化”に寄与している。
【0003】
一方、細胞を三次元に積層する技術としては、細胞外マトリックス形成と細胞層形成とを交互に繰り返して三次元積層体を形成する技術(特許文献1、非特許文献1及び2)、予め形成した複数の二次元培養細胞シートを重ねる細胞シート技術(非特許文献3)、キトサン薄膜を使用して細胞を積層する技術(非特許文献4)、及び、細胞と細胞外マトリックスを含むマイクロ流体を流路に流し込んで積層する技術(非特許文献5)等がある。
【0004】
医薬組成物、化学物質、化粧品等の安全性や薬物動態を調べる場合、ヒトで調べる前に実験動物を用いて試験・評価を行うことが一般的である。しかしながら、実験動物における結果と実際にヒトに投与した場合の結果とが一致するとは限らない。よって、ヒトを用いた試験・評価を行う前にヒトの細胞を用いて試験・評価を行うことが好ましい。
【特許文献1】特開2007-228921号公報
【非特許文献1】M. Matsusaki et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 4689.
【非特許文献2】Y. Nakahara et al., J. Biomater. Sci. Polymer Edn. 2007, 18, 1565.
【非特許文献3】T. Okano et al., Circ. Res. 2002, 90, 40.
【非特許文献4】C.C. Co et al., J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 1598.
【非特許文献5】W. Tan. et al., Biomaterials 2004, 25, 1355.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のバイオチップでは、ヒトやヒト以外の動物の細胞が配置されていてもそれは二次元培養細胞体であったため、ヒト等の生体をよく反映した信頼性の高い結果が期待できないという問題があった。
【0006】
よって、本発明は、三次元培養細胞体が配置されたバイオチップを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、三次元細胞培養体チップであって、基板と、前記基板上に空間的に離れて配置される2つ以上の三次元細胞培養体とを備え、前記三次元細胞培養体は前記基板の法線方向に積層された少なくとも2層の細胞層を有し、前記三次元細胞培養体の基板投影形状を含む最小円の直径が10μm〜20mmである三次元細胞培養体チップに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば、三次元細胞培養体を用いた試験や検査が、より効率よく行えるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、2種類の液に交互浸漬することで細胞外マトリックスを形成しながら細胞を三次元に積層培養する方法(特許文献1、非特許文献1及び2)を、例えば、インクジェット式吐出装置などの噴射装置を用いて行えば、基板上にスポット状の三次元細胞培養体が複数配置されたバイオチップを形成できるという知見に基づく。
【0010】
[三次元細胞培養体チップ]
すなわち、本発明は、その一態様において、基板と、前記基板上に空間的に離れて配置される2つ以上の三次元細胞培養体とを備え、前記三次元細胞培養体は前記基板の法線方向に積層された少なくとも2層の細胞層を有し、前記三次元細胞培養体の基板投影形状を含む最小円の直径は10μm〜20mmである三次元細胞培養体チップに関する。
【0011】
本発明の三次元細胞培養体チップを用いれば、例えば、安全性や薬物動態に関する試験・検査をよりヒトやヒト以外の動物の生体を反映した形態で、効率的に行うことができるという効果を好ましくは奏する。また、本発明の三次元細胞培養体チップを用いた安全性や薬物動態に関する試験・検査は、例えば、従来の実験動物を用いた安全性や薬物動態に関する試験・検査の後であってヒトに投与する前の試験・検査、又は、実験動物を用いた試験・検査の代替試験・代替検査になり得るという効果を好ましくは奏する。さらに、本発明の三次元細胞培養体チップは、例えば、再生医療における分化誘導若しくは組織形成に関する研究における強力なツールになり得るという効果を好ましくは奏する。
【0012】
本発明の三次元細胞培養体チップの一実施形態の模式図を図1に示す。この実施形態における三次元細胞培養体チップ1は、基板2と基板2上に空間的に離れて配置される2つ以上の三次元細胞培養体3とからなる。なお、図1に示す実施形態は本発明の三次元細胞培養体チップの単なる一例であって、本発明はその他の実施形態を含みうる。
【0013】
[三次元細胞培養体]
本発明の三次元細胞培養体チップの基板上に配置される三次元培養細胞体は、基板の法線方向に積層された少なくとも2層の細胞層を備える。1つの三次元培養細胞体において積層される細胞層の数は特に制限されないが、ヒト等の生体組織とより同等の性質・機能を発揮させる観点から、3層以上が好ましく、4層以上がより好ましく、5層以上がさら好ましく、6層以上がさらにより好ましい。積層される細胞数の上限は特に制限されないが、例えば、100層以下、50層以下、40層以下、30層以下、20層以下、10層以下などである。本発明において「基板の法線方向の積層」とは、例えば、xy平面の基板に対してz方向の積層を含み、或いは、基板を足場とすることなく下層細胞層及び又は下層細胞層の上に形成された細胞外マトリックスを足場として上層細胞層が形成されている構成を含み得る。
【0014】
本発明における三次元細胞培養体に含まれる細胞としては、ヒト及び又はヒト以外の動物の細胞及び又はそれらに由来する細胞が挙げられる。ヒト以外の動物としては、特に限定されず、例えば、霊長類(アカゲザルなど)、マウス、ラット、イヌなどが挙げられる。ヒトの生体組織とより同等の性質・機能を発揮させる観点からは、ヒトの細胞又はそれに由来する細胞が好ましい。
【0015】
細胞の種類も、特に制限されず、肝細胞、血管内皮細胞、線維芽細胞、表皮細胞、上皮細胞、乳腺細胞、筋細胞、神経細胞、組織幹細胞、胚性幹細胞、骨細胞および免疫細胞等の接着性細胞が挙げられる。細胞は、一種類でもよいし、二種類以上を用いてもよい。
【0016】
三次元細胞培養体における細胞層は、1種類でもよく、あるいは、2種類以上細胞層であってもよい。例えば、血管モデルの三次元細胞培養体を形成する場合、最上層に血管内皮細胞の細胞層とし、その下の複数の細胞層を平滑筋細胞の細胞層とすることが考えられる。細胞層の組合せはこれらに限定されない。
【0017】
[細胞外マトリックス]
本発明における三次元細胞培養体は、細胞の他に、細胞外マトリックスを含むことが好ましい。本発明において、細胞外マトリックスは、生体内で細胞の外の空間を充填し、骨格的役割、足場を提供する役割、及び又は、生体因子を保持する役割などの機能を果たす生体内物質を含み、さらに、in vitroの細胞培養において骨格的役割、足場を提供する役割、及び又は、生体因子を保持する役割などの機能を果たせる物質を含む。
【0018】
本発明における細胞外マトリックスは、形成作業の容易性、厚みの調整の容易性、及び、三次元細胞培養の効率化の観点から、RGD配列を有するタンパク質若しくは高分子(以下、「RGD配列を有する第1物質」ともいう)と前記RGD配列を有する第1物質と相互作用するタンパク質若しくは高分子(以下、「相互作用する第2物質」ともいう)との組合せで形成される物質を含むこと、あるいは、正の電荷を有するタンパク質若しくは高分子(以下、「正の電荷を有する第1物質」ともいう)と負の電荷を有するタンパク質若しくは高分子(以下、「負の電荷を有する第2物質」ともいう)との組合せで形成される物質を含むことが好ましい。ここで、本発明において、「相互作用する」とは、例えば、静電的相互作用、疎水性相互作用、水素結合、電荷移動相互作用、共有結合形成、タンパク質間の特異的相互作用、ファンデルワールス力等により、化学的及び又は物理的に、第1物質と第2物質とが結合、接着、吸着、又は電子の授受が可能な程度に近接することを意味することが好ましい。
【0019】
(RGD配列を有する第1物質)
RGD配列を有する第1物質、すなわち、RGD配列を有するタンパク質若しくは高分子における前記RGD配列とは、一般に知られている「Arg−Gly−Asp」配列をいう。本発明において「RGD配列を有する」とは、元来、RGD配列を有するものでもよいし、RGD配列が化学的に結合されたものであってもよい。RGD配列を有する第1物質は、生分解性であることが好ましく、また、水溶性であることが好ましい。RGD配列を有するタンパク質としては、例えば、従来公知の接着性タンパク質が挙げられ、具体的には、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、カドヘリン、コラーゲン等が挙げられる。また、RGD配列を有するタンパク質は、例えば、RGD配列を結合させたコラーゲン、ゼラチン、アルブミン、グロブリン、プロテオグリカン、酵素、抗体等であってもよい。RGD配列を有する高分子としては、例えば、天然由来高分子、及び合成高分子があげられる。RGD配列を有する天然由来高分子としては、例えば、水溶性ポリペプチド、低分子ペプチド、ポリリジン等のポリアミノ酸、ポリエステル、キチンやキトサン等の糖、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、これらの共重合体等があげられる。RGD配列を有する合成高分子としては、直鎖型、グラフト型、くし型、樹状型、星型等のRGD配列を有するポリマー又は共重合体が挙げられる。前記ポリマー又は共重合体としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエチレングリコール‐グラフト‐ポリアクリル酸、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−co−ポリアクリル酸)、ポリアミドアミンデンドリマー、ポリエチレンオキサイド、ポリε−カプロラクタム、ポリアクリルアミド、ポリ(メタクリル酸メチル−γ−ポリメタクリル酸オキシエチレン)等が挙げられる。
【0020】
(相互作用する第2物質)
相互作用する第2物質は、生分解性であることが好ましく、また、水溶性であることが好ましい。相互作用する第2物質のうち、RGD配列を有する第1物質と相互作用するタンパク質としては、コラーゲン、ゼラチン、プロテオグリカン、インテグリン、酵素、抗体等が挙げられる。また、RGD配列を有する第1物質と相互作用する高分子としては、水溶性ポリペプチド、低分子ペプチド、ポリアミノ酸、ポリエステル、ヘパリンやヘパラン硫酸等の糖、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、及びこれらの共重合体を含む天然高分子、あるいは、直鎖型、グラフト型、くし型、樹状型、星型等のポリマー又は共重合体である合成高分子であって、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエチレングリコール‐グラフト‐ポリアクリル酸、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−co−ポリアクリル酸)、ポリアミドアミンデンドリマー、ポリエチレンオキサイド、ポリε−カプロラクタム、ポリアクリルアミド、ポリ(メタクリル酸メチル−γ−ポリメタクリル酸オキシエチレン)等の合成高分子が挙げられる。
【0021】
RGD配列を有する第1物質と相互作用する第2物質との組合せとしては、特に制限されず相互作用する異なる物質の組合せであればよく、例えば、フィブロネクチンとゼラチン、ラミニンとゼラチン、ビトロネクチンとゼラチン、フィブロネクチンとデキストラン硫酸、フィブロネクチンとへパリン、エラスチンとポリリジン、フィブロネクチンとコラーゲン、ラミニンとコラーゲン、ビトロネクチンとコラーゲン、RGD結合コラーゲン又はRGD結合ゼラチンとコラーゲン又はゼラチン等の組合せがあげられ、中でもフィブロネクチンとゼラチン、ラミニンとゼラチンの組合せが好ましく、より好ましくはフィブロネクチンとゼラチンとの組合せである。なお、RGD配列を有する第1物質と相互作用する第2物質は、それぞれ一種類ずつでもよいし、相互作用を示す範囲で二種類以上をそれぞれ併用してもよい。
【0022】
(正の電荷を有する第1物質)
正の電荷を有する第1物質のうち、正の電荷を有するタンパク質としては、例えば、水溶性タンパク質が好ましく、例えば、塩基性コラーゲン、塩基性ゼラチン、リゾチーム、シトクロムc、ペルオキシダーゼ、ミオグロビン等が挙げられる。また、正の電荷を有する第1物質のうち、正の電荷を有する高分子としては、天然由来高分子及び合成高分子が挙げられ、天然由来高分子としては、例えば、水溶性ポリペプチド、低分子ペプチド、ポリリジン等のポリアミノ酸、ポリエステル、糖、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート及びその共重合体等が挙げられ、前記合成高分子としては、例えば、直鎖型、グラフト型、くし型、樹状型、星型等のポリマー又は共重合体が挙げられ、具体的には、キチン、キトサン、ポリ(α−リジン)、ポリ(ε−リジン)、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリアリルアミンハイドロクロライド、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアミドアミンデンドリマー等があげられる。
【0023】
(負の電荷を有する第2物質)
負の電荷を有する第2物質のうち、負の電荷を有するタンパク質としては、例えば、水溶性タンパク質が好ましく、例えば、酸性コラーゲン、酸性ゼラチン、アルブミン、グロブリン、カタラーゼ、β−ラクトグロブリン、チログロブリン、α−ラクトアルブミン、卵白アルブミン等が挙げられる。また、負の電荷を有する第2物質のうち、負の電荷を有する高分子としては、天然由来高分子及び合成高分子が挙げられ、前記天然由来高分子としては、例えば、水溶性ポリペプチド、低分子ペプチド、ポリリジン等のポリアミノ酸、ポリエステル、糖、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネートおよびその共重合体等が挙げられ、前記合成高分子としては、例えば、直鎖型、グラフト型、くし型、樹状型、星型等のポリマー又は共重合体が挙げられ、具体的には、ポリエステル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、末端カルボキシ化ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0024】
正の電荷を有する第1物質と負の電荷を有する第2物質との組合せとしては、例えば、キトサンとデキストラン硫酸との組合せ、ポリアリルアミンハイドロクロライドとポリスチレンスルホン酸との組合せ、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドとポリスチレンスルホン酸との組合せ等があげられ、好ましくはキトサンとデキストラン硫酸との組合せである。なお、第1物質と第2物質は、それぞれ一種類ずつでもよいし、相互作用を示す範囲で二種類以上をそれぞれ併用してもよい。
【0025】
また、本発明における細胞外マトリックスの成分としては、より生体の組織を模倣するという観点から、天然の(すなわち、生体内の)細胞外マトリックスに含まれる成分を使用することが好ましく、同様の観点からは、ヒトの細胞外マトリックスの代替成分の1つとして使用されることがある、ヒトに存在しない成分であるキトサンを含まなくてもよい。
【0026】
[基板との接触層]
本発明における三次元細胞培養体のうち基板と接触する層は、細胞外マトリックスの層であってもよく、細胞層であってもよい。基材を細胞層が足場とできない場合には、三次元細胞培養体を配置する領域に上述の細胞外マトリックスを配置するかあるいは従来公知の細胞培養のためのコーティングを施すことが好ましい。
【0027】
三次元細胞培養体の一実施形態を図2に示す。図2の三次元細胞培養体3は、基板2上に形成されており、細胞外マトリックス層8〜11上にそれぞれ形成された細胞層4〜7からなる。上述したとおり、細胞層4〜7における細胞の種類は同一又は異なっていてもよい。また、基板2を細胞層4の足場とできる場合あるいは基板2に細胞層4の足場となるコーティグがされている場合には、細胞外マトリックス8を省略して細胞層4を配置してもよい。なお、図2に示す実施形態は本発明における三次元細胞培養体の単なる一例であって、本発明はその他の実施形態を含みうる。
【0028】
[基板投影形状]
本発明において、三次元細胞培養体チップの基板上に配置される三次元培養細胞体は、安全性や薬物動態に関する試験・検査の効率化及び容易化の観点から、その基板投影形状を含む最小円の直径が10μm〜20mmであって、20μm〜10mmが好ましく、30μm〜5mmがより好ましく、40μm〜2.5mmがさらに好ましく、50μm〜2mmがさらにより好ましい。
【0029】
本発明において、「基板投影形状」とは、三次元細胞培養体を基板法線方向から観察した場合に得られる形状をいい、例えば、本発明の三次元細胞培養体チップを顕微鏡観察することにより得ることができる。なお、本発明において基板投影形状は、円、楕円、多角形などであってよく、特に限定されない。
【0030】
本発明において、「基板投影形状を含む最小円」とは、前記基板投影形状を内部に含む最小の円をいい、例えば、前記基板投影形状の顕微鏡観察データを適切なソフトウエアでイメージ解析するなどして当業者であれば容易に得ることができる。
【0031】
[配置される三次元細胞培養体の数]
本発明の三次元細胞培養体チップの基板上に空間的に離れて配置される三次元培養細胞体の数は、安全性や薬物動態に関する試験・検査の効率化及び容易化の観点から、2以上であって、3以上が好ましく、6以上がより好ましく、12以上がさらに好ましい。配置される三次元細胞培養体の数の上限としては、基板上に空間的に離れて配置される範囲であって、例えば、10000以下、5000以下、1000以下、500以下、100以下、50以下である。
【0032】
本発明において、三次元細胞培養体が「基板上に空間的に離れて配置される」とは、基板上の三次元細胞培養体が互いに接触しないように配置されることをいう。2つの三次元細胞培養体の間隔は、それぞれの基板投影形状の大きさに応じて決定することができ、例えば、500μm、1000μm、2000μmなどのように設定できる。
【0033】
本発明の三次元細胞培養体チップは、例えば、後述する「三次元細胞培養体チップの製造方法」により、例えば、インクジェット式吐出装置などの噴射装置を用いて製造することができる。
【0034】
[基板]
本発明の三次元細胞培養体チップに用いる基板としては、特に制限されず、例えば、ガラス、各種ポリマー、ろ紙、金属、ハイドロゲル等の従来公知の材料を適宜使用できる。基板の形状は、特に制限されず、例えば、通常のバイオチップで採用されている形状であってよく、矩形の板状が挙げられる。
【0035】
三次元細胞培養体を配置する基板の領域は、細胞培養に適するように足場のコーティングなどの改質が行われていてもよく、あるいは、細胞外マトリックス層を形成する際ににじみを抑制し形成しやすいようにするために基板上のマトリックス形成領域を親水性としてその他の領域を疎水性とするコーティングにより改質が行われていてもよい。また、三次元細胞培養体が配置される基板表面は平面であってもよく、あるいは、三次元細胞培養体を配置するための凹部又はウェル(以下、単に凹部という)が形成されていてもよい。前記凹部が形成されると、配置した細胞の移動を抑制できるという利点がある。また、前記凹部が形成されると、基板上における三次元細胞培養体の空間的に離れた配置が容易になるという利点がある。さらに、前記凹部が形成されると、前記凹部ごとに細胞培養液を独立して供給することが可能となり、例えば、同一チップ上で、凹部の数に応じた種類の細胞培養液を用いて試験・検査することができ、試験・検査の効率化及び容易化がいっそう向上し得る。
【0036】
本発明の三次元細胞培養体チップにおける基板の一実施形態を図3に示す。図3Aは、三次元細胞培養体を配置するための凹部33が形成された基板32の模式図を示し、図3Bは、凹部33の上面模式図及び断面模式図を示す。凹部33の底の直径dとしては、安全性や薬物動態に関する試験・検査の効率化及び容易化の観点から、例えば10μm〜20mmであって、20μm〜10mmが好ましく、30μm〜5mmがより好ましく、40μm〜2.5mmがさらに好ましく、50μm〜2mmがさらにより好ましい。凹部33の上部開口部の直径dとしては、前記凹部33の底の直径dよりも、例えば0〜5mm、好ましくは0.5〜5mmだけ長くなるように設定できる。凹部33の深さdとしては、例えば、インクジェット吐出装置の使用を妨げない点から、2mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましく、0.5mmさらに以下が好ましい。また、凹部33の深さdとしては、細胞の移動を抑制する点及び又は細胞培養液を凹部ごとに配置する点から、0.01mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、0.2mm以上がさらに好ましい。なお、本発明における基板は、この実施形態以外の形態の基板を含みうる。
【0037】
[三次元細胞培養体チップの製造方法]
本発明は、その他の一態様において、三次元細胞培養体チップの製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう)であって、基板上の空間的に離れた少なくとも2つの所定の領域に第1液と第2液とを交互に配置して細胞外マトリックスを形成すること、前記所定の領域に細胞含有溶液を配置することにより細胞層を形成すること、及び、前記細胞外マトリックス形成及び前記細胞層形成を交互に行い、前記所定の領域に前記基板の法線方向に積層された少なくとも2層の細胞層を備える三次元細胞培養体を形成することを含み、前記第1液の含有物と前記第2液の含有物との組合せが、RGD配列を有するタンパク質若しくは高分子と前記RGD配列を有するタンパク質若しくは高分子と相互作用するタンパク質若しくは高分子との組合せ、又は、正の電荷を有するタンパク質若しくは高分子と負の電荷を有するタンパク質若しくは高分子との組合せであり、前記第1液、第2液、及び、細胞含有溶液の配置が、液吐出ノズルを備える噴射装置により行われる、三次元細胞培養体チップの製造方法に関する。
【0038】
すなわち、本発明の製造方法は、基板の空間的に離れた少なくとも2つの所定の場所において溶液吐出ノズルを備える噴射装置を用いて細胞外マトリックス形成と細胞層形成とを交互に行うことを含む三次元細胞培養体チップの製造方法である。本発明の製造方法によれば、三次元細胞培養体のバイオチップ化が簡便にできるという効果を好ましくは奏する。また、本発明によれば、本発明の三次元細胞培養体チップを製造できるという効果を奏する。したがって、本発明は、さらにその他の一態様において、本発明の製造方法により製造された三次元細胞培養体チップに関する。
【0039】
[細胞外マトリックス形成]
本発明の製造方法における細胞外マトリックス形成は、基板上の所定の場所又は前記所定の場所に形成された細胞層上に、第1液と第2液とを交互に配置することにより行う。第1液に含有される含有物は、上述したRGD配列を有する第1物質及び正の電荷を有する第1物質から選択して使用でき、第2液に含有される含有物は、上述した相互作用する第2物質及び負の電荷を有する第2物質からそれぞれ選択して使用できる。ここで第1液又は第2液の含有物とは、前記液の液媒体に溶解及び又は分散して含まれる物質をいう。第1液の含有物及び第2液の含有物の好ましい組合せも上述の通りである。
【0040】
第1液及び第2液の基板の所定領域への配置は、それぞれ、液吐出ノズルを備える噴射装置を用いて行う。本発明において、「液吐出ノズルを備える噴射装置」とは、基板上の所定の領域に微量(例えば、蒸留水で2〜100pl)の液滴を吐出できる装置をいい、例えば、ピエゾ駆動のインクジェット式吐出装置が挙げられる。前記噴射装置とその駆動制御装置、及び、基板を保持するステージ又は噴射装置のxy平面の移動手段とその駆動制御を組み合わせることで、基板上の空間的に離れた少なくとも2つの所定の場所に正確かつ簡便に細胞外マトリックスを形成できる。
【0041】
一回の配置で吐出する第1液及び又は第2液の液滴数は、形成する三次元細胞培養体の投影形状の大きさに応じて適宜調整可能であって、例えば、1〜10000滴の範囲の液滴数が挙げられる。また、第1液及び第2液を一回ずつ配置して形成される細胞外マトリックス薄膜の厚みは約1〜20nmであって、希望する細胞外マトリックスの厚みに応じて第1液及び第2液を繰り返せばよい。あるいは、第1液及び第2液に含まれる第1物質及び第2物質の濃度の高低により厚みを調節してもよい。これらの方法により、例えば、厚みが1〜1000nm、好ましくは1〜300nm、より好ましくは5〜100nmの細胞外マトリックス層を形成できる。
【0042】
第1液及び第2液における第1物質及び第2物質の含有量としては、前記噴射装置の操作性及び細胞外マトリックスの形成の観点から、0.0001〜1質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%がより好ましく、0.02〜0.1質量%がさらに好ましい。
【0043】
第1液及び第2液における溶媒又は分散媒体(以下、単に溶媒ともいう)は、特に制限されないが、水や緩衝液等の水性溶媒が挙げられ、前記緩衝液としては、例えば、Tris−HCl緩衝液等のTris緩衝液、リン酸緩衝液、HEPES緩衝液、クエン酸−リン酸緩衝液、グリシルグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液、Britton‐Robinson緩衝液、GTA緩衝液等が使用でき、そのpHも、特に制限されないが、例えば、3〜11であり、好ましくは6〜8であり、より好ましくは7.2〜7.4である。第1液及び第2液は、例えば、第1物質及び第2物質を前記溶媒に溶解若しくは分散させることによって調製できる。第1液及び第2液は、さらに、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩化カリウム、リン酸水素ナトリウム、硫酸マグネシウム、コハク酸ナトリウム等の塩を含有してもよい。いずれか一方が前記塩を含有してもよい。塩濃度は、特に制限されないが、例えば、1×10-6〜2Mであり、好ましくは1×10-4〜1Mであり、より好ましくは1×10-4〜0.05Mである。塩は、一種類でもよいし二種類以上を併用してもよい。
【0044】
第1液及び第2液は、必要に応じ、さらに、細胞成長因子、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、生理活性ペプチド、疾患の治療剤、予防剤、抑制剤、抗菌剤、抗炎症剤等の医薬組成物等を含有してもよい。
【0045】
[細胞層形成]
本発明の製造方法における細胞層形成は、基板上の所定の場所又は前記所定の場所に形成された細胞マトリックス上に細胞含有溶液を配置することにより行う。細胞含有溶液の配置は、第1液及び第2液の配置と同様に、液吐出ノズルを備える噴射装置(例えば、インクジェット式吐出装置)を用いて行うことができる。前記噴射装置とその駆動制御装置、及び、基板を保持するステージ又は噴射装置のxy平面の移動手段とその駆動制御装置を組み合わせることで、基板上の空間的に離れた少なくとも2つの所定の場所に正確かつ簡便に細胞層を形成できる。
【0046】
細胞層の形成においては、細胞含有溶液の配置後、一定時間インキュベーションすることが好ましい。このインキュベーションにより、配置された細胞が二次元(平面方向)に増殖して単層の細胞層を形成しやすくなる。インキュベーションの条件としては、特に制限されず、細胞に応じて適宜決定できる。一般的な条件としては、温度は、例えば、4〜60℃、好ましくは20〜40℃、より好ましくは30〜37℃であり、時間は、例えば、1〜168時間であり、好ましくは3〜24時間、より好ましくは3〜12時間である。また、細胞培養に使用する培地も特に制限されず、細胞に応じて適宜使用でき、例えば、Eagle’s MEM培地、Dulbecco’s Modified Eagle培地(DMEM)、Modified Eagle培地(MEM)、Minimum Essential培地、RDMI、GlutaMax培地、無血清培地等が使用できる。
【0047】
前記噴射装置に適用する細胞含有溶液の細胞濃度は、前記噴射装置の操作性及び細胞層形成の効率化の観点から、(1.0)×104〜(1.0)×109cells/mLが好ましく、(1.0)×105〜(1.0)×108cells/mLがより好ましく、(1.0)×106〜(1.0)×107cells/mLがさらに好ましい。細胞含有液の媒体としては、上述の培地、及び又は、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、HEPES、PBSなどが使用できる。
【0048】
[噴射装置]
本発明の製造方法に使用する液吐出ノズルを備える噴射装置は、上述のとおり、第1液、第2液、及び、細胞含有液を基板上の所定の領域に吐出できる装置であって、例えば、ピエゾ駆動のインクジェット式吐出装置を採用できる。当業者であれば、適切なインクジェット式吐出装置を採用することは容易である。前記噴射装置はその駆動制御装置、及び、基板を保持するステージ又は前記噴射装置のxy平面の移動手段とその駆動制御を組み合わせることで、基板上の空間的に離れた少なくとも2つの所定の場所に正確かつ簡便に細胞外マトリックス及び細胞層を形成できる装置とすることが好ましい。
【0049】
[評価方法]
本発明は、さらにその他の一態様において、評価方法であって、本発明の三次元細胞培養体チップを用い、前記チップ上の三次元細胞培養体の少なくとも1つと、評価対象である化合物、医薬組成物、化粧品、及び、食品からなる群から選択される物質とを接触させることを含む評価方法に関する。本発明の評価を用いれば、例えば、医薬、製薬、化粧品、食品及び環境の分野における安全性や薬物動態に関する試験・検査を行うことができるという効果を好ましくは奏する。さらに、それらの試験・検査についてヒトの生体をよく反映した信頼性の高い結果を得られるという効果を好ましくは奏する。あるいは、本発明の評価を用いれば、例えば、再生医療分野においてヒトの組織への分化誘導に関する試験・研究が、容易かつ効率的に行うことができるという効果を好ましくは奏し得る。したがって、本発明は、さらにその他の一態様において、評価キットであって、上記の本発明の評価方法行うためのキットであって、本発明の三次元細胞培養体チップを含むキットに関する。
【0050】
以下、実施例を用いて本発明をさらに説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定して解釈されない。
【実施例】
【0051】
以下のようにして、基板上に細胞層を4層含む三次元細胞培養体が配置されたバイオチップを作製した。なお、基板に近い細胞層から第1層〜第4層とした場合における第1と第2、第2と第3、及び、第3と第4の細胞層の間には、第1液と第2液とを交互に配置することにより得られる細胞外マトリックスを形成した。基板と第1細胞層との間には下地膜を配置し、第4細胞層の細胞は蛍光標識した細胞を使用した。細胞外マトリックス形成用の第1液及び第2液、並びに、細胞含有溶液の基板への配置は、下記のインクジェット式吐出システムを使用して行った。
【0052】
[細胞外マトリックス形成用溶液]
第1液:0.2mg/mlフィブロネクチン、50mMトリス緩衝液(pH=7.4)溶液。
第2液:0.2mg/mlゼラチン、50mMトリス緩衝液(pH=7.4)溶液。
【0053】
[細胞含有液]
2x107cells/mLのマウスL929線維芽細胞、50mMトリス緩衝液(pH=7.4)の溶液。但し、第4層用の細胞は、CellTracker(商標)グリーン(CMFDA、Molecular Probes社製)で標識した細胞を用いた。
【0054】
[下地膜用溶液]
0.2mg/mlのフィブロネクチン、50mMトリス緩衝液(pH=7.4)の溶液。
【0055】
[基板]
図3の凹部33のようなウェルを50個備える基板(25mm×76mm)を使用した。なお、ウェルの寸法は、図3B寸法におけるd〜dで示すと、d=1mm、d=3mm、及び、d=0.2mmであった。
【0056】
[吐出システム]
基板のウェルへの上記溶液の配置は、下記インクジェット式吐出装置及び駆動装置のほか、基板が配置されるステージが平面方向(x−y方向)に移動制御可能な移動手段とその駆動制御装置及び観察システムを含む吐出システム(クラスターテクノロジー社製)を使用した。前記インクジェット式吐出装置として、パルスインジェクター(商標、クラスターテクノロジー社製)を使用し、インクジェット式吐出装置の駆動装置として、WaveBuilder(商標、クラスターテクノロジー社製)を使用した。
【0057】
[三次元細胞培養体チップの製造]
以下のようにして9つのウェルそれぞれに三次元細胞培養体を作製し、三次元細胞培養体チップを製造した。まず、前記ウェルそれぞれに下地膜用溶液を、7V、1000Hzの条件で10000滴吐出して細胞接着のための下地膜を作製した。その後、細胞含有液を各ウェルに17V、1000Hzの条件で10000滴吐出した。これを4回繰り返すことで、ウェルを完全に覆う細胞数を吐出した。細胞培養インキュベーター(37℃、5%CO2)で一晩培養することで細胞を接着させた(第1細胞層)。次に、細胞外マトリックス形成用第1溶液を、各ウェルに7V、1000Hzの条件で細胞表面へ5000滴吐出し、その後細胞外マトリックス形成用第2溶液を、7V、1000Hzの条件で5000滴吐出した。このフィブロネクチンとゼラチンの吐出を交互に9回繰り返すことで、細胞表面にフィブロネクチンーゼラチンの薄膜(細胞外マトリックス)を形成した。その後すぐに、前記細胞外マトリックスの上に、細胞含有液を17V、1000Hzの条件で10000滴吐出を4回繰り返すことで第2層目の細胞を播種した。インキュベーターで一晩培養することで、細胞を接着させた(第2細胞層)。この細胞外マトリックス形成と細胞層形成を繰り返し、9つのウェルそれぞれに4層の細胞層が積層された構造の三次元細胞培養体を作製した。これらの三次元細胞培養体は、基板上に空間的に離れて配置された三次元細胞培養体である。なお、上述したとおり、第4層目の細胞はセルトラッカーグリーンで蛍光標識後に吐出した。
【0058】
図4Aに、第1、2及び4層の細胞層形成後の位相差顕微鏡観察写真(×4、×10、及び×20)を示し、図4Bに、40倍(×40)で観察した第4層の位相差顕微鏡観察写真、蛍光差顕微鏡観察写真及びそれらをマージした写真を示す。図4Aに示すとおり、基板投影形状がほぼ円形(直径約1mm)の三次元細胞積層体が得られた。また、図4Bに示すとおり、蛍光標識された細胞は、最上部で細胞層を形成した。
【産業上の利用可能性】
【0059】
上述したとおり、本発明は、例えば、医薬、製薬、化粧品、食品、再生医療、環境保全などの分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、本発明の三次元細胞培養体チップの一例を示す模式図である。
【図2】図2は、本発明における三次元細胞培養体の一例を示す模式図である。
【図3】図3は、本発明における基板の一例を示す図である。
【図4】図4A及びBは、三次元細胞培養体チップに形成された三次元細胞培養体の顕微鏡観察写真の一例である。
【符号の説明】
【0061】
1 三次元細胞培養体チップ
2 基板
3 三次元細胞培養体
32 基板
33 凹部(ウェル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元細胞培養体チップであって、
基板と、前記基板上に空間的に離れて配置される2つ以上の三次元細胞培養体とを備え、
前記三次元細胞培養体は、前記基板の法線方向に積層された少なくとも2層の細胞層を有し、
前記三次元細胞培養体の基板投影形状を含む最小円の直径は、10μm〜20mmである、三次元細胞培養体チップ。
【請求項2】
前記三次元細胞培養体は、RGD配列を有するタンパク質若しくは高分子と前記RGD配列を有するタンパク質若しくは高分子と相互作用するタンパク質若しくは高分子との組合せ、又は、正の電荷を有するタンパク質若しくは高分子と負の電荷を有するタンパク質若しくは高分子との組合せを含む細胞外マトリックスを含む、請求項1記載の三次元細胞培養体チップ。
【請求項3】
前記基板上の空間的に離れた少なくとも2つの所定の領域に第1液と第2液とを交互に配置して細胞外マトリックスを形成すること、
前記所定の領域に細胞含有溶液を配置することにより細胞層を形成すること、及び、
前記細胞外マトリックス形成及び前記細胞層形成を交互に行い、前記所定の領域のそれぞれに前記三次元細胞培養体を形成することを含む製法により製造され得る三次元細胞培養体チップであって、
前記第1液の含有物と前記第2液の含有物との組合せが、RGD配列を有するタンパク質若しくは高分子と前記RGD配列を有するタンパク質若しくは高分子と相互作用するタンパク質若しくは高分子との組合せ、又は、正の電荷を有するタンパク質若しくは高分子と負の電荷を有するタンパク質若しくは高分子との組合せである、請求項1又は2記載の三次元細胞培養体チップ。
【請求項4】
前記第1液、第2液、及び、細胞含有溶液の配置が、液吐出ノズルを備える噴射装置により行われる、請求項3記載の三次元細胞培養体チップ。
【請求項5】
三次元細胞培養体チップの製造方法であって、
基板上の空間的に離れた少なくとも2つの所定の領域に第1液と第2液とを交互に配置して細胞外マトリックスを形成すること、
前記所定の領域に細胞含有溶液を配置することにより細胞層を形成すること、及び、
前記細胞外マトリックス形成及び前記細胞層形成を交互に行い、前記所定の領域に前記基板の法線方向に積層された少なくとも2層の細胞層を備える三次元細胞培養体を形成することを含み、
前記第1液の含有物と前記第2液の含有物との組合せが、RGD配列を有するタンパク質若しくは高分子と前記RGD配列を有するタンパク質若しくは高分子と相互作用するタンパク質若しくは高分子との組合せ、又は、正の電荷を有するタンパク質若しくは高分子と負の電荷を有するタンパク質若しくは高分子との組合せであり、
前記第1液、第2液、及び、細胞含有溶液の配置が、液吐出ノズルを備える噴射装置により行われる、三次元細胞培養体チップの製造方法。
【請求項6】
前記噴射装置が、インクジェット式吐出装置である、請求項5記載の三次元細胞培養体チップの製造方法。
【請求項7】
評価方法であって、請求項1から4のいずれかに記載の三次元細胞培養体チップを用い、前記チップ上の三次元細胞培養体の少なくとも1つと、評価対象である化合物、医薬組成物、化粧品、及び、食品からなる群から選択される物質とを接触させることを含む、評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−98958(P2010−98958A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271067(P2008−271067)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(502078804)株式会社ビーエムティーハイブリッド (3)
【Fターム(参考)】