説明

三次元繊維芽細胞構築物の細胞播種および共培養

本発明は、三次元繊維芽細胞構築物上に播種する方法、筋細胞により播種された三次元繊維芽細胞構築物、およびそれらの使用方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元繊維芽細胞構築物上に播種する方法、筋細胞により播種された三次元繊維芽細胞構築物、およびそれらの使用方法に関する。
(関連出願)
本願は、その全体を本明細書に援用する2009年4月9日に出願された米国仮特許出願番号第61/212,280号の優先権を主張する。
(配列表の記述)
配列表は電子形式でのみ出願され、援用により本明細書の一部をなすものとする。ファイル名「10-314-PCTseqlist_ST25.txt」の配列表は2010年4月9日に作成したものであり、サイズは32,609バイトである。
(政府の権利の記述)
本発明は米国復員軍人援護局(Veterans Administration)の助成番号#0128の下
、政府支援で成されたものである。米国政府は本発明の一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
米国の65歳以上の患者の入院診断となる第1位である慢性心不全(CHF)および関連する虚血性ならびに非虚血性心疾患には、新しい治療が必要とされている。心不全の有病率は500万人を超え、発生率は年間550,000人の患者である。心不全は癌、偶発事故、および脳卒中の併発よりも死亡する可能性が高いため、年間約180兆円(230億ドル)超のコストがかかる。ひとたび患者に、ニューヨーク心臓協会分類のNY クラスIIIまたはIVの心不全の徴候が出ると、心臓移植をしなければ患者の死亡率は2年間で50%に近づく。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
CHFの治療の最新のアプローチは、多くの異なる細胞型を使用して心臓に幹細胞および/または始原細胞を直接注入することである。しかしながら、そのような注入法を使用した最近の臨床試験の結果は、概して失望的なものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1態様では、本発明は、3DFCに付着された筋細胞を含む構築物であって、前記構築物は3DFCに渡る自発的な同期収縮を可能とし、
前記筋細胞は0.5×106細胞/cm2から5×106細胞/cm2までの間の密度で構築物上に播種されるか、および
前記筋細胞は前記3DFC上の繊維芽細胞比に対して約1:10から約10:1までの間の比で存在するか
の少なくとも一方である構築物を提供する。1実施形態では、筋細胞は心筋細胞または心臓幹細胞を含む。
【0005】
第2態様では、本発明は、心筋細胞の機能不全を特徴とする疾患を治療する方法であって、前記疾患に罹患している患者の心臓を、前記疾患を治療するのに有効な量の本発明の上記第1態様のいずれかの実施形態の構築物と接触させることを含む方法を提供する。種々の実施形態では、疾患は、慢性心不全(CHF)、心不全を伴わない虚血、心筋症(例えば拡張型心筋症(DCM))、心停止、うっ血性心不全、安定狭心症、不安定狭心症、心筋梗塞、冠動脈疾患、心臓弁膜症、虚血性心疾患、駆出率の減少、心筋潅流の減少、不適応性心臓リモデリング(例えば左心室リモデリング)、左心室機能の低下、左心室不全、右心室不全、後方心不全(静脈背圧の増加)、前方心不全(十分な動脈潅流供給の不全
)、収縮期の機能障害、拡張期の機能障害、体血管抵抗、低拍出性心不全、高拍出性心不全、運動時呼吸困難、休息時呼吸困難、起坐呼吸、頻呼吸、発作性夜間呼吸困難、めまい、錯乱、休息時の冷たい四肢、運動不耐性、易疲労感、末梢性浮腫、夜間多尿、腹水、肝腫、肺水腫、チアノーゼ、側臥時の心尖拍動、奔馬性調律、心雑音、傍胸骨の隆起、および胸水から選択される。
【0006】
第3態様では、本発明は、三次元繊維芽細胞構築物(3DFC)に細胞を播種する方法であって、
(a)培養された3DFCを、3DFC上に播種される細胞の懸濁液と接触させること、
(b)懸濁液内の細胞に、前記細胞を3DFCと接触させる力を加えること、および
(c)前記細胞が3DFCに付着するのに適した条件下で細胞を培養すること、
からなる方法を提供する。
【0007】
第4の態様では、本発明は、三次元繊維芽細胞構築物(3DFC)に細胞を播種する方法であって、
(a)培養された3DFCを、3DFC上に播種される細胞シートと接触させること、および
(b)細胞シートが3DFCに付着するのに適した条件下で細胞シートを培養すること、
からなる方法を提供する。
【0008】
第5の態様では、本発明は、本発明の上記第3態様または第4態様のいずれかの実施形態の方法を使用して製造された本発明の第1態様のいずれかの実施形態の構築物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】播種後に、10分後(A)および24時間後(B)の3DFC上で共培養されたCFDA−seでタグ付けされた内皮始原細胞。陽性に染色されたCFDA−seでタグ付けされた細胞は緑色の蛍光を発しており、これは3DFC上に播種された追加の細胞が残存し増殖していることを示している。生物分解性vicrylメッシュを背景に見ることが可能である。
【図2】インタクトな細胞シートの分離後の培養プレート中の内皮始原細胞。細胞は、すべての細胞間接着因子を維持しており、3DFC上に播種され、共培養することが可能である。
【図3】H&E染色後の内皮始原細胞シート。濃紫色は核を示し、薄いピンクは細胞質を示す。画像は(A)細胞シート全体(直径8mm以下)および(BおよびC)より高い倍率を示す。
【図4】40倍の時間が経過した画像。(A)対照、(B)NCM−3DFC、および(C)NCM−3DFC+ハロタンで処理したパッチ。6日間培養し、NBDを連続的に注入。(A)1つの繊維芽細胞の注入。染料の移動がないことに注意する。(B)一つの新生児の心筋細胞をNCM−3DFC上に注入すると多数の隣接細胞へ広がる。(C)一つの新生児の心筋細胞を、ハロタンで処理したNCM−3DFC上に注入。ハロタンによるコネクシンの遮断により染料の移動が妨害されていることに注意する。ハロタン処理の15〜20分後には、細胞はギャップ結合を使用する能力を回復している。
【図5】心筋細胞が播種されたパッチでは、3週間後に、シャムラットに対して処理ラットでEFが25%改善した。データは平均±SEである。NCM−3DFC=新生児心筋細胞 3DFC;SO=シャム操作。SO、n=21;UN、n=12;3DFC、n=9;NCM−3DFC、n=9。* P<0.05 SOに対して。;@P<0.05 UNに対して;# P<0.05 3DFCに対して。
【図6】心筋細胞が播種されたパッチでは、3週間後に、シャムラットに対して処理ラットで心係数(ml/(分×グラム)が55%改善した。データは平均±SEである。NCM−3DFC=新生児心筋細胞 3DFC;SO=シャム操作。SO、n=21;UN、n=12;3DFC、n=9;NCM−3DFC、n=9。*P<0.05 SOに対して;@P<0.05 UNに対して;#P<0.05 3DFCに対して。
【図7】心筋細胞が播種されたパッチでは、3週間後に、シャムラットに対して処理ラットで拡張終期圧力(mmHg)が改善した。データは平均±SEである。NCM−3DFC=新生児心筋細胞 3DFC;SO=シャム操作。SO、n=19;UN(未処理)、n=12;3DFC、n=9;NCM−3DFC、n=9。*P<0.05 SOに対して;@P<0.05 UNに対して;#P<0.05 3DFCに対して。
【図8】(A)ヘマトキシリンおよびエオシン染色した3DFC。(BおよびC)心筋細胞を播種した3DFC。(A)の3DFCは水平方向に10倍したものである。Vicryl束(紫色)および繊維芽細胞の核(青色/紫色の点)。(B)の心筋細胞を播種した3DFC(B)は水平方向に5倍したものである。(C)の心筋細胞を播種した3DFC(C)は水平方向に10倍したものである。大きな細胞の束(BおよびC)はvicryl繊維間に位置する心筋細胞から成る。
【図9】ヘマトキシリンおよびエオシン染色した3DFCを水平方向に10倍したものである。Vicryl束(紫色)および繊維芽細胞の核(青色/紫色の点)。
【図10】ヘマトキシリンおよびエオシン染色した心筋細胞を播種した3DFCを水平方向に5倍したもの。大きな細胞の束はvicryl繊維間に位置する心筋細胞から成る。
【図11】ヘマトキシリンおよびエオシン染色した心筋細胞を播種した3DFCを水平方向に10倍したもの。大きな細胞の束はvicryl繊維間に位置する心筋細胞から成る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で引用した文献はすべてその全体が本明細書に援用される。
本願では、他に別記されていなければ、使用される技術は以下のいくつかの周知の参照文献に見い出されてもよい:Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Sambrook, et al., 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press), Gene Expression Technology (Methods in Enzymology, Vol. 185, edited by D. Goeddel, 1991. Academic Press, San Diego, CA), “Guide to Protein Purification” in Methods in Enzymology (M.P. Deutshcer, ed., (1990) Academic Press, Inc.); stocktickerPCR Protocols: A Guide to Methods and Applications (Innis, et al. 1990. Academic Press, placeCitySan Diego, StateCA), Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique, 2nd Ed. (R.I. Freshney. 1987. Liss, Inc. New York, NY), Gene Transfer and Expression Protocols, pp. 109-128, ed. E.J. Murray, The Humana Press Inc., Clifton, N.J.), および the Ambion 1998 Catalog (Ambion, Austin, TX)。
【0011】
本明細書に使用する場合、単数形(英語で「a」、「an」および「the」)は文脈が別段指示していない限り、複数の参照物を含む。本明細書に使用する場合、「および」は文脈が別段指示していない限り、「または」と互換的に使用される。
【0012】
文脈が別段指示していない限り、本明細書に開示されたすべての実施形態は、他の実施形態と組み合わせることが可能である。
第1態様では、本発明は、三次元繊維芽細胞構築物(3DFC)に細胞を播種する方法であって、
(a)培養された3DFCを、3DFC上に播種される細胞の懸濁液と接触させること、
(b)懸濁液内の細胞に、前記細胞を3DFCと接触させる力を加えること、および
(c)前記細胞が3DFCに付着するのに適した条件下で細胞を培養すること、
からなる方法を提供する。
【0013】
発明者らは、3DFCに付着される細胞が溶液から出てパッチ上へは十分に定着せず、細胞表面接着分子によって3DFCに付着しないことを発見した。3DFCに播種する初期の試みは、標準的な重力が3DFC上へと所望の細胞を「定着させる」であろう概念で、培地中に懸濁された細胞の配置を評価した。見出された結果は、大多数の細胞が下にある培養プレートまで通過し、3DFC上に保持される細胞が少ないというものであった。よって、発明者らは、細胞を3DFCの表面に付着させるために、本発明の上記第1態様の方法を開発した。以下に詳細に説明するように、そのようにして播種された3DFCは、例えば細胞療法に使用することが可能である。
【0014】
本明細書に使用する場合、「三次元繊維芽細胞構築物」は、構築物中の細胞により架橋された間質腔を有する三次元構造へと形成された生体適合性の生きていない材料を含む三次元マトリックス上で生育された、繊維芽細胞を含む構築物である。所与の目的に適切なように、3DFCは繊維芽細胞に加えた細胞型を含んでもよいことが理解されるだろう。例えば、3DFCは内皮細胞を含むがそれらに限定されない他のストロマ細胞を含んでもよい。例えば、その全体を本明細書に援用する米国特許出願公開第2009/0269316号および米国特許第4,963,489号を参照されたい。
【0015】
繊維芽細胞および他の細胞は胎児由来であってもよいし、成体由来であってもよく、皮膚、心筋、平滑筋、骨格筋、肝臓、膵臓、脳、脂肪組織(脂肪)等の便利な供給源に由来してもよい。そのような組織または器官は適切な生検または死体解剖で得ることが可能である。本発明のすべての態様の別の実施形態では、繊維芽細胞および他の細胞はヒト細胞である。本発明のすべての態様の別の実施形態では、3DFCは、生きた代謝活性のある組織を生産するために生体吸収性のメッシュ上にインビトロで培養された新しい皮膚繊維芽細胞がマトリックスに埋め込まれた、ヒト皮膚構築物である。繊維芽細胞はメッシュに渡って増殖し、自己生産した皮膚マトリックスに自身を埋め込んで、ヒト皮膚コラーゲン、フィブロネクチンおよびグリコサミノグリカン(GAG)を含む種々の増殖因子およびサイトカインを分泌する。培養中、繊維芽細胞はVEGF(血管内皮増殖因子)、HGF(肝細胞増殖因子)、bFGF(塩基性繊維芽細胞増殖因子)およびアンジオポエチン−1(例えば、J. Anat. (2006) 209, pp527-532参照)の血管新生増殖を生産する。
【0016】
3DFC上に播種される細胞は、任意の所望の型であってもよく、それには筋細胞(骨格筋細胞、平滑筋細胞、心筋細胞等の心臓の筋細胞)またはその前駆細胞、内皮始原細胞、骨髄細胞、骨髄細胞、間充織幹細胞、臍帯血細胞またはそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されるわけではない。そのような細胞は当該技術分野の標準法を使用して分離することが可能であるか、または商業的供給源から得られてもよい。
【0017】
本発明のすべての態様の別の実施形態では、播種された細胞は心筋細胞および/または心臓幹細胞等のその前駆細胞を含む。成熟した成人の心臓には、自己更新し、クローン形成能があり、多能な内因性の心臓幹細胞が限られた数しかなく、それらは心筋細胞、およびより少ない程度に、平滑筋および内皮細胞に分化する。心臓幹細胞は単離できるとともに、培養中で無限に拡張可能である。1実施形態では、心臓幹細胞は細胞表面マーカであるLin−、c−Kit+、CD45−、CD34−により特徴付けられる。
【0018】
播種される細胞は、所与の目的のために対象の遺伝子産物を発現することが可能な組換え細胞であってもよい。以下により詳細に説明するような1つの別の実施形態では、サイモシンβ−4(TB4)、aktマウス胸腺種ウイルスがん遺伝子ホモログ(AKT1;アミノ酸配列の配列番号1、3または5)、ストロマ細胞由来因子−1α(SDF−1;
アミノ酸配列の配列番号7)および肝細胞増殖因子(HGF;アミノ酸配列の配列番号9)のうちの1つまたは複数を発現する操作された心筋細胞が3DFC上に播種される。異種の遺伝子産物を発現するよう細胞を操作し、核酸コーディング領域または遺伝子を遺伝子産物の発現を達成することが可能な任意のプロモータと連結する組換え発現ベクターによる細胞トランスフェクションを利用する技術は当該技術分野において周知である。従って、種々の実施形態では、細胞は、配列番号1、3、5、7、9および11のうちの1つまたは複数のポリペプチド配列をコードする核酸配列をコードする組換え発現ベクターを含む。種々の実施形態では、核酸配列は、配列番号2、4、6、8および10から選択される。哺乳類の系で開示された核酸配列の発現を駆動するために使用されるプロモータ配列は、構成性プロモータであってもよいし(CMV、シミアンウイルス40、RSV、アクチン、EF等を含むがこれらに限定されない種々のプロモータのうちの任意のものにより駆動される)、誘導性プロモータであってもよい(反応性で、テトラサイクリン、エクジソン、ステロイド応答を含むがこれらに限定されない種々の誘導性プロモータのうちの任意のものにより駆動される)。例えば、Sambrook, Fritsch, and Maniatis, in: Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989; Gene Transfer and Expression Protocols, pp. 109-128, ed. E.J. Murray, The Humana Press Inc., CityClifton, StateN.J.), およびthe Ambion 1998 Catalog (Ambion, placeCityAustin, StateTX)を参照されたい。
【0019】
培養された3DFCの、3DFC上に播種されるべき細胞の懸濁液との接触は、以下に説明する条件を含むがそれらに限定されない細胞を3DFCと接触させる力の適用を促進する任意の適当な条件下で行われ得る。1つの別の実施形態では、3DFCは、0.1〜5mlの培地、好ましくは0.25ml−2ml、より望ましくは0.5ml−1.0mlの培地に配置され、また、細胞懸濁液の体積が3DFCが配置される培地の体積の約2倍になるように、細胞は懸濁液に導入される。本明細書の任意の別の実施形態と組み合わせることが可能な1つの別の実施形態では、接触が約37℃で生じる。本明細書の任意の別の実施形態と組み合わせることが可能なさらに別の実施形態では、細胞懸濁液は少なくとも3×106細胞/mlの濃度であり、播種されるべき細胞が収縮性細胞である(例え
ば心筋細胞またはその前駆細胞)。本明細書の任意の別の実施形態と組み合わせることが可能なさらに別の実施形態では、細胞懸濁液は、少なくとも4×106細胞/mlおよび
5×106細胞/mlの濃度をしている。
【0020】
1実施形態では、播種されるべき各3DFCは、ウェルの底部をカバーし、平らになるようにウェルに配置される。発明者らは、3DFCがウェルの底部を被覆しない場合(播種3DFCがウェル内に配置されたとき)、細胞保持の減少が生じ、細胞を束ねてクランプすることによりパッチに渡って細胞が不均等に分配されることを発見した。
【0021】
懸濁液内の細胞に、前記細胞を3DFCと接触させる力を加えることは、任意の適切な力の使用を含んでもよく、それには遠心力および電場によって生成された電気力、またはそれらの力の組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。別の実施形態では、遠心力が使用される。加えられる遠心力は、3DFC上に播種されるべき細胞の型等の種々の要因によって決まる。本明細書の任意の別の実施形態と組み合わせることが可能な1つの別の実施形態では、構築物は1200rpmと1600rpmの間で2〜10分間遠心分離される。別の実施形態では、播種されるべきすべての3DFC構築物はウェル内に水平配置(垂直に対立するものとして)に置かれ、その結果、各ウェルは同じ半径で回転される。
【0022】
1つの別の実施形態では、力は、細胞懸濁液を適切な培地中での3DFCとの接触後に0−300秒以内加えられてもよい。力を加えた結果、懸濁液中のすべての細胞が3DFCと接触する必要はないことが当業者には理解され、細胞は好ましくは、3DFC上に播
種するために利用可能な場所をすべて飽和される量で存在する。1つの別の実施形態では、播種された細胞は互いに接触し、その結果多数の細胞層が3DFC上に提供される。心筋細胞またはその前駆細胞が使用される実施形態では、播種された細胞が3DFC上の繊維間の「谷」に存在することが好ましい(3DFC構造の説明に関しては以下を参照)。そのような心筋細胞を播種された3DFCの例証的な画像が図8−11に示される。
【0023】
細胞が3DFCに付着するのに適した条件下での細胞の培養は、以下の実施例における培地および条件のように、所与の目的に適した任意の培地および条件の使用を含んでもよい。任意の有用な培地を使用してよく、それにはウシ胎仔血清(5−15%;好ましくは10%)および他の適切な因子(重炭酸ナトリウムおよび抗生物質を含むが、それらに限定されない)が補給されたDMEM−LGが含まれるが、それらに限定されるわけではない。力を加えた結果、懸濁液中のすべての細胞が3DFCに付着する必要はないことが当業者には理解され、細胞は好ましくは、3DFC上での付着のために利用可能な場所をすべて飽和される量で存在する。本明細書で開示された任意の別の実施形態と組み合わせることが可能な別の実施形態では、細胞は、0.5×106細胞/cm2から5×106細胞
/cm2の間、より好ましくは1×106細胞/cm2から4×106細胞/cm2の間、最
も好ましくは1.5×106細胞/cm2から3×106細胞/cm2の間の範囲の細胞密度で3DFCに付着させられる。
【0024】
本明細書で開示された任意の別の実施形態と組み合わせることが可能なさらに別の実施形態では、培養することは、3DFCに付着された細胞の増殖をさらに含む。この実施形態では、そのような増殖が、懸濁された細胞の3DFCへの付着を促進するために使用されたのと同じかまたは異なる培養条件下で生じてもよい。3DFCに付着した細胞の増殖および/または分化を促進する適切な培養条件は、本明細書の開示に基づいて、当業者により決定することが可能である。
【0025】
本明細書の任意の別の実施形態と組み合わせることが可能な別の実施形態では、播種された3DFCは力を加えて5分以内の間インキュベートされ、妨害されない(つまり3DFCは培養プレート、変更された培地等から除去されない)。生体内インプラントのための播種3DFCは、播種/インキュベーションの約18−20時間後に培養プレートから好ましくは採集される。
【0026】
播種のための例証的な方法は、以下の実施例で提供される。3DFCは、商業的供給源(ANGINERATM(カリフォルニア州Theregen社)およびDERMAGRAFT(登録商標)(Advanced BioHealing社)から購入してもよいし、または米国特許出願公開第2009/0269316号および米国特許第4,963,489号に説明されるように準備されていてもよい。簡単に説明すると、繊維芽細胞および所与の目的で適するとみなされた任意選択の他のストロマ細胞が、三次元フレームワークで播種され、3DFCを発達させるよう増殖する。繊維芽細胞および他のストロマ細胞は、サイモシンβ4等の対象の遺伝子産物を発現するために操作されてもよい。例えば、その全体が本明細書に援用される米国特許第5,785,964号および第5,957,972号を参照されたい。
【0027】
三次元支援フレームワークは、(a)細胞が該フレームワークに付着することを可能にし(または細胞が該フレームワークに付着することが可能となるおう修飾することを可能にし)、かつ(b)細胞が1つよりも多い層で増殖することを可能にする、任意の材料および/または形状であってよい。フレームワークを形成するために多くの種々の材料を使用することが可能であり、ナイロン(ポリアミド)、ダクロン(ポリエステル)、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリビニル化合物(例えばポリ塩化ビニル;PVC)、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE;TEFLON
)、thermanox(TPX)、ニトロセルロース、綿、ポリグリコール酸(PGA)、腸線縫合糸、セルロース、ゼラチン、デキストラン等が含まれるがこれらに限定されるわけではない。これらの材料のうちの任意のものをメッシュに織り込んで、三次元フレームワークを形成してもよい。ナイロン、ポリスチレン等の一定の材料は細胞の付着には不十分なマトリックスである。これらの材料が三次元支持フレームワークとして使用される場合、繊維芽細胞および他のストロマ細胞を播種する前に、それらのフレームワークとの付着が増強されるよう、フレームワークを前処理することが望ましい。例えば、繊維芽細胞および他のストロマ細胞を播種する前に、ナイロンスクリーンを0.1Mの酢酸で処理し、ナイロンをコーティングするためにポリリシン、ウシ胎仔血清および/またはコラーゲン中でインキュベーションしてもよい。ポリスチレンも同様に硫酸を使用して処理することが可能かもしれない。
【0028】
3DFCが直接生体内に移植される場合、PGA、腸線縫合糸材料、コラーゲン、ポリ乳酸またはヒアルロン酸等の生物分解性材料を使用することが望ましい場合がある。例えば、これらの材料は、コラーゲンスポンジまたはコラーゲンゲル等の三次元フレームワークへ織り込まれてもよい。培養物が長期間維持されるかまたは凍結保存される場合、ナイロンダクロン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリビニル、テフロン(登録商標)、綿等の非分解性材料が好ましい場合がある。本発明に従って使用可能な便利なナイロンメッシュは、140μmの平均孔径および90μmの平均ナイロン繊維直径を有するナイロン濾過メッシュ(#3−210/36、ニューヨーク州Tetko社)である。
【0029】
繊維芽細胞を含むストロマ細胞は、他の細胞および以下に説明する要素を伴っても伴わなくてもよいが、フレームワーク上に播種される。これらのストロマ細胞は、生検(適当な場合)によって得られるか、外科的に得られる標本によって得られるか、または死体解剖で得られる皮膚、心臓、血管、骨格筋、肝臓、膵臓、脳等の組織または器官に由来してもよい。胎児繊維芽細胞を使用して、三次元ストロマ組織に接触する種々の異なる細胞および/または組織の増殖を支持する「包括的」三次元ストロマ組織を形成することが可能である。しかしながら、三次元フレームワークに心臓または特定の個人由来のストロマ細胞を播種することにより、「特異的」ストロマ組織を調製してもよい。かかる特定の個人は後に、本発明に従って培養中に増殖された細胞および/または組織を受け取る。そのようなサンプルは例えば、標準的生検手順(心臓からストロマ細胞が得られる場合の心筋生検等)または他の外科手術を通じて、得ることが可能である。
【0030】
ストロマ細胞は、適切な器官または組織の分解により容易に分離され得る。これは当該技術分野の周知技術を使用して容易に遂行され得る。例えば、組織または器官は機械的に分解してもよいし、および/または、認められるほどの細胞の破損を伴わずに組織を個々の細胞の懸濁液へ分散させることを可能にする隣接細胞間の接続を弱める消化酵素および/またはキレート試薬で処理してもよい。酵素の解離は、組織を細かく刻み、刻んだ組織を多くの消化酵素のうちの任意のものの単独または組み合わせで処理することにより遂行することが可能である。これにはトリプシン、キモトリプシン、コラゲナーゼ、エラスターゼ、および/またはヒアルロニダーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、プロナーゼおよびディスパーゼが含まれるが、これらに限定されない。機械的破壊も、いくつかを挙げると、粉砕機、混合機、篩、ホモジナイザー、圧力セルまたは破砕機(insonator)を含むがこれらに限定されない多くの方法によって遂行することが可能である。組織分解技術研究については、Freshney, Culture of Animal Cells. A Manual of Basic Technique, 2d Ed., A.R. Liss, Inc., StateNew York, 1987, placecountry-regionCh. 9, pp. 107-126を参照されたい。
【0031】
一旦組織が個々の細胞の懸濁液になると、懸濁液は部分母集団へ分けられ、ここから繊維芽細胞、他のストロマ細胞および/または要素を得ることが可能となる。これは、特定
細胞型のクローニングおよびスクリーニング、望ましくない細胞の選択的破壊(陰性スクリーニング)、混合集団中の細胞凝集力の差に基づく分離、凍結融解法、混合集団中の細胞の付着特性の差、濾過、従来のおよびゾーン遠心法、遠心溶出(反流(counter-streaming)遠心分離)、単位重力分離、向流分配、電気泳動および蛍光活性化細胞選別装置を
含むがこれらに限定されない細胞分離の標準法を用いても遂行され得る。クローンの選択と細胞分離法の研究については、Freshney, Culture of Animal Cells. A Manual of Basic Techniques, 2d Ed., A.R. Liss, Inc., StateNew York, 1987, placecountry-regionCh. 11 and 12, pp. 137-168を参照されたい。
【0032】
培養細胞が移植または生体内インプラントに使用される場合、患者自身の組織からストロマ細胞を得ることが望ましい。
ストロマ細胞の播種後、3DFCは適切な培養液中でインキュベートされるべきである。RPMI 1640培地、Fisher培地、Iscove培地、およびMcCoy培地等の多くの市販の培地が、使用に適し得る。別の実施形態では、繊維芽細胞と他のストロマ細胞の増殖活性を最大限にするために、3DFCはインキュベーションの期間中培地に懸濁されてもよい。さらに、培地は、使われた培地を除去し、解放される細胞の数を減らし、新鮮な培地を加えるために、提起的に「供給」されるべきである。インキュベーションの期間中、繊維芽細胞と他のストロマ細胞は共に直線的に増殖し、フレームワークの開口部中で増殖し始める前に三次元フレームワークのフィラメントを包むだろう。
【0033】
フレームワークの開口部は、繊維芽細胞と他のストロマ細胞が該開口部をまたいで延びることを可能にするのに適切なサイズであるべきである。フレームワークに渡って延びる積極的に増殖しているストロマ細胞の維持は、ストロマ細胞によって作られる増殖因子の生産を増強し、従って長期培養を支援する。例えば、開口部が小さすぎる場合、ストロマ細胞は急速にコンフルエントに達し得るが、メッシュから容易に出ることができなく場合があり、捕捉された細胞は接触阻止を示し、増殖を支援し、かつ長期培養を維持するのに必要な適切な因子の生産を停止し得る。開口部が大きすぎる場合、ストロマ細胞は開口部をまたいで延びることができない場合がある。これは、また増殖を支援し、かつ長期培養を維持するのに必要な適切な因子のストロマ細胞による生産を減少させるだろう。本明細書に例証するように、メッシュ型のフレームワークを使用する場合、約140μmから約220μmまでの範囲の開口部がうまく作用するであろうことが分かった。しかしながら、フレームワークの三次元構造および複雑さによって、他のサイズが同様にうまく作用する場合がある。実際、ストロマ細胞が延びて、長時間複製および増殖を継続することを可能にする任意の形または構造が、本発明によって作用するだろう。
【0034】
フレームワークに堆積された多種類のコラーゲンの種々の大きさが、3DFCに接触する細胞の増殖に影響し得る。堆積された細胞外マトリックス(ECM)タンパク質の大きさは、適切なコラーゲンタイプを作成する繊維芽細胞の選択により操作または増強することが可能である。これは補体を活性化することが可能で、かつ特定のコラーゲンタイプを定義することが可能な、適切なアイソタイプまたは下位分類のモノクローナル抗体を使用して遂行することが可能である。これらの抗体および補体は、所望のコラーゲンタイプを発現する繊維芽細胞を陰性選択するために使用することが可能である。代わりに、フレームワークの播種に使用されるストロマは、所望の適切なコラーゲンタイプを合成する細胞の混合物であってもよい。従って、本明細書で説明した3DFCが種々の細胞型および組織の増殖に適しているため、培養された組織およびコラーゲンおよび所望のコラーゲンタイプに依存して、三次元フレームワークに播種するために適切なストロマ細胞が選択され得る。
【0035】
3DFCのインキュベーション中に、増殖中の細胞がフレームワークから解放されてもよい。これらの解放された細胞は、培養容器の壁に付着し、そこで増殖し続け、コンフル
エントな単層を形成する場合がある。これは、例えば培地の供給中に解放された細胞を除去することにより、または例えば3DFCを新しい培養容器に転送することにより、予防されるかまたは最小限にされる。容器中にコンフルエントな単層が存在すると、3DFCにおける細胞の増殖を「シャットダウン」し得る。コンフルエントな単層の除去または新しい容器の新鮮な培地へのストロマ組織の移動は、3DFCの増殖活性を回復させるだろう。そのような除去または移動は、25%のコンフルエンシーを超すストロマ単層を有する培養容器中で行われるべきである。代わりに、3DFCは、解放された細胞が付着するのを防ぐために振動させることが可能であるか、または培地を定期的に供給する代わりに、新鮮な培地が絶えず3DFCを通って流れるように、培養系がセットアップされてもよい。流量は、3DFC内の増殖を最大限にし、洗浄し、培養液から解放された細胞を除去するために調節され、その結果、それらは容器の壁にくっつかず、コンフルエントまで増殖しない。
【0036】
第2態様では、本発明は、三次元繊維芽細胞構築物(3DFC)に細胞を播種する方法であって、
(a)培養された3DFCを、3DFC上に播種される細胞シートと接触させること、および
(b)細胞シートが3DFCに付着するのに適した条件下で細胞シートを培養すること、
からなる方法を提供する。
【0037】
発明者は、本発明のこの態様の方法が、3DFC上に播種するための細胞シートの採集を可能とし、従って、慢性心不全の治療のための以下に開示された方法等の送達方法としての本発明のこの態様の方法の使用を可能とすることを期せずして発見した。
【0038】
1つの別の実施形態では、心臓幹細胞を備えた細胞シートは3DFCに付着され、以下により詳細に説明するCHFを治療する本発明の方法における心筋層上への配置に先立って、心臓幹細胞がギャップ結合等の細胞/電気結合を確立かつ維持している。
【0039】
第2態様におけるすべての用語は本発明の第1態様に対して定義された通りであり、本発明の第1態様の実施形態のすべては、本発明の第2態様にも等しく当てはまる。この第2態様では、3DFCは、3DFCへの付着に適した条件下で細胞シートと接触させられる。本明細書に使用する場合、「細胞シート」は、3DFCと接触させるためにインタクトな「シート」として培養物から分離されたコンフルエントな細胞を含む。別の実施形態では、分離は、前記細胞をインタクトな細胞シートとして解放するのに有効な温度へ培養マトリックスを冷やすことにより達成される。いかなる温度を使ってもよいが、好ましくは10と20℃の間である。
【0040】
培養された3DFCを、3DFC上に播種されるべき細胞シートと接触させること、および続いて3DFCに対する細胞シートの付着を促進することは、以下に実施例で説明するような、および本発明の第1態様に関して説明したような、任意の適切な条件で行われてもよい。本明細書の教示に基づくと、当業者は、培養された3DFCを3DFC上に播種されるべき細胞シートと接触させ、かつ細胞シートが3DFCに付着するのに適した条件下で細胞シートを培養するのに適した条件を決定することが可能である。1つの例証的な別の実施形態では、対象の細胞はコンフルエントになるまで培養液中で増殖され、次に培養マトリックスが約10℃−20℃に冷却され、これにより培養マトリックスから細胞シートが解離される。解離は一般に、30−60分以内で終わり、分離された細胞シートは、適切なサイズのピペット等の任意の適切な手段により取り上げられ、3DFC上に転送される。1つの別の実施形態では、適切な量の培地(1−5μl;好ましくは2−3μl)が、細胞シート上に置かれ、細胞シートは3DFCに対して広げて平らに配置される
。5−15%のウシ胎仔血清(好ましくは約10%)で補給されたDMEMを含む任意の適切な細胞培地も使用可能であるが、それらに限定されるわけではない。細胞シートが比較的平らになり、3DFCに対して面一になると、余分な培地がピペットを使用して除去される。3DFC細胞シート複合体はインキュベータに5.0%CO2および37℃で5
分間に置かれる。その後、3DFC細胞シート複合体は37℃の10%FBSのDMEMに再懸濁され、一夜培養した。細胞シートは、好ましくは3DFC上の中心に置かれ、細胞シートにおける折り目または隆起が最小限にするように配置される。次に、構築物は、3DFCへの細胞シート中の細胞の接着を促進するのに適した条件下でインキュベートされる。任意の適切な条件も使用することが可能である。本明細書の任意の別の実施形態と組み合わせることが可能な1つの別の実施形態では、インキュベーションは37℃および5%CO2で5〜15分間、より好ましくは7.5〜12.5分、最も好ましくは約10
分生じる。
【0041】
さらに別の実施形態では、所望の細胞は標準培養条件下の温度感受性プレートで増殖および培養される。いったんコンフルエントになると、細胞の培地体積は50%減少され、プレートは20℃で30−60分冷やされるか、または細胞シートが培養プレートから分離するまで冷却される。ピペットを使用して、細胞シートは採集され、解凍3DFCに置かれ、標準培地の滴を用いて平らにされる。いったん平らになると、余分な培地はピペットを使用して除去される。3DFC細胞シート複合体は、インキュベータ(5.0%のCO2で37℃、5分)に配置される。3DFC細胞シート複合体を、37℃の標準培地で
再懸濁し、インキュベータに戻し、一晩培養する。培地は、48時間ごとに変更される。
【0042】
温度感受性プレートの任意の適切な最初の播種密度を使用し、細胞型に基づいて変えてもよい。1つの別の実施形態では、心筋細胞またはその前駆細胞は約1−2×104細胞
/mm2、好ましくは約1.4×104細胞/mm2で播種される。
【0043】
細胞シート中の細胞は任意の所望の種類であってもよく、筋細胞(骨格筋細胞、平滑筋細胞、心筋細胞等の心臓の筋細胞)およびそれらの前駆細胞、内皮始原細胞、骨髄細胞、臍帯血細胞、ならびにそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されるわけではない。別の実施形態では、内皮細胞、心筋細胞またはそれらの前駆細胞等の強い細胞間相互作用を備えた細胞型が使用される。
【0044】
本発明のすべての態様の別の実施形態では、播種された細胞は心筋細胞および/またはその心臓幹細胞等の前駆細胞を含む。成熟した成人の心臓には、自己更新し、クローン形成能があり、多能な内因性の心臓幹細胞が限られた数しかなく、それらは心筋細胞、およびより少ない程度に、平滑筋および内皮細胞に分化する。心臓幹細胞は単離できるとともに、培養中で無限に拡張可能であり、細胞表面マーカであるLin−、c−Kit+、CD45−、CD34−により特徴付けられる。例えば、Messina et al., Circulation Research, 2004, 95:911; Barile et al., Nat. Clin. Prac. Cardiovasc. Med. 2007, Feb. 4, Suppl 1: S9-S14; Noort et al., Pediatric Cardiology, 30(5):699 (2009); Millipore 社(Cat. #SCR061)から入手可能な心幹細胞単離キットを参照されたい。
【0045】
播種される細胞は、所与の目的のために対象の遺伝子産物を発現することが可能な組換え細胞であってもよい。1つの別の実施形態では、以下により詳細に説明するように、サイモシンβ−4を示すように操作された心筋細胞がDFC上に播種される。
【0046】
細胞シート中のすべての細胞が3DFCと接触する必要はないことが当業者には理解されるだろう。1つの別の実施形態では、播種された細胞シートは3DFCの上の2つ以上の細胞層を産出するために互いに接触してもよい。力を加えた結果、細胞シート中のすべての細胞が3DFCに付着する必要はないことが当業者には理解され、細胞は好ましくは
、3DFC上での付着のために利用可能な場所をすべて飽和される量で存在する。本明細書で開示された任意の別の実施形態と組み合わせることが可能な別の実施形態では、細胞は、0.5×106細胞/cm2から5×106細胞/cm2の間、3DFCに付着させられる;より好ましくは1×106細胞/cm2と4×106細胞/cm2の間、;最も好ましくは1.5×106細胞/cm2と3×106細胞/cm2の間の範囲の細胞密度で3DFCに付着させられる。
本明細書で開示された任意の別の実施形態と組み合わせることが可能なさらに別の実施形態では、培養することは、3DFCに付着された細胞の増殖をさらに含む。この実施形態では、そのような増殖が、懸濁された細胞の3DFCへの付着を促進するために使用されたのと同じかまたは異なる培養条件下で生じてもよい。3DFCに付着した細胞の増殖および/または分化を促進する適切な培養条件は、本明細書の開示に基づいて、当業者により決定することが可能である。いったんシートの付着が起こると、3DFC細胞シート複合体は標準的な培養法により培養可能である。
【0047】
第3態様では、本発明は、3DFCに付着された筋細胞を含む構築物であって、
前記構築物は3DFCに渡る自発的な同期収縮を可能とし、
前記筋細胞は0.5×106細胞/cm2から5×106細胞/cm2までの間の密度で構築物上に播種されるか、および
前記筋細胞は前記3DFC上の繊維芽細胞比に対して約1:10から約10:1までの間の比で存在するか
の少なくとも一方である構築物を提供する。本発明のこの第3態様における用語は、第1の態様および第2の態様に開示された意味を保持する。文脈が別段指示していない限り、本発明の第1態様と第2態様の実施形態はすべて、本発明の第3態様にも等しく当てはまる。別の実施形態では、繊維芽細胞は5.0×105細胞/cm2から5×106細胞/c
2の間、別の実施形態では8.0×105細胞/cm2から2.0×106細胞/cm2
間の範囲の細胞密度で構築物上に存在する。
【0048】
以下により詳細に論じるように、発明者らは、本発明のこの態様の構築物を、例えば慢性心不全等の種々の疾患を治療するための細胞治療に例えば使用することが可能であることを発見した。発明者らはさらに、同期して拍動し得る、生じた構築物が該構築物に渡る細胞間コミュニケーションを提供することをさらに発見した。
【0049】
1つの別の実施形態では、3DFCは、パッチの上部に細胞が播種されたパッチを含む。この実施形態では、パッチの底部が心臓等の対象の表面へ取り付けられ得る。
本発明の構築物では、0.5×106細胞/cm2から5×106までの間の密度で構築
物上に播種された筋細胞を含むか、および/または筋細胞は構築物上の繊維芽細胞に対して約1:10から約10:1までの間の比で存在する。1実施形態では、筋細胞は1.5×106細胞/cm2から3.0×106細胞/cm2までの間の密度で構築物上に播種される。別の実施形態では、筋細胞は構築物上の繊維芽細胞に対して約1:10から約10:1までの間の比で存在する。別の実施形態では、筋細胞は0.5×106細胞/cm2から5×106までの間の密度で構築物上で播種されると共に、筋細胞は構築物上の繊維芽細
胞に対して1:10から10:1までの間の比で存在する。これらのすべての実施形態のうちの好ましい実施形態では、筋細胞は心筋細胞またはその前駆細胞である。
【0050】
種々の実施形態では、筋細胞(心筋細胞またはその前駆細胞等)は、構築物上の繊維芽細胞に対して、約1:10から約10:1までの間、約1:9から約9:1までの間、約1:8から約8:1までの間、約1:7から約7:1までの間、約1:6から約6:1までの間、約1:5から約5:1までの間、約1:4から約4:1までの間、約1:3から約3:1までの間、約1:2から約2:1までの間、または約1:1で存在する。細胞の他の比も可能である。これらのすべての実施形態のうちの好ましい実施形態では、筋細胞
は心筋細胞またはその前駆細胞である。
【0051】
種々の実施形態では、筋細胞(心筋細胞またはその前駆細胞等)は、1.3×106
胞/cm2と5×106細胞/cm2の間、より好ましくは1.4×106細胞/cm2と4
×106細胞/cm2の間、最も好ましくは1.5×106細胞/cm2と3×106細胞/
cm2の間の密度で構築物上で播種される。これらのすべての実施形態のうちの好ましい
実施形態では、筋細胞は心筋細胞またはその前駆細胞である。
【0052】
別の実施形態では、心筋細胞またはその前駆細胞は、1.5×106細胞/cm2と3×106細胞/cm2の間の密度で構築物上に播種され、繊維芽細胞は約8.0×105細胞
/cm2から約2.0×106細胞/cm2までの間で密度の構築物上に存在する。
【0053】
本明細書に使用する場合、「筋細胞」は、骨格筋細胞、平滑筋細胞、心筋細胞または前駆細胞であってよい。本明細書の任意の別の実施形態と組み合わせることが可能な別の実施形態では、筋細胞は心筋細胞またはその前駆細胞を含み、最も好ましくはヒト由来である。任意の別の実施形態と結合することが可能なさらに別の実施形態では、構築物は、播種後24時間移植の準備が整った播種済の非収縮性パッチであって、例えば宿主心臓に心筋細胞を提供するために使用されるパッチである。任意の別の実施形態と結合することが可能な別の実施形態では、構築物は収縮性の構築物で、自発的同期収縮を可能とし、例えば収縮性の支援に使用可能な構築物である。本明細書に使用する場合、「自発的同期収縮」という語句は、細胞が3DFCに渡って調整された力生成を生産可能であることを意味する。本明細書に使用する場合、「3DFCに渡って」は、細胞が付着させられた場合に、細胞が3DFC全体に自発的同期収縮できることを意味する。
【0054】
本明細書の任意の別の実施形態と組み合わせることが可能なさらに別の実施形態では、筋細胞またはその前駆細胞は、以下に説明する本発明の方法の構築物で処理された患者(標準生検法または他の外科手術等によって)から得られる。本明細書の任意の別の実施形態と組み合わせることが可能なさらに別の実施形態では、細胞は、上記に開示したようなサイモシンβ−4(TB4)、aktマウス胸腺種ウイルスがん遺伝子ホモログ(AKT1;アミノ酸配列の配列番号1、3または5)。ストロマ細胞由来因子1α(SDF−1;アミノ酸配列の配列番号7)および肝細胞増殖因子(HGF; アミノ酸配列の配列番号9)のうちの1つまたは複数を発現するよう操作された心筋細胞またはその前駆細胞のように、対象のタンパク質を発現するように操作され得る。
【0055】
構築物は、以下に説明する発明の方法に従って所望の移植の少し前(つまり0−10日前)に作製されるか、または冷凍で保存され、移植前に再度溶解される。
筋細胞は所与の用途に適した任意の密度で3DFCに付着させることが可能である。本明細書に開示された別の実施形態と結合することが可能な別の実施形態では、筋細胞(心筋細胞またはその前駆細胞等)は、1.3×106細胞/cm2から5×106細胞/cm2までの間、より好ましくは1.4×106細胞/cm2から4×106細胞/cm2までの間、最も好ましくは1.5×106細胞/cm2から3×106細胞/cm2までの間の範囲の細胞密度で3DFCに付着させる。心筋細胞の播種密度が低い(0.6−1.2×106
細胞/cm2)とまだ非同期な自発性収縮を示したが、播種密度が高い構築物は一貫した
定期的で調律および方向のある収縮が可能であった。
【0056】
本発明の上記態様による構築物を生産するための特定の方法を、以下の実施例で提供する。1実施形態では、任意の実施形態の方法または本発明の第1または第2態様の実施形態の組み合わせを、第3態様の構築物を製造するために使用することが可能である。1つの別の実施形態では、心臓幹細胞または心筋細胞を備えた細胞シートが3DFCに付着させられ、より詳細に以下で説明されるCHFを治療するための本発明の方法において心筋
層上へ配置する前に、心臓幹細胞または心筋細胞がギャップ結合等の細胞/電気接続を確立かつ維持するのを許容する。
【0057】
第4の態様では、本発明は、心筋細胞の機能不全を特徴とする疾患を治療する方法であって、疾患に罹患している患者の心臓を、該疾患を治療するのに有効な量の、3DFCに付着された心筋細胞およびその前駆細胞を含む本発明の上記第3の態様の構築物と接触させることを含む方法を提供する。
【0058】
発明者らは、本発明のこの態様の構築物を、例えば心筋細胞の機能不全を特徴とする疾患を治療する細胞治療に使用することが可能であることを期せずして発見した。そのような疾患には、慢性心不全(CHF)、心不全を伴わない虚血、心筋症(例えば拡張型心筋症(DCM))、心停止、うっ血性心不全、安定狭心症、不安定狭心症、心筋梗塞、冠動脈疾患、心臓弁膜症、虚血性心疾患、駆出率の減少、心筋潅流の減少、不適応性心臓リモデリング(例えば左心室リモデリング)、左心室機能の低下、左心室不全、右心室不全、後方心不全(静脈背圧の増加)、前方心不全(十分な動脈潅流供給の不全)、収縮期の機能障害、拡張期の機能障害、体血管抵抗、低拍出性心不全、高拍出性心不全、運動時呼吸困難、休息時呼吸困難、起坐呼吸、頻呼吸、発作性夜間呼吸困難、めまい、錯乱、休息時の冷たい四肢、運動不耐性、易疲労感、末梢性浮腫、夜間多尿、腹水、肝腫、肺水腫、チアノーゼ、側臥時の心尖拍動、奔馬性調律、心雑音、傍胸骨の隆起、および胸水が含まれるが、それらに限定されない。1実施形態では、疾患はCHFである。別の実施形態では、疾患はDCMである。別の実施形態では、疾患は心不全を伴わない虚血である。いかなる作用機序によっても束縛されないが、発明者らは、細胞治療でCHF等を疾患する努力が現在失敗しているのは(移植される幹細胞が生存できないことに少なくとも一部分基づき)、十分な血液供給/マトリックス支援のない不良な環境で細胞を生育しようとしていることに関すると考えている。適切な細胞外マトリックスがないと、移植された細胞は、細胞を取り付ける物理的な支持体がないため凝集塊になる。対照的に、本発明の方法に従って3DFCを心筋細胞および/または心臓幹細胞との共集団にすると、これらの細胞は心臓上で増殖し生着する。これは血流量の改善と相まって、例えば心室(LV)機能の改善および不適応性LVリモデリングの減少による、上記に開示された疾患を治療するためのより生存可能な心筋層となる。3DFCは、マトリックス支持/新しい血管形成を増強するために増殖因子刺激を提供し、心筋細胞および/または心臓幹細胞が生着および増殖することを可能にする。3DFC中の繊維芽細胞は、血管新生増殖因子:VEGF(血管内皮増殖因子)、HGF(肝細胞増殖因子)、bFGF(塩基性繊維芽細胞増殖因子)およびアンジオポエチン−1(例えば、J. Anat. (2006) 209, pp527-532参照):を生産し、これは播種された心筋細胞の生存のための血管構造を提供するよう支援する。従って、3DFC上での共培養の重要な利点は、3DFCが血管新生後または動脈形成後であり、虚血に取り組んでいると同時に、同時培養されたパッチが細胞または心臓への拍動機能を送達することである。従って、下にある3DFCによって播種された細胞に対して虚血心筋はより親和性になり、従ってより生存し、かつ機能的になる。これは機能的に心筋層に統合されるよう構築物から移動することまたは構築物上に残ることを含み得る。当業者に明らかなように、構築物は、心臓心筋層への心筋細胞を組み込まなくてもポンピング支援を提供するための、補助治療剤として使用することが可能である。
【0059】
従って、本明細書の任意の別の実施形態と組み合わせることが可能なさらなる別の実施形態では、構築物は、宿主心臓に心筋細胞を供給し、かつ心筋そうに機能的に組み込まれる、播種された非収縮性の3DFCパッチである。本明細書の任意の別の実施形態と組み合わせることが可能な別の実施形態では、構築物は収縮性の構築物であり、例えば、心臓心筋層へ心筋細胞を組み込まなくてもポンピング支援を提供するための、補助治療剤として使用されてもよい。
【0060】
本発明の方法では、心臓へのマトリックス足場の取り付けは、マトリックス足場を細胞外マトリックスタンパク質の細胞移動、増殖および分泌を刺激する機械的ストレスに曝露する。足場の律動的伸長は、足場の孔を開放および圧縮することにより足場内の栄養素および排泄物の交換を促進する。
【0061】
従って、本方法は、3DFC上に播種された細胞の移植/増殖を支援すべく、自身のバイオリアクターとして心臓を使用する細胞療法の送達系として3DFCを利用する。本発明の方法は、単離された細胞注入物とは対照的に大量の心筋層のカバーを可能にし、それにより、なぜ細胞注入物がヒトよりも齧歯動物でより良好に作用するように見えるかに関する1つの批判に取り組んでいる(つまり治療が必要とされる損傷した心筋層の量)。また、3DFC上に播種された細胞は、単離された細胞注入物で見られるように循環で洗い流されることはない。
【0062】
本明細書の任意の別の実施形態と組み合わせることが可能な別の実施形態では、患者は哺乳動物であり、最も好ましくはヒトである。本明細書の任意の別の実施形態と組み合わせることが可能なさらに別の実施形態では、患者はヒトである。別の実施形態では、心筋細胞または心臓幹細胞は該患者から得られる。
【0063】
本明細書に使用する場合、「CHF」は、身体の要求を満たすのに適した血液を供給する心臓の能力の慢性(迅速な発病と対立した意味での)損傷である。CHFは心停止、心筋梗塞および心筋症から引き起こされ得るが、これらとは異なるものである。1つの別の実施形態では、被験者はうっ血性心不全に罹患している。本明細書の任意の別の実施形態と組み合わせることが可能な種々のさらなる別の実施形態では、患者の心不全は左心室不全、右心室不全、後方心不全(静脈背圧の増加)、前方心不全(十分な動脈潅流供給の機能不全)、収縮期の機能障害、拡張機能障害、体血管抵抗、低拍出心不全、高拍出性心不全を含む。本明細書の任意の別の実施形態と組み合わせることが可能な種々のさらなる別の実施形態では、患者のCHFは、ニューヨーク心臓協会の機能別分類に従うクラスI−IVのいずれかであり得る。より好ましくはクラスIIIまたはIVであり得る。
【0064】
クラスI:いかなる活動でも制約を経験しない。つまり、通常の活動からの症状はない。
クラスII:活動にわずかに軽い制約がある。つまり、患者は休息時または適度な運動時に快適である。
【0065】
クラスIII:いかなる活動にも顕著な制約がある。つまり、患者は休息時のみ快適である。
クラスIV:いかなる身体活動も不快さをもたらし、休息時に症状が生じる。
【0066】
本明細書の任意の別の実施形態と組み合わせることが可能なさらに別の実施形態では、患者は、ニューヨーク心臓協会の機能別分類によりCHFと診断される。本明細書の任意の別の実施形態と組み合わせることが可能なさらに別の実施形態では、患者は、以下の1つまたは複数によりさらに特徴付けられる:高血圧症、肥満、タバコの喫煙、糖尿病、心臓弁膜症および虚血性心疾患。
【0067】
本明細書に使用する場合、「処理」または「処理する」とは、以下のうちの1つまたは複数を遂行することを意味する:(a)疾患の重症度を低下させること(例:CHF患者がクラスIIIへ状態改善するためのクラスIVの処理);(b)疾患に特徴的な症状の発達を制限または予防すること;(c)疾患に特徴的な症状の悪化を阻害すること;(d)以前に疾患の症状があった患者における該症状の再発を制限または予防すること。CHFに特徴的な特性には、駆出率の減少、心筋潅流の減少、不適応性心臓リモデリング(例
えば左心室リモデリング)、左心室機能の低下、運動時呼吸困難、休息時呼吸困難、起坐呼吸、頻呼吸、発作性夜間呼吸困難、めまい、錯乱、休息時の冷たい四肢、運動不耐性、易疲労感、末梢性浮腫、夜間多尿、腹水、肝腫、肺水腫、チアノーゼ、側臥時の心尖拍動、奔馬性調律、心雑音、傍胸骨の隆起、および胸水が含まれるがこれらに限定されない。
【0068】
1実施形態では、本明細書で説明する構築物は、虚血心組織の治癒の促進に用途がある。虚血組織の治癒を促進する構築物の能力は、一部分では虚血の重症度によって決まる。当業者には理解されるように、虚血の重症度は、一部分では、組織が酸素を奪われた時間の長さによって決まる。そのような活動の中には、虚血組織のリモデリングの減少または予防がある。「リモデリング」とは、本明細書では、以下の1つまたは複数の存在を意味する:(1)虚血組織の進行的な薄化、(2)虚血組織に酸素を供給する血管の数または血管の減少、および/または(3)虚血組織に酸素を供給する血管のうちの1つまたは複数の遮断、および、虚血組織が筋組織を含む場合、(4)筋組織の収縮性の減少。処理を行わなければ、リモデリングは通常虚血組織の脆弱化につながり、対応する健康組織と同じレベルに機能することができなくなる。心臓血管の虚血は一般に冠動脈疾患の直接の結果であり、冠状動脈中のアテローム斑の破裂によって通常引き起こされ、血栓の形成につながる。血栓は冠状動脈を閉塞または妨害し、それにより下流の心筋から酸素を奪う。虚血が長引くと細胞死または壊死に結びつく場合があり、死んだ組織の部位は一般に梗塞と呼ばれる。
【0069】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明した方法の候補患者は、安定狭心症と可逆性心筋虚血に罹患した患者であろう。安定狭心症は、運動時またはストレス時に生じ、休息または舌下ニトログリセリンにより軽減される胸痛の収縮により特徴付けられる。安定狭心症の患者の冠血管造影によると、通常少なくとも1つの冠状動脈の50−70%に閉塞があることが明らかになっている。安定狭心症は、臨床症状およびECG変化の評価により通常診断される。安定狭心症の患者は一過性のST部分異常を有し得るが、安定狭心症に関連するこれらの変化の感度および特異性は低い。
【0070】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明した方法に対する候補は、不安定狭心症と可逆性心筋虚血に罹患した患者であろう。不安定狭心症は舌下ニトログリセリンにより軽減される安静時の胸痛の収縮により特徴付けられる。狭心症の胸痛は、舌下ニトログリセリンにより通常軽減され、疼痛は通常30分以内におさまる。不安定狭心症の重症度には3つのクラスがある:クラスI、新たに発症した重度なまたは加速した狭心症として特徴付けられる;クラスII、重症度、持続時間、またはニトログリセリンの要求量の増大により特徴付けられる休息時の亜急性の狭心症;クラスIII、休息時の急性狭心症として特徴付けられる。不安定狭心症は、安定狭心症と急性心筋梗塞(AMI)との間の臨床状態を表わし、主として、血栓の閉塞を伴う非閉塞性斑(プラーク)への、粥状動脈硬化、環状動脈痙攣または出血の重症度および程度の進行によると考えられている。不安定狭心症の患者の冠血管造影によると、通常少なくとも1つの冠状動脈の90%以上に閉塞があることが明らかとなっている。この結果、酸素供給が基準の心筋の酸素要求量さえ満たせなくなる。安定アテローム斑のゆっくりとした成長または不安定アテローム斑の破裂は、後続する血栓形成と共に、不安定狭心症を引き起こし得る。これらは両方とも冠状動脈の重大な狭窄を生じさせる。不安定狭心症は通常アテローム斑の破裂、血小板活性化および血栓形成に関係している。不安定狭心症は、臨床症状(ECG変化)、および心臓マーカの変化により通常診断される。
【0071】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明した方法に対する候補は、冠動脈バイパス(CABG)術を経験している左心室機能不全と可逆性心筋虚血に罹患したヒト患者であろう。かかる患者は、少なくとも1つの移植可能な冠血管と、バイパスまたは経皮的冠状血管介入を受入れることができない少なくとも1つの冠血管とを有している。
【0072】
いくつかの実施形態では、レーザドップラーイメージング(例えばNewton et al., 2002, J Foot Ankle Surg, 41(4):233-7参照)を用いて測定されるように、虚血組織への構
築物の適用は虚血組織中に存在する血管の数を増加させる。いくつかの実施形態では、血管の数は1%、2%、5%増加し、別の実施形態では、血管の数は10%、15%、20%増加し、さらには25%、30%、40%、50%にも増加し、いくつかの実施形態では、血管の数はさらに増加するが、中間値も許容される。
【0073】
いくつかの実施形態では、虚血心組織への構築物の適用は、駆出率を増加させる。健康な心臓では、駆出率は約65〜95パーセントである。虚血組織を有する心臓では、駆出率はいくつかの実施形態では約20−40パーセントである。従って、いくつかの実施形態では、処理前の駆出率と比較して、構築物で治療すると駆出率が0.5〜1パーセント絶対的に改善する。別の実施形態では、構築物による処理により、駆出率が1パーセントを超えて絶対的に改善する。いくつかの実施形態では、1.5%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%またはそれより大きい割合の分だけ、処理前の駆出率と比較して駆出率が絶対的に改善する。例えば、処理前の駆出率が40%であった場合、上記実施形態では処理後には41%から59%の間の駆出率が観察される。さらに別の実施形態では、処理前の駆出率と比較して、構築物による処理は10%を超えて駆出率を改善する。
【0074】
いくつかの実施形態では、虚血心組織への構築物の適用は、心拍出量(CO)、左心室拡張終期容積係数(LVEDVI)、左心室収縮終期容積係数(LVESVI)および収縮期壁肥厚(SWT)のうちの1つまたは複数を増加させる。これらのパラメータは、例えば、ラジオアイソトープ心室造影(RNV)またはマルチゲート収集(MUGA)等の核スキャンならびにX線を含む当該技術の標準的な臨床診断法により測定される。
【0075】
いくつかの実施形態では、虚血心組織への構築物の適用は、心臓損傷の印として臨床的に使用される以下の1つまたは複数のタンパク質マーカの血中濃度における改善をもたらす:クレアチンキナーゼ(CK)、血清グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(血清GOT)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)(例えば米国特許出願公開第2005/0142613号参照)、トロポニンI、およびトロポニンT。これらは心筋損傷の診断に使用することが可能である(例えば米国特許出願公開第2005/0021234号参照)。さらに別の実施形態では、アルブミンのN末端に影響を及ぼす変更が測定可能である(例えばいずれもその全体を本明細書に援用する米国特許出願公開第2005/0142613号、第2005/0021234号および第2005/0004485号参照)。
【0076】
さらに、培養された三次元組織は、心臓ポンプ、血管内ステント、血管内ステントグラフト、左心室アシスト装置(LVAD)、二心室心臓ペースメーカー、人工心臓および増強体外式カウンターパルセーション(EECP)を含む心疾患の治療に使用される治療装置と共に使用することが可能である。
【0077】
本明細書の任意の別の実施形態と組み合わせることが可能なさらに別の実施形態では、処理により、患者において新たな心筋細胞および新たな血管が生産される。本明細書の任意の別の実施形態と組み合わせることが可能なさらに別の実施形態では、処理により、左心室機能の改善、拡張終期圧力(EDP)の低下(状態の処理前と比較して50−60%またはそれより多い減少)、心筋潅流、心筋細胞による心臓前壁の再構築、および/または患者の不適応性左心室リモデリングの逆転が生じる。
【0078】
左心室の収縮を支援するために心臓に同期して拍動する構築物が配置される1つの非制限的な別の実施形態では、有益な処理は、駆出率の改善により実証可能である。さらなる非制限的な別の実施形態では、拍動しない構築物が心臓に配置され、次に、心臓の収縮を支援するために心臓上で自発的に拍動を始める。
【0079】
構築物は付着を促進する任意の適切な方法で心臓と接触してもよい。構築物は、心臓の種々の位置に取り付けられてもよく、それには心外膜、心筋層、および心内膜が含まれるが、最も好ましくは心外膜である。取り付け手段には、構築物と心臓組織の間の直接接着、生物学的接着剤、縫合糸、合成接着剤、レーザ染料、またはヒドロゲルが含まれるが、それらに限定されない。多くの市販の止血剤および封止剤には、SURGICAL(登録商標)(酸化セルロース)、ACTIFOAM(登録商標)(コラーゲン)、FIBRX(登録商標)(光活性化フィブリン封止剤)、BOHEAL(登録商標)(フィブリン封止剤)、FIBROCAPS(登録商標)(乾燥粉末フィブリン封止剤)、多糖類ポリマーp−GlcNAc(SYVEC(登録商標)パッチ;Marine Polymer Technologies社)、Polymer 27CK(Protein Polymer Tech.社)が含まれる。手術室で1時間および1時間半の間に120mlの患者の血液から自己由来のフィブリン封止剤を準備する医療装置も知られている(例えばVivostat System)。
【0080】
直接接着を使用する本発明の別の実施形態では、構築物は心臓の上に直接置かれ、天然の細胞の付着により生成物が付着する。さらに別の実施形態では、構築物は外科的接着剤を用いて心臓に取り付けられ、外科的接着剤は個恩間シクは(フィブリン接着剤等の生物学的接着剤である。外科的接着剤としてのフィブリン接着剤の使用は周知である。フィブリン接着剤組成物は公知であり(例えば、米国特許第4,414,971号、第4,627,879号および第5,290,552号参照)、得られたフィブリンは自己由来であり得る(例えば、米国特許第5,643,192号参照)。接着剤組成物は、1つまたは複数の作用物質または薬物(例えば、米国特許第4,359,049号および第5,605,541号参照)を含むリポソームのように、さらなる追加の構成要素を含んでもよく、かかる構成要素を注入(例えば、米国特許第4,874,368号参照)により、またはスプレー(例えば、米国特許第5,368,563号および第5,759,171号参照)により含んでよい。フィブリン接着剤組成物を適用するためのキットも利用可能である(例えば、米国特許第5,318,524号参照)。
【0081】
別の実施形態では、レーザ染料は心臓、構築物または両方に適用され、組織に付着するのに適した波長のレーザを使用して活性化される。別の実施形態では、レーザ染料は、組織の機能または完全性を変化させない範囲の活性化周波数を有している。例えば800nmの光は、組織と赤血球を通過する。レーザ染料としてインドシアングリーン(ICG)を使用して、組織を通過するレーザ波長が使用されてもよい。5mg/mlのICGの溶液が、三次元ストロマ組織(または標的部位)の表面に塗布され、ICGが組織のコラーゲンに結合する。800nm付近のピーク強度を備えた発光レーザからの5ミリ秒のパルスを使用してレーザ染料を活性化すると、コラーゲンが変性して、隣接組織のエラスチンを改変表面に融合させる。
【0082】
別の実施形態では、構築物は、ヒドロゲルを使用して心臓に取り付けられる。多くの天然および合成のポリマー材料が適切なヒドロゲル組成物を形成するのに十分である。例えば、多糖類(例えばアルギン酸塩)が2価カチオンと架橋されてもよく、ポリホスファゼンとポリアクリレートがイオン架橋または紫外線重合により架橋されてもよい(米国特許第5,709,854号)。代わりに、2−オクチルシアノアクリレート(「DERMABOND」、Ethicon社、ニュージャージー州Somerville助剤)等の合成外科用接着剤が三次元ストロマ組織を取り付けるために使用されてもよい。
【0083】
本発明の別の実施形態では、構築物は、5−O、6−Oおよび7−Oプロレン縫合(Ethiconカタログ番号8713H、8714Hおよび8701H)、ポリグレカプロン、ポリジオキサノン、ポリグラクチンまたは他の適切な非生物分解性または生物分解性の縫合材料を含むがこれらに限定されない1つまたは複数の縫合糸を用いて心臓に固定される。縫合する場合、必ずしも必要というわけではないが両端針が通常使用される。
【0084】
別の実施形態では、3DFCは、フレームワークが組織が操作された最終生成物よりもわずかに大きいバイオリアクターシステム(例えば米国特許第5,763,267号および第5,843,766号)で増殖される。最終生成物は縁、1つのエッジ、生物学的/合成接着剤の適用のための部位として使用される足場材料のフラップまたはタブ、レーザ染料またはヒドロゲルを含む。別の実施形態では、足場の織物が縫合または微小縫合のための取付部材として使用され得る。
【0085】
本明細書に使用する場合、「有効量」という語句は、本明細書で述べているようには、疾患を治療するのに有効な構築物の量を意味する。当業者に明らかなように、方法は、心筋細胞の機能不全を特徴とする疾患を治療するための請求項に記載の構築物のうちの1つまたは複数の使用を含む。1実施形態では、方法は、心臓を、心臓の1つまたは複数の虚血部位、好ましくは心臓のすべての虚血部位を被覆するよう作用する量の1つまたは複数の構築物と接触させることを含む。構築物は、心筋細胞の機能不全を特徴とする疾患に罹患していると診断された個人における、組織治癒および/または弱体化または損傷した心臓組織の血管再生の促進に有効な量が使用される。投与される構築物の量は、疾患の重症度、構築物が注射可能な組成物(その全体を本明細書に援用する米国特許出願公開第20060154365号参照)として使用されるかどうか、存在する種々の増殖因子および/またはWntタンパク質の濃度、構築物を備えた生存細胞の数、および/または処理される心臓組織へのアクセスの容易さにより一部決まる。有効量の決定は十分に当業者の技能の範囲内にある。必要な場合、その全体を本明細書に援用する米国特許出願公開20060292125号に記載されているイヌのモデル等の適切な動物モデルを、心臓の特定の組織に対する用量効能の試験に使用することが可能である。
【0086】
本明細書に使用する場合、「用量」とは、うっ血性心不全と診断された個人の心臓に適用される構築物の接着片の数を指す。構築物の一般的な接着片は約35cm2である。当
業者には理解されるように、心筋の機能不全を特徴とする弛緩に罹患していると診断された個人における弱体化または損傷した心筋細胞の治癒を促進するのに十分な数を含む限り、接着片の絶対的な大きさは変化する場合がある。従って、本明細書で説明している方法に使用するのに適した接着片は15cm2から50cm2までのサイズの範囲であり得る。
【0087】
本明細書で説明している方法により治療可能な心臓の面積を増加させるために、2つ以上の構築物の接着片の適用が可能である。例えば、2つの接着片を用いる構築物の実施形態では、治療可能領域のサイズが約2倍になる。3つの接着片を用いる構築物の実施形態では、治療可能領域のサイズが3倍になる。4つの接着片を用いる構築物実施形態では、治療可能領域のサイズで4倍になる。5つの接着片を用いる構築物の実施形態では、治療可能領域のサイズが5倍、つまり35cm2から175cm2までである。
【0088】
いくつかの実施形態では、構築物の1つの接着片が、心筋細胞の機能不全を特徴とする疾患と診断された個人の心臓の部位に取り付けられる。
別の実施形態では、構築物の2つの接着片が、心筋細胞の機能不全を特徴とする疾患と診断された個人の心臓の部位に取り付けられる。
【0089】
別の実施形態では、構築物の3つの接着片が、心筋細胞の機能不全を特徴とする疾患と
診断された個人の心臓の部位に取り付けられる。
別の実施形態では、構築物の4つ、5つ、それよりも多い接着片が、心筋細胞の機能不全を特徴とする疾患と診断された個人の心臓の部位に取り付けられる。
【0090】
2以上の接着片が投与された実施形態では、心筋細胞の機能不全を特徴とする疾患の重症度、処理される面積の範囲、および/または処理される新組織へのアクセス容易性に一部依存して、1つの接着片をもう一つの接着片と近接させて調整してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、3DFCの小片は互い直接隣接して配置され、ある小片の1つまたは複数の端が第2の片の1つまたは複数の端と接触するようにする。別の実施形態では、一つの端がもう1つの端に触れないように、小片は心臓組織に付けることが可能である。これらの実施形態では、小片は、患者によって示された解剖の条件および/または疾病条件に基づく適切な距離によって互いから分けることが可能である。ある小片の別の小片に対する接近さの決定は当業者の通常の技能の範囲内にあり、必要とされる場合には、米国特許出願公開第20060292125号に記載されているようなイヌのモデル等の適切な動物モデルを使用して試験することが可能である。
【0091】
構築物の複数の小片を含む実施形態では、小片の一部または全部が、心臓の同じまたは異なる領域へ取り付け可能である。
構築物の複数の数片を含む実施形態では、小片は同時に取り付けられてもよいし、または心臓に並行して取り付けられてもよい。
【0092】
いくつかの実施形態では、構築物の小片は時間をかけて投与される。投与の回数および感覚は、一部では、疾患の重症度、3DFCが注射可能な組成物(その全体を本明細書に援用する米国特許出願公開第20060154365号参照)として使用されるかどうか、存在する種々の増殖因子および/またはWntタンパク質の濃度、3DFCを備えた生存細胞の数、および/または処理される心臓組織へのアクセスの容易さにより一部決まる。連続適用の間の投与回数および持続時間の決定は十分に当業者の技能の範囲内にある。必要な場合、その全体を本明細書に援用する米国特許出願公開20060292125号に記載されているイヌのモデル等の適切な動物モデル用いて試験することが可能である。
【0093】
さらに別の実施形態では、1つまたは複数の構築物は左心室と接触する。さらに別の実施形態では、1つまたは複数の構築物は心臓全体を被覆する。
複数の小片の構築物を含む実施形態では、小片の一部または全部が、心臓を含む領域へ取り付けられ得る。別の実施形態では、構築物小片の1つまたは複数が、損傷した心筋層を含まない領域へ取り付けられ得る。例えば、いくつかの実施形態では、ある小片が虚血組織を含む領域へ取り付けられ、第2の小片が虚血組織を含まない隣接領域へ取り付けられ得る。これらの実施形態では、隣接領域は損傷した組織または欠損した組織を含むことが可能である。本明細書に使用する場合、「損傷した」または「欠損した」組織とは、虚血組織を始動させる事象を含むがこれに限定されない内部および/または外部事象により引き起こされ得る組織の異常状態のことを指す。虚血組織、破損組織、欠損組織を生じさせる可能性がある他の事象には、疾病、外科手術、環境への暴露、傷害、老化、および/またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0094】
培養された三次元組織の複数の小片を含む実施形態では、構築物の小片は同時に取り付けられてもよいし、または虚血組織に並行して取り付けられてもよい。
本明細書で開示された別の実施形態と結合することが可能な別の実施形態では、心筋細胞またはその前駆細胞は、0.5×106細胞/cm2から5×106細胞/cm2までの間、より好ましくは1×106細胞/cm2から4×106細胞/cm2までの間、最も好ましくは1.5×106細胞/cm2から3×106細胞/cm2までの間の範囲の細胞密度で3DFCに付着される。本明細書で開示された別の実施形態と結合することが可能な別の実
施形態では、そ心筋細胞またはその前駆細胞は、1.5×106細胞/cm2から3×106細胞/cm2の間の密度で構築物上に播種され、繊維芽細胞は約8.0×105細胞/c
2から約2.0×106細胞/cm2までの間の密度で構築物上に存在する。
【0095】
種々の実施形態では、心筋細胞またはその前駆細胞は、構築物上の繊維芽細胞に対して、約1:10から約10:1までの間、約1:9から約9:1までの間、約1:8から約8:1までの間、約1:7から約7:1までの間、約1:6から約6:1までの間、約1:5から約5:1までの間、約1:4から約4:1までの間、約1:3から約3:1までの間、約1:2から約2:1までの間、または約1:1の比で存在するが、また、他の細胞の比も可能である。
【0096】
本明細書の任意の別の実施形態と組み合わせることが可能なさらに別の実施形態では、心筋細胞またはその前駆細胞は、サイモシンβ−4(TB4)、aktマウス胸腺種ウイルスがん遺伝子ホモログ(AKT1)、ストロマ細胞由来因子−1α(SDF−1)および肝細胞増殖因子(HGF)等の対象治療剤を発現するよう操作されている。代わりに、サイモシンβ−4(TB4)、aktマウス胸腺種ウイルスがん遺伝子ホモログ(AKT1)、ストロマ細胞由来因子−1α(SDF−1)および肝細胞増殖因子(HGF)のうちの1つまたは複数が、移植前に構築物に外因的に加えられてもよい。RegeneRx
Biopharmaceuticals社(メリーランド州Bethesda所在)この実施形態では、心筋細胞またはその前駆細胞は、損傷した心臓上で増殖する新規な心筋細胞を提供し、更なる因子は細胞の移動と移植を増大させるだろう。
【0097】
種々の別の実施形態では、心筋細胞またはその前駆細胞は、心筋細胞、心臓幹細胞(例:c−kit+心臓幹細胞)、CD34+内皮始原細胞、自己由来の骨髄細胞および間充織幹細胞から選択される。本明細書の任意の別の実施形態と組み合わせることが可能な別の実施形態では、心筋細胞またはその前駆細胞は、ヒト細胞であり、より好ましくは処理される患者から(標準生検または他の外科手術により)得られた(つまり投与前に患者から得られ、生体外に広げられた)ヒト細胞である。
【0098】
方法はさらに、インシュリン様増殖因子(IGF)、肝臓増殖因子(HGF)、およびストロマ細胞由来因子−1α(SDF−1a)を含むが、これらに限定されないサイトカインを患者へ全身投与することを含んでよい。
【0099】
本明細書に記載された方法および組成物は、種々の医薬の投与や外科手術等の従来の治療と組み合わせて使用することが可能である。例えば、いくつかの実施形態では、培養された三次元組織は、心筋細胞の機能不全を特徴とする疾患の治療に使用される1つまたは複数の医薬と共に投与される。ここで記載した方法で使用するのに適した医薬は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤(例えばエナラプリル、リシノプリルおよびカプトプリル)、アンジオテンシン2(A−II)受容体遮断薬(例えばロサルタンおよびバルサルタン)、利尿薬(例えばブメタニド、フロセミドおよびスピロノラクトン)、ジゴキシン、β遮断薬およびネシリチドを含む。
【0100】
さらに、構築物は、心筋細胞の機能不全を特徴とする疾患の治療に使用される別の選択肢と共に使用されてもよく、それには左心アシスト装置(LVAD)とも称される心臓ポンプ、二心室心臓ペースメーカー、心臓ラップ手術、人工心臓および増強体外式カウンターパルセーション(EECP)、および心臓ラップ手術が含まれる(例えば内容が本明細書に援用される米国特許第6,425,856号、第6,085,754号、第6,572,533号および第6,730,016号参照)。
【0101】
いくつかの実施形態では、構築物は心臓のラップ手術と共に使用される。これらの実施
形態では、構築物を送達し、かつ/または取り付けるために、可撓性のパウチまたはジャケットが使用され、構築物は、損傷を受けるか弱体化した新組織の上に配置される前にパウチの内部に配置されるか埋設される。別の実施形態では、パウチと3DFCが一つに連結され得る。例えば、パウチと構築物は伸縮自在の縫糸アセンブリを使用して連結することが可能である。別の実施形態では、構築物はパウチにフレームワークを接続するのに有用な糸を含むように構成することが可能である。その内容が本明細書に援用される米国特許第6,416,459号、第5,702,343号、第6,077,218号、第6,126,590号、第6,155,972号、第6,241,654号、第6,425,856号、第6,230,714号、第6,241,654号、第6,155,972号、第6,293,906号、第6,425,856号、第6,085,754号、第6,572,533号および第6,730,016号、および米国特許出願公開第2003/0229265号、および第2003/0229261号は、構築物の送達および/または取り付けのために使用可能なパウチとジャケットの種々の実施形態(例えば心臓規制装置)について記載している。
【0102】
いくつかの実施形態では、構築物に加えて、他の装置(例えば除細動用電極、ジャケットが心臓上で所望の張力の程度で調節されているかどうかを示す張力指示器)がパウチに取り付けられ、本発明の方法および組成物に使用される。例えばその内容が本明細書に援用される米国特許第6,169,922号および第6,174,279号参照。
【0103】
多くの方法を構築物の取り付け前後の患者における心臓の機能の変化を測定するために使用することが可能である。例えば、心エコー図はポンピングする能力を決定するために使用可能である。心拍ごとに左心室から汲み出される血液の割合は、駆出率と呼ばれる。健康な心臓では、駆出率は約60パーセントである。左心室が活発に収縮できなくなることにより引き起こされる慢性心不全(つまり収縮期心不全)に罹患した個人では、駆出率は通常40パーセント未満である。心不全の重症度および原因によって、駆出率は通常40パーセント未満以下から15パーセント以下まで変動する。心エコー図は収縮期心不全と拡張期心不全(ポンピング機能は正常であるが心臓が堅い)を区別するためにも使用することが可能である。
【0104】
いくつかの実施形態では、心エコー図は構築物による処理前と処理後で駆出率を比較するために使用される。ある実施形態では、構築物による処理は、駆出率を3〜5パーセント改善する。別の実施形態では、構築物による治療は、駆出率を5〜10パーセント改善する。さらに別の実施形態では、構築物による治療は駆出率を10パーセントを超えて改善する。
【0105】
ラジオアイソトープ心室造影(RNV)またはマルチゲート収集(MUGA)スキャン法のような核走査法を使用して、拍動ごとに心臓がどれだけ多くの血液をポンピングするかを決定することが可能である。これらの試験は個人の静脈に注入される少量の染料を使用して行われる。特殊なカメラを用いて、放射性物質を、それが心臓を流れている間に検知する。他の試験にはX線と血液検査が含まれる。胸部X線は、心臓のサイズを決定するために、および肺に流体が蓄積しているか否かを決定する場合に使用され得る。血液検査はうっ血性心不全の特異的指標である脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)をチェックするために使用することが可能である。BNPは酷使された場合に、心臓により高レベルで分泌される。従って、血液中のBNPのレベルの変化は処理様式の効能をモニタするために使用することが可能である。
【0106】
さらなる態様では、本発明はCHFを治療するキットであって、上記に開示された適切な構築物と、該構築物を心臓または期間に取り付ける手段とを備えたキットを提供する。取り付け手段は、上述の任意の取り付け手段が含まれてよく、例えば外科用接着剤の組成
物、ヒドロゲルまたは予め装着された微小縫合用のプロレン針を含み得る。
実施例
【実施例1】
【0107】
3DFCの播種および共培養
3DFCパッチは、繊維芽細胞、細胞外マトリックスおよび生体吸収性の足場から構成された凍結保存されたヒト繊維芽細胞に由来する組織である(21,22)。繊維芽細胞は資格のある細胞バンクから取得したものであり、動物ウイルス、レトロウイルス、細胞形態、核学、イソ酵素および腫瘍原性に関して試験され、ウイルス、レトロウイルス、内毒素およびマイコプラズマを含まない。3DFCは冷凍で供給され(5cm×7.5cm)、使用の準備ができるまで−75℃±10℃に保存し、使用の準備ができると滅菌PBS(34〜37℃)に配置され、除去から60分以内に心臓に適用した。
【0108】
ランダム播種:3DFC(ANGINERATM、Theregen社のプロトコルに従って取得および溶解させた)を、24ウェル培養プレートのウェル空間を満たすよう、直径約1.5cmの円形に近い切片に切断した。3DFCをウェルの底部に配置し、ウェルの基部をカバーした後、3×106個を超える内皮始原細胞(ラットの新生児の心筋細胞
)を含む1.5mlの培地(10%FBSのDMEM−LG溶液)を懸濁液として27℃で3DFCの上に加えた。その後、3DFCおよび細胞懸濁液を含むプレートを1300rpmで5分間遠心分離し、細胞を27℃で3DFC中に懸濁させた。その後、さらに細胞を接着および増殖(図1)させるために、3DFCを含むプレートを細胞インキュベータに移動し、37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。
【0109】
3DFC上への所望の細胞の接着は、3×108細胞/mlを超える細胞が懸濁液に加
えられたときに、大きく増大した。この濃度では、懸濁液中のすべての細胞が3DFCと接触すると同時に3DFC中のあらゆる開口部の詰まりが追加の細胞の通過を許容しないという「交通渋滞効果」があった。
【0110】
多数の細胞から始めることで、懸濁液中のすべての細胞が3DFCまで移動することが可能となった。3DFCと接触する細胞がより多くなると、一部の細胞が孔を通過し、結果的に、パッチ上には1.5〜200万個の細胞が播種された。
【0111】
細胞シート播種:内皮始原細胞(ウシ肺動脈内皮細胞(BPAECS))をコンフルエントになるまで24ウェルまたは6ウェルの培養プレート(CellSeed社、日本)で増殖させた。その後、培養プレートを20℃に冷却し、細胞シートを培養プレートから分離した。40分後、シートは完全に分離され(図2および3)、5ml、10m1または1000μ1ピペットを使用して、分離された細胞シートを、既存の培地中で取り上げ、3DFCの上に直接移動させた(Theregen社のプロトコルに従って取得および溶解)。
【0112】
新しい細胞シート(27℃の)に垂れた2−3μ1の培地の滴を用いて、細胞シートを3DFCに対して平らになるよう広げた。いったん3DFCに対して平らで面一になると、細胞シート+3DFCの複合体を追加の培地なしで37℃、5%CO2で10分間イン
キュベートし、細胞シートを3DFCへ十分に接着させた。その後、播種された3DFCを、使用(移植等)前に一晩インキュベートした。
【0113】
採集された細胞シートはすべての細胞接着分子を保持しており、3DFCに配置されると自己接着した。さらに、この細胞採集方法は、細胞間相互作用をインタクトなままに維持した。
【実施例2】
【0114】
自発的に収縮する生物活性心筋細胞足場の構築
方法:心筋細胞を1−2日齢の新生児ラットから単離し、直径で約1.5−1.7cm2の小片に切断された3DFC足場上に0.6×106から2.7×106細胞/cm2までの範囲の濃度で播種した(ANGINERATM、Theregen社から入手)。簡単に説明すると、心臓を切除し、心房を除去し、心室を0.5−1mmの部分に切断し、細かく刻んでパンクレアチン/コラゲナーゼ溶液中で消化した。各酵素による消化に続いて、心筋細胞を採集し、合一し、10%FBSを含むDMEM中に再懸濁した。最後に、懸濁液を100mg/mlBSAを含むHam F−12に区別をつけて播種した。新生児心筋細胞−3DFCを、10%FBS DMEM−LG培地中で37℃、5%CO2で1−
10日間インキュベートした。最初の播種の24時間後に培地を交換し、次に48時間毎に交換した。
【0115】
結果:3DFCのより高い密度の心筋細胞播種(1.8×106から2.7x106細胞/cm2まで)は培養の48時間後に足場全体の同期された自発的収縮を示した。収縮は
48時間から5日まで高い信頼性で増加した。より低い密度の心筋細胞播種(0.6×106から1.2×106細胞/cm2)は、同期していないが自発性な収縮を示した。72
時間目にこれらの収縮は同期し始め、84時間目までに細胞収縮は完全に同期されたが、一貫していない様式で収縮した。5日目に、2.7x106細胞/cm2が播種された足場は一貫した定期的で方向性のある様式で収縮した(つまり、中央で各パッチが反復する方向性のある動きに拍動し、「内側へ」へ押し進んだ)。収縮は、71+3拍動BPMで記録され、平均変位が2.9±0.1mmおよび収縮速度が3.4+0.5mm/秒(N=10)であった。
【0116】
結論:これらの知見は、細胞の生存、やりとり、および電気接続を可能にする方法で、生物分解性の3次元構築物上に単離心筋細胞を播種および共培養できることを示した。これらの請求項は、新しく播種された新生児心筋細胞−3DFC足場が、電気刺激がなくとも自発的にかつ同期された方向性のある様式で拍動するという知見により裏付けられている。この新しく形成された新生児心筋細胞−3DFC足場は、CHFを治療する新規かつ独自の細胞送達系である。
【実施例3】
【0117】
移動体通信/アライメント
本実施例は、心筋細胞が播種された3DFCパッチ上の心筋細胞の配列と、上記に説明した心筋細胞が播種された3DFC(NCM−3DFC)を用いた治療による心不全ラットにおけるインビボの改善とを説明する。
コネクシン形成:上に示したように、単離した心筋細胞は3DFC上に播種し、共培養することが可能であり、これらの播種パッチは自発的かつ律動的に収縮する。理論上、律動性収縮は、播種された心筋細胞が整列し、電気機械的細胞連絡を可能にする複雑な接続を互いに確立しているという仮説を支持している。コネクシンとして知られるこれらの接続は、心筋の律動性収縮にとって不可欠である。
細胞の注入:以下の実施例は、心筋細胞播種(実施例2と同じ細胞型)の24時間後のコネクシン形成と、6日目までの経時的なコネクシン形成による細胞接続の増大とを示し、従って3DFC内のコネクシンの機能を実証している。要約すると、染料の移動を6日間培養した3DFCおよびNCM−3DFCの両方で評価した。次の3つの染料が同時に注入された:[2−(4−ニトロ−2、1、3−ベンゾキサジオール−7−イル)アミノエチル]トリメチルアンモニウム(NDB−TMA、分子量280、正味電荷+1、10mM)、Alexa 350(分子量326、正味電荷1−、10mM)、およびローダミンデキストラン(0.1mg/ml)。微小電極チップを、Sutter Instruments社のガラス電極製作器(カリフォルニア州Novato所在)で、1.0mm
のフィラメントガラス(A−M Systems社、ワシントン州Everett所在)から作成した。チップを毛管作用により3つの染料の混合物で充填し、200mM KClで充填し戻し、次に、細胞表面上に降下させた。アンプ(A−M Systems社)のキャパシタンス過補償により、染料をゆっくり連続的に注入した。写真を30秒ごとに撮影し(2.5分まで)、その後2.5分毎に20分まで撮影した。注入された細胞から染料を受け取った細胞を10分後に群間で比較した。心筋細胞が播種されたパッチへの注入により、播種された心筋細胞間で広範囲な染料の通過が生じたが(図4)、これはコネクシンの機能的な存在を実証している。播種しなかったパッチ(繊維芽細胞のみ)は、初代細胞のみで染料が厳格に保持されており、隣接細胞への染料の通過はなかった。さらに、ハロタンの添加は、細胞間の染料移動の妨害により表わされるようにコネクシン活性を阻害した(図4)。
【0118】
組織学的評価:さらに、播種後1、4、および8日の間の心筋細胞を播種したパッチの組織学的評価によると、播種された心筋細胞が3DFCに付着し、3DFCの表面に整列し続けていることが実証されている。心筋細胞は、時間が経つと、3DFCの外表面すなわち播種面(1〜8日)に残ったが、3DFCの中へ移動したり、または反対側(播種しなかった側)には移動したりしない(図8−11)。パッチ上で遠心分離された細胞は、3DFCの繊維間に存在することが分かった。
エコーカルジオグラフィーと血行動態:発明者らの研究所で標準法を使用してラットを梗塞させた。要約すると、ラットの左冠状動脈の周囲に永続的結紮糸を配置し、ラットを3週間回復させた。この回復時間中に、ラットは、駆出率と拍出量の低下、拡張終期の圧力の上昇、および左心室の寸法の増大により古典的に定義される慢性心不全(CHF)を発症した。冠状動脈の結紮の3週間後に、慢性心不全ラットを無作為に対照群(処理なし)と処理群(心筋細胞が播種された3DFC)に分けた。対照群および処理群はいずれも基準線で調べ、播種された3DFCを、心筋梗塞後3週間適用し、すべてのラットを心筋梗塞後6週間調べた(播種3DFCの3週間のポストインプラント)。ラットは6週間目の血行動態に加えて、3および6週間目にエコーカルジオグラフィーを受けた(図5−7)。
【0119】
これらのグラフデータ(EF、CI、EDP)は、示された群間の統計的(p<0.05)分析の変化/改良を示している。データは平均±標準誤差(SE)として表された。生理学的および心エコー検査測定については、Student t検定をシャム対他の試験群の単一比較に使用した。相互作用は二方向分散分析(ANOVA)を使用して検定し、群間の差をStudent−Newman−Keuls検定を使用して統計的有意差(P<0.05)を評価した。
【0120】
以前に説明された方法を用いて、心筋細胞を単離し、3DFC上に播種し、一晩インキュベートした。その後、心筋細胞が播種された3DFCを、ラットの梗塞した左心室の心外膜部分の上に直接縫合した。ラットの胸を閉じ、ラットを回復させた。エコーカルジオグラフィーデータは、処理ラット対未処理ラットでの駆出率(25%)および心拍出量(55%)における改善を実証しており(図5および6)、これはCHFの治療のための本発明の構築物の使用方法を実証している。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
3DFCに付着された筋細胞を含む構築物であって、
前記構築物は3DFCに渡る自発的な同期収縮を可能とし、
前記筋細胞は0.5×106細胞/cm2から5×106細胞/cm2までの間の密度で構築物上に播種されるか、および
前記筋細胞は前記3DFC上の繊維芽細胞比に対して約1:10から約10:1までの間の比で存在するか
の少なくとも一方である構築物。
【請求項2】
前記筋細胞は、心筋細胞または心臓幹細胞を含む請求項1に記載の構築物。
【請求項3】
前記心筋細胞または心臓幹細胞は繊維芽細胞に対して約1:10から約10:1までの間の比で構築物上に存在する請求項2の構築物。
【請求項4】
前記心筋細胞または心臓幹細胞は、1.3×106細胞/cm2から5×106細胞/cm2までの間の密度で構築物上に播種される請求項2または3に記載の構築物。
【請求項5】
前記心筋細胞または心臓幹細胞は、1.5×106細胞/cm2から3×106細胞/cm2までの間の密度で構築物上で播種される請求項2または3に記載の構築物。
【請求項6】
前記心筋細胞または心臓幹細胞は、ヒト由来である請求項2−5のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項7】
前記心筋細胞または心臓幹細胞は、サイモシンβ−4(TB4)、aktマウス胸腺種ウイルスがん遺伝子ホモログ(AKT1)、ストロマ細胞由来因子−1α(SDF−1)および肝細胞増殖因子(HGF)のうちの1つまたは複数を発現するよう操作されている請求項2−5のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項8】
心筋細胞の機能不全を特徴とする疾患を治療する方法であって、
前記疾患に罹患している患者の心臓を、前記疾患を治療するのに有効な量の請求項2−7のいずれか一項に記載の構築物と接触させることを含む方法。
【請求項9】
前記疾患は、慢性心不全(CHF)、心不全を伴わない虚血、心筋症、拡張型心筋症(DCM)、心停止、うっ血性心不全、安定狭心症、不安定狭心症、心筋梗塞、冠動脈疾患、心臓弁膜症、虚血性心疾患、駆出率の減少、心筋潅流の減少、不適応性心臓リモデリング、左心室リモデリング、左心室機能の低下、左心室不全、右心室不全、後方心不全、前方心不全、収縮期の機能障害、拡張期の機能障害、体血管抵抗、低拍出性心不全、高拍出性心不全、運動時呼吸困難、休息時呼吸困難、起坐呼吸、頻呼吸、発作性夜間呼吸困難、めまい、錯乱、休息時の冷たい四肢、運動不耐性、易疲労感、末梢性浮腫、夜間多尿、腹水、肝腫、肺水腫、チアノーゼ、側臥時の心尖拍動、奔馬性調律、心雑音、傍胸骨の隆起、および胸水から選択される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記疾患がCHFを含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記疾患がDCMを含む請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記構築物が心外膜に取り付けられている請求項8−11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記構築物は患者の心臓と接触させる時には収縮しない請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記接触させることは、前記構築物を患者の左心室に接触させることを含む請求項8−13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記患者の心臓を、サイモシンβ−4(TB4)、aktマウス胸腺種ウイルスがん遺伝子ホモログ(AKT1)、ストロマ細胞由来因子−1α(SDF−1)および肝細胞増殖因子(HGF)のうちの1つまたは複数と接触させることをさらに含む請求項8−14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記治療は、CHF患者における、左心室機能の改善、拡張終期圧力(EDP)の低下、心筋潅流、心筋細胞による心臓前壁の再構築、および不適応性左心室リモデリングの逆転のうちの1つまたは複数を含む請求項8−15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
三次元繊維芽細胞構築物(3DFC)に細胞を播種する方法であって、
(a)培養された3DFCを、3DFC上に播種される細胞の懸濁液と接触させること、
(b)懸濁液内の細胞に、前記細胞を3DFCと接触させる力を加えること、および
(c)前記細胞が3DFCに付着するのに適した条件下で細胞を培養すること、
からなる方法。
【請求項18】
前記培養することは、3DFCに付着した細胞の増殖をさらに含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
3DFCへ播種される細胞は、内皮始原細胞、骨髄細胞および心筋細胞から選択される請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞を3DFCと接触させる力は、遠心力および電場によって生成された電気力から選択された力を含む請求項17−19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記力は遠心力を含む請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記懸濁液は、少なくとも3×106細胞/mlの濃度である請求項17−21のいずれ
か一項に記載の方法。
【請求項23】
三次元繊維芽細胞構築物(3DFC)に細胞を播種する方法であって、
(a)培養された3DFCを、3DFC上に播種される細胞シートと接触させること、および
(b)細胞シートが3DFCに付着するのに適した条件下で細胞シートを培養すること、
からなる方法。
【請求項24】
前記培養することは、3DFCに付着した細胞シート中の細胞の増殖をさらに含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
細胞を培養液中でコンフルエントになるまで育て、次に培養マトリックスから細胞をインタクトな細胞シートとして分離することにより、インタクトな細胞シートが調製される請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記分離することは、インタクトな細胞シートとして前記細胞を解放するのに有効な温度まで培養マトリックスを冷却することにより達成される請求項25に記載の方法。
【請求項27】
3DFCに播種される細胞は、内皮始原細胞、骨髄細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、間充織幹細胞、臍帯血細胞、心筋細胞、それらの前駆細胞、ならびにそれらの組み合わせから選択される請求項23−26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
請求項17−27のいずれか一項に記載の方法を使用して製造された請求項1−7のいずれか一項に記載の構築物。

【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−523238(P2012−523238A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504893(P2012−504893)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/030579
【国際公開番号】WO2010/118352
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(508131152)ジ・アリゾナ・ボード・オブ・リージェンツ・オン・ビハーフ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・アリゾナ (5)
【氏名又は名称原語表記】THE ARIZONA BOARD OF REGENTS ON BEHALF OF THE UNIVERSITY OF ARIZONA
【Fターム(参考)】