説明

三脚脚立

【課題】作業者がバランスを崩すことなく安全に作業が行なえるようにした三脚脚立を提供する。
【解決手段】上端部に天板部4を備え、略ハの字状に開いた前側の梯子状脚体2と、後側の一本の棒状脚体3とを、上端部どうし開閉可能に枢着してなる三脚脚立において、梯子状脚体2又は棒状脚体3の上端部に天板部4より上方に突出する手摺り6を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梯子状脚体と一本の棒状脚体とを上端部で開閉可能に枢着してなる三脚脚立に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の三脚脚立は例えば特許文献1その他に記載されている。図8は従来の三脚脚立21を示すもので、この三脚脚立21は、前側の略ハの字状に開いた梯子状脚体2と、後側の一本の棒状脚体3とを、上端部どうし開閉可能に枢着したもので、梯子状脚体2は、略ハの字状に配置した両側一対の側枠2a,2a間に踏み桟2bを上下複数段に横架することによって形成されると共に、両側枠2a,2aに沿って補強枠2cが取り付けられ、この梯子状脚体2の上端部には天板部4が設けられている。また棒状脚体3の下端部には伸縮脚部3aが取り付けられる。この図8において、5は梯子状脚体1と棒状脚体3とを所定の開脚状態に保持する索体である。
【特許文献1】実開平−157899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような三脚脚立21は、主に園芸作業に使用されるが、梯子状脚体2の上端部に天板部4を備えているものの、作業者がバランスを崩さずに安定した姿勢で作業できるようにするため、天板部4上での作業は業界基準によって禁止されている。しかしながら、従来の三脚脚立21は、構造的に作業者が比較的容易に天板部4に乗ることができるようになっていることから、脚立使用の際に作業者がうっかり天板部5に両足を乗せた状態で作業をするような時にバランスを崩して、落下したり転倒する事故を引き起こす危険性があった。
【0004】
本発明は、上記の課題に鑑み、作業者がバランスを崩すことなく安全に作業を行なえるようにした三脚脚立を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明は、上端部に天板部4を備え、略ハの字状に開いた前側の梯子状脚体2と、後側の一本の棒状脚体3とを、上端部どうし開閉可能に枢着してなる三脚脚立において、梯子状脚体2又は棒状脚体3の上端部に前記天板部4より上方に突出する手摺り6を設けたことを特徴とする。
【0006】
請求項2は、請求項1に記載の三脚脚立において、前記手摺り6は、梯子状脚体2の上端部側を天板部4より上方へ所要長さ延長して形成されたものからなることを特徴とする。
【0007】
請求項3は、請求項1に記載の三脚脚立において、前記手摺り6は、天板部4より上方へ所要長さ突出するように梯子状脚体2の上端部に別途に取り付けられたものからなることを特徴とする。
【0008】
請求項4に係る発明は、上端部に天板部4を備え、略ハの字状に開いた前側の梯子状脚体2と、後側の一本の棒状脚体3とを、上端部どうし開閉可能に枢着してなる三脚脚立において、前記天板部4より下方へ所要長さ隔たった梯子状脚体2の所要部に作業床部9を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項5は、請求項4に記載の三脚脚立において、前記作業床部9は、天板部4と同程度又はそれより大きく形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明の三脚脚立1によれば、梯子状脚体2又は棒状脚体3の上端部に天板部4より上方に突出する手摺り6を設けているから、この三脚脚立1の使用にあたって、脚立1の上端部まで登って作業する場合、作業者Mは、例えば、手摺り6の手前側から天板部4の上に足Fを置いて脚部Lを折り曲げた状態で太股部を手摺り6に押し付けるようにすることによって、バランスを崩さずに安定した姿勢で、安全に作業を行なうことができる。
【0011】
請求項2に係る発明のように、梯子状脚体2の上端部側を天板部4より上方へ所要長さ延長して手摺り6を形成する場合は、製作にあたって梯子状脚体2の長さを予め長く設定しておけばよいから、製作が容易となる。
【0012】
請求項3に係る発明のように、別途に形成した手摺り6を梯子状脚体2の上端部に取り付けるようにすれば、既存の三脚脚立をそのまま利用できる利点がある。
【0013】
請求項4に係る発明の三脚脚立11によれば、天板部より下方へ所要長さ隔たった梯子状脚体の所要部に作業床部を設けているから、高所作業を行なうような場合、作業者Mは脚立1上端部の天板部4まで登らなくても、天板部4の下方にある作業床部9上に足Fを置き、しかして例えば脚部Lを折り曲げた状態で太股部を天板部4の周辺所要部に押し付けるようにすることにより、バランスを崩すことなく安定した姿勢で安全に作業を行なうことができる。
【0014】
請求項5に係る発明によれば、作業床部9を天板部4と同程度又はそれより大きく形成することによって、作業者Mの足Fを安定状態に確実に支持させることができ、より一層安全に作業を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明すると、図1の(a) は本発明に係る三脚脚立1の開脚状態での正面図、(b) は側面図であり、図2は図1に示す三脚脚立1の斜視図であり、図3の(a) は図1に示す三脚脚立1の一部拡大斜視図、(b) は同三脚脚立1の使用状態を示す側面図である。この三脚脚立1は、図8に示す従来の三脚脚立21と同じ様な構造であって、略ハの字状に開いた前側の梯子状脚体2と、後側の一本の棒状脚体3とを、上端部どうし開閉可能に枢着したもので、梯子状脚体2の上端部に天板部4が設けられ、棒状脚体3の下端部には伸縮脚部3aが取り付けられている。また三脚脚立1の使用にあたり、梯子状脚体1と棒状脚体4とは索体5によって所定の開脚状態に保持されるようになっている。
【0016】
この三脚脚立1の構造について詳しく説明すれば、梯子状脚体2は、図1の(a) から分かるように略ハの字状に開いた形状となった左右の側枠部2a,2aと、両側枠部2a,2a間に一定間隔で複数段に横架された横長矩形枠状の踏み桟2b…と、これらの踏み桟2b…を両側枠部2a,2aとの間でバックアップするように両側枠2a,2aに沿って取り付けられた補強枠2c,2cとからなるもので、この梯子状脚体2の上端部には梯子状脚体2と同一平面に沿って天板部4より上方に突出する手摺り6が設けられている。
【0017】
梯子状脚体2の上端部は、図1の(b) から分かるように棒状脚体3の上端部に対応する部位にあって、この梯子状脚体2の上端部に、左右枠部6a,6aと上枠部6bとからなる下向きコ字状の手摺り6が、梯子状脚体2の側枠2a,2aと一体に形成されている。そしてこの手摺り6には天板部4との間に補強枠6cが側枠2a,2aを支持するように取り付けられている。尚、ここでは、手摺り6を、左右枠部6a,6aと上枠部6bとが下向きコ字状に一体形成されたものから構成しているが、上枠部6bを、左右枠部6a,6aとは別体のもので形成し、この別体の上枠部6bを左右枠部6a,6aにリベット等によって連結するようにしてもよい。但し、左右枠部6a,6aは、梯子状脚体2を形成する側枠2a,2aの上端部側を所要長さ延長したものとする。
【0018】
梯子状脚体2の上端部に設けられる天板部4は、矩形状の周枠部4aと、この周枠部4a内に設けられた複数の中枠部4bとからなるもので、棒状脚体3の上端部が周枠部4aの後部側枠部4aoに枢着され(枢着部を7で示す)、これによって梯子状脚体2の上端部と棒状脚体3の上端部とが開閉できるようになっている。尚、枢着部7は、図3の(a)
に示すように、周枠部4aの後部側枠部4aoに回転可能に嵌合された管部材7aからなるもので、この管部材7aに棒状脚体3の上端部が固着されると共に、管部材7aと棒状脚体3の上端部とに亘って補強材7bが斜めに掛け渡されている。
【0019】
上記のように構成される三脚脚立1を園芸作業等に使用する際に、脚立1の上端部まで登って作業する場合には、図3の(b) に示すように、作業者Mは、手摺り6の手前側から天板部4の上に足Fを置いて脚部Lを折り曲げた状態で図示のように太股部を手摺り6の上枠部6bに押し付けるようにすることによって、作業者Mは、バランスを崩さずに安定した姿勢で、安全に作業を行なうことができる。この図3の(b) に示す手摺り6の使用方法は、あくまでの一例であって、他の色々な方法で手摺り6を使用することができる。
【0020】
梯子状脚体2の上端部に手摺り6を設けるあたり、図1〜図3に示す三脚脚立1では、梯子状脚体2を形成する両側枠2a,2aの上端部側を所要長さ延長するようにしたが、図4に示す実施形態のように、左右枠部6a,6aと上枠部6bとからなる、梯子状脚体2とは別に形成した下向きコ字状の手摺り6を、梯子状脚体2の両側枠2a,2aの上端部に取り付けるようにしてもよい。この場合、図4に例示するように、梯子状脚体2の両側枠2a,2aの上端部に連結ピン8,8を一体的に突設しておいて、両連結ピン8,8をパイプ材からなる手摺り6の両側枠2a,2aの下端部側に夫々嵌挿して連結固定するようにすればよい。
【0021】
図1〜図3に示す手摺り6のように、梯子状脚体2の上端部側を天板部4より上方へ所要長さ延長して手摺り6を形成する場合は、製作にあたって、梯子状脚体2の長さを予め長く設定しておけばよいから、製作的に容易となる。また、図4に示すように、別途に形成した手摺り6を梯子状脚体2の両側枠2a,2aの上端部に取り付ける方式では、既存の三脚脚立をそのまま利用できる利点がある。
【0022】
図1〜図4に示す実施形態は梯子状脚体2の上端部に手摺り6を設けた場合であるが、この手摺り6は、梯子状脚体2に限るものではなく、棒状脚体3の棒状脚体3の上端部に天板部4より上方に突出するように設けてもよい。
【0023】
図5及び図6は本発明に係る他の三脚脚立11を示すもので、図5の(a) は三脚脚立11の開脚状態での正面図、(b) は側面図であり、図6は同三脚脚立11の斜視図、図7の(a) は同三脚脚立11の一部拡大斜視図、(b) は同三脚脚立11の使用状態を示す側面図である。この三脚脚立11は、図1〜図4に示す三脚脚立1と殆ど同様な構造であって、略ハの字状に開いた前側の梯子状脚体2と、後側の一本の棒状脚体3とが、上端部どうし開閉可能に枢着されたもので、梯子状脚体2の上端部に天板部4が設けられ、そしてこの天板部4より下方へ隔たった梯子状脚体2の所要部に作業床部9が設けられている。
【0024】
この三脚脚立1の構造につい更に説明すれば、梯子状脚体2は、図5及び図6に示すように、略ハの字状に開いた形状の左右側枠部2a,2aと、両側枠部2a,2a間に上端部側の除いてその下方に一定間隔で複数段に横架された横長矩形枠状の踏み桟2b…と、これらの踏み桟2b…を両側枠部2a,2aとの間でバックアップするように両側枠2a,2aに沿って取り付けられた補強枠2c,2cと、からなるもので、作業床部9は、梯子状脚体2上端部の天板部4より3段程度下方にある踏み桟を大型化(拡大化)することによって形成されるもので、この作業床部9と天板部4との間には踏み桟2bは設けられない。
【0025】
作業床部9は、図6及び図7から分かるように、天板部4と同じ矩形枠状で且つ天板部4と同じ大きさに形成されたもので、踏み桟2bと同様に、梯子状脚体2の左右両側枠部2a,2aと補強枠2c,2cとに支持された状態で取り付けられている。この作業床部9は、周枠部9aとこの周枠部9a内に配設された複数の中桟9bとからなる。また天板部4は、周枠部4aとこの周枠部4a内に配設された複数の中桟4bとからなるもので、梯子状脚体2の左右両側枠部2a,2aと、作業床部9の後端部に立設された左右両支柱部材10,10とに保持された状態に取り付けられている。また両支柱部材10,10と梯子状脚体2の両側枠部2a,2aに亘って平面視コ字状の補強枠12が取り付けられている。
【0026】
また棒状脚体3の上端部は、図7の(a) に示すように、天板部4を形成する周枠部4aの後部側枠部4aoに枢着され、これによって梯子状脚体2の上端部と棒状脚体3の上端部とが開閉できるようになっている。棒状脚体3の枢着部7は、同図(a) に示すように、周枠部4aの後部側枠部4aoに回転可能に嵌合された管部材7aからなり、この管部材7aに棒状脚体3の上端部が固着されると共に、管部材7aと棒状脚体3の上端部とに亘って補強材7bが斜めに掛け渡されている。
【0027】
上記のように構成される三脚脚立11の使用にあたり、高所作業を行なうような場合、作業者Mは、脚立1上端部の天板部4まで登らなくても、図7の(b) に例示するように、天板部4の下方にある作業床部9上に足Fを置いて、脚部Lを折り曲げた状態で太股部を天板部4の周辺所要部に押し付けるようにすることにより、作業者Mは、バランスを崩すことなく安定した姿勢で安全に作業を行なうことができる。尚、図7の(b) に示す作業床部9の使用方法は、あくまでの一例であり、他の色々な方法で作業床部9を利用して作業を行なうことができる。
【0028】
この作業床部9は、前記のように天板部4と同じ形状で同じ大きさに形成されるから、天板部4と作業床部9との製作にあたっては、1種類のものを製作すればよく、製作コストが安くできる。尚、作業床部9は、天板部4よりも大きく形成してもよいし、また天板部4とは異なった形状に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(a) は本発明に係る三脚脚立の開脚状態での正面図であり、(b) は側面図である。
【図2】図1に示す三脚脚立の斜視図である。
【図3】(a) は図1に示す三脚脚立の一部拡大斜視図、(b) は同三脚脚立の使用状態を示す側面図である。
【図4】手摺りを梯子状脚体とは別体に形成して梯子状脚体の上端部に取り付けた場合の三脚脚立を示す斜視図である。
【図5】(a) は本発明に係る他の三脚脚立の開脚状態での正面図、(b) は側面図である。
【図6】図5に示す三脚脚立の斜視図である。
【図7】(a) は同上の三脚脚立の一部拡大斜視図、(b) は同上の三脚脚立の使用状態を示す側面図である。
【図8】従来の三脚脚立を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1,11 三脚脚立
2 梯子状脚体
3 棒状脚体
4 天板部
6 手摺り
9 作業床部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部に天板部を備え、略ハの字状に開いた前側の梯子状脚体と、後側の一本の棒状脚体とを、上端部どうし開閉可能に枢着してなる三脚脚立において、
梯子状脚体又は棒状脚体の上端部に前記天板部より上方に突出する手摺りを設けたことを特徴とする三脚脚立。
【請求項2】
前記手摺りは、梯子状脚体の上端部側を天板部より上方へ所要長さ延長して形成されたものからなることを特徴とする請求項1に記載の三脚脚立。
【請求項3】
前記手摺りは、天板部より上方へ所要長さ突出するように梯子状脚体の上端部に別途に取り付けられたものからなることを特徴とする請求項1に記載の三脚脚立。
【請求項4】
上端部に天板部を備え、略ハの字状に開いた前側の梯子状脚体と、後側の一本の棒状脚体とを、上端部どうし開閉可能に枢着してなる三脚脚立において、
前記天板部より下方へ所要長さ隔たった梯子状脚体の所要部に作業床部を設けたことを特徴とする三脚脚立。
【請求項5】
前記作業床部は、天板部と同程度又はそれより大きく形成されていることを特徴とする請求項4に記載の三脚脚立。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−177452(P2007−177452A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−375410(P2005−375410)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000101662)アルインコ株式会社 (218)
【Fターム(参考)】