説明

上げ下げ窓用ダブルバランサ装置、及び、これを用いた上げ下げ窓

【課題】吊索の脱落を防止し、小型化を達成し、コストを低減することができる上げ下げ窓用ダブルバランサ装置、及び、これを用いた上げ下げ窓を提供する。
【解決手段】本発明に係るダブルバランサ装置1は、第1、第2の吊索巻取り車12、22を含む。第1、第2の吊索巻取り車12、22は、それぞれの回転軸心a12、a22の軸方向が互いに交わっている。本発明に係る上げ下げ窓は、ダブルバランサ装置1と、窓枠4と、室内側障子5と、室外側障子6とを含む。ダブルバランサ装置1は、第1、第2の吊索巻取り車12、22を含み、窓枠4の上隅に取り付けられ、室内側障子5と、室外側障子6とのそれぞれを、第1、第2の吊索巻取り車12、22によって上げ下げ可能に吊り下げている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上げ下げ窓用ダブルバランサ装置、及び、これを用いた上げ下げ窓に関する。
【背景技術】
【0002】
上げ下げ窓は、窓枠の上下方向に並んだ室内側障子、又は、室外側障子を上下にスライドさせて開閉するものである。ここで、一般的な上げ下げ窓には、障子を支持するバランサ装置が備えられている。バランサ装置は、障子重量と力学的平衡関係を保つための吊り上げ機構を有しており、障子を僅かな力で上下動させ、任意の開位置で停止させるようになっている。
【0003】
通常、室内側障子のみ開閉可能な上げ下げ窓は、シングルハング窓と呼ばれ、両障子をそれぞれ開閉可能なものはダブルハング窓と呼ばれる。このダブルハング窓に用いられるバランサ装置について、例えば、特許文献1に記載されたダブルバランサ装置が知られている。
【0004】
特許文献1に記載されたダブルバランサ装置は、室内側障子と、室外側障子とのそれぞれに対応した2つのバランサ部(第1、第2のバランサ部)を含む。第1、第2のバランサ部は、吊索巻取り車と、この吊索巻取り車を回動自在に支持する支軸とを有している。
【0005】
吊索巻取り車は、円錐台形状であって、上面と、下面との間に傾斜面を有しており、傾斜面は、上面、及び、下面に対して45度以上の内角で交わっている。この吊索巻取り車の構造では、吊索巻取り車の下面から上面までの高さ(傾斜面高さ)が、吊索巻取り車の上面の一端と下面の一端との前後差(傾斜面幅)よりも大きくなる。
【0006】
吊索巻取り車は、吊索巻取り溝を有し、吊索巻取り溝が、傾斜面に沿って螺旋状に旋回している。吊索は、一端が障子に結合されており、吊索巻取り溝に繰り出し可能に巻き取られている。
【0007】
さらに、ダブルバランサ装置は、窓枠の上側の隅に取り付けられる。第1、第2のバランサ部は、平面視で反対向きに配置されており、第1のバランサ部は、窓枠の縦枠に近接する側に位置し、第2のバランサ部は、窓内方側に位置している。そして、第2のバランサ部から繰り出される吊索は、第1のバランサ部の背面に取り付けられた滑車を介して、窓枠側に落下される。
【0008】
ところで、上げ下げ窓を構成する窓枠は、通常、上枠の見付長さ寸法が短いから、ダブルバランサ装置も、可能な限り見付長さ寸法が短くされていることが求められる。
【0009】
しかし、特許文献1では、上述した要請に対応することができない。即ち、特許文献1に開示されているように、滑車が、第2のバランサ部の吊索巻取り車に対して縦使いに配置されている場合、滑車は、吊索巻取り車の傾斜面高さに沿って振り動く吊索を受けることとなる。この吊索の移動幅は、滑車の溝幅を上回っており、そのままでは吊索を受けることができない。そこで、特許文献1では、滑車と吊索巻取り車との軸間距離を離すことにより、滑車に対する吊索の移動幅を小さくしている。このように滑車と吊索巻取り車との間で一定の軸間距離を確保しなければならない特許文献1では、ダブルバランサ装置の見付長さ寸法を、現状以上に短くすることはできない。
【0010】
また、特許文献1のダブルバランサ装置では、滑車と吊索巻取り車との軸間距離が長くなる分、吊索に弛みが生じやすく、吊索巻取り溝から吊索が脱落しやすい点でも問題がある。
【特許文献1】特許3697405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、吊索の脱落を防止することができる上げ下げ窓用ダブルバランサ装置、及び、これを用いた上げ下げ窓を提供することである。
【0012】
本発明のもう一つ課題は、小型化を達成することができる上げ下げ窓用ダブルバランサ装置、及び、これを用いた上げ下げ窓を提供することである。
【0013】
本発明のさらにもう一つ課題は、コストを低減することができる上げ下げ窓用ダブルバランサ装置、及び、これを用いた上げ下げ窓を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を達成するため、本発明に係る上げ下げ窓用ダブルバランサ装置は、2つの吊索巻取り車を含む。2つの吊索巻取り車は、それぞれの回転軸心の軸方向が互いに交わっている。
【0015】
上述した本発明に係るダブルバランサ装置は、窓枠、室内側障子、及び、室外側障子と組み合わされて、上げ下げ窓を構成する。ダブルバランサ装置は、窓枠の上隅に取り付けられ、室内側障子と、室外側障子とのそれぞれを、2つの吊索巻取り車によって上げ下げ可能に吊り下げている。
【0016】
本発明に係る上げ下げ窓を構成するダブルバランサ装置は、この種のダブルバランサ装置が有すべき基本的構成を有し、さらに2つの吊索巻取り車を、それぞれの回転軸心の軸方向が互いに交わるように配置した点に特徴の一つがある。この構成によると、一方の吊索巻取り車の背面側に滑車を取り付けた場合に、滑車の回転軸心は、他方の吊索巻取り車の回転軸心に対して軸方向が交差する。
【0017】
ここで、他方の吊索巻取り車から繰り出される吊索は、傾斜面幅に沿って移動するから、傾斜面高さに沿って移動する場合と比較して、吊索の移動幅を狭めることができる。従って、吊索の移動幅を狭めた分に比例して、滑車と吊索巻取り車との軸間距離を狭めることが可能となり、もって、ダブルバランサ装置の見付長さ寸法が短くなる。なお、吊索の移動幅は、2つの吊索巻取り車の回転軸心の軸方向が、互いに直交しているときに最も狭くなる。
【0018】
また、ダブルバランサ装置の見付長さ寸法が短くなると、他方の吊索巻取り車から繰り出される吊索に緩みが生じにくくなり、吊索の脱落が防止される。
【0019】
さらに、ダブルバランサ装置の見付長さ寸法が短くなると、見付長さ寸法の短い窓枠に対しても、容易に取り付けることができる。
【0020】
本発明に係るダブルバランサ装置の構成では、2つの吊索巻取り車が、それぞれハウジングに収納された場合、収納される吊索巻取り車の向きに応じて、一方のハウジングが、他方のハウジングよりも低くなるから、窓枠に対する取付作業の効率が向上する。
【0021】
また、一方のハウジングが、他方のハウジングよりも低くなる分、窓枠の上枠の見付高さ寸法を低くすることができる。従って、窓枠のデザイン上の見栄えが向上するとともに、窓枠の製造コストが低減される。
【0022】
本発明の他の目的、構成及び利点については、添付図面を参照し、更に詳しく説明する。添付図面は、単に、例示に過ぎない。
【発明の効果】
【0023】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)吊索の脱落を防止することができる上げ下げ窓用ダブルバランサ装置、及び、これを用いた上げ下げ窓を提供することができる。
(2)小型化を達成することができる上げ下げ窓用ダブルバランサ装置、及び、これを用いた上げ下げ窓を提供することができる。
(3)製造コスト、及び、施工コストを低減可能な上げ下げ窓用ダブルバランサ装置、及び、これを用いた上げ下げ窓を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は本発明の一実施形態に係る上げ下げ窓用ダブルバランサ装置の正面図、図2は図1に示したダブルバランサ装置の平面図、図3は図1に示したダブルバランサ装置の背面図、図4は図1に示したダブルバランサ装置の左側面図である。また、図5は図1乃至図4に示したダブルバランサ装置の一部を取り出して示す拡大正面図である。
【0025】
本実施形態に係るダブルバランサ装置は、2つの渦巻きバネ式バランサ部(第1、第2のバランサ部10、20)を含む。なお、図1乃至図4のダブルバランサ装置は、上げ下げ窓を構成する窓枠の左上隅へ取り付けられること想定した実施形態であって、同右上隅への取り付けられる実施形態では、第1、第2のバランサ部10、20の構造、及び、配置が左右反転する。
【0026】
第1のバランサ部10は、所謂シングルバランサ装置として利用可能な一般的構成を有している。以下、各部の構成を簡単に説明すると、第1のバランサ部10は、第1のハウジング11と、第1の吊索巻取り車12と、第1の支軸14と、第1の吊索15と、滑車16とを有している。
【0027】
第1のハウジング11は、好ましくは金属板材を角筒状に組み付け成形したものであって、見込幅方向Wに向かい合う正面部111と、背面部112との間が収納空間110となっている。
【0028】
さらに、第1のハウジング11は、第1の連結面113と、取付部17とを有している。第1の連結面113は、見付長さ方向Lに向かい合う第1のハウジング11の一面であって、後述する第2のハウジング21に面接触し、面接触状態で、着脱可能にネジ留めされている。
【0029】
他方、取付部17は、見付長さ方向Lに向かい合う第1のハウジング11の他面であって、予め窓枠に固定される支持具(図示しない)と組み合わされ、ダブルバランサ装置を窓枠(図示しない)に取り付けるために用いられる。図4に示す取付部17は、略L字状の板面内に、2つの引っ掛け孔171、172と、屈曲部173と、螺子止め孔174とを有している。
【0030】
2つの引っ掛け孔171、172は、一面から他面に貫通しており、見付高さ方向Tでみた板面の上側において、見込幅方向Wに間隔を隔てて横並びに配置されている。他方、螺子止め孔174は、一面から他面に貫通しており、見付高さ方向Tでみた板面の下側において、引っ掛け孔171と同一線上に配置されている。
【0031】
2つの引っ掛け孔171、172と、螺子止め孔174とは、見付高さ方向Tに離れており、好ましくは、それぞれの中心を結んだ線が直角三角形となるように配置されている。この構成によると、取付姿勢が安定する。
【0032】
屈曲部173は、螺子止め孔174と、引っ掛け孔171との間に配置されている。屈曲部173は、支持具に対して凹凸嵌合することにより、取付姿勢を安定させる。
【0033】
第1の吊索巻取り車12は、円錐台形状であって、上面121と、下面122との間に、傾斜面120を有している。傾斜面120は、回転軸心a12に対して直交する上面121、下面122との間でなす内角θ120が、45度以上90度以下である。この吊索巻取り車の構造では、下面122から上面121までの高さ寸法(傾斜面高さT1)が、断面でみた下面122の一端と、上面121の一端との前後差(傾斜面幅W1)よりも大きくなる。図5の第1の吊索巻取り車12は、一般的な吊索巻取り車と同様に、内角θ120が48〜60度程度であり、傾斜面高さT1が20mm程度であり、傾斜面幅W1が7〜15mm程度である。
【0034】
第1の吊索巻取り車12は、第1の吊索巻取り溝123を有している。第1の吊索巻取り溝123は、傾斜面120の表面上に開口しており、回転軸心a12の軸方向に沿って、傾斜面120の表面上を螺旋状に旋回している。
【0035】
第1の吊索15は、第1の吊索巻取り車12において、第1の吊索巻取り溝123に巻き取り、又は、繰り出し可能に巻装されている。
【0036】
さらに、第1の吊索巻取り車12は、下面122にバネケース13が一体的に結合されており、このバネケース13の内部に、渦巻きバネ(図示しない)が収納されている。なお、渦巻きバネは、当該技術分野において、周知の構成部分であるから、詳細は省略する。
【0037】
第1の支軸14は、正面部111、及び、背面部112の略中央を、板面に対して直交する見込幅方向Wに貫通し、両端部が、それぞれ正面部111、背面部112に回転自在に保持されている。
【0038】
第1の支軸14は、第1の吊索巻取り車12を回動自在に支持している。第1の支軸14は、第1の吊索巻取り車12の回転軸心a12上に取り付けられており、順方向、又は、逆方向に回転せることにより、回転方向に応じて渦巻きバネ(図示しない)を拡縮させる。この回転操作により、第1の吊索巻取り車12に対し、渦巻きバネの拡縮に対応した吊索巻上げ力が与えられ、吊索巻上げ力が、障子重量と釣り合うように調整される。
【0039】
さらに図1乃至図4に示す第1のバランサ部10は、周知のラチェット機構として、第1のラチェット車18と、第1のクリック19とを有している。第1のラチェット車18は、室内面側となる正面部111上において、第1の支軸14に一体的に結合されている。第1のクリック19は、第1のラチェット車18に向けて付勢されており、刃が第1のラチェット車18の歯に係合し、第1の支軸14の軸回転方向を一方に制限する。
【0040】
滑車16は、軸体161により回動自在に支持されている。滑車16は、第1のハウジング11の背面部112に配置され、後述する第2の吊索巻取り車22から繰り出される第2の吊索25を室外側に落下させる。
【0041】
図1乃至図4のダブルバランサ装置において、第1のバランサ部10は、吊索落下点が相対的に室内側となるように、正面部111が室内側に配向され、第2のバランサ部20は、吊索落下点が相対的に室外側となるように配向される。
【0042】
第2のバランサ部20は、第1のバランサ部10と同様の基本構成を有している。以下、各部の構成を簡単に説明すると、第2のバランサ部20は、第2のハウジング21と、第2の吊索巻取り車22と、第2の支軸24と、第2の吊索25とを有している。
【0043】
第2のハウジング21は、正面部211と、背面部212との間が収納空間220となっており、第2の連結面213を有している。第2の連結面213は、見付長さ方向Lに向かい合う第2のハウジング21の一面であって、第2のハウジング21に対して面接触した状態で、着脱可能にネジ留めされている。
【0044】
第2の吊索巻取り車22は、円錐台形状であって、上面221と、下面222との間に、傾斜面220を有している。傾斜面220は、下面222に対して、48〜60度程度の内角θ220で交わっている(図5参照)。
【0045】
第2の吊索巻取り車22は、第2の吊索巻取り溝223を有している。第2の吊索巻取り溝223は、傾斜面220の表面上に開口しており、回転軸心a22の軸方向に沿って、傾斜面220の表面上を螺旋状に旋回している。
【0046】
第2の吊索25は、第2の吊索巻取り車22において、第2の吊索巻取り溝223に巻き取り、又は、繰り出し可能に巻装されている。
【0047】
さらに、第2の吊索巻取り車22は、下面222にバネケース23が一体的に結合されており、このバネケース23内に、渦巻きバネ(図示しない)が収納されている。
【0048】
第2の支軸24は、第2の吊索巻取り車22を回動自在に支持している。第2の支軸24は、正面部212、背面部213の略中央を、見付高さ方向Tに貫通し、両端部が、それぞれ正面部212、背面部213に回転自在に保持されている。
【0049】
第2の吊索巻取り車22は、第2の支軸24の回転操作により生じる渦巻きバネの付勢力を利用し、第2の支軸24を介して障子重量と釣り合う平衡力を作用させ、第2の吊索25を巻き取り、又は、繰り出す。
【0050】
図1乃至図4に示す第2のバランサ部20は、周知のラチェット機構として第2のラチェット車28と、第2のクリック29とを有している。
【0051】
図1乃至図5を参照して説明したように、本発明の一実施形態に係るダブルバランサ装置は、第1、第2の吊索巻取り車12、22を含み、この第1、第2の吊索巻取り車12、22によって、第1、第2の吊索15、25が巻き取られるから、窓枠の上隅に取り付けられた場合に、室内側障子および室外側障子を、第1、第2の吊索巻取り車12、22によって、障子を僅かな力で上下動させ、任意の開位置で停止させることができる。
【0052】
図1乃至図5の上げ下げ窓用ダブルバランサ装置は、ダブルバランサ装置の一般的構成を有することに加え、さらに、第1、第2の吊索巻取り車12、22の配置に工夫を加えた点に特徴の一つがある。即ち、第1、第2の吊索巻取り車12、22は、それぞれの回転軸心a12、a22の方向が互いに交わっており、より好ましくは回転軸心a12、a22が互いに直交している。
【0053】
上記構造を違う表現で説明すると、第1、第2のバランサ部10、20は、縦列的に配置され、見付長さ方向Lを基準として、第1の支軸14と、第2の支軸24とが互いに直交する方向を向き、第2の吊索巻取り車22が、第1の吊索巻取り車12に対して略直角に捻れた位置で、第2の支軸24により保持されている。
【0054】
さらに、図1乃至図4に示すように、通常、第1、第2の吊索巻取り車12、22は、第1、第2のハウジング11、21に収納されているから、第1、第2のハウジング11、21も、第1、第2の吊索巻取り車12、22の向きに追従した配置となっている。
【0055】
第1、第2のハウジング11、21は、互いに交差して連結されており、第1、第2の吊索巻取り車12、22の縦横寸法比に応じて、第2のハウジング21の見付高さ方向Tの側面が、第1のハウジング11の見付高さ方向Tの側面よりも低くなっている。図1乃至図4に示す第2のハウジング21は、第1のバランサ部10の見付高さ寸法T10の範囲内で、十文字に交差して配置され、見付高さ方向Tの両端面部分で、高低差G1が生じている。
【0056】
図6は図1乃至図4に示したダブルバランサ装置の一部を取り出して示す拡大平面図、図7は同じく拡大正面図である。図6及び図7において、図1乃至図5に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0057】
図6及び図7は、図1乃至図5を参照して説明したダブルバランサ装置に特有の効果について、説明する図である。図6及び図7を参照すると、第2の吊索巻取り車22は、傾斜面220が、下面222に対する内角θ220が45度以上である。この第2の吊索巻取り車22の構造では、内角θ220が45°を境として、傾斜面高さT1が、傾斜面幅W1よりも大きくなる。
【0058】
従来のダブルバランサ装置(特許文献1参照)は、滑車16が、第2の吊索巻取り車22の回転軸心a22と同じ方向に配置され、傾斜面高さT1に即して取り付けられているから、傾斜面220の最下辺から繰り出される吊索25aと、最上辺から繰り出される吊索25bとで、吊索25の繰り出し位置が20mmも移動することになる。
【0059】
滑車16は、その溝幅W3以上に吊索25が振り動く場合に、吊索25を受けることができない。そこで、従来のダブルバランサ装置では、滑車16と吊索巻取り車22との軸間距離L2を離すことにより、吊索25の移動幅を小さくしている。
【0060】
これに対して、本発明に係るダブルバランサ装置において、第1、第2の吊索巻取り車12、22は、互いの回転軸心a12、a22が直交しているから、背面部112に滑車16を取り付けた場合、滑車16は、第2の吊索巻取り車22に対して回転軸心の軸方向が直交する。この構造によると、滑車16は傾斜面幅W1に沿って振り動く吊索25を受けるから、傾斜面高さT1に沿って振り動く吊索25を巻取りする従来技術と比較して、吊索25の移動幅を狭めることができ、軸間距離L2が縮小される分、ダブルバランサ装置の見付長さ寸法L10を短くすることができる。
【0061】
図8は、図1乃至図4に示したダブルバランサ装置の使用態様を示す正面図である。図8において、図1乃至図7に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。図8は、図1乃至図7を参照して説明したダブルバランサ装置に特有の効果について、説明する図である。
【0062】
この種のダブルバランサ装置は、通常、外部から見えないように窓枠4の内部に収納されるから、ダブルバランサ装置は、見付高さ寸法が可能な限り低背化されなければならない。仮に、ダブルバランサ装置の見付高さ寸法が高い場合、これに追従して上枠41の見付高さ寸法が高くなり、窓枠の製造コスト高を招く。
【0063】
さらに、上枠41の見付高さ寸法は、見栄えを考慮して可能な限り低くされるから、ダブルバランサ装置の見付高さ寸法が高い場合、上枠41の内部への組み付け作業が難しくなる。
【0064】
上述した技術的課題に対し、図8のダブルバランサ装置において、第2のハウジング21は、第1のハウジング11よりも低い位置に取り付けられているから、上枠41の内部への組み付け作業を容易に行うことができる。以下、図8を参照して順に説明する。
【0065】
図8のダブルバランサ装置は、予め窓枠4に固定される支持具43と組み合わされ、取付部17と、支持具43との結合により、窓枠4に取り付けられる。
【0066】
取付部17、及び、支持具43、相互に結合可能な構造を有している。図示からは必ずしも明らかではないが、支持具43は、2つの引っ掛け突起431、432が、見付高さ方向Tの上側において、見込幅方向に間隔を隔てて横並びに配置されている。螺子止め孔434は、一面から他面に貫通しており、見付高さ方向Tの下側において、引っ掛け突起431と同一線上に配置されている。
【0067】
屈曲部433は、螺子止め孔434と、引っ掛け突起431との間に配置されている。屈曲部433は、取付部17の屈曲部173に対して凹凸嵌合することにより、取付姿勢を安定させる。
【0068】
取付部17は、いわゆる先端引っ掛け方式によって、引っ掛け孔171、172に、引っ掛け突起431、432が引っ掛けられ、支持具43の螺子止め孔174と、取付部17の螺子止め孔434とを位置決めした状態で、ネジを通して一体的に固定する。
【0069】
図8に示すようにダブルバランサ装置は、第2のバランサ部20が、第1のバランサ部10の見付高さ寸法の範囲内にあり、第2のバランサ部20の後端部Pが高低差G1の分だけ、第1のバランサ部10より低くなっているから、先端引っ掛け方式において、例えば、第1のバランサ部10の先端上部を中心にダブルバランサ装置を持ち上げた場合に、高低差G1の分だけ、後端部Pを高く持ち上げることができる。
【0070】
また、ダブルバランサ装置は、滑車16と吊索巻取り車22との軸間距離L2が縮小されており、見付長さ寸法が短くされている。このように、見付長さ寸法が短くなると、後端部Pへの荷重(重力)が小さくなるから、上枠41と縦枠42の2点で固定していた従来技術とは異なり、上枠41、又は、縦枠42の何れか一点で止めることが可能になる。従って、部品点数の削減、取付工数の削減を図ることができる。
【0071】
図1乃至図8を参照して説明したダブルバランサ装置は、窓枠などと組み合わされて、上げ下げ窓を構成する。次に、本発明に係るダブルバランサ装置を用いた上げ下げ窓について説明する。図9は、本発明の一実施形態に係る上げ下げ窓について一部を省略して示す正面図である。図9において、図1乃至図8に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0072】
図9の上げ下げ窓は、ダブルバランサ装置1と、窓枠4と、室内側障子5と、室外側障子6とを含む。
【0073】
ダブルバランサ装置1は、窓枠4の上枠41において、幅方向Wに向かい合う隅部に取り付けられている。第1、第2のバランサ部10、20は、第1、第2の吊索巻取り車12、22の巻上げ力により、力学的平衡関係を保ちながら、室内側障子5、室外側障子6をそれぞれ吊り下げている。具体的に、第1の吊索巻取り車12から繰り出された第1の吊索15は、室内側障子5に結合され、室内側障子5を吊り下げる。第1の吊索15は、室内側障子5の上下動に連動して、第1の吊索巻取り車12に巻き取り、又は、繰り出し可能に巻装されている。
【0074】
他方、第2の吊索巻取り車22から繰り出された第2の第2の吊索25は、室外側障子6に結合され、室外側障子6を吊り下げる。第2の第2の吊索25は、室外側障子6の上下動に連動して、第2の吊索巻取り車22に巻き取り、又は、繰り出し可能に巻装されている。ここで、ダブルバランサ装置1は、第2の第2の吊索25を、窓枠側に落下させるための滑車16を有している。滑車16は、縦枠42に近接する第1のバランサ部10の背面に配置されている。
【0075】
図9の上げ下げ窓は、図1乃至図8を参照して説明したダブルバランサ装置1の利点を全て有することができる。例えば、第1、第2の吊索巻取り車12、22は、互いの回転軸心a12、a22が直交していることにより、滑車16と第2の吊索巻取り車22との軸間距離L2を短縮し、もって装置の見付長さ寸法を短くすることができる。
【0076】
上げ下げ窓は、そもそも引き違い窓が設置できないような狭い設置スペースに取り付けられるものであるから、通常、窓枠4それ自体が小さい傾向がある。例えば、窓枠4の見付長さ寸法W4が300mm程度の上両隅にダブルバランサ装置1を取り付けようとした場合、ダブルバランサ装置1の見付長さ寸法が150mmを超えると、両端のダブルバランサ装置1が窓枠4の内方で互いに衝突して、窓枠4内に収まらなくなる。これに対し、本実施例では見付長さ寸法の短縮が可能であるから、狭い設置スペースに取り付けられる上げ下げ窓に対しても、取り付けることができる。
【0077】
また、本実施例に係るダブルバランサ装置1は、見付長さ寸法が短くなっているから、第2の吊索25に緩みが生じにくく、第2の吊索25の脱落が防止される。従って、障子の上下動操作の信頼性が向上する。
【0078】
さらに、本実施例に係るダブルバランサ装置1は、見付長さ寸法が短くなっているから、施工時の取り扱いが容易になり、施工効率を向上することができる。特に、第2のバランサ部20の後端部が高低差G1の分だけ低くなっているから、先端引っ掛け方式において、例えば、第1のバランサ部10の先端上部を中心にダブルバランサ装置を持ち上げた場合に、高低差G1の分だけ、後端部Pを高く持ち上げることができる。従って、施工効率が向上する。また、施工効率の向上に伴って、窓枠4の上枠41の見付高さ寸法を低くすることができるから、窓枠4のデザイン上の見栄えが向上するとともに、窓枠4の製造コストが低減される。
【0079】
これに対して、特許文献1では、第1、第2のバランサ部10、20が互いに平行して横並びに配置されているから、第2のバランサ部20を持ち上げると、後端部が、窓枠4の上枠41にぶつかる。そのため、特許文献1では、後端部の移動スペースを考慮して、窓枠4の上枠41の見付高さ寸法が余分に高くなる。このように、窓枠4の上枠41の見付高さ寸法が高いと、デザイン上引き違い窓枠など他の窓枠4とのバランスが悪くなる。また、窓枠4の上枠41の見付高さ寸法が高くなった分、使用するアルミ材料が多く必要になり、コスト高を招く。
【0080】
本実施例に係る第2のハウジング21は、第1の連結面113に対して、第2の連結面213を面接触させた状態で、着脱可能に結合される。この構造によると、第1、第2の連結面113、211の接触面積が確保され、安定して強固に接続することができる。
【0081】
これに対して、特許文献1では、第1、第2のバランサ部10、20が、段違いに接続されている。この構成によると、共に厚みが小さい部分をずらして接合されることとなり、強固な接続が困難である。
【0082】
特に上げ下げ窓においては、既存のシングルハング窓を、新たにダブルハング窓に改修したいという市場の要請がある。ここで、本実施例に係るダブルバランサ装置1は、第1、第2のバランサ部10、20が相互に着脱可能に結合されているから、第1のバランサ部10をシングルバランサ装置として単独で使用することができるとともに、後に第2のバランサ部20を付加することができる。
【0083】
これに対して、特許文献1では、マウント基板に第1、第2のバランサ部10、20を載置しているから、マウント基板の分だけ製造コスト高を招く。さらに、ダブルバランサ装置1の取り付けに先立って、第1、第2のバランサ部10、20をマウント基板に搭載するための作業が増える分だけ、施工コスト高を招く。
【0084】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種種の変形態様を採り得ることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施形態に係る上げ下げ窓用ダブルバランサ装置の正面図である。
【図2】図1に示したダブルバランサ装置の平面図である。
【図3】図1に示したダブルバランサ装置の背面図である。
【図4】図1に示したダブルバランサ装置の左側面図である。
【図5】図1乃至図4に示したダブルバランサ装置の一部を取り出して示す拡大正面図である。
【図6】図1乃至図4に示したダブルバランサ装置の一部を取り出して示す拡大平面図である。
【図7】図1乃至図4に示したダブルバランサ装置の一部を取り出して示す拡大正面図である。
【図8】図1乃至図4に示したダブルバランサ装置の使用態様を示す正面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る上げ下げ窓について一部を省略して示す正面図である。
【符号の説明】
【0086】
1 ダブルバランサ装置
10、20 第1、第2のバランサ部
12、22 吊索巻取り車
120、220 傾斜面
15、25 吊索
4 窓枠
5、6 室内側障子、室外側障子
θ120、θ220 内角
a12、a22 回転軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの吊索巻取り車を含む上げ下げ窓用ダブルバランサ装置であって、
前記2つの吊索巻取り車は、それぞれの回転軸心の軸方向が互いに交わっている、
上げ下げ窓用ダブルバランサ装置。
【請求項2】
請求項1に記載された上げ下げ窓用ダブルバランサ装置であって、
前記2つの吊索巻取り車は、それぞれの回転軸心の軸方向が互いに直交している、
上げ下げ窓用ダブルバランサ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された上げ下げ窓用ダブルバランサ装置であって、
前記2つの吊索巻取り車は、それぞれハウジングに収納されており、一方のハウジングは、他方のハウジングよりも低くなっている、
上げ下げ窓用ダブルバランサ装置。
【請求項4】
上げ下げ窓用ダブルバランサ装置と、窓枠と、室内側障子と、室外側障子とを含む上げ下げ窓であって、
前記ダブルバランサ装置は、2つの吊索巻取り車を含み、前記窓枠の上隅に取り付けられ、前記室内側障子と、前記室外側障子とのそれぞれを、前記2つの吊索巻取り車によって上げ下げ可能に吊り下げており、
前記2つの吊索巻取り車は、それぞれの回転軸心の軸方向が互いに交わっている、
上げ下げ窓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−197487(P2009−197487A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40495(P2008−40495)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(591073810)株式会社イリエ (5)
【Fターム(参考)】