説明

上吊り式引戸装置

【課題】ガイドレールの上に転動自在に係合したローラを上部に備えている上吊り式扉体を有する上吊り式引戸装置において、ガイドレールからローラが扉体厚さ方向に脱落しないようにすること。
【解決手段】ガイドレール21の上に上吊り式扉体1のローラ31が転動自在に係合し、ローラ31は、扉体1の厚さ方向となっているローラ厚さ方向の両側に設けられた2個のフランジ部31A,31Bと、これらのフランジ部の間に形成された溝部31Cとを有し、ガイドレール21は溝部31Cに係合する立上部21Cを有し、扉体1は、扉体1及びローラ31が扉体1の厚さ方向の一方と他方へ移動したときに立上部21Cに当接してローラ31の脱落を防止するための第1脱落防止部87と第2脱落防止部86とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉体の上部に設けられたローラがガイドレールの上に転動自在に係合している上吊り式引戸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、ガイドレールの上に転動自在に係合したローラを上部に備えている上吊り式扉体が、ローラのガイドレール上の転動によって開閉移動自在となっている上吊り式引戸装置が示されている。また、この特許文献1には、ローラから吊り下げられた上吊り式扉体に何らかの理由による浮き上がりが生じ、この浮き上がりによってローラがガイドレールから離脱するのを防止するためのローラ離脱防止装置が上吊り式引戸装置に設けられていることが、図面上で示されている。このローラ離脱防止装置は、ガイドレールよりも下側の扉体の箇所に、具体的には、ローラが取り付けられているブラケットの箇所に上下の幅を有する帯状部材を配置し、ローラ離脱防止部を形成しているこの帯状部材が、扉体の浮き上がり時において、ローラがガイドレールとの係合から外れる前にガイドレールに当接することにより、ローラがガイドレールから離脱するのを防止する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−70410(図2、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなローラ離脱防止部が上吊り式引戸装置に設けられ、ローラ離脱防止部がガイドレールに当接してローラのガイドレールからの離脱が防止されているときでも、扉体が開閉移動を継続している場合がある。このため、ローラ離脱防止部がガイドレールに当接しても、この当接が扉体の円滑な開閉移動を阻害しないように工夫することが求められる。
【0005】
本発明の目的は、ローラ離脱防止部がガイドレールに当接しても、扉体が円滑に開閉移動できるようになる上吊り式引戸装置のローラ離脱防止装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る上吊り式引戸装置のローラ離脱防止装置は、ガイドレールの上に転動自在に係合したローラを上部に備えている少なくとも1個の上吊り式扉体を有し、この扉体は前記ローラの前記ガイドレール上の転動によって開閉移動自在となっているとともに、前記扉体の浮き上がりで前記ローラが前記ガイドレールとの係合から外れる前に前記ガイドレールに当接することによって前記ローラが前記ガイドレールから離脱するのを防止するためのローラ離脱防止部が、前記ガイドレールよりも下側の前記扉体の箇所に配置されている上吊り式引戸装置のローラ離脱防止装置において、前記ローラ離脱防止部は、前記ガイドレールとの摩擦力が小さい摩擦軽減部として構成されていることを特徴するものである。
【0007】
本発明におけるローラ離脱防止部は、ガイドレールとの摩擦力が小さい摩擦軽減部として構成されているため、開閉移動中の扉体の浮き上がりでローラ離脱防止部がガイドレールに当接し、そのまま扉体が開閉移動を継続しても、ローラ離脱防止部とガイドレールとの間で大きな摩擦力は発生せず、このため、この当接は扉体の円滑な開閉移動を阻害せず、扉体を所定どおり円滑に開閉移動させることができる。
【0008】
ローラ離脱防止部は、ガイドレールとの摩擦力が小さい摩擦軽減部となっていれば、任意な構造、形状、材料のものでよい。
【0009】
その第1番目の例は、ローラ離脱防止部を、回転部材を扉体に回転自在に配置することによって構成することである。これによると、開閉移動中の扉体の浮き上がりでこの回転部材がガイドレールに当接すると、この回転部材が回転することになり、これにより、回転部材とガイドレールとの間で大きな摩擦力が発生することなく、扉体を円滑に開閉移動させることができる。
【0010】
第2番目の例は、ローラ離脱防止部を、ガイドレールとの摩擦力が小さい材料で形成された摩擦軽減部材を、扉体に、少なくともこの扉体の開閉移動時に不動に配置することによって構成することである。これによると、開閉移動中の扉体の浮き上がりでこの摩擦軽減部材がガイドレールに当接しても、不動の摩擦軽減部材はガイドレールとの摩擦力が小さい材料で形成されているため、この摩擦軽減部材とガイドレールとの間で大きな摩擦力が発生せず、扉体を円滑に開閉移動させることができる。
【0011】
このような摩擦軽減部材は、扉体に固定的に配置してもよく、取り付け、取り外し可能に配置してもよい。後者によると、摩擦軽減部材が損耗、破損等しても、新しい摩擦軽減部材に交換することができる。
【0012】
また、このような摩擦軽減部材は、ガイドレールとの摩擦力が小さければ任意な材料で形成することができ、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロン、塩化ビニル等の硬質プラスチックでもよく、セラミック、油含浸部材等でもよい。
【0013】
もちろん、上述したローラ離脱防止部としての回転部材も扉体に取り付け、取り外し可能に配置してもよく、取り付け、取り外し不能に配置してもよい。そして回転部材を金属、プラスチック等の任意な材料で形成することができる。
【0014】
また、本発明において、ローラ離脱防止部の配置位置は、扉体の浮き上がりでローラがガイドレールとの係合から外れる前にガイドレールに当接することによってローラがガイドレールから離脱するのを防止できれば、ガイドレールよりも下側の扉体の任意な箇所に配置することができ、ローラ離脱防止部を、例えば、扉体の上面等に配置してもよいが、扉体が、ガイドレールの上に転動自在に係合しているローラが取り付けられたブラケットを有して構成されている場合には、このブラケットにローラ離脱防止部を配置することが好ましい。
【0015】
これによると、ブラケットがローラ離脱防止部を配置するための部材を兼ねるため、扉体本体にローラ離脱防止部を配置するための特別の加工等を行う必要がなくなり、扉体本体の製造が容易となる。
【0016】
なお、このようにブラケットにローラ離脱防止部を配置することは、ブラケットにローラ離脱防止部を直接配置してもよく、ブラケットに取り付けられる部材にローラ離脱防止部を配置し、この部材を介してブラケットにローラ離脱防止部を間接的に配置してもよい。
【0017】
以上の本発明に係る上吊り式引戸装置のローラ離脱防止装置は、扉体の個数が1個となっている上吊り式引戸装置にも適用でき、複数個となっている上吊り式引戸装置にも適用できる。
【0018】
扉体の個数が複数個となっている上吊り式引戸装置は、引き違い式の引戸装置でもよく、引き分け式の引戸装置でもよく、引き違い式と引き分け式の両方の機能を有している引戸装置でもよい。
【0019】
また、扉体の個数が1個となっている上吊り式引戸装置についても、複数個となっている上吊り式引戸装置についても、1個の扉体についてのローラ離脱防止部の個数は1個でもよく、開閉移動方向に配置された複数個でもよい。さらに、扉体の個数が複数個となっている上吊り式引戸装置については、ローラ離脱防止部を1個の扉体だけに設けてもよく、全部の扉体に設けてもよく、全部の扉体のうちの複数個の扉体に設けてもよい。
【0020】
そして、上吊り式引戸装置が、扉体厚さ方向にずれて配設され、開閉移動方向が同一方向となった少なくとも2個の第1及び第2扉体と、第1扉体のローラが転動自在に係合し、不動部材に取り付けられた第1ガイドレールと、第2扉体のローラが転動自在に係合し、第1扉体に取り付けられた第2ガイドレールとを有し、第1扉体の位置よりも第2扉体が前進することによりこれらの扉体で開口部が閉じられる構成となっている場合には、第1扉体の開閉移動方向に複数個設けられているこの第1扉体の前記ローラのうち、最も閉じ側に配置されたローラよりも開き側の第1扉体の箇所にローラ離脱防止部を配置することが好ましい。
【0021】
これによると、上記開口部を閉じるために第1扉体の位置よりも第2扉体が前進し、閉じ側の先端部が第1扉体から突出した位置まで達している第2ガイドレールを介して第2扉体の重量が第1扉体に作用し、これによって第1扉体の開き側の端部(戸尻側の端部)が、最も閉じ側に配置された上記ローラを中心として持ち上がっても、ローラ離脱防止部がガイドレールに当接することにより、最も閉じ側に配置されたローラを除く他のローラがガイドレールから離脱するのを防止することができる。そして、本発明では、このローラ離脱防止部がガイドレールとの摩擦力が小さい摩擦軽減部となっているため、開き側の端部が持ち上がった第1扉体を、円滑に開閉移動させることができる。
【0022】
以上のように、上吊り式引戸装置が、扉体厚さ方向にずれて配設され、開閉移動方向が同一方向となった少なくとも2個の第1及び第2扉体と、第1扉体のローラが転動自在に係合し、不動部材に取り付けられた第1ガイドレールと、第2扉体のローラが転動自在に係合し、第1扉体に取り付けられた第2ガイドレールとを有し、第1扉体の位置よりも第2扉体が前進することによりこれらの扉体で開口部が閉じられる構成となっている場合において、第2扉体の開閉移動方向に複数個設けられるこの第2扉体の全部のローラは、第2ガイドレールの上に転動自在に係合させてもよく、これらのローラのうち、少なくとも1個のローラを第1ガイドレールの上に転動自在に係合させ、残りのローラを第2ガイドレールの上に転動自在に係合させてもよい。
【0023】
後者によると、第2扉体の重量の一部は第1ガイドレールで支持されることになり、残りの重量だけが第2ガイドレールを介して第1扉体に作用することになるため、それだけ第1扉体の開き側の端部の持ち上がり力及び持ち上がり量を小さくできる。
【0024】
また、扉体として、上述のように、扉体厚さ方向にずれて配設された少なくとも2個の第1及び第2扉体がある場合に、第1及び第2扉体の開閉移動方向を同一方向とするためには、第1扉体と第2扉体とのうちの少なくとも一方に、開口部を開いた位置まで後退していた第2扉体を閉じ側へ所定距離移動させたときに第1扉体と第2扉体とが互いに連結係止された状態となる係止部材を設け、それ以上に第2扉体を閉じ側へ移動させると、両方の扉体がこの係止部材によって一体となって移動するように構成してもよく、あるいは、第1扉体と第2扉体とを連動機構で連結し、第1扉体と第2扉体とを常時連結しているこの連動機構により、第1扉体を低速扉体とし、第2扉体を高速扉体として、これらの扉体を開閉方向への連動移動させるようにしてもよい。
【0025】
以上説明した本発明において、扉体のローラとガイドレールとの係合関係は、ローラにローラ全周に亘る溝部があり、この溝部に、ガイドレールの全長に形成された突起が係合するものでもよく、また、ローラにローラ全周に亘る円周突起があり、この円周突起が、ガイドレールの全長に形成された溝部に係合するものでもよく、その係合形態は任意である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、ローラ離脱防止部がガイドレールに当接しても、この当接が扉体の円滑な開閉移動を阻害せず、扉体の円滑な移動を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る上吊り式引戸装置となっている二重引き式引戸装置の全体を示す正面図であって、第1及び第2の2個の扉体が出入口となっている開口部を閉じているときを示す図である。
【図2】図2は、2個の扉体を開閉移動させる移動機構を、図1で示された無目のカバーを取り外して示す正面図であって、2個の扉体が図1の位置にあるときの図である。
【図3】図3は、図2の移動機構を示す平面図であって、2個の扉体が図1の位置にあるときの図である。
【図4】図4は、2個の扉体を連動させて開閉移動させるための連動機構を示す平面図であって、2個の扉体が図1の位置にあるときの図である。
【図5】図5は、2個の扉体を開閉移動させる移動機構を、図1で示された無目のカバーを取り外して示す正面図であって、2個の扉体が後退位置まで達して図1で示された開口部を開けているときを示す図である。
【図6】図6は、図5のときの移動機構を示す平面図である。
【図7】図7は、図5のときの連動機構を示す平面図である。
【図8】図8は、図5のS8−S8線断面図である。
【図9】図9は、図2のS9−S9線断面図である。
【図10】図10は、第1扉体と、この第1扉体の2個のブラケットに取り付けられた第2ガイドレールとを示す正面図である。
【図11】図11は、図1で示された第1及び第2扉体のための下部ガイド手段を示す扉体の縦断面図である。
【図12】図12は、図11で示されている第1扉体のための下部ガイド手段を示す平面図である。
【図13】図13は、第1及び第2ガイドレールに係合するローラを第1及び第2扉体に取り付けるためのブラケットと、このブラケットに設けるローラ外れ防止手段とを示す分解斜視図である。
【図14】図14は、図13のローラ外れ防止手段をブラケットに取り付けた第1扉体を第1ガイドレールに沿って移動自在とした状態を示す第1扉体の上部正面図である。
【図15】図15は、別実施形態に係るローラ外れ防止手段を示す図14と同様の図である。
【図16】図16は、第1扉体に2個設けられているブラケットのうち、回転部材によるローラ離脱防止部が配置されている開き側のブラケットの部分を拡大して示す正面図であり、第1扉体に取り付けられている図10で示された第2ガイドレールを省略した図である。
【図17】図17は、ローラ離脱防止部を図16の閉じ側から開き側に見て示す側面図である。
【図18】図18は、図15のローラ外れ防止手段の浮き上がり防止部に、摩擦軽減部材によるローラ離脱防止部を設けた実施形態を示す図17と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る上吊り式引戸装置の全体を示す正面図である。
【0029】
図1に示されているとおり、本実施形態に係る引戸装置は2個の第1扉体1と第2扉体2を有する二重引き式引戸装置となっている。これらの扉体1,2は、建物内の廊下と部屋との間の出入口となっている開口部3を開閉するもので、この開口部3は、二重引き式引戸装置用外枠組みの構成部材となっている戸先側の縦枠部材4と、上部の横枠部材である無目5と、戸尻側の縦枠部材6と、床7とで囲まれている空間のうち、片面式戸袋を形成している戸袋パネル8よりも戸先側(閉じ側)の空間によって形成されている。
【0030】
同一方向へ移動することによって開口部3を開閉する第1扉体1と第2扉体2は、これらの扉体1,2の厚さ方向にずれて配置されている(図8参照)とともに、これらの扉体1,2が閉じ側へ前進して開口部3を閉じたときには、図1で示されているように、第2扉体2が閉じ側となり、第1扉体1の位置がこの第2扉体2から開き側へずれた位置となる(図3参照)。すなわち、第1扉体1の位置よりも第2扉体2が前進することにより、これらの扉体1,2で開口部3が閉じられる。また、両方の扉体1,2が図1で示す戸袋パネル8側へ開き移動したときには、これらの扉体1,2は、これらの扉体1,2の厚さ方向に重なって後退位置に達する(図6参照)。
【0031】
図1で示されている2個の縦枠部材4と6との間に跨る長さを有する無目5には、カバー9で塞がれる点検口がこの無目5の全長又は略全長に亘って設けられ、通常時、この横長の点検口はカバー9で塞がれており、カバー9は、縦枠部材4の突片部4Aと縦枠部材6の突片部6Aに形成されたねじ孔にねじ込まれる止めねじ10,11で無目5に取り付けられる。カバー9を取り外すことにより、2個の扉体1,2を開閉移動させるために無目5の内部に組み込まれている移動機構についての点検、保守、修理等の作業を行える。
【0032】
図2は、カバー9を取り外して示すこの移動機構の正面図であって、図1のように2個の扉体1,2が開口部1を閉じているときを示す図である。また、図3は、このときの移動機構を示す平面図である。さらに、図5及び図6には、2個の扉体1,2が開き側の後退位置に達して開口部3を開けているときにおける図2及び図3と同様の図が示されている。
【0033】
図8には、図5のS8−S8線断面図が示され、この図8で示すように、カバー9が配置される側とは反対側の無目5の側面部5Aには、補強部材を兼ねる取付部材12を介して第1ガイドレール21が取り付けられている。この第1ガイドレール21は、取付部材12に結合されて上下方向に延びる基部21Aと、この基部21Aの下端から扉体1,2の厚さ方向へ延びる下辺部21Bと、この下辺部21Bの先端から立ち上った立上部21Cとからなる。
【0034】
アルミ合金製の押し出し成形品又は引き抜き成形品であるこの第1ガイドレール21は、図3及び図6から分かるように、無目5の略全長に亘る長さを有している。これらの図3及び図6で示されているように、第1ガイドレール21には、第1扉体1の開閉移動方向に2個設けられているローラ31,32が転動自在に係合しており、第1扉体1が、第1扉体1の上部において備えているこれらのローラ31,32は、図13で示されたブラケット13を介して第1扉体1の扉体本体1A(図8参照)に取り付けられ、ローラ31,32が回転自在に取り付けられているブラケット13は、第1扉体1の一部を構成している。
【0035】
第1扉体1は、第1ガイドレール21に案内されることにより、言い換えると、第1ガイドレール21の立上部21Cの上に係合しているローラ31,32がこの立上部21C上を転動することにより、開閉移動自在になっているとともに、この第1ガイドレール21から吊り下げられた上吊り式扉体となっている。図3及び図6で示されているとおり、第1扉体1の2個のブラケット13には、第1ガイドレール21と同じく扉体1,2の開閉移動方向へ延びる第2ガイドレール22が取り付けられている。アルミ合金製の押し出し成形品又は引き抜き成形品であるこの第2ガイドレール22も、図8で示されているように、第1ガイドレール21と同じく、上下方向に延びる基部22Aと、この基部22Aの下端から扉体1,2の厚さ方向へ延びる下辺部22Bと、この下辺部22Bの先端から立ち上った立上部22Cとからなり、基部22Aが第1扉体1のブラケット13に結合されている。
【0036】
図10には、第1扉体1と、この第1扉体1の2個のブラケット13に取り付けられた第2ガイドレール22との正面図が示されている。
【0037】
図3及び図6で示されているように、第2ガイドレール22には、第2扉体2にこの第2扉体2の開閉移動方向に2個設けられたローラ33,34のうち、開き側(戸尻側)のローラ34が転動自在に係合し、閉じ側(戸先側)のローラ33は、第1ガイドレール21に転動自在に係合している。ローラ33,34のうち、ローラ34は図13で示されたブラケット13を介して第2扉体2の扉体本体2A(図8参照)の上部に取り付けられ、ローラ33は、図3及び図6から分かるように、ブラケット13よりも扉体1,2の厚さ方向の寸法が大きくかつ第2ガイドレール22の上方を跨ぐ形状となっているブラケット14を介して第2扉体2の扉体本体2Aの上部に取り付けられている。このブラケット14は、図2のS9−S9線断面図である図9にも示されている。
【0038】
そして、第2扉体2は、第1扉体1と同じく、上部に配置されたローラ33,34と、これらのローラ33,34が回転自在に取り付けられたブラケット13,14とを含んで構成されている。
【0039】
また、第2扉体2は、第1及び第2ガイドレール21,22に案内されることにより、言い換えると、第1及び第2ガイドレール21,22の立上部21C,22Cの上に係合しているローラ33,34がこれらの立上部21C,22C上を転動することにより、開閉移動自在になっているとともに、これらのガイドレール21,22から吊り下げられた上吊り式扉体となっている。また、第2ガイドレール22は、第2扉体2を開閉方向へ案内するためのものとなっている。
【0040】
そして、第1ガイドレール21は開閉移動する扉体1,2に対して不動部材となっている無目5に取り付けられているため、常に不動であるが、第2ガイドレール22は第1扉体1に取り付けられているため、第1扉体1と共に移動する。また、図10で示されているとおり、第2ガイドレール22の閉じ側の先端部は、第1扉体1の閉じ側の端部よりも閉じ側へ突出した位置まで達している。
【0041】
以上の第1扉体1と第2扉体2は図4及び図7で示された連動機構40で連結され、これにより、これらの扉体1,2が異なる速度で同一方向へ開閉移動するようになっている。図4は、図1の開口部3が2個の扉体1,2によって閉じられているときにおける連動機構40を示し、図7は、2個の扉体1,2が後退したためにその開口部3が開かれたときにおける連動機構40を示している。
【0042】
連動機構40は、第1扉体1の扉体本体1Aの上面に設けられた2個の回転体41,42と、第1扉体1の開閉移動方向に配置されているこれらの回転体41,42に掛け回されている紐状部材43とを含んで構成され、紐状部材43は、箇所Aにおいて不動部材である無目5に結合されているとともに、回転体41,42を間に挟んで箇所Aとは反対側となっている箇所Bにおいても、第2扉体2に結合されている。
【0043】
結合箇所Aにおける紐状部材43の無目5への結合構造は、無目5にブラケット44を介して取り付けられ、扉体1,2の開閉移動方向への長さを有しているゴム製の弾性部材45と、この弾性部材45に扉体1,2の開閉移動方向へ貫通して形成された孔45Aと、この孔45Aに挿通された紐状部材43に弾性部材45を挟んだ両側で固定された2個の当接部材46とで構成されている。このため、紐状部材43が扉体1,2の開閉移動方向へ移動することは、当接部材46が弾性部材45に当接することにより阻止されており、紐状部材43が弾性部材45の孔45Aの内部を移動して扉体1,2の開閉移動方向へ移動することはない。
【0044】
そして、紐状部材43に扉体1,2の開閉移動方向への大きな張力が瞬時に作用してこの方向へ紐状部材43が移動しようとしたときには、当接部材46によって弾性部材45が弾性圧縮変形することにより、この瞬時の張力が緩和される。したがって、この結合箇所Aにおける結合構造は、紐状部材43に作用する張力を弾性部材45の弾性変形で緩和することができる張力緩和手段47を構成するものとなっている。
【0045】
なお、それぞれの回転体41,42の下側には、これらの回転体41,42の鉛直の回転中心軸41A,42Aを支持する支持部材48,49が配置され、これらの支持部材48,49における回転体41,42の外周部と対応する部分に折り曲げ片48A,49Aが設けられている。これらの折り曲げ片48A,49Aにより、回転体41,42の外周溝に掛け回された紐状部材43の抜け落ちが防止されている。
【0046】
結合箇所Bにおける紐状部材43の第2扉体2への結合構造は、第2扉体2の扉体本体2Aの上面に回動中心軸50Aを中心に回動自在に配置された回動部材50と、この回動部材50における回動中心軸50Aに対して互いに反対側となっている部分に形成された2個の孔50Bと、これらの孔50Bに挿入されている紐状部材43の両方の端部に固定されたストップ部材51と、先端が第2扉体2の扉体本体2Aの段部2Bに当接するまで回動部材50に螺入され、ロックナット52で通常時は回動部材50に結合されているボルト53とで構成されている。紐状部材43の両端部は、回動部材50における回動中心軸50Aに対して互いに反対側となっている部分にそれぞれのストップ部材51によって抜け止めされているため、紐状部材43の両端部は回動部材50に連結されている。
【0047】
このため、紐状部材43は回動部材50を介して第2扉体2に結合されているとともに、ロックナット52を緩めてボルト53を回転前進させると、回動部材50は回動中心軸50Aを中心に図4及び図7中において右回動するため、紐状部材43に緊張力が付与される。したがって、ボルト53は、回動部材50を回動操作するための回動操作部材になっているとともに、結合箇所Bにおける結合構造は、紐状部材43に緊張力を付与するための緊張力付与手段54を構成するものとなっている。
【0048】
なお、ボルト53が回動部材50に螺入されただけで緩まないのであれば、ロックナット52を省略してもよい。
【0049】
以上のように構成された連動機構40によって第1扉体1と第2扉体2は連結されているため、図1で示されているように、これらの扉体1,2で前記開口部3が閉じられているときに、第2扉体2の把持部55によってこの第2扉体2を手操作で開き側へ移動させると、この移動力は、図4で示された紐状部材43から回転体41に作用するため、第1扉体1も同じ方向へ移動することになる。そして、この第1扉体1の移動は、第1扉体1に配置されている回転体41,42が回転して紐状部材43を送りながら行われるため、第1扉体1は第2扉体2の半分の速度で移動する。
【0050】
第1及び第2扉体1,2が図7で示すように後退位置に達した後、把持部55によって第2扉体2を閉じ側へ移動させた場合には、この移動力が紐状部材43から回転体42に作用することにより、第1扉体1も閉じ側へ移動し、そして、第1扉体1は第2扉体2の半分の速度で移動する。
【0051】
このように、本実施形態の連動機構40によると、第1扉体1は、低速で開閉移動する低速扉体となっており、第2扉体2は、高速で開閉移動する高速扉体となっており、この第2扉体2の移動速度は第1扉体1の移動速度の2倍であり、また、これらの扉体1,2の移動方向は同じである。
【0052】
また、この連動機構40によると、第2扉体2を開閉移動させると、この開閉移動の初めから第1扉体1も開閉移動を開始することになり、第1扉体1と第2扉体2を最初から最後まで円滑に連動移動させることができる。
【0053】
図1で示されているように、第1扉体1の下部には下部ガイド手段61が設けられ、第2扉体2の下部にも下部ガイド手段62が設けられている。前述した第1ガイドレール21で案内される第1扉体1の移動は、下部ガイド手段61でも案内され、第1及び第2ガイドレール21、22で案内される第2扉体2の移動は、下部ガイド手段62でも案内されるようになっている。
【0054】
図11には、これらの下部ガイド手段61,62が示されており、図12は、これらの下部ガイド手段61,62のうち、第1扉体1のための下部ガイド手段61を示す平面図である。この下部ガイド手段61は、図11に示されているとおり、床7に固定された板状のベース部材63と、このベース部材63の上に載せられた板状の回動部材64とを有する。図12に示されているとおり、下部ガイド手段61には、扉体1,2の開閉移動方向に離れた中心軸65,66と、これらの中心軸65,66の上部に回転自在に取り付けられ、扉体1,2の下部を開閉移動方向に案内するためのガイド部材となっているガイドローラ67,68とが設けられ、一方の中心軸65の下端は回動部材64を貫通してベース部材63に結合され、他方の中心軸66の下端は回動部材64に結合されている。
【0055】
このため、回動部材64と、中心軸66と、この中心軸66に設けられているガイドローラ68は、ガイドローラ67のための中心軸65を中心にベース部材63に対して回動可能となっている。
【0056】
この回動を行わせるための回動手段69が下部ガイド手段61のベース部材63に設けられている。この回動手段69は、回動部材64に形成された欠部64Aと対応するベース部材63の箇所に固定された突起70と、この突起70に螺入され、通常時はロックナット71Aで突起70に結合されているボルト71とを有し、このボルト71の先端は、回動部材64に形成されている当て部64Bと対面している。ロックナット71Aを緩めてボルト71を回転前進させ、ボルト71の先端が当て部64Bに当接した後もボルト71を回転前進させると、回動部材64と中心軸66とガイドローラ68は、図12の2点鎖線64’,66’,68’で示されているように、中心軸65を中心にベース部材63に対して回動する。このため、本実施形態に係る回動手段69は、ボルト71等を用いた押し式の手段となっている。
【0057】
2個のガイドローラ67,68は、図11で示されているとおり、第1扉体1の下面に、この扉体1の厚さ方向と直交又は略直交する扉体1の開閉移動方向に長く形成されている溝1Cの内部に挿入され、これによって第1扉体1の移動を案内するが、ガイドローラ67,68の直径が溝1Cの幅寸法よりも比較的小さい場合には、第1扉体1の移動時における下部ガイド手段61による第1扉体1の下部ガイド作用は、扉体1の開閉移動方向と直交又は略直交する扉体1の厚さ方向にがたついた状態でなされることになる。
【0058】
このような場合に、回動手段69によって回動部材64と中心軸66とガイドローラ68を、図12の2点鎖線64’,66’,68’で示されているように、中心軸65を中心にベース部材63に対して回動させる。これにより、配置位置が第1扉体1の厚さ方向に不動となっているガイドローラ67に対し、ガイドローラ68の配置位置は第1扉体1の厚さ方向の成分を有する方向へ変更されることになり、2個のガイドローラ67,68を溝1Cの内部の互いに反対側の側面部に当てることができるため、第1扉体1の下部が第1扉体1の厚さ方向に振れるのを防止しながら、第1扉体1を下部ガイド手段61で案内することができる。
【0059】
図11で示された第2扉体2のための下部ガイド手段62の構造は、以上説明した第1扉体1のための下部ガイド手段61と基本的には同じである。相違する点は、下部ガイド手段62のベース部材72がL字形となっていて、このベース部材72が第1扉体1の下部外面に結合されていることである。このため、第2扉体2のための下部ガイド手段62は、第1扉体1と一体となって移動する。ベース部材72の水平部の上に回動部材73が載せられ、第2扉体2の開閉移動方向に2本設けられている中心軸74,75のうちの一方の中心軸74の下部は回動部材73を貫通してベース部材72に結合され、他方の中心軸75の下部は回動部材73に結合され、これらの中心軸74,75の上部には、第2扉体2の下面に形成されている溝2Cの内部に挿入されたガイドローラ76,77が回転自在に取り付けられている。
【0060】
そして、回動部材73と中心軸75とガイドローラ77は、前記回動手段69と同じ構造の回動手段78により、中心軸74を中心にベース部材72に対して回動させることができる。この回動手段78はベース部材72に設けられている。
【0061】
図13で示した前記ブラケット13には、このブラケット13に回転自在に取り付けられている前記ローラ31,32,34が第1及び第2ガイドレール1,2から外れるのを防止するためのローラ外れ防止手段80が取り付けられている。このローラ外れ防止手段80は、板材の打ち抜き、折り曲げ加工によって形成されたものであって、ブラケット13における扉体1,2の扉体本体1A,2Aの上面に結合されるベース部13Aから立ち上がった立上部13Bの扉体1,2の開閉移動方向両側の折り曲げ部13C,13Dのうちのいずれか一方に、ビス等の止着具により取り付けられるようになっている。
【0062】
具体的に説明すると、ローラ外れ防止手段80は、折り曲げ部13C,13Dのうちのいずれか一方(図13の実施形態の場合には折り曲げ部13C)にビス等の止着具で取り付けられる主部81と、この主部81から扉体1,2の移動方向と平行な方向へ直角に折り曲げられ、ブラケット13の立上部13Bと対向する副部82とからなる平面L字形である。主部81には、この主部81の高さ方向の途中において、副部82から切り込まれた欠部83が形成され、この欠部83の下部は副部82側へ延びる浮き上がり防止部84となっている。また、副部82にも、上辺の高さ位置が欠部83の上辺と同じ高さ位置になった欠部85が主部81の側から形成されているが、この欠部85は副部82の先端(主部81とは反対側の副部82の端部)まで達していないため、この副部82の先端下部には下方へ突出する脱落防止部86が設けられている。この脱落防止部86の下方への突出量は、主部81の浮き上がり防止部84まで達していない。
【0063】
図14には、第1扉体1のローラ31が取り付けられたブラケット13にローラ外れ防止手段80を取り付けた状態が示されている。このローラ31は、第1及び第2ガイドレール21,22に係合しているほかのローラ32〜34と同じく、ローラ31の厚さ方向両側のフランジ部31A、31Bと、これらのフランジ部31A,31Bの間であるローラ31の幅方向中央において、ローラ31の全周に亘って形成された溝部31Cとを有し、この溝部31Cに、第1ガイドレール21の全長に形成された突起となっている前記立上部21Cが係合しており、第1ガイドレール21の下辺部21Bと立上部21Cは、ローラ外れ防止手段80の主部81の欠部83に挿入されている。
【0064】
このため、図14で示すように、ローラ31が第1ガイドレール21に転動自在に係合している状態から、何らかの理由によって第1扉体1に大きな浮き上がり力が作用し、第1扉体1及びローラ31が上方へ浮き上がったときには、第1ガイドレール21の下辺部21B及び立上部21Cの下面にローラ外れ防止手段80の浮き上がり防止部84が当接し、それ以上に第1扉体1及びローラ31が上方へ浮き上がることは防止されるため、第1ガイドレール21の上に載せられているローラ31の溝部31Cが第1ガイドレール21から外れることは防止される。
【0065】
また、図14で示す状態から、何らかの理由によって第1扉体1に図14の左側から右側への大きな衝撃力が作用し、第1扉体1及びローラ31が右側へ大きく移動しようとしたときには、ローラ外れ防止手段80の脱落防止部86は、ローラ31のフランジ部31A,31Bよりも下方へ突出する突出量を有しているため、第1ガイドレール21の立上部21Cが脱落防止部86に当接し、フランジ部31Aを越えて第1ガイドレール21の立上部21Cが脱落すること、言い換えると、フランジ部31Aがこの立上部21Cから脱落することが防止される。
【0066】
また、図14で示す状態から、何らかの理由によって第1扉体1に図14の右側から左側への大きな衝撃力が作用し、第1扉体1及びローラ31が左側へ大きく移動しようとしたときには、第1ガイドレール21の立上部21Cが、ローラ外れ防止手段80の主部81の欠部83における第1扉体1の厚さ方向の先端部87に当接するため、ローラ31のフランジ部31Bを越えて第1ガイドレール21の立上部21Cが脱落すること、言い換えると、フランジ部31Bがこの立上部21Cから脱落することが防止される。
【0067】
したがって、この場合には、ローラ外れ防止手段80の主部81の欠部83の先端部87は、脱落防止部86と同じ機能を発揮する部分、すなわち、脱落防止部となっている。
【0068】
以上説明したことから分かるように、本実施形態に係るローラ外れ防止手段80は、板材の折り曲げによって主部81と副部82とを有する平面L字形状となっているが、全体としては、この板材に、図13で示された2つの欠部83と85からなる切り込み部80Aが副部82側からローラ31の厚さ方向へ延出形成されたものとなっている。そして、図14で示されているとおり、この切り込み部80Aにガイドレール21が挿通されるとともに、切り込み部80Aにおけるガイドレール21よりも下側に配設されている部分が浮き上がり防止部84となっている。また、切り込み部80Aの延出方向の手前側で下方へ突出した部分が、2個の脱落防止部86と87のうちの1個の脱落防止部86となっているとともに、切り込み部80Aの延出方向先端部が残りの脱落防止部87となっており、これらの脱落防止部86,87は、ローラ31の厚さ方向両側に配設されている。
【0069】
以上は、ローラ31のためのブラケット13に取り付けられるローラ外れ防止手段80についての説明であったが、図3及び図6で示されている第1扉体1と第2扉体2のローラ32,34のためのブラケット13に取り付けられるローラ外れ防止手段80についても、同じである。
【0070】
また、前記ローラ33は図3及び図6で説明したようにブラケット14で第2扉体2に取り付けられているが、このブラケット14にもローラ外れ防止手段80が設けられているため、このローラ33についての第1ガイドレール21からの外れ防止も、このローラ外れ防止手段80によってなされる。
【0071】
すなわち、ローラ外れ防止手段80は、第1扉体1と第2扉体2のそれぞれに2個配置されているローラ31〜34ごとに設けられている。そして、これらのローラ外れ防止手段80は、第1扉体1と第2扉体2の扉体本体1A,2Aではなく、扉体本体1A,2Aに結合されてローラ31〜34を備えているブラケット13,14に取り付けられている。
【0072】
図2で示されているように、第1及び第2扉体1,2における戸尻側のブラケット13には当接部材91,92が設けられ、これらの当接部材91,92が、図3で示されている第1ガイドレール21の後端部近くに配置されたストップ部材93,94に当接することにより、第1及び第2扉体1,2は開き限位置(後退限位置)に達する。また、第1ガイドレール21の後端部近くには、板ばねによる係止部材95,96が配置され、第1及び第2扉体1,2が開き限位置に達したときに、これらの係止部材95,96に、図2で示されている第1及び第2扉体1,2の当接部材91,92に設けられているローラによる被係止部材97,98が、図5で示されているように係止され、これにより、第1及び第2扉体1,2がその位置で停止するようになっている。
【0073】
図2で示されているように、この実施形態に係る二重引き式引戸装置には、第1扉体1を閉じ側へ常時付勢して自動移動させるための自動移動手段100が設けられている。この自動移動手段100は、図3で示されているように、第1ガイドレール21にブラケット101を介してこの第1ガイドレール21の前端部近くに取り付けられた装置本体102と、図2で示すように、この装置本体102の内部に回転自在に組み込まれたリール103と、このリール103に一端が結合されて巻かれており、装置本体102から延びている他端が第2扉体2の戸先側のブラケット14に結合された紐状部材104とを有する。リール103の内側には、一端がリール103に結合され、他端が装置本体102に結合された渦巻きばねが配置されている。
【0074】
このため、第2扉体2を図2の位置から図1で示されている把持部55を把持して開き側へ移動させると、回転しながら紐状部材104を繰り出すリール103によって渦巻きばねが蓄圧される。この蓄圧力が第2扉体2を閉じ側へ自動移動させるようとする駆動力となり、把持部55から手を離すと、また、前記被係止部材98の係止部材96への係止によって開き側の移動限位置に停止していた第2扉体2に閉じ側への操作力を付与し、これによって被係止部材98の係止部材96への係止を解除すると、上記駆動力により第2扉体2は自動的に閉じ移動し、この第2扉体2に前記連動機構40によって連結されている第1扉体1も自動的に閉じ移動する。
【0075】
また、この実施形態に係る二重引き式引戸装置には、第1扉体1が後退限位置(開き限位置)から閉じ側へ所定距離まで達したときに、これ以後の第1扉体1の閉じ移動速度を減速させるための図2で示す制動装置110が設けられている。この制動装置110は、第1ガイドレール21にブラケット111で取り付けられたシリンダ112と、このシリンダ112に対して伸縮自在となったピストンロッド113と、第1扉体1の戸尻側のブラケット13の当接部材91に取り付けられ、この第1扉体1が後端限位置から閉じ側へ所定距離まで移動したときに、シリンダ112から第1扉体1の開き側に突出しているピストンロッド113に磁力等によって連結し、これ以後の第1扉体1の閉じ移動によってピストンロッド113をシリンダ112に対して収縮移動させるキャッチ部材114とを有する。シリンダ112には、ピストンロッド113の収縮移動によって圧縮されるシリンダ112の内部の空気を絞りながら排出するオリフィスが設けられているため、第1扉体1が後退限位置から閉じ側へ所定距離まで達してさらに閉じ移動したときには、この第1扉体1の閉じ移動と、第1扉体1に連動機構40で連結されている第2扉体2の閉じ移動は、オリフィスの絞り作用によって減速されたものとなる。
【0076】
また、図1の把持部55により第2扉体2を開き移動させ、連動機構40で第1扉体1も開き移動させたときには、キャッチ部材114に磁力等によって連結されているピストンロッド113はシリンダ112に対して伸長移動し、シリンダ112には、このときに多量の空気をシリンダ112の内部に入れるための吸気口を開く一方弁が設けられているため、第1扉体1と第2扉体2は、図1の把持部55に作用させた開き操作力の大きさに応じた速度で開き移動し、扉体1の開き移動距離が所定距離に達すると、キャッチ部材114は、伸張移動限位置に達したピストンロッド113から離れる。
【0077】
図15は、別実施形態に係るローラ外れ防止手段80’を示す。このローラ外れ防止手段80’も、浮き上がり防止部84’と脱落防止部86’,87’とを有しているが、ローラ外れ防止手段80’が取り付けられるこの実施形態のブラケット13’の折り曲げ部13C’についての扉体1,2の厚さ方向の寸法が、前記実施形態のブラケット13の折り曲げ部13Cについての扉体1,2の厚さ方向の寸法よりも小さくなっており、また、ローラ外れ防止手段80’の欠部83’における扉体1,2の厚さ方向への深さは、前記実施形態のローラ外れ防止手段80の欠部83の深さよりも小さい。このため、この実施形態のローラ外れ防止手段80’における脱落防止部86’,87’は、ローラ31の厚さ方向において、ローラ31の両側のフランジ部31A,31Bにおける溝部31C側の内面と一致又は略一致する位置に形成されている。
【0078】
これによると、フランジ部31A,31Bがガイドレール21の立上部21Cから脱落するのを脱落防止部86’,87’によって防止することは、フランジ部31A,31Bが立上部21Cに達する直前の早期の時点で行えることになる。
【0079】
以上説明した実施形態において、第2扉体2に、この第2扉体2の開閉移動方向に2個設けられているローラ33,34のうち、開き側のローラ34は、第1扉体1に取り付けられた第2ガイドレール22の上に載っているため、第2扉体2の重量の一部は第2ガイドレール22を介して第1扉体1に作用している。
【0080】
このため、開き限位置に達していた第1扉体1と第2扉体2のうち、第2扉体2を図1で示した把持部55で閉じ移動させ、これにより、前述したように連動機構40によって第1扉体1が低速扉体となり、第2扉体2が高速扉体となって、第1扉体1の位置よりも第2扉体2が前進し、これらの扉体1,2によって前記開口部3が全閉状態となるとき又は略全閉状態になるときに、第2ガイドレール22を介して第1扉体1に作用している第2扉体2の重量の一部により、第1扉体1の開き側(戸尻側)の端部が、第1扉体1の開閉移動方向に2個設けられている前記ローラ31,32のうちの閉じ側のローラ31を中心として浮き上がること、すなわち、持ち上がることが考えられる。
【0081】
このような事態が生じたときには、第1扉体1に、この第1扉体1の開閉移動方向に2個設けられているブラケット13のうちの開き側のブラケット13に取り付けられた前記ローラ外れ防止手段80,80’の浮き上がり防止部84,84’が、図14及び図15で説明したように、第1ガイドレール21の下辺部21B及び立上部21Cの下面に当接し、これにより、第1扉体1における開き側のローラ32が第1ガイドレール21の立上部21Cから離脱することが防止されるが、本実施形態では、この浮き上がり防止部84,84’以外にも、第1扉体1の開き側(戸尻側)の端部がローラ31を中心として持ち上がることにより、ローラ32が第1ガイドレール21の立上部21Cとの係合から外れる前に、第1ガイドレール21の下辺部21B及び立上部21Cの下面に当接することによってローラ32が第1ガイドレール21の立上部21Cから離脱するのを防止するためのローラ離脱防止部120が、図16及び図17で示されているように、第1ガイドレール21よりも下側の第1扉体1の箇所に配置されている。このローラ離脱防止部120は、図3と図6にも示されている。
【0082】
図16は、第1扉体1に2個設けられているブラケット13のうち、ローラ離脱防止部120が配置されている開き側のブラケット13の部分を拡大して示す正面図であり、この図16では、第1扉体1に取り付けられている図10で示された第2ガイドレール22は省略されている。また、図17は、ローラ離脱防止部120を図16の閉じ側から開き側に見て示す側面図である。
【0083】
これらの図16及び図17で示されているとおり、ローラ離脱防止部120は、第1扉体1の開き側のブラケット13に保持部材121を介して配置され、この保持部材121は、ブラケット13の開閉移動方向両側の折り曲げ部13C,13Dのうちの閉じ側の折り曲げ部13Cにビス等の止着具122で取り付けられている。板材からなる保持部材121は、止着具122でブラケット13の折り曲げ部13Cに取り付けられた主部121Aと、この主部121Aの下部に直角に形成され、ブラケット13の立上部13Bとローラ32側で対面している副部121Bとからなる。この副部121Bに、ローラ32側へ突出するビス123が挿入され、ビス123の外周にスペーサ124を介して筒状の回転部材125が回転自在に嵌合され、この回転部材125は、ビス123の先端に螺締されたダブルナット126でビス123の軸方向に不動となっている。
【0084】
図16及び図17に係る実施形態のローラ離脱防止部120は、この回転部材125である。この回転部材125は、第1ガイドレール21よりも下側において、この第1ガイドレール21の下辺部21B及び立上部21Cの下面と僅かな隙間を開けて上下に対向している。この隙間の大きさは、第1扉体1に2個設けられているブラケット13のそれぞれに取り付けられたローラ外れ防止手段80,80’の浮き上がり防止部84,84’と、第1ガイドレール21の下辺部21B及び立上部21Cの下面との間の隙間の大きさよりも小さい。
【0085】
このため、第1及び第2扉体1,2によって前記開口部3が全閉状態となるとき又は略全閉状態になるときに、第2ガイドレール22を介して第1扉体1に作用している第2扉体2の重量の一部により、第1扉体1の開き側の端部が、第1扉体1のローラ31,32のうちの閉じ側のローラ31を中心として持ち上がっても、ローラ32が第1ガイドレール21の立上部21Cとの係合から外れる前に、回転部材125が第1ガイドレール21の下辺部21B及び立上部21Cの下面に当接することにより、ローラ32が第1ガイドレール21の立上部21Cから離脱することが防止される。
【0086】
そして、このまま第1扉体1が閉じ側への移動を継続しても、また、第1扉体1が開き側へ反転移動しても、この第1扉体1の移動は、第1ガイドレール21の下辺部21B及び立上部21Cの下面に当接している回転部材125が回転しながらなされる。このため、ローラ離脱防止部120が第1ガイドレール21の下辺部21B及び立上部21Cの下面に当接しても、この当接は、第1ガイドレール21との摩擦力が軽減された摩擦軽減部を構成している回転部材125により、第1扉体1の円滑な開閉移動を阻害しないでなされることになり、第1扉体1の円滑な移動を保障することができる。
【0087】
また、本実施形態では、第2扉体2に2個設けられているローラ33と34の両方が第1扉体1に取り付けられた第2ガイドレール22に載っているのではなく、これらのローラ33の34のうちの一方のローラ、それも閉じ側のローラ34だけが第2ガイドレール22に載っているため、両方のローラ33と34が第2ガイドレール22に載っている場合と比較して、第1扉体1の開き側の端部が、第1扉体1のローラ31,32のうちの閉じ側のローラ31を中心として持ち上がる力及び持ち上がり量を小さくできる。このため、これによっても第1扉体1の円滑な開閉移動を保障することができる。
【0088】
図18は、別実施形態に係るローラ離脱防止部120を示す。この実施形態のローラ離脱防止部120は、第1扉体1に2個設けられているブラケット13のうち、開き側のブラケット13に取り付けられているローラ外れ防止手段80の浮き上がり防止部84に設けられている。
【0089】
すなわち、この実施形態におけるローラ離脱防止部120は、このローラ外れ防止手段80の浮き上がり防止部84に摩擦軽減部材135を被覆固定することによって構成され、この摩擦軽減部材135がローラ離脱防止部120となっている。摩擦軽減部材135は、板材からなるローラ外れ防止手段80の材料である金属よりも、第2ガイドレール21との摩擦力が小さい、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等の硬質プラスチックで形成されている。
【0090】
このため、この実施形態でも、第2ガイドレール22を介して第1扉体1に作用している第2扉体2の重量の一部により、第1扉体1の開き側の端部がローラ31を中心として持ち上がっても、ローラ32が第1ガイドレール21の立上部21Cとの係合から外れる前に、摩擦軽減部材135が第1ガイドレール21の下辺部21B及び立上部21Cの下面に当接することにより、ローラ32が第1ガイドレール21の立上部21Cから離脱することが防止されるとともに、このまま第1扉体1が閉じ側への移動を継続しても、また、第1扉体1が開き側へ反転移動しても、この第1扉体1の移動は、摩擦軽減部材135と、第1ガイドレール21の下辺部21B及び立上部21Cの下面との間に大きな摩擦力が発生せずになされ、第1扉体1の円滑な移動を保障することができる。
【0091】
なお、摩擦軽減部材135をローラ外れ防止手段80の浮き上がり防止部84に被覆固定された摩擦軽減部材135の代わりに、浮き上がり防止部84に対して取り付け、取り外し可能となったキャップ式の摩擦軽減部材135’を用いてもよい。これによると、これまで使用していた摩擦軽減部材135’が損耗や損傷等した場合に、この摩擦軽減部材135’を浮き上がり防止部84から取り外すことにより、新しい摩擦軽減部材135’と交換することができる。
【0092】
なお、このような固定型の摩擦軽減部材135や交換自在型の摩擦軽減部材135’は、図15で示したローラ外れ防止手段80’の浮き上がり防止部84’にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、扉体がガイドレールの上に転動自在に係合した上吊り式扉体となっている引戸装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 第1扉体
2 第2扉体
13,14 ブラケット
21 第1ガイドレール
21B 下辺部
21C 立上部
22 第2ガイドレール
31〜34 ローラ
80,80’ ローラ外れ防止手段
84,84’ 浮き上がり防止部
83,85 欠部
86,87 脱落防止部
120 ローラ離脱防止部
125 回転部材
135,135’ 摩擦軽減部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドレールの上に転動自在に係合したローラを上部に備えている少なくとも1個の上吊り式扉体を有する上吊り式引戸装置において、
前記ローラは、前記扉体の厚さ方向となっているローラ厚さ方向の両側に設けられた2個のフランジ部と、これらのフランジ部の間に形成された溝部とを有するとともに、前記ガイドレールは、前記溝部に係合している立上部を有し、
前記扉体には、この扉体及び前記ローラが前記扉体の厚さ方向のうちの一方へ移動したときに前記立上部に当接することにより前記ローラが前記立上部から脱落することを防止するための第1脱落防止部と、前記扉体及び前記ローラが前記扉体の厚さ方向の他方へ移動したときに前記立上部に当接することにより前記ローラが前記立上部から脱落することを防止するための第2脱落防止部と、が設けられていることを特徴とする上吊り式引戸装置。
【請求項2】
請求項1に記載の上吊り式引戸装置において、前記第1脱落防止部と前記第2脱落防止部は、同じ部材に形成された部分となっていることを特徴とする上吊り式引戸装置。
【請求項3】
請求項2に記載の上吊り式引戸装置において、前記ガイドレールは、前記扉体の厚さ方向へ延びる下辺部を有し、この下辺部の先端に前記立上部が設けられており、前記第1脱落防止部と前記第2脱落防止部が形成されている前記部材には、前記扉体の厚さ方向へ延びていて、前記下辺部と前記立上部が挿入されている欠部が形成されており、この欠部における前記扉体の厚さ方向の先端部が、前記第1脱落防止部と前記第2脱落防止部のうちの一方の脱落防止部となっていることを特徴とする上吊り式引戸装置。
【請求項4】
請求項3に記載の上吊り式引戸装置において、前記扉体は、扉体本体に取り付けられていて、前記ローラが回転自在に取り付けられているブラケットが一部の構成部材となって構成されており、前記第1脱落防止部と前記第2脱落防止部が形成されている前記部材は前記ブラケットに取り付けられており、このブラケットは、前記ローラと前記扉体の厚さ方向に対面する立上部を有し、前記一方の脱落防止部は、前記ブラケットの前記立上部よりも前記ローラの前記溝部に近い位置に設けられていることを特徴する上吊り式引戸装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の上吊り式引戸装置において、前記第1脱落防止部と前記第2脱落防止部が形成されている前記部材は、前記欠部が形成されている主部と、この主部から前記扉体の移動方向と平行な方向へ直角に折り曲げられた副部とを有し、この副部に前記欠部と同じ高さ位置で欠部が形成され、この欠部は前記副部の先端まで達しておらず、この副部の先端下部が、前記第1脱落防止部と前記第2脱落防止部のうちの他方の脱落防止部となっていることを特徴とする上吊り式引戸装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれかに記載の上吊り式引戸装置において、前記第1脱落防止部と前記第2脱落防止部が形成されている前記部材には、前記扉体の厚さ方向の先端部が前記第1脱落防止部と前記第2脱落防止部のうちの前記一方の脱落防止部となっている前記欠部の下部において、前記扉体と前記ローラが浮き上がったときに前記ガイドレールの前記下辺部と前記立上部に当接する浮き上がり防止部が設けられていることを特徴とする上吊り式引戸装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2010−121444(P2010−121444A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56212(P2010−56212)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【分割の表示】特願2004−169605(P2004−169605)の分割
【原出願日】平成16年6月8日(2004.6.8)
【出願人】(000239714)文化シヤッター株式会社 (657)
【Fターム(参考)】