説明

上水道用表面ウレタン樹脂組成物

【課題】上水道施設の内面塗布において通年発泡することなく、防食機能を維持できる上水道用表面ウレタン樹脂組成物の提供することにある。
【解決手段】上水道用表面塗布ウレタン樹脂組成物であって充填剤として合成ゼオライト及び活性アルミナを必須とし、触媒として有機錫化合物と有機ビスマス化合物を併用することを特徴とする上水道用表面ウレタン樹脂組成物であり、前記表面ウレタン樹脂組成物がひまし油変性ポリオール及びヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤からなることを特徴とする上水道用表面ウレタン樹脂組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布後発泡がない上水道用表面ウレタン樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上下水道コンクリート施設の防食用としてエポキシ樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂が使用されていた。前者は材料が、ビスフェノール化合物であり、環境ホルモン物質として懸念され、また下地に対する追従性など課題の残るものであった。
【0003】
(1)ヘキサメチレンジイソシアネートの変性物からなるイソシアネート成分、並びに(2)数平均分子量が400〜800の範囲内にある水酸基数2〜5個の芳香族多官能ポリオールと液状ポリオールを含むポリオール成分からなる上下水道用コンクリート構造物の防食用ウレタン樹脂組成物が可使時間が長く施工性が良好であって、高湿度の環境下において施工する場合にも発泡現象を抑制でき、更に、形成される塗膜が優れた耐候性を有するものとなることが開示されている。(特許文献1)
【0004】
ポリオール成分及びポリイソシアネート成分からなり、該ポリオール成分として分子量500以上の2級水酸基含有ポリオールを50重量%以上含み、更に多孔性無機化合物を配合し、高温・高湿度下において養生しても、発泡することなく良好なウレタン硬化物となることが開示されている。(特許文献2)
【0005】
しかし、これらの発泡現象は上水道施設の工事の通年での環境に対応できるものではなく、発泡で、上水道の内面塗布膜の防食機能を損なうことが多くあった。
【特許文献1】特開2003−268303号公報
【特許文献2】特開平9−249806号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする課題は、上水道施設の内面塗布において通年発泡することなく、防食機能を維持できる上水道用表面ウレタン樹脂組成物の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、上水道用表面塗布ウレタン樹脂組成物であって充填剤として合成ゼオライト及び活性アルミナを必須とし、触媒として有機錫化合物と有機ビスマス化合物を併用することを特徴とする上水道用表面ウレタン樹脂組成物で、高温高湿下でも発泡しない。
【0008】
請求項2の発明は、上記ウレタン樹脂がひまし油変性ポリオール及びヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤からなることを特徴とする請求項1記載の上水道用表面ウレタン樹脂組成物で、日本水道協会規格K−143:2004 附属書1(規定)による溶出試験及び物性試験に適合し、下地処理条件が満たせば、厚生労働省令第5号及び厚生労働省告示第14号による浸出試験に適合できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の上水道用表面ウレタン樹脂組成物は、梅雨時、初夏、上水道施設の通気が効かないコンクリート内面の高温多湿の環境下でも発泡することなく水道用コンクリート水槽内面に塗布し、日本水道協会規格K−143:2004 附属書1(規定)による溶出試験及び物性試験に適合し、下地処理条件が満たせば、厚生労働省令第5号及び厚生労働省告示第14号による浸出試験に適合する性能を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
上水道の内表面塗布塗料に関してエポキシ樹脂の規格である日本水道協会規格K−143の溶出試験及び物性試験に適合する必要がある。上水道への溶出は本発明のウレタン組成物とすることにより適合でき、さらに、物性項目である付着性、耐衝撃性、耐アルカリ性、透水性、塩素イオン透過度、低温・高温繰返しに適合する必要がある。本発明は前記各試験に合格し、かつ、施工時にこれらの性能を欠落させる恐れのある発泡を抑制したものである。
【0011】
本発明のウレタン樹脂組成物はポリオール、イソシアネート化合物、充填剤、触媒からなる。必要に応じて希釈剤、着色顔料、添加剤を使うこともできる。
【0012】
ポリオールはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等があり、ひまし油変性ポリオールがもっとも好ましい。ポリオールの水酸基数、分子量は塗膜の硬さ、伸び率に関係し、被塗物の材料、寸法変化、要求される設計事項により適宜調節する。
【0013】
イソシアネート化合物は、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が使用できるが、残留、溶出の恐れ、作業環境から、ヘキサメチレンジイソシアネート系イソシアネート化合物が好ましい。さらにイソシアヌレート型ヘキサメチレンジイソシアネート系イソシアネートが好ましく、市販品にデュラネートTPA−100(旭化成(株)、商品名)、コロネートHXLV(日本ポリウレタン(株)、商品名)等がある。
イソシアネート化合物のイソシアネート基はポリオールの水酸基とモル比で約1:1で配合される。
【0014】
充填剤は、物性の維持、塗布性向上のために配合するが、本願発明の効果を奏するには合成ゼオライト及び活性アルミナを1:5〜5:1の範囲でウレタン樹脂(ポリオールとイソシアネート化合物)に対して重量比率で10〜60%配合する。合成ゼオライトの市販品としてゼオスターCA−110P(日本化学工業(株)、商品名)等が、活性アルミナの市販品としてBK−112(住友化学工業、商品名)等がある。
【0015】
その他の充填剤として タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ粉、硅石粉などが使用できる。
【0016】
触媒は有機錫化合物と有機ビスマス化合物の混合が発泡と作業性より好ましく、両者の有効成分の重量比率1:3〜3:1が好ましい。それぞれ単独より、発泡し難い。
有機錫化合物系はSTAN−BL(三共有機合成(株)、商品名)等があり、有機ビスマス化合物系ネオスタンU−600(日東化成(株)、商品名)等がある。
【0017】
希釈剤はアルコール、カルボン酸のエステル誘導体、キシレン樹脂等があげることができる。着色顔料は防食性能、溶出がないものを選択する。その他の添加剤としては揺変性付与剤、分散剤、消泡剤、乾燥剤などを適宜配合する。
【0018】
以下、本発明について実施例、比較例により詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
ポリオールとして URIC H854(伊藤製油(株)、商品名、水酸基価210)60重量部に合成ゼオライトとしてゼオスターCA−110Pを20重量部、活性アルミナとしてBK112を10重量部を70℃下プラネタリーで30分減圧撹拌し、50℃で有機錫化合物としてSTAN−BL0.05重量部、有機ビスマス化合物としてネオスタンU−600を0.05重量部を添加し5分撹拌した。この組成物を室温にした後、塗布前にイソシアヌレート型ヘキサメチレンジイソシアネートであるコロネートHXLV40重量部混合して実施例1のウレタン樹脂組成物とした。
【実施例2】
【0020】
実施例1のゼオスターCA−110Pを10重量部、BK112を20重量部に変えた以外は同じに行い、実施例2のウレタン樹脂組成物とした。
【実施例3】
【0021】
実施例1のゼオスターCA−110Pを15重量部、BK112を15重量部に換えた以外は同じに行い、実施例3のウレタン樹脂組成物とした。
【0022】
比較例1
実施例1のゼオスターCA−110PをハイジライトH32(昭和電工(株)、商品名、中心粒径8μm、水酸化アルミニウム)に換え、ネオスタンU−600を無添加とし、STAN−BLを0.1重量部にした以外は同じに行い、比較例1のウレタン樹脂組成物とした。
【0023】
比較例2
比較例1のハイジライトH32を、BK112に換えた以外は同じに行い、比較例2のウレタン樹脂組成物とした。
【0024】
比較例3
比較例1のBK112をゼオスターCA−110Pに換えた以外は同じに行い、比較例3のウレタン樹脂組成物とした。
【0025】
比較例4
比較例2のBK112をハイジライトH32に換えた以外は同じに行い、比較例4のウレタン樹脂組成物とした。
【0026】
比較例5
比較例4のSTAN−BLをネオスタンU−600に換えた以外は同じに行い、比較例5のウレタン樹脂組成物とした。
【0027】
【表1】

【0028】
発泡性
温度35℃、湿度90%の環境下で12時間静置したセメントモルタル上に実施例・比較例のウレタン樹脂組成物を1.0kg/mになるよう塗布し、硬化した塗膜外観を約50cmの距離から目視で確認した。評価は下記とした。
○・・・ほとんど発泡が見られない △・・・局部的に発泡が見られる ×・・・塗膜全体が発泡している

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上水道用表面塗布ウレタン樹脂組成物であって充填剤として合成ゼオライト及び活性アルミナを必須とし、触媒として有機錫化合物と有機ビスマス化合物を併用することを特徴とする上水道用表面ウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
上記ウレタン樹脂がひまし油変性ポリオール及びヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤からなることを特徴とする請求項1記載の上水道用表面ウレタン樹脂組成物。

【公開番号】特開2009−91374(P2009−91374A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260014(P2007−260014)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】