説明

上肢部の治療訓練を自動的に提供する方法と装置

【課題】ユーザが上肢部の訓練を行うことを可能にする方法と装置を提供する。
【解決手段】アームの一端はベースに接続されてアームを確実に支持し、他端はユーザの上肢部の直近でユーザの近傍に位置する。アームの端部又は端部間に複数のジョイントが形成され、各ジョイントは1つ以上の回転自由度を有し、この回転自由度に於ける回転運動に対して抵抗を与える結果、アームの自由端は三次元空間内で移動でき、アームは自己を支持できる。複数のマニピュランダムを有するマニピュランダムアセンブリをアームの自由端に取り付け、各マニピュランダムはユーザの把持範囲内に位置し、ユーザの日常生活の活動で上肢部が遭遇する対象物を表す。アーム、ジョイント又はマニピュランダム上のセンサは運動又は力を検出して信号を処理装置に中継し、これらの信号をサンプリング、表示及び記憶し、運動力学的又は運動的変数に処理する。これらの変数を処理してコンピュータゲームのソフトウェアプログラムを制御し、セラピーによる養生の結果の評価に対する実績の数量化を可能にしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリバビリテーションの方法と装置に関し、特に上肢部に加える理学療法に関する。
【背景技術】
【0002】
上肢部を正常に機能しないまま動かすと神経筋障害のような脳卒中、脊椎損傷、多発性硬化症、周辺神経損傷及び慢性関節リュウマチを併発する。自動車事故の結果、自立性の欠如、生活の質の低下及び高額の介護費用が発生する。脳卒中は、上肢部の機能障害の主要な原因である。先進国では、人口の約1.5%、即ち、北米では約550万人が脳卒中の後遺症を持って暮らしている(米国心臓協会、2006年)。脳卒中後に上肢部の機能が回復するのは非常に稀であり、55%乃至75%の患者は日常生活の活動を営む上で深刻な恒久的障害持っている(ライ他、2002)。
【0003】
最も広く使用されているリバビリテーションの技術は、神経活性化処置及び自己刺激に感応する神経筋の促通である。これらの技術は何れも、数週間または数ヶ月間規則的に実行すると効果のあることが示されている(ディクスタイン他、1986)。その他の技術、束縛誘導セラピーは、特に上肢部機能のリバビリテーション用に最近開発されたものであり、痛みのある腕や手に対して一般的に2週間1日あたり2時間集中的に行われる運動療法である。束縛誘導セラピーは世界中で広く採用されているが、これは日常生活の活動で半身不随用義足に於いて大きな効果が2週間後に達成されるからである。
【0004】
しかし、上記技術は理想的には毎回1対1で指導を行わなければならない点でセラピストにとって時間のかかるものである。更に、ここに含まれる運動の種類は、処置を行う施設によって異なる傾向がある。高額医療費制度は、通常患者がリハビリ病院に入院している期間に限られている。退院後、患者は理学療法のクリニックに通院することを要求されるだけでなく、このサービスの費用を自分で負担することを要求されている。このような不利益が、本来これらの運動療法の利益を受けるべき大部分の人々を遠ざけている。
【0005】
当業者達は、機械によって運動を提供するのに適した方法と装置を提供しようと試みている。例えば、バーゲスの米国特許第6,007,459号は、対話型映像通信リンクの使用について述べており、これによって、別の場所、例えば、家庭に居る対象者の行う運動を管理することができる。
【0006】
他のアプローチは、対象者に対してこの対象者の手足に取り付けた対話型ロボットシステムを提供することである。例えば、ホーガン他の米国特許第5,466,213号は、所望の運動経路に沿って手足を案内するロボットについて記述しており、これには一連の上肢部の運動が含まれている。対象者のロボットは、理学療法士が第2の同様のロボットを使用することによって制御することができる。このシステムは遠隔通話システムを含むことができ、これによって対象者とセラピストは相互に対話を行うことができる。しかし、この技術は高額であるため、その広範な利用が妨げられている。
【0007】
上記以外にも手に運動させる装置が示唆されている。例えば、シェンク他の米国特許第5,746,704号は、手の指に対して特定の経路に沿って運動を行わせるモータ駆動の運動装置を教示している。このような受動的運動装置は、1本の指のような特定の解剖学的部位に限定されているか、日常生活の活動で必要とされる上肢部の運動の代表的な範囲の能動的な訓練を可能にしていない点で問題がある。
【0008】
ミレー他の米国特許第5,755,645号は、伸縮自在なアームを有するジョイスティックの形態の受動的運動装置を開示し、これには複数の自由度が設定され、これによってユーザはハンドルを把持し、三次元作業空間内でこれを移動させることができる。2つ以上のブレーキをコンピュータによって制御することにより、作業空間内にプログラム可能な機械的抵抗を生成することができる。この装置によって、ボールを投げたり、野球のバットを振る等の多くの種類の運動を行うことができる。ハンドルのアタッチメントにはテニスラケット、ゴルフクラブ及びホッケースティックが含まれることが記述されている。しかし、機構、制御装置及びソフトウェアの複雑性の為高額であり、これが人々の家庭への広範な普及を妨げている。ウエバー他の米国特許第6,988,977号は、多関節アーム付き受動的運動装置について記述している。この装置は、上半身用のウエイトリフティング装置の一部を構成することを意図している。ミラー、ウエバー他は何れも容易に把持することのできるハンドルの形態のマニピュランダムを記述しているが、このようなマニピュランダムは日常生活の活動で遭遇する寸法と形状の異なった対象物を代表するものではなく、これは手の機能に障害のある人にとっては最も大きな問題である。
【0009】
訓練用ワークステーションが寸法と形状の異なった計装付対象物と共に設計され、センサをこの対象物に取り付けることにより、コンピュータに運動データを提供している。グリセンコ他(2001)はデスク面の形態のワークステーションについて記述し、これにはスプリングによって負荷をかけたドアノブ、スプリングによって負荷をかけたキャリパ、錘の付いたハンドル、及びブロックやシリンダのような解放された対象物を含んでいる。グリセンコ及びプロシャツカ(2004)は回転可能な上面を有する円形テーブルの形態のワークステーションについて記述し、これには同じ範囲の固定及び解放対象物が付属している。ターブ他(2005)は4つの作業面上に配列された8セットの固定及び解放対象物について記述し、各対象物を選択してキャビネットから対象者の方に手で引っ張ることができる。上述したワークステーションは全て調整が困難であり、機構的に複雑であり、嵩が高く且つ高価であるため、人々の家庭で広く用いるには好ましくない。
【0010】
レインケンスミヤ他の米国特許第6,613,000は、より手頃な受動的運動装置について記述している。手の運動を行う対象者は、コンピュータゲーム用のジョイスティックのような大量生産されたコンピュータの入力装置を使用する。ジョイスティックのセンサからの信号を使用してコンピュータに対する入力を生成し、このコンピュータはコンピュータネットワークを介してサーバと通信を行う。サーバのコンピュータは対象者のコンピュータに対して個々の情報をダウンロードし、所望の療法とアセスメントの為の訓練を特定する。上記療法とアセスメントの為の訓練は、セラピストからのリアルタイムの管理を必要とすることなく自律的に行われる。この装置の欠陥は、対象者の行う運動の範囲がジョイスティックの上部の動作、即ち局面によって制限されることである。日常生活の活動で遭遇する多くの対象物とは異なり、ジョイスティックノブは比較的把持しやすい。
【0011】
把持、持上げ、持下げ、左右の運動、捩じり及びその他寸法と形状の異なる対象物の操作等大切な日常の仕事に対応する安価で簡単な装置に対する必要性が明らかに存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、日常生活の活動を表す範囲の運動の訓練のための方法及び装置を提供することである。重要なことは、理学療法士が大切であると考える種々の運動のタスクを本発明が包含していることである。本発明は、患者の記録をコンピュータ化するのに適した成果の数値による尺度を提供することができる。本発明は単純且つ安価であることが好ましく、その結果、このヘルスケアシステムは、上肢部の機能を改善するため継続的な訓練によるセラピーを必要とする人々に普及することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
広範な態様に於いて、本発明は、多関節、自己支持アームに接続した1つ以上のマニピュランダムを提供することによって上肢部の訓練を行う方法を提供し、上記1つ以上のマニピュランダムをユーザが操作することにより、このユーザの日常生活の活動を表す運動シミュレーションすることができる。
【0014】
他の広範な態様に於いて、本発明はユーザが上肢部の訓練を行うことを可能にする装置を提供し、上記装置は、固定端と自由端を有するアームであって、上記固定端は上記アームを確実に指示するベースに接続され、上記自由端をユーザの上肢部の近傍でユーザの近くに位置させる上記アーム;アームの固定および自由端にまたはこれらの固定および自由端の間のアーム内に形成した複数のジョイントであって、各ジョイントは1つ以上の回転自由度を有し且つ1つ以上の回転自由度内の回転運動に対して抵抗を与え、その結果アームの自由端は三次元空間内を自立するように移動することができる上記複数のジョイント;及び各マニピュランダムが上記複数のジョイントによって与えられた1つ以上の回転自由度を介してユーザによって移動可能に上記アームの自由端に取り付けた複数のマニピュランダムを具備するマニピュランダムアッセンブリであって各マニピュランダムはユーザの日常生活の上肢部の活動で遭遇する対象物を表している上記マニピュランダムアッセンブリを具備する。
【0015】
好適な例では、上記複数のマニピュランダムは、アームの自由端に固定または繋がれ、上記マニピュランダムを上記のように接続することによってユーザが落したり紛失することなくユーザに対してアクセス可能である。
【0016】
他の好適な例では、1つ以上の上記マニピュランダムを上記アームの自由端に取り付け、その結果、上記のように取り付けたマニピュランダムに更なる回転自由度を付与する。
【0017】
他の好適な例では、1つ以上の上記マニピュランダムを上記アームの自由端に取り付けた回転軸に取り付け、その結果、更なる回転自由度を上記軸の長軸に付与する。
【0018】
他の好適な例では、上記複数のジョイントによって回転運動に対し受動的抵抗を付与し、これによって、ユーザがマニピュランダムアッセンブリを開放した場合、上記アームと上記マニピュランダムアッセンブリを均衡休止位置に戻す。
【0019】
更に他の好適な例では、上記アームは床の上に位置し、2つの相互に接続されたセグメント内に形成され、第1セグメントは上記ベースから一般的に上方向に延び、第2セグメントは上記ユーザに向かって一般的に前方に延びて上記ユーザの上肢部近傍に上記自由端を位置決めし、上記第1セグメントは上記床に対して一般的に水平軸に回転自由度を付与すると共に垂直軸に回転自由度を付与する第1ジョイントを介して上記ベースに接続された上記固定端部を有し、上記第1及び第2セグメントは水平軸に回転自由度を付与する第2ジョイントを介して相互に接続され、上記第2セグメントの上記自由端は水平軸に回転自由度を付与する第3ジョイントを介して上記複数のマニピュランダムに取り付ける。
【0020】
本発明の好適な例としてのマニピュランダムは、上記複数のマニピュランダムは、垂直分割シリンダ、ドアノブマニピュランダム、キーグリップマニピュランダム、水平ハンドルマニピュランダム、ペグマニピュランダム及びコインマニピュランダムから選択する。
【0021】
更に好適な例では、上記装置は、上記第1、第2及び第3ジョイント、上記第1及び第2セグメント、及び上記1つ以上のマニピュランダムから選択された場所に位置する1つ以上のセンサを具備し、上記センサは運動または力を検出し、運動または力を表す電気信号を発生するように動作する。
【0022】
他の広範な態様では、本発明はユーザの上肢部に対して訓練療法を提供する方法に拡張され、上記方法は、上述した装置を提供するステップ及びユーザにユーザの手を使用して上記複数のマニピュランダムを操作させ、上記ユーザの日常生活の活動を表す運動をシミュレーションするステップを具備する。操作の好適な形態は、把持、絞り、解放、摘み、持ち上げ、持ち下げ、左右の運動、捩じり、及び回転を含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明を下記の図面を参照して例示のみによって更に説明するが、異なった図面に於いても同一の構成要素には同一の参照番号を使用する。
【図1】本発明の一実施形態を示す斜視図であり、アームの自由端部に取り付けた複数のマニピュランダムに複数の回転自由度を与えるマルチジョイントアームを示す。
【図2】本発明の一実施形態の分割シリンダマニピュランダムの斜視図であり、分割シリンダ上マニピュレーションを把持及び絞っているユーザを示す。
【図3A】本発明の一実施形態のドアノブマニピュランダムの斜視図である。
【図3B】回転して直立位置にあるドアノブマニピュランダムの斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態のキーグリップマニピュランダムの斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態の水平ハンドルマニピュランダムの斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態のペグボード及び連結ペグマニピュランダムの斜視図である。
【図7A】本発明の一実施形態のペグマニピュランダム及びコインマニピュランダムの斜視図である。
【図7B】図7Aのペグマニピュランダム及びコインマニピュランダムの斜視図であり、ばねによって負荷をかけられたペグ、連結ペグ及びセンサの詳細を示すためにペグ及びコインマニピュランダムの部分を示す。
【図7C】図7Aのコインマニピュランダムの斜視図であり、ユーザが行っているコイン片を摘み上げる操作のシミュレーションを示す。
【図8】対話によってユーザに動機づけを行い、得点を獲得させ、これを遠隔地に送信させる場合に使用するコンピュータソフトウェアの一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、上肢部の運動に不具合のある種々の障害に対する理学療法の方法及び装置を広い範囲で提供する。この装置は、多関節の自己支持アームを有し、このアームのジョイントは、1つ以上の自由度を有する回転運動に対して抵抗(好ましくは受動的抵抗)を与える。このアームの一端部、即ち接続端部は支持部に接続され、この支持部は上記アームを確実に支持すると共にこのアームを適当なユーザの高さに位置決めする。このアームの他端部即ち自由端部は、ユーザの日常生活の活動を表す運動をシミュレーションする1つ以上のマニピュランダムを保持している。このアームの設計によって、ユーザの手はバイオメカニカル的作業スペース内のいずれの点にも移動することができる。このアッセンブリ内の各マニピュランダムは、特定の手及び/またはアームの訓練を提供するように設計され、この訓練には、日常生活の活動で発生する運動を表す一定の運動が含まれている。各マニピュランダムによって提供される特定の訓練は、神経筋障害に起因する障害を有する上肢部の運動を対象とする従来の理学療法で使用されている訓練と同様のものである。この障害には、例えば、脳溢血、脊椎損傷、多発性硬化症、周辺神経損傷及び関節炎を含むことができる。
【0025】
本発明の好適な実施形態を例によって以下に説明するが、これは単なる例示に過ぎず、本発明を実施するための特徴の組み合わせに対して何等の制約を加えるものではない。本発明を図面を参照して説明するが、図中の同一の部品は図1乃至8において同一の番号によって示す。この装置は一般的に図1の10によって示され、多関節アーム12を有するものであり、この多関節アームには、マニピュランダムアッセンブリ14及びコンピュータ16が接続されている。
【0026】
アーム12は、ベースアッセンブリ18、第1セグメント20及び第2セグメント22によって構成されている。ベースアッセンブリ18、は水平支持部26、例えば、デスク、テーブル又はその他の適当な支持部材に対して適当な固定手段例えばクランプ24によって確実に固定されている。
【0027】
ベースアッセンブリ18は、ばねによって負荷をかけられた第1ジョイント28によって第1セグメント20の固定端部に接続され、この第1ジョイント28は2つの回転自由度(図1の1点鎖線で示すように、水平及び垂直軸を中心とした回転運動を示す)を有することが好ましい。第1セグメント20は、ばねによって負荷をかけられた第2ジョイント30によって第2セグメント22にリンクされ、この第2セグメント22は1つの自由回転度(図1の1点鎖線で示すように、水平軸を中心とした回転を示す)を有することが好ましい。マニピュランダムアッセンブリ14は、ばねによって負荷をかけられた第3ジョイント32によって第2セグメント22の自由端部に接続され、このばねによって負荷をかけられた第3ジョイント32は、1つの自由回転度(図1の1点鎖線で示すように、水平軸を中心とした回転を示す)を有することが好ましい。図1に於いて、アーム12(又はセグメント22)の自由端部は第3ジョイント32で終端している。
【0028】
第1及び第2セグメント20、22は、硬質材料から形成することができる。又は、図1に示す硬質セグメント20、22の自由度以上の自由度を与えるため、伸縮自在の、弾性を有する、または回転可能なセグメントを使用することができる。このようなセグメントは、撓み、伸張、圧縮、及び回転を測定するために計装することができる。各ばねによって負荷をかけられたジョイント28、30、32は、もし希望すれば、公知の係止手段(図示せず)によってそれぞれの運動範囲内の一定の位置に係止することができる。適当な係止手段の一例は、ボルトとウィングナットである。
【0029】
各ばねによって負荷をかけられたジョイント28、30、32は、装置10の構成要素の質量とばね特性によって決まる静的均衡位置(均衡休止位置)から逸脱した角度を有する撓みに対して受動的抵抗を与える。このようにして、マルチジョイントアーム12はそれ自身を支持することが可能であり、ユーザが特定の操作を完了してマニピュランダムを解放すると、その均衡休止位置に復帰する。ばねは、ジョイント28、30、32に内蔵され、動作中に所望量の受動的抵抗を達成する。又は、所望量の抵抗は、ばねによって達成することが好ましいが、摩擦ベアリング、ダンパー又はウェイトを使用しても達成することができる。これらの抵抗手段は変更可能であり、マニピュランダム、ユーザ及びユーザ能力によって変更可能である。アーム12内のばねによって負荷をかけられた各ジョイント28、30、32にはセンサ34を設けることが好ましく、これによってこれらのジョイントの1つまたは複数の回転軸を中心とするその撓み角を電気的に測定する。
【0030】
例示としての実施形態は、ばねによって負荷をかけられたジョイント28、30、32を内蔵している。本発明を変更して他の適当な種類のジョイントを内蔵することが可能であり、これらのジョイントには、例えば、更なる回転自由度を有するジョイント、別のばねによって負荷をかけられたまたは負荷をかけられていないジョイント、別の係止手段を有するかまたは係止手段を有さないジョイント及び別の計装を有するジョイントが含まれる。例えば、第1及び第2セグメント20、22を接続するためボールとソケットを有するジョイントを使用することができる。位置を維持するため、このボールとソケットを有するジョイントには、ばねによって負荷をかけてもよく、又は摩擦を利用してもよい。このボールとソケットを有するジョイントは、2つの軸を中心とした回転自由度を有し、その2つの自由度を中心とするジョイントの撓みを測定するセンサ34を計装することができることが有利である。
【0031】
一般的に、回転運動に対して一定の抵抗を有する1つ以上の回転自由度を与えるものであれば、いずれのジョイント又はリンケージであっても適当である。これらのジョイントは、摩擦力、ばね力、重力又は慣性力によって回転運動に対して受動的抵抗力のみを与えることが最も好ましい。ジョイントの回転運動に対して受動的抵抗を与えるということは、力発生装置またはロボット装置の使用を排除することを意味することを理解しなければならない。
【0032】
装置10の1つ以上の移動要素(例えば、アーム、セグメント、ジョイント、マニピュランダム、及びペグボード孔部)には電子センサ34(特定のマニピュランダムについて以下で説明するセンサ74、84も又参照のこと)が計装されている。センサ34は、1つ以上の移動要素の運動を検出し、その運動を表す電気信号を生成する。これらの電気信号は、次にコンピュータ16のような適当な処理装置に送信され、このコンピュータはこれらの信号をサンプリング、表示、及び記憶し且つこれらの信号を処理して運動力学的または運動変数を生成する。例えば、正味の変位、速度、加速度、力及びトルクのような二次変数を運動力学的または運動変数から計算し、達成度の等級又は得点を生成する。与えられた訓練に対応するそれぞれの等級をまず正規化することによって1つの達成度の等級を計算し、このような等級1つの得点に組み合わせることが有利であることがわかっている。(例えば、グリセンコ及びポチャツカ、2004参照)。
【0033】
種々のセンサ34が装置10に適している。例示としての実施形態は、ポテンショメータを使用してジョイントの角度また第1及び第2セグメント20、22の位置を決める。他の非制約例では、当業者に周知のポテンショメータ、ジャイロスコープ、加速度計、直線可変変移変換器、光学的エンコーダ、ひずみ計、電気接点、光電センサ又はその他のセンサを有している。光学式、光電式、磁石式、容量式、感応式又はその他の形式のセンサを使用してジョイント、セグメント、及びマニピュランダムの全てまたは何れかの組み合わせの運動、位置,方向、又はこれに加えられた力を計量することができる。このようにして、アームの12、セグメント20、22、ジョイント28、30、32及びマニピュランダムアッセンブリ14の1つ以上に位置する運動センサ使用して情報を検出及び送信することができ、この情報から構成要素の角度、出発点及び終点位置を計算し、ユーザ54によって移動されている1つ以上マニピュランダムのx、y及びz座標に関する情報を生成することができる。
【0034】
マニピュランダムアッセンブリ14はジョイント32を介して第2セグメント22の自由端に接続される。マニピュランダムアッセンブリは、前方に(即ち、ユーザに向かって)延び、ジョイント32に接続されるプラットフォーム81を有し、ジョイント32接続されることが好ましい。このようにして、マニピュランダムアッセンブリは、複数の手の機能を有するマニピュランダムをユーザの前方に懸架することができ、ユーザは一方又は両方の手で各マニピュランダムを把持しジョイント28、30、32によって許されている複数の自由度でマニピュランダムを移動させることができる。図3Aに示すように、プラットフォーム81は一般的に水平に位置させることができ、又はジョイント32をその水平軸に沿って回転させることにより、図3Bに示すように、一般的に垂直に移動させることができる。マニピュランダムアッセンブリ14は、またプラットフォーム81に対して垂直に取り付けた軸66を有するのが好ましい(図3Aに示すように、下部に)。軸66は、その長軸(図3Aでは、マニピュランダム装置14が直立位置にある場合の垂直軸を垂直鎖線で示している)を中心に回転するようにプラットフォーム81接続されるのが好ましい。これによって、マニピュランダムを下記に述べるようにこの回転軸66接続することが可能になり、マニピュランダムアッセンブリのマニピュランダム14に更なる自由回転度を付加することができる。図1に示すように、ユーザ54はマニピュランダムアッセンブリ14をユーザに対して前方、後方、上方、下方及びねじれ方向即ち、側部から側部へ移動させることができ、ねじれ方向即ち、側部から側部への移動は、ジョイント28及び/または回転軸66の長軸を介して達成することができる。1つ以上のジョイント28、30、32又は回転軸66を係止すると、これらの回転自由度を制限することができ、これは下記で述べるように係止手段(図示せず)によって達成することができる。マルチジョイントアーム12によって、マニピュランダムアッセンブリ14の三次元の運動が可能になり、これを検出することによって、ユーザによる個々のマニピュランダムの運動のx、y、及びz成分を生成することができる。
【0035】
マニピュランダムアッセンブリ14の他の好適な特徴は、これによって1つ以上のマニピュランダムをアームの自由端12に固定または繋ぎ止めることができることである。このような方法で、マニピュランダムは、ユーザが個々の構成要素を落としたり紛失することなくユーザに接近することができる。
【0036】
マニピュランダムアッセンブリ14は電気計装を有するマニピュランダムによって構成され、このマニピュランダムは自己支持を有し抵抗を発生する。このようなマニピュランダムの運動には、日常生活の活動で上肢部に生じるのと同様の運動が要求される。ユーザの障害、要求又は保守の必要性によって、種々のマニピュランダムがアーム12に取り付け又はアーム12から取り外される。当業者は、異なった場所では異なったマニピュランダムをアーム12に取り付けることができ、異なった自由度及び/または更に異なった自由度(即ち、ジョイント28、30及び32によって生成する更なる自由度)を設けることができることを当業者は認識する。以下で詳細に説明するように、別のセンサ(即ち、アーム12、セグメント20、22及び/またはジョイント28、30及び32に位置するセンサ34以外)を設けることが好ましく、これによってマニピュランダムアッセンブリ14内の別のマニピュランダムの変位を測定し、これから二次変数(例えば、運動力学的変数)を計算する。
【0037】
何れの方法によっても制約を受けるものではないが、マニピュランダムアッセンブリ14は、上肢部に障害のある運動を有するユーザのための従来の理学療法で使用するような例えば、1つ以上の垂直分割シリンダマニピュランダム36;ドアノブマニピュランダム38;キーグリップマニピュランダム40;水平ハンドルマニピュランダム42;ペグマニピュランダム70;コインマニピュランダム80、又はその他の適当な機能のマニピュランダムを有することができる。いかで更に詳しく説明するように、これらのマニピュランダムは、プラットフォーム81に取り付け、ジョイント32とともに回転し及び/または回転軸66に対して回転することが好ましい。
【0038】
図1及び6に示すように、静止マニピュランダムにはユーザの前面の水平支持部26上に設けても良い。図6は、ペグボード44の形態の付加的なマニピュランダムをこの例示として示し、このペグボード44はこれに形成された1つ以上の孔部46とガントリ50からのテサーによって繋がれた少なくとも1つのペグ48を有し、単独でまたは装置10と組み合わせて使用することができる。
【0039】
図2は、垂直分割シリンダ36を示し、この垂直分割シリンダ36には回転軸66に取り付けた二半部分52a、52bが形成され、且つ1つ以上の硬性のスプリング(図示せず)によって互いに僅かに付勢されている。分割シリンダ36は、キャリパとして炭酸飲料の缶のようなお馴染みの対象物を倍力で押し潰す。力は、分割シリンダ36の二半部分52a、52bを分離しているスプリングの変位によって間接的に検出することができ、またはシリンダの一部に取り付けたひずみ計のような力変換器によって検出することができる(センサ図示せず)。図2は、ユーザ54が分割シリンダ36の二半部分52a、52b共に押し潰すために力を加えている様子を示す。ユーザ54は、また作業空間内で1つの位置から他の位置に分割シリンダ36を移動し、炭酸飲料の缶のようなお馴染みの対象物をひとつの場所から他の場所に運ぶ模擬作業を行う。
【0040】
図3A及び3Bはドアノブマニピュランダム38を示し、このドアノブマニピュランダム38はプラットフォーム81に対して回転を行うために固定された回転可能で負荷をかけたドアノブ56によって構成されている。図3Aに示すように、ドアノブ56は、ユーザ54に対して捩じり(回内、回外)訓練を提供する。ドアノブ56は垂直位置に回転することが便利であり、これによって、この訓練では、図3Bに示すように、上部にねじの付いたジャーの蓋を捩じるのと同様の運動の訓練がユーザに要求される。本発明の他の実施形態では、ドアノブ56は別のマニピュランダムと置き換えることができる。非制約的な例では、日常生活の他の活動をシミュレーションする球形または楕円形のレバーやその他の形状が含まれる。
【0041】
図4はキーグリップマニピュランダム40を示し、これはドアノブ56に形成されたキー溝60から外側に延びるキー状のタブ58によって構成されている。キー状のタブ58は、ユーザ54がキー溝60から予め形成された係止位置に向かって外側に引出しても、キー溝60から完全に外れたり落下しないように形成されている。キー状のタブ58は、錠の中でキーをあたかも回すような動作をすることによって、捩じることができる。
【0042】
図5は水平ハンドルマニピュランダム42を示し、これは分割シリンダ36の下方で回転軸66のベース上に固定された軸64上を自由に回転可能である。ハンドル62は分割シリンダ36に対して垂直位置し(均衡リセット位置において)、ユーザの54の左右両手にアクセスできるように分割シリンダ36の周囲を超えて水平に延びてる。ハンドル62はマニピュランダムアッセンブリ14に回転可能に接続された軸64上を自由に回転し、このマニピュランダムアッセンブリ14は、アーム12の自由度と組み合わされた場合、三次元作業空間内でユーザの手54を何れの方向にも向けることができる。ハンドル62は、ユーザの手54の可能なバイオメカニカル範囲の全てを実質的に包含する運動範囲訓練を提供するのが好ましい。
【0043】
図6に示すように、例示としての実施形態には、水平支持部26に取り付けたペグボード44をまた設けることができる。このペグボード44には、1つ以上の孔部46を形成し、またガントリ50からテサー49によって繋がれた少なくとも1つのペグ48を有している。これは、単独で使用することもできるし、装置10と組み合わせて使用することもできる。使用する場合、手の横移動を実行するために、第1孔部46aから第2即ち他の孔部46bへペグ48移動させる(手の運動は図6の幻影で示す)。センサ34は、1つ以上の孔部46に位置させ、ユーザの進捗状況を監視する即ちこれにアクセスすることができる。
【0044】
図7A、7B及び7Cはペグマニピュランダム70及びコインマニピュランダム80を示し、これらはアームの自由端12、好ましくはプラットフォーム81の前方に又設けられている。拡大ベースを有するペグ71は、中空のハウジング72内で捕捉可能に保持されている。ハウジング72内のスプリング73は、このハウジングの底部に位置するマイクロスイッチのようなセンサ74に対してペグ71の拡大ベースを通常押し付けている。使用する場合、ユーザ54はペグ71をつまんで把持し、スプリング73の抵抗に抗してハウジング72からこのペグ71の一部を引き出す。これによって、センサ74の状態が変化する。ペグ71をハウジング72から部分的に引き出す以外に、このペグを移動可能なマニピュランダムアッセンブリ14に取り付けることによって、これを三次元空間内の何れの方向にもまた移動することができる。ペグ71及びこのように取付けたマニピュランダムアッセンブリ14の運動は、センサ34からの信号から計算することができる。プラットフォーム81に取付けたコインマニピュランダム80を示すが、これはマニピュランダムアッセンブリ14上の他の便利な位置に取付けてもよい(もし希望すれば、これはまた水平支持部26に取付けてもよい)。硬貨82はプラットフォーム81上に水平に保持されている。硬貨82は、ユーザがこれをつまみ上げた場合、この硬貨がプラットフォーム81から取り除かれたことを検出できるような方法であれば、いずれの適当な方法でプラットフォーム81の下部に繋いでもよい。図7Bに示す例示としての実施形態は、硬貨82の下側に接続されたテサー85の断面を詳細に示す。テサー85は、プラットフォーム81下部で自己収縮スプリングによって付勢されたリール83に固定されている。運動センサ84は、ユーザ54が硬貨82をつまみ上げた場合のリール83回転を検出するため、このリール83に取付けてもよい。
【0045】
特に図示していないが、本発明の装置と方法は、ユーザの手または腕を支持するための1つ以上の支持装置を有してもよいことを、当業者は理解する。そのような支持装置には、肘の支持装置またはオーバヘッドスライド装置が含まれる。また、本発明は、ユーザを支援するため、1つ以上のマニピュランダムに取付けたハンドストラップを使用してもよい。
【0046】
装置10を使用する場合、図1に示すように、ユーザ54は一般的に着座し、マニピュランダムアッセンブリ14と対面する。ユーザ54は、マニピュランダムを操作し、これを把持し、上昇及び下降させ、引っ張り、押し付け、捩じり、またはシミュレーションしている日常生活の活動にしたがってこれを移動させるが、この操作は、コンピュータ16のソフトウェアによって例えばディスプレイ上に提供される一連の命令、またはネットワークを介してコンピュータ16によって仲介されるリンクのようなテレコミュニケーションリンクを介して遠隔地のセラピストと行う通信に従って行われる。装置10の第1、第2及び第3スプリングによって負荷をかけたジョイント28、30、32及び第1及び第2セグメント20、22の運動は、センサ34によって検出される。次に、センサ34は運動を表す電気信号を発生し、これらの電気信号を適当な送信手段(例えば、有線または無線手段)によってコンピュータ16のような処理装置に送信し、このコンピュータ16はこれらの電気信号をサンプル、表示、及び処理して運動力学的変数または運動変数にする。これらの運動力学的変数または運動変数を更に処理して二次変数を得ることができる。
【0047】
コンピュータ16はソフトウェアプログラムを動作させ、このプログラムによってユーザの運動に基づいてユーザ54にフィードバックと指示を行う。コンピュータ16は、センサ34の捕捉したデータを記憶する。このデータをその後処理し、一定期間に亘って日常生活をシミュレーションした活動を実行するユーザの能力の変化を定量化してもよい。
【0048】
ユーザの進捗状況の報告は、コンピュータネットワーク、例えばインターネットを介して遠隔地に位置するコンピュータに定期的に送信し、セラピストまたはトレーナが例えばインターネットを介してこれを分析するようにしてもよい。
【0049】
コンピュータインターフェースは、例えば有線及び無線インターフェースまた例えばUSB及び802.11bを含む異なったアセンブリによってそれぞれ構成することができる。異なった種類とレベルのネットワーク及び装置のコンピュータプログラムを接続して使用することができる。いかなる方法によっても限定を加えるものではないが、このような種類には、スタンドアロンアプリケーション、コンピュータネットワークを介したアプリケーションのラン、ゲームアプリケーション、訓練アプリケーション、及びトレーニングアプリケーションが含まれる。このコンピュータプログラムは、音声及び/または映像を含む多くの種類のフィードバックをユーザに提供してもよい。例えば、このコンピュータプログラムは、管理者が、テキスト、音声及び映像、またはその他の種類の通信によってリアルタイムまたは遅延を伴って地域的にまたはコンピュータネットワークによってユーザと通信を行うことを可能にする。
【0050】
図8のフローチャートは、上肢部の機能の標準化されたテストによって集合的に構成されている一連のモータのタスクを介してユーザ54を指導するためのコンピュータソフトウェアの一例を示す。ユーザ54との通信は、自動的に生成された音声命令、ユーザのコンピュータディスプレイ16上に表示したテキスト、画像、映像及び動画の形で行う。上記の代替または上記に追加して、管理者またはセラピストは口頭及び視覚によるガイダンスを行ってもよい。上述したように、管理者は同じ場所に居てもよく、そうでない場合には、例えばインターネットのようなテレコミニュケーション手段を使用し、口頭及び視覚によってコミュニケーションを行ってもよい。ソフトウェアは、標準化したテストの実行中センサ34等によって捕捉した信号を記録し、これらの信号を自動的に使用して特定のタスクが行われているか否かを検出し、それによってユーザにそのタスクの実行を促してもよい。このソフトウェアは捕捉したデータから実行結果の得点を自動的に計算し、これによってこの標準化テストからの成果の算定基準を得てもよい。
【0051】
コンピュータ16は、スタンドアロンのワークステーションでもよく、またはコンピュータネットワークに接続してもよい。ネットワークに接続した場合には、コンピュータプログラムはネットワークとのリンク上で広範な接続プロトコルを使用することができる。コンピュータ16は同時に複数のネットワーク例えばコンピュータネットワーク及びセルラーネットワークに接続することができる。
【0052】
例示としての実施形態には、訓練の実行を支援するため、ユーザ54の神経及び筋肉を活動させるために電気的刺激装置(図示せず)を設けてもよい(例えば、いずれもポチャツカに付与された国際特許出願公報WO2004/034937及び2005年11月1日付米国特許番号第6,961,623参照)。
【0053】
本明細書で述べた全ての参考文献は、本発明の技術水準を示すものである。ここに含まれる全ての参考文献は、あたかも各文献が具体的かつ個別に参考文献として含まれることを指示されたがの如くその全体が同じ範囲で参考文献として含まれている。しかし、もし引用文献と本開示との間に矛盾が生じた場合には、本開示を優先するものとする。ここに含まれる一部の参考文献は本出願の提出以前の技術の状態に関する詳細を提供するためのものであり、他の参考文献は追加のまたは代替の装置の要素、追加のまたは代替の材料、または本発明の追加のまたは代替の分析または適用方法を提供するものである。
【0054】
ここで使用している用語と表現は、ここで別途定義しない場合には説明のための用語として使用するものであり、限定を与えるものではない。このような用語と表現を使用するに際し、ここで図示及び説明した特徴の等価物を排除する意図はなく、本発明の範囲は下記の請求の範囲のみによって定義及び限定されるものとの認識である。ここに包含する記述は多くの具体例を含むが、これらの具体例は本発明の範囲を限定するものと解釈するべきではなく、単に本発明の実施形態の幾つかを例示するものである。当業者は、特に例示している以外の要素と材料は、過度の実験に言及することなく本発明を実施する場合に使用することができることを理解する。このような要素と材料の技術的に公知の機能的等価物は全て本発明に包含されるものとする。
【0055】
ここで例示によって述べた本発明は、いずれかひとつ又は複数の要素が欠如しても、また具体的に開示されていないひとつ又は複数の限定が無くても適当に実行することができる。
【0056】
以下で使用するように、「具備する」は「有している」、「含んでいる」又は「ことを特徴とする」と同義あり、包括的即ち拡張可能であり、付加的または引用していない要素を排除するものではない。特許請求の範囲の中でエレメントの前に使用した不定冠詞は1つ以上のエレメントが特定されていることを意味するが、唯一のエレメントのみが存在することを明確に要求されている場合を除き、そこに存在するその他のエレメントを排除するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0057】
【特許文献1】米国特許第6,007,459号明細書
【特許文献2】米国特許第5,466,213号明細書
【特許文献3】米国特許第5,755,645号明細書
【特許文献4】国際公開第2004/034937号パンフレット
【特許文献5】米国特許第6,961,623号明細書
【特許文献6】米国特許第6,613,000号明細書
【特許文献7】米国特許第5,746,704号明細書
【特許文献8】米国特許第6,988,977号明細書
【非特許文献】
【0058】
【非特許文献1】米国心臓協会:心臓病及び脳卒中の統計−2006改訂、ダラス.テキサス、p.40
【非特許文献2】ディクスタイン、R.ホッシャマン、S.;ピラー、T.及びシャーム、R.(1986)、脳卒中のリバビリテーション。3つの運動療法に対するアプローチ、理学療法66:1233−8
【非特許文献3】グリセンコ他(2001)、片麻痺した手の機能に対する自動化FES支援運動療法、神経科学学会紀要27:210.220
【非特許文献4】グリセンコ、V.及びポチャツカ、A.(2004)、片麻痺した手の機能に対する機能電気的刺激支援運動療法システム、物理療法学とリハビリテーション紀要85:881−885
【非特許文献5】ターブ、E.;ラム、P.S.;ハーディン、P.;マーク、V.W.及びウスワット、G.(2005)自動CITE:セラピストの負担を低減したCI療法の自動提供、脳卒中36:1301−1304
【非特許文献6】ライ、S.M.;スタデンスキー、S.;ダンカン、P.W.及びペレラ、S.(2002)、脳卒中衝撃尺度で測定した脳卒中の持続的影響、脳卒中33:1840−4
【非特許文献7】ターブ、E.;ウスワット、G.及びピディキティ、R.(1999)強制誘導運動療法:物理的リバビリテーションに対して新しい分野の技術−臨床評論、リバビリテーションリサーチ&デベロップメント誌36:237−251

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに上肢部の訓練を行わせる装置に於いて、
固定端と自由端を有するアームであって、上記固定端は上記アームを確実に支持するベースに接続され、上記自由端をユーザの上肢部の近傍でユーザの近くに位置させる上記アーム;
アームの固定および自由端にまたはこれらの固定および自由端の間のアーム内に形成した複数のジョイントであって、各ジョイントは1つ以上の回転自由度を有し且つ1つ以上の回転自由度内の回転運動に対して抵抗を与え、その結果アームの自由端は三次元空間内を自立するように移動することができる上記複数のジョイント;及び
各マニピュランダムが上記複数のジョイントによって与えられた1つ以上の回転自由度を介してユーザによって移動可能に上記アームの自由端に取り付けた複数のマニピュランダムを具備するマニピュランダムアッセンブリであって、各マニピュランダムはユーザの把持範囲内に位置し、各マニピュランダムはユーザの日常生活の上肢部の活動で遭遇する対象物を表している上記マニピュランダムアッセンブリを具備する装置。
【請求項2】
複数のマニピュランダムは、アームの自由端に固定または繋がれ、上記マニピュプラムを上記のように接続することによってユーザが落したり紛失することなくユーザに対してアクセス可能である請求項1記載の装置。
【請求項3】
1つ以上のマニピュランダムを上記アームの自由端に取り付け、その結果、上記のように取り付けたマニピュランダムに更なる回転自由度を付与する請求項2記載の装置。
【請求項4】
1つ以上のマニピュランダムを上記アームの自由端に取り付けた回転軸に取り付け、その結果、更なる回転自由度を上記回転軸の長軸に沿って付与する請求項3記載の装置。
【請求項5】
複数のジョイントによって回転運動に対し受動的抵抗を付与し、これによって、ユーザがマニピュランダムアッセンブリのマニピュランダムを開放した場合、上記アームと上記マニピュランダムアッセンブリを均衡休止位置に戻す請求項4記載の装置。
【請求項6】
上記アームは床の上に位置し、上記アームは2つの相互に接続されたセグメント内に形成され、第1セグメントは上記ベースから一般的に上方向に延び、第2セグメントは上記ユーザに向かって一般的に前方に延びて上記ユーザの上肢部近傍に上記自由端を位置決めし、上記第1セグメントは上記床に対して一般的に水平軸に回転自由度を付与すると共に垂直軸に回転自由度を付与する第1ジョイントを介して上記ベースに接続された上記固定端部を有し、上記第1及び第2セグメントは水平軸に回転自由度を付与する第2ジョイントを介して相互に接続され、上記第2セグメントの上記自由端は水平軸に回転自由度を付与する第3ジョイントを介して上記複数のマニピュランダムに取り付けられた請求項5記載の装置。
【請求項7】
上記第1、第2及び第3ジョイントはスプリングによって負荷をかけたジョイントまたはボール及びソケットジョイントである請求項6記載の装置。
【請求項8】
上記複数のマニピュランダムは、垂直分割シリンダマニピュランダム、ドアノブマニピュランダム、キーグリップマニピュランダム、水平ハンドルマニピュランダム、ペグマニピュランダム及びコインマニピュランダムから選択される請求項7記載の装置。
【請求項9】
上記装置は、上記第3ジョイントに対して移動するように接続されたプラットフォームを更に具備し、上記プラットフォームは上記均衡休止位置において一般的に水平であり、上記回転軸は、上記プラットフォーム対して一般的に垂直であり、もし存在すれば:
上記垂直分割シリンダマニピュランダムはシリンダの二半部分を有し、上記シリンダの二半部分は、スプリングによって付勢されて分離され、上記ユーザが上記回転軸を絞る動作を行い、上記回転軸を回転させ又は上記アームの回転自由度内で上記シリンダを移動させるように上記回転軸に取り付けられ;
上記ドアノブマニピュランダムは上記プラットフォームに取り付けた回転可能なドアノブを具備し、その結果上記ユーザは上記プラットフォームに対して上記回転可能なドアノブを上記アームの上記回転自由度内で移動することができ;
上記キーグリップマニピュランダムは上記ドアノブに形成されたキー溝と上記スロットに固定または繋がれたキータブとを具備し、その結果、上記ユーザは上記ドアノブ内で上記キータブを回転させることができ、上記キー溝内で上記キータブを引っ張ることができ、または上記アームの上記回転自由度内で上記ドアノブを移動することができ;
上記水平ハンドルマニピュランダムは、上記回転軸に接続された軸を中心にして回転し且つ上記均衡休止位置において一般的に水平になるように取り付けられた1つ以上のハンドルを具備し、その結果、上記ユーザは上記軸を中心にして上記ハンドルを回転させることができ、上記回転軸の長軸に沿って捩じり動作をしながら上記ハンドルを移動させることができ、及び上記ハンドルの回転自由度内で上記ハンドルを移動させることができ;
上記ペグマニピュランダムは上記プラットフォームに接続されたハウジング内でスプリングによって付勢されたペグを具備し、その結果、上記ユーザは上記スプリングに抗して上記ペグを引っ張り、上記アームの上記回転自由度内で上記ペグを移動させることができ;及び
上記コインマニピュランダムは上記プラットフォームに繋がれたコインを具備し、その結果、上記ユーザは上記プラットフォームから上記コインを摘み上げることができる請求項8記載の装置。
【請求項10】
上記第1、第2及び第3ジョイント、上記第1及び第2セグメント、及び上記1つ以上のマニピュランダムから選択された場所に位置する1つ以上のセンサを具備し、上記センサは運動または力を検出し、運動または力を表す電気信号を発生するように動作する請求項6記載の装置。
【請求項11】
上記第1、第2及び第3ジョイント、上記第1及び第2セグメント、及び上記1つ以上のマニピュランダムから選択された場所に位置する1つ以上のセンサを具備し、上記センサは運動または力を検出し、運動または力を表す電気信号を発生するように動作する請求項9記載の装置。
【請求項12】
運動または力を表す電気信号を処理する処理装置及び上記電気信号を上記処理装置に送信する手段を更に具備する請求項10記載の装置。
【請求項13】
上記1つ以上のセンサは、ポテンショメータ、ジャイロスコープ、加速度計、直線可変変位変換器、光学的エンコーダ、ひずみ計、電気接点および光電センサから選択する請求項12記載の装置。
【請求項14】
上記複数のマニピュランダムの操作を支援するため、上記ユーザの神経及び筋肉を活性化する電気刺激装置を更に具備する請求項13記載の装置。
【請求項15】
上記第1及び第2セグメントは硬質材料によって形成される請求項13記載の装置.
【請求項16】
上記第1及び第2セグメントは、伸縮自在、弾性を有するまたは回転可能なセグメントである請求項13記載の装置。
【請求項17】
上記第1ジョイント、上記第2ジョイント、上記第3ジョイント、上記回転軸、及び上記ハンドル軸の内の1つ以上を係止する係止手段を更に具備する請求項11記載の装置。
【請求項18】
ユーザの上肢部に対して訓練療法を提供する方法に於いて:
a)請求項1の装置を提供するステップ;及び
b)ユーザにユーザの手を使用して上記複数のマニピュランダムを操作させ、上記ユーザの日常生活の活動を表す運動をシミュレーションするステップを具備する方法。
【請求項19】
操作は、把持、絞り、解放、摘み、持ち上げ、持ち下げ、左右の運動、捩じり、及び回転の内の1つ以上を含む請求項18記載の方法。
【請求項20】
c)上記アーム、上記複数のジョイント、または上記1つ以上のマニピュランダムから選択した1つ以上の場所に位置する1つ以上の運動または力検出センサを設けるステップ;
d)上記アーム、上記ジョイント、または上記マニピュランダムのいずれかの運動または力を上記1つ以上のセンサによって検出するステップ;
e)上記検出した運動または力から電気信号を発生するステップ;及び
f)処理装置に上記電気信号を送信し、上記ユーザの進捗状況を監視するステップを更に具備する請求項18記載の方法。
【請求項21】
上記複数のマニピュランダムは、上記アームの上記自由端に固定または繋がれ、上記マニピュプラムを上記のように接続することによってユーザが落したり紛失することなくユーザに対してアクセス可能である請求項20記載の方法。
【請求項22】
1つ以上のマニピュランダムを上記アームの上記自由端に取り付け、その結果、上記のように取り付けたマニピュランダムに更なる回転自由度を付与する請求項21記載の方法。
【請求項23】
1つ以上のマニピュランダムを上記アームの上記自由端に取り付けた回転軸に取り付け、その結果、更なる回転自由度を上記軸の長軸に沿って付与する請求項22記載の方法。
【請求項24】
複数のジョイントによって回転運動に対し受動的抵抗を付与し、これによって、ユーザがマニピュランダムアッセンブリのマニピュランダムを開放した場合、上記アームと上記マニピュランダムアッセンブリを均衡休止位置に戻す請求項23記載の方法。
【請求項25】
上記アームは床の上に位置し、上記アームは2つの相互に接続されたセグメント内に形成され、第1セグメントは上記ベースから一般的に上方向に延び、第2セグメントは上記ユーザに向かって一般的に前方に延びて上記ユーザの上肢部近傍に上記自由端を位置決めし、上記第1セグメントは上記床に対して一般的に水平軸に回転自由度を付与すると共に垂直軸に回転自由度を付与する第1ジョイントを介して上記ベースに接続された上記固定端部を有し、上記第1及び第2セグメントは水平軸に回転自由度を付与する第2ジョイントを介して相互に接続され、上記第2セグメントの上記自由端は水平軸に回転自由度を付与する第3ジョイントを介して上記複数のマニピュランダムに取り付ける請求項24記載の方法。
【請求項26】
上記第1、第2及び第3ジョイントはスプリングによって負荷をかけたジョイントまたはボール及びソケットジョイントである請求項25記載の方法。
【請求項27】
上記複数のマニピュランダムは、垂直分割シリンダマニピュランダム、ドアノブマニピュランダム、キーグリップマニピュランダム、水平ハンドルマニピュランダム、ペグマニピュランダム及びコインマニピュランダムから選択される請求項26記載の方法。
【請求項28】
上記装置は、上記第3ジョイントに対して移動するように接続されたプラットフォームを更に具備し、上記プラットフォームは上記均衡休止位置において一般的に水平であり、上記回転軸は、上記プラットフォームに対して一般的に垂直であり、ここで、もし存在すれば:
上記垂直分割シリンダマニピュランダムはシリンダの二半部分を有し、上記シリンダの二半部分は、スプリングによって付勢されて分離され、上記ユーザが上記回転軸を絞る動作を行い、上記回転軸を回転させ又は上記アームの回転自由度内で上記シリンダを移動させるように上記回転軸に取り付けられ;
上記ドアノブマニピュランダムは上記プラットフォームに取り付けた回転可能なドアノブを具備し、その結果上記ユーザは上記プラットフォームに対して上記回転可能なドアノブを上記アームの上記回転自由度内で移動することができ;
上記キーグリップマニピュランダムは上記ドアノブに形成したキー溝と上記スロットに固定または繋いだキータブを具備し、その結果、上記ユーザは上記ドアノブ内で上記キータブを回転させることができ、上記キー溝内で上記キータブを引っ張ることができ、または上記アームの上記回転自由度内で上記ドアノブを移動することができ;
上記水平ハンドルマニピュランダムは、上記回転軸に接続された軸を中心にして回転し且つ上記均衡休止位置において一般的に水平になるように取り付けられた1つ以上のハンドルを具備し、その結果、上記ユーザは上記軸を中心にして上記ハンドルを回転させることができ、上記回転軸の長軸に沿って捩じり動作をしながら上記ハンドルを移動させることができ、及び上記ハンドルの回転自由度内で上記ハンドルを移動させることができ;
上記ペグマニピュランダムは上記プラットフォームに接続されたハウジング内でスプリングによって付勢されたペグを具備し、その結果、上記ユーザは上記スプリングに抗して上記ペグを引っ張り、上記アームの上記回転自由度内で上記ペグを移動させることができ;及び
上記コインマニピュランダムは上記プラットフォームに繋がれたコインを具備し、その結果、上記ユーザは上記プラットフォームから上記コインを摘み上げることができる請求項27記載の方法。
【請求項29】
上記第1、第2及び第3ジョイント、上記第1及び第2セグメント、及び上記1つ以上のマニピュランダムから選択された場所に位置する1つ以上のセンサを具備し、上記センサは運動または力を検出し、運動または力を表す電気信号を発生するように動作する請求項25記載の方法。
【請求項30】
上記第1、第2及び第3ジョイント、上記第1及び第2セグメント、及び上記1つ以上のマニピュランダムから選択された場所に位置する1つ以上のセンサを具備し、上記センサは運動または力を検出し、運動または力を表す電気信号を発生するように動作する請求項28記載の方法。
【請求項31】
運動または力を表す電気信号を処理する処理装置及び上記電気信号を上記処理装置に送信する手段を更に具備する請求項29記載の方法
【請求項32】
上記1つ以上のセンサは、ポテンショメータ、ジャイロスコープ、加速度計、直線可変変位変換器、光学的エンコーダ、ひずみ計、電気接点および光電センサから選択する請求項31記載の方法。
【請求項33】
上記複数のマニピュランダムの操作を支援するため、上記ユーザの神経及び筋肉を活性化する電気刺激装置を更に具備する請求項32記載の方法。
【請求項34】
上記第1及び第2セグメントは硬質材料によって形成される請求項32記載の方法。
【請求項35】
上記第1及び第2セグメントは、伸縮自在、弾性を有するまたは回転可能なセグメントである請求項32記載の方法。
【請求項36】
上記第1ジョイント、上記第2ジョイント、上記第3ジョイント、上記回転軸、及び上記ハンドル軸の内の1つ以上を係止する係止手段を更に具備する請求項30記載の方法。
【請求項37】
上記電気信号は、フィードバックを発生するように処理する請求項34記載の方法。
【請求項38】
上記電気信号は、対話型コンピュータゲームの形式でフィードバックを発生するように処理する請求項34記載の方法。
【請求項39】
上記電気信号は、治療または運動スケジュールを評価するため性能の格付けを生成するように処理する請求項34記載の方法。
【請求項40】
上記ユーザのサイトに設置されたコンピュータとセラピストの制御下にある遠隔コンピュータとの間に更にテレコミュニケーションリンクを設ける請求項34記載の方法。
【請求項41】
標準化した能力テストから一連の運動を介して複数のマニピュランダムを操作することを上記ユーザに促すステップを更に具備する請求項34記載の方法。
【請求項42】
上記ユーザの近くに水平支持部を設けるステップ;及び
上記ユーザの手の届く範囲内で上記水平支持部上に1つ以上の静止マニピュランダムを設けるステップを更に具備する請求項34記載の方法。
【請求項43】
上記静止マニピュランダムは、1つ以上の孔部を形成するペグボード及び上記ペグボード上に位置するガントリから繋がれた少なくとも1つのペグを具備し、上記ユーザに上記ペグを上記1つ以上の孔部に移動させる請求項42記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−536535(P2009−536535A)
【公表日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508070(P2009−508070)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【国際出願番号】PCT/CA2007/000828
【国際公開番号】WO2007/131340
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(505252285)リハブトロニクス インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】