説明

下水汚泥燃料の製造方法

【課題】下水汚泥由来の臭気を効果的に抑制することのできる下水汚泥燃料の製造方法を提供すること。
【解決手段】下水汚泥を脱水し、得られた脱水汚泥ケーキを乾燥して下水汚泥燃料を製造する方法において、脱水前の下水汚泥に、紅茶、緑茶等の茶類の絞りかす、コーヒーの絞りかす、レモン等の柑橘類の絞りかすから選ばれた少なくとも一種以上を混合した後に、脱水を行う。また、脱水汚泥ケーキを乾燥する際に、紅茶、緑茶等の茶類の絞りかす、コーヒーの絞りかす、レモン等の柑橘類の絞りかす、粉炭、粉コークスから選ばれた少なくとも一種以上を混合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥を脱水し、得られた脱水汚泥ケーキを乾燥して下水汚泥燃料を製造する方法に関し、特に、中間生成物である脱水汚泥ケーキあるいは最終製品である下水汚泥燃料からの臭気を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、京都議定書への批准を始め、COに対する削減要求は高く、バイオマス等の再生可能エネルギーの利用に関する要求が高まっていている。
【0003】
このなかで、下水汚泥のリサイクル法の一つとして、下水汚泥を脱水し、得られた脱水汚泥ケーキを乾燥して下水汚泥燃料とする方法が検討されている。
【0004】
ところが、脱水汚泥ケーキが臭気を持っていることから、輸送中、あるいは燃料化の過程で臭気を発し、環境に悪影響を与え、近隣の住民の迷惑となっていた。
【0005】
これに対して、特許文献1には、脱水汚泥ケーキを炭化させた炭化物を、脱水汚泥ケーキに混合し乾燥することで、得られる下水汚泥燃料の臭気を抑制する方法が開示されている。
【0006】
しかし、この特許文献1の方法では、炭化物が必要であり、下水汚泥の乾燥物のみから燃料を製造する場合に比べ、化石燃料の使用量が大きくなり、CO削減効果は低い。また、脱水汚泥ケーキを炭化させた炭化物では脱臭効果が十分でなく、また、脱水汚泥ケーキを乾燥工程に運ぶまでの臭気は抑えられなかった。
【特許文献1】特開平11−323359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、下水汚泥由来の臭気を効果的に抑制することのできる下水汚泥燃料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の下水汚泥燃料の製造方法は、下水汚泥を脱水して脱水汚泥ケーキを得る脱水工程あるいは脱水汚泥ケーキを乾燥して下水汚泥燃料を得る乾燥工程において、特定の脱臭剤を添加することで下水汚泥由来の臭気を抑制するようにしたものである。
【0009】
すなわち、本発明の一態様は、下水汚泥を脱水し、得られた脱水汚泥ケーキを乾燥して下水汚泥燃料を製造する方法において、脱水前の下水汚泥に、紅茶、緑茶等の茶類の絞りかす、コーヒーの絞りかす、レモン等の柑橘類の絞りかすから選ばれた少なくとも一種以上を混合した後に、脱水を行うことを特徴とするものである。
【0010】
このように下水汚泥の脱水工程で茶類の絞りかす等を混合し脱水すると、茶類の絞りかす等に含まれるポリフェノールが流出し、脱水汚泥ケーキに含浸して臭気粒子を分解、捕捉することにより、脱水汚泥ケーキの臭気を低減させることができる。
【0011】
本発明の他の態様は、下水汚泥を脱水し、得られた脱水汚泥ケーキを乾燥して下水汚泥燃料を製造する方法において、脱水汚泥ケーキを乾燥する際に、紅茶、緑茶等の茶類の絞りかす、コーヒーの絞りかす、レモン等の柑橘類の絞りかす、粉炭、粉コークスから選ばれた少なくとも一種以上を混合することを特徴とするものである。
【0012】
下水汚泥に茶葉の絞りかすを混合し乾燥することで、乾燥の際に与えられる熱によって茶葉に含まれるポリフェノール等の臭い吸着粒子が拡散、活性化し、高い消臭効果が得られ、得られた乾燥物の臭気を低減できる。また、コーヒーの絞りかすを用いた場合、コーヒーは製造の過程で炒ってあり表面に細孔があるので、これを乾燥することによりコーヒーの絞りかすに含まれる水分が蒸発し、コーヒーの絞りかすの持つ細孔が活性化し、臭気粒子の捕捉効果が高くなる。また、コーヒーやレモン等の柑橘類は弱酸性であり、下水汚泥等のアンモニア系のアルカリ性成分を中和、分解することによって臭気を低減する。
【0013】
一方、粉炭あるいは粉コークスを混合し乾燥すると、粉炭、コークスには表面に細孔が開いており、この細孔に臭気を捕捉することで、乾燥物の臭気が抑制される。また、粉炭あるいは粉コークスを混合することにより、単位体積当たりの発熱量が上がり、燃料としての利用範囲を広げることができる。また、粉炭、粉コークスを揮発分の多いバイオマスと混合することにより、着火性が向上し、燃料としての適合範囲を広げることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、下水汚泥燃料の製造に際して下水汚泥由来の臭気を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
(実施形態1)
図1は、本発明の第1実施形態を示す処理フロー図である。この実施形態は下水汚泥の脱水工程において紅茶の絞りかすを混合するものである。
【0017】
図1に示すように、まず、下水汚泥と紅茶の絞りかすとを混合し、フィルタープレス等の脱水装置で脱水して脱水汚泥ケーキを得る。その後、脱水汚泥ケーキを乾燥装置にて200℃〜400℃で乾燥させ下水汚泥燃料を得る。得られた下水汚泥燃料は石炭火力ボイラ用等の燃料として使用され、得られた蒸気により発電する。
【0018】
この下水汚泥の脱水工程における茶葉の絞りかす等の混合量は、脱水後に脱水汚泥ケーキ100質量部に対して0.2〜3質量部になるように加えることが好ましい。混合量が0.2質量部未満では臭気抑制効果が十分でなく、2質量部を超えると処理コストが増大するという問題がある。
【0019】
また、茶葉の絞りかす等は混合前に粉砕し、その表面積を増やすことが好ましい。これにより、臭気抑制効果が向上する。
【0020】
(実施形態2)
図2は、本発明の第2実施形態を示す処理フロー図である。この実施形態は脱水汚泥ケーキの乾燥工程において紅茶の絞りかすを混合するものである。
【0021】
図2に示すように、まず、下水汚泥をフィルタープレス等の脱水装置で脱水して脱水汚泥ケーキを得る。この脱水汚泥ケーキに紅茶の絞りかすを混合し、乾燥装置にて200℃〜400℃で乾燥させ下水汚泥燃料を得る。得られた下水汚泥燃料は第1実施形態と同様に石炭火力ボイラ用等の燃料として使用される。
【0022】
この脱水汚泥ケーキの乾燥工程における茶葉の絞りかす等の混合量は、乾燥後に乾燥物(下水汚泥燃料)100質量部に対して1〜10質量部となるように、下水汚泥100質量部に対して0.2〜3質量部が好ましい。混合量が0.2質量部未満では臭気抑制効果が十分でなく、3質量部を超えると処理コストが増大するという問題がある。
【0023】
(実施形態3)
図3は、本発明の第3実施形態を示す処理フロー図である。この実施形態は脱水汚泥ケーキを乾燥する前に造粒するようにしたものである。
【0024】
図3に示すように、まず、下水汚泥をフィルタープレス等の脱水装置で脱水して脱水汚泥ケーキを得る。この脱水汚泥ケーキと紅茶の絞りかすとを2軸ミキサー(特開平11−106772号公報、特開2005−220194号公報等参照)に投入して混合し、1〜10mm程度の大きさに造粒する。この造粒物を乾燥装置にて200℃〜400℃で乾燥させ下水汚泥燃料を得る。得られた下水汚泥燃料は篩にかけられて分級され、例えば、直径1〜10mmの範囲外のものは破砕され2軸ミキサーに再投入される。得られた製品燃料は第1及び第2実施形態と同様に石炭火力ボイラ用等の燃料として使用される。
【0025】
このように、本実施形態では、乾燥前に混合、造粒することで、茶葉の絞りかす等を内部に含んだ造粒乾燥物を得る。茶葉の絞りかす等が乾燥時の高温にさらされ、乾燥しすぎると脱臭の効果が低下することがあるが、本実施形態ではこれを防止することができる。
【0026】
造粒する際には40%以上の乾燥粉体が必要となる。このため上記範囲内の造粒物を一部粉砕して循環使用するが、粉炭、粉コークスを造粒時に混合すると、乾燥汚泥の破砕物の代替とすることができ、製品として適合する乾燥造粒物の破砕量を低減することができ、運転に必要な動力が減少する。
【0027】
粉炭、粉コークスは、50μm〜1mmの粒径のものを用いる。粒径が小さいほど比表面積が向上し脱臭効果が上がるが、粒径が小さすぎるとハンドリングが難しい。
【実施例】
【0028】
図1あるいは図2の処理フローに従い、下水汚泥燃料を製造した。その製造の際に混合した脱臭剤と、得られた脱水汚泥ケーキ及び下水汚泥燃料の臭気官能試験結果を表1に示す。
【表1】

【0029】
表1に見られるように、本発明の実施例は比較例に比べ、いずれも良好な脱臭効果を示した。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態を示す処理フロー図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す処理フロー図である。
【図3】本発明の第3実施形態を示す処理フロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水汚泥を脱水し、得られた脱水汚泥ケーキを乾燥して下水汚泥燃料を製造する方法において、脱水前の下水汚泥に、紅茶、緑茶等の茶類の絞りかす、コーヒーの絞りかす、レモン等の柑橘類の絞りかすから選ばれた少なくとも一種以上を混合した後に、脱水を行うことを特徴とする下水汚泥燃料の製造方法。
【請求項2】
下水汚泥を脱水し、得られた脱水汚泥ケーキを乾燥して下水汚泥燃料を製造する方法において、脱水汚泥ケーキを乾燥する際に、紅茶、緑茶等の茶類の絞りかす、コーヒーの絞りかす、レモン等の柑橘類の絞りかす、粉炭、粉コークスから選ばれた少なくとも一種以上を混合することを特徴とする下水汚泥燃料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−326911(P2007−326911A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−157508(P2006−157508)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】