説明

下部二層電極を持つ電気光学素子を有するアクティブマトリックス型表示装置

【課題】
表示装置の性能を改善する光キャビティ効果によって、平坦化及び光抽出の双方を最適化することを可能としたアクティブマトリックス型表示装置を提供する。
【解決手段】
本発明に係る表示装置においては、絶縁層(14;14’)はアクティブマトリックスを覆い、各々の電気光学素子は前記絶縁層の表面に設けられる下部電極(16’;16’’)を有する。本発明によれば、下部電極は前記絶縁層(14;14’)の表面に直接設けられる有機導電層(161;161’)及び有機導電層を覆う金属層を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学素子に対し供給・駆動する回路の配列、各々の前記回路を駆動し該回路を通じて電気光学素子に供給する電極の配列、前記回路及び前記電極が形成するアクティブマトリックス、前記回路及び前記電極の配列を覆う絶縁層、及び前記絶縁層の上に設けられる電気光学素子の配列、を支持する基板を有するアクティブマトリックス型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブマトリックス型表示装置では、各々の回路は1つの電気光学素子に対応し、その素子を駆動するように意図される。各々の回路は、電極配列の1つの供給電極に接続された供給入力端子、及び供給出力端子を有する。各々の回路は、例えば、2つの電流端子を有する薄膜トランジスタ(以下、TFT)型の電流変調器を含む。2つの電流端子は、この場合、ドレイン電極及びソース電極と呼ばれ、一方は入力端子、他方は出力端子の機能を果たす。
【0003】
各々の電気光学素子は上部供給電極(以下、上部電極)及び下部供給電極(以下、下部電極)を有する。下部電極は絶縁層の表面に設けられるとともに、この素子に対応する回路の供給出力端子に前記絶縁層を貫通するスルーホールを通って接続される。このようなスルーホールは一般にビアと呼ばれる。
【0004】
電気光学素子が有機エレクトロルミネッセンスダイオードであり(以下、エレクトロルミネッセンスをELと称する)、従って、有機EL層が各々のダイオードの下部電極と上部電極との間に挿入される、前述のTFT型の表示装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図1を参照すると、上記文献に記載されたアクティブマトリックス型EL表示装置は、基板1、並びに、各々のダイオードに、該ダイオードを駆動する回路の部品である2つの電流電極及びストレージキャパシタ13を有するTFT12、前記回路を覆い、図に例示されるように回路の部品12、13によって形成された特徴的な形状(以下、特徴形状)を平坦化する機能を有する上部電気絶縁層(以下、絶縁層)14、前記絶縁層14の表面に設けられここでは陽極として機能する下部電極16、EL層17、全てのダイオードに共通であり、ここでは陰極として機能する上部電極18、及び保護層19、を有する。基板1及び駆動・供給回路はダイオードの配列のためのアクティブマトリックス11を形成する。上部電極18及び保護層19はダイオードの放出光に対して透明である。各々のダイオードの下部電極16は、とりわけ絶縁層14を貫通するビア20によって、そのダイオードに対応する回路のTFTの1つの電流電極に接続される。
【0006】
このような構造は以下に示す幾つかの短所を有する。
【0007】
絶縁層を形成するために適用される材料の容積によって、回路部品及びアクティブマトリックスの電極によって形成される特徴形状を完全に充填させるため、絶縁層は比較的厚くなければならない。さらに、この絶縁材料は前記特徴形状を充填するために、例えば溶剤の使用が必要なスピンコーティングによって適用されるのに適していなければならない。
【0008】
また、図1に例示されるように、下部電極自体がビア20を通ってTFTとのコンタクトを提供するとき、ビア20のレプリカ21がこの下部電極の上面に転写され電極の平坦な表面に対して窪みを形成する。これら窪みレプリカ21の輪郭上において、傾斜の急激な変化が薄膜、特にダイオードの薄膜、との間に寄生電気的コンタクトを誘発し、それによって漏れ電流及び表示装置の性能劣化を発生させる。
【特許文献1】米国特許第6780688号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/025391号明細書
【特許文献3】米国特許第5723873号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は前述の短所の1つ又は双方を防止することであり、特に、下部電極の上面をよりよく平坦化することによって防止したアクティブマトリックス型表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の表示装置は、
アクティブマトリックス;
前記アクティブマトリックスを覆う絶縁層;及び
前記絶縁層上に配置された電気光学素子の配列であって、各々の電気光学素子が前記絶縁層の表面に設けられた下部電極を有し、各々の電気光学素子の前記下部電極が、前記絶縁層の表面に直接設けられる有機導電層及び該有機導電層を覆う金属層を有することを特徴とする電気光学素子の配列;
を支持する基板を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る実施例は下部電極自体に平坦化機能を付加するものである。そして、有利な実施例に従って、この平坦化機能は絶縁層によって提供される平坦化機能を置き換え得るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
アクティブマトリックスは一般に、電気光学素子に対し供給・駆動する回路の配列、各々の回路を駆動し該回路を通じて電気光学素子に供給する電極の配列を有する。
【0013】
絶縁層は回路及びこのアクティブレイヤーの電極と接触され、特に、これらの回路の部品とこれらの電極とを電気的に絶縁するために設けられる。
【0014】
絶縁層は、それ故に、アクティブマトリックス、特にアクティブマトリックスが有する回路及び電極と、電気光学素子の下部電極との間に挿入される。なお、絶縁層は幾つかのサブレイヤーの形態で構成されてもよい。電気光学素子の下部電極は絶縁層に直接接触する。
【0015】
各々の電気光学素子は一般に上部電極を有する。電気光学素子は例えばELダイオード又は液晶セルである。それ故に、各々の電気光学素子は好ましくは、その下部電極及び上部電極の間に挿入されるEL材料又は液晶材料等の電気光学材料の層を有する。また、好ましくは、上部電極は全ての電気光学素子に供給する1つ且つ同じ共通電極を形成する。
【0016】
絶縁層はアクティブマトリックスを直接覆うため、アクティブマトリックス回路の部品及び電極が基板上に形成する特徴形状が一般に、特に特徴形状の大きさと比較して絶縁層が小さい厚さを有するとき、及び/又は使用された塗布方法の結果として絶縁層が均一な厚さを有するとき、絶縁層の上面に転移される。
【0017】
本発明に係る実施形態では、下部電極の有機導電層のおかげで、アクティブマトリックスの特徴形状が平坦化される。このことは、従来技術より優れた平坦性を有する下部電極が得られる結果となり、これらの電極を備える電気光学素子の性能を改善することに寄与する。
【0018】
ここで、従来技術に関する米国特許文献(US6586764、US5723873、US5719467)もまた、二層下部電極で、その内一層が有機物導電材料で作られる下部電極を提案している。しかし、その有機導電層は本発明と異なり、例えばITOで作られ基板と接触する他方の層と、ダイオードのEL層との間に挿入される。平坦化機能を実現するためには、このような有機導電層の厚さは平坦化されるべき特徴形状の大きさより大きいことが重要である。このような厚さは、構造上の、特に一次の、共振型光キャビティの干渉基準と、もはや両立できないという危険を有する。なお、共振型光キャビティは各々のダイオード内に形成され、光抽出レベルを最適化することを可能とする。このため、下部電極の平坦性の向上は光抽出を犠牲にするという危険を有し、ダイオードの全体性能は改善されない。
【0019】
好ましくは、各々の電気光学素子はまた1つの上部電極を有し、前記電気光学素子は各々が下部電極とこの上部電極との間に挿入された少なくとも1つの有機EL層を有するELダイオードである。また、好ましくは、各々のダイオードについて、下部電極は当該ダイオードの放出光に対して反射性であり、上部電極は同じ放出光に対して半反射性(semireflecting)であり、そしてこれらの電極間の距離は、これらの電極間に前記放出光にとっての共振型光キャビティを形成するのに適している。
【0020】
前記距離は80nm以下が好ましい。この条件は放出光の一次共振を表す。本発明に従って、下部電極の有機導電層は各々のダイオードが形成された共振型光キャビティの外側に位置するので、この構造は、光キャビティ性能及び光抽出性能との調和を害する危険なく、要求される平坦化効果を得るために全体的に望ましい自由度を得ることができる。つまり、最適な光キャビティを得るための手段と、最適な平坦化を得るための手段とが完全に切り離される。ここで、米国特許文献(出願公開US2002/025391)はこの平坦性と光抽出との間の難しい妥協をもたらす従来技術の問題点について触れていない。それは、その文献で扱う電気光学素子は液晶セルだからである。
【0021】
好ましくは、各々の電気光学素子はまた、可視光に対して透明又は半透明の1つの上部電極を含み、この素子の下部電極は当該素子を通して可視光を反射又は半反射する。
【0022】
各々の電気光学素子に供給するための下部電極の有機導電層を覆う金属層は、故に、可視光を反射する役割を有する。可視光を反射することは、米国特許文献(US5705888、US5719467(1つの変形例))にあるような単一の有機導電層から形成される下部電極を使用した場合には通常不可能である。
【0023】
故に、もし電気光学素子が液晶セルであれば、これらのセルは反射によって動作する。表示装置は例えばLCOS(シリコン上液晶)型でもよい。もし電気光学素子が有機ELダイオードであれば、表示装置は表面放出型となる。換言すると、光は基板とは反対側に設けられたダイオードによって放出される。
【0024】
各々の電気光学素子に対し供給するための下部電極を二層構造とすることは、故に、平坦化のための有機導電層と金属層に利点を有する。金属層は一般的に、通常この金属層に接触するキャリア注入層又は輸送層を介して有機EL層と接合するが、その接合での電気特性を最適化するために、特にその仕事関数に関してその金属が適したものとされる。この最適化の方法それ自体はよく知られる方法である。
【0025】
このキャリア注入層又は輸送層は、故に、各々のダイオードの下部電極とEL層との間に挿入される。そのキャリアは、下部電極が陰極の場合には電子であり、下部電極が陽極の場合には正孔である。
【0026】
1つの変形として、各々のダイオードについて、上部電極が陰極、下部電極が陽極である。これは古くからの構造である。別の変形として、各々のダイオードについて、上部電極が陽極、下部電極が陰極である。これは逆にされた構造である。
【0027】
好ましくは、前記表示装置は前記アクティブマトリックス及びダイオード配列の双方を支持する単一の基板1のみを有する。このように、ダイオード配列は単一基板に取り付けられ、少なくとも部分的には、アクティブ層を支持する基板とは反対側に置かれる別の上部基板には取り付けられない。これは、有機EL層、及び適当な場合にはキャリア輸送層及び/又はキャリア注入層は、表示装置の製造中に、下部電極の金属層の上に積まれることを意味する。その場合、これらの層の有機材料は金属層の金属の中に著しくはしみ込まない。逆に、上部基板が存在する場合、電極等も含めたダイオードの種々の層はこの基板の上に既に積まれており、有機物層の有機材料が下部電極の金属層の金属にしみ込んでしまっているであろう。
【0028】
本発明に従った表示装置は、それにもかかわらず、保護用封止層とともに提供されてもよい。そのとき、保護用封止層は上部電極を覆っており、故にダイオードの放出光に対して透明である。そして、ダイオードは単一基板とこの層との間に挿入される。この保護用封止層は堅い(リジッド)又は曲げられる(フレキシブル)シートとしてよい。
【0029】
好ましくは、絶縁層を貫通するビアがないところでは、絶縁層はその領域にわたる厚さの変化が10%以内という一定の厚さを有する。この絶縁層は幾つかのサブレイヤーに細分されてもよい。これらサブレイヤーは、回路の上部又はアクティブマトリックスの電極配列と電気光学素子の下部電極との間に位置する絶縁サブレイヤーのセットを構成する。そして、絶縁層の全体にわたる厚さは前述の特徴形状部分及びその近くにおいてもとりわけ同一である。従って、絶縁層は平坦化機能を実質的に提供しない。故に、下部電極の有機導電層が電気光学素子の性能を高める平坦化機能をほぼ全体的に提供することは明らかである。
【0030】
好ましくは、前記絶縁層の厚さは100nm以下である。この絶縁層はこのように全体にわたって小さな厚さであるので、この層は通常もはや平坦化機能を提供しない。よって、電気光学素子の下部電極の充分な平坦性を得るため、各電気光学素子の下部電極に有機導電層を用いることの利益がさらに大きくなる。
【0031】
好ましくは、前記絶縁層は無機材料で作られる。無機材料として、例えばシリカ、シリコン窒化物、タンタル酸化物(Ta2O5)又は好ましくは高誘電率を有する他の材料を用いることが可能である。無機材料は有利なことに、有機材料よりはるかに安定である。米国特許文献(US6597111、US6765351(6列, 20-27行))に記載されているように、拡散バリア機能を提供するのに適した絶縁材料を選択すると有利である。拡散バリア機能とは、アクティブマトリックスの駆動・供給回路と電気光学素子との間での相互の汚染リスクを回避する機能である。層を形成する通常の塗布方法では、そのような無機材料は平坦化機能を提供するには不適である。よって、電気光学素子の下部電極の充分な平坦性を得るため、各電気光学素子の下部電極に有機導電層を用いることの利益がさらに大きくなる。
【0032】
好ましくは、アクティブマトリックスは電気光学素子に対し供給・駆動する回路の配列を有し、各々の回路は供給出力端子を有する。そして、各々の電気光学素子の下部電極の有機導電層は、ビアによって絶縁層を貫通し、この電気光学素子の下部電極を、電気光学素子に対し供給・駆動する回路の1つの供給出力端子に電気的に接続する。下部電極の有機導電層はこのように回路の供給出力端子と接触するまで各々のビアを貫通する。この層は2つの機能を有する。1つは平坦化、もう1つは回路の出力端子を下部電極に電気的に接続することである。有利なことに、これは有機導電層の堆積前に接続具(しばしばビアと呼ばれる)を各々の穴に堆積するという特定の処理が不要である。
【0033】
各々の供給・駆動回路は通常また、アクティブマトリックスの電極配列の1つの供給電極に接続された供給入力端子も有する。
【0034】
本発明は以下に続く非限定的な例を与える記載、及び添付の図面を参照することによって、より明瞭に理解されるであろう。
【実施例】
【0035】
記載を簡潔にするため、及び、本発明が従来技術に対して与える相違点及び有利な点を明らかにするため、同一の機能を果たす要素には同一の符号を用いる。
【0036】
本発明の第1実施例に従った表示装置の構成について図2を参照して説明する。
【0037】
先述の米国特許文献(US6780688)に記載の方法と同一方法で製造されたアクティブマトリックス11の上に、上部絶縁層14が、従来技術及び図に例示されるように形成される。すなわち、上部絶縁層14は、マトリックスに集積された回路及び電極(図示せず)によって形成される特徴形状を平坦化するために、充分大きな容積の絶縁材料をマトリックス上に設けることにより形成される。従来技術のように、各回路の電流を変調する各TFTの1つの電流電極の位置において、ビア20が上部絶縁層14及びその下にあり得る層を通って形成される。さらに従来技術と同様に、ダイオードの位置を定める隔壁15の配列が形成される。
【0038】
各々のダイオードの位置で、有機導電層161が、この材料がビア20の底まで貫通し、下部電極がアクティブマトリックス11を駆動する各回路にあるTFT12の1つの電流電極と確実に電気的コンタクトするように設けられる。有機導電層には、下部電極としての機能を果たすに充分な導電性を持たせるため、適した導電率を有する有機材料が、それ自体知られた方法で選択される。
【0039】
この層の有機導電材料は、好ましくは次の高分子化合物(ポリマー)及びその混合物から形成されるグループ(ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアミン、ポリアニリン、ポリアセチレン)から選択される。適当な場合には、これらのポリマーは要求レベルの導電率を得るために、それ自体よく知られた方法で他の化合物がドープ及び/又はブレンドされる。
【0040】
表示装置における電気光学素子(ここではダイオード)の下部電極に対し、本発明に従ってその下側の層として有機材料を用いるので、従来技術と比較して、はるかに優れた当該電極の平坦化が実現される。特に、ビア20の窪みレプリカ21は実質的に消滅することがわかる。
【0041】
金属層162はこのように堆積された有機導電層161の表面に設けられ、それ故に非常によく平坦化される。
【0042】
従来技術のように、この金属層162上に有機EL層17、上部電極18、及び保護層19’が堆積される。ここでは、上部電極18は全てのダイオードに共通である。
【0043】
このようにして得られた表示装置の各々のダイオードにおいて、有機導電層161及び金属層162はそのダイオードの下部電極16’を形成する。
【0044】
有機EL層17は一般に発光性有機物サブレイヤー(発光層)の各々の側に、キャリアの輸送サブレイヤー(輸送層)及び/又は注入サブレイヤー(注入層)を含む幾つかの層を有する。ここで、キャリアは陰極側で電子、陽極側で正孔である。
【0045】
このように、キャリアの輸送層及び/又は注入層の1つは下部電極16の金属層162に直接接触する。
【0046】
金属層の金属は、EL層17、特にこの金属が直接接触するキャリア輸送層及び/又は注入層へのキャリア注入特性が最良となるように、それ自体よく知られている方法で選択される。金属の仕事関数はその選択のための周知の判断基準である。
【0047】
好ましくは、この金属層162の厚さは、EL層17によって放出される光に対する反射効果を得るのに充分な厚さとされる。故に、特に上部電極が半反射(semireflecting)するものであるとき、この金属層162と上部電極18との間に光キャビティが存在することになる。
【0048】
ダイオードの放出光の抽出特性を改善するため、例えば特許文献(US6505901、EP1154676、US2003/122481、WO2004/034750、EP1406315、EP1439589、EP1443572)に記載されているように、この光キャビティの高さ及びこのキャビティ内の発光層の位置を調整することが知られている。それ故に、一般に約70nmから80nmの高さを有する共振型光キャビティが得られる。この調整により、電極間にある種々のサブレイヤーの厚さが、これらの厚さの和が70nmから80nmを超えないように決定されることとなる。この70nmから80nmという全体の厚さでは、効果的な平坦化層を設けるための大きな空間は残らない。このために、本発明に従って、平坦化層は電極間の隙間の外側に置かれる。本発明に従って、下部電極の有機導電層161は、先述の特許文献(US6586764、US5723873、US5719467)に記載された電極の有機物層と異なり、光キャビティの外側に位置するため、この有機導電層161は光キャビティの微調整には影響を及ぼさない。従って、この構造は、光キャビティ性能と光抽出性能の調和を害する危険なく、要求される平坦化効果を得るために全体的に望ましい自由度を得ることができる。つまり、最適な光キャビティを得るための手段と、最適な平坦化を得るための手段とが完全に切り離される。
【0049】
下部電極の有機導電層を平坦化する機能は、本発明の第2実施例に例示されるように、絶縁層14の機能を代わりに行ってもよい。第2実施例について図3を参照して説明する。
【0050】
この図に例示されるように、この実施例は第1実施例と以下の点だけが異なる。
アクティブマトリックス11上に堆積される上部絶縁層14’の厚さが、第1実施例のそれよりはるかに小さく、とりわけ100nm以下であり、及び/又は全領域にわたってとりわけ10%以内といったほぼ一定の値を有する。ここでいう厚さは実際には、一方が供給・駆動回路の部品12、13のアクティブマトリックス11への集積上部電極121、131、他方がダイオードの下部電極16’’の有機導電層161’である間に位置する絶縁材料全体の厚さを意味する。変形例によれば、この絶縁層14’は幾つかの絶縁サブレイヤーとして配置されてもよい。
その一方で、ダイオードの下部電極16’’の有機導電層161’の厚さは、第1実施例のそれより大きく、好ましくは100nm以上である。そして、この厚さは、充分な容積を持ち、とりわけアクティブマトリックス11を駆動・供給する回路の部品12、13により形成される特徴形状を平坦化させるように変化する。
【0051】
この層161’の有機導電材料として、平坦化に適した導電性ポリマーが、それ自体よく知られた方法によって選択される。好ましくは、PEDOT-PSSすなわちポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレン・スルホン酸との混合物が用いられる。この導電性ポリマーは液体での処理に応用可能であるとして知られている。それ故に有機導電材料の層が液体処理で設けられ、それによって、要求されるように前記特徴形状を容易に充填することを実現することができる。
【0052】
第1又は第2の実施例の第1の変形例では、隔壁15を設ける処理が省略される。この場合、絶縁層14、14’上に、孔がなく連続した有機物層(すなわち開口がなくフルレイヤーと呼ばれる)が表示装置のアクティブ表面全体を覆うように堆積され、この層には、最終的に先述の有機導電層161、161’と同じつくり(features)となるように、互いに電気的に分離された導電性ポリマーのつくりが形成される。この目的のため、特許文献(US5705888、EP0727100)に記載された何れかの方法が用いられる。それらの文献にて説明されるように、出発原料が絶縁性の連続した有機物層であり、ダイオードの下部電極に対応する領域を導電性にしたものであるか、逆に、出発原料が導電性の連続した有機物層であり、ダイオードの下部電極に対応する領域間に位置するインターダイオード領域を絶縁性にしたものであるかは問題でない。
【0053】
金属層162は、このように堆積された有機導電層161の表面に設けられる。金属層は、例えば、ダイオードの位置だけに金属が積まれるように位置決めされた適当なマスクを介在させた真空蒸着によって設けられる。これは電極を堆積する公知の方法である。手順はそれから上述のように続く。
【0054】
このように、内部で有機導電層161’が連続している表示装置が得られる。この層は連続しているにもかかわらず、非等方性導電率(表面を横切る側が表面に沿う側より実質的に高導電率)を示す有機材料を用いることにより、及び/又は金属層162の各ダイオード固有の要素間に充分な距離を維持することにより、下部電極間の充分な電気絶縁を維持することが可能である。
【0055】
各下部電極間の良好な電気絶縁を得る1つの有利な手段は、金属層162の各要素間にある有機導電層の部分を除去すること、すなわち、金属層162の要素が蒸着された後、例えばプラズマエッチング処理が適用され、金属層162の要素及びその直下の有機導電層161’の要素に著しい影響を与えることなく、金属層162の各要素間にある有機導電層部分を分解及び除去することから成る。
【0056】
この変形例は、その副次的な変形例とともに、隔壁を形成する処理を省くことができ、また、表示装置の上部表面の良好な平坦性が得られるという利点を有する。
【0057】
以上、上面発光アクティブマトリックス型EL表示装置を参照して、本発明について述べてきたが、特許請求の範囲を外れることなく他の型の表示装置に適用し得ることは当業者にとって明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】従来のアクティブマトリックス型表示装置を例示する断面図である。
【図2】従来技術と同様に絶縁層によって平坦化がなされる本発明に係る第1実施例を示す断面図である。
【図3】絶縁層が従来技術よりはるかに薄く、もはや絶縁層によって平坦化がなされない本発明に係る第2実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 基板
11 アクティブマトリックス
12 薄膜トランジスタ(TFT)
13 ストレージキャパシタ
14、14’ 絶縁層
15、15’ 隔壁
16、16’、16’’ 下部電極
161、161’ 有機導電層
162 金属層
17 有機エレクトロルミネッセンス層
18 上部電極
19、19’ 保護層
20 ビア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置であって:
アクティブマトリックス;
該アクティブマトリックスを覆う絶縁層;及び
前記絶縁層上に配置された電気光学素子の配列であって、各々の前記電気光学素子が前記絶縁層の表面に設けられた下部電極を有し、
各々の前記電気光学素子の前記下部電極が、前記絶縁層の表面に直接設けられる有機導電層及び該有機導電層を覆う金属層を有することを特徴とする電気光学素子の配列;
を支持する基板を有する表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置であって、各々の前記電気光学素子が上部電極を有するとともに該電気光学素子が前記下部電極と前記上部電極との間に挿入された少なくとも1つの有機エレクトロルミネッセンス層を有するエレクトロルミネッセンスダイオードであることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の表示装置であって、各々の前記ダイオードについて、前記下部電極が当該ダイオードの放出光に対して反射性であり、前記上部電極が同じ放出光に対して半反射性であることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項2及び3のうち何れかに記載の表示装置であって、各々の前記ダイオードについて、前記下部電極と前記上部電極との間の距離が、これらの電極間に当該ダイオードの前記放出光に対しての共振型光キャビティを形成するのに適していることを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の表示装置であって、前記距離が80nm以下であることを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のうち何れかに記載の表示装置であって、当該表示装置は前記アクティブマトリックス及び前記ダイオードの配列の双方を支持する単一の基板のみを有することを特徴とする表示装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のうち何れかに記載の表示装置であって、前記絶縁層を貫通する如何なるビアもないところでは、前記絶縁層がその領域にわたる厚さの変化が10%以内という一定の厚さを有することを特徴とする表示装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のうち何れかに記載の表示装置であって、前記絶縁層の前記厚さが100nm以下であることを特徴とする表示装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のうち何れかに記載の表示装置であって、前記絶縁層は無機材料で作られることを特徴とする表示装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のうち何れかに記載の表示装置であって、前記アクティブマトリックスが前記電気光学素子に対し供給及び駆動する回路の配列を有するとき、各々の前記回路が供給出力端子を有し、各々の前記電気光学素子の前記下部電極の前記有機導電層がビアによって前記絶縁層を貫通し、前記電気光学素子の下部電極が前記電気光学素子に対し供給及び駆動する前記回路の1つの前記供給出力端子に電気的に接続されることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−294623(P2006−294623A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109004(P2006−109004)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing 
【住所又は居所原語表記】46 Quai A. Le Gallo, F−92100 Boulogne−Billancourt, France
【Fターム(参考)】