説明

不具合原因探索装置および不具合原因探索方法

【課題】専門外の人でも不良や故障の不具合原因を容易にかつ短時間で特定することができる不具合原因探索装置を提供すること。
【解決手段】不具合原因探索装置は、不具合現象データ43と、原因内容データ44と、優先順位算出用データとが関連付けられたデータベース4と、不具合現象の原因内容を表示する原因内容表示手段と、データベース更新手段とを備える。優先順位算出用データは、原因該当回数に基づく発生回数係数と、最新発生日からの経過日数で算出される鮮度係数とを備える。原因内容表示手段は、入力された不具合現象に対応する原因内容を抽出し、その原因内容に対する発生回数係数、鮮度係数に基づいて原因優先順位値を算出し、その原因優先順位値による表示順で各原因内容を表示する。データベース更新手段は、不具合の原因内容が特定された際には、その原因内容に対する原因該当回数および最新発生日を更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場などにおける各種生産ラインの各種装置に故障等の不具合が発生した場合や、生産された製品に不良や故障等の不具合が発生した場合のように、各種の不具合が発生した際に、それらの発生原因を探索する不具合原因探索装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場における生産ラインでは、様々な製造装置が配置されている。これらの複数の製造装置のうち、1台でも故障すると生産ライン全体を停止しなければならない場合も多く、生産効率も低下する。このため、製造装置の故障が発生した場合には、製造装置が停止している時間つまりダウンタイムをできるだけ短くし、装置稼働率を向上することが求められている。
【0003】
このためには、製造装置に不具合(エラー)が発生した場合に、そのエラーコードから発生原因を迅速に判断し、対応する必要がある。
このような不具合発生時の原因究明は複雑であり、かつ、その点検も容易ではない。点検は、専門の保全担当者の経験や知識に頼る必要があり、誰もができるものではない。製品の不良原因追及についても同様である。
【0004】
但し、専門の保全担当者が都度対応することは難しい場合も多く、専門外の作業者でも製品の故障原因の究明や製品の不良原因の究明ができれば、作業効率は大きく向上する。
【0005】
このような専門外の作業者であっても、製品の故障原因や不良原因を究明できるように、表示された質問に順次答えることで、故障原因などを適切に解析する故障原因探索方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開昭62−241062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、過去の故障発生時の情報を反映しておらず、質問に順次答えなければ原因を究明できないため、原因探索に時間が掛かり、効率的ではないという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、専門外の人でも不良や故障の不具合原因を容易にかつ短時間で特定することができる不具合原因探索装置および不具合原因探索方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の不具合原因探索装置は、製品又は装置の不具合現象を示す不具合現象データと、その不具合現象に対応する原因内容を示す原因内容データと、原因内容データの優先順位を特定するための優先順位算出用データとが関連付けられて記憶されたデータベースと、入力された不具合現象に対応する原因内容を表示する原因内容表示手段と、前記データベースを更新するデータベース更新手段とを備え、前記優先順位算出用データは、前記原因内容が実際に不具合現象の原因であった回数を示す原因該当回数に基づいて設定される発生回数係数と、前記原因内容が実際に発生した最新発生日および現在の日付に基づいて算出される鮮度係数とを備え、前記原因内容表示手段は、不具合現象が入力されると、前記不具合現象データから入力された不具合現象を検索し、該当する不具合現象を検索できた場合には、その不具合現象に対応する原因内容を前記原因内容データから抽出し、抽出された原因内容が複数ある場合には、各原因内容に対する発生回数係数および鮮度係数に基づいて原因優先順位値を算出し、算出した原因優先順位値によって設定される表示順で前記各原因内容を表示し、前記データベース更新手段は、不具合の原因内容が特定された際には、その原因内容に対する原因該当回数および最新発生日を更新することを特徴とする。
【0010】
本発明では、不具合が発生して不具合現象を特定した際に、その不具合の原因内容を優先順位の高い順にリスト化して表示することができる。このため、専門の保全担当者でなくても、可能性の高い原因内容から順に故障原因を究明することができる。
従って、不具合の原因究明を最短ルートで行うことができ、不具合原因を容易にかつ短時間で特定することができる。
その上、原因内容の優先順位を設定する際に、原因該当回数に基づく発生回数係数と、最新発生日からの経過日数に基づく鮮度係数によって原因優先順位値を算出して優先順位を設定している。このため、実際に不具合原因となった回数が多く、かつ、前回の発生日からの経過日数が少ない原因内容、つまり比較的頻度の高い原因内容の原因優先順位値が高くなって優先されるため、過去の不具合発生状況を考慮して適切な優先順位を設定できる。従って、不具合原因の究明までの時間をより短縮でき、作業効率等を向上できる。
【0011】
本発明において、前記優先順位算出用データは、前記原因内容の重要度を示しかつ予め設定された原因重要度係数を備え、前記原因内容表示手段は、不具合現象が入力されると、前記不具合現象データから入力された不具合現象を検索し、該当する不具合現象を検索できた場合には、その不具合現象に対応する原因内容を前記原因内容データから抽出し、抽出された原因内容が複数ある場合に、未発生の原因内容に関しては、その原因内容に対する発生回数係数、鮮度係数および原因需要度係数に基づいて原因優先順位値を算出し、発生済みの原因内容に関しては、その原因内容に対する発生回数係数および鮮度係数に基づいて原因優先順位値を算出し、算出した原因優先順位値によって設定される表示順で前記各原因内容を表示し、前記データベース更新手段は、不具合の原因内容が特定された際には、その原因内容に対する原因該当回数および最新発生日を更新することが好ましい。
【0012】
本発明によれば、未発生の原因内容の原因優先順位値を算出する場合には、前記発生回数係数および鮮度係数の他に、ベテランの作業者などによって予め設定された原因重要度係数を用いているので、過去の故障時の情報が利用できない導入初期においても、原因内容の優先順位を適切に設定できる。従って、導入初期の時点でも原因内容を短時間で特定でき、作業効率も向上できる。
その上、原因重要度係数は、未発生の原因内容の原因優先順位値を算出する場合のみに利用されるため、不具合原因探索装置を導入後、時間が経過するに従って原因重要度係数の影響度は低下し、現実の故障発生状態を反映した原因優先順位値を算出でき、この点でも不具合原因の特定を短時間で行うことができる。
【0013】
本発明において、前記発生回数係数は、各不具合現象に対応するすべての原因内容の発生回数の合計値に対する各原因内容の発生回数の割合に基づいて求められ、前記鮮度係数は、各原因内容の最新発生日から現在までの経過日数に基づいて求められ、前記原因重要度係数は、前記発生回数係数および鮮度係数に比べて変化範囲が小さくなる値に予め設定されていることが好ましい。
【0014】
本発明によれば、発生回数係数、鮮度係数および原因重要度係数を適切に設定できる。また、原因重要度係数の変化範囲が他の係数に比べて小さいため、原因優先順位値を算出する際に原因重要度係数の影響を、実際の不具合状況に基づいて設定される発生回数係数および鮮度係数に比べて小さくできる。このため、原因優先順位値を実際の不具合状況に適切に対応した値にすることができる。
【0015】
本発明の不具合原因探索方法は、不具合現象が入力されると、入力された不具合現象を、製品又は装置の不具合現象を示す不具合現象データから検索し、該当する不具合現象を検索できた場合には、その不具合現象に対応する原因内容を、不具合現象に対応する原因内容を示す原因内容データから抽出し、抽出された原因内容が複数ある場合には、前記原因内容が実際に不具合現象の原因であった回数を示す原因該当回数に基づいて設定される発生回数係数と、前記原因内容が実際に発生した最新発生日および現在の日付に基づいて算出される鮮度係数とに基づいて原因優先順位値を算出し、算出した原因優先順位値によって設定される表示順で前記各原因内容を表示し、不具合の原因内容が特定された際には、その原因内容に対する原因該当回数および最新発生日を更新することを特徴とする。
【0016】
本発明においても、前記不具合探索装置と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、不具合が発生して不具合現象を特定した際に、その不具合の原因内容を、実際の不具合発生状況を考慮した優先順位の高い順にリスト化して表示することができる。このため、専門の保全担当者でなくても、可能性の高い原因内容から順に故障原因を究明することができる。
従って、不具合の原因究明を最短ルートで行うことができ、不具合原因を容易にかつ短時間で特定することができる。
【0017】
本発明の不具合原因探索方法は、不具合現象が入力されると、入力された不具合現象を、製品又は装置の不具合現象を示す不具合現象データから検索し、該当する不具合現象を検索できた場合には、その不具合現象に対応する原因内容を、不具合現象に対応する原因内容を示す原因内容データから抽出し、抽出された原因内容が複数ある場合に、未発生の原因内容に関しては、前記原因内容が実際に不具合現象の原因であった回数を示す原因該当回数に基づいて設定される発生回数係数と、前記原因内容が実際に発生した最新発生日および現在の日付に基づいて算出される鮮度係数と、前記原因内容の重要度を示しかつ予め設定された原因重要度係数とに基づいて原因優先順位値を算出し、発生済みの原因内容に関しては、その原因内容に対する前記発生回数係数および鮮度係数に基づいて原因優先順位値を算出し、算出した原因優先順位値によって設定される表示順で前記各原因内容を表示し、不具合の原因内容が特定された際には、その原因内容に対する原因該当回数および最新発生日を更新することを特徴とする。
【0018】
本発明においても、前記不具合探索装置と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、不具合が発生して不具合現象を特定した際に、その不具合の原因内容を、実際の不具合発生状況を考慮した優先順位の高い順にリスト化して表示することができる。このため、専門の保全担当者でなくても、可能性の高い原因内容から順に故障原因を究明することができる。従って、不具合の原因究明を最短ルートで行うことができ、不具合原因を容易にかつ短時間で特定することができる。
さらに、未発生の原因内容の原因優先順位値を算出する場合には、前記発生回数係数および鮮度係数の他に、ベテランの作業者などによって設定された原因重要度係数を用いているので、過去の故障時の情報が利用できない導入初期においても、原因内容の優先順位を適切に設定できる。従って、導入初期の時点でも原因内容を短時間で特定でき、作業効率も向上できる。
その上、原因重要度係数は、未発生の原因内容の原因優先順位値を算出する場合のみに利用されるため、不具合原因探索装置を導入後、時間が経過するに従って原因重要度係数の影響度は低下し、現実の故障発生状態を反映した原因優先順位値を算出でき、この点でも不具合原因の特定を短時間で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
[システム構成]
図1に示すように、本実施形態の不具合原因探索装置1は、サーバ装置2と、操作端末5とを備える。
サーバ装置2は、ホストコンピュータ3と、データベース4とを備える。データベース4は、ハードディスクなどの記録媒体に記録された各種データを備え、ホストコンピュータ3で実行されるデータベース管理ソフトによって管理されている。
【0020】
操作端末5は、サーバ装置2に対するクライアントシステムであり、コンピュータ6と、入力装置7と、表示装置8とを備える。
入力装置7は、キーボードやマウスなどの一般的な入力装置が利用できる。表示装置8は、液晶ディスプレイ等の一般的な表示装置が利用できる。
そして、操作端末5は、一般的なクライアントサーバシステムと同様に、ホストコンピュータ3とネットワークを介して通信可能に構成され、入力装置7で入力された操作やデータをホストコンピュータ3に送信したり、ホストコンピュータ3で処理されたデータベース4のデータ等を受信して表示装置8に表示することができるように構成されている。
【0021】
[データベースの構成]
次に、データベース4に記憶されるデータ構造を図2に示す。
本実施形態の不具合原因探索装置1は、生産ラインに設けられた各種装置の故障原因をものであり、データベース4は、対象となる装置名(装置ナンバー)が記憶される装置データ41と、エラー内容が記憶されるエラーデータ42と、エラー現象(不具合現象)が記憶される不具合現象データ43と、原因内容が記憶される原因内容データ44と、対応手順が記憶される対応手順データ45と、原因該当回数が記憶される原因該当回数データ46と、発生回数係数が記憶される発生回数係数データ47と、原因重要度係数が記憶される原因重要度係数データ48と、鮮度係数が記憶される鮮度係数データ49と、最新発生日が記憶される最新発生日データ50との各データ項目(フィールド)を備えている。
【0022】
装置データ41には、生産ラインに設けられた各種の装置を特定するための装置番号が記憶されている。
エラーデータ42には、各装置において発生する可能性のあるエラー内容が記憶されている。本実施形態では、エラーコードおよびエラー内容を示す文字列が記憶されている。
不具合現象データ43には、各エラー内容に対応し、エラー発生となる不具合現象の内容が記憶されている。本実施形態では、不具合現象を示す文字列が記憶されている。
【0023】
原因内容データ44には、各不具合現象に対応し、その不具合現象の原因となる内容が記憶されている。本実施形態では、原因内容を示す文字列が記憶されている。
対応手順データ45には、各原因内容に対応し、不具合がその原因で発生した場合の対応手順の内容が記憶されている。本実施形態では、対応手順の内容を示す文字列が記憶されているが、対応手順の内容を示す画像データや動画データを記憶してもよい。
【0024】
原因該当回数データ46は、不具合発生時に原因内容データ44に記憶された各原因内容が該当していた場合の回数(原因該当回数)を、原因内容ごとに記憶しているものである。
発生回数係数データ47は、原因内容毎の原因該当回数を、その原因内容が含まれる不具合現象における全ての原因該当回数の合計値で割ったものである。すなわち、各原因該当回数は、各装置名において、エラーデータ42と、不具合現象データ43と、原因内容データ44との組み合わせ毎にカウントされる。また、不具合現象に対応する原因該当回数の合計値は、エラーデータ42および不具合現象データ43の組み合わせ毎に計数できる。
例えば、図2において、エラーデータ42が「24:給材部原料到着タイムオーバー」で、不具合現象データ43が「分離部に原料が無い」の場合、この不具合現象の発生回数の合計は「3+1+1=5」である。従って、この不具合現象において原因内容データ44が「整列部で原料の姿勢が変向しない」の場合の原因該当回数が「3」の場合、発生回数係数は「3/5=0.6」となる。他の原因内容の発生回数係数も同様に算出できる。
なお、原因該当回数が「0(未発生)」の場合、上記割り算の結果はエラーになるため、固定値0.01を割り当てるようにされている。
【0025】
原因重要度係数データ48は、各不具合が発生した際に、前記各原因内容がその不具合原因となる可能性、つまり不具合原因としての重要度を示す係数が記憶されている。
ここで、原因重要度係数データ48に記憶される原因重要度係数の具体的な値は、専門の保全担当者等が経験に基づいて設定している。本実施形態では、各不具合の発生原因としてあげられた複数の不具合原因の重要度をベテランの作業者が判断し、重要度によって係数を設定している。具体的には、表1に示すように、重要度をA〜Fまでランク分けし、各ランクに対応して係数を1.0から0.75まで0.05間隔で設定している。
【0026】
【表1】

【0027】
鮮度係数データ49には、最新の発生日に基づいて算出された鮮度係数が記憶されている。具体的には、原因内容の不具合が発生した最新発生日からの経過日数を求め、表2に示すように、その経過日数に応じて鮮度係数を最大1.0から0.1毎に減少させた値で設定され、未発生の場合には、0.01に設定されている。本実施形態では、経過日数が30日経過する毎に鮮度係数を変化させている。
【0028】
【表2】

【0029】
最新発生日データ50には、各原因内容の不具合が発生した最新の日付データが記憶されている。また、未発生の場合には、空欄とされている。
【0030】
[不具合原因探索処理]
次に、不具合原因探索装置1を用いた不具合原因探索処理に関し、図3のフローチャートを参照して説明する。
生産ラインで故障(エラー)が発生した場合、作業者は、操作端末5の入力装置7を操作し、不具合原因探索処理を開始する。
この際、コンピュータ6は、作業者によって不具合原因探索処理を行うための操作が行われると、表示装置8に図4に示す保全記録フォーム10を表示する(S1)。具体的には、操作端末5においてブラウザを起動し、所定のURL(Universal Resource Locater)を入力したり、予め設定されたリンクをクリックすると、そのリンク先であるホストコンピュータ3が図4の保全記録フォーム10をコンピュータ6に送信し、表示装置8に表示させる。
すなわち、本実施形態では、ブラウザを介して操作端末5およびサーバ装置2間で通信が行われ、操作端末5では作業者による入力操作やサーバ装置2での処理結果の表示処理を行い、サーバ装置2では操作端末5での入力に基づく各種処理を実行するクライアントサーバシステムを構成している。このため、本発明の原因内容表示手段およびデータベース更新手段は、サーバ装置2および操作端末5によって構成される。そして、入出力処理は主に操作端末5で行われるが、その他の処理は主にサーバ装置2で実行される。
【0031】
次に、サーバ装置2は、操作端末5における作業者の入力に基づき、故障が発生した装置を選択する(S2)。すなわち、保全記録フォーム10には、生産ラインに配置された各種装置がリスト表示されて選択可能な装置入力欄11が設けられている。このため、作業者は、装置入力欄11において故障が発生した装置を選択して入力することができる。
なお、生産ラインを制御するシステムから情報を得ることで、故障が発生した装置を自動的に入力できるように構成してもよい。
【0032】
次に、サーバ装置2は、操作端末5における作業者の入力によって、エラーコードが選択されたか否かを判断する(S3)。保全記録フォーム10には、エラーコードを選択入力可能なエラーコード入力欄12が設けられている。このため、サーバ装置2は、作業者の入力操作で、エラーコード入力欄12においてエラーコードを選択入力されたか否かを判断する。
なお、エラーコード入力欄12においては、装置入力欄11で選択された装置に対応するエラーコードのみをリスト表示して選択できるようにすることで、操作性を向上している。
【0033】
サーバ装置2は、S3でエラーコードが選択された場合、操作端末5における作業者の入力によって、不具合の現象が選択されたか否かを判断する(S4)。保全記録フォーム10には、現象を選択可能な現象入力欄13が設けられている。このため、サーバ装置2は、作業者の入力操作で、現象入力欄13において現象が選択入力されたか否かを判断する。
なお、現象入力欄13においても、エラーコード入力欄12で選択されたエラーコードに対応する現象のみをリスト表示して選択できるようにすることで、操作性を向上している。
【0034】
サーバ装置2は、S4で現象が選択入力されると、その選択された現象に対応する原因内容の原因優先順位値を計算する(S5)。サーバ装置2は、次のような計算式で原因優先順位値を求めている。
すなわち、原因該当回数が「0」つまり未発生の原因内容に関しては、「原因優先順位値=発生回数計数×鮮度計数×原因重要度計数」で算出している。
一方、原因該当回数が「0」でない原因内容に関しては、「原因優先順位値=発生回数計数×鮮度計数」で算出している。
すなわち、ベテランの作業者の経験に基づいて人為的に設定される原因重要度計数は、導入初期の原因優先順位を設定するために用いられる。このため、過去に実際に該当した原因内容の優先順位値の算出においては、原因重要度計数は用いられない。
図2には、エラー発生が2008年1月15日であった場合に、S5で計算される原因優先順位値の算出例が記載されている。
【0035】
そして、サーバ装置2は、S5で計算された原因優先順位値が大きい順に原因内容をリスト化し、保全記録フォーム10の原因優先順位リスト14に表示する(S6)。例えば、図4に示すように、装置が「EK3200」、エラーコードが「24:供給部原料到着タイムオーバー」、現象が「分離部に原料が無い」の場合、図2に示すように6種類の原因内容がある。ここで、各原因優先順位値が図2に示す値であった場合、原因優先順位値が「0.54」で一番大きい原因内容「整列部で原料の姿勢が変向しない」が原因優先順位リスト14の一番目に表示される。同様に、他の原因内容も、原因優先順位値が大きい順に原因優先順位リスト14に表示される。
【0036】
次に、サーバ装置2は、操作端末5における作業者の入力によって、原因内容が選択されたか否かを判断する(S7)。すなわち、作業者は、保全記録フォーム10の原因優先順位リスト14に表示された順番で装置の状態(確認項目)を確認し、一致する状態があれば、つまりエラー発生の原因が特定された場合には、その原因内容欄の「NG」を選択する。このため、サーバ装置2は、原因内容欄の入力の有無を確認して原因内容が選択されたか否かを判断する。
【0037】
S7で原因内容の選択があった場合、サーバ装置2は、原因優先順位リスト14に対応手順を表示する(S8)。すなわち、サーバ装置2は、データベース4から、原因内容に対応する対応手順を読み出し、図4に示すように、原因優先順位リスト14の原因内容が表示された欄に、対応手順を表示する。
【0038】
作業者は、原因優先順位リスト14に表示された対応手順に従って、装置の復元作業を行う。そして、装置を復元できた場合には、原因優先順位リスト14に対応結果を入力する。
サーバ装置2は、操作端末5における作業者の入力によって、対応結果入力があったか否かを判断する(S9)。
【0039】
S9で対応結果の入力があった場合、サーバ装置2は、保全記録をデータベース4に登録する(S10)。すなわち、サーバ装置2は、該当した原因内容の原因該当回数データ46に「1」を加算して更新するとともに、最新発生日データ50の日付を更新する。また、原因該当回数データ46の更新に伴い、発生回数係数データ47も新たに算出して更新する。
【0040】
S10の登録処理が完了すると、サーバ装置2は、操作端末5の表示装置8に「登録されました」の完了メッセージを表示し(S11)、不具合原因探索処理を終了する。
【0041】
なお、S3でエラーコードの選択が無かった場合、サーバ装置2は新規エラーコードの入力処理を行う(S21)。すなわち、作業者が保全記録フォーム10の新規エラーコード入力欄15に数字およびエラー内容を示す文字列を入力し、その横の追加ボタンを押すと、サーバ装置2は入力されたデータをホストコンピュータ3のメモリに記憶する。
【0042】
また、S4で現象選択が無かった場合と、S21で新規エラーコードが入力された場合は、サーバ装置2は新規現象の入力処理を行う(S22)。すなわち、作業者が保全記録フォーム10の新規現象入力欄16に、新規現象の文字列を入力し、その横の追加ボタンを押すと、サーバ装置2は入力されたデータをホストコンピュータ3のメモリに記憶する。
【0043】
さらに、S7で原因内容の選択が無かった場合と、S22で新規現象が入力された場合は、サーバ装置2は新規原因内容の入力処理を行う(S23)。すなわち、図示を省略するが、サーバ装置2は、保全記録フォーム10に、新規原因内容の入力欄を表示し、作業者が新規原因内容を入力して追加ボタンを押すと、サーバ装置2は入力されたデータをホストコンピュータ3のメモリに記憶する。
【0044】
また、S9で対応結果の入力が無かった場合と、S23で新規原因内容が入力された場合は、サーバ装置2は新規対応手順の入力処理を行う(S24)。すなわち、図示を省略するが、サーバ装置2は、保全記録フォーム10に、新規対応手順の入力欄を表示し、作業者が新規対応手順を入力して追加ボタンを押すと、サーバ装置2は入力されたデータをホストコンピュータ3のメモリに記憶する。
【0045】
そして、S24の新規対応手順の入力までが完了すると、サーバ装置2は確認ボタン等を表示して作業者の確認を求め、作業者が確認すると、各データをデータベース4のエラーデータ42、不具合現象データ43、原因内容データ44、対応手順データ45に追加登録する(S10)。
その後、S11の完了メッセージを表示して不具合原因探索処理を終了する。
【0046】
上述した本実施形態によれば、次のような効果を奏することができる。
(1)サーバ装置2は、故障が発生してエラーコードおよび現象を特定した際に、その故障の原因内容を優先順位の高い順にリスト化して原因優先順位リスト14に表示しているので、専門の保全担当者でなくても、可能性の高い原因内容から順に故障原因を究明することができる。
このため、専門の保全担当者が行う場合と同様に、故障原因や不良原因の究明手順を最短ルートで作業できるため、原因調査時間を短縮できる。従って、専門の保全担当者がいない場合でも、装置の復元までの時間を短縮でき、生産ラインでのダウンタイムを短縮できて装置の稼働率を向上でき、作業効率や生産効率を向上できる。
【0047】
(2)原因内容の優先順位を設定する際に、基本的には、原因該当回数に基づく発生回数係数と、最新発生日からの経過日数に基づく鮮度係数によって原因優先順位値を算出して優先順位を設定している。すなわち、生産ラインにおいて、故障原因となった回数が多く、かつ、前回の発生日からの経過日数が少ない原因内容、つまり比較的頻度の高い原因内容の原因優先順位値が高くなって優先されるため、現実の生産ラインの状況を考慮して適切な優先順位を設定できる。従って、この点でも、原因の究明までの時間を短縮でき、作業効率等を向上できる。
【0048】
(3)また、未発生の原因内容の原因優先順位値を算出する場合には、前記発生回数係数および鮮度係数の他に、ベテランの作業者などによって設定された原因重要度係数を用いているので、過去の故障時の情報が利用できない導入初期においても、原因内容の優先順位を適切に設定できる。従って、導入初期の時点でも原因内容を短時間で特定でき、作業効率も向上できる。
その上、原因重要度係数は、未発生の原因内容の原因優先順位値を算出する場合のみに利用されるため、不具合原因探索装置1を導入後、時間が経過するに従って原因重要度係数の影響度は低下し、現実の故障発生状態を反映して原因優先順位値が算出されることになる。このため、仮に、原因重要度係数の設定が適切でなかったとしても、時間が経過すると共に、原因優先順位値を自動的に適切な値に更新することができる。
【0049】
(4)サーバ装置2は、S21〜S24において、新規の各データを登録できる機能も備えているため、新たな故障現象や、原因、対応手順などが生じても、これらのデータを逐次登録することができ、データベース4を容易に整備することができる。
従って、使用するにしたがって使い勝手を向上でき、不具合原因を最短ルートで特定して対応することができる。
【0050】
(5)データベース4には、各原因内容に対応する対応手順も登録されているため、故障原因を特定するのと同時に対応手順も指示することができ、専門の保全担当者でなくても、装置の復元作業を容易に行うことができる。
【0051】
〔変形例〕
なお、本発明を実施するための最良の構成などは、以上の記載で開示されているが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、前記実施形態では、原因重要度係数は、原因内容が未発生の場合のみ利用されていたが、発生時においても利用するようにしてもよい。この場合でも、原因重要度係数は、その係数値の変化幅が他の係数に比べて小さいため、原因優先順位値を算出する際の影響度は小さく、発生回数係数および鮮度係数の影響が大きいため、現実の故障発生状態を優先しつつ、ベテラン作業者の経験も加味して原因優先順位値を算出することができる。
【0052】
また、原因内容が未発生の場合も、原因重要度係数を用いずに、発生回数係数および鮮度係数のみで原因優先順位値を算出してもよい。この場合、不具合原因探索装置1の導入初期には、原因優先順位リスト14の表示順が適切にならない可能性があるが、運用を継続すれば表示順を適切にすることができる。
【0053】
また、本発明の不具合原因探索装置1は、生産ラインにおける各種装置の故障原因を探索する場合に限らず、製造された各種製品に不良がある場合や故障が発生した際にそのエラー原因(不良原因や故障原因)を探索する場合にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態に係る不具合原因探索装置の構成を示す図である。
【図2】本実施形態のデータベースの内容を説明する説明図である。
【図3】本実施形態の不具合原因探索方法を示すフローチャートである。
【図4】本実施形態の表示装置に表示される保全記録フォームを示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1…不具合原因探索装置、2…サーバ装置、3…ホストコンピュータ、4…データベース、5…操作端末、6…コンピュータ、7…入力装置、8…表示装置、10…保全記録フォーム、41…装置データ、42…エラーデータ、43…不具合現象データ、44…原因内容データ、45…対応手順データ、46…原因該当回数データ、47…発生回数係数データ、48…原因重要度係数データ、49…鮮度係数データ、50…最新発生日データ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品又は装置の不具合現象を示す不具合現象データと、その不具合現象に対応する原因内容を示す原因内容データと、原因内容データの優先順位を特定するための優先順位算出用データとが関連付けられて記憶されたデータベースと、
入力された不具合現象に対応する原因内容を表示する原因内容表示手段と、
前記データベースを更新するデータベース更新手段とを備え、
前記優先順位算出用データは、前記原因内容が実際に不具合現象の原因であった回数を示す原因該当回数に基づいて設定される発生回数係数と、前記原因内容が実際に発生した最新発生日および現在の日付に基づいて算出される鮮度係数とを備え、
前記原因内容表示手段は、
不具合現象が入力されると、前記不具合現象データから入力された不具合現象を検索し、
該当する不具合現象を検索できた場合には、その不具合現象に対応する原因内容を前記原因内容データから抽出し、
抽出された原因内容が複数ある場合には、各原因内容に対する発生回数係数および鮮度係数に基づいて原因優先順位値を算出し、
算出した原因優先順位値によって設定される表示順で前記各原因内容を表示し、
前記データベース更新手段は、不具合の原因内容が特定された際には、その原因内容に対する原因該当回数および最新発生日を更新する
ことを特徴とする不具合原因探索装置。
【請求項2】
請求項1に記載の不具合原因探索装置において、
前記優先順位算出用データは、前記原因内容の重要度を示しかつ予め設定された原因重要度係数を備え、
前記原因内容表示手段は、
不具合現象が入力されると、前記不具合現象データから入力された不具合現象を検索し、
該当する不具合現象を検索できた場合には、その不具合現象に対応する原因内容を前記原因内容データから抽出し、
抽出された原因内容が複数ある場合に、未発生の原因内容に関しては、その原因内容に対する発生回数係数、鮮度係数および原因需要度係数に基づいて原因優先順位値を算出し、
発生済みの原因内容に関しては、その原因内容に対する発生回数係数および鮮度係数に基づいて原因優先順位値を算出し、
算出した原因優先順位値によって設定される表示順で前記各原因内容を表示し、
前記データベース更新手段は、不具合の原因内容が特定された際には、その原因内容に対する原因該当回数および最新発生日を更新する
ことを特徴とする不具合原因探索装置。
【請求項3】
請求項2に記載の不具合原因探索装置において、
前記発生回数係数は、各不具合現象に対応するすべての原因内容の発生回数の合計値に対する各原因内容の発生回数の割合に基づいて求められ、
前記鮮度係数は、各原因内容の最新発生日から現在までの経過日数に基づいて求められ、
前記原因重要度係数は、前記発生回数係数および鮮度係数に比べて変化範囲が小さくなる値に予め設定されている
ことを特徴とする不具合原因探索装置。
【請求項4】
不具合現象が入力されると、入力された不具合現象を、製品又は装置の不具合現象を示す不具合現象データから検索し、
該当する不具合現象を検索できた場合には、その不具合現象に対応する原因内容を、不具合現象に対応する原因内容を示す原因内容データから抽出し、
抽出された原因内容が複数ある場合には、前記原因内容が実際に不具合現象の原因であった回数を示す原因該当回数に基づいて設定される発生回数係数と、前記原因内容が実際に発生した最新発生日および現在の日付に基づいて算出される鮮度係数とに基づいて原因優先順位値を算出し、
算出した原因優先順位値によって設定される表示順で前記各原因内容を表示し、
不具合の原因内容が特定された際には、その原因内容に対する原因該当回数および最新発生日を更新する
ことを特徴とする不具合原因探索方法。
【請求項5】
不具合現象が入力されると、入力された不具合現象を、製品又は装置の不具合現象を示す不具合現象データから検索し、
該当する不具合現象を検索できた場合には、その不具合現象に対応する原因内容を、不具合現象に対応する原因内容を示す原因内容データから抽出し、
抽出された原因内容が複数ある場合に、未発生の原因内容に関しては、前記原因内容が実際に不具合現象の原因であった回数を示す原因該当回数に基づいて設定される発生回数係数と、前記原因内容が実際に発生した最新発生日および現在の日付に基づいて算出される鮮度係数と、前記原因内容の重要度を示しかつ予め設定された原因重要度係数とに基づいて原因優先順位値を算出し、
発生済みの原因内容に関しては、その原因内容に対する前記発生回数係数および鮮度係数に基づいて原因優先順位値を算出し、
算出した原因優先順位値によって設定される表示順で前記各原因内容を表示し、
不具合の原因内容が特定された際には、その原因内容に対する原因該当回数および最新発生日を更新する
ことを特徴とする不具合原因探索方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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