説明

不具合検出装置および画像形成装置

【課題】画像処理を行う複数の画像処理手段のうち、不具合が発生したものを特定する。
【解決手段】記憶部12に記憶された画像データD1,D2,D3の画像と、記憶部12に記憶された画像データDr1’,Dr2’,Dr3’の画像とをそれぞれ比較し、一致しない部分があるか否かを判定する。例えば第2画像処理部152に不具合が発生している場合には、画像データDr1,Dr2,Dr3の画像を180度回転させると、画像データDr2に含まれている異常発生位置も180度回転することになる。よって、画像データD2の画像と画像データDr2’の画像とが一致しないことになる。制御部11は、一致しない画像の画像データを出力した画像処理部151〜153のうち、画像処理の順序が最先の画像処理部、つまり、最も前段にある第2画像処理部152を不具合発生箇所として特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理を行う装置において不具合が発生した箇所を特定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化や高密度化に加え、多層配線などのチップ構造の複雑化により、LSIの故障が増大している。また、組み込みソフトウェアの大規模化や複雑化に伴ってバグの発生機会が増加し、さらに、そのバグによって異常な動作が引き起こされることもある。例えば複写機やプリンタなどの画像形成装置にLSIが搭載されている場合には、上記のようなハードウェアやソフトウェアの不具合により、画像処理が適切に行われずに、画像に異常が発生することがある。この異常には、例えば有色画素の濃度が局所的に濃くなる“黒スジ”と呼ばれる現象や、有色画素が消えてしまう“白ヌケ”と呼ばれる現象のほか、画像の色味が意図していたものとは異なってしまったり、画像データがデータ化けによって乱れてしまうなどといったものある。
【0003】
このように、画像に異常が発生した場合には、ハードウェアやソフトウェアの不具合の発生箇所を速やかに特定し、その発生箇所に係る部品を修理又は交換する必要がある。ただし、この不具合の発生箇所の特定は一般には容易ではない。そこで、例えば特許文献1では、不具合発生時の状況を把握するために、データバスの状態を記録及び通知する方法が提案されている。また、特許文献2では、不具合が発生したときになされた操作の手順や不具合の内容を記録する方法が提案されている。
【特許文献1】特開平1−106151号公報
【特許文献2】特開2001−109030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、画像処理を行う複数の画像処理手段のうち、不具合が発生したものを特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するために、本発明の第1の構成に係る不具合検出装置は、画像データに対する画像処理を決められた順序で実行する複数の画像処理手段と、各々の前記画像処理手段によりそれぞれの画像処理が実行された結果である各画像データを記憶する第1記憶手段と、前記複数の画像処理手段によって画像処理が実行される前の画像データに対し、互いに可逆の関係にある第1の処理又は第2の処理のうちの第1の処理を施す第1可逆処理手段と、前記第1可逆処理手段によって第1の処理が施された画像データに対し前記各画像処理手段によりそれぞれの画像処理が実行された結果である各画像データに対して、前記第2の処理を施す第2可逆処理手段と、前記第2可逆処理手段により前記第2の処理が施された各画像データを記憶する第2記憶手段と、前記第1記憶手段に記憶された各画像データと、前記第2記憶手段に記憶された各画像データとの間で、共通の前記画像処理手段によって画像処理が実行された画像データどうしを比較する比較手段と、前記比較手段によって比較された画像データどうしが一致していない場合、当該一致しない画像データに画像処理を実行した画像処理手段を、不具合が発生している画像処理手段として特定して報知する特定手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の第2の構成に係る不具合検出装置は、画像データに対する画像処理を決められた順序で実行する複数の画像処理手段と、第1の画像データに対し、各々の前記画像処理手段によりそれぞれの画像処理が実行された結果である各画像データを記憶する第1記憶手段と、前記第1の画像データの画像を所定の角度だけ回転させた第2の画像データを取得し、取得した第2の画像データに対し各々の前記画像処理手段によりそれぞれの画像処理が実行された結果である各画像データを得て、さらに、当該各画像データに対して、前記所定の角度の回転とは逆方向に当該所定の角度だけ回転させる処理を施す処理手段と、前記処理手段により回転させられた各画像データを記憶する第2記憶手段と、前記第1記憶手段に記憶された各画像データと、前記第2記憶手段に記憶された各画像データとの間で、共通の前記画像処理手段によって画像処理が実行された画像データどうしを比較する比較手段と、前記比較手段によって比較された画像データどうしが一致していない場合、当該一致しない画像データに画像処理を実行した画像処理手段を、不具合が発生している画像処理手段として特定して報知する特定手段とを備えることを特徴とする不具合検出装置を提供する。
【0007】
上記不具合検出装置において、前記特定手段は、前記比較手段による比較の結果が一致しない画像データに画像処理を実行した画像処理手段を特定し、特定した画像処理手段が単数の場合には、当該画像処理手段を、不具合が発生していると画像処理手段として特定し、特定した画像処理手段が複数の場合には、画像処理を実行する順序が最先の画像処理手段を、不具合が発生していると画像処理手段として特定するようにしてもよい。
【0008】
また、上記不具合検出装置において、前記特定手段は、前記比較手段による比較の結果が全て一致した場合には、前記複数の画像処理手段のいずれにも不具合が発生していないと判定し、その旨を報知するようにしてもよい。
【0009】
また、上記不具合検出装置において、前記第1記憶手段に記憶された各画像データが表す画像と、前記第2記憶手段に記憶された各画像データが表す画像とを表示手段に表示させる表示制御手段と、前記表示手段に表された画像に異常があるか否かを選択するユーザの操作を受ける操作手段とを備え、前記特定手段は、前記比較手段による比較の結果が全て一致した場合において、前記操作手段が受け付けたユーザの操作によって画像に異常があることが選択されると、前記複数の画像処理手段のうち画像処理を実行する順序が最先の画像処理手段の画像処理よりも前に、前記画像データに対する処理を行う処理手段に不具合が発生していることを特定して報知するようにしてもよい。
【0010】
また、上記第1の構成に係る不具合検出装置において、前記第1可逆処理手段によって第1の処理が施されていない画像データに対し複数の前記画像処理手段による画像処理を経た画像データ、又は、前記第1可逆処理手段によって第1の処理が施された画像データに対し複数の前記画像処理手段による画像処理を経た画像データに基づいた画像を画像形成手段に形成させる形成制御手段と、前記画像形成手段によって形成された画像に異常があるか否かを選択するユーザの操作を受け付ける操作手段とを備え、前記特定手段は、前記比較手段による比較の結果が全て一致した場合において、前記操作手段が受け付けたユーザの操作によって画像に異常があることが選択されると、前記複数の画像処理手段のうち画像処理を実行する順序が最後の画像処理手段の画像処理よりも後に、前記画像データに対する処理を行う処理手段に不具合が発生していることを特定して報知するようにしてもよい。
【0011】
また、上記第2の構成に係る不具合検出装置において、前記第1の画像データに対し複数の前記画像処理手段による画像処理を経た画像データ、または、前記第2の画像データに対し複数の前記画像処理手段による画像処理を経た画像データに基づいた画像を画像形成手段に形成させる形成制御手段と、前記画像形成手段によって形成された画像に異常があるか否かを選択するユーザの操作を受け付ける操作手段とを備え、前記特定手段は、前記比較手段による比較の結果が全て一致した場合において、前記操作手段が受け付けたユーザの操作によって画像に異常があることが選択されると、前記複数の画像処理手段のうち画像処理を実行する順序が最後の画像処理手段の画像処理よりも後に、前記画像データに対する処理を行う処理手段に不具合が発生していることを特定して報知するようにしてもよい。
【0012】
また、上記第1の構成に係る不具合検出装置において、前記可逆の処理は、画像を回転する処理と、線対称となる画像を生成する処理と、画像の全部又は一部を或る方向に沿って移動する処理と、画像データを構成する値について、予め決められた第1の値と第2の値との対応関係に基づき一方の値を他方の値に変換する処理とのうち、少なくともいずれか1つにおける可逆の処理を含むことが望ましい。
【0013】
また、本発明は、上記の不具合検出装置と、前記複数の画像処理手段から供給される画像データに応じた画像を形成する画像形成手段とを備えることを特徴とする画像形成装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、画像処理を行う複数の画像処理手段のうち、不具合が発生したものを特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態の構成について図面を参照しつつ説明する。
【0016】
(1)構成
図1は、画像形成装置100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、画像形成装置100は、制御部11と、記憶部12と、表示操作部13と、4つの画像転送部(第1画像転送部141、第2画像転送部142、第3画像転送部143及び第4画像転送部144)と、3つの画像処理部(第1画像処理部151、第2画像処理部152及び第3画像処理部153)と、画像読取部16と、画像形成部17とを備えている。制御部11は、例えばCPUや各種メモリからなり、そのメモリや記憶部12に記憶されたプログラムに記述された手順に従って、画像形成装置100の全体を制御する。表示操作部13は、例えばタッチパネルであり、ユーザによる操作を受け付ける操作手段として機能するとともに、ユーザに対する対話画面や各種の画像を表示する表示手段としても機能する。画像読取部16は、例えばスキャナであり、図示せぬ光源、結像レンズおよびラインセンサを有しており、被撮像物に光を照射し、その反射光の強度に基づいて画像データを生成して出力する。この画像データは画像形成装置100に入力されることになるから、画像読取部16は、画像形成装置100に画像データを入力する入力手段として機能する。
【0017】
第1画像処理部151、第2画像処理部152及び第3画像処理部153は、画像データに対してそれぞれ異なる画像処理を行うASIC(Application Specific Integrated Circuit)やLSI(Large Scale Integration)である。第1画像処理部151は、画像の背景に関する背景処理、画像の変倍処理又は回転処理などの第1の画像処理を行って、その処理結果である画像データを出力する。第2画像処理部152は、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の画像データをC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の画像データに変換するなどの色変換処理や、画像の解像度を変換する解像度変換処理などの第2の画像処理を行って、その処理結果である画像データを出力する。第3画像処理部153は、スクリーン処理などの第3の画像処理を行って、その処理結果である画像データを出力する。これらの画像処理は、第1の画像処理→第2の画像処理→第3の画像処理というように、予め決められた順序で実行されるようになっている。
【0018】
第1画像転送部141、第2画像転送部142、第3画像転送部143及び第4画像転送部144はそれぞれ、前段にある構成部品から受け取った画像データを、記憶部12と、後段にある構成部品とにそれぞれ転送する。ここでいう「前段」とは、この画像形成装置100において画像データが流れる方向の上流側のことであり、後段とはその下流側のことである。例えば第1画像転送部141は、前段にある画像読取部16から受け取った画像データを、記憶部12に転送してそこに記憶させると共に、後段にある第1画像処理部151に転送する。また、第2画像転送部142は、前段にある第1画像処理部151から受け取った画像データを、記憶部12に転送してそこに記憶させると共に、後段にある第2画像処理部152に転送する。第3画像転送部143は、前段にある第2画像処理部152から受け取った画像データを、記憶部12に転送してそこに記憶させると共に、後段にある第3画像処理部153に転送する。第4画像転送部144は、前段にある第3画像処理部153から受け取った画像データを、記憶部12に転送してそこに記憶させるとともに、後段にある画像形成部17に転送する。
なお、以下の説明においては、第1画像処理部151、第2画像処理部152及び第3画像処理部153のことを、「画像処理部151〜153」と総称することがある。同様に、第1画像転送部141、第2画像転送部142、第3画像転送部143及び第4画像転送部144のことを、「画像転送部141〜144」と総称することがある。
【0019】
画像形成部17は、C,M,Y,Kのトナー毎に設けられた画像形成ユニットを備えており、第4画像転送部144から転送されてくる画像データに応じた画像を用紙などの記録媒体に形成して出力する。各々の画像形成ユニットは、感光体ドラム、帯電部、露光部、現像部、転写部及び定着部を有する。感光体ドラムは、軸を中心にして所定の速度で周回するドラム状の部材であり、帯電部によって所定の電位に帯電させられる。露光部は、帯電した感光体ドラムにレーザ光を照射して静電潜像を形成する。現像部は、感光体ドラムに形成された静電潜像にトナーを付着させてトナー像として現像する。転写部は、感光体ドラムに現像された各色のトナー像を用紙に転写する。定着部は用紙に転写されたトナー像をその用紙に定着させてから機外に排出する。
【0020】
(2)動作
次に、画像形成装置100の動作を説明する。
本実施形態に係る画像形成装置100における動作モードには、「故障検出モード」と、「通常モード」とがある。「故障検出モード」とは、画像形成装置100が用紙に画像を形成するときに、画像処理部151〜153などに不具合が発生しているか否かを検出するときの動作モードである。一方、「通常モード」とは、画像形成装置100が上記のような不具合検出を行うことなく、与えられた画像データに応じた画像形成処理を行う通常の動作モードのことをいう。この動作モードの設定方法については、例えばユーザが表示操作部13を操作して所望する動作出モードを指定するようにしてもよいし、制御部11が所定期間毎に「通常モード」から「故障検出モード」に切り替え、その故障検出モードにおける不具合の検出処理が完了したら、再び「通常モード」に戻すようにしてもよい。
【0021】
「故障検出モード」において、制御部11は、以下に説明する第1動作例1〜第3動作例を行う。以下の各動作例では、画像読取部16によって原稿から読み取られた画像を用紙に複写する場合を例に挙げて説明する。
(2−1)第1動作例
ユーザが画像読取部16に原稿をセットし、表示操作部13を操作して原稿の複写を指示すると、制御部11は、画像読取部16に原稿の画像を読み取らせる。このとき画像読取部16によって生成された画像データは、まず第1画像転送部141に供給され、これに応じて、制御部11が図2に示す処理を開始する。
【0022】
図2において、制御部11は、画像処理部151〜153及び画像転送部141〜144を制御して、画像読取部16から画像形成装置100に入力された画像データに対し前述した第1の画像処理、第2の画像処理及び第3の画像処理を順次行わせると共に、各々の画像処理の結果である各画像データを記憶部12に転送させ、そこに記憶させる(ステップS1)。
【0023】
このステップS1における処理の一例を、図3を参照しながら説明する。
画像読取部16によって図3の上段に示すような画像データDが生成された場合、この画像データDは、第1画像転送部141によって、記憶部12に転送されてそこに記憶させられると共に、第1画像処理部151に転送される。次に、第1画像処理部151は、この画像データDに対して、前述した第1の画像処理を実行する。この第1の画像処理の結果である画像データD1は、第2画像転送部142によって、記憶部12に転送されてそこに記憶させられると共に、第2画像処理部152に転送される。次に、第2画像処理部152は、第2画像転送部142から転送されてくる画像データD1に対して、前述した第2の画像処理を実行する。この第2の画像処理の結果である画像データD2は、第3画像転送部143によって、記憶部12に転送されてそこに記憶させられると共に、第3画像処理部153に転送される。次に、第3画像処理部153は、第3画像転送部143から転送されてくる画像データD2に対して、前述した第3の画像処理を実行する。この第3の画像処理の結果である画像データD3は、第4画像転送部144によって、記憶部12に転送されてそこに記憶させられると共に、画像形成部17に転送される。画像形成部17は、第4画像転送部144から転送されてくる画像データD3に基づいた画像を用紙に形成する。
【0024】
以上の処理により、記憶部12には、画像データD,D1,D2,D3が記憶されることになる。また、第1画像処理、第2画像処理及び第3画像処理を経た画像が形成された用紙が画像形成部17から出力されることになる。
【0025】
ここで、例えば第2画像処理部152に何らかの不具合が発生していると仮定する。この場合、この第2画像処理部152における第2画像処理の結果である画像データD2には、画質の劣化や欠陥などの何らかの異常が含まれているはずである。図3の画像データD2における「×」印は、この異常が発生している様子を象徴的に表現したものであり、その「×」印の位置は異常が発生している画像上の位置を表している。以降の図5,7,8においても、この「×」印が意味するところは同じである。このとき、第2画像処理部152の後段の第3画像処理部153には一切の不具合が発生していないとしても、この第3画像処理部153に画像データD2が供給される時点で、既にその画像データD2に異常が含まれているはずである。よって、第3画像処理部153による第3画像処理の結果である画像データD3においても、画像データD2における異常発生位置と同じ位置に、画像データD2における異常とほぼ同様の内容の異常が発生することになる。
【0026】
再び図2の説明に戻る。
ステップS2において、制御部11は、記憶部12に記憶されている画像データDの画像を例えば180度回転させる処理を行い、これを画像データDr(図3参照)として記憶部12に記憶させる。続けて、制御部11は、画像処理部151〜153及び画像転送部141〜144を制御して、画像データDrに対し第1の画像処理、第2の画像処理及び第3の画像処理を行わせると共に、各々の画像処理の結果を記憶部12に転送させ、そこに記憶させる。
【0027】
このステップS2における処理の一例を、図3を参照しながら説明する。
まず、上記の画像データDrが、第1画像転送部141によって記憶部12から読み出され、第1画像処理部151に転送される。第1画像処理部151は、この画像データDrに対して第1の画像処理を実行する。この第1の画像処理の結果である画像データDr1は、第2画像転送部142によって、記憶部12に転送されてそこに記憶させられると共に、第2画像処理部152に転送される。第2画像処理部152は、第2画像転送部142から転送されてくる画像データDr1に対して第2の画像処理を実行する。この第2の画像処理の結果である画像データDr2は、第2画像転送部142によって、記憶部12に転送されてそこに記憶させられると共に、第3画像処理部153に転送される。第3画像処理部153は、第3画像転送部143から供給されてくる画像データDr2に対して第3の画像処理を実行する。この第3の画像処理の結果である画像データDr3は、第4画像転送部144によって、記憶部12に転送されてそこに記憶させられる。ただし、この画像データDr3は、画像データD3の場合とは異なり、画像形成部17に転送されることはない。
以上の処理により、記憶部12には、画像データDr,Dr1,Dr2,Dr3が記憶されることになる。
【0028】
前述したように、第2画像処理部152に不具合が発生していると仮定した場合、この第2画像処理部152による第2画像処理の結果である画像データDr2にも、何らかの異常が含まれている可能性が高い。このとき、画像データDr2における異常は、画像データD2における異常発生位置と同じ位置に発生する。ここでいう「同じ位置」とは、図3の画像データD2の異常発生位置と画像データDr2の異常発生位置とを比較すると分かるように、画像データD2の画像の内容(例えば図3に示した「丸」や「三角」の図形)に対する相対的な位置を意味しているのではなく、画像領域における絶対的な位置、つまり、画像データの各画素の位置をxy座標値で特定したときの位置のことである。
【0029】
画像処理部151〜153は、画像データに含まれる各画素を所定の走査方向に従って走査しつつ画像処理を行うので、ハードウェアやソフトウェアなどの要因で異常が発生する位置は、その走査開始点から数えて同じ個数番目にある画素の位置に発生することが多い。このため、画像そのものが回転させられたとしても、その回転前後の画像において、異常が発生する絶対的な位置は、走査開始点から数えて同じ個数番目にある画素の位置となり、いずれも同じ位置になる。よって、画像データDr2における異常発生位置と、画像データD2における異常発生位置とが同じになるのである。この場合、第2画像処理部152の後段の第3画像処理部153には不具合が発生していないとしても、画像データDr2に画像データD2とほぼ同様の異常が含まれているから、画像データDr3においても、画像データD2における異常発生位置と同じ位置に異常が発生する。
【0030】
再び図2に戻り、制御部11は、記憶部12に記憶されている画像データDr1,Dr2,Dr3の画像をそれぞれ、180度回転させる処理を行って記憶部12に記憶する(ステップS3)。このステップS3の処理は、ステップS2における回転処理を「第1の処理」とすると、この第1の処理とは可逆の「第2の処理」であり、要するに画像データを第1の処理前の状態に戻すための処理である。これにより、記憶部12には、図3に示すような内容の画像データDr1’,Dr2’,Dr3’が記憶されることになる。
【0031】
次いで、制御部11は、ステップS1にて記憶部12に記憶された画像データD1,D2,D3の画像と、ステップS3にて記憶部12に記憶された画像データDr1’,Dr2’,Dr3’の画像とをそれぞれ比較し(ステップS4)、一致しない部分があるか否かを判定する(ステップS5)。つまり、制御部11は、画像データD1に含まれる各画素値と、画像データDr1’に含まれる各画素値との間で、同じ座標値の画素値どうしを比較し、これら比較対象の画像データどうしで一致しない画素値があるか否かを判定する。同様に、制御部11は、画像データD2に含まれる各画素値と画像データDr2’ に含まれる各画素値とを比較し、画像データD3に含まれる各画素値と画像データDr3’ に含まれる各画素値とを比較し、これら比較対象の画像データどうしで一致しない画素値があるか否かを判定する。第2画像処理部152に不具合が発生している場合には、画像データDr1,Dr2,Dr3の画像を180度回転させると、図3に示すように、画像データDr2に含まれている異常発生位置も180度回転することになる。よって、制御部11による比較の結果、画像データD2の画像と画像データDr2’の画像とが一致しないことになる。また同様に、画像データD3の画像と画像データDr3’の画像も一致しないことになる。
【0032】
図2において、制御部11は、このように一致しない画像があると判定した場合(ステップS5;YES)、一致しない画像の画像データを出力した画像処理部151〜153のうち、画像処理の順序が最先の画像処理部、つまり、最も前段にある画像処理部を特定する(ステップS6)。ここでは、画像データD2の画像と画像データDr2’の画像とが一致しないし、画像データD3の画像と画像データDr3’の画像とが一致しないが、画像処理の順序が最先の画像処理部によって生成された画像データは、画像データD2及びDr2’である。よって、これらの画像データを生成した第2画像処理部152が特定されることになる。そして、制御部11は、この特定した第2画像処理部152に不具合が発生していると判定し、その旨を報知する(ステップS7)。このとき、制御部11は、例えば「第2画像処理部に故障が発生しています。」といった具合に、どこの画像処理部に不具合が発生しているかを知らせるメッセージを表示操作部13に表示させることで、ユーザに対してステップS7の判定結果を報知する。この報知方法としては、メッセージの表示に限らず、音声や所定のランプを点灯させるようなものでもよい。
【0033】
一方、ステップS5にて、制御部11は、一致しない画像がない、つまり、比較した画像の全ての画像が一致すると判定した場合(ステップS5;NO)、不具合が発生している画像処理部151〜153はないと判定する(ステップS8)。この場合、制御部11は、「正常動作を確認しました。」といった具合に、全ての画像処理部151〜153に不具合が発生していない旨のメッセージを表示操作部13に表示させて、ユーザに報知する。この報知方法としては、メッセージの表示に限らず、音声や所定のランプを点灯させるようなものでもよい。また、どのようなメッセージも表示乃至出力しないことで、不具合がないことをユーザに知らせるようにしてもよい。
【0034】
(2−2)第2動作例
上述した第1動作例では、制御部11が画像を回転させていたが、次に述べる第2動作例では、ユーザが画像読取部16に原稿の先後を逆にしてセットすることで、画像形成装置100が180度回転した状態の画像データを生成する。また、第1動作例では、画像処理部151〜153のいずれかに不具合が発生していることを想定していたが、この第2動作例では、画像処理部151〜153以外の構成部品に不具合が発生している場合であっても、その不具合発生箇所を特定し得るようになっている。
以下では、画像処理部151〜153の前段の処理手段である画像読取部16に不具合があると仮定して、図4に示すフローチャートを参照しながら動作説明を行う。
【0035】
まず、ユーザが画像読取部16に原稿をセットし、表示操作部13を操作して原稿の複写を指示すると、制御部11は、画像読取部16に原稿の画像を読み取らせる。このとき画像読取部16によって生成された画像データは、第1画像転送部141に供給される。図4のステップS11において、制御部11は、この画像データを第1画像転送部141から記憶部12に転送させてそこに記憶させる。さらに、制御部11は、画像処理部151〜153及び画像転送部141〜144を制御して、画像読取部16から第1画像転送部141に供給された画像データに対して第1の画像処理、第2の画像処理及び第3の画像処理を順次行わせると共に、各々の画像処理の結果を記憶部12に転送させ、そこに記憶させる。
【0036】
このステップS11における処理の一例を図5に示す。
画像読取部16によって図5の上段に示すような内容の原稿dが読み取られて画像データd0が生成された場合、この画像データd0は、第1画像転送部141によって、記憶部12に転送されてそこに記憶させられると共に、第1画像処理部151に転送される。第1画像処理部151は、この画像データd0に対して第1の画像処理を実行する。この第1の画像処理の結果である画像データd1は、第2画像転送部142によって、記憶部12に転送されてそこに記憶させられると共に、第2画像処理部152に転送される。第2画像処理部152は、第2画像転送部142から転送されてくる画像データd1に対して第2の画像処理を実行する。この第2の画像処理の結果である画像データd2は、第2画像転送部142によって、記憶部12に転送されてそこに記憶させられると共に、第3画像処理部153に転送される。第3画像処理部153は、第3画像転送部143から供給されてくる画像データD2に対して第3の画像処理を実行する。この第3の画像処理の結果である画像データd3は、第4画像転送部144によって、記憶部12に転送されてそこに記憶させられると共に、画像形成部17に転送される。画像形成部17は、第4画像転送部144から転送されてくる画像データd3に基づいた画像を用紙に形成する。
【0037】
以上の処理により、記憶部12には、画像データd0,d1,d2,d3が記憶されることになる。ここでは、画像読取部16に不具合が発生しているので、これら画像データd0,d1,d2,d3の全てに異常が含まれることになる。また、第1画像処理、第2画像処理及び第3画像処理を経た画像が形成された用紙が画像形成部17から出力されることになる。
【0038】
次に、制御部11は、ユーザに対し、原稿の先後を逆にして画像読取部16に再度セットして読み取りを指示するよう促す。その指示に応じて原稿がセットされると、図4のステップS12において、制御部11は、画像読取部16によって生成された画像データを記憶部12に記憶させてから、画像処理部151〜153及び画像転送部141〜144を制御して、この画像データに対し上記第1の画像処理、第2の画像処理及び第3の画像処理を順次行わせると共に、各々の画像処理の結果を記憶部12に転送させ、そこに記憶させる。
【0039】
このステップS12における処理の一例を、図5を参照しながら説明する。
まず、画像読取部16によって生成された画像データdr0が、第1画像転送部141から第1画像処理部151に転送される。第1画像処理部151は、この画像データdr0に対して第1の画像処理を実行する。この第1の画像処理の結果である画像データdr1は、第2画像転送部142によって、記憶部12に転送されてそこに記憶させられると共に、第2画像処理部152に転送される。第2画像処理部152は、第2画像転送部142から転送されてくる画像データdr1に対して第2の画像処理を実行する。この第2の画像処理の結果である画像データdr2は、第2画像転送部142によって、記憶部12に転送されてそこに記憶させられると共に、第3画像処理部153に転送される。第3画像処理部153は、第3画像転送部143から供給されてくる画像データdr2に対して第3の画像処理を実行する。この第3の画像処理の結果である画像データdr3は、第4画像転送部144によって、記憶部12に転送されてそこに記憶させられる。ただし、この画像データdr3は、画像データd3の場合とは異なり、画像形成部17に転送されることはない。以上の処理により、記憶部12には、画像データdr,dr1,dr2,dr3が記憶されることになる。
【0040】
次に、図4のステップS13において、制御部11は、記憶部12に記憶されている画像データdr0,dr1,dr2,dr3の画像をそれぞれ180度回転させる処理を行って記憶部12に記憶する。これにより、記憶部12には、図5に示すような内容の画像データdr0’,dr1’,dr2’,dr3’が記憶されることになる。
【0041】
次いで、制御部11は、ステップS11にて記憶部12に記憶された画像データd0,d1,d2,d3の画像と、ステップS13にて記憶部12に記憶された画像データdr0’dr1’,dr2’,dr3’の画像とをそれぞれ比較し(ステップS14)、一致しない画像があるか否かを判定する(ステップS15)。つまり、制御部11は、画像データd0と画像データdr0’とを比較し、画像データd1と画像データdr1’とを比較し、画像データd2と画像データdr2’とを比較し、画像データd3と画像データdr3’とを比較し、これら比較対象の画像データどうしのうち、一致しない画像があるか否かを判定する。画像読取部16に不具合が発生している場合、画像データdr0,dr1,dr2,dr3の画像が180度回転させられると、これらの画像データに含まれている異常発生位置も180度回転することになる。よって、この場合、画像データd0,d1,d2,d3の画像と、ステップS13にて記憶部12に記憶された画像データdr0’dr1’,dr2’,dr3’の画像とは全て一致しないことになる。
【0042】
なお、第1動作例とは異なり、この第2動作例では、ユーザが手作業で原稿の先後を逆にするので、ステップS14における比較処理では、比較対象となる画像データの各画素の位置が互いにずれるおそれがある。そこで、ステップS14における比較では、動作例1のような画素値レベルでの比較ではなく、例えば画像の全領域を分割した各領域における周波数特性とかヒストグラム分布などを用いた比較が望ましい。また、画素値どうしを比較するにしても、画素値の不一致数が或る相当数以上になった場合にのみ画像データが一致しないと判定する、というように判定に用いる閾値を第1動作例よりも大きくするようにしてもよい。
【0043】
制御部11は、一致しない画像があると判定した場合(ステップS15;YES)、一致しない画像の画像データを出力した画像読取部16又は画像処理部151〜153のうち、画像処理の順序が最先の画像読取部又は画像処理部、つまり、最も前段にある画像読取部又は画像処理部を特定する(ステップS16)。ここでは、画像データd0,d1,d2,d3の画像と、画像データdr0’dr1’,dr2’,dr3’の全ての画像データとが全て一致していないから、最も前段にある画像読取部16が特定されることになる。そして、制御部11は、この特定した画像読取部16に不具合が発生していると判定し、第1動作例と同様の手法でそれを報知する(ステップS17)。一方、ステップS15にて、制御部11は、一致しない画像がない、つまり全ての画像が一致すると判定した場合(ステップS15;NO)、不具合が発生している画像読取部及び画像処理部はないと判定し、第1動作例と同様の手法でその旨を報知する(ステップS18)。
【0044】
(2−3)第3動作例
上述した第1動作例では、複数の画像処理部151〜153のうち、同じ画像処理部によって画像処理が実行された画像データどうしを比較し、その比較の結果、全ての画像データが一致した場合には、不具合が発生している画像処理部はないと判定していた。また、第2動作例では、画像読取部16を、画像処理部151〜153に準じる1つの処理手段とみなし、第1動作例と同様の原理で、不具合が発生した箇所を判定していた。次の第3動作例では、第1動作例において全ての画像データが一致した場合であっても、画像に異常が発生しているか否かについてユーザに目視判定を促し、その目視判定の結果に基づき不具合の発生箇所を判定するようにしている。以下では、不具合が発生している箇所を第1画像処理部151の前段又は後段の構成部品であると仮定し、前掲の図2及び図6に示すフローチャートと、図7,8の説明図を参照しながら動作説明を行う。
【0045】
ユーザが画像読取部16に原稿をセットし、表示操作部13を操作して原稿の複写を指示すると、制御部11は、画像読取部16に原稿の画像を読み取らせる。このとき画像読取部16によって生成された画像データは、第1画像転送部141に供給される。これに応じて、制御部11は、図2に示したステップS1〜S4の処理を行い、ステップS1にて記憶部12に記憶された各画像データと、ステップS3にて記憶部12に記憶された各画像データとをそれぞれ比較する。ここで、第1画像処理部151の前段の構成部品に不具合が発生していると仮定した場合、図7に示すように、画像データD10と画像データDr10’とが一致し、画像データD20と画像データDr20’とが一致し、画像データD30と画像データDr30’とが一致することになる。よって、図2のステップS5にて、制御部11の処理は「NO」に進む。
【0046】
次に、制御部11は、図2のステップS8に代えて、図6に示す処理を実行する。
図6において、制御部11は、ステップS3にて記憶部12に記憶された画像データDr10’,Dr20’,Dr30’のうちのいずれかの画像を表示操作部13に表示する(ステップS21)。このとき、画像データDr10’,Dr20’,Dr30’は、異常があるかないかという点では、全て同じ状態の画像であるはずだから、表示操作部13に表示する画像データはこれらのうちのどれでもよい。そして、制御部11は、「画像に異常がありますか?」というように、画像に異常があるか否かを問いかけるメッセージと、「YES」/「NO」という選択肢とを表示する。ユーザが表示操作部13に表示された画像を見て、画像の乱れなどの異常を見つけた場合には、「YES」を選択する。制御部11は、表示操作部13によってこの選択操作を受け付けると(図6のステップS22;YES)、第1画像処理部151の前段の構成部品に不具合が発生していると判定し、第1動作例と同様の手法でその旨を報知する(ステップS23)。
【0047】
一方、ユーザが表示操作部13に表示された画像を見て、画像の乱れなどの異常を見つけることができなかった場合には、「NO」を選択する。この場合、制御部11は、画像形成装置の各部に不具合が発生していないと判定することもできるが、画像処理部151〜153の後段の構成部品に不具合が発生している可能性も考えられる。例えば、図8に示すように、画像処理部151〜153の前段の構成部品である画像読取部16や、画像処理部151〜153そのものには不具合が発生していないけれども、画像処理部151〜153の後段の構成部品である画像形成部17に不具合が発生しているような場合には、実際に用紙に形成された画像には異常が含まれる。そこで、このようにユーザが「NO」を選択した場合(ステップS22;NO)、制御部11は、記憶部12に記憶されている画像データdr30を読み出して画像形成部17に転送する(ステップS24)。画像形成部17は、第4画像転送部144から転送されてくる画像データdr30に基づいた画像を用紙に形成する。このステップS24の処理と、前述したステップS1の処理によって、画像形成部17からは、画像d40が形成された用紙と画像dr40が形成された用紙とが出力されることになる。
【0048】
そして、制御部11は、画像形成部17から出力された2枚の用紙に形成されたそれぞれの画像d40と画像dr40とを比較して、相違している画像部分があるか否かをユーザに問い合わせる。具体的には、制御部11は、「2つの画像に異なる部分がありますか?」という画像に相違部分があるか否かを問いかけるメッセージと、「YES」/「NO」という選択肢とを表示する。ユーザが2つの画像の相違部分を見つけた場合、「YES」を選択する。この相違部分は画像の異常に相当するから、制御部11は、表示操作部13によってこの選択操作を受け付けると(ステップS25;YES)、画像処理部151〜153の後段の構成部品に不具合が発生していると判定し、第1動作例と同様の手法でその旨を報知する(ステップS26)。一方、ユーザが2つの画像の相違部分を見つけることができなかった場合には、「NO」を選択する。この場合(ステップS25;NO)、制御部11は、画像形成装置100のどこにも不具合はないと判定して(ステップS27)、第1動作例と同様の手法でその旨を報知する。
【0049】
以上説明した実施形態によれば、回転前後の画像データに対する各画像処理の結果を比較するだけで、画像形成装置100において不具合が発生した構成部品を特定することができる。よって、構成部品の誤交換などによる信頼低下や、部品コストの損失などを小さくすることができる。
【0050】
(3)変形例
なお、上記実施形態を次のように変形してもよい。具体的には、例えば以下のような変形が挙げられる。これらの変形は、各々を適宜に組み合わせることも可能である。
(3−1)変形例1
上述した実施形態では、制御部11、記憶部12、画像転送部141〜144および画像処理部151〜153などからなる不具合検出装置が画像形成装置100に内蔵されている例で説明したが、この不具合検出装置は、画像形成装置に内蔵されているものに限らず、例えば画像形成装置に接続されて画像処理を行うコンピュータに内蔵されていてもよい。
【0051】
(3−2)変形例2
実施形態においては、制御部11が、画像形成装置100に入力された画像データを180度回転する第1の処理と、その回転後の画像データをさらに180度回転することで、回転前の状態に戻す第2の処理を行っていた。これらの第1の処理と第2の処理の関係は、要するに、第1の処理が施された画像データを第2の処理によって第1の処理前の状態に戻すという、可逆の関係にあればよく、実施形態で例示した180度の回転処理に限定されない。例えば、制御部11が回転処理を用いるにしても、その回転角度は180度ではなく、図9の最上段に例示したように、90度とか270度といったように所定の角度であればよい。例えば90度の場合には、制御部11は、第1の処理として、画像データを右に90度回転させ、第2の処理として画像データを左に90度回転(或いは右に270度回転)させる処理を行えばよい。
【0052】
また、回転以外にも、例えば線対称となる画像を生成する処理とか、画像の全部又は一部を或る方向に沿って移動する処理とか、画像データを構成する値について予め決められた第1の値と第2の値との対応関係に基づき一方の値を他方の値に変換する処理などのうち、少なくともいずれか1つにおける可逆の処理を含んでいればよい。また、これらの組み合わせでもよい。
可逆の処理として、例えば線対称となる画像を生成する処理を採用した場合、制御部11は、第1の処理として、画像データの画像を或る基準線を中心として線対称となる画像に変換した画像データを生成し、第2の処理として、その生成した画像データの画像を上記基準線を中心として線対称となる画像に変換した画像データを生成する。これにより、第1の処理が施された画像データを、第2の処理によって第1の処理前の状態に戻すことができる。つまり、これは、画像とその画像の鏡像とを利用するというものである。図9の上から2段目に示した例は、画像を左右方向の鏡像画像としたものと、上下方向の鏡像画像としたものを示している。
【0053】
また、可逆の処理として、画像の全部又は一部を或る方向に沿って移動する処理を採用した場合、制御部11は、第1の処理として、画像データの画像の全部又は一部を或る方向に沿って或る距離だけ移動させ、第2の処理として、その生成した画像データの画像の全部又は一部を上記或る方向とは逆方向に上記或る距離だけ移動させる。これにより、第1の処理が施された画像データを、第2の処理によって第1の処理前の状態に戻すことができる。図9の上から3段目に示した例は、画像の全領域を複数の部分領域に分割し、それぞれの部分領域の位置を左右、上下又は左右上下方向に入れ替える様に移動させる様子を示したものである。
【0054】
また、可逆の処理として、画像データを構成する値について、予め決められた第1の値と第2の値との対応関係に基づき一方の値を他方の値に変換する処理を採用した場合とは、例えば画像データを構成する画素値をルックアップテーブルなどの対応表に基づき、画素値の変換を行うような場合である。この場合、制御部11は、第1の処理として、画像データの画素値のうち、低階調域の画素値を高階調域の画素値に変換するとともに、高階調域の画素値を低階調域の画素値に変換する。そして、制御部11は、第2の処理として、階調変換された画像データの画素値のうち、高階調域の画素値を低階調域の画素値に変換するとともに、低階調域の画素値を高階調域の画素値に変換する。これにより、第1の処理が施された画像データを第2の処理によって第1の処理前の状態に戻すことができる。図9の最下段に示した例は、このような階調変換により画素値を反転させたものである。
【0055】
(3−3)変形例3
画像データを比較する際の比較方法は、実施形態で例示したものに限らず、例えば画像データの各画素の濃度、輝度或いは明度や、それらの平均値や分布状況などの、画像データの何らかの特徴を表す特徴量を比較するものであってもよい。
【0056】
(3−4)変形例4
実施形態においては、故障検出モードで画像データを記憶して不具合の検出を行っていたが、故障検出モードなる特別な動作モードを設けずに、通常の画像形成時において、上記のような不具合の検出を常に行うようにしてもよい。
また、実施形態では、不具合の検出の有無に関わらず、画像データに応じた画像を形成するようにしていた。これを、まずは不具合の検出を試み、その結果、不具合を検出した場合には画像データに応じた画像を形成せず、不具合を検出しなかった場合には画像データに応じた画像を形成するようにしてもよい。不具合が検出された場合には画像に異常が含まれているので、そのような異常を含んだ画像を敢えて形成する必要はないからである。
【0057】
(3−5)変形例5
前述した第2動作例では、画像読取部16を、画像処理部151〜153という「画像処理手段」という構成とは別の「処理手段」とみなしたうえで、第1動作例と同様の原理で、不具合が発生した箇所を判定していた。ただし、画像読取部16も、画像を読み取ってその読み取り画像のデータを生成するものであるから、画像処理部151〜153と同等の「画像処理手段」の1つとして考えることもできる。このような考え方をする場合には、特許請求の範囲における「画像処理手段」には、実施形態で例示した画像読取部16が含まれる。一方、このような考え方をとらずに、画像読取部16を画像処理部151〜153という画像処理手段という構成とは別の処理手段とみなした場合には、特許請求の範囲における「画像処理手段」には、画像読取部16が含まれないことになる。これは、画像処理部151〜153の前段にある処理手段に限らず、それらの後段にある処理手段についても同様である。
【0058】
(3−6)変形例6
実施形態においては、画像データの全領域を比較していたが、一部の領域どうしを比較するものであってもよい。例えば画像形成部17から出力された画像のうち、画像の乱れがある領域のおおよその位置をユーザが表示操作部13を用いて指定可能な構成にすれば、制御部11は、その指定された領域のみについて、画像データの比較を行えばよい。このようにすれば、制御部11の処理量を低減し、処理の高速化を図ることができる。
【0059】
実施形態においては、画像形成装置100が内蔵する記憶部12に、比較用の画像データを記憶していたが、この記憶場所は、画像形成装置100にネットワーク経由で接続された記憶装置であってもよい。また、通常の画像形成時において、上記のような不具合の検出を常に行うようにする場合に、制御部11は、記憶されている画像データを所定時間あるいは所定データ量を限度として適宜消去するようにしてもよい。
【0060】
実施形態においては、不具合がある構成部品を特定すると、画像形成装置100自身においてその旨を報知していたが、これ以外にも、例えば、画像形成装置100に接続された通信装置に不具合がある構成部品を報知する方法も考えられる。
【0061】
上述した制御部11が実行するプログラムは、磁気テープ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光記録媒体、光磁気記録媒体、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、RAMなどの記録媒体に記録した状態で提供し得る。即ち、本発明をプログラムとして実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の動作例において画像形成装置の制御部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】第1の動作例において制御部が実行する処理の様子を説明する説明図である。
【図4】第2の動作例において制御部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】第2の動作例において制御部が実行する処理の様子を説明する説明図である。
【図6】第3の動作例において制御部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】第3の動作例において制御部が実行する処理の様子を説明する説明図である。
【図8】第3の動作例において制御部が実行する処理の様子を説明する説明図である。
【図9】可逆の処理の例を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
11…制御部、12…記憶部、13…表示操作部、141…第1画像転送部、142…第2画像転送部、143…第3画像転送部、16…画像読取部、17…画像形成部、100…画像形成装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに対する画像処理を決められた順序で実行する複数の画像処理手段と、
各々の前記画像処理手段によりそれぞれの画像処理が実行された結果である各画像データを記憶する第1記憶手段と、
前記複数の画像処理手段によって画像処理が実行される前の画像データに対し、互いに可逆の関係にある第1の処理又は第2の処理のうちの第1の処理を施す第1可逆処理手段と、
前記第1可逆処理手段によって第1の処理が施された画像データに対し前記各画像処理手段によりそれぞれの画像処理が実行された結果である各画像データに対して、前記第2の処理を施す第2可逆処理手段と、
前記第2可逆処理手段により前記第2の処理が施された各画像データを記憶する第2記憶手段と、
前記第1記憶手段に記憶された各画像データと、前記第2記憶手段に記憶された各画像データとの間で、共通の前記画像処理手段によって画像処理が実行された画像データどうしを比較する比較手段と、
前記比較手段によって比較された画像データどうしが一致していない場合、当該一致しない画像データに画像処理を実行した画像処理手段を、不具合が発生している画像処理手段として特定して報知する特定手段と
を備えることを特徴とする不具合検出装置。
【請求項2】
画像データに対する画像処理を決められた順序で実行する複数の画像処理手段と、
第1の画像データに対し、各々の前記画像処理手段によりそれぞれの画像処理が実行された結果である各画像データを記憶する第1記憶手段と、
前記第1の画像データの画像を所定の角度だけ回転させた第2の画像データを取得し、取得した第2の画像データに対し各々の前記画像処理手段によりそれぞれの画像処理が実行された結果である各画像データを得て、さらに、当該各画像データに対して、前記所定の角度の回転とは逆方向に当該所定の角度だけ回転させる処理を施す処理手段と、
前記処理手段により回転させられた各画像データを記憶する第2記憶手段と、
前記第1記憶手段に記憶された各画像データと、前記第2記憶手段に記憶された各画像データとの間で、共通の前記画像処理手段によって画像処理が実行された画像データどうしを比較する比較手段と、
前記比較手段によって比較された画像データどうしが一致していない場合、当該一致しない画像データに画像処理を実行した画像処理手段を、不具合が発生している画像処理手段として特定して報知する特定手段と
を備えることを特徴とする不具合検出装置。
【請求項3】
前記特定手段は、
前記比較手段による比較の結果が一致しない画像データに画像処理を実行した画像処理手段を特定し、
特定した画像処理手段が単数の場合には、当該画像処理手段を、不具合が発生していると画像処理手段として特定し、
特定した画像処理手段が複数の場合には、画像処理を実行する順序が最先の画像処理手段を、不具合が発生していると画像処理手段として特定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の不具合検出装置。
【請求項4】
前記特定手段は、
前記比較手段による比較の結果が全て一致した場合には、前記複数の画像処理手段のいずれにも不具合が発生していないと判定し、その旨を報知する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の不具合検出装置。
【請求項5】
前記第1記憶手段に記憶された各画像データが表す画像と、前記第2記憶手段に記憶された各画像データが表す画像とを表示手段に表示させる表示制御手段と、
前記表示手段に表された画像に異常があるか否かを選択するユーザの操作を受け付ける操作手段とを備え、
前記特定手段は、
前記比較手段による比較の結果が全て一致した場合において、前記操作手段が受け付けたユーザの操作によって画像に異常があることが選択されると、前記複数の画像処理手段のうち画像処理を実行する順序が最先の画像処理手段の画像処理よりも前に、前記画像データに対する処理を行う処理手段に不具合が発生していることを特定して報知する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の不具合検出装置。
【請求項6】
前記第1可逆処理手段によって第1の処理が施されていない画像データに対し複数の前記画像処理手段による画像処理を経た画像データ、又は、前記第1可逆処理手段によって第1の処理が施された画像データに対し複数の前記画像処理手段による画像処理を経た画像データに基づいた画像を画像形成手段に形成させる形成制御手段と、
前記画像形成手段によって形成された画像に異常があるか否かを選択するユーザの操作を受け付ける操作手段とを備え、
前記特定手段は、
前記比較手段による比較の結果が全て一致した場合において、前記操作手段が受け付けたユーザの操作によって画像に異常があることが選択されると、前記複数の画像処理手段のうち画像処理を実行する順序が最後の画像処理手段の画像処理よりも後に、前記画像データに対する処理を行う処理手段に不具合が発生していることを特定して報知する
ことを特徴とする請求項1記載の不具合検出装置。
【請求項7】
前記第1の画像データに対し複数の前記画像処理手段による画像処理を経た画像データ、または、前記第2の画像データに対し複数の前記画像処理手段による画像処理を経た画像データに基づいた画像を画像形成手段に形成させる形成制御手段と、
前記画像形成手段によって形成された画像に異常があるか否かを選択するユーザの操作を受け付ける操作手段とを備え、
前記特定手段は、
前記比較手段による比較の結果が全て一致した場合において、前記操作手段が受け付けたユーザの操作によって画像に異常があることが選択されると、前記複数の画像処理手段のうち画像処理を実行する順序が最後の画像処理手段の画像処理よりも後に、前記画像データに対する処理を行う処理手段に不具合が発生していることを特定して報知する
ことを特徴とする請求項2記載の不具合検出装置。
【請求項8】
前記可逆の処理は、
画像を回転する処理と、
線対称となる画像を生成する処理と、
画像の全部又は一部を或る方向に沿って移動する処理と、
画像データを構成する値について、予め決められた第1の値と第2の値との対応関係に基づき一方の値を他方の値に変換する処理と
のうち、少なくともいずれか1つにおける可逆の処理を含む
ことを特徴とする請求項1記載の不具合検出装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の不具合検出装置と、
前記複数の画像処理手段から供給される画像データに応じた画像を形成する画像形成手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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