説明

不可視印刷シートの加熱装置、それを取り付けた印刷機及びそれを用いる検査方法

【課題】
電子供与性染色前駆体、電子性化合物及びワニスを含有するスクラッチ発色用インキを用いた不可視情報印刷シートにおいて、印刷位置やインキ盛り量などを確認しやすくするための検査方法を提供する。
【解決手段】
支持体の同一面上に、電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物及びワニスを含有する発色用インキにより不可視印刷部分を設け不可視印刷シートを製造する印刷機に取り付ける、搬送中に不可視印刷部分を加熱出来る不可視情報印刷シートの加熱装置、それを取り付けた印刷機及びそれを用いた検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不可視印刷シートを印刷のための搬送中に、加熱により発色させることで可視化する加熱装置、それを取り付けた印刷機及びその加熱装置を用いる検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、くじに用いられるシートとして、当落を示す文字、数字、その他の絵柄等の情報を紙などのシートに印刷し、更に隠蔽層で覆うことで情報を不可視の状態とした不可視情報印刷シートが一般的に用いられている。具体的には、紙等のシートに可視情報等を印刷し、更に不可視化すべき情報を印刷した後、不可視化すべき情報を覆うように剥離剤層を設け、その上に隠蔽性の銀色等のスクラッチインキを設けた状態であり、硬貨等により該インキを削り取ることで不可視情報が現れるようにして用いられている。しかし、該インキを取り除く際に発生する削りカスがゴミとなってしまう欠点があり、使用される用途や場所が限定される。更に該インキの色は暗色であり、暗い感じになりやすくデザイン上の問題となりやすい。
【0003】
また、スクラッチインキを用いることなく不可視情報の発現が容易に行え、削りカスの発生が抑えられるとして、無色または淡色の電子供与性染料前駆体及びワニスを含有するスクラッチ発色用電子供与性染料前駆体インキベースと電子受容性化合物及びワニスを含有するスクラッチ発色用電子受容性化合物インキベースを別個に作製したものをドライヤーと混合して得たものであることを特徴とするスクラッチ発色用インキ及びそれらを用いた不可視情報印刷シートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この文献記載の方法では発色前の不可視情報は全く視認されないものの、例えば不可視情報が比較的太い線からなる場合やインキ盛り量が多い場合にはわずかながら視認出来るため、なお改良すべき点があった。
【0004】
上記の問題を解決するために、支持体の同一面上に電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物及びワニスを含有するスクラッチ発色用インキにおいて、固体粒子の平均粒径に着目した提案もなされた(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、不可視情報に電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物及びワニスを含有するスクラッチ発色用インキを用いると、不可視情報の形態に関わらず視認しづらく、実際の印刷中に印刷位置やインキ盛り量、印刷汚れなどを速やかに検査し難いため、その改善が要望された。スクラッチ発色用インキの盛り量は、発色成分に換算すると少なく、電子供与性染料前駆体に対する既存検査方法では不十分であった。盛り量過多の場合、不可視情報が視認可能となる恐れがあり、盛り量過少の場合、好ましい発色濃度が得られない恐れがあり、盛り量検量は極めて重要である。
【0006】
また、2種類以上の通常の有色印刷インキを同一支持体上に印刷する時、各色の刷版上に絵柄と共にトリムマークを描画しておき、各色のトリムマークの重なり具合から印刷位置を合わせる、見当合わせという操作が行われるが、2種類以上のスクラッチ発色用インキを印刷する時、または1種類以上のスクラッチ発色用インキと1種類以上の通常の有色印刷インキを同一支持体上に印刷する時、スクラッチ発色用インキで印刷されたトリムマークが視認しづらく、位置合わせが困難である。
【0007】
なお、基本的な成分については同様の熱発色インキを用いた不可視印刷シートを熱発色させる提案もある(例えば、特許文献3)。しかし、これは、ベタ印刷部分が設けられていることが前提であり、文字や模様等の各種の印刷絵柄が設けられている不可視情報印刷シートの検査方法への応用には不向きであった。また、熱発色インキを用いた場合も盛り量の検査方法の改良が望まれていた。なお、スクラッチ発色用インキや熱発色インキなど、電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物及びワニスを含有するインキをまとめて、発色用インキと呼ぶ。
【0008】
この発色用インキの盛り量検量、印刷汚れの検出、位置合わせに関して、精度よく速やかな検査が出来る検査装置が求められていた。
更に詳しくは、印刷の条件設定のためのテスト印刷物を搬送中、盛り量を検量することが要望されていた。これまでの提案では、テスト印刷した印刷物を検量する間、印刷機を止めていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−199187号公報
【特許文献2】特開2008−024838号公報
【特許文献3】特開2006−290975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記の問題を解決することにあり、電子供与性染色前駆体、電子受容性化合物及びワニスを含有する発色用インキを用いた不可視印刷シートにおいて、印刷位置やインキ盛り量などを確認しやすくするための加熱装置、それを取り付けた印刷機及びその加熱装置を用いる検査方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記に鑑み鋭意研究した結果、本発明の不可視情報印刷シートの加熱装置、印刷機及び検査方法を発明するに至った。
【0012】
すなわち、
(1)支持体の同一面上に、電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物及びワニスを含有する発色用インキにより不可視印刷部分を設け不可視印刷シートを製造する印刷機に取り付ける、搬送中に不可視印刷部分を加熱出来る不可視情報印刷シートの加熱装置である。
【0013】
(2)加熱のための部品が熱ロールであることを特徴とする上記(1)記載の加熱装置である。
【0014】
(3)加熱のための部品が熱板であることを特徴とする上記(1)記載の加熱装置である。
【0015】
(4)加熱のための部品の、シート搬送の下流方向近傍に温度センサーを設けることを特徴とする上記(1)記載の加熱装置である。
【0016】
(5)支持体の同一面上に、電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物及びワニスを含有する発色用インキにより不可視印刷部分を設け不可視印刷シートを製造する印刷機と独立した、搬送中に不可視印刷部分を加熱出来る不可視情報印刷シートの加熱装置である。
【0017】
(6)上記(1)から(4)のいずれかに記載の加熱装置を取り付けた印刷機である。
【0018】
(7)加熱装置のシート搬送方向下流側に画像検出装置を設けた上記(6)記載の印刷機である。
【0019】
(8)上記(1)から(5)のいずれかに記載の加熱装置を用いることを特徴とする検査方法である。
【0020】
(9)不可視情報印刷部分を紙面表面温度が、110℃以上かつ210℃以下に加熱することを特徴とする上記(8)記載の検査方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の不可視印刷シートの加熱装置、それを取り付けた印刷機及びそれを用いる検査方法によれば、発色用インキを用いた印刷時、困難であった印刷位置やインキ盛り量、印刷汚れの検査が容易である。これにより、印刷条件の最適化が速やかに行えるようになり、印刷不良品の発生も防止出来る。
また、盛り量の経時的増減も速やかに確認出来、盛り量過多や過少という印刷トラブルが防止出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】オフセット輪転印刷機の全体概略図。
【図2】本発明の加熱のための部品を有する加熱装置の構成図。
【図3】本発明の加熱のための部品を有する加熱装置の別の態様を示す構成図。
【図4】本発明の加熱のための部品を有する加熱装置の別の態様を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の加熱装置、印刷機及び検査方法は、発色用インキ、例えば、スクラッチ発色用インキを用いた印刷に際して用いられる。そこで、まず、スクラッチ発色用インキやそれを用いて得られる不可視情報印刷シートについて説明する。但し、本発明は、スクラッチ発色用インキに限らず、熱発色用インキ等の発色用インキを用い、不可視印刷シートを印刷する場合にも適用出来る。それらの説明の次に、本発明の加熱装置、印刷機及び検査方法を具体的に説明する。
【0024】
スクラッチ発色用インキは、無色または淡色の電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物及びワニスを含有する。電子供与性染料前駆体及び電子受容性化合物が実質的に未発色の状態であるために、通常、それぞれが固体粒子としてスクラッチ発色用インキ中に含有されている。
【0025】
スクラッチ発色用インキ中の含有成分について説明する。スクラッチ発色用インキに含有される無色または淡色の電子供与性染料前駆体としては、一般に感圧記録材料や感熱記録材料に用いられているものに代表されるが、特に限定されるものではない。
【0026】
具体的な電子供与性染料前駆体の例としては、トリアリールメタン系化合物またはインドリル基を持つ化合物などが挙げられる。具体例としては、3,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(2−フェニルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−メチルピロール−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド等が挙げられる。
また、フルオラン骨格を持つ化合物も電子供与性染料前駆体として好ましく用いられる。具体例としては、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,6−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)フルオラン等が挙げられる。
【0027】
スクラッチ発色用インキに含有される電子受容性化合物としては、一般に感圧記録材料、または感熱記録材料に用いられる酸性物質に代表されるが、これらに制限されることはない。例えば、フェノール誘導体、芳香族カルボン酸誘導体、N,N′−ジアリールチオ尿素誘導体、アリールスルホニル尿素誘導体、スルホンアミド誘導体、有機化合物の亜鉛塩などの多価金属塩、ベンゼンスルホンアミド誘導体、ジフェニルスルホン誘導体等を挙げることが出来る。
【0028】
ジフェニルスルホン誘導体の具体的な例としては、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−ベンジルオキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−プロポキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、3,4−ジヒドロキシ−4′−メチルジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−ベンゼンスルホニルオキシジフェニルスルホン、2,4−ジ(フェニルスルホニル)フェノール、4−ヒドロキシ−4′−メチルジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0029】
スクラッチ発色用インキに含有されるワニスには、バインダー樹脂、及び、必要に応じて、油、溶剤、更に各種の補助剤等が含まれている。ワニスの調製は従来公知の方法でよい。
【0030】
ワニスに含有されるバインダー樹脂の具体例としては、例えば、ロジンなどの天然樹脂、硬化ロジン、ロジンエステルなどの天然樹脂誘導体、そしてアルキド樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、セルロース誘導体、フェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ケトン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、オレフィン等の不飽和炭化水素を原料とした石油樹脂などの合成樹脂が挙げられる。
【0031】
ワニスに必要に応じて含有される油の具体例としては、例えば、アマニ油、菜種油、ヤシ油、オリーブ油、大豆油、桐油等の植物油、及びこれらを再生処理した植物油、スピンドル油、マシーン油、モビル油等の鉱物油が挙げられる。なお、油と溶剤の区別は原則として揮発性の有無により、不揮発性有機液体を油、揮発性有機液体を溶剤と呼ぶ。
【0032】
ワニスに必要に応じて含有される溶剤の具体例としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール等のアルコール系溶剤、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール系溶剤等が挙げられる。また、パラフィン、ナフテン系を主成分とした芳香族成分1%以下の石油系溶剤は不揮発性であるが、揮発性溶剤と同様に必要に応じて含有される。
【0033】
スクラッチ発色用インキ中、ワニス(ビヒクル)の種類やスクラッチ発色用インキ中のワニス含有量は印刷方法により異なるが、65〜85質量%の範囲にある場合が多い。また、印刷適性の面からは、スクラッチ発色用インキ中、染料前駆体含有量は7.0質量%以下とすることが多い。染料前駆体に対する電子受容性化合物の質量比率は、100〜1000%の範囲とする場合が多い。
【0034】
不可視情報印刷シートには、スクラッチ発色用インキ等の発色用インキによる不可視情報印刷部分が設けられ、更に、不正防止等の目的で、有色または無色の印刷用インキによる非情報印刷部分も必要に応じて設けられる。印刷インキには市販のものを用いてよい。
【0035】
不可視情報印刷シートに用いる支持体は、紙が主として用いられるが、紙の他に各種織布、不織布、合成樹脂フィルム、合成樹脂ラミネート紙、合成紙、金属箔、蒸着シート、あるいはこれらを貼り合わせ等で組み合わせた複合シートを目的に応じて任意に用いることが出来る。以上の中でも、汎用性やスクラッチ操作時における触感の面から紙を用いる場合が多い。紙としては上質紙、中質紙、あるいは塗工紙などが用いられる。板紙や厚紙も用途により適宜用いられる。なお、紙を用いる場合、不可視情報の透かし読み防止のため、填料配合増、塗工紙の採用、坪量の多い紙の採用、あるいは段ボール紙を採用したり、あるいは、汎用性を重視し、再生紙を用いることもある。再生紙は、古紙ないし故紙とも称される。印刷済み印刷用紙から再生紙を得る場合には、古紙パルプを得る際、脱墨しておくと、白色度が高まる。使用済みのコピー用紙や各種記録用紙を原料として再生紙を得る場合も同様である。不正防止や電子情報付与のため、支持体中にICチップ埋込みや、支持体上にICタグ貼り付け、バーコード印刷など公知の技術を用いた不可視情報印刷シートとしてもよい。
【0036】
次に、不可視情報印刷シートを得る方法の説明に移る。不可視情報印刷シートにおけるスクラッチ部及びその周辺には、地紋等を事前に各種印刷用インキを用いて印刷することが可能であるが、スクラッチ発色用インキの発色色相や、支持体面の色相と異なった色相の印刷用インキを使用することも出来る。
【0037】
不可視情報印刷シートを印刷するには、スクラッチ発色用インキ及び印刷用インキにより、オフセット印刷、グラビア印刷、凸版印刷等の各種印刷機及び印刷方法を用いて作製されるが、印刷精度や印刷の作業性からは特にオフセット印刷により作製することが好ましい。オフセット印刷による場合は、通常のオフセット印刷用インキを用いる印刷条件と同様でよく、給湿液を用いる方法または水無し平版を用いる方法のどちらでもよい。スクラッチ発色用インキ及び印刷用インキの印刷盛量は特に限定されない。
【0038】
次に、本発明の加熱装置について説明する。本発明には印刷機及び検査方法も含まれるが、加熱装置の説明中、併せて述べていく。また、以下の説明は、不可視情報印刷シートを念頭に置いたものであるが、熱発色用などの不可視印刷シートも同様に対象と出来る。
これまで説明したように、不可視情報印刷シートの構成は不可視情報印刷部分が判別出来ないように設計されており、実際の印刷中においても不可視情報印刷部分がそのままでは判別出来ず、印刷品質を確認するために印刷位置やインキ盛り量、印刷汚れなどを検知することが困難であり、印刷機の調整に支障をきたすことすらあった。また、検査においては不可視情報印刷シートの一部または全部を加熱により発色させ、なるべく短時間かつ簡便に不可視情報印刷部分の可視化のための操作が行われることが望ましい。本発明の加熱装置はこれらの要求を満足するものである。また、検査方法としては、印刷中もしくは印刷後の不可視情報印刷シートの不可視情報印刷部分を、好ましくは110℃以上、210℃以下の紙面温度になるように加熱することで不可視情報印刷部分を可視化することを特徴とする。印刷中に測定すると作業時間の短縮、印刷機を停止しなくてもよいなど工程面で有利である。紙面温度が好ましい温度より低いと発色が不十分となり、発色濃度から盛り量の最適化が出来ない恐れがある。他方、紙面温度が好ましい温度範囲より高いと発色成分が支持体中に浸透して発色濃度低下を招いたり、発色成分以外の成分が焦げて発色濃度が高くなる恐れがある。なお、紙面温度は、一旦、上記の好ましい範囲に達すればよく、発色濃度を測定したり発色部分を観察する時点では紙面温度はより低くてもよい。
【0039】
次に、本発明の加熱装置が持つ好ましい加熱のための部品について述べる。加熱のための部品としては、加熱のための平面、特に鏡面を有する熱板が好ましい。加熱装置の温度管理と熱供給には電気的加熱、センサー等による加熱温度の制御がされていることが好ましい。熱板の材質に特に限定はないが、熱伝導率のよいステンレスなどの金属板あるいはセラミック板が迅速な加熱のためには好ましい。熱板の面積は不可視情報印刷シートの面積に応じて広い方が好ましい。加熱装置は印刷機に取り付けることが、シート搬送中の加熱には好ましい。加熱装置を印刷機に取り付ける時の位置はインキがシート上に設けられて以降のシート搬送経路下流側の適当な場所であれば、特に限定はない。
しかし、状況によっては印刷機と独立して加熱装置があってもよい。その場合、作業者の火傷防止や作業効率向上のためには、熱板を支持する部分に取っ手が付いているとなおよい。作業者は取っ手を持ち、熱板を搬送中の不可視情報印刷シートに接触させることが出来る。必要に応じて熱板を不可視情報印刷シート上ですべらせてもよい。なお、熱板と不可視情報印刷シートとの接触の安定も重要である。加熱装置全体の質量として200g以上、より好ましくは300g以上、更に好ましくは500g以上あれば接触の安定のため好ましい。但し、5kg以下、より好ましくは3kg以下、更に好ましくは2kg以下であることが操作や持ち運びの容易性向上のため好ましい。但し、これらの質量についての好ましい条件は、加熱装置を印刷機に取り付ける場合には当てはまらない。なお、検査のための加熱時間に特に制限はないが、好ましくは0.1秒から10秒、より好ましくは0.5秒から5秒の接触で十分である。加熱時間が好ましい範囲より短い場合、発色が十分でない恐れがある。加熱時間が好ましい範囲より長い場合、発色成分が支持体に沈み込み発色濃度を低く見てしまう恐れがある。
【0040】
他方、熱風または赤外線を利用した加熱のための部品を持つ加熱装置により不可視情報印刷部分を発色させて検査するとシートの紙面温度の制御が困難となる恐れがある。あるいは本発明の加熱装置を用いず、熱的発色以外の方法、例えば、器具等により引っ掻く操作、すなわち、スクラッチ操作による発色では発色濃度測定に必要な面積を搬送中、速やかには得られず、かつ、印刷中または印刷直後はスクラッチ操作による発色濃度が一定しないため検査精度が実用的水準に達しない。
【0041】
なお、上記加熱装置による不可視情報印刷シートの発色で盛り量の最適化を図る場合、発色濃度測定機器を用いることが検査精度を上げることと省人化のために好ましい。ここで、測定機器に上限値、下限値、中間値を制御のための機器に覚え込ませ、フィードバック出来るようにすると無人化が可能となりより好ましい。念のため、人間が目視で作業する場合の説明もしておく。補助的に標準の発色濃度の印刷部分を持つ参照シートを用意しておき対比すると、精度が向上し好ましい。発色濃度は、上限、中間値、下限の3通り用意しておくと印刷条件の微調整も容易になり好ましい。ここで、本発明の加熱装置により得られる発色濃度は、熱的に発色させた濃度であり、軽いスクラッチ操作による発色濃度よりやや高めになる傾向を考慮する必要がある。そこで、スクラッチ操作による発色が許容される上限、中間値、下限のものを別途、本発明の加熱装置により発色させたもの、あるいはそれと同様の色相及び濃度の印刷物を参照シートとして用いることも出来る。検査時、不可視情報印刷シートの発色させた部分を参照シートと対比して上限と下限の間の濃度であれば良品とわかる。不可視情報が細かい文字、数字、記号、模様などから構成されている場合は、発色濃度測定機器を用いるより、参照シートを用いる検査方法の方が良品を簡便に得られ好ましい。また、中間値の参照シートに近い程、盛り量が良好であることがわかる。本発明の加熱装置及びそれを用いた検査方法によると発色用インキの、例えば発色成分含有量等の影響を受けない利点がある。参照シートを用いることにより周囲の明るさなどによる検査者の判断ミスも防止出来る。なお、不可視情報印刷シートの用途や印刷原稿、発色色相等により好ましい盛り量の範囲も異なるので参照シートはその都度、適したものを選択するとよりよい。また、不可視情報印刷シートに用いる支持体と参照シートに用いる支持体とは同じ種類のものであればより正確な対比が出来、好ましい。
なお、参照シートによる照合を省人化ないし無人化するためには、加熱装置ないし印刷機が大がかりにはなるが画像検出装置を加熱装置ないし印刷機に取り付けてもよい。画像検出装置は発色させた画像を撮影し、画面での照合、あるいは画像データの各種数値からの照合が出来る。複雑な画像でも印刷機を止めず盛り量検量出来る利点がある。なお、撮影時には画像検出装置を印刷速度と同調させて動かしてもよい。
【0042】
次に、好ましい態様として測定機器を有する本発明の加熱装置を、オフセット輪転印刷機に組み込んだ形態について説明する。図1は、オフセット輪転印刷機の全体概略図である。図1において、オフセット輪転印刷機の印刷の流れを説明すると、給紙部1から繰り出した巻き取り紙5を印刷部2に導いてここで印刷し、次いで加工部3に導いてここで所定形状の印刷物に加工し、排紙部4に至る、という流れである。
【0043】
オフセット輪転印刷機の印刷の流れの中で、印刷位置やインキ盛り量、印刷汚れなどの印刷品質の確認は主に排紙部4で行われており、走行している印刷物を直接目視、あるいは排紙部4より印刷物を採取する等の方法で確認している。しかしながら、前述したようにスクラッチ発色用インキを用いると不可視情報の形態に関わらず印刷部分が視認しづらいため、図1の加熱のための部品を有する加熱装置6のように印刷機自体に加熱装置を組み込み、搬送中に都度検査ができるようにすることが好ましい。具体的には、印刷機の最後尾の印刷ユニットから印刷物が巻き取られる間に加熱装置を設置すれば、印刷に支障がなく、かつ印刷部分を容易に視認出来るので好ましい。加熱装置は、上記各図に限らず、各種装置、例えば、センサーなどを印刷機に固定的に取り付ける場合と同様の要領で好ましく取り付けられる。
【0044】
また、加熱装置はスクラッチ発色用インキを用いない印刷では不要のものであるので、必要に応じて可動式あるいは取り外し式にしておくことも出来る。可動式では印刷機に設置されたレール上に加熱装置を構成しておき、スクラッチ発色用インキを用いる印刷を行う時のみ、レール上の加熱装置をスライドさせ所定の位置へ移動させる。取り外し式では、印刷機と加熱装置に固定具を設置し、スクラッチ発色用インキを用いる印刷を行う時のみ、加熱装置を印刷機に取り付ける。
なお、図1では加工部3に加熱のための部品を有する加熱装置6を設置しているが、印刷機の仕様は多様であるため、印刷に支障がなく検査に適している位置であれば、この限りではない。
【0045】
次に、本発明の加熱装置の構成を、具体的に説明する。図2は、本発明の加熱装置の構成の好ましい一例を示す図である。該加熱装置は、走行している不可視情報印刷シート7をガイドロール8により熱板9へ接触させ、スクラッチ発色用インキで印刷された不可視情報印刷部分を発色させている態様を示している。なお、スクラッチ発色用インキの種類により最適な発色温度は異なることもあり、また、不可視情報印刷シートの種類や印刷速度によって発色に必要な温度まで到達させるエネルギーが異なるため、熱板9の温度は任意に調節出来ることや、熱板9や不可視情報印刷シート7の紙面温度を温度センサー10で管理することが好ましい。また、加熱時間を調節することを目的に、熱板9の長さも都度調整出来ることが好ましい。熱板9と不可視情報印刷シート7との接触時間は特に制限はないが、好ましくは0.1秒から10秒、より好ましくは0.5秒から5秒の接触で十分である。また、熱板9の加熱温度は温度センサー10で測定された紙面温度で好ましくは110℃以上、210℃以下になるように調整する。なお熱板9は紙面に常時接触している必要はなく、検査するたびに必要に応じて加温し接触させることが省エネルギーのため好ましい。
また、該加熱装置を、例えば印刷機に取り付けたレール上に構成し、スクラッチ発色用インキを用いる印刷の時のみ加熱装置をスライドさせて所定の位置に取り付けたり、印刷機と加熱装置に固定具を設置し、スクラッチ発色用インキを用いる印刷を行う時のみ、加熱装置を印刷機に装着するようにしてもよい。
また、スクラッチ発色用インキを用いない印刷の時は、不可視情報印刷シート7をガイドロール8に導かず、熱板9に接触させないようにしてもよい。
【0046】
温度センサー10は、例えば熱電対などの接触式温度センサーでもよいが、印刷物が移動していることを考慮すると、常時紙面に接触している必要はなく、検査するたびに必要に応じて接触させることが好ましい。または、例えば赤外線のエネルギー量を温度に換算する放射温度計など非接触式温度センサーがより好ましい。温度センサー10の設置及び測定位置は任意であるが、熱板の直近であることがより好ましい。
熱板からシート搬送の下流方向に向かい、好ましくは100mm以内、より好ましくは50mm以内に非接触式温度センサーを設けると通常の印刷機の搬送速度であれば制御に必要な紙面温度測定が可能である。一方、熱板からの輻射熱による温度センサーや測定値への影響を防ぐため、熱板からシート搬送の下流方向に向かい、5mm以上離れて温度センサーを設けることも必要である。
また、温度センサーは単独で取り付けてもよいが、加熱装置と一体としてユニットとして取り扱い出来る方が、スクラッチ発色用インキを用いない印刷において加熱装置を脱着する場合においてより好ましい。
【0047】
印刷速度によっては熱板と不可視情報印刷シートとの接触時間を好ましい範囲に保つために必要な熱板の長さが長くなってしまうので、熱板をレール上に取り付け、可動式にしてシートの移動と共に動きシート上の対象部分を加熱する加熱装置及びそれを用いた検査方法もある。この装置及び方法によれば、発色用インキの盛り量検量、印刷汚れの検出、位置合わせに関して、不可視情報印刷シートの一部を発色させるだけで足りるという点からも好ましい。また、印刷速度と温度センサー10からの測温結果をもとに演算し、熱板9に加えるエネルギー量を調整する方法も好ましいが、印刷速度と連動して熱板9のエネルギー量を調整する加熱装置及びそれを用いた検査方法もある。
また、次に述べる熱ロールによる加熱装置及び検査方法もある。
【0048】
図3は、本発明の加熱装置の別の態様を示す構成図である。該加熱装置の目的、構成は前述の加熱装置と同様であるが、加熱のため熱板を使用し用紙に接触させると、用紙の種類によっては用紙に傷やしわが発生したり、摩擦による静電気や紙紛の発生、更には断紙に至る場合もあるため、加熱のための部品として熱ロール11を使用している。なお、加熱のための部品にロールを使用すると、熱板と比較して加熱時間の調節が難しくなるが、図4に示すように通紙経路を変更することや、熱ロール11の径を変更することで対応出来る。
この場合にも、熱ロール11と不可視情報印刷シート7との接触時間は特に制限はないが、好ましくは0.1秒から10秒、より好ましくは0.5秒から5秒の接触で十分である。また、熱ロール11の加熱温度は温度センサー10で測定された紙面温度で好ましくは110℃以上、210℃以下になるように調整する。なお熱ロール11は紙面に常時接触している必要はなく、検査するたびに必要に応じて接触させることが好ましい。
なお、印刷中に加熱するための手段としては熱ロールを設けた場合、印刷速度などに対応して速やかに供給熱量や表面温度を制御するためには上記の加熱のための平面がよりよい。しかし、熱ロールは平面に比べ省エネルギーが出来る。
また、該加熱装置を、例えば印刷機に取り付けたレール上に取り付け、スクラッチ発色用インキを用いる印刷の時のみ加熱装置をスライドさせて所定の位置に取り付けたり、印刷機と加熱装置に固定具を設置し、スクラッチ発色用インキを用いる印刷を行う時のみ、加熱装置を印刷機に取り付けるようにしてもよい。
また、スクラッチ発色用インキを用いない印刷の時は、不可視情報印刷シート7をガイドロール8に導かず、熱ロール11に接触させないようにしてもよい。
【実施例】
【0049】
以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0050】
(作製例1)
作製例1は、ワニス、各インキベース、スクラッチ発色用インキの作製例である。
(ワニスの作製)
植物油としてアマニ油20質量部、ロジン変性フェノール樹脂(質量平均分子量60000、酸価20mgKOH/g)50質量部、スピンドル油20質量部を配合して約200℃で約1時間加熱して樹脂を溶解させた後、スピンドル油10質量部、アルミニウムキレート剤1質量部を添加して約180℃で約1時間加熱し、ワニスを得た。
(スクラッチ発色用電子供与性染料前駆体インキベースの調製)
上記ワニス50質量部、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン30質量部、スピンドル油5質量部を3本ロールミルで練肉し、上記ワニス10質量部、スピンドル油10質量部を添加することによってスクラッチ発色用電子供与性染料前駆体インキベース(a)を調製した。
(スクラッチ発色用電子受容性化合物インキベースの調製)
上記ワニス50質量部、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン30質量部、スピンドル油5質量部を3本ロールミルで練肉し、上記ワニス10質量部、スピンドル油10質量部を添加することによってスクラッチ発色用電子受容性化合物インキベース(b)を調製した。
(スクラッチ発色用インキの調製)
上記2種のインキベース(a)、(b)をそれぞれ1:2の質量比率で混合し、ドライヤーのナフテン酸マンガンを該インキベース合計の0.2質量%添加し、十分撹拌して均質化することによって、スクラッチ発色用インキを得た。
【0051】
(作製例2)
次の条件で不可視情報印刷シートを得る条件を定めた。
(印刷速度)
150m/min
(印刷に使用した用紙)
三菱IJフォーム用紙 157g/m 三菱製紙株式会社製
(給湿液)
5%IPA−0.2%SEVENSTAR(大日精化社製)の混合液
(使用刷版)
HPF 0.24mm(富士フイルム社製)
(印刷用インキ)
SCR SOY TF墨(東洋インキ製造株式会社製)
(スクラッチ発色用インキ)
作製例1で得たものを用いた。
(インキ膜厚)
1.4μm
(絵柄)
太さ0.25ポイント、長さ20mmの線の十字型(図1)
印刷用インキ部分とスクラッチ発色用インキ部分は同じ絵柄である。なお、印刷機の調整が正常に行われれば、印刷用インキ部分とスクラッチ発色用インキ部分の十字型が一致した印刷物となる。
(印刷機)
MVF−18D(株式会社ミヤコシ製)
(印刷順序)
先に印刷用インキ部分、次いでスクラッチ発色用インキ部分を印刷した。
【0052】
(作製例3)
印刷速度を60m/minに調整した以外は、作製例2と同様の条件とした。
【0053】
(作製例4)
印刷速度を120m/minに調整した以外は、作製例2と同様の条件とした。
【0054】
(実施例1)
検査に用いる熱板の温度確認
予め鏡面を有する熱板(三洋電機株式会社製アイロン、商品名A−633F)を熱しておき、作製例2の印刷に使用した用紙に接触させ、すぐに非接触式温度計(オプテックス株式会社製THERMO−HUNTER PT−2L/LD(J))で熱板を接触させたところの温度を測り、紙面表面温度測定が可能であることを確認した。
熱板による検査
次に、作製例2においてシートの搬送中、スクラッチ発色用インキ部分の十字型が印刷されていると思われる部分に紙面表面温度が110℃になるように上記熱板を調整し、2秒接触させた。十字型が印刷されている部分に接触していたことは発色により確認出来た。
【0055】
(実施例2)
紙面表面温度を150℃になるように熱板の温度を調整した以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0056】
(実施例3)
紙面表面温度を190℃になるように熱板の温度を調整した以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0057】
(実施例4)
紙面表面温度を210℃になるように熱板の温度を調整した以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0058】
(実施例5)
紙面表面温度を90℃になるように熱板の温度を調整した以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0059】
(実施例6)
紙面表面温度を220℃になるように熱板の温度を調整した以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0060】
(比較例1)
熱板により加熱しなかった以外は、実施例1と同様の操作を行った。紙面表面温度を測定すると18℃であった。
【0061】
(熱発色部分の視認性評価)
実施例1〜6で得られた不可視情報印刷シートを熱板により発色させた部分の目視評価により視認性を以下の3段階で評価した。
○は熱発色した十字型の読み取りも良好である。△は熱発色した十字型の読み取りは可能であるがやや不鮮明である。×は熱発色した十字型の読み取りがかなり不鮮明である。××は熱発色した十字型の読み取りが不可能である。なお、○と△と×が、実用に供するレベルのものである。
【0062】
評価の結果、各実施例は視認性が実用レベルであるが、特に実施例2〜3において、視認性評価が○で良好であることがわかった。一方、実施例5のように加熱温度が低い場合は、発色が不鮮明で、視認性評価は×、実施例6のように加熱温度が高い場合は、発色性が劣ると共に、シート自体の変色が認められたため、視認性評価は×であった。加熱していない比較例1では視認性評価は××であった。このため加熱温度は実施例1〜4に挙げられる紙面表面温度110℃以上かつ210℃以下が好ましいことがわかった。
【0063】
(実施例7)
作製例2においてシートの搬送中、スクラッチ発色用インキ部分の十字型が印刷されていると思われる部分が紙面表面温度150℃になるように調整した熱板を5秒接触させ、印刷インキ部分の十字型とのズレを定規にて測定し、印刷機の調整を行い再度作製例2の条件で印刷し、調整済みの不可視情報シートを得た。調整済みの不可視情報シートのうち、印刷インキ部分の十字型をよく観察しても、印刷インキ部分のみ視認されている。ここで印刷インキ部分の十字型に紙面表面温度を150℃になるように調整した熱板を5秒接触させ、十字型を観察したところ、印刷インキ部分と熱発色したスクラッチ発色用インキ部分が重なりあって観察され、印刷インキ用の版とスクラッチ発色インキ用の版のズレの程度を測定することが出来た。
【0064】
スクラッチ発色用インキを用いた不可視情報印刷シートでは、印刷直後の状態では視認が困難であり、印刷機の調整の中でも重要な見当合わせを行うことが困難であったが、実施例1〜7の加熱装置及びそれを用いた検査方法により見当合わせを迅速かつ簡便に行うことが出来た。
【0065】
(実施例8)
作製例3の条件において、不可視情報印刷シートを印刷機加工部に組み込んだ図2記載の加熱装置によって加熱した。なお、紙面表面温度は150℃、熱板の全長は1m(加熱距離1m、加熱時間1秒)とした。
【0066】
(実施例9)
作製例3の条件において、不可視情報印刷シートを印刷機加工部に組み込んだ図4記載の加熱装置によって加熱した。なお、紙面表面温度を150℃になるように熱ロールの温度を調整し、熱ロールは直径16cm×4本(加熱距離1m、加熱時間1秒)とした。
【0067】
(実施例10)
作製例4の条件を適用(加熱時間0.5秒)した以外は、実施例8と同様の操作を行った。
【0068】
(実施例11)
作製例4の条件を適用(加熱時間0.5秒)した以外は、実施例9と同様の操作を行った。
【0069】
(実施例12)
紙面表面温度を210℃とした以外は、実施例9と同様の操作を行った。
【0070】
(実施例13)
紙面表面温度を220℃とした以外は、実施例9と同様の操作を行った。
【0071】
(比較例2)
作製例3の条件において、加熱装置により不可視情報印刷シートの加熱は行わなかった。紙面表面温度を測定すると18℃であった。
【0072】
(熱発色部分の視認性評価)
実施例8〜13及び比較例2で得られた不可視情報印刷シートの目視評価により視認性を、前記視認性評価に記載したのと同様の方法で評価した。
【0073】
評価の結果、各実施例は視認性が実用レベルであるが、特に実施例8、9、10、11、12において、視認性評価が○で良好であることがわかった。中でも実施例10、11は、加熱時間が短縮されても視認性が維持していたことから、熱板や熱ロールの温度を調整することにより、印刷速度の高速化や加熱装置の小型化が可能であることを示した。なお、紙面温度を高くした実施例13においては視認性評価が×となった。一方、比較例2のように加熱装置により加熱しない場合は、発色せず視認性評価は××であり、インキ盛り量の検知が出来なかった。
【0074】
(インキ盛り量の検定)
スクラッチ発色させた時の発色濃度が、許容される上限、中間値、下限となる不可視情報シートを予め用意し、そのシートを紙面表面温度が150℃になるように熱板により加熱し発色させ、インキ盛り量の検定標準シートとした。また、該標準シートと実施例8〜13を比較したところ、実施例10、11は発色濃度が許容される下限、実施例8、9、12、13が許容される中間値であり、実施例8〜13はほぼ目標のインキ盛り量であることがわかった。
【0075】
スクラッチ発色用インキを用いた不可視情報印刷シートでは、印刷直後の状態では視認が困難であり、印刷機の調整の中でも重要なインキ盛り量の検知を行うことが困難であったが、上記より、本発明の加熱装置、それを備えた印刷機及びその加熱装置を用いた検査方法によりインキ盛り量の検定を迅速かつ簡便に行うことが出来た。
【0076】
(実施例14)
実施例8及び実施例9の加熱装置のシート搬送方向下流側に、画像検出装置(サンテック有限会社製写楽2)を配置し、作製例3の条件において絵柄(印刷インキ部分の十字型)を検出出来るようにした。この場合、画像検出装置は印刷機の速度に同調し、搬送中の紙面の、印刷インキ部分の十字形の位置で画像を撮影しディスプレイに映し出す。このようにして十字型を観察したところ、印刷インキ部分と熱発色したスクラッチ発色用インキ部分が重なりあって観察され、印刷インキ用の版とスクラッチ発色インキ用の版のズレの程度を連続的に測定することが出来、印刷機を停止しなくてもよいため、迅速かつ簡便に印刷機の調整が出来た。
【0077】
また、実施例8、9及び14の実施中に、ロングラン印刷での盛り量の変動の検知や、印刷条件の変化による印刷汚れの検知を印刷中に容易に検出することが出来た。これは本発明の予期せぬ効果である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の加熱装置、それを備えた印刷機及びその加熱装置により、不可視情報印刷シートなどの不可視印刷シートの製造時における、印刷位置やインキ盛り量などの確認が容易に可能となる。活用例として、印刷機に加熱装置や可視化装置などを取り付けることにより、搬送中、すなわち、印刷中に印刷位置などがオンラインで検査可能となることから、作業時間の大幅な短縮が望める。また、発色濃度などを測定することにより、インキ盛り量の管理も迅速かつ正確に実施出来る。
【0079】
なお、本発明の加熱装置、それを取り付けた印刷機及びその加熱装置は、印刷時点の検量に有用であるが、加熱装置及び検査方法の発明は、出荷時点や流通段階、仕入れ段階、在庫段階の品質検査などに幅広く使われる。そのため、スリッター、梱包装置などに本発明の加熱装置及び検査方法を転用して実施出来る。
【符号の説明】
【0080】
1 給紙部
2 印刷部
3 加工部
4 排紙部
5 巻き取り紙
6 加熱装置
7 不可視情報印刷シート
8 ガイドロール
9 熱板
10 温度センサー
11 熱ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の同一面上に、電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物及びワニスを含有する発色用インキにより不可視印刷部分を設け不可視印刷シートを製造する印刷機に取り付ける、搬送中に不可視印刷部分を加熱出来る不可視情報印刷シートの加熱装置。
【請求項2】
加熱のための部品が熱ロールであることを特徴とする請求項1記載の加熱装置。
【請求項3】
加熱のための部品が熱板であることを特徴とする請求項1記載の加熱装置。
【請求項4】
加熱のための部品の、シート搬送の下流方向近傍に温度センサーを設けることを特徴とする請求項1記載の加熱装置。
【請求項5】
支持体の同一面上に、電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物及びワニスを含有する発色用インキにより不可視印刷部分を設け不可視印刷シートを製造する印刷機と独立した、搬送中に不可視印刷部分を加熱出来る不可視情報印刷シートの加熱装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載の加熱装置を取り付けた印刷機。
【請求項7】
加熱装置のシート搬送方向下流側に画像検出装置を設けた請求項6記載の印刷機。
【請求項8】
請求項1から5のいずれかに記載の加熱装置を用いることを特徴とする検査方法。
【請求項9】
不可視情報印刷部分を紙面表面温度が、110℃以上かつ210℃以下に加熱することを特徴とする請求項8記載の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−228366(P2010−228366A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80191(P2009−80191)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】