説明

不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器

【課題】不完全燃焼ガスを確実に検出することができる不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器を提供すること。
【解決手段】LPガスセンサ5からのセンサ出力で検出したLPガス濃度が記憶手段7に記憶されているLPガス警報判定濃度以上になったか否かを判定するLPガス漏れ判定手段3aと、LPガス濃度がLPガス警報判定濃度以上になったと判定された場合に、LPガス漏れ警報を報知するLPガス漏れ警報手段8aと、不完全燃焼ガスセンサ6からのセンサ出力で検出した不完全燃焼ガス濃度が不完全燃焼警報判定濃度以上になったか否かを判定する不完全燃焼判定手段4aと、不完全燃焼ガス濃度が不完全燃焼警報判定濃度以上になったと判定された場合に、不完全燃焼警報を報知する不完全燃焼警報手段8bとを有する不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器1であって、周囲のガスを拡散させるためのガス拡散手段9を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般家庭で発生する不完全燃焼事故は、室内に設置された給湯器等で発生する不完全燃焼ガスに起因していることが多く、不完全燃焼時には、燃焼排ガスの熱により、中毒原因となる一酸化炭素ガスも天井付近に偏在し易い。したがって、不完全燃焼警報器の設置位置に関しては、天井から30cm以内であることがガス警報器工業会の設置マニュアル等にて推奨されている。都市ガス市場に関しては、都市ガスのガス漏れが発生した場合、漏れた都市ガスも天井付近に偏在することになるので、都市ガスを検出してガス漏れ警報を行う都市ガス警報器と不完全燃焼警報器の設置位置が同じであることもあり、不完全燃焼検知機能付都市ガス警報器の普及率が非常に高い。
【0003】
一方、LPガス(液化石油ガス)のガス漏れを検出してガス漏れ警報を行うLPガス漏れ警報器が提案されている(たとえば、特許文献1参照。)。このLPガス漏れ警報器は、LPガスのガス漏れが発生した場合、漏れたLPガスが床面付近に偏在することになるので、床面に近い場所(床面から高さ30cm以内)に設置されるものである。
【特許文献1】特開2005−157417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、LPガス市場においては、不完全燃焼警報器とLPガス漏れ警報器との設置位置が異なることも起因し、不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器は、ほとんど普及しておらず、万が一の場合の不完全燃焼事故防止がLPガス業界では遅れているのが現状である。
【0005】
そこで本発明は、上述した課題に鑑み、不完全燃焼ガスを確実に検出することができる不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明の不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器は、図1の基本構成図に示すように、LPガスセンサ5からのセンサ出力に基づいて検出したLPガス濃度が記憶手段7に記憶されているLPガス警報判定濃度以上になったか否かを判定するLPガス漏れ判定手段3aと、前記LPガス漏れ判定手段3aでLPガス濃度がLPガス警報判定濃度以上になったと判定された場合に、LPガス漏れ警報を報知するLPガス漏れ警報手段8aと、不完全燃焼ガスセンサ6からのセンサ出力に基づいて検出した不完全燃焼ガス濃度が前記記憶手段7に記憶されている不完全燃焼警報判定濃度以上になったか否かを判定する不完全燃焼判定手段4aと、前記不完全燃焼判定手段4aで不完全燃焼ガス濃度が不完全燃焼警報判定濃度以上になったと判定された場合に、不完全燃焼警報を報知する不完全燃焼警報手段8bとを有する不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器1であって、周囲のガスを拡散させるためのガス拡散手段9を備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項1記載の発明においては、不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器1は、LPガス漏れ判定手段3a、LPガス漏れ警報手段8a、不完全燃焼判定手段4a、不完全燃焼警報手段8bを備えている。LPガス漏れ判定手段3aはLPガスセンサ5からのセンサ出力に基づいて検出したLPガス濃度が記憶手段7に記憶されているLPガス警報判定濃度以上になったか否かを判定し、LPガス漏れ判定手段3aでLPガス濃度がLPガス警報判定濃度以上になったと判定された場合に、LPガス漏れ警報手段8aはLPガス漏れ警報を報知する。不完全燃焼判定手段4aは、不完全燃焼ガスセンサ6からのセンサ出力に基づいて検出した不完全燃焼ガス濃度が記憶手段7に記憶されている不完全燃焼警報判定濃度以上になったか否かを判定し、不完全燃焼判定手段4aで不完全燃焼ガス濃度が不完全燃焼警報判定濃度以上になったと判定された場合に、不完全燃焼警報手段8bは不完全燃焼警報を報知する。このような不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器1は、さらに、周囲のガスを拡散させるガス拡散手段9を備えている。それにより、不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器が室内の床面付近に設置されていても、不完全燃焼により室内の天井付近に偏在する不完全燃焼ガス(一酸化炭素ガス)がガス拡散手段9で床面付近まで拡散され、不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器において不完全燃焼ガスを確実に検出することができ、不完全燃焼検知機能をスムーズに行わせることができる。
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項2記載の発明は、請求項1記載の不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器において、前記不完全燃焼ガスセンサ6からのセンサ出力に基づいて検出した不完全燃焼ガス濃度が、前記不完全燃焼警報判定濃度より低く設定され前記記憶手段7に記憶された拡散手段駆動用不完全燃焼判定濃度以上になったか否かを判定する第1の拡散手段駆動判定手段4bをさらに備え、前記ガス拡散手段9は、前記第1の拡散手段駆動判定手段4bで不完全燃焼ガス濃度が拡散手段駆動用不完全燃焼判定濃度以上になったと判定された場合に駆動開始されることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明においては、不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器1は、不完全燃焼ガスセンサ6からのセンサ出力に基づいて検出した不完全燃焼ガス濃度が、不完全燃焼警報判定濃度より低く設定され記憶手段7に記憶された拡散手段駆動用不完全燃焼判定濃度以上になったか否かを判定する第1の拡散手段駆動判定手段4bをさらに備えている。ガス拡散手段9は、第1の拡散手段駆動判定手段4bで不完全燃焼ガス濃度が拡散手段駆動用不完全燃焼判定濃度以上になったと判定された場合に駆動開始される。それにより、警報器の消費電力を軽減させると共にガス拡散手段の寿命を長くすることができる。
【0010】
上記課題を解決するためになされた請求項3記載の発明は、請求項2記載の不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器1において、前記LPガスセンサ5からのセンサ出力に基づいて検出したLPガス濃度が、前記LPガス警報判定濃度より低く設定され前記記憶手段7に記憶された拡散手段駆動用LPガス判定濃度以上になったか否かを判定する第2の拡散手段駆動判定手段3bをさらに備え、前記ガス拡散手段9は、前記第2の拡散手段駆動判定手段3bでLPガス濃度が拡散手段駆動用LPガス判定濃度以上になったと判定された場合にも駆動開始されることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明においては、不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器1は、LPガスセンサ5からのセンサ出力に基づいて検出したLPガス濃度が、LPガス警報判定濃度より低く設定され記憶手段7に記憶された拡散手段駆動用LPガス判定濃度以上になったか否かを判定する第2の拡散手段駆動判定手段3bをさらに備えている。ガス拡散手段9は、第2の拡散手段駆動判定手段3bでLPガス濃度が拡散手段駆動用LPガス判定濃度以上になったと判定された場合にも駆動開始される。それにより、ガス漏れ警報器が、床面よりも規格上許される高い位置に設置された場合でも、漏れたLPガスの拡散を促し、LPガス漏れ検知機能をスムーズに行わせることができる。
【0012】
上記課題を解決するためになされた請求項4記載の発明は、請求項2または3記載の不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器において、前記ガス拡散手段9は、前記LPガス漏れ判定手段3aでLPガス濃度がLPガス警報判定濃度以上になったと判定された場合に、駆動停止されることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明においては、ガス拡散手段9は、LPガス漏れ判定手段3aでLPガス濃度がLPガス警報判定濃度以上になったと判定された場合に、駆動停止される。それにより、警報器がLPガス漏れ警報状態にある場合は、既に警報を行っていることおよび爆発する可能性のある雰囲気中で誘爆する可能性があることなどを考慮した安全性のある動作を行わせることができる。
【0014】
上記課題を解決するためになされた請求項5記載の発明は、請求項2記載の不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器において、ガスメータからのガス流量有りを表す流量判定信号を受信する受信手段をさらに備え、前記ガス拡散手段9は、前記受信手段で、前記流量判定信号を受信した場合にも駆動開始されることを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明においては、不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器は、ガスメータからのガス流量有りを表す流量判定信号を受信する受信手段をさらに備え、ガス拡散手段9は、受信手段で、流量判定信号を受信した場合にも駆動開始される。それにより、ガス拡散手段9は、普段は停止しており、燃焼機器が使用されている可能性が高い状況になると駆動開始されるので、警報器の消費電力を軽減させると共にガス拡散手段の寿命を長くすることができる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、警報器が室内の床面付近に設置されていても、不完全燃焼により室内の天井付近に偏在する不完全燃焼ガス(一酸化炭素ガス)がガス拡散手段9で床面付近まで拡散され、警報器において不完全燃焼ガスを確実に検出することができ、不完全燃焼検知機能をスムーズに行わせることができる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、警報器の消費電力を軽減させると共にガス拡散手段の寿命を長くすることができる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、ガス漏れ警報器が、床面よりも規格上許される高い位置に設置された場合でも、漏れたLPガスの拡散を促し、LPガス漏れ検知機能をスムーズに行わせることができる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、ガス漏れ警報器がLPガス漏れ警報状態にある場合は、既に警報を行っていることおよび爆発する可能性のある雰囲気中で誘爆する可能性があることなどを考慮した安全性のある動作を行わせることができる。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、ガス拡散手段9は、普段は停止しており、燃焼機器が使用されている可能性が高い状況になると駆動開始されるので、警報器の消費電力を軽減させると共にガス拡散手段の寿命を長くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0022】
(第1の実施形態)図2は、本発明の第1の実施形態に係る不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器の構成を示すブロック図である。図2において、本発明の不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器1は、電源回路2、LPガス検出回路3、不完全燃焼ガス検出回路4、LPガスセンサ5、一酸化炭素センサ6、記憶回路7、警報回路8およびガス拡散用ファン9から構成されている。すなわち、図2の不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器1は、現在市販されている普及率の高いLPガス漏れ警報器に、不完全燃焼検知機能と、不完全燃焼排ガスをガス漏れ警報器が設置された床面付近まで拡散させるガス拡散用ファン9を設けた構成となっている。
【0023】
電源回路2は、AC電源に接続され、AC電源からのAC電圧を適宜な直流電圧に変換して各部に供給する。LPガス検出回路3は、請求項におけるLPガス漏れ判定手段に相当し、警報器が設置される室内において漏洩したLPガスを検出する回路である。不完全燃焼ガス検出回路4は、請求項における不完全燃焼判定手段4aおよび第1の拡散手段駆動判定手段4bに相当し、警報器が設置される室内において不完全燃焼ガス、すなわち一酸化炭素ガスを検出する回路である。
【0024】
LPガスセンサ5は、LPガスを検出するガスセンサである。一酸化炭素センサ6は、不完全燃焼ガスとしての一酸化炭素ガスを検出する不完全燃焼ガスセンサである。LPガスセンサ5および一酸化炭素センサ6としては、周知の接触燃焼式ガスセンサや半導体式ガスセンサが用いられる。LPガスセンサ5および一酸化炭素センサ6は、この実施の形態では別個のセンサとしているが、LPガスと一酸化炭素ガスの両方の検知ができるタイプの1個のガスセンサを使用しても良い。
【0025】
記憶回路7は、請求項における記憶手段に相当し、たとえば、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory )等のメモリであり、予め定められた、LPガス検出時LPガス漏れ警報を行う基準となるLPガス警報判定濃度と、一酸化炭素ガス検出時不完全燃焼警報を行う基準となる不完全燃焼警報判定濃度と、不完全燃焼警報判定濃度より低い値に設定され、一酸化炭素ガス検出時ガス拡散用ファン9を駆動する際の基準となるファン駆動判定濃度(拡散手段駆動用不完全燃焼判定濃度)と、LPガス警報判定濃度より低い値に設定され、LPガス検出時ガス拡散用ファン9を駆動する際の基準となるファン駆動判定濃度(拡散手段駆動用LPガス判定濃度)等の各判定値が格納されている。
【0026】
警報回路8は、請求項におけるLPガス漏れ警報手段8aおよび不完全燃焼警報手段8bに相当し、LED等の警報表示手段と、スピーカやブザー等の警報音発生手段とを含み、LPガス検出回路3または不完全燃焼ガス検出回路4でLPガスまたは一酸化炭素ガスが検出された場合に、LED等による警報表示やスピーカやブザー等による音声メッセージまたは警報音によって、LPガス漏れまたは不完全燃焼の報知を行う回路である。また、不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器1は、図示しないが外部出力を送出して警報を行う機能も有している。なお、LPガス検出回路3、不完全燃焼検出回路4および記憶回路7は、CPU、ROMおよびRAMを有するマイクロコンピュータで構成しても良い。
【0027】
ガス拡散用ファン9は、請求項におけるガス拡散手段に相当し、警報器1に内蔵され、一酸化炭素ガスを微量に検出した場合に室内のガスを拡散させる役割を持つ小型ファンや圧電素子等の振動板である。
【0028】
たとえば、図3に示すように、ガス拡散用ファン9は、ガス漏れ警報器1のケース11の右下部分に内蔵され、ファン風がケース11の前面上部に形成された導入口11aよりケース内部を通ってケース11の底部に形成された導出口11bからケース11の外部へ吹き出すようにする。LPガスセンサ5および一酸化炭素センサ6は、導入口11a付近に配置されている。なお、ケース11の前面には、警報回路8のスピーカ放音孔11cが設けられていると共に、電源ランプ(LED)12、不完全燃焼警報ランプ(LED)13およびLPガス警報ランプ(LED)14が設けられている。
【0029】
上述の構成において、不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器1は、通常待機時には、LPガス漏れおよび不完全燃焼の監視を常に実施する。また、通常待機時にガス拡散用ファン9を駆動し、上方から吸込んで下方へ吹き出すファン風によって室内の雰囲気を対流させ、雰囲気中のガスを拡散させる。不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器1は、LPガスを検出するため、当然床面付近に設置されており、ガス拡散用ファン9がないと不完全燃焼時の一酸化炭素ガスの拡散スピードが床面設置の場合遅くなるが、ガス拡散用ファン9の駆動による拡散効果によって、一酸化炭素ガスが拡散しにくい床面付近でも不完全燃焼検知が可能となる。
【0030】
なお、通常待機中もガス拡散用ファン9を駆動させていると、待機状態の消費電力が増加することおよびガス拡散用ファン9の寿命等も考慮し、ガスの検出と連動させてガス拡散用ファン9を駆動させても良い。すなわち、普段はガス拡散用ファン9の駆動を停止しておき、不完全燃焼ガス検出回路4は、一酸化炭素センサ6のセンサ出力により微量な一酸化炭素ガスを検出すると、自動的にガス拡散用ファン9の駆動を開始させる。
【0031】
また、ガス漏れ警報器1がLPガス漏れ警報状態にある場合は、既に警報を行っていることおよび爆発する可能性のある雰囲気中で、誘爆等を考慮し、ガス拡散用ファン9は駆動させないようにする。
【0032】
次に、上述の第1の実施形態に係る不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器1の動作例を図4に示すフローチャートを参照しながら説明する。電源投入後、不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器1は待機状態となり、ガス漏れおよび不完全燃焼の監視を実施している(ステップS1)。すなわち、待機状態においては、不完全燃焼ガス検出回路4及びLPガス検出回路3は、それぞれ、所定の検出タイミングで一酸化炭素ガスおよびLPガスの濃度検出を定期的に実行している。
【0033】
次に、不完全燃焼ガス検出回路4は、検出された一酸化炭素ガス濃度(不完全燃焼ガス濃度)が、不完全燃焼警報判定濃度より低い値に設定され記憶回路7に記憶されているファン駆動判定濃度(拡散手段駆動用不完全燃焼判定濃度)以上になったか否かを判定する(ステップS3)。一酸化炭素ガス濃度がファン駆動判定濃度以上になっていなければ、次いでステップS1に戻る。一酸化炭素ガス濃度(不完全燃焼ガス濃度)がファン駆動判定濃度以上になっていれば、次いで、不完全燃焼ガス検出回路4からの判定結果に基づき、LPガス検出回路3は、検出されたLPガス濃度がLPガス警報判定濃度以上になったか否かを判定する(ステップS5)。
【0034】
検出されたLPガス濃度がLPガス警報判定濃度以上になっていなければ、次に、LPガス検出回路3は、ガス拡散用ファン9の駆動を開始させる(ステップS11)。具体的には、たとえば、不完全燃焼ガス検出回路4は、電源回路2からのガス拡散用ファン9への電源供給ラインに挿入されているスイッチ素子(図示しない)へ制御信号を送出してオン状態にすることにより、ガス拡散用ファン9の駆動を開始させる。そのため、ガス拡散用ファン9により導入口11aから導出口11bを介して警報器外部へ吹き出す風によって、室内の天井付近に偏在する傾向にある一酸化炭素ガスは、床面付近に設置されている警報器の周囲へ拡散する。
【0035】
次に、不完全燃焼ガス検出回路4は、ガス拡散用ファン9で拡散された一酸化炭素ガスを導入口11aから取り込み、検出された一酸化炭素ガス濃度(不完全燃焼ガス濃度)が不完全燃焼警報判定濃度以上になったか否かを判定する(ステップS13)。一酸化炭素ガス濃度(不完全燃焼ガス濃度)が不完全燃焼警報判定濃度以上になっていなければ、次いでステップS13に戻り、なっていれば、次いで、不完全燃焼ガス検出回路4からの判定結果に基づき、警報回路8は、LEDの警報表示およびスピーカ等による警報音でLPガス漏れ警報と異なる形態で不完全燃焼警報を報知する(ステップS15)。
【0036】
一方、ステップS5で、検出されたLPガス濃度がLPガス警報判定濃度以上になっていれば、次いで、LPガス検出回路3からの判定結果に基づき、警報回路8は、LEDの警報表示およびスピーカ等による警報音でLPガス漏れ警報を報知する(ステップS7)。次に、LPガス検出回路3は、ガス拡散用ファン9の駆動を停止させる(ステップS9)。具体的には、たとえば、LPガス検出回路3は、電源回路2からのガス拡散用ファン9への電源供給ラインに挿入されているスイッチ素子(図示しない)へ制御信号を送出してオフ状態にすることにより、ガス拡散用ファン9の駆動を停止させる。
【0037】
以上の説明から明らかなように、図4のステップS3は、請求項における第1の拡散手段駆動判定手段4bに対応し、ステップS5は、請求項におけるLPガス漏れ判定手段3aに対応し、ステップS7は、請求項におけるLPガス漏れ警報手段8aに対応し、ステップS13は、請求項における不完全燃焼判定手段4aに対応し、ステップS15は、請求項における不完全燃焼警報手段8bに対応している。
【0038】
このように、本発明の第1の実施形態によれば、現在市販されている普及率の高いLPガス漏れ警報器に、不完全燃焼検知機能と、不完全燃焼排ガスを床面まで拡散させるガス拡散用ファン9を設けることによって、床面付近に設置されたLPガス漏れ警報器において、不完全燃焼ガスを確実に検出することができ、不完全燃焼検知機能をスムーズに行わせることができる。また、ガス拡散用ファン9を常に駆動せず、微量な一酸化炭素ガスを検出した時に駆動開始するようにしたので、警報器の消費電力を軽減させると共にガス拡散用ファン9の寿命を長くすることができる。また、LPガス警報判定濃度以上のLPガスが検出された場合は、ガス拡散用ファン9の駆動を停止するので、既にLPガス漏れ警報を行っていることおよび爆発する可能性のある雰囲気中で誘爆する可能性があることなどを考慮した安全性のある動作を行わせることができる。
【0039】
(第2の実施形態)次に、本発明の第2の実施形態について説明する。この第2の実施形態では、上述の第1の実施形態に加えて、微量のLPガス漏れが検出された場合にも、ガス拡散用ファン9の駆動を開始させるように構成したものである。
【0040】
以下、第2の実施形態に係る不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器1の動作例を図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。図5のフローチャートでは、図4のフローチャートにおけるステップS3とS11の間に新たなステップS4を追加したことを特徴とする。
【0041】
すなわち、ステップS3で、検出された一酸化炭素ガス濃度がファン駆動判定濃度以上になっていなければ、次いで、LPガス検出回路3は、LPガスセンサ5のセンサ出力に基づき検出されたLPガス濃度が、LPガス警報判定濃度より低い値に設定され記憶回路7に記憶されているファン駆動判定濃度(拡散手段駆動用LPガス判定濃度)以上になったか否かを判定する(ステップS4)。検出されたLPガス濃度が、ファン駆動判定濃度(拡散手段駆動用LPガス判定濃度)以上になっていなければ、次いでステップS1に戻り待機状態となり、なっていれば、次いでステップS11に進み、ガス拡散用ファン9の駆動を開始する。
【0042】
以上の説明から明らかなように、図5のステップS4は、請求項における第2の拡散手段駆動判定手段3bに対応している。
【0043】
このように、本発明の第2の実施形態によれば、LPガスセンサ5のセンサ出力に基づき検出されたLPガス濃度が、ファン駆動判定濃度(拡散手段駆動用LPガス判定濃度)以上になった場合にも、ガス拡散用ファン9の駆動が開始されるので、ガス漏れ警報器が、床面よりも規格上許される高い位置に設置された場合でも、漏れて床面近くに偏在するLPガスの拡散を促し、LPガス漏れ検知機能をスムーズに行わせることができる。
【0044】
以上の通り、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限らず、種々の変形、応用が可能である。
【0045】
たとえば、上述の実施の形態では、ガス拡散用ファン9は、警報器の上方から下方へ吹き出す風によって室内の雰囲気中のガス拡散を行っているが、導入口11aを警報器ケースの下部に設けると共に導出口11bを警報器上部に設けて、警報器下方から警報器上方へ吹き出す風を発生させるようにしても良い。
【0046】
また、ガス拡散用ファン9のファン風が通る導入口と異なる位置に検知ガス導入口を設けても良い。
【0047】
また、他の実施例として、ガスメータからのガス流量有りを表す流量判定信号を受信する受信手段をさらに備え、ガス拡散用ファン9は、受信手段で流量判定信号を受信した場合に駆動開始されるように構成しても良い。それにより、ガス拡散用ファン9は、普段は停止しており、燃焼機器が使用されている可能性が高い状況になると駆動開始されるので、警報器の消費電力を軽減させると共にガス拡散用ファン9の寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器の基本構成を示す基本構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器の構成を示すブロック図である。(第1の実施形態)
【図3】ガス拡散用ファンの取付例を説明する図であり、(a)は警報器の正面図、(b)は底面図、(c)は内部構造図である。
【図4】第1の実施形態に係る不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器の動作例を示すフローチャートである。(第1の実施形態)
【図5】第2の実施形態に係る不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器の動作例を示すフローチャートである。(第2の実施形態)
【符号の説明】
【0049】
1 不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器
3 LPガス検出回路
3a LPガス漏れ判定手段
3b 第2の拡散手段駆動判定手段
4 不完全燃焼ガス検出回路
4a 不完全燃焼判定手段
4b 第1の拡散手段駆動判定手段
5 LPガスセンサ
6 一酸化炭素センサ(不完全燃焼ガスセンサ)
7 記憶回路(記憶手段)
8 警報回路
8a LPガス漏れ警報手段
8b 不完全燃焼警報手段
9 ガス拡散用ファン(ガス拡散手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LPガスセンサからのセンサ出力に基づいて検出したLPガス濃度が記憶手段に記憶されているLPガス警報判定濃度以上になったか否かを判定するLPガス漏れ判定手段と、前記LPガス漏れ判定手段でLPガス濃度がLPガス警報判定濃度以上になったと判定された場合に、LPガス漏れ警報を報知するLPガス漏れ警報手段と、不完全燃焼ガスセンサからのセンサ出力に基づいて検出した不完全燃焼ガス濃度が前記記憶手段に記憶されている不完全燃焼警報判定濃度以上になったか否かを判定する不完全燃焼判定手段と、前記不完全燃焼判定手段で不完全燃焼ガス濃度が不完全燃焼警報判定濃度以上になったと判定された場合に、不完全燃焼警報を報知する不完全燃焼警報手段とを有する不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器であって、
周囲のガスを拡散させるためのガス拡散手段を備えていることを特徴とする不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器。
【請求項2】
請求項1記載の不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器において、
前記不完全燃焼ガスセンサからのセンサ出力に基づいて検出した不完全燃焼ガス濃度が、前記不完全燃焼警報判定濃度より低く設定され前記記憶手段に記憶された拡散手段駆動用不完全燃焼判定濃度以上になったか否かを判定する第1の拡散手段駆動判定手段をさらに備え、
前記ガス拡散手段は、前記第1の拡散手段駆動判定手段で不完全燃焼ガス濃度が拡散手段駆動用不完全燃焼判定濃度以上になったと判定された場合に駆動開始されることを特徴とする不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器。
【請求項3】
請求項2記載の不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器において、
前記LPガスセンサからのセンサ出力に基づいて検出したLPガス濃度が、前記LPガス警報判定濃度より低く設定され前記記憶手段に記憶された拡散手段駆動用LPガス判定濃度以上になったか否かを判定する第2の拡散手段駆動判定手段をさらに備え、
前記ガス拡散手段は、前記第2の拡散手段駆動判定手段でLPガス濃度が拡散手段駆動用LPガス判定濃度以上になったと判定された場合にも駆動開始されることを特徴とする不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器。
【請求項4】
請求項2または3記載の不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器において、
前記ガス拡散手段は、前記LPガス漏れ判定手段でLPガス濃度がLPガス警報判定濃度以上になったと判定された場合に、駆動停止されることを特徴とする不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器。
【請求項5】
請求項2記載の不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器において、
ガスメータからのガス流量有りを表す流量判定信号を受信する受信手段をさらに備え、
前記ガス拡散手段は、前記受信手段で、前記流量判定信号を受信した場合にも駆動開始されることを特徴とする不完全燃焼検知機能付ガス漏れ警報器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−234161(P2008−234161A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70845(P2007−70845)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】