不必要な再送防止のためのランダムアクセス手法及びそのための端末
【課題】不必要なデータ再送を防止するためのランダムアクセス方法及びそのための端末を提供する。
【解決手段】不必要な再送防止のためのランダムアクセス手法及びそのための端末が開示される。端末のランダムアクセス手順のうち、競合解決手順において競合解決タイマーが満了する場合、または、物理ダウンリンク制御チャネル信号または該物理ダウンリンク制御チャネル信号に対応する物理ダウンリンク共有チャネル信号が端末の識別情報に対応しない場合、ランダムアクセス手順で転送されたMAC PDUを保存するHARQバッファーをフラッシュ(flush)することで、不必要なデータ再送を防止することができる。
【解決手段】不必要な再送防止のためのランダムアクセス手法及びそのための端末が開示される。端末のランダムアクセス手順のうち、競合解決手順において競合解決タイマーが満了する場合、または、物理ダウンリンク制御チャネル信号または該物理ダウンリンク制御チャネル信号に対応する物理ダウンリンク共有チャネル信号が端末の識別情報に対応しない場合、ランダムアクセス手順で転送されたMAC PDUを保存するHARQバッファーをフラッシュ(flush)することで、不必要なデータ再送を防止することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信システムにおいて端末がランダムアクセスを行う技術に係り、特に、不必要な再送を防止するためのランダムアクセス手法及びそのための端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明を適用できる移動通信システムの一例として、3GPP LTE(3rd Generation Partnership Project Long Term Evolution;以下、「LTE」という。)通信システムについて概略的に説明する。
【0003】
図1は、移動通信システムの一例としてE−UMTSネットワーク構造を概略的に示す図である。
【0004】
E−UMTS(Evolved Universal Mobile Telecommunications System)は、既存UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)から進展したシステムであり、現在3GPPで基礎的な標準化作業が行われている。一般に、E−UMTSは、LTEシステムと呼ぶこともできる。
【0005】
E−UMTSは、主に、E−UTRAN 101及びCN(Core Networ)102とからなることができる。E−UTRAN(Evolved−UMTS Terrestrial Radio Access Network)101は、端末(User Equipment;以下、「UE」と略す。)103、基地局(以下、「eNode B」または「eNB」と略す。)104、及びネットワークの終端に設けられて外部ネットワークと接続する接続ゲートウェイ(Access Gateway;以下、「AG」と略す。)105で構成される。AG 105は、ユーザトラフィック処理を担当する部分と、制御用トラフィックを処理する部分とに区別することもできる。この場合には、新しいユーザトラフィックを処理するAGと制御用トラフィックを処理するAGとの間に新しいインターフェースを用いて互いに通信してもよい。
【0006】
一つのeNode Bには、一つ以上のセル(Cell)が存在することができる。eNode B同士間には、ユーザトラフィックあるいは制御トラフィックの転送のためのインターフェースが用いられてよい。CN 102は、AG 105、及びその他UE 103のユーザ登録などのためのノードなどで構成されればよい。E−UTRAN 101とCN 102とを区別するためのインターフェースが使用されてもよい。
【0007】
端末とネットワークとの間における無線インターフェースプロトコル(Radio Interface Protocol)層は、通信システムに広く知られた開放型システム間相互接続(Open System Interconnection;OSI)基準モデルの下位の3層に基づき、L1(第1層)、L2(第2層)、L3(第3層)に区別することができる。それらのうち、第1層に属する物理層は、物理チャネル(Physical Channel)を用いた情報転送サービス(Information Transfer Service)を提供し、第3層に位置する無線リソース制御(Radio Resource Control;以下、「RRC」と略す。)層は、端末とネットワーク間において無線リソースを制御する役割を果たす。このために、RRC層は、端末とネットワーク間においてRRCメッセージをやり取りする。RRC層は、eNode B 104及びAG 105などを含むネットワークノードに分散してもよく、eNode B 104またはAG 105にのみ位置してもよい。
【0008】
図2及び図3に、3GPP無線接続ネットワーク規格に基づく端末とUTRAN間の無線インターフェースプロトコルの構造を示す。
【0009】
図2及び図3の無線インターフェースプロトコルは、水平的には、物理層(Physical Layer)、データリンク層(Data Link Layer)及びネットワーク層(Network Layer)からなり、垂直的には、データ情報転送のためのユーザプレーン(User Plane)と制御信号(Signaling)伝達のための制御プレーン(Control Plane)とに区別される。具体的に、図2は、無線プロトコル制御プレーンの各層を示し、図3は、無線プロトコルユーザプレーンの各層を示す。図2及び図3のプロトコル層は、通信システムで広く知られた開放型システム間相互接続(OSI)基準モデルの下位3層に基づき、L1(第1層)、L2(第2層)、L3(第3層)に区別することができる。
【0010】
以下、図2の無線プロトコル制御プレーンと図3の無線プロトコルユーザプレーンにおける各層について説明する。
【0011】
第1層である物理(Physical;PHY)層は、物理チャネル(Physical Channel)を用いて上位層に情報転送サービス(Information Transfer Service)を提供する。PHY層は、上位のメディア・アクセス制御(Medium Access Control;MAC)層と転送チャネル(Transport Channel)を介して接続しており、この転送チャネルを介してMAC層とPHY層との間においてデータが移動する。ここで、転送チャネルは、チャネルの共有有無によって、専用(Dedicated)転送チャネルと共用(Common)転送チャネルとに大別される。そして、互いに異なるPHY層の間、すなわち、送信側のPHY層と受信側のPHY層との間では、無線リソースを用いた物理チャネルを介してデータが移動する。
【0012】
第2層には、様々な層が存在する。まず、メディア・アクセス制御(Medium Access Control;MAC)層は、様々な論理チャネル(Logical Channel)を様々な転送チャネルにマッピングさせる役割を果たし、また、様々な論理チャネルを一つの転送チャネルにマッピングさせる論理チャネル多重化(Multiplexing)の役割を果たす。MAC層は、上位層であるRLC層とは論理チャネルで連結されており、論理チャネルは、転送される情報の種類によって、制御プレーン(Control Plane)の情報を転送する制御チャネル(Control Channel)とユーザプレーン(User Plane)の情報を転送するトラフィックチャネル(Traffic Channel)とに大別される。
【0013】
第2層の無線リンク制御(Radio Link Control;RLC)層は、上位層から受信したデータを分割(Segmentation)及び連結(Concatenation)して、下位層が無線区間でデータを転送するのに適合するようにデータのサイズを調節する役割を果たす。また、それぞれの無線ベアラ(Radio Bearer;RB)が要求する様々なQoS(Quality of Service)を保障できるようにするためにTM(Transparent Mode、透過モード)、UM(Un−acknowledged Mode、非確認モード)、及びAM(Acknowledged Mode、確認モード)を含む3種類の動作モードを提供している。特に、AM RLCは、信頼できるデータ転送のために自動反復及び要請(Automatic Repeat and Request;ARQ)機能を用いた再送機能を行っている。
【0014】
第2層のパケットデータコンバージェンスプロトコル(Packet Data Convergence Protocol;PDCP)層は、IPv4やIPv6のようなIPパケット転送時に、帯域幅の小さな無線区間で効率的に転送するために、比較的大きいサイズであるとともに不要な制御情報を含んでいるIPパケットヘッダーサイズを減らすヘッダー圧縮(Header Compression)機能を実行する。これは、データのヘッダー(Header)部分で必須の情報のみを転送するようにし、無線区間の転送効率を増加させる役割を果たす。また、LTEシステムでは、PDCP層がセキュリティー(Security)機能も担うが、これは、第3者のデータ傍受を防止する暗号化(Ciphering)と第3者のデータ操作を防止する完全性保護(Integrity protection)とで構成される。
【0015】
第3層の最上部に位置している無線リソース制御(Radio Resource Control;RRC)層は、制御プレーンでのみ定義され、無線ベアラ(RB)の設定(Configuration)、再設定(Re−configuration)及び解除(Release)と関連して論理チャネル、転送チャネル及び物理チャネルの制御を担当する。ここで、RBは、端末とUTRAN間のデータ伝達のために無線プロトコルの第1及び第2層により提供される論理的経路(path)を意味し、一般に、RBが設定されるということは、特定サービスを提供するために必要な無線プロトコル層及びチャネルの特性を規定し、それぞれの具体的なパラメータ及び動作方法を設定する過程を意味する。RBは再び、SRB(Signaling RB)とDRB(Data RB)の2種類に分けられ、SRBは、制御プレーン(C−plane)でRRCメッセージを転送する経路として用いられ、DRBは、ユーザプレーン(U−plane)でユーザデータを転送する経路として用いられる。
【0016】
ネットワークにおいて端末にデータを転送する下り転送チャネルには、システム情報を転送するBCH(Broadcast Channel)と、それ以外にユーザトラフィックや制御メッセージを転送する下りSCH(Shared Channel)とがある。下りマルチキャストまたは放送サービスのトラフィックまたは制御メッセージは、下りSCHを通じて転送されてもよく、別の下りMCH(Multicast Channel)を通じて転送されてもよい。一方、端末からネットワークへデータを転送する上り転送チャネルには、初期制御メッセージを転送するRACH(Random Access Channel)と、それ以外にユーザトラフィックや制御メッセージを転送する上りSCH(Shared Channel)とがある。
【0017】
そして、下り転送チャネルに伝達される情報を、ネットワークと端末との間の無線区間で転送する下り物理チャネルには、BCHの情報を転送するPBCH(Physical Broadcast Channel)、MCHの情報を転送するPMCH(Physical Multicast Channel)、PCHと下りSCHの情報を転送するPDSCH(Physical Downlink shared Channel)、そして下りまたは上り無線リソース割当情報(DL/UL Scheduling Grant)などのように、第1層と第2層から提供する制御情報を転送するPDCCH(Physical Downlink Control Channel、またはDL L1/L2 control channelともいう。)がある。一方、上り転送チャネルに伝達される情報を、ネットワークと端末との間の無線区間で転送する上り物理チャネルには、上りSCHの情報を転送するPUSCH(Physical Uplink Shared Channel)、RACH情報を転送するPRACH(Physical Random Access Channel)、そしてHARQ ACKまたはNACK、スケジューリング要請(SR;Scheduling Request)、CQI(Channel Quality Indicator)報告などのように、第1層と第2層から提供する制御情報を転送するPUCCH(Physical Uplink Control Channel)がある。
【0018】
上述した説明に基づき、LTEシステムで行われるHARQ動作について説明すると、下記の通りである。
【0019】
図4は、LTEシステムで行われるHARQ動作を示す図である。
【0020】
図4では、端末(UE)が送信側になり、基地局(eNode BまたはeNB)が受信側になって、HARQフィードバック情報を基地局から受信するアップリンク状況を仮定して説明するが、ダウンリンクにも同一の適用が可能である。
【0021】
まず、基地局は、HARQ方式で端末がデータを転送するようにするためにPDCCH(Physical Downlink Control CHannel)を通じてアップリンクスケジューリング情報、すなわち、アップリンク承認(UL Grant)を転送することができる(S401)。このUL承認には、端末識別子(例えば、C−RNTIまたはSemi−Persistent Scheduling C−RNTI)、割り当てられた無線リソースの位置(Resource block assignment)、変調/コーディング率及びリダンダンシーバージョンのような転送パラメータ、新規データ指示子(New Data Indicator)などが含まれてよい。
【0022】
端末は、TTI(Transmission Time Interval)ごとにPDCCHをモニタリング(Monitoring)して、自身に来るUL承認情報を確認することができ、端末は、自身に転送されたUL承認情報を発見する場合、受信したUL承認情報に基づいてデータ(図4では、データ1)をPUSCH(Physical Uplink Shared CHannel)を通じて転送することができる(S402)。この時、転送されるデータは、MAC PDU(Medium Access Control Packet Data Unit)単位で転送されてもよい。
【0023】
上述した通り、PUSCHを通じたアップリンク転送を行った端末は、基地局からのPHICH(Physical hybrid−ARQ indicator channel)を通じたHARQフィードバック情報の受信を待つようになる。基地局から上記データ1に対するHARQ NACKが転送された場合(S403)には、端末は、該データ1の再送TTIにおいてデータ1を再送する(S404)。一方、基地局からHARQ ACKを受信した場合(図示せず)には、端末は、データ1に対するHARQ再送を中止する。
【0024】
端末は、HARQ方式で1回のデータ転送を行う度に転送回数(CURRENT_TX_NB)をカウントし、この転送回数が、上位層で設定した最大転送回数(CURRENT_TX_NB)に達すると、HARQバッファー(buffer)に保存されたMAC PDUを捨てる。
【0025】
端末が、段階S404で再送したデータ1に対するHARQ ACKを受信し(S405)、PDCCHを通じてUL承認を受信する場合(S406)、端末は、今回転送すべきデータが初期転送(initial transmission)されたMAC PDUなのか、あるいは、以前のMAC PDUを再送(retransmission)すべきなのかは、PDCCHを通じて受信するNDI(New Data Indicator)フィールドからわかる。このNDIフィールドは、1ビットフィールドであり、新しいMAC PDUが転送される度に0→1→0→1→…にトグル(toggle)され、再送に対しては初期転送と同じ値を有する。すなわち、端末は、NDIフィールドが以前に転送された値と同じか否か比較し、MAC PDUを再送するか否かがわかる。
【0026】
図4では、段階S401におけるNDI=0値が段階S406でNDI=1にトグリングされたことから、端末は該当の転送が新規転送であることを認知し、これにより、データ2をPUSCHを通じて転送することができる(S407)。
【0027】
一方、端末が基地局にランダムアクセスを行う方法について説明すると、下記の通りである。
【0028】
まず、端末がランダムアクセス手順を行う場合には、下記のようなものがある。
− 端末が基地局とRRC連結(RRC Connection)しておらず、初期接続(initial access)をする場合
− 端末がハンドオーバー手順において、ターゲット(target)セルに初めて接続する場合
− 基地局の命令に応じてランダムアクセス手順が要請される場合
− アップリンクの時間同期が合わなかったり、無線リソースを要請するために使われる指定された無線リソースが割り当てられていない状況で、アップリンクで転送するデータが発生する場合
−無線連結失敗(radio link failure)またはハンドオーバー失敗(handover failure)時に、復旧過程を行う場合
【0029】
LTEシステムでは、ランダムアクセスプリアンブルを選択する過程で、特定の集合の中から端末が任意に一つのプリアンブルを選択して使用する競合ベースランダムアクセス手順(contention based random access procedure)と、基地局が特定端末にのみ割り当てたランダムアクセスプリアンブルを使用する非競合ベースランダムアクセス手順(non−contention based random access procedure)の両方を提供する。ただし、非競合ベースランダムアクセス手順は、上述したハンドオーバー手順や基地局の命令によって要請された場合に限って用いることができる。
【0030】
一方、端末が特定基地局とランダムアクセスを行う手順は、主に、(1)端末が基地局にランダムアクセスプリアンブルを転送する段階(以下、混同がない限り、「第1メッセージ(message 1)」転送段階という。)、(2)転送されたランダムアクセスプリアンブルに対応して基地局からランダムアクセス応答を受信する段階(以下、混同がない限り、「第2メッセージ(message 2)」受信段階という。)、(3)ランダムアクセス応答メッセージによって搬送された情報を用いてアップリンクメッセージを転送する段階(以下、混同がない限り、「第3メッセージ(message 3)」転送段階という。)、及び(4)前記アップリンクメッセージに対応するメッセージを基地局から受信する段階(以下、混同がない限り、「第4メッセージ(message 4)」受信段階という。)を含むことができる。
【0031】
図5は、競合ベースランダムアクセス手順において端末と基地局の動作手順を説明するための図である。
【0032】
(1)第1メッセージ転送
まず、端末は、システム情報またはハンドオーバー命令(Handover Command)を通じて指示されたランダムアクセスプリアンブルの集合から、任意に(randomly)一つのランダムアクセスプリアンブルを選択し、該ランダムアクセスプリアンブルを転送できるPRACH(Physical RACH)リソースを選択して転送することができる(S501)。
【0033】
(2)第2メッセージ受信
端末は、上記段階S501でランダムアクセスプリアンブルを転送した後に、基地局がシステム情報またはハンドオーバー命令を通じて指示したランダムアクセス応答受信ウィンドウ内で、自身のランダムアクセス応答の受信を試みる(S502)。特に、ランダムアクセス応答情報は、MAC PDUの形式に転送されてよく、該MAC PDUは、PDSCH(Physical Downlink Shared CHannel)を通じて伝達可能である。また、PDSCHで伝達される情報を端末が適切に受信するために、端末は、PDCCH(Physical Downlink Control CHannel)をモニタリングすることが好ましい。すなわち、PDCCHには、当該PDSCHを受信すべき端末の情報、該PDSCHの無線リソースの周波数及び時間情報、及び該PDSCHの転送形式などが含まれていると好ましい。一応、端末が自身に転送されるPDCCHの受信に成功すると、これらのPDCCHの情報に基づき、PDSCHで転送されるランダムアクセス応答を適切に受信することができる。そして、このランダムアクセス応答には、ランダムアクセスプリアンブル識別子(ID;例えば、RAPID(Random Access Preamble IDentifier))、アップリンク無線リソースを知らせるアップリンク承認(UL Grant)、臨時セル識別子(Temporary C−RNTI)、そして時間同期補正値(Timing Advance Command:TAC)が含まれてよい。
【0034】
ランダムアクセスプリアンブル識別子がランダムアクセス応答に含まれる理由は、一つのランダムアクセス応答には一つ以上の端末のためのランダムアクセス応答情報が含まれることがあり、よって、アップリンク承認(UL Grant)、臨時セル識別子そしてTACなどの情報のどれが有効であるかを端末に知らせなければならないためである。この段階で、端末は、段階S502において自身が選択したランダムアクセスプリアンブルと一致するランダムアクセスプリアンブル識別子を選択すると仮定する。これにより、端末は、アップリンク承認(UL Grant)、臨時セル識別子(Temporary C−RNTI)及び時間同期補正値(TAC)などを受信することができる。
【0035】
(3)第3メッセージ転送
端末が、自身に有効なランダムアクセス応答を受信した場合には、該ランダムアクセス応答に含まれた情報をそれぞれ処理する。すなわち、端末は、TACを適用させ、臨時セル識別子を保存する。また、有効なランダムアクセス応答受信に対応して、転送するデータを第3メッセージのバッファーに保存することができる。
【0036】
一方、端末は、受信されたUL承認を用いて、データ(すなわち、第3メッセージ)を基地局に転送する(S503)。第3メッセージは端末の識別子を含まなければならない。競合ベースランダムアクセス手順では基地局でいかなる端末がランダムアクセス手順を行うかが判断できず、よって、将来の競合解決のためには端末を識別しなければならないわけである。
【0037】
端末の識別子を含める方法ついては、2通りの方法が論議された。第一の方法は、端末がランダムアクセス手順の前に、既に該当のセルから割り当てられた有効なセル識別子を持っていたとすれば、端末は、UL承認に対応するアップリンク転送信号を通じて自身のセル識別子を転送する。反面、もしランダムアクセス手順の前に、有効なセル識別子が割り当てられていないとすれば、端末は、自身の固有識別子(例えば、S−TMSIまたは任意ID(Random Id))を含めて転送する。一般に、この固有識別子は、セル識別子よりも長い。端末は、UL承認に対応するデータを転送すると、競合解決のためのタイマー(contention resolution timer;以下、「CRタイマー」という。)を始動させる。
【0038】
(4)第4メッセージ受信
端末が、ランダムアクセス応答に含まれたUL承認を通じて、自身の識別子を含むデータを転送した後、競合解決のために基地局の指示を待つ。すなわち、特定メッセージを受信するためにPDCCHの受信を試みる(S504)。該PDCCHを受信する方法についても、2通りの方法が論議された。前述した通り、UL承認に対応して転送された第3メッセージに含まれた端末識別子がセル識別子であれば、端末は、自身のセル識別子を用いてPDCCHの受信を試み、当該識別子が固有識別子である場合には、ランダムアクセス応答に含まれた臨時セル識別子を用いてPDCCHの受信を試みることができる。その後、前者の場合、もし、競合解決タイマーが満了する前に、自身のセル識別子を通じてPDCCHを受信した場合に、端末は、正常にランダムアクセス手順が行われたと判断し、ランダムアクセス手順を終了する。後者の場合には、競合解決タイマーが満了する前に、臨時セル識別子を通じてPDCCHを受信すると、該PDCCHが指示するPDSCHにより伝達されるデータを確認する。もし、該データの内容に自身の固有識別子が含まれていると、端末は、正常にランダムアクセス手順が行われたと判断し、ランダムアクセス手順を終了する。
【0039】
一方、上述したような第3メッセージ転送及び第4メッセージ受信を用いた競合解決手順に成功できなかった場合、端末は、別のランダムアクセスプリアンブルを選択してランダムアクセス手順を再び行うことができる。このため、端末は、基地局から第2メッセージを受信し、競合解決手順のために第3メッセージを構成して基地局に転送することができる。図4を参照して記載したHARQシステムにおいて、第3メッセージ転送に用いられるHARQプロセスは、以前のランダムアクセスを試みる時に第3メッセージ転送に用いられたHARQプロセスと異なることがある。この場合、以前のHARQプロセスに対応するHARQバッファーに保存されているMAC PDUが余計に再送されることがあるという問題が生じる。よって、この問題を認識し、解決するための方案を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0040】
上記の点に鑑みて、本発明は、従来技術の制約及び不都合による一つ以上の問題を大幅に軽減する、不必要な再送防止のためのランダムアクセス手法及びそのための端末を対象とする。
【0041】
本発明の目的は、不必要なデータ再送を防止するためのランダムアクセス方法及びそのための端末を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0042】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態では、端末が基地局にランダムアクセスを行う方法であって、前記端末が前記基地局にランダムアクセスプリアンブルを転送し、前記基地局から前記ランダムアクセスプリアンブルに対応して、アップリンク承認情報を含むランダムアクセス応答メッセージを受信し、前記アップリンク承認情報受信によってアップリンクデータ及び前記端末の識別情報を含むMAC PDUをメッセージ3バッファーに保存し、前記メッセージ3バッファーに保存されたMAC PDUを、第1HARQプロセスに対応する第1HARQバッファーに複写し、前記第1HARQプロセスを用いて、前記第1HARQバッファーに保存されたMAC PDUを前記基地局に転送し、 競合解決タイマー(CR Timer)を始動または再始動し、前記基地局から物理ダウンリンク制御チャネル信号を受信し、前記物理ダウンリンク制御チャネル信号または前記物理ダウンリンク制御チャネル信号に対応する物理ダウンリンク共有チャネル信号が前記端末の識別情報に対応しない場合、または競合解決タイマーが満了した場合、前記第1HARQバッファーをフラッシュ(flush)すること、を含む、端末のランダムアクセス方法を提供する。
【0043】
ここで、前記端末は、前記物理ダウンリンク制御チャネル信号または前記物理ダウンリンク制御チャネル信号に対応する物理ダウンリンク共有チャネル信号が前記端末の識別情報に対応しない場合、または前記競合解決タイマーが満了した場合、競合解決手順を失敗と見なすことができる。
【0044】
また、前記端末が競合解決手順を失敗と見なす場合、前記端末は、時間同期タイマー(Timing Alignment Timer:TAT)を中止させることができ、好適には、前記端末は、前記時間同期タイマー(TAT)が満了する場合または中止される場合、前記第1HARQバッファーをフラッシュすることができる。
【0045】
また、前記端末の識別情報は、前記端末のC−RNTI(Cell−Radio Network Temporary Identifier)及び端末競合解決識別子(UE Contention Resolution Identity)のうちのいずれか一つでよく、前記端末が前記端末のC−RNTIを含むMAC PDUを転送し、前記物理ダウンリンク制御チャネル信号が前記端末のC−RNTIに対応しない場合、前記端末は、前記競合解決手順を失敗と見なすことができる。一方、前記端末が前記端末競合解決識別子を含むMAC PDUを転送し、前記物理ダウンリンク制御チャネル信号に対応する物理ダウンリンク共有チャネル信号が前記端末競合解決識別子に対応しない場合、前記端末は、前記競合解決手順を失敗と見なすことができる。
【0046】
また、前記端末のランダムアクセス方法は、前記端末が、前記基地局に前記競合解決手順失敗によって選択されたランダムアクセスプリアンブルを再送し、前記基地局から時間同期命令(Timing Alignment Command:TAC)を含むランダムアクセス応答メッセージを受信し、前記時間同期命令受信によって時間同期タイマー(TAT)を始動または再始動し、前記メッセージ3バッファーに保存されたMAC PDUを、第2HARQプロセスに対応する第2HARQバッファーに複写し、前記第2HARQプロセスを用いて、前記第2HARQバッファーに保存されているMAC PDUを前記基地局に転送すること、をさらに含み、前記端末は、前記時間同期タイマーが始動または再始動されても、前記第1HARQバッファーに保存されているMAC PDUを再送しなくてよい。
【0047】
一方、本発明に係る他の実施形態では、基地局にランダムアクセスプリアンブルを転送するように構成される転送モジュール、及び前記基地局からアップリンク承認情報を含むランダムアクセス応答メッセージを受信するように構成される受信モジュール、を含む物理層モジュールと、前記受信モジュールが受信した前記アップリンク承認情報に基づき、アップリンクデータ及び端末の識別情報を含むMAC PDUを構成する多重化及び組み合わせエンティティ、前記ランダムアクセス応答メッセージ受信によって前記多重化及び組み合わせエンティティにより構成されるMAC PDUを保存するように構成されるメッセージ3バッファー、複数のHARQプロセスモジュール及び前記複数のHARQプロセスモジュールのそれぞれに対応する複数のHARQバッファー、及び前記複数のHARQプロセスモジュールの動作を制御するHARQエンティティ、を含むMAC層モジュールと、を含み、前記MAC層モジュールは、前記受信モジュールの前記ランダムアクセス応答メッセージ受信によって前記メッセージ3バッファーに保存されたMAC PDUを第1HARQプロセスに対応する第1HARQバッファーに複写し、前記第1HARQプロセスを用いて、前記第1HARQバッファーに保存されているMAC PDUを前記基地局に転送するように制御し、前記第1HARQバッファーに保存されているMAC PDUの転送時に競合解決タイマー(CR Timer)を始動または再始動し、前記物理層モジュールから前記基地局からの物理ダウンリンク制御チャネル信号受信が通知される場合、前記MAC層モジュールは、前記物理ダウンリンク制御チャネル信号または前記物理ダウンリンク制御チャネル信号に対応する物理ダウンリンク共有チャネル信号が前記端末の識別情報に対応するか否か、または競合解決タイマーが満了したか否かを判定し、前記物理ダウンリンク制御チャネル信号または前記物理ダウンリンク制御チャネル信号に対応する物理ダウンリンク共有チャネル信号が前記端末の識別情報に対応しない場合、または競合解決タイマーが満了した場合、前記第1HARQバッファーをフラッシュするように構成される、端末を提供する。
【0048】
ここで、前記MAC層モジュールは、前記物理ダウンリンク制御チャネル信号または前記物理ダウンリンク制御チャネル信号に対応する物理ダウンリンク共有チャネル信号が前記端末の識別情報に対応しない場合、または前記競合解決タイマーが満了した場合、競合解決手順を失敗と見なすように構成されるとよい。
【0049】
前記競合解決手順を失敗と見なす場合、前記MAC層モジュールは、時間同期タイマー(timing Alignment Timer:TAT)を中止させるように構成されてよく、前記MAC層モジュールは、前記時間同期タイマー(TAT)が満了する場合、または中止される場合に、前記第1HARQバッファーをフラッシュするように構成されてよい。
【0050】
前記端末の識別情報は、前記端末のC−RNTI(Cell−Radio Network Temporary Identifier)及び端末競合解決識別子(UE Contention Resolution Identity)のうちのいずれか一つでよく、前記端末が前記端末のC−RNTIを含むMAC PDUを転送し、前記物理ダウンリンク制御チャネル信号が前記端末のC−RNTIに対応しない場合、前記MAC層モジュールは、前記競合解決手順を失敗と見なすように構成されてよい。
【0051】
なお、前記端末が前記端末競合解決識別子を含むMAC PDUを転送し、前記物理ダウンリンク制御チャネル信号に対応する物理ダウンリンク共有チャネル信号が前記端末競合解決識別子に対応しない場合、前記MAC層モジュールは、前記競合解決手順を失敗と見なすように構成されてよい。
【発明の効果】
【0052】
上述した本発明によると、ランダムアクセス手順中にまたはランダムアクセス手順終了後に不必要なデータの再送を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】移動通信システムの一例としてE−UMTSネットワーク構造を概略的に示す図である。
【図2】3GPP無線接続ネットワーク規格に基づく端末とUTRANとの間における無線インターフェースプロトコルの構造を示す図である。
【図3】3GPP無線接続ネットワーク規格に基づく端末とUTRANとの間における無線インターフェースプロトコルの構造を示す図である。
【図4】LTEシステムで行われるHARQ動作を示す図である。
【図5】競合ベースランダムアクセス手順において端末と基地局の動作を説明するための図である。
【図6】本発明者により認識された、端末が意図しないHARQ再送を行うようになる場合を説明するための図である。
【図7】本発明の第1実施例によってランダムアクセスを行う端末の動作を説明するための図である。
【図8】本発明の第2実施例によってランダムアクセスを行う端末の動作を説明するための図である。
【図9】本発明の第3実施例によってランダムアクセスを行う端末の動作を説明するための図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る端末が基地局にランダムアクセスを行う手順を説明するための図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る端末のプロセッサ構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明の好適な実施形態を、添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。添付の図面と共に以下に開示される詳細な説明は、本発明の例示的な実施形態を説明するためのもので、本発明が実施されうる唯一の実施形態を示すためのものではない。以下の詳細な説明は、本発明の完全な理解を提供するために具体的な細部事項を含む。しかし、当業者には、本発明がそれらの具体的な細部事項なしにも実施されうることが理解できる。例えば、以下の詳細な説明は、移動通信システムが3GPP LTEシステムであるとして具体的に説明するが、3GPP LTE特有の事項を除けば、他の任意の移動通信システムにも適用可能である。
【0055】
場合によっては、本発明の概念が曖昧になることを避けるために、公知の構造及び装置は省略したり、各構造及び装置の核心機能を中心にしたブロック図の形式で示すことができる。また、本明細書全体において同一の構成要素については同一の図面符号を使用して説明する。
【0056】
なお、以下の説明において、端末は、UE(User Equipment)、MS(Mobile Station)など、移動または固定型のユーザ端の機器を総称するとする。また、基地局は、Node B、eNode B、Base Stationなど、端末と通信するネットワーク端の任意のノードを総称するとする。
【0057】
上述した通り、本発明では、ランダムアクセス手順において不必要なデータ再送を防止するためのランダムアクセス手法及びそのための端末を提供する。そのために、まず、アップリンク時間同期管理手法及びランダムアクセス手順のうち、競合解決手順についてより具体的に説明する必要がある。
【0058】
まず、LTEシステムにおけるアップリンク時間同期管理(Timing Alignment Maintenance)について説明する。
【0059】
OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)技術に基づくLTEシステムでは、特定ユーザ(UE)データ転送が他のユーザの基地局との通信に干渉を招くことがある。このような干渉を最小化するために、基地局は、端末の転送タイミングを適切に管理しなければならない。さらにいうと、端末は、セル内の任意の領域に存在することができ、これは、端末の送信したデータが基地局に到達する時間が端末の位置にしたがって別々になることがあるということを意味する。すなわち、セルのエッジで送信を試みる端末の場合、この送信が基地局に到達する時間は、セルの中央に位置する端末の送信の到達時間よりも長いはずである。逆に、セルの中央にある端末の送信が基地局に到着する時間は、セルのエッジにある端末の送信に比べて短いはずである。基地局にとっては、干渉の影響を防ぐために、セル内における全端末が転送したデータまたは信号を、その都度境界(boundary)内で受信できるように管理しなければならず、そのため、基地局は端末の位置状況に応じて端末の転送タイミングを適切に調節しなければならない。このような調節を時間同期管理という。
【0060】
時間同期を管理する一つの方法に、ランダムアクセス動作がある。すなわち、ランダムアクセス動作手順を通じて基地局は、端末が転送するランダムアクセスプリアンブルを受信するようになり、このランダムアクセスプリアンブルの受信情報を用いて、転送タイミングの時間同期値を計算する。そして、ランダムアクセス応答を通じて、計算された時間同期値を端末に知らせ、端末は、この値を用いて、転送タイミングを更新する。
【0061】
もう一つの方法には、基地局が、端末が周期的あるいは任意的に転送するサウンディング参照信号(Sounding Reference Signal)を受信し、該受信した信号を通じて端末の時間同期値を計算して端末に知らせる方法がある。これによって、端末は、自身の転送タイミングを更新するようになる。
【0062】
上述した通り、基地局は、ランダムアクセスプリアンブルまたはサウンディング参照信号を通じて端末の転送タイミングを測定し、補正するタイミング値を計算して端末に知らせる。上述したように、基地局が端末に転送する時間同期値を、時間同期命令(Timing Alignment Command;以下、「TAC」と称する。)と呼ぶ。このTACは、MAC層で処理する。そして、端末は、常に固定した位置に存在するとは限らず、端末の転送タイミングは、端末が移動する速度と位置などによって毎度変わることになる。この点から、端末は、基地局から一度時間同期命令を受けると、該命令が無限の時間において有効であると見なさず、特定時間においてのみ有効であると想定しなければならない。このために使われるものが時間同期タイマー(Time Alignment Timer;以下、「TAT」と称する。)である。すなわち、端末は、基地局からTACを受信するとTATを始動させる。そして、TATの動作中にのみ、端末は基地局と時間同期していると仮定する。このTAT値は、システム情報または無線ベアラ再構成(Radio Bearer Reconfiguration)などのようなRRC信号を通じて伝達することができる。また、端末は、TATの動作中に、新しいTACを基地局から受信すると、TATを再び始動させる。そして、TATが満了したり、TATが動作しない時には、端末は基地局と時間同期していないとし、ランダムアクセスプリアンブル以外のいかなるアップリンクデータまたは制御信号も転送しない。
【0063】
一方、以下では、ランダムアクセス手順のうち、競合解決のための具体的な方法について説明する。
【0064】
ランダムアクセス手順で競合が発生する理由は、基本的に、ランダムアクセスプリアンブルの数が有限であるからである。すなわち、基地局は、全ての端末に端末固有のランダムアクセスプリアンブルを与えることができず、端末は、共通のランダムアクセスプリアンブルから任意に一つを選択して転送することになる。このため、同一のPRACHリソースを通じて2以上の端末が同じランダムアクセスプリアンブルを選択して転送する場合が発生するが、この場合も、基地局では一つの端末から転送される一つのランダムアクセスプリアンブルと判断してしまう。
【0065】
これによって、基地局は、ランダムアクセス応答を端末に転送し、該ランダムアクセス応答を一つの端末が受信すると予測する。しかし、上述した通り、競合が発生することがあるから、2以上の端末が一つのランダムアクセス応答を受信するようになり、これによって、端末ごとにそれぞれランダムアクセス応答の受信に伴う動作を行うことになる。すなわち、ランダムアクセス応答に含まれた一つのアップリンク承認(UL Grant)を用いて、2以上の端末がそれぞれ異なるデータを同じ無線リソースに転送するという問題点が発生する。
【0066】
これにより、当該データの転送は両方とも失敗することもあり、端末の位置または転送パワーによって特定端末のデータのみを基地局で受信することもある。後者の場合、2以上の端末はいずれも、自身のデータの転送に成功したと仮定するため、基地局は、競合に失敗した端末に、失敗した事実に関する情報を知らせなければならない。すなわち、競合の失敗または成功に関する情報を知らせることが、競合解決(Contention Resolution)である。
【0067】
競合解決方法には、2通りの方法がある。一つの方法は、競合解決タイマー(Contention Resolutionタイマー;以下、「CRタイマー」と称する。)を用いる方法であり、もう一つの方法は、成功した端末の識別子を端末に転送する方法である。
【0068】
前者の場合は、端末がランダムアクセス手順前に既に固有のセル識別子(C−RNTI)を持っている場合に用いられる。すなわち、既にセル識別子を持っている端末は、ランダムアクセス応答によって自身のセル識別子を含むデータを基地局に転送し、競合解決タイマーを作動する。そして、競合解決タイマーが満了する前に、自身のセル識別子が含まれているPDCCH情報が受信すると、端末は、自身が競合に成功したと判断し、ランダムアクセス手順を正常に終えることとなる。逆に、もし競合解決タイマーが満了する前に、自身のセル識別子が含まれているPDCCHを受信できないと、自身が競合で失敗したと判断し、ランダムアクセス手順を再び行ったり、上位層に失敗事実を通報したりする。
【0069】
競合解消方法の後者は、すなわち、成功した端末の識別子を転送する方法は、端末がランダムアクセス手順の前に固有のセル識別子を持っていない場合に用いられる。すなわち、端末自身がセル識別子を持っていない場合、ランダムアクセス応答に含まれたアップリンク承認(UL Grant)情報に基づき、セル識別子よりも上位識別子(例えば、S−TMSIまたはRandom Id)をデータに含めて転送し、端末は、競合解決タイマーを始動させる。競合解決タイマーが満了する前に、自身の上位識別子を含むデータがDL−SCHで受信すると、端末は、ランダムアクセス手順に成功したと判断する。一方、競合解決タイマーが満了する前に、自身の上位識別子を含むデータをDL−SCHで受信できないと、端末は、ランダムアクセス手順に失敗したと判断する。
【0070】
このような内容を理解のうえ、ランダムアクセス手順中にまたはランダムアクセス手順後に余計にデータが再送されうる場合について具体的に説明し、その原因を規定する。
【0071】
図6は、本発明者により認識された、端末が意図しないHARQ再送を行うようになる場合を説明するための図である。
【0072】
段階1:端末は、競合ベースランダムアクセス手順を行うためにランダムアクセスプリアンブルを基地局に転送することができる。
【0073】
段階2:基地局は、端末にランダムアクセスプリアンブルに対する応答としてランダムアクセス応答を転送することができる。
【0074】
段階3:端末は、ランダムアクセス応答に含まれたTACを適用し、TATを始動させることができる。また、端末は、ランダムアクセス応答に含まれたアップリンクスケジューリング情報に基づいてMAC PDUを生成し、これをメッセージ3バッファー(Msg3 Buffer)に保存することができる。そして、端末は、メッセージ3バッファーに保存されているMAC PDUを、複数のHARQプロセスのうち、特定HARQプロセス(本実施形態ではx HARQプロセスと仮定する。)に関連したHARQバッファーに再び保存し、当該HARQプロセスの転送時点で、HARQバッファーに保存されているMAC PDUを基地局に転送することができる。
【0075】
段階4:上述した通り、特定条件によってランダムアクセス手順に失敗したと判断する。これにより、端末は、TATの動作を中止する。そして、端末は、再びランダムアクセス手順を試みるために、ランダムアクセスプリアンブルを基地局に転送し、以降の必要な動作を行うことができる。
【0076】
段階5:端末は再びランダムアクセス手順を試みるために、ランダムアクセスプリアンブルを基地局に転送し、基地局からランダムアクセス応答を受信することができる。この場合、端末はランダムアクセス応答に含まれたTACを適用してTATを再開始できる。また、端末は、メッセージ3バッファーに保存されているMAC PDUを複数のHARQプロセスのうち特定HARQプロセス(本実施形態では、y HARQプロセスと仮定する。)に関連したHARQバッファーに保存し、当該HARQプロセスの転送時点で、MAC PDUを転送するために準備することができる。
【0077】
段階6:端末のTATが動作中の場合は、端末はアップリンクの時間同期がなされていると判断し、よって、複数のHARQプロセス(具体的に、LTEシステムでは8個のHARQプロセス)に対応するそれぞれの転送時点に対応するHARQバッファーにMAC PDUが存在するか否かを判定し、対応するHARQバッファーにMAC PDUが保存していると、それを該当の転送時点に転送または再送するようになる。したがって、段階6で、もしx HARQプロセスに関連したHARQバッファー(x HARQバッファー)にMAC PDUが依然として保存されており、端末のTATが動作しているとすれば、y HARQプロセスに対応するHARQバッファー(y HARQバッファー)に保存されているMAC PDUの転送と独立して、x HARQプロセスに対応する転送時点に、x HARQバッファーに保存されているMAC PDUを再送することになる。しかし、このようなx HARQバッファーに保存されているMAC PDUの再送は、意図しない再送に該当する。
【0078】
図6で上述した例の通り、端末がランダムアクセス手順を再び行う際に用いるHARQプロセスは、以前のランダムアクセス手順で用いたHARQプロセスと異なる場合があり、よって、上述したような不必要なデータ再送が発生することがある。したがって、本発明の一実施の形態では、上述した通り、意図しないデータの再送を防止するために、ランダムアクセス手順が再び行われる状況をそれぞれ把握し、各状況において取られる後続の手順において、以前の転送に用いられたHARQバッファーをフラッシュ(flush)することで、不必要な再送を防止することを提案する。
【0079】
以下では、それぞれの状況に対して本実施形態による方法を適用する場合について説明する。
第1実施例
【0080】
図7は、本発明の第1実施例によってランダムアクセスを行う端末の動作を説明するための図である。
【0081】
端末は基地局にランダムアクセスを行うためにランダムアクセスプリアンブルを転送することができる(S701)。ランダムアクセスプリアンブル転送に対する応答として基地局はランダムアクセス応答メッセージを端末に転送することができる(S702)。このランダムアクセス応答メッセージは、以降の端末の第3メッセージ転送のためのアップリンク承認情報を含むことができる。
【0082】
この状態で、端末が基地局に対して確定されたセル識別子(C−RNTI)を持っていると、端末は、競合解決手順を行うために、端末のセル識別子(C−RNTI)を含むMAC PDUを構成し、これを第3メッセージとして基地局に転送することができる。このような端末のMAC PDU構成は、端末MAC層の多重化及び組み合わせエンティティ(Multiplexing and Assembly Entity)により構成されてメッセージ3バッファーに保存され、第3メッセージ転送に用いられる特定HARQプロセスのHARQバッファーに再び保存されることができる。
【0083】
上述した特定HARQプロセスを用いて第3メッセージを転送した端末は、競合解決タイマー(CR Timer)を始動させることができる(S704)。本実施例では、競合解決タイマーが満了する前に、端末が基地局からPDCCH信号を受信する場合を仮定する(S705)。端末がPDCCHを受信すると、すなわち、端末の物理層からMAC層にPDCCH受信を知らせた場合、本実施例に係る端末は、当該PDCCH信号が、端末の第3メッセージにより搬送されたセル識別子(C−RNTI)を用いて受信されたか否か判定する。
【0084】
もし、第3メッセージ転送において端末のセル識別子(C−RNTI)を含めて転送した端末が、自身のセル識別子に対応するPDCCHを受信できなかった場合、端末は、競合解決手順に失敗したと判断し、競合解決手順失敗に伴う後続動作を行うことができる。
【0085】
例えば、競合解決手順に失敗したと判断した端末は、(1)ランダムアクセスプリアンブル転送カウンター(PREAMBLE_TRANSMISSION_COUNTER)を1だけ増加させ、(2)このプリアンブル転送カウンター値が最大プリアンブル転送回数(preambleTransMax+1)に到達したか否か判定することができる。(3)万一、プリアンブル転送カウンター値が最大プリアンブル転送回数に到達すると、上位層にランダムアクセス手順の問題を報告することができる。(4)万一、プリアンブル転送カウンター値が最大プリアンブル転送回数に到達していない場合、端末は、バックオフパラメータを適用して後続ランダムアクセスプリアンブル転送時点を遅延させ、新しいランダムアクセスプリアンブルを選択する手順を行うことができる。
【0086】
一方、本実施形態に係る端末は、このような競合解決手順失敗による動作を行うに先立ち、第3メッセージ転送に用いられた特定HARQプロセスのHARQバッファーをフラッシュ(flush)する動作をさらに行うように構成することを提案する。このように、端末が競合解決手順を失敗と見なす動作に該当のHARQバッファーをフラッシュすることで、図6で上述したような不必要な再送を防止することができる。
第2実施例
【0087】
図8は、本発明の第2実施例によってランダムアクセスを行う端末の動作を説明するための図である。
【0088】
端末が基地局にランダムアクセスを行うためにランダムアクセスプリアンブルを転送(S801)し、これに対応するランダムアクセス応答メッセージを受信(S802)する動作は、第1実施例における動作と同様である。
【0089】
ただし、本実施例に係る端末は、この状態で、基地局に対して確定されたセル識別子(C−RNTI)を持っていないと仮定する。この場合、端末は、第3メッセージの転送時に自身の固有識別子(例えば、S−TMSIまたは任意ID(Random Id))をMAC PDUに含めて転送することができる。このように、競合解決手順に用いられる端末の固有識別子を、「端末競合解決識別子(UE Contention Resolution Identity)」と呼ぶことができる。
【0090】
本実施例に係る端末は、S−TMSIを含むMAC PDUを構成して基地局に転送するとする(S803)。このような端末のMAC PDU構成も同様、端末MAC層の多重化及び組み合わせエンティティ(Multiplexing and Assembly Entity)により構成されてメッセージ3バッファーに保存され、第3メッセージ転送に用いられる特定HARQプロセスのHARQバッファーに再び保存されることができる。
【0091】
上述した特定HARQプロセスを用いて第3メッセージを転送した端末は、競合解決タイマー(CR Timer)を始動させることができる(S804)。本実施例では、競合解決タイマーが満了する前に、端末が基地局からPDCCH信号を受信する場合を仮定する(S805)。端末がPDCCHを受信する場合、本実施例に係る端末は、当該PDCCH信号が、端末が現在ランダムアクセスに用いている臨時セル識別子(Temporary C−RNTI)を用いて受信されたか否か判定することができる。
【0092】
もし、該PDCCHが端末の臨時セル識別子を用いて受信されたものでない、または、該PDCCHに対応する無線領域を通じて受信したPDSCHに、端末のS−TMSIが含まれていない場合は、端末は、競合解決手順に失敗したと見なし、競合解決手順失敗による後続動作を行うことができる。
【0093】
本実施例に係る端末も同様、第1実施例で説明したような、競合解決失敗による動作を行うことができる。また、本実施形態に係る端末は、このような競合解決手順失敗による動作を行うに先立ち、第3メッセージ転送に用いられた特定HARQプロセスのHARQバッファーをフラッシュする動作をさらに行うように構成することを提案する。このように、端末が競合解決手順を失敗と見なす動作に該当のHARQバッファーをフラッシュすることで、図6で上述したような不必要な再送を防止することができる。
第3実施例
【0094】
図9は、本発明の第3実施例によってランダムアクセスを行う端末の動作を説明するための図である。
【0095】
端末が基地局にランダムアクセスを行うためにランダムアクセスプリアンブルを転送(S901)し、これに対応するランダムアクセス応答メッセージを受信(S902)する動作は、第1実施例におけると同様である。
【0096】
また、本実施例において、端末は、第3メッセージにより搬送されるMAC PDUにセル識別子(C−RNTI)を含める場合、及び端末競合解決識別子(例えば、S−TMSI)を含める場合の両方を含むとする(S903)。
【0097】
端末は、第3メッセージを転送すると、競合解決タイマー(CR Timer)を始動させることができる(S904)。競合解決タイマー満了前に基地局から端末の第3メッセージ転送に対応する第4メッセージを受信できない場合(S905)、端末は、この競合解決手順を失敗と見なし、第1及び第2実施例と同様に、競合解決手順の失敗による後続動作を行うことができる。この場合、本実施形態に係る端末は、このような競合解決手順失敗による動作を行うに先立ち、第3メッセージ転送に用いられた特定HARQプロセスのHARQバッファーをフラッシュする動作をさらに行うように構成することを提案する。このように、端末が競合解決手順を失敗と見なす動作に該当のHARQバッファーをフラッシュすることで、図6で上述したような不必要な再送を防止することができる。
【0098】
以上、図7乃至図9を参照して説明した第1乃至第3実施例はいずれも、端末が「競合解決手順を失敗と見なす場合」に関するものである。このように、端末が競合解決手順を失敗と見なす場合、それによる後続動作の一つとして、以前のランダムアクセス手順で用いられたHARQバッファーをフラッシュすることで、以降の追加的なランダムアクセス動作に不必要なMAC PDU再送を防止すると同時に、HARQ動作を明確にすることができる。
【0099】
一方、本発明の他の側面として、端末のアップリンク同期状況を表す時間同期タイマー(TAT)について説明する。
【0100】
上述した通り、端末が基地局から時間同期命令(TAC)を受信すると、当該時間同期命令を適用し、時間同期タイマーを始動または再始動させることができる。このような時間同期タイマーが動作中である場合に限って、端末は基地局とアップリンク同期が合っているとし、アップリンク信号を基地局に転送することができる。時間同期タイマーが満了(Expire)した場合、全てのHARQバッファーをフラッシュし、RRC層にPUCCH及びSRSを解除する旨を知らせることができる。また、構成された全てのダウンリンク割当情報及びアップリンク承認情報を削除することができる。
【0101】
ただし、本発明の他の実施形態では、このように時間整列タイマー(TAT)が満了する場合の他、時間整列タイマー(TAT)が中止(stop)される場合にも、該当のHARQバッファーをフラッシュすることを提案する。特に、端末は、図7乃至9で説明した通り、競合解決手順を失敗と見なす場合、時間整列タイマー(TAT)を中止させるように構成される。したがって、端末の時間整列タイマーが満了する場合、時間整列タイマーがさらに中止されると、時間整列タイマー中止に対応するHARQバッファーをフラッシュすることで、以後の手順において不必要なアップリンクデータ再送を防止することができる。
【0102】
一方、上述したような本発明の実施形態による場合、端末のランダムアクセス動作について説明すると、下記の通りである。
【0103】
図10は、本発明の一実施形態に係る端末が基地局にランダムアクセスを行う手順を説明するための図である。
【0104】
段階1:端末は、競合ベースランダムアクセス手順を行うために、ランダムアクセスプリアンブルを基地局に転送することができる。
【0105】
段階2:基地局は端末にランダムアクセス応答メッセージを転送することができる。
【0106】
段階3:端末は、ランダムアクセス応答に含まれた時間同期命令(TAC)を適用し、時間整列タイマー(TAT)を始動または再始動させることができる。また、端末は、ランダムアクセス応答に含まれたアップリンクスケジューリング情報に基づいてMAC PDUを生成し、これをメッセージ3バッファーに保存することができる。そして端末は、メッセージ3バッファーに保存されているMAC PDUを、関連HARQバッファー(本実施形態ではx HARQプロセスと関連したHARQバッファーとする。)に再び保存し、当該HARQプロセスの転送時点において、HARQバッファーに保存されているMAC PDUを基地局に転送することができる。また、競合解消のための競合解決タイマーを始動させることができる。
【0107】
段階4:競合解決タイマーが満了したとき、端末がセル識別子(C−RNTI)を含む第3メッセージを転送した後に端末のセル識別子に対応するPDCCHを受信できなかった場合、またはセル識別子(C−RNTI)が端末に割当てられなかった場合、端末は、ランダムアクセス応答に含まれたアップリンクスケジューリング情報に基づいて、メッセージ内に上位識別子(S−TMSIまたはRandom ID)を含めて、メッセージを転送し、基地局が臨時セル識別子(Temporary C−RNTI)で指示して転送したPDCCHに対応するPDSCHデータに、当該上位識別子と同一の情報が含まれていない場合に、現在行われているランダムアクセス手順に失敗した、つまり、競合解決手順に失敗したと判断することができる。本実施形態に係る端末は、競合解決手順に失敗したと認知する場合、端末のHARQバッファーに保存されているデータを捨てるように構成することを提案する。
【0108】
また、端末は、ランダムアクセス手順を再び試みるために、ランダムアクセスプリアンブルを基地局に転送し、以降、基地局からランダムアクセス応答を受信することができる。
【0109】
段階5:端末は、ランダムアクセス応答に含まれた時間同期命令(TAC)を適用し、時間整列タイマー(TAT)を再始動させることができる。また、端末は、メッセージ3バッファーに保存されているMAC PDUを、関連HARQバッファー(本実施形態では、yHARQプロセスと関連したHARQバッファーとする。)に保存し、該当のHARQプロセスの転送時点でMAC PDUを転送するために準備することができる。
【0110】
上述したように、LTEシステムにおいてHARQ動作は、複数のHARQプロセスが対応する転送時点に自身のHARQバッファーにデータが保存されている場合、これを基地局に再送するように構成されている。ただし、本実施形態では、x HARQプロセスに保存されているMAC PDUが段階4でフラッシュされたため、x HARQプロセスに対応する転送時点で不必要なデータ再送が発行されることがない。
【0111】
一方、以下では、本発明の一実施形態に係る端末構成について説明する。
【0112】
移動通信システムにおいて、端末は、信号入力のためのモジュール、ディスプレイモジュール、アンテナ、信号処理のためのプロセッサなどを含むことができる。特に、本発明の一実施形態に係るランダムアクセス動作を行うための端末のプロセッサの構成について具体的に説明する。
【0113】
図11は、本発明の一実施形態に係る端末のプロセッサ構成を示す図である。
【0114】
図11に示すように、端末のプロセッサは、図2及び図3に示すような層構造を有することができる。なかでも、本実施形態と関連した物理層モジュール1110及びMAC層モジュール1120を中心に説明する。
【0115】
本実施形態に係る端末の物理層モジュール1110は、基地局にランダムアクセスプリアンブル(RA Preamble)を転送するように構成される転送モジュール(Tx Module)1111、及び基地局からアップリンク承認情報を含むランダムアクセス応答メッセージ(RAR)を受信するように構成される受信モジュール(Rx Module)1112を含むように構成することができる。また、本実施形態に係る端末のMAC層モジュール1120は、受信モジュール1112が受信したアップリンク承認情報に基づき、アップリンクデータ及び端末の識別情報を含むMAC PDUを構成する多重化及び組み合わせエンティティ(Multiplexing and Assembly Entity)1121、ランダムアクセス応答メッセージ受信によって多重化及び組み合わせエンティティ1121で構成されるMAC PDUを保存するように構成されるメッセージ3バッファー1122、複数のHARQプロセスモジュール1124とこれら複数のHARQプロセスモジュールのそれぞれに対応する複数のHARQバッファー1125、及び複数のHARQプロセスモジュール1124の動作を制御するHARQエンティティ(HARQ Entity)1123を含むことができる。
【0116】
特に、MAC層モジュール1120は、受信モジュール1112のランダムアクセス応答メッセージ受信によってメッセージ3バッファー1122に保存されたMAC PDUを、複数のHARQプロセスモジュールのうちの第1HARQプロセス1124に対応する第1HARQバッファー1125に複写するように構成することができる。また、MAC層モジュール1120は、第1HARQプロセス1124を用いて、第1HARQバッファー1125に保存されているMAC PDUを転送モジュール1111を通じて基地局に転送するように制御することができる。なお、第1HARQバッファー1125に保存されているMAC PDU転送時に、MAC層モジュール1120が、競合解決タイマー(CR Timer)を始動または再始動させるように構成することができる。
【0117】
一方、物理層モジュール1110が基地局からのPDCCH受信を通知する場合、MAC層モジュール1120は、このPDCCH信号またはこのPDCCH信号に対応するPDSCH信号が、端末の識別情報に対応するか否か、または、競合解決タイマーが満了したか否かを判定することができる。万一、PDCCHまたは該PDCCHに対応するPDSCHが端末の識別情報に対応しない場合、または競合解決タイマーが満了する場合、本実施形態に係る端末におけるMAC層モジュール1120を、第1HARQバッファー1125をフラッシュ(flush)するように構成することを提案する。
【0118】
このように、MAC層モジュール1120が競合解決手順を失敗と見なす場合、MAC層モジュール1120はTATを中止させ、具体的にTATが満了(expire)する場合または中止(stop)される場合に、MAC層モジュールは、第1HARQバッファー1125に保存されているMAC PDUをフラッシュするように構成することができる。
【0119】
以上開示された本発明の好適な実施例についての詳細な説明は、当業者が本発明を実現及び実施できるように提供された。以上では本発明の好適な実施形態を参照して説明したが、当該技術の分野における熟練した当業者には、添付した特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び領域を逸脱しない範囲内で、本発明を様々に修正及び変更できるということが理解されるであろう。したがって、本発明は、ここに開示された実施形態に制限されるものではなく、ここで開示された原理及び新規な特徴と一致する最も広い範囲を有するものといえる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
上述したような信号送受信技術及びそのための端末構造は、3GPP LTEシステムに適用される例を中心に説明したが、3GPP LTEシステムの他にも、類似の過程を有するその他の様々な移動通信システムにも適用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信システムにおいて端末がランダムアクセスを行う技術に係り、特に、不必要な再送を防止するためのランダムアクセス手法及びそのための端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明を適用できる移動通信システムの一例として、3GPP LTE(3rd Generation Partnership Project Long Term Evolution;以下、「LTE」という。)通信システムについて概略的に説明する。
【0003】
図1は、移動通信システムの一例としてE−UMTSネットワーク構造を概略的に示す図である。
【0004】
E−UMTS(Evolved Universal Mobile Telecommunications System)は、既存UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)から進展したシステムであり、現在3GPPで基礎的な標準化作業が行われている。一般に、E−UMTSは、LTEシステムと呼ぶこともできる。
【0005】
E−UMTSは、主に、E−UTRAN 101及びCN(Core Networ)102とからなることができる。E−UTRAN(Evolved−UMTS Terrestrial Radio Access Network)101は、端末(User Equipment;以下、「UE」と略す。)103、基地局(以下、「eNode B」または「eNB」と略す。)104、及びネットワークの終端に設けられて外部ネットワークと接続する接続ゲートウェイ(Access Gateway;以下、「AG」と略す。)105で構成される。AG 105は、ユーザトラフィック処理を担当する部分と、制御用トラフィックを処理する部分とに区別することもできる。この場合には、新しいユーザトラフィックを処理するAGと制御用トラフィックを処理するAGとの間に新しいインターフェースを用いて互いに通信してもよい。
【0006】
一つのeNode Bには、一つ以上のセル(Cell)が存在することができる。eNode B同士間には、ユーザトラフィックあるいは制御トラフィックの転送のためのインターフェースが用いられてよい。CN 102は、AG 105、及びその他UE 103のユーザ登録などのためのノードなどで構成されればよい。E−UTRAN 101とCN 102とを区別するためのインターフェースが使用されてもよい。
【0007】
端末とネットワークとの間における無線インターフェースプロトコル(Radio Interface Protocol)層は、通信システムに広く知られた開放型システム間相互接続(Open System Interconnection;OSI)基準モデルの下位の3層に基づき、L1(第1層)、L2(第2層)、L3(第3層)に区別することができる。それらのうち、第1層に属する物理層は、物理チャネル(Physical Channel)を用いた情報転送サービス(Information Transfer Service)を提供し、第3層に位置する無線リソース制御(Radio Resource Control;以下、「RRC」と略す。)層は、端末とネットワーク間において無線リソースを制御する役割を果たす。このために、RRC層は、端末とネットワーク間においてRRCメッセージをやり取りする。RRC層は、eNode B 104及びAG 105などを含むネットワークノードに分散してもよく、eNode B 104またはAG 105にのみ位置してもよい。
【0008】
図2及び図3に、3GPP無線接続ネットワーク規格に基づく端末とUTRAN間の無線インターフェースプロトコルの構造を示す。
【0009】
図2及び図3の無線インターフェースプロトコルは、水平的には、物理層(Physical Layer)、データリンク層(Data Link Layer)及びネットワーク層(Network Layer)からなり、垂直的には、データ情報転送のためのユーザプレーン(User Plane)と制御信号(Signaling)伝達のための制御プレーン(Control Plane)とに区別される。具体的に、図2は、無線プロトコル制御プレーンの各層を示し、図3は、無線プロトコルユーザプレーンの各層を示す。図2及び図3のプロトコル層は、通信システムで広く知られた開放型システム間相互接続(OSI)基準モデルの下位3層に基づき、L1(第1層)、L2(第2層)、L3(第3層)に区別することができる。
【0010】
以下、図2の無線プロトコル制御プレーンと図3の無線プロトコルユーザプレーンにおける各層について説明する。
【0011】
第1層である物理(Physical;PHY)層は、物理チャネル(Physical Channel)を用いて上位層に情報転送サービス(Information Transfer Service)を提供する。PHY層は、上位のメディア・アクセス制御(Medium Access Control;MAC)層と転送チャネル(Transport Channel)を介して接続しており、この転送チャネルを介してMAC層とPHY層との間においてデータが移動する。ここで、転送チャネルは、チャネルの共有有無によって、専用(Dedicated)転送チャネルと共用(Common)転送チャネルとに大別される。そして、互いに異なるPHY層の間、すなわち、送信側のPHY層と受信側のPHY層との間では、無線リソースを用いた物理チャネルを介してデータが移動する。
【0012】
第2層には、様々な層が存在する。まず、メディア・アクセス制御(Medium Access Control;MAC)層は、様々な論理チャネル(Logical Channel)を様々な転送チャネルにマッピングさせる役割を果たし、また、様々な論理チャネルを一つの転送チャネルにマッピングさせる論理チャネル多重化(Multiplexing)の役割を果たす。MAC層は、上位層であるRLC層とは論理チャネルで連結されており、論理チャネルは、転送される情報の種類によって、制御プレーン(Control Plane)の情報を転送する制御チャネル(Control Channel)とユーザプレーン(User Plane)の情報を転送するトラフィックチャネル(Traffic Channel)とに大別される。
【0013】
第2層の無線リンク制御(Radio Link Control;RLC)層は、上位層から受信したデータを分割(Segmentation)及び連結(Concatenation)して、下位層が無線区間でデータを転送するのに適合するようにデータのサイズを調節する役割を果たす。また、それぞれの無線ベアラ(Radio Bearer;RB)が要求する様々なQoS(Quality of Service)を保障できるようにするためにTM(Transparent Mode、透過モード)、UM(Un−acknowledged Mode、非確認モード)、及びAM(Acknowledged Mode、確認モード)を含む3種類の動作モードを提供している。特に、AM RLCは、信頼できるデータ転送のために自動反復及び要請(Automatic Repeat and Request;ARQ)機能を用いた再送機能を行っている。
【0014】
第2層のパケットデータコンバージェンスプロトコル(Packet Data Convergence Protocol;PDCP)層は、IPv4やIPv6のようなIPパケット転送時に、帯域幅の小さな無線区間で効率的に転送するために、比較的大きいサイズであるとともに不要な制御情報を含んでいるIPパケットヘッダーサイズを減らすヘッダー圧縮(Header Compression)機能を実行する。これは、データのヘッダー(Header)部分で必須の情報のみを転送するようにし、無線区間の転送効率を増加させる役割を果たす。また、LTEシステムでは、PDCP層がセキュリティー(Security)機能も担うが、これは、第3者のデータ傍受を防止する暗号化(Ciphering)と第3者のデータ操作を防止する完全性保護(Integrity protection)とで構成される。
【0015】
第3層の最上部に位置している無線リソース制御(Radio Resource Control;RRC)層は、制御プレーンでのみ定義され、無線ベアラ(RB)の設定(Configuration)、再設定(Re−configuration)及び解除(Release)と関連して論理チャネル、転送チャネル及び物理チャネルの制御を担当する。ここで、RBは、端末とUTRAN間のデータ伝達のために無線プロトコルの第1及び第2層により提供される論理的経路(path)を意味し、一般に、RBが設定されるということは、特定サービスを提供するために必要な無線プロトコル層及びチャネルの特性を規定し、それぞれの具体的なパラメータ及び動作方法を設定する過程を意味する。RBは再び、SRB(Signaling RB)とDRB(Data RB)の2種類に分けられ、SRBは、制御プレーン(C−plane)でRRCメッセージを転送する経路として用いられ、DRBは、ユーザプレーン(U−plane)でユーザデータを転送する経路として用いられる。
【0016】
ネットワークにおいて端末にデータを転送する下り転送チャネルには、システム情報を転送するBCH(Broadcast Channel)と、それ以外にユーザトラフィックや制御メッセージを転送する下りSCH(Shared Channel)とがある。下りマルチキャストまたは放送サービスのトラフィックまたは制御メッセージは、下りSCHを通じて転送されてもよく、別の下りMCH(Multicast Channel)を通じて転送されてもよい。一方、端末からネットワークへデータを転送する上り転送チャネルには、初期制御メッセージを転送するRACH(Random Access Channel)と、それ以外にユーザトラフィックや制御メッセージを転送する上りSCH(Shared Channel)とがある。
【0017】
そして、下り転送チャネルに伝達される情報を、ネットワークと端末との間の無線区間で転送する下り物理チャネルには、BCHの情報を転送するPBCH(Physical Broadcast Channel)、MCHの情報を転送するPMCH(Physical Multicast Channel)、PCHと下りSCHの情報を転送するPDSCH(Physical Downlink shared Channel)、そして下りまたは上り無線リソース割当情報(DL/UL Scheduling Grant)などのように、第1層と第2層から提供する制御情報を転送するPDCCH(Physical Downlink Control Channel、またはDL L1/L2 control channelともいう。)がある。一方、上り転送チャネルに伝達される情報を、ネットワークと端末との間の無線区間で転送する上り物理チャネルには、上りSCHの情報を転送するPUSCH(Physical Uplink Shared Channel)、RACH情報を転送するPRACH(Physical Random Access Channel)、そしてHARQ ACKまたはNACK、スケジューリング要請(SR;Scheduling Request)、CQI(Channel Quality Indicator)報告などのように、第1層と第2層から提供する制御情報を転送するPUCCH(Physical Uplink Control Channel)がある。
【0018】
上述した説明に基づき、LTEシステムで行われるHARQ動作について説明すると、下記の通りである。
【0019】
図4は、LTEシステムで行われるHARQ動作を示す図である。
【0020】
図4では、端末(UE)が送信側になり、基地局(eNode BまたはeNB)が受信側になって、HARQフィードバック情報を基地局から受信するアップリンク状況を仮定して説明するが、ダウンリンクにも同一の適用が可能である。
【0021】
まず、基地局は、HARQ方式で端末がデータを転送するようにするためにPDCCH(Physical Downlink Control CHannel)を通じてアップリンクスケジューリング情報、すなわち、アップリンク承認(UL Grant)を転送することができる(S401)。このUL承認には、端末識別子(例えば、C−RNTIまたはSemi−Persistent Scheduling C−RNTI)、割り当てられた無線リソースの位置(Resource block assignment)、変調/コーディング率及びリダンダンシーバージョンのような転送パラメータ、新規データ指示子(New Data Indicator)などが含まれてよい。
【0022】
端末は、TTI(Transmission Time Interval)ごとにPDCCHをモニタリング(Monitoring)して、自身に来るUL承認情報を確認することができ、端末は、自身に転送されたUL承認情報を発見する場合、受信したUL承認情報に基づいてデータ(図4では、データ1)をPUSCH(Physical Uplink Shared CHannel)を通じて転送することができる(S402)。この時、転送されるデータは、MAC PDU(Medium Access Control Packet Data Unit)単位で転送されてもよい。
【0023】
上述した通り、PUSCHを通じたアップリンク転送を行った端末は、基地局からのPHICH(Physical hybrid−ARQ indicator channel)を通じたHARQフィードバック情報の受信を待つようになる。基地局から上記データ1に対するHARQ NACKが転送された場合(S403)には、端末は、該データ1の再送TTIにおいてデータ1を再送する(S404)。一方、基地局からHARQ ACKを受信した場合(図示せず)には、端末は、データ1に対するHARQ再送を中止する。
【0024】
端末は、HARQ方式で1回のデータ転送を行う度に転送回数(CURRENT_TX_NB)をカウントし、この転送回数が、上位層で設定した最大転送回数(CURRENT_TX_NB)に達すると、HARQバッファー(buffer)に保存されたMAC PDUを捨てる。
【0025】
端末が、段階S404で再送したデータ1に対するHARQ ACKを受信し(S405)、PDCCHを通じてUL承認を受信する場合(S406)、端末は、今回転送すべきデータが初期転送(initial transmission)されたMAC PDUなのか、あるいは、以前のMAC PDUを再送(retransmission)すべきなのかは、PDCCHを通じて受信するNDI(New Data Indicator)フィールドからわかる。このNDIフィールドは、1ビットフィールドであり、新しいMAC PDUが転送される度に0→1→0→1→…にトグル(toggle)され、再送に対しては初期転送と同じ値を有する。すなわち、端末は、NDIフィールドが以前に転送された値と同じか否か比較し、MAC PDUを再送するか否かがわかる。
【0026】
図4では、段階S401におけるNDI=0値が段階S406でNDI=1にトグリングされたことから、端末は該当の転送が新規転送であることを認知し、これにより、データ2をPUSCHを通じて転送することができる(S407)。
【0027】
一方、端末が基地局にランダムアクセスを行う方法について説明すると、下記の通りである。
【0028】
まず、端末がランダムアクセス手順を行う場合には、下記のようなものがある。
− 端末が基地局とRRC連結(RRC Connection)しておらず、初期接続(initial access)をする場合
− 端末がハンドオーバー手順において、ターゲット(target)セルに初めて接続する場合
− 基地局の命令に応じてランダムアクセス手順が要請される場合
− アップリンクの時間同期が合わなかったり、無線リソースを要請するために使われる指定された無線リソースが割り当てられていない状況で、アップリンクで転送するデータが発生する場合
−無線連結失敗(radio link failure)またはハンドオーバー失敗(handover failure)時に、復旧過程を行う場合
【0029】
LTEシステムでは、ランダムアクセスプリアンブルを選択する過程で、特定の集合の中から端末が任意に一つのプリアンブルを選択して使用する競合ベースランダムアクセス手順(contention based random access procedure)と、基地局が特定端末にのみ割り当てたランダムアクセスプリアンブルを使用する非競合ベースランダムアクセス手順(non−contention based random access procedure)の両方を提供する。ただし、非競合ベースランダムアクセス手順は、上述したハンドオーバー手順や基地局の命令によって要請された場合に限って用いることができる。
【0030】
一方、端末が特定基地局とランダムアクセスを行う手順は、主に、(1)端末が基地局にランダムアクセスプリアンブルを転送する段階(以下、混同がない限り、「第1メッセージ(message 1)」転送段階という。)、(2)転送されたランダムアクセスプリアンブルに対応して基地局からランダムアクセス応答を受信する段階(以下、混同がない限り、「第2メッセージ(message 2)」受信段階という。)、(3)ランダムアクセス応答メッセージによって搬送された情報を用いてアップリンクメッセージを転送する段階(以下、混同がない限り、「第3メッセージ(message 3)」転送段階という。)、及び(4)前記アップリンクメッセージに対応するメッセージを基地局から受信する段階(以下、混同がない限り、「第4メッセージ(message 4)」受信段階という。)を含むことができる。
【0031】
図5は、競合ベースランダムアクセス手順において端末と基地局の動作手順を説明するための図である。
【0032】
(1)第1メッセージ転送
まず、端末は、システム情報またはハンドオーバー命令(Handover Command)を通じて指示されたランダムアクセスプリアンブルの集合から、任意に(randomly)一つのランダムアクセスプリアンブルを選択し、該ランダムアクセスプリアンブルを転送できるPRACH(Physical RACH)リソースを選択して転送することができる(S501)。
【0033】
(2)第2メッセージ受信
端末は、上記段階S501でランダムアクセスプリアンブルを転送した後に、基地局がシステム情報またはハンドオーバー命令を通じて指示したランダムアクセス応答受信ウィンドウ内で、自身のランダムアクセス応答の受信を試みる(S502)。特に、ランダムアクセス応答情報は、MAC PDUの形式に転送されてよく、該MAC PDUは、PDSCH(Physical Downlink Shared CHannel)を通じて伝達可能である。また、PDSCHで伝達される情報を端末が適切に受信するために、端末は、PDCCH(Physical Downlink Control CHannel)をモニタリングすることが好ましい。すなわち、PDCCHには、当該PDSCHを受信すべき端末の情報、該PDSCHの無線リソースの周波数及び時間情報、及び該PDSCHの転送形式などが含まれていると好ましい。一応、端末が自身に転送されるPDCCHの受信に成功すると、これらのPDCCHの情報に基づき、PDSCHで転送されるランダムアクセス応答を適切に受信することができる。そして、このランダムアクセス応答には、ランダムアクセスプリアンブル識別子(ID;例えば、RAPID(Random Access Preamble IDentifier))、アップリンク無線リソースを知らせるアップリンク承認(UL Grant)、臨時セル識別子(Temporary C−RNTI)、そして時間同期補正値(Timing Advance Command:TAC)が含まれてよい。
【0034】
ランダムアクセスプリアンブル識別子がランダムアクセス応答に含まれる理由は、一つのランダムアクセス応答には一つ以上の端末のためのランダムアクセス応答情報が含まれることがあり、よって、アップリンク承認(UL Grant)、臨時セル識別子そしてTACなどの情報のどれが有効であるかを端末に知らせなければならないためである。この段階で、端末は、段階S502において自身が選択したランダムアクセスプリアンブルと一致するランダムアクセスプリアンブル識別子を選択すると仮定する。これにより、端末は、アップリンク承認(UL Grant)、臨時セル識別子(Temporary C−RNTI)及び時間同期補正値(TAC)などを受信することができる。
【0035】
(3)第3メッセージ転送
端末が、自身に有効なランダムアクセス応答を受信した場合には、該ランダムアクセス応答に含まれた情報をそれぞれ処理する。すなわち、端末は、TACを適用させ、臨時セル識別子を保存する。また、有効なランダムアクセス応答受信に対応して、転送するデータを第3メッセージのバッファーに保存することができる。
【0036】
一方、端末は、受信されたUL承認を用いて、データ(すなわち、第3メッセージ)を基地局に転送する(S503)。第3メッセージは端末の識別子を含まなければならない。競合ベースランダムアクセス手順では基地局でいかなる端末がランダムアクセス手順を行うかが判断できず、よって、将来の競合解決のためには端末を識別しなければならないわけである。
【0037】
端末の識別子を含める方法ついては、2通りの方法が論議された。第一の方法は、端末がランダムアクセス手順の前に、既に該当のセルから割り当てられた有効なセル識別子を持っていたとすれば、端末は、UL承認に対応するアップリンク転送信号を通じて自身のセル識別子を転送する。反面、もしランダムアクセス手順の前に、有効なセル識別子が割り当てられていないとすれば、端末は、自身の固有識別子(例えば、S−TMSIまたは任意ID(Random Id))を含めて転送する。一般に、この固有識別子は、セル識別子よりも長い。端末は、UL承認に対応するデータを転送すると、競合解決のためのタイマー(contention resolution timer;以下、「CRタイマー」という。)を始動させる。
【0038】
(4)第4メッセージ受信
端末が、ランダムアクセス応答に含まれたUL承認を通じて、自身の識別子を含むデータを転送した後、競合解決のために基地局の指示を待つ。すなわち、特定メッセージを受信するためにPDCCHの受信を試みる(S504)。該PDCCHを受信する方法についても、2通りの方法が論議された。前述した通り、UL承認に対応して転送された第3メッセージに含まれた端末識別子がセル識別子であれば、端末は、自身のセル識別子を用いてPDCCHの受信を試み、当該識別子が固有識別子である場合には、ランダムアクセス応答に含まれた臨時セル識別子を用いてPDCCHの受信を試みることができる。その後、前者の場合、もし、競合解決タイマーが満了する前に、自身のセル識別子を通じてPDCCHを受信した場合に、端末は、正常にランダムアクセス手順が行われたと判断し、ランダムアクセス手順を終了する。後者の場合には、競合解決タイマーが満了する前に、臨時セル識別子を通じてPDCCHを受信すると、該PDCCHが指示するPDSCHにより伝達されるデータを確認する。もし、該データの内容に自身の固有識別子が含まれていると、端末は、正常にランダムアクセス手順が行われたと判断し、ランダムアクセス手順を終了する。
【0039】
一方、上述したような第3メッセージ転送及び第4メッセージ受信を用いた競合解決手順に成功できなかった場合、端末は、別のランダムアクセスプリアンブルを選択してランダムアクセス手順を再び行うことができる。このため、端末は、基地局から第2メッセージを受信し、競合解決手順のために第3メッセージを構成して基地局に転送することができる。図4を参照して記載したHARQシステムにおいて、第3メッセージ転送に用いられるHARQプロセスは、以前のランダムアクセスを試みる時に第3メッセージ転送に用いられたHARQプロセスと異なることがある。この場合、以前のHARQプロセスに対応するHARQバッファーに保存されているMAC PDUが余計に再送されることがあるという問題が生じる。よって、この問題を認識し、解決するための方案を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0040】
上記の点に鑑みて、本発明は、従来技術の制約及び不都合による一つ以上の問題を大幅に軽減する、不必要な再送防止のためのランダムアクセス手法及びそのための端末を対象とする。
【0041】
本発明の目的は、不必要なデータ再送を防止するためのランダムアクセス方法及びそのための端末を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0042】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態では、端末が基地局にランダムアクセスを行う方法であって、前記端末が前記基地局にランダムアクセスプリアンブルを転送し、前記基地局から前記ランダムアクセスプリアンブルに対応して、アップリンク承認情報を含むランダムアクセス応答メッセージを受信し、前記アップリンク承認情報受信によってアップリンクデータ及び前記端末の識別情報を含むMAC PDUをメッセージ3バッファーに保存し、前記メッセージ3バッファーに保存されたMAC PDUを、第1HARQプロセスに対応する第1HARQバッファーに複写し、前記第1HARQプロセスを用いて、前記第1HARQバッファーに保存されたMAC PDUを前記基地局に転送し、 競合解決タイマー(CR Timer)を始動または再始動し、前記基地局から物理ダウンリンク制御チャネル信号を受信し、前記物理ダウンリンク制御チャネル信号または前記物理ダウンリンク制御チャネル信号に対応する物理ダウンリンク共有チャネル信号が前記端末の識別情報に対応しない場合、または競合解決タイマーが満了した場合、前記第1HARQバッファーをフラッシュ(flush)すること、を含む、端末のランダムアクセス方法を提供する。
【0043】
ここで、前記端末は、前記物理ダウンリンク制御チャネル信号または前記物理ダウンリンク制御チャネル信号に対応する物理ダウンリンク共有チャネル信号が前記端末の識別情報に対応しない場合、または前記競合解決タイマーが満了した場合、競合解決手順を失敗と見なすことができる。
【0044】
また、前記端末が競合解決手順を失敗と見なす場合、前記端末は、時間同期タイマー(Timing Alignment Timer:TAT)を中止させることができ、好適には、前記端末は、前記時間同期タイマー(TAT)が満了する場合または中止される場合、前記第1HARQバッファーをフラッシュすることができる。
【0045】
また、前記端末の識別情報は、前記端末のC−RNTI(Cell−Radio Network Temporary Identifier)及び端末競合解決識別子(UE Contention Resolution Identity)のうちのいずれか一つでよく、前記端末が前記端末のC−RNTIを含むMAC PDUを転送し、前記物理ダウンリンク制御チャネル信号が前記端末のC−RNTIに対応しない場合、前記端末は、前記競合解決手順を失敗と見なすことができる。一方、前記端末が前記端末競合解決識別子を含むMAC PDUを転送し、前記物理ダウンリンク制御チャネル信号に対応する物理ダウンリンク共有チャネル信号が前記端末競合解決識別子に対応しない場合、前記端末は、前記競合解決手順を失敗と見なすことができる。
【0046】
また、前記端末のランダムアクセス方法は、前記端末が、前記基地局に前記競合解決手順失敗によって選択されたランダムアクセスプリアンブルを再送し、前記基地局から時間同期命令(Timing Alignment Command:TAC)を含むランダムアクセス応答メッセージを受信し、前記時間同期命令受信によって時間同期タイマー(TAT)を始動または再始動し、前記メッセージ3バッファーに保存されたMAC PDUを、第2HARQプロセスに対応する第2HARQバッファーに複写し、前記第2HARQプロセスを用いて、前記第2HARQバッファーに保存されているMAC PDUを前記基地局に転送すること、をさらに含み、前記端末は、前記時間同期タイマーが始動または再始動されても、前記第1HARQバッファーに保存されているMAC PDUを再送しなくてよい。
【0047】
一方、本発明に係る他の実施形態では、基地局にランダムアクセスプリアンブルを転送するように構成される転送モジュール、及び前記基地局からアップリンク承認情報を含むランダムアクセス応答メッセージを受信するように構成される受信モジュール、を含む物理層モジュールと、前記受信モジュールが受信した前記アップリンク承認情報に基づき、アップリンクデータ及び端末の識別情報を含むMAC PDUを構成する多重化及び組み合わせエンティティ、前記ランダムアクセス応答メッセージ受信によって前記多重化及び組み合わせエンティティにより構成されるMAC PDUを保存するように構成されるメッセージ3バッファー、複数のHARQプロセスモジュール及び前記複数のHARQプロセスモジュールのそれぞれに対応する複数のHARQバッファー、及び前記複数のHARQプロセスモジュールの動作を制御するHARQエンティティ、を含むMAC層モジュールと、を含み、前記MAC層モジュールは、前記受信モジュールの前記ランダムアクセス応答メッセージ受信によって前記メッセージ3バッファーに保存されたMAC PDUを第1HARQプロセスに対応する第1HARQバッファーに複写し、前記第1HARQプロセスを用いて、前記第1HARQバッファーに保存されているMAC PDUを前記基地局に転送するように制御し、前記第1HARQバッファーに保存されているMAC PDUの転送時に競合解決タイマー(CR Timer)を始動または再始動し、前記物理層モジュールから前記基地局からの物理ダウンリンク制御チャネル信号受信が通知される場合、前記MAC層モジュールは、前記物理ダウンリンク制御チャネル信号または前記物理ダウンリンク制御チャネル信号に対応する物理ダウンリンク共有チャネル信号が前記端末の識別情報に対応するか否か、または競合解決タイマーが満了したか否かを判定し、前記物理ダウンリンク制御チャネル信号または前記物理ダウンリンク制御チャネル信号に対応する物理ダウンリンク共有チャネル信号が前記端末の識別情報に対応しない場合、または競合解決タイマーが満了した場合、前記第1HARQバッファーをフラッシュするように構成される、端末を提供する。
【0048】
ここで、前記MAC層モジュールは、前記物理ダウンリンク制御チャネル信号または前記物理ダウンリンク制御チャネル信号に対応する物理ダウンリンク共有チャネル信号が前記端末の識別情報に対応しない場合、または前記競合解決タイマーが満了した場合、競合解決手順を失敗と見なすように構成されるとよい。
【0049】
前記競合解決手順を失敗と見なす場合、前記MAC層モジュールは、時間同期タイマー(timing Alignment Timer:TAT)を中止させるように構成されてよく、前記MAC層モジュールは、前記時間同期タイマー(TAT)が満了する場合、または中止される場合に、前記第1HARQバッファーをフラッシュするように構成されてよい。
【0050】
前記端末の識別情報は、前記端末のC−RNTI(Cell−Radio Network Temporary Identifier)及び端末競合解決識別子(UE Contention Resolution Identity)のうちのいずれか一つでよく、前記端末が前記端末のC−RNTIを含むMAC PDUを転送し、前記物理ダウンリンク制御チャネル信号が前記端末のC−RNTIに対応しない場合、前記MAC層モジュールは、前記競合解決手順を失敗と見なすように構成されてよい。
【0051】
なお、前記端末が前記端末競合解決識別子を含むMAC PDUを転送し、前記物理ダウンリンク制御チャネル信号に対応する物理ダウンリンク共有チャネル信号が前記端末競合解決識別子に対応しない場合、前記MAC層モジュールは、前記競合解決手順を失敗と見なすように構成されてよい。
【発明の効果】
【0052】
上述した本発明によると、ランダムアクセス手順中にまたはランダムアクセス手順終了後に不必要なデータの再送を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】移動通信システムの一例としてE−UMTSネットワーク構造を概略的に示す図である。
【図2】3GPP無線接続ネットワーク規格に基づく端末とUTRANとの間における無線インターフェースプロトコルの構造を示す図である。
【図3】3GPP無線接続ネットワーク規格に基づく端末とUTRANとの間における無線インターフェースプロトコルの構造を示す図である。
【図4】LTEシステムで行われるHARQ動作を示す図である。
【図5】競合ベースランダムアクセス手順において端末と基地局の動作を説明するための図である。
【図6】本発明者により認識された、端末が意図しないHARQ再送を行うようになる場合を説明するための図である。
【図7】本発明の第1実施例によってランダムアクセスを行う端末の動作を説明するための図である。
【図8】本発明の第2実施例によってランダムアクセスを行う端末の動作を説明するための図である。
【図9】本発明の第3実施例によってランダムアクセスを行う端末の動作を説明するための図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る端末が基地局にランダムアクセスを行う手順を説明するための図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る端末のプロセッサ構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明の好適な実施形態を、添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。添付の図面と共に以下に開示される詳細な説明は、本発明の例示的な実施形態を説明するためのもので、本発明が実施されうる唯一の実施形態を示すためのものではない。以下の詳細な説明は、本発明の完全な理解を提供するために具体的な細部事項を含む。しかし、当業者には、本発明がそれらの具体的な細部事項なしにも実施されうることが理解できる。例えば、以下の詳細な説明は、移動通信システムが3GPP LTEシステムであるとして具体的に説明するが、3GPP LTE特有の事項を除けば、他の任意の移動通信システムにも適用可能である。
【0055】
場合によっては、本発明の概念が曖昧になることを避けるために、公知の構造及び装置は省略したり、各構造及び装置の核心機能を中心にしたブロック図の形式で示すことができる。また、本明細書全体において同一の構成要素については同一の図面符号を使用して説明する。
【0056】
なお、以下の説明において、端末は、UE(User Equipment)、MS(Mobile Station)など、移動または固定型のユーザ端の機器を総称するとする。また、基地局は、Node B、eNode B、Base Stationなど、端末と通信するネットワーク端の任意のノードを総称するとする。
【0057】
上述した通り、本発明では、ランダムアクセス手順において不必要なデータ再送を防止するためのランダムアクセス手法及びそのための端末を提供する。そのために、まず、アップリンク時間同期管理手法及びランダムアクセス手順のうち、競合解決手順についてより具体的に説明する必要がある。
【0058】
まず、LTEシステムにおけるアップリンク時間同期管理(Timing Alignment Maintenance)について説明する。
【0059】
OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)技術に基づくLTEシステムでは、特定ユーザ(UE)データ転送が他のユーザの基地局との通信に干渉を招くことがある。このような干渉を最小化するために、基地局は、端末の転送タイミングを適切に管理しなければならない。さらにいうと、端末は、セル内の任意の領域に存在することができ、これは、端末の送信したデータが基地局に到達する時間が端末の位置にしたがって別々になることがあるということを意味する。すなわち、セルのエッジで送信を試みる端末の場合、この送信が基地局に到達する時間は、セルの中央に位置する端末の送信の到達時間よりも長いはずである。逆に、セルの中央にある端末の送信が基地局に到着する時間は、セルのエッジにある端末の送信に比べて短いはずである。基地局にとっては、干渉の影響を防ぐために、セル内における全端末が転送したデータまたは信号を、その都度境界(boundary)内で受信できるように管理しなければならず、そのため、基地局は端末の位置状況に応じて端末の転送タイミングを適切に調節しなければならない。このような調節を時間同期管理という。
【0060】
時間同期を管理する一つの方法に、ランダムアクセス動作がある。すなわち、ランダムアクセス動作手順を通じて基地局は、端末が転送するランダムアクセスプリアンブルを受信するようになり、このランダムアクセスプリアンブルの受信情報を用いて、転送タイミングの時間同期値を計算する。そして、ランダムアクセス応答を通じて、計算された時間同期値を端末に知らせ、端末は、この値を用いて、転送タイミングを更新する。
【0061】
もう一つの方法には、基地局が、端末が周期的あるいは任意的に転送するサウンディング参照信号(Sounding Reference Signal)を受信し、該受信した信号を通じて端末の時間同期値を計算して端末に知らせる方法がある。これによって、端末は、自身の転送タイミングを更新するようになる。
【0062】
上述した通り、基地局は、ランダムアクセスプリアンブルまたはサウンディング参照信号を通じて端末の転送タイミングを測定し、補正するタイミング値を計算して端末に知らせる。上述したように、基地局が端末に転送する時間同期値を、時間同期命令(Timing Alignment Command;以下、「TAC」と称する。)と呼ぶ。このTACは、MAC層で処理する。そして、端末は、常に固定した位置に存在するとは限らず、端末の転送タイミングは、端末が移動する速度と位置などによって毎度変わることになる。この点から、端末は、基地局から一度時間同期命令を受けると、該命令が無限の時間において有効であると見なさず、特定時間においてのみ有効であると想定しなければならない。このために使われるものが時間同期タイマー(Time Alignment Timer;以下、「TAT」と称する。)である。すなわち、端末は、基地局からTACを受信するとTATを始動させる。そして、TATの動作中にのみ、端末は基地局と時間同期していると仮定する。このTAT値は、システム情報または無線ベアラ再構成(Radio Bearer Reconfiguration)などのようなRRC信号を通じて伝達することができる。また、端末は、TATの動作中に、新しいTACを基地局から受信すると、TATを再び始動させる。そして、TATが満了したり、TATが動作しない時には、端末は基地局と時間同期していないとし、ランダムアクセスプリアンブル以外のいかなるアップリンクデータまたは制御信号も転送しない。
【0063】
一方、以下では、ランダムアクセス手順のうち、競合解決のための具体的な方法について説明する。
【0064】
ランダムアクセス手順で競合が発生する理由は、基本的に、ランダムアクセスプリアンブルの数が有限であるからである。すなわち、基地局は、全ての端末に端末固有のランダムアクセスプリアンブルを与えることができず、端末は、共通のランダムアクセスプリアンブルから任意に一つを選択して転送することになる。このため、同一のPRACHリソースを通じて2以上の端末が同じランダムアクセスプリアンブルを選択して転送する場合が発生するが、この場合も、基地局では一つの端末から転送される一つのランダムアクセスプリアンブルと判断してしまう。
【0065】
これによって、基地局は、ランダムアクセス応答を端末に転送し、該ランダムアクセス応答を一つの端末が受信すると予測する。しかし、上述した通り、競合が発生することがあるから、2以上の端末が一つのランダムアクセス応答を受信するようになり、これによって、端末ごとにそれぞれランダムアクセス応答の受信に伴う動作を行うことになる。すなわち、ランダムアクセス応答に含まれた一つのアップリンク承認(UL Grant)を用いて、2以上の端末がそれぞれ異なるデータを同じ無線リソースに転送するという問題点が発生する。
【0066】
これにより、当該データの転送は両方とも失敗することもあり、端末の位置または転送パワーによって特定端末のデータのみを基地局で受信することもある。後者の場合、2以上の端末はいずれも、自身のデータの転送に成功したと仮定するため、基地局は、競合に失敗した端末に、失敗した事実に関する情報を知らせなければならない。すなわち、競合の失敗または成功に関する情報を知らせることが、競合解決(Contention Resolution)である。
【0067】
競合解決方法には、2通りの方法がある。一つの方法は、競合解決タイマー(Contention Resolutionタイマー;以下、「CRタイマー」と称する。)を用いる方法であり、もう一つの方法は、成功した端末の識別子を端末に転送する方法である。
【0068】
前者の場合は、端末がランダムアクセス手順前に既に固有のセル識別子(C−RNTI)を持っている場合に用いられる。すなわち、既にセル識別子を持っている端末は、ランダムアクセス応答によって自身のセル識別子を含むデータを基地局に転送し、競合解決タイマーを作動する。そして、競合解決タイマーが満了する前に、自身のセル識別子が含まれているPDCCH情報が受信すると、端末は、自身が競合に成功したと判断し、ランダムアクセス手順を正常に終えることとなる。逆に、もし競合解決タイマーが満了する前に、自身のセル識別子が含まれているPDCCHを受信できないと、自身が競合で失敗したと判断し、ランダムアクセス手順を再び行ったり、上位層に失敗事実を通報したりする。
【0069】
競合解消方法の後者は、すなわち、成功した端末の識別子を転送する方法は、端末がランダムアクセス手順の前に固有のセル識別子を持っていない場合に用いられる。すなわち、端末自身がセル識別子を持っていない場合、ランダムアクセス応答に含まれたアップリンク承認(UL Grant)情報に基づき、セル識別子よりも上位識別子(例えば、S−TMSIまたはRandom Id)をデータに含めて転送し、端末は、競合解決タイマーを始動させる。競合解決タイマーが満了する前に、自身の上位識別子を含むデータがDL−SCHで受信すると、端末は、ランダムアクセス手順に成功したと判断する。一方、競合解決タイマーが満了する前に、自身の上位識別子を含むデータをDL−SCHで受信できないと、端末は、ランダムアクセス手順に失敗したと判断する。
【0070】
このような内容を理解のうえ、ランダムアクセス手順中にまたはランダムアクセス手順後に余計にデータが再送されうる場合について具体的に説明し、その原因を規定する。
【0071】
図6は、本発明者により認識された、端末が意図しないHARQ再送を行うようになる場合を説明するための図である。
【0072】
段階1:端末は、競合ベースランダムアクセス手順を行うためにランダムアクセスプリアンブルを基地局に転送することができる。
【0073】
段階2:基地局は、端末にランダムアクセスプリアンブルに対する応答としてランダムアクセス応答を転送することができる。
【0074】
段階3:端末は、ランダムアクセス応答に含まれたTACを適用し、TATを始動させることができる。また、端末は、ランダムアクセス応答に含まれたアップリンクスケジューリング情報に基づいてMAC PDUを生成し、これをメッセージ3バッファー(Msg3 Buffer)に保存することができる。そして、端末は、メッセージ3バッファーに保存されているMAC PDUを、複数のHARQプロセスのうち、特定HARQプロセス(本実施形態ではx HARQプロセスと仮定する。)に関連したHARQバッファーに再び保存し、当該HARQプロセスの転送時点で、HARQバッファーに保存されているMAC PDUを基地局に転送することができる。
【0075】
段階4:上述した通り、特定条件によってランダムアクセス手順に失敗したと判断する。これにより、端末は、TATの動作を中止する。そして、端末は、再びランダムアクセス手順を試みるために、ランダムアクセスプリアンブルを基地局に転送し、以降の必要な動作を行うことができる。
【0076】
段階5:端末は再びランダムアクセス手順を試みるために、ランダムアクセスプリアンブルを基地局に転送し、基地局からランダムアクセス応答を受信することができる。この場合、端末はランダムアクセス応答に含まれたTACを適用してTATを再開始できる。また、端末は、メッセージ3バッファーに保存されているMAC PDUを複数のHARQプロセスのうち特定HARQプロセス(本実施形態では、y HARQプロセスと仮定する。)に関連したHARQバッファーに保存し、当該HARQプロセスの転送時点で、MAC PDUを転送するために準備することができる。
【0077】
段階6:端末のTATが動作中の場合は、端末はアップリンクの時間同期がなされていると判断し、よって、複数のHARQプロセス(具体的に、LTEシステムでは8個のHARQプロセス)に対応するそれぞれの転送時点に対応するHARQバッファーにMAC PDUが存在するか否かを判定し、対応するHARQバッファーにMAC PDUが保存していると、それを該当の転送時点に転送または再送するようになる。したがって、段階6で、もしx HARQプロセスに関連したHARQバッファー(x HARQバッファー)にMAC PDUが依然として保存されており、端末のTATが動作しているとすれば、y HARQプロセスに対応するHARQバッファー(y HARQバッファー)に保存されているMAC PDUの転送と独立して、x HARQプロセスに対応する転送時点に、x HARQバッファーに保存されているMAC PDUを再送することになる。しかし、このようなx HARQバッファーに保存されているMAC PDUの再送は、意図しない再送に該当する。
【0078】
図6で上述した例の通り、端末がランダムアクセス手順を再び行う際に用いるHARQプロセスは、以前のランダムアクセス手順で用いたHARQプロセスと異なる場合があり、よって、上述したような不必要なデータ再送が発生することがある。したがって、本発明の一実施の形態では、上述した通り、意図しないデータの再送を防止するために、ランダムアクセス手順が再び行われる状況をそれぞれ把握し、各状況において取られる後続の手順において、以前の転送に用いられたHARQバッファーをフラッシュ(flush)することで、不必要な再送を防止することを提案する。
【0079】
以下では、それぞれの状況に対して本実施形態による方法を適用する場合について説明する。
第1実施例
【0080】
図7は、本発明の第1実施例によってランダムアクセスを行う端末の動作を説明するための図である。
【0081】
端末は基地局にランダムアクセスを行うためにランダムアクセスプリアンブルを転送することができる(S701)。ランダムアクセスプリアンブル転送に対する応答として基地局はランダムアクセス応答メッセージを端末に転送することができる(S702)。このランダムアクセス応答メッセージは、以降の端末の第3メッセージ転送のためのアップリンク承認情報を含むことができる。
【0082】
この状態で、端末が基地局に対して確定されたセル識別子(C−RNTI)を持っていると、端末は、競合解決手順を行うために、端末のセル識別子(C−RNTI)を含むMAC PDUを構成し、これを第3メッセージとして基地局に転送することができる。このような端末のMAC PDU構成は、端末MAC層の多重化及び組み合わせエンティティ(Multiplexing and Assembly Entity)により構成されてメッセージ3バッファーに保存され、第3メッセージ転送に用いられる特定HARQプロセスのHARQバッファーに再び保存されることができる。
【0083】
上述した特定HARQプロセスを用いて第3メッセージを転送した端末は、競合解決タイマー(CR Timer)を始動させることができる(S704)。本実施例では、競合解決タイマーが満了する前に、端末が基地局からPDCCH信号を受信する場合を仮定する(S705)。端末がPDCCHを受信すると、すなわち、端末の物理層からMAC層にPDCCH受信を知らせた場合、本実施例に係る端末は、当該PDCCH信号が、端末の第3メッセージにより搬送されたセル識別子(C−RNTI)を用いて受信されたか否か判定する。
【0084】
もし、第3メッセージ転送において端末のセル識別子(C−RNTI)を含めて転送した端末が、自身のセル識別子に対応するPDCCHを受信できなかった場合、端末は、競合解決手順に失敗したと判断し、競合解決手順失敗に伴う後続動作を行うことができる。
【0085】
例えば、競合解決手順に失敗したと判断した端末は、(1)ランダムアクセスプリアンブル転送カウンター(PREAMBLE_TRANSMISSION_COUNTER)を1だけ増加させ、(2)このプリアンブル転送カウンター値が最大プリアンブル転送回数(preambleTransMax+1)に到達したか否か判定することができる。(3)万一、プリアンブル転送カウンター値が最大プリアンブル転送回数に到達すると、上位層にランダムアクセス手順の問題を報告することができる。(4)万一、プリアンブル転送カウンター値が最大プリアンブル転送回数に到達していない場合、端末は、バックオフパラメータを適用して後続ランダムアクセスプリアンブル転送時点を遅延させ、新しいランダムアクセスプリアンブルを選択する手順を行うことができる。
【0086】
一方、本実施形態に係る端末は、このような競合解決手順失敗による動作を行うに先立ち、第3メッセージ転送に用いられた特定HARQプロセスのHARQバッファーをフラッシュ(flush)する動作をさらに行うように構成することを提案する。このように、端末が競合解決手順を失敗と見なす動作に該当のHARQバッファーをフラッシュすることで、図6で上述したような不必要な再送を防止することができる。
第2実施例
【0087】
図8は、本発明の第2実施例によってランダムアクセスを行う端末の動作を説明するための図である。
【0088】
端末が基地局にランダムアクセスを行うためにランダムアクセスプリアンブルを転送(S801)し、これに対応するランダムアクセス応答メッセージを受信(S802)する動作は、第1実施例における動作と同様である。
【0089】
ただし、本実施例に係る端末は、この状態で、基地局に対して確定されたセル識別子(C−RNTI)を持っていないと仮定する。この場合、端末は、第3メッセージの転送時に自身の固有識別子(例えば、S−TMSIまたは任意ID(Random Id))をMAC PDUに含めて転送することができる。このように、競合解決手順に用いられる端末の固有識別子を、「端末競合解決識別子(UE Contention Resolution Identity)」と呼ぶことができる。
【0090】
本実施例に係る端末は、S−TMSIを含むMAC PDUを構成して基地局に転送するとする(S803)。このような端末のMAC PDU構成も同様、端末MAC層の多重化及び組み合わせエンティティ(Multiplexing and Assembly Entity)により構成されてメッセージ3バッファーに保存され、第3メッセージ転送に用いられる特定HARQプロセスのHARQバッファーに再び保存されることができる。
【0091】
上述した特定HARQプロセスを用いて第3メッセージを転送した端末は、競合解決タイマー(CR Timer)を始動させることができる(S804)。本実施例では、競合解決タイマーが満了する前に、端末が基地局からPDCCH信号を受信する場合を仮定する(S805)。端末がPDCCHを受信する場合、本実施例に係る端末は、当該PDCCH信号が、端末が現在ランダムアクセスに用いている臨時セル識別子(Temporary C−RNTI)を用いて受信されたか否か判定することができる。
【0092】
もし、該PDCCHが端末の臨時セル識別子を用いて受信されたものでない、または、該PDCCHに対応する無線領域を通じて受信したPDSCHに、端末のS−TMSIが含まれていない場合は、端末は、競合解決手順に失敗したと見なし、競合解決手順失敗による後続動作を行うことができる。
【0093】
本実施例に係る端末も同様、第1実施例で説明したような、競合解決失敗による動作を行うことができる。また、本実施形態に係る端末は、このような競合解決手順失敗による動作を行うに先立ち、第3メッセージ転送に用いられた特定HARQプロセスのHARQバッファーをフラッシュする動作をさらに行うように構成することを提案する。このように、端末が競合解決手順を失敗と見なす動作に該当のHARQバッファーをフラッシュすることで、図6で上述したような不必要な再送を防止することができる。
第3実施例
【0094】
図9は、本発明の第3実施例によってランダムアクセスを行う端末の動作を説明するための図である。
【0095】
端末が基地局にランダムアクセスを行うためにランダムアクセスプリアンブルを転送(S901)し、これに対応するランダムアクセス応答メッセージを受信(S902)する動作は、第1実施例におけると同様である。
【0096】
また、本実施例において、端末は、第3メッセージにより搬送されるMAC PDUにセル識別子(C−RNTI)を含める場合、及び端末競合解決識別子(例えば、S−TMSI)を含める場合の両方を含むとする(S903)。
【0097】
端末は、第3メッセージを転送すると、競合解決タイマー(CR Timer)を始動させることができる(S904)。競合解決タイマー満了前に基地局から端末の第3メッセージ転送に対応する第4メッセージを受信できない場合(S905)、端末は、この競合解決手順を失敗と見なし、第1及び第2実施例と同様に、競合解決手順の失敗による後続動作を行うことができる。この場合、本実施形態に係る端末は、このような競合解決手順失敗による動作を行うに先立ち、第3メッセージ転送に用いられた特定HARQプロセスのHARQバッファーをフラッシュする動作をさらに行うように構成することを提案する。このように、端末が競合解決手順を失敗と見なす動作に該当のHARQバッファーをフラッシュすることで、図6で上述したような不必要な再送を防止することができる。
【0098】
以上、図7乃至図9を参照して説明した第1乃至第3実施例はいずれも、端末が「競合解決手順を失敗と見なす場合」に関するものである。このように、端末が競合解決手順を失敗と見なす場合、それによる後続動作の一つとして、以前のランダムアクセス手順で用いられたHARQバッファーをフラッシュすることで、以降の追加的なランダムアクセス動作に不必要なMAC PDU再送を防止すると同時に、HARQ動作を明確にすることができる。
【0099】
一方、本発明の他の側面として、端末のアップリンク同期状況を表す時間同期タイマー(TAT)について説明する。
【0100】
上述した通り、端末が基地局から時間同期命令(TAC)を受信すると、当該時間同期命令を適用し、時間同期タイマーを始動または再始動させることができる。このような時間同期タイマーが動作中である場合に限って、端末は基地局とアップリンク同期が合っているとし、アップリンク信号を基地局に転送することができる。時間同期タイマーが満了(Expire)した場合、全てのHARQバッファーをフラッシュし、RRC層にPUCCH及びSRSを解除する旨を知らせることができる。また、構成された全てのダウンリンク割当情報及びアップリンク承認情報を削除することができる。
【0101】
ただし、本発明の他の実施形態では、このように時間整列タイマー(TAT)が満了する場合の他、時間整列タイマー(TAT)が中止(stop)される場合にも、該当のHARQバッファーをフラッシュすることを提案する。特に、端末は、図7乃至9で説明した通り、競合解決手順を失敗と見なす場合、時間整列タイマー(TAT)を中止させるように構成される。したがって、端末の時間整列タイマーが満了する場合、時間整列タイマーがさらに中止されると、時間整列タイマー中止に対応するHARQバッファーをフラッシュすることで、以後の手順において不必要なアップリンクデータ再送を防止することができる。
【0102】
一方、上述したような本発明の実施形態による場合、端末のランダムアクセス動作について説明すると、下記の通りである。
【0103】
図10は、本発明の一実施形態に係る端末が基地局にランダムアクセスを行う手順を説明するための図である。
【0104】
段階1:端末は、競合ベースランダムアクセス手順を行うために、ランダムアクセスプリアンブルを基地局に転送することができる。
【0105】
段階2:基地局は端末にランダムアクセス応答メッセージを転送することができる。
【0106】
段階3:端末は、ランダムアクセス応答に含まれた時間同期命令(TAC)を適用し、時間整列タイマー(TAT)を始動または再始動させることができる。また、端末は、ランダムアクセス応答に含まれたアップリンクスケジューリング情報に基づいてMAC PDUを生成し、これをメッセージ3バッファーに保存することができる。そして端末は、メッセージ3バッファーに保存されているMAC PDUを、関連HARQバッファー(本実施形態ではx HARQプロセスと関連したHARQバッファーとする。)に再び保存し、当該HARQプロセスの転送時点において、HARQバッファーに保存されているMAC PDUを基地局に転送することができる。また、競合解消のための競合解決タイマーを始動させることができる。
【0107】
段階4:競合解決タイマーが満了したとき、端末がセル識別子(C−RNTI)を含む第3メッセージを転送した後に端末のセル識別子に対応するPDCCHを受信できなかった場合、またはセル識別子(C−RNTI)が端末に割当てられなかった場合、端末は、ランダムアクセス応答に含まれたアップリンクスケジューリング情報に基づいて、メッセージ内に上位識別子(S−TMSIまたはRandom ID)を含めて、メッセージを転送し、基地局が臨時セル識別子(Temporary C−RNTI)で指示して転送したPDCCHに対応するPDSCHデータに、当該上位識別子と同一の情報が含まれていない場合に、現在行われているランダムアクセス手順に失敗した、つまり、競合解決手順に失敗したと判断することができる。本実施形態に係る端末は、競合解決手順に失敗したと認知する場合、端末のHARQバッファーに保存されているデータを捨てるように構成することを提案する。
【0108】
また、端末は、ランダムアクセス手順を再び試みるために、ランダムアクセスプリアンブルを基地局に転送し、以降、基地局からランダムアクセス応答を受信することができる。
【0109】
段階5:端末は、ランダムアクセス応答に含まれた時間同期命令(TAC)を適用し、時間整列タイマー(TAT)を再始動させることができる。また、端末は、メッセージ3バッファーに保存されているMAC PDUを、関連HARQバッファー(本実施形態では、yHARQプロセスと関連したHARQバッファーとする。)に保存し、該当のHARQプロセスの転送時点でMAC PDUを転送するために準備することができる。
【0110】
上述したように、LTEシステムにおいてHARQ動作は、複数のHARQプロセスが対応する転送時点に自身のHARQバッファーにデータが保存されている場合、これを基地局に再送するように構成されている。ただし、本実施形態では、x HARQプロセスに保存されているMAC PDUが段階4でフラッシュされたため、x HARQプロセスに対応する転送時点で不必要なデータ再送が発行されることがない。
【0111】
一方、以下では、本発明の一実施形態に係る端末構成について説明する。
【0112】
移動通信システムにおいて、端末は、信号入力のためのモジュール、ディスプレイモジュール、アンテナ、信号処理のためのプロセッサなどを含むことができる。特に、本発明の一実施形態に係るランダムアクセス動作を行うための端末のプロセッサの構成について具体的に説明する。
【0113】
図11は、本発明の一実施形態に係る端末のプロセッサ構成を示す図である。
【0114】
図11に示すように、端末のプロセッサは、図2及び図3に示すような層構造を有することができる。なかでも、本実施形態と関連した物理層モジュール1110及びMAC層モジュール1120を中心に説明する。
【0115】
本実施形態に係る端末の物理層モジュール1110は、基地局にランダムアクセスプリアンブル(RA Preamble)を転送するように構成される転送モジュール(Tx Module)1111、及び基地局からアップリンク承認情報を含むランダムアクセス応答メッセージ(RAR)を受信するように構成される受信モジュール(Rx Module)1112を含むように構成することができる。また、本実施形態に係る端末のMAC層モジュール1120は、受信モジュール1112が受信したアップリンク承認情報に基づき、アップリンクデータ及び端末の識別情報を含むMAC PDUを構成する多重化及び組み合わせエンティティ(Multiplexing and Assembly Entity)1121、ランダムアクセス応答メッセージ受信によって多重化及び組み合わせエンティティ1121で構成されるMAC PDUを保存するように構成されるメッセージ3バッファー1122、複数のHARQプロセスモジュール1124とこれら複数のHARQプロセスモジュールのそれぞれに対応する複数のHARQバッファー1125、及び複数のHARQプロセスモジュール1124の動作を制御するHARQエンティティ(HARQ Entity)1123を含むことができる。
【0116】
特に、MAC層モジュール1120は、受信モジュール1112のランダムアクセス応答メッセージ受信によってメッセージ3バッファー1122に保存されたMAC PDUを、複数のHARQプロセスモジュールのうちの第1HARQプロセス1124に対応する第1HARQバッファー1125に複写するように構成することができる。また、MAC層モジュール1120は、第1HARQプロセス1124を用いて、第1HARQバッファー1125に保存されているMAC PDUを転送モジュール1111を通じて基地局に転送するように制御することができる。なお、第1HARQバッファー1125に保存されているMAC PDU転送時に、MAC層モジュール1120が、競合解決タイマー(CR Timer)を始動または再始動させるように構成することができる。
【0117】
一方、物理層モジュール1110が基地局からのPDCCH受信を通知する場合、MAC層モジュール1120は、このPDCCH信号またはこのPDCCH信号に対応するPDSCH信号が、端末の識別情報に対応するか否か、または、競合解決タイマーが満了したか否かを判定することができる。万一、PDCCHまたは該PDCCHに対応するPDSCHが端末の識別情報に対応しない場合、または競合解決タイマーが満了する場合、本実施形態に係る端末におけるMAC層モジュール1120を、第1HARQバッファー1125をフラッシュ(flush)するように構成することを提案する。
【0118】
このように、MAC層モジュール1120が競合解決手順を失敗と見なす場合、MAC層モジュール1120はTATを中止させ、具体的にTATが満了(expire)する場合または中止(stop)される場合に、MAC層モジュールは、第1HARQバッファー1125に保存されているMAC PDUをフラッシュするように構成することができる。
【0119】
以上開示された本発明の好適な実施例についての詳細な説明は、当業者が本発明を実現及び実施できるように提供された。以上では本発明の好適な実施形態を参照して説明したが、当該技術の分野における熟練した当業者には、添付した特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び領域を逸脱しない範囲内で、本発明を様々に修正及び変更できるということが理解されるであろう。したがって、本発明は、ここに開示された実施形態に制限されるものではなく、ここで開示された原理及び新規な特徴と一致する最も広い範囲を有するものといえる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
上述したような信号送受信技術及びそのための端末構造は、3GPP LTEシステムに適用される例を中心に説明したが、3GPP LTEシステムの他にも、類似の過程を有するその他の様々な移動通信システムにも適用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末が基地局にランダムアクセスを行う方法であって、
前記基地局にランダムアクセスプリアンブルを転送するステップと、
前記ランダムアクセスプリアンブルに応答して、前記基地局からアップリンク承認情報を含むランダムアクセス応答メッセージを受信するステップと、
前記アップリンク承認情報に応じて、アップリンクデータ及び前記端末の識別情報を含むMAC PDUをメッセージ3バッファーに保存するステップと、
前記メッセージ3バッファーに保存された前記MAC PDUを、第1HARQプロセスに対応する第1HARQバッファーに複写するステップと、
前記第1HARQプロセスを用いて、前記第1HARQバッファーに保存された前記MAC PDUを前記基地局に転送するステップと、
競合解決タイマーを始動または再始動するステップと、
前記基地局から物理ダウンリンク制御チャネル信号を受信するステップと、
前記受信した物理ダウンリンク制御チャネル信号または前記受信した物理ダウンリンク制御チャネル信号に対応する物理ダウンリンク共有チャネル信号が前記端末の前記識別情報に対応しない場合、または前記競合解決タイマーが満了した場合、前記第1HARQバッファーをフラッシュするステップと、
を含む、端末のランダムアクセス方法。
【請求項2】
前記端末は、前記受信した物理ダウンリンク制御チャネル信号または前記受信した物理ダウンリンク制御チャネル信号に対応する物理ダウンリンク共有チャネル信号が前記端末の前記識別情報に対応しない場合、または前記競合解決タイマーが満了した場合、競合解決手順を失敗と見なす、請求項1に記載の端末のランダムアクセス方法。
【請求項3】
前記端末が前記競合解決手順を失敗と見なす場合、前記端末は、時間同期タイマーを中止させる、請求項2に記載の端末のランダムアクセス方法。
【請求項4】
前記端末は、前記時間同期タイマーが満了する場合または中止される場合、前記第1HARQバッファーをフラッシュする、請求項3に記載の端末のランダムアクセス方法。
【請求項5】
前記端末の前記識別情報は、前記端末のC−RNTIまたは前記端末の端末競合解決識別子のうちのいずれか一つである、請求項2に記載の端末のランダムアクセス方法。
【請求項6】
前記端末が前記端末の前記C−RNTIを含む前記MAC PDUを転送し、前記受信した物理ダウンリンク制御チャネル信号が前記端末の前記C−RNTIに対応しない場合、前記端末は、前記競合解決手順を失敗と見なす、請求項5に記載の端末のランダムアクセス方法。
【請求項7】
前記端末が前記端末の前記端末競合解決識別子を含む前記MAC PDUを転送し、前記受信した物理ダウンリンク制御チャネル信号に対応する前記物理ダウンリンク共有チャネル信号が前記端末の前記端末競合解決識別子に対応しない場合、前記端末は、前記競合解決手順を失敗と見なす、請求項5に記載の端末のランダムアクセス方法。
【請求項8】
前記競合解決手順の失敗に従い、前記ランダムアクセスプリアンブルを前記基地局に再送するステップと、
前記基地局から時間同期命令を含むランダムアクセス応答メッセージを受信するステップと、
前記時間同期命令受信によって時間同期タイマーを始動または再始動するステップと、
前記メッセージ3バッファーに保存された前記MAC PDUを、第2HARQプロセスに対応する第2HARQバッファーに複写するステップと、
前記第2HARQプロセスを用いて、前記第2HARQバッファーに保存されている前記MAC PDUを前記基地局に転送するステップと、
をさらに含み、
前記端末は、前記時間同期タイマーが始動または再始動されても、前記第1HARQバッファーに保存されている前記MAC PDUを転送しない、請求項2に記載の端末のランダムアクセス方法。
【請求項9】
基地局にランダムアクセスプリアンブルを転送するように構成される転送モジュール、及び
前記基地局からアップリンク承認情報を含むランダムアクセス応答メッセージを受信するように構成される受信モジュール、を含む物理層モジュールと、
前記受信モジュールが受信した前記アップリンク承認情報に従い、アップリンクデータ及び前記端末の識別情報を含むMAC PDUを形成するように構成される多重化及び組み合わせエンティティ、
前記ランダムアクセス応答メッセージ受信に従い、前記多重化及び組み合わせエンティティにより形成される前記MAC PDUを保存するように構成されるメッセージ3バッファー、
複数のHARQプロセスモジュール及び前記複数のHARQプロセスモジュールに対応する複数のHARQバッファー、及び
前記複数のHARQプロセスモジュールの動作を制御するように構成されるHARQエンティティ、を含むMAC層モジュールと、
を含み、
前記MAC層モジュールは、前記受信モジュールの前記ランダムアクセス応答メッセージの受信に従い、前記メッセージ3バッファーに保存された前記MAC PDUを第1HARQプロセスに対応する第1HARQバッファーに複写し、前記第1HARQプロセスを用いて、前記第1HARQバッファーに保存されている前記MAC PDUを前記基地局に転送するように制御し、前記第1HARQバッファーに保存されている前記MAC PDUの転送時に競合解決タイマーを始動または再始動し、
前記基地局からの物理ダウンリンク制御チャネル信号の受信が前記物理層モジュールから通知される場合、前記MAC層モジュールは、前記物理ダウンリンク制御チャネル信号または前記物理ダウンリンク制御チャネル信号に対応する物理ダウンリンク共有チャネル信号が前記端末の前記識別情報に対応するか否か、または前記競合解決タイマーが満了したか否かを判定し、前記物理ダウンリンク制御チャネル信号または前記物理ダウンリンク制御チャネル信号に対応する前記物理ダウンリンク共有チャネル信号が前記端末の前記識別情報に対応しない場合、または前記競合解決タイマーが満了した場合、前記第1HARQバッファーをフラッシュする、端末。
【請求項10】
前記MAC層モジュールは、前記受信した物理ダウンリンク制御チャネル信号または前記受信したダウンリンク制御チャネル信号に対応する前記物理ダウンリンク共有チャネル信号が前記端末の前記識別情報に対応しない場合、または前記競合解決タイマーが満了した場合、競合解決手順を失敗と見なす、請求項9に記載の端末。
【請求項11】
前記端末が前記競合解決手順を失敗と見なす場合、前記MAC層モジュールは、時間同期タイマーを中止させる、請求項10に記載の端末。
【請求項12】
前記MAC層モジュールは、前記時間同期タイマーが満了する場合、または中止される場合に、前記第1HARQバッファーをフラッシュする、請求項11に記載の端末。
【請求項13】
前記端末の前記識別情報は、前記端末のC−RNTIまたは前記端末の端末競合解決識別子のうちのいずれか一つである、請求項9に記載の端末。
【請求項14】
前記端末が前記端末の前記C−RNTIを含む前記MAC PDUを転送し、前記受信した物理ダウンリンク制御チャネル信号が前記端末の前記C−RNTIに対応しない場合、前記MAC層モジュールは、前記競合解決手順を失敗と見なす、請求項13に記載の端末。
【請求項15】
前記端末が前記端末の前記端末競合解決識別子を含む前記MAC PDUを転送し、前記受信した物理ダウンリンク制御チャネル信号に対応する前記物理ダウンリンク共有チャネル信号が前記端末の前記端末競合解決識別子に対応しない場合、前記MAC層モジュールは、前記競合解決手順を失敗と見なす、請求項13に記載の端末。
【請求項1】
端末が基地局にランダムアクセスを行う方法であって、
前記基地局にランダムアクセスプリアンブルを転送するステップと、
前記ランダムアクセスプリアンブルに応答して、前記基地局からアップリンク承認情報を含むランダムアクセス応答メッセージを受信するステップと、
前記アップリンク承認情報に応じて、アップリンクデータ及び前記端末の識別情報を含むMAC PDUをメッセージ3バッファーに保存するステップと、
前記メッセージ3バッファーに保存された前記MAC PDUを、第1HARQプロセスに対応する第1HARQバッファーに複写するステップと、
前記第1HARQプロセスを用いて、前記第1HARQバッファーに保存された前記MAC PDUを前記基地局に転送するステップと、
競合解決タイマーを始動または再始動するステップと、
前記基地局から物理ダウンリンク制御チャネル信号を受信するステップと、
前記受信した物理ダウンリンク制御チャネル信号または前記受信した物理ダウンリンク制御チャネル信号に対応する物理ダウンリンク共有チャネル信号が前記端末の前記識別情報に対応しない場合、または前記競合解決タイマーが満了した場合、前記第1HARQバッファーをフラッシュするステップと、
を含む、端末のランダムアクセス方法。
【請求項2】
前記端末は、前記受信した物理ダウンリンク制御チャネル信号または前記受信した物理ダウンリンク制御チャネル信号に対応する物理ダウンリンク共有チャネル信号が前記端末の前記識別情報に対応しない場合、または前記競合解決タイマーが満了した場合、競合解決手順を失敗と見なす、請求項1に記載の端末のランダムアクセス方法。
【請求項3】
前記端末が前記競合解決手順を失敗と見なす場合、前記端末は、時間同期タイマーを中止させる、請求項2に記載の端末のランダムアクセス方法。
【請求項4】
前記端末は、前記時間同期タイマーが満了する場合または中止される場合、前記第1HARQバッファーをフラッシュする、請求項3に記載の端末のランダムアクセス方法。
【請求項5】
前記端末の前記識別情報は、前記端末のC−RNTIまたは前記端末の端末競合解決識別子のうちのいずれか一つである、請求項2に記載の端末のランダムアクセス方法。
【請求項6】
前記端末が前記端末の前記C−RNTIを含む前記MAC PDUを転送し、前記受信した物理ダウンリンク制御チャネル信号が前記端末の前記C−RNTIに対応しない場合、前記端末は、前記競合解決手順を失敗と見なす、請求項5に記載の端末のランダムアクセス方法。
【請求項7】
前記端末が前記端末の前記端末競合解決識別子を含む前記MAC PDUを転送し、前記受信した物理ダウンリンク制御チャネル信号に対応する前記物理ダウンリンク共有チャネル信号が前記端末の前記端末競合解決識別子に対応しない場合、前記端末は、前記競合解決手順を失敗と見なす、請求項5に記載の端末のランダムアクセス方法。
【請求項8】
前記競合解決手順の失敗に従い、前記ランダムアクセスプリアンブルを前記基地局に再送するステップと、
前記基地局から時間同期命令を含むランダムアクセス応答メッセージを受信するステップと、
前記時間同期命令受信によって時間同期タイマーを始動または再始動するステップと、
前記メッセージ3バッファーに保存された前記MAC PDUを、第2HARQプロセスに対応する第2HARQバッファーに複写するステップと、
前記第2HARQプロセスを用いて、前記第2HARQバッファーに保存されている前記MAC PDUを前記基地局に転送するステップと、
をさらに含み、
前記端末は、前記時間同期タイマーが始動または再始動されても、前記第1HARQバッファーに保存されている前記MAC PDUを転送しない、請求項2に記載の端末のランダムアクセス方法。
【請求項9】
基地局にランダムアクセスプリアンブルを転送するように構成される転送モジュール、及び
前記基地局からアップリンク承認情報を含むランダムアクセス応答メッセージを受信するように構成される受信モジュール、を含む物理層モジュールと、
前記受信モジュールが受信した前記アップリンク承認情報に従い、アップリンクデータ及び前記端末の識別情報を含むMAC PDUを形成するように構成される多重化及び組み合わせエンティティ、
前記ランダムアクセス応答メッセージ受信に従い、前記多重化及び組み合わせエンティティにより形成される前記MAC PDUを保存するように構成されるメッセージ3バッファー、
複数のHARQプロセスモジュール及び前記複数のHARQプロセスモジュールに対応する複数のHARQバッファー、及び
前記複数のHARQプロセスモジュールの動作を制御するように構成されるHARQエンティティ、を含むMAC層モジュールと、
を含み、
前記MAC層モジュールは、前記受信モジュールの前記ランダムアクセス応答メッセージの受信に従い、前記メッセージ3バッファーに保存された前記MAC PDUを第1HARQプロセスに対応する第1HARQバッファーに複写し、前記第1HARQプロセスを用いて、前記第1HARQバッファーに保存されている前記MAC PDUを前記基地局に転送するように制御し、前記第1HARQバッファーに保存されている前記MAC PDUの転送時に競合解決タイマーを始動または再始動し、
前記基地局からの物理ダウンリンク制御チャネル信号の受信が前記物理層モジュールから通知される場合、前記MAC層モジュールは、前記物理ダウンリンク制御チャネル信号または前記物理ダウンリンク制御チャネル信号に対応する物理ダウンリンク共有チャネル信号が前記端末の前記識別情報に対応するか否か、または前記競合解決タイマーが満了したか否かを判定し、前記物理ダウンリンク制御チャネル信号または前記物理ダウンリンク制御チャネル信号に対応する前記物理ダウンリンク共有チャネル信号が前記端末の前記識別情報に対応しない場合、または前記競合解決タイマーが満了した場合、前記第1HARQバッファーをフラッシュする、端末。
【請求項10】
前記MAC層モジュールは、前記受信した物理ダウンリンク制御チャネル信号または前記受信したダウンリンク制御チャネル信号に対応する前記物理ダウンリンク共有チャネル信号が前記端末の前記識別情報に対応しない場合、または前記競合解決タイマーが満了した場合、競合解決手順を失敗と見なす、請求項9に記載の端末。
【請求項11】
前記端末が前記競合解決手順を失敗と見なす場合、前記MAC層モジュールは、時間同期タイマーを中止させる、請求項10に記載の端末。
【請求項12】
前記MAC層モジュールは、前記時間同期タイマーが満了する場合、または中止される場合に、前記第1HARQバッファーをフラッシュする、請求項11に記載の端末。
【請求項13】
前記端末の前記識別情報は、前記端末のC−RNTIまたは前記端末の端末競合解決識別子のうちのいずれか一つである、請求項9に記載の端末。
【請求項14】
前記端末が前記端末の前記C−RNTIを含む前記MAC PDUを転送し、前記受信した物理ダウンリンク制御チャネル信号が前記端末の前記C−RNTIに対応しない場合、前記MAC層モジュールは、前記競合解決手順を失敗と見なす、請求項13に記載の端末。
【請求項15】
前記端末が前記端末の前記端末競合解決識別子を含む前記MAC PDUを転送し、前記受信した物理ダウンリンク制御チャネル信号に対応する前記物理ダウンリンク共有チャネル信号が前記端末の前記端末競合解決識別子に対応しない場合、前記MAC層モジュールは、前記競合解決手順を失敗と見なす、請求項13に記載の端末。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−62880(P2013−62880A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−278394(P2012−278394)
【出願日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【分割の表示】特願2011−544379(P2011−544379)の分割
【原出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(502032105)エルジー エレクトロニクス インコーポレイティド (2,269)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【分割の表示】特願2011−544379(P2011−544379)の分割
【原出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(502032105)エルジー エレクトロニクス インコーポレイティド (2,269)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]