説明

不活性支持体式の円筒型の燃料電池

【課題】電解質がより薄膜に形成される、円筒型の燃料電池を製造するための方法を提供する。
【解決手段】キャビティを備えた射出成形金型10,11と、キャビティ内に挿入可能な射出成形金型コア12とを準備し、該射出成形金型コアにまたは射出成形金型のキャビティ形成面に、カソード層2aと、電解質層2bと、アノード層2cとを有するサンドイッチ状の機能層列2を配置し、b)キャビティ内に射出成形金型コアを挿入し、これによって、該射出成形金型コアと射出成形金型との間に管状の中空室を形成し、c)機能層列に隣接した区分1aに、ガス透過性の気孔および/または開口が形成されるように、管状の中空室の少なくとも一部に、セラミック材料および/またはガラス状材料を形成するための少なくとも一種類の成分1を射出し、d)該成分を固化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒型の燃料電池を製造するための方法に関する。
【0002】
さらに、本発明は、前記方法によって製造された円筒型の燃料電池に関する。
【0003】
さらに、本発明は、燃料電池システムならびに燃料電池システムを具備したコージェネレーション(熱電併給)設備もしくは燃料電池システムを具備した車両に関する。
【背景技術】
【0004】
固体酸化物型燃料電池(SOFC:solide oxide fuel cell)は、電流と、場合により熱とを発生させるために働き、しばしば、家庭へのエネルギ供給もしくは産業的なエネルギ供給のための補機またはコージェネレーション設備(KWK)に使用され、また、発電所や車両のオンボード発電のためにも使用される。固体酸化物型燃料電池は、通常、600℃〜1000℃の温度で運転されるので、高温型燃料電池とも呼ばれる。
【0005】
固体酸化物型燃料電池は、管状のまたは平板型の支持体を有していてよい。本願に関係のある燃料電池は管状の支持体を有しているので、その幾何学的な形状に基づき、平板型に形成された燃料電池と区別することができる。管状の支持体を備えた燃料電池は、チューブ型のもしくは円筒型の燃料電池とも呼ばれる。この円筒型の燃料電池は、両側で開放して形成されていてよく、これによって、円筒型の燃料電池を通して燃焼ガスまたは空気を案内することができるだけでなく、一方の端側で閉鎖されて形成されていてもよい。その際には、燃焼ガスまたは空気を燃料電池の内側にランスを介して案内することができる。
【0006】
円筒型の燃料電池は、特に支持体の形態に関して区別することができる。
【0007】
管状の支持体を備えた電解質支持型の燃料電池では、電解質が支持体としても働き、電極よりも著しく厚膜に形成されている。このような燃料電池では、通常、電極が支持体の内外面に被着されている。支持機能を保証するためには、電解質が少なくとも200μmの層厚さを有している。しかし、電解質の大きな層厚さは、燃料電池のオーム抵抗にマイナスの影響を与える。したがって、このような燃料電池は、電解質の十分な伝導性と良好な出力性能とを得るために、より高い温度、特に最大950℃の温度で運転される。
【0008】
国際公開第2010/037670号およびドイツ連邦共和国特許出願公開第10219096号明細書には、多孔質の金属材料から成る管状の支持体を有する円筒型の燃料電池が記載されている。
【0009】
米国特許第6379485号明細書には、片側で閉鎖された円筒型の燃料電池を製造するための方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2010/037670号
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許出願公開第10219096号明細書
【特許文献3】米国特許第6379485号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の課題は、電解質がより薄膜に形成される、円筒型の燃料電池を製造するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題を解決するために本発明に係る方法によれば、該方法が、以下の方法ステップ:すなわち、a)キャビティを備えた射出成形金型と、キャビティ内に挿入可能な射出成形金型コアとを準備し、キャビティ内への射出成形金型コアの挿入によって、該射出成形金型コアと射出成形金型との間にほぼ管状の中空室が形成可能であり、射出成形金型コアにまたは射出成形金型のキャビティ形成面に、少なくとも1つの電極・電解質接合体を形成するための、カソード層と、電解質層と、アノード層とを有するサンドイッチ状の機能層列が配置されており、b)キャビティ内に射出成形金型コアを挿入し、c)特に機能層列に隣接した区分に、ガス透過性の気孔および/または開口が形成可能であるように、管状の中空室の少なくとも一部に、セラミック支持体材料および/またはガラス状支持体材料を形成するための少なくとも一種類の成分を射出し、d)該成分を固化、特に管状の中空室内に形成された物体と、機能層列とを、たとえば1200℃以下の温度で同時焼結する:を有している。
【0013】
本発明に係る方法の有利な態様によれば、電解質層が、ナノスケールの電解質材料、特にナノスケールの二酸化ジルコニウム、たとえばナノスケールのイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を含有している。
【0014】
本発明に係る方法の有利な態様によれば、セラミック支持体材料および/またはガラス状支持体材料を形成するための少なくとも一種類の成分が、電気絶縁性のかつ/またはイオン絶縁性のセラミック支持体材料および/またはガラス状支持体材料を形成するために規定されている。
【0015】
本発明に係る方法の有利な態様によれば、カソード層が、機能層列の、射出成形金型コアと反対の側にもしくは機能層列の、射出成形金型のキャビティ形成面と反対の側に配置されているように、機能層列が、射出成形金型コアにまたは射出成形金型のキャビティ形成面に配置されている。
【0016】
本発明に係る方法の有利な態様によれば、射出成形金型コアが、部分的にまたは完全に消失コアとして形成されている。
【0017】
本発明に係る方法の有利な態様によれば、射出成形金型コアが、射出成形金型コアベースボディと、該射出成形金型コアベースボディに被せられる除去可能な支持スリーブまたは支持シートとを有していることによって、射出成形金型コアが、部分的に消失コアとして形成されており、機能層列が、たとえばスクリーン印刷、特にロータリスクリーン印刷によって、除去可能な支持スリーブまたは支持シートに被着されているか、または射出成形金型コアが、完全に消失コアとして形成されていて、特に除去可能な射出成形金型コアまたは除去可能な射出成形金型コアスリーブの形で形成されており、機能層列が、たとえば曲面スクリーン印刷によって、除去可能な射出成形金型コアもしくは除去可能な射出成形金型コアスリーブに被着されている。
【0018】
本発明に係る方法の有利な態様によれば、除去可能な支持スリーブ、除去可能な支持シート、除去可能な射出成形金型コアスリーブまたは除去可能な射出成形金型コアの除去を少なくとも部分的に機械的に、少なくとも部分的に溶剤内での溶解によってかつ/または少なくとも部分的に分解、蒸発および/または溶融によって行う。
【0019】
本発明に係る方法の有利な態様によれば、方法ステップc)において、機能層列に隣接していない区分が、ガス密に形成可能であるように、管状の中空室内に、セラミック支持体材料および/またはガラス状支持体材料を形成するための少なくとも二種類の成分を射出する。
【0020】
本発明に係る方法の有利な態様によれば、管状の中空室が、形成したい管状の支持体の形に少なくともほぼ対応しており、特に管状の中空室が、一端において、形成された円筒型の燃料電池を支持基板に固定するための開放したベース区分を形成するために形成されていて、他端において、閉鎖されたキャップ区分を形成するために形成されているか、または管状の中空室が、両端において、形成された円筒型の燃料電池を支持基板に固定するためのそれぞれ1つの開放したベース区分を形成するために形成されている。
【0021】
さらに、前述した課題を解決するために本発明に係る円筒型の燃料電池によれば、該円筒型の燃料電池が、管状の支持体と、少なくとも1つの電極・電解質接合体とを有しており、該電極・電解質接合体が、カソードと、アノードと、カソードとアノードとの間に配置された、特にガス密な電解質とを有しており、少なくとも1つの電極・電解質接合体が、管状の支持体の内面または外面、特に内面に被着されており、管状の支持体が、一種類またはそれ以上の種類のセラミック材料および/またはガラス状材料から形成されており、管状の支持体が、電極・電解質接合体に隣接した1つまたはそれ以上の区分に、ガス透過性の気孔および/または開口を有している。
【0022】
本発明に係る円筒型の燃料電池の有利な態様によれば、管状の支持体の前記材料が、イオン絶縁性であり、かつ/または電気絶縁性である。
【0023】
本発明に係る円筒型の燃料電池の有利な態様によれば、管状の支持体が、一方の管端部においてキャップ区分によって閉鎖されており、該キャップ区分が、ガス密に形成されている。
【0024】
本発明に係る円筒型の燃料電池の有利な態様によれば、少なくとも1つの電極・電解質接合体のカソードが、支持体に隣接しており、特にアノードが、管状の支持体の内室に露出されている。
【0025】
本発明に係る円筒型の燃料電池の有利な態様によれば、少なくとも1つの電極・電解質接合体のカソードが、導電性のかつガス透過性のカソード材料から形成されており、少なくとも1つの電極・電解質接合体の電解質が、イオン伝導性でガス密なかつ電気絶縁性の電解質材料から形成されており、少なくとも1つの電極・電解質接合体のアノードが、導電性のかつガス透過性のアノード材料から形成されている。
【0026】
本発明に係る円筒型の燃料電池の有利な態様によれば、管状の支持体が、1つまたはそれ以上の多孔質の区分に気孔率20%以上の開気孔を有している。
【0027】
本発明の対象は、特にあとで記載する円筒型の燃料電池を製造するための方法である。この方法は、以下の方法ステップ:すなわち、
a)キャビティを備えた射出成形金型と、キャビティ内に挿入可能な射出成形金型コアとを準備し、キャビティ内への射出成形金型コアの挿入によって、この射出成形金型コアと射出成形金型との間に、特にほぼ管状の中空室が形成可能であり、射出成形金型コアにまたは射出成形金型のキャビティ形成面に、少なくとも1つ、特に多数の電極・電解質接合体を形成するための、カソード層と、電解質層と、アノード層とを有するサンドイッチ状の機能層列が配置されており、
b)キャビティ内に射出成形金型コアを挿入し、
c)特に機能層列に隣接した区分に、ガス透過性の気孔および/または開口が形成可能であるように、管状の中空室にもしくは管状の中空室の少なくとも一部に、セラミック支持体材料および/またはガラス状支持体材料を形成するための少なくとも一種類の成分を射出し、
d)この成分を固化する:
を有している。
【0028】
方法ステップd)では、管状の中空室内に(一種類またはそれ以上の種類の成分から)形成された物体と、サンドイッチ状の機能層列とを、特に物理的にかつ/または化学的に互いに結合することができる。特に方法ステップd)では、管状の中空室内に(一種類またはそれ以上の種類の成分から)形成された物体と、機能層列とを(同時に)焼結することができるかもしくは同時焼結することができる。一種類またはそれ以上の種類の成分は、特にセラミック支持体材料および/またはガラス状支持体材料を形成することができる。したがって、管状の中空室内に形成された物体は、特に固化後もしくは焼結後、支持体と呼ぶこともできる。
【0029】
物体(支持体)によって、有利には、電極・電解質接合体を極めて薄膜の機能層セットとして形成することが可能となる。電解質は、もはや約15μmの層厚さしか有していないほどにさえ薄膜に形成することができる。これによって、有利には、運転温度を少なくとも750℃に低下させることができ、燃料電池の出力性能を向上させることができる。さらに、薄膜の構成によって、材料コストを節約することができる。さらに、運転温度の低下は、より僅かな温度安定性を有するより有利な材料を使用することもできるという利点を有している。これによって、材料コストをさらに減少させることができる。
【0030】
本発明に係る方法によって、セラミックス製のかつ/またはガラス状の物体(支持体)を、有利には特に簡単にかつ廉価に製造することができる。
【0031】
さらに、本発明に係る方法では、有利には、複数回の焼結ステップを省略することができ、管状の中空室内に形成された物体と、機能層列とを、1回の共通の焼結ステップ(同時焼結、同時焼成ステップ)で1つの管状の支持体および1つまたはそれ以上の電極・電解質接合体に変換することができる。焼結ステップにはコストがかかるので、このような同時焼結によって製造コストを著しく削減することができる。
【0032】
更なる利点は、機能層列ひいては電極セット全体を燃焼ガス室内で、たとえば管状の物体(支持体)の内面に配置することができることにある。このことは、電流導出線路および/またはアノードをより容易に金属製の導体によって実現することができるという利点を有している。たとえば卑金属およびその合金、たとえばニッケルおよびニッケル合金は、アノード材料および/または、特にアノードとカソードとを電気的に接続するための電気的な線路に用いられる材料として使用することができる。なお、卑金属およびその合金は、還元性の雰囲気、たとえば燃焼ガス雰囲気下で高い温度でも高い化学的な安定性を有していることができる。さもないと、このことは、特に酸化性の雰囲気下で高価な貴金属、たとえば白金によってしか達成することができない。こうして、有利には材料・製造コストを減少させることができる。
【0033】
さらに、機能層列は、有利には印刷法によって、特に多種多様に形成することができ、たとえばカソード層、電解質層およびアノード層のほかに、さらに別の機能的な範囲、たとえば電流導出器を形成するための範囲、2つまたはそれ以上の電極・電解質接合体を相互接続するための電気的なインタコネクタおよび/または個々の範囲を電気的にかつ/またはイオン的に絶縁するための範囲を有していてよい。
【0034】
円筒型の燃料電池は平板型の燃料電池に比べて、ガス室を、有利には著しく簡単に互いに分離することができるという利点を有している。なぜならば、高温範囲内でシール部材を省略することができるからである。
【0035】
管状の物体(支持体)もしくは室とは、特に基本的にほぼ円い、たとえば円形のまたは卵形線状(楕円形)の底面だけでなく、多角形の底面も有していてよいほぼ中空円筒状の物体もしくは室を意味している。特に管状の物体もしくは室は円形の底面を有することができる。
【0036】
セラミック材料とは、特に非金属性の無機材料を意味している。セラミック材料は、少なくとも部分的に結晶質である。
【0037】
「非金属性」とは、材料が、特に金属結合に基づく金属特性を有していないことを意味している。したがって、「非金属性」という概念は、材料が金属化合物、たとえば金属酸化物および/または金属ケイ酸塩、たとえばケイ酸マグネシウム、酸化ジルコニウムおよび/または酸化アルミニウムを含んでいてよいことを排除するものではない。
【0038】
ガラス状材料とは、非晶質のもしくは非結晶質の非金属性の無機材料を意味している。
【0039】
「セラミック(材料)および/またはガラス状(材料)」という概念は、特に部分的に結晶質でありかつ部分的に非晶質もしくはガラス状であって、たとえば、いわゆる「ガラス相」を有している混合形態、たとえば非金属性の無機材料が含まれていてもよいことを意味している。
【0040】
支持体材料は、特に不活性であってよい。ここで、「不活性」とは、材料が電極または電解質として働かないことを意味している。その際、燃料電池は、不活性支持体式の燃料電池と呼ぶことができる。
【0041】
方法ステップc)において、形成される管状の物体へのガス透過性の気孔および/または開口の形成は、たとえば少なくとも一種類の成分への少なくとも一種類の気孔形成剤の添加、出発粉末への双峰分布のまたは多峰分布の粒径の使用または射出成形金型に設けられた張り出した構造化部によって行うことができる。有利には、方法ステップc)において、気孔形成剤含有の成分が、機能層列を覆うように射出される。
【0042】
気孔形成剤として、熱処理、たとえば焼結の間に分解、蒸発かつ/または溶出される化合物を使用することができる。気孔形成剤として、たとえば有機気孔形成剤が適している。この有機気孔形成剤は、熱処理の間、たとえば射出成形による形状付与後に完全燃焼され、たとえば浸透中空室をあとに残すことができる。
【0043】
本発明に係る方法の1つの態様の範囲内では、電解質層が、ナノスケールの電解質材料、特にナノスケールの二酸化ジルコニウム、たとえばナノスケールのイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を含有している。
【0044】
「ナノスケールの材料」とは、特に少なくとも一空間方向において1μm未満、たとえば100nm未満の平均的な粒子サイズを有する材料を意味している。
【0045】
さらに、ナノスケールの電解質材料の使用によって、有利には1200℃を下回る温度でガス密な電解質層を形成することができる。
【0046】
本発明に係る方法の1つの別の態様の範囲内では、セラミック支持体材料および/またはガラス状支持体材料を形成するための少なくとも一種類の成分が、特に電気絶縁性のかつ/またはイオン絶縁性のセラミック支持体材料および/またはガラス状支持体材料、たとえば電気絶縁性のかつイオン絶縁性のセラミック支持体材料および/またはガラス状支持体材料を形成するために規定されている。
【0047】
本発明に係る方法の1つの別の態様の範囲内では、カソード層が、機能層列の、射出成形金型コアと反対の側にもしくは機能層列の、射出成形金型のキャビティ形成面と反対の側に配置されているように、機能層列が、射出成形金型コアにまたは射出成形金型のキャビティ形成面に配置されている。
【0048】
射出成形金型コアは、ほぼ回転対称的に、たとえばほぼ円筒状にまたは場合により中空円筒状に形成することができる。
【0049】
本発明に係る方法の1つの別の態様の範囲内では、射出成形金型コアが、部分的にまたは完全に消失コアとして形成されている。
【0050】
「消失コア」もしくは「消失型」とは、特に製造プロセスの間に破壊によって除去されるので、再び使用することができない射出成形金型コアもしくは成形型を意味している。
【0051】
本発明に係る方法の1つの別の態様の範囲内では、射出成形金型コアが、射出成形金型コアベースボディと、この射出成形金型コアベースボディに被せることができる除去可能な支持スリーブまたは支持シートとを有していることによって、射出成形金型コアが、部分的に消失コアとして形成されており、機能層列が、たとえばスクリーン印刷、特に曲面スクリーン印刷によって、除去可能な支持スリーブまたは支持シートに被着されている。
【0052】
これに対して択一的には、射出成形金型コアが、完全に消失コアとして形成されていて、特に除去可能な射出成形金型コアまたは除去可能な射出成形金型コアスリーブの形で形成されており、機能層列が、たとえば曲面スクリーン印刷によって、除去可能な射出成形金型コアもしくは除去可能な射出成形金型コアスリーブに被着されている。
【0053】
これに類似して、たとえば射出成形金型のキャビティ形成面への除去可能な支持シートまたは支持スリーブの被着によって、射出成形金型が、少なくとも部分的に消失型として形成されていてもよい。
【0054】
射出成形金型コアは、完全に消失コアとして、特に除去可能な射出成形金型コアまたは除去可能な射出成形金型コアスリーブの形で形成されていてよい。機能層列は、たとえば曲面スクリーン印刷によって、除去可能な射出成形金型コアもしくは除去可能な射出成形金型コアスリーブに被着されている。
【0055】
本発明に係る方法の1つの別の態様の範囲内では、除去可能な支持スリーブ、除去可能な支持シート、除去可能な射出成形金型コアスリーブまたは除去可能な射出成形金型コアの除去が、少なくとも部分的に機械的に、少なくとも部分的に溶剤内での溶解によってかつ/または少なくとも部分的に分解、蒸発および/または溶融によって行われる。
【0056】
支持スリーブもしくは射出成形金型コアスリーブおよび場合により射出成形金型コアは、特に有利には、スリーブもしくは射出成形金型コアが、除去の間、たとえば引出し時に押し潰されることによって機械的に除去することができる。このためには、有利には、支持スリーブもしくは射出成形金型コアスリーブもしくは射出成形金型コアが、プラスチック材料から形成されている。このような成形体は、有利には、特に廉価に、たとえば射出成形部材として製造することができ、したがって、消失コアとしての使用のために特に適している。
【0057】
支持シートは、有利には引剥しによって容易に機械的に除去することができる。
【0058】
除去可能な支持スリーブ、除去可能な支持シート、除去可能な射出成形金型コアスリーブまたは除去可能な射出成形金型コアを少なくとも部分的に、場合により完全にさえ溶剤内での溶解によって除去するためには、除去可能な要素が、たとえば可溶性の、特に水溶性のポリマ、たとえばセルロースまたはメチルセルロースから形成されていてもよいし、アクリル酸、マレイン酸、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾールまたはポリビニルアルコールをベースとしたポリマから形成されていてもよい。たとえば射出成形金型コアの機械的な除去前にアッセンブリを溶剤、たとえば水に入れて、射出成形金型コアと機能層列との間のポリマを溶解することができる。
【0059】
除去可能な支持スリーブ、除去可能な支持シート、除去可能な射出成形金型コアスリーブまたは除去可能な射出成形金型コアを分解によって除去するためには、除去可能な要素が、温度上昇時、たとえば焼結時に分解、蒸発および/または溶融によって、有利には残滓なしに除去することができる材料から形成されていてよい。
【0060】
有利には、除去可能なシート状の支持スリーブまたは除去可能な支持シートが使用される。有利には、機能層列を、特に簡単に1つのシートに被着、特に印刷することができる。さらに、シート材料に対する材料コストは、中実の消失射出成形金型コアに比べて僅かである。機能層を、たとえば曲面スクリーン印刷によって除去可能なシート状の支持スリーブに被着するだけでなく、たとえば平面印刷法によって除去可能な平板状の支持シートに被着することも可能である。場合により、次いで、この除去可能な平板状の支持シートから、除去可能なシート状の支持スリーブを形成することができる。射出成形金型コアもしくは射出成形金型に面した側では、支持スリーブもしくは支持シートが、特に少ない静摩擦を有しており、これによって、機械的な除去を容易に行うことができる。
【0061】
本発明に係る方法の1つの別の態様の範囲内では、方法ステップc)において、機能層列に隣接していない1つもしくはそれ以上の区分が、ガス密に形成可能であるように、管状の中空室内に、セラミック支持体材料および/またはガラス状支持体材料を形成するための少なくとも二種類の成分が射出される。特に機能層列に隣接した区分には、ガス透過性の気孔および/または開口が形成可能である。
【0062】
方法ステップd)は、特に1回またはそれ以上の回数の下位方法ステップを有していてよい。たとえば、方法ステップd)は、
−1回またはそれ以上の回数の冷却ステップ、たとえば少なくとも一種類の装入された成分の、温度に起因した固化によって圧粉体を形成するための冷却、
−たとえば特に圧粉体の部分的なまたは完全な脱脂および/または仮焼および/または焼結もしくはセラミックス化および/またはアニーリングのためのそれぞれ異なる温度での1回またはそれ以上の回数の熱処理、
−たとえば部分的なまたは完全な脱脂のための溶剤による1回またはそれ以上の回数の処理、および/または
−1回またはそれ以上の回数の工程処理ステップ、たとえば射出成形金型からの形成された管状の物体の取出しおよび/または形成された管状の物体からの射出成形金型コアの取出し、
から選択された1回またはそれ以上の回数の下位方法ステップを有していてよい。
【0063】
特に方法ステップd)は、管状の中空室内に(一種類またはそれ以上の種類の成分から)形成された物体と、機能層列との焼結もしくは同時焼結を有していてよい。この焼結もしくは同時焼結は、特に1200℃以下の温度で行うことができる。
【0064】
「脱脂」という概念は、本願の意味では、有機バインダの除去に加えて、別の有機化合物、たとえば気孔形成剤、軟化剤等の除去も含んでいる。
【0065】
たとえば、まず、一種類もしくはそれ以上の種類の成分を溶解法によって部分脱脂し、次いで、たとえば100℃以上300℃以下の範囲内の低い温度での熱処理によって引き続き脱脂することができる。その後、たとえば250℃以上600℃以下の範囲内の中程度の温度での熱処理によって、少なくとも一種類の気孔形成剤および/または支持スリーブ、支持シート、成形コアスリーブもしくは成形コアを、特に分解、蒸発および/または溶融によって除去することができる。最後、機能層列を備えて形成された管状の物体を、たとえば1000℃以上1200℃以下の範囲内の温度で焼結することができる。
【0066】
有利には、焼結は、機能層列を備えて形成された管状の物体を射出成形金型から離型した後に行われる。
【0067】
本発明に係る1つの別の態様の範囲内では、管状の中空室が、形成したい管状の支持体の形に少なくともほぼ対応しており、特に管状の中空室が、一端において、形成された円筒型の燃料電池を支持基板に固定するための開放したベース区分を形成するために形成されていて、他端において、閉鎖されたキャップ区分を形成するために形成されていることが提案されている(片側閉鎖円筒体)。
【0068】
これに対して択一的には、管状の中空室が、両端において、形成された円筒型の燃料電池を支持基板に固定するためのそれぞれ1つの開放したベース区分を形成するために形成されていてよい(両側開放円筒体)。
【0069】
なお、更なる利点および特徴については、本発明に係る燃料電池、本発明に係る燃料電池システム、本発明に係るコージェネレーション設備もしくは本発明に係る車両に関連した詳細な説明、図面および図面の説明に詳しく記載してある。
【0070】
本発明の更なる対象は、本発明により製造された燃料電池である。
【0071】
本発明の更なる対象は、たとえば本発明に係る方法によって製造された円筒型の燃料電池である。この円筒側の燃料電池は、管状の支持体と、少なくとも1つの電極・電解質接合体とを有しており、この電極・電解質接合体が、カソードと、アノードと、カソードとアノードとの間に配置された、特にガス密な電解質とを有しており、少なくとも1つの電極・電解質接合体が、管状の支持体の内面または外面、特に内面に被着されている。本発明によれば、管状の支持体が、一種類またはそれ以上の種類のセラミック材料および/またはガラス状材料から形成されていて、電極・電解質接合体に隣接した1つまたはそれ以上の区分に、ガス透過性の気孔および/または開口を有している。
【0072】
管状の支持体は、一方の管端部で開放していて、他方の管端部で閉鎖されていてもよいし、両方の管端部で開放して形成されていてもよい。特に管状の支持体は、一方の管端部で開放していて、他方の管端部で、特にキャップ区分によって閉鎖されて形成されていてよい。
【0073】
1つの更なる態様の範囲内では、支持体の材料が、イオン絶縁性であり、かつ/または電気絶縁性であり、たとえばイオン絶縁性であると共に電気絶縁性である。
【0074】
電極・電解質接合体を備えていない1つまたはそれ以上の区分では、管状の支持体を、特にガス密に形成することができる。
【0075】
管状の支持体は、少なくとも一方の開放した管端部に、円筒型の燃料電池を支持基板に固定するためのベース区分を有していてよい。このベース区分は、特にガス密に形成されていてよい。
【0076】
両方の管端部で開放した管状の支持体の態様では、この管状の支持体が、それぞれ両方の管端部にベース区分を有することができる。こうして、燃料電池を両ベース区分を介して、たとえば1つの支持基板、特に2つの支持基板に固定することができる。
【0077】
一方の管端部で開放しかつ他方の管端部で閉鎖された管状の支持体の態様では、この管状の支持体が、開放した管端部に、円筒型の燃料電池を支持基板に固定するためのベース区分を有することができ、閉鎖された管端部でキャップ区分によって閉鎖することができる。
【0078】
1つの更なる態様の範囲内では、管状の支持体が、一方の管端部でキャップ区分によって閉鎖されている。このキャップ区分は、特にガス密に形成することができる。
【0079】
1つの更なる態様の範囲内では、少なくとも1つの電極・電解質接合体のカソードが、支持体に隣接している。アノードは、特に管状の支持体の内室に露出されていてよい。特に全ての電極・電解質接合体のカソードが支持体に隣接することができる。
【0080】
この態様は、特に円筒型の燃料電池、特に管状の支持体の外側に空気が供給され、円筒型の燃料電池、特に管状の支持体の内側に燃焼ガス、たとえば水素または天然ガス、たとえば地下天然ガス、バイオガス、メタンガス、エタンガス、プロパンガス、ブタンガスまたはこれらのガスのうちの少なくとも1つを含有したガス混合物が供給される運転に適している。
【0081】
しかし、基本的には、少なくとも1つの電極・電解質接合体のアノードが支持体に隣接しており、特にカソードが、管状の支持体の内室に露出されていることも可能である。この態様は、特に円筒型の燃料電池、特に管状の支持体の外側に燃焼ガスが供給され、円筒型の燃料電池、特に管状の支持体の内側に空気が供給される運転に適している。
【0082】
前者の態様は、卑金属、たとえばニッケルをアノード材料および/または電気的な線路に用いられる材料として使用することができるという利点を有している。なぜならば、アノード材料もしくは電気的な線路が、還元性の雰囲気、たとえば燃焼ガス雰囲気下で使用され、高い温度でも高い化学的な安定性を有していることができるからである。さもないと、この安定性は、特に酸化性の雰囲気下で高価な貴金属、たとえば白金によってしか達成することができない。
【0083】
1つの別の態様の範囲内では、少なくとも1つの電極・電解質接合体のカソードが、導電性のかつガス透過性のカソード材料から形成されており、少なくとも1つの電極・電解質接合体の電解質が、イオン伝導性でガス密なかつ電気絶縁性の電解質材料から形成されており、少なくとも1つの電極・電解質接合体のアノードが、導電性のかつガス透過性のアノード材料から形成されている。
【0084】
少なくとも1つの電極・電解質接合体のカソードは、たとえば少なくとも一種類のカソード材料を含有していてもよいし、少なくとも一種類のカソード材料から形成されていてもよい。このカソード材料は、ランタン・ストロンチウム・マンガン酸化物(LSM)、スカンジウムドーピングされたランタン・ストロンチウム・マンガン酸化物(LSSM)、ランタン・ストロンチウム・コバルト・フェライト(LSCF)、ランタン・ニッケル・フェライト(LNF)およびこれらの組合せから成るグループから選択されている。特に少なくとも1つの電極・電解質接合体のカソードは、導電性のかつガス透過性のもしくは多孔質のカソード材料から形成することができる。さらに、カソード材料はイオン伝導性であってよく、これによって、反応ゾーンが増大させられる。特に燃料電池の全ての電極・電解質接合体が、このようなカソード材料を含有していてもよいし、このようなカソード材料から形成されていてもよい。
【0085】
少なくとも1つの電極・電解質接合体のカソードは、たとえば、150μm以下、たとえば120μm以下のカソード層厚さを有していてよい。特に燃料電池の全ての電極・電解質接合体のカソードが、このようなカソード層厚さを有していてよい。
【0086】
少なくとも1つの電極・電解質接合体のアノードは、たとえば少なくとも一種類のアノード材料を含有していてもよいし、少なくとも一種類のアノード材料から形成されていてもよい。このアノード材料は、ニッケルとイットリア安定化ジルコニアとを含有したサーメット(Ni/YSZ)、チタン酸塩、一例としてマンガンドーピングされたチタン酸塩、たとえばランタン・ストロンチウム・チタン酸塩(Sr1−XLaTiO)、アルミン酸塩、たとえばマンガンおよび/またはランタンおよび/またはストロンチウムを含有したアルミン酸塩((La,Sr)(Al,Mn)O)およびこれらの組合せから成るグループから選択されている。特に少なくとも1つの電極・電解質接合体のアノードは、導電性のかつガス透過性のもしくは多孔質のアノード材料から形成することができる。場合により、アノード材料は、さらに、イオン伝導性であってよく、これによって、反応ゾーンが増大させられる。特に燃料電池の全ての電極・電解質接合体が、このようなアノード材料を含有していてもよいし、このようなアノード材料から形成されていてもよい。
【0087】
少なくとも1つの電極・電解質接合体のアノードは、たとえば、100μm以下、たとえば50μm以下のアノード層厚さを有していてよい。特に燃料電池の全ての電極・電解質接合体のアノードが、このようなアノード層厚さを有していてよい。
【0088】
少なくとも1つの電極・電解質接合体の電解質は、少なくとも一種類の材料を含有していてもよいし、少なくとも一種類の材料から形成されていてもよい。この材料は、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化セリウム(CeO)およびこれらの組合せから成るグループから選択されている。少なくとも1つの電極・電解質接合体の電解質は、特にイオン伝導性でガス密なかつ電気絶縁性の電極材料から形成することができる。特に燃料電池の全ての電極・電解質接合体の電解質が、このような電解質材料を含有していてもよいし、このような電解質材料から形成されていてもよい。
【0089】
少なくとも1つの電極・電解質接合体の電解質は、たとえば50μm以下、たとえば45μm以下または40μm以下または35μm以下または30μm以下または25μm以下または20μm以下、たとえば約15μmの層厚さを有することができる。特に燃料電池の全ての電極・電解質接合体の電解質が、このような電解質層厚さを有していてよい。
【0090】
少なくとも1つの電極・電解質接合体のカソード、電解質およびアノードは、特に(全体として)500μm以下または300μm以下、一例として250μm以下、たとえば200μm以下または150μm以下の層列厚さを有する層列を形成することができる。特に燃料電池の全ての電極・電解質接合体が、1つの層列を形成していて、このような層列厚さを有していてよい。
【0091】
ベース区分は、特に管状の支持体の外面に全周にわたって延びる、円筒型の燃料電池を支持基板に固定するための突出部を有していてよい。
【0092】
1つの別の態様の範囲内では、支持体が、1つまたはそれ以上の多孔質の区分に気孔率20%以上、一例として25%以上または30%以上または40%以上、たとえば約40%の開気孔を有している。気孔率は、たとえば光電子顕微鏡もしくは走査型電子顕微鏡および/または通流量測定によって測定することができる。
【0093】
管状の支持体は、たとえば5000μm以下または2000μm以下の肉厚、一例として250μm以上2000μm以下または500μm以上2000μm以下の範囲内の肉厚、たとえば約1000μmの肉厚を有していてよい。
【0094】
気孔は、たとえば、300μm以下、たとえば200μm以下または100μm以下または50μm以下の平均的な気孔サイズを有していてよい。特に気孔は、ほぼ細長い形状を有することができる。たとえば、気孔は、100μm以上300μm以下、特に150μm以上250μm以下の範囲内の平均的な長さ、たとえば約200μmの平均的な長さと、1μm以上70μm以下、特に5μm以上30μm以下、たとえば約5μm以上10μm以下の範囲内の平均的な直径または約20μmの平均的な直径とを有していてよい。
【0095】
気孔は、特に1μm以上20μm以下、特に1μm以上10μm以下の範囲内の通過分布、たとえば約5μmの通過分布を備えた浸透気孔網を形成することができる。このような気孔通過分布によって、有利には、特にいわゆる「クヌーセン効果」の発生なしに、自由なガス拡散が可能となる。
【0096】
管状の支持体は、たとえば少なくとも一種類の材料を含有していてもよいし、少なくとも一種類の材料から形成されていてもよい。この材料は、マグネシウムケイ酸塩、特にフォルステライト、二酸化ジルコニウム、特にドーピングされた二酸化ジルコニウム、たとえば6.5質量%の酸化イットリウム(Y)がドーピングされた二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化アルミニウムと酸化ジルコニウムとの混合物、スピネル、たとえばマグネシウムアルミン酸塩、酸化ジルコニウムとガラスとの混合物、ジルコニアおよびこれらの組合せから成るグループから選択されている。フォルステライトは、主として、一般的な化学式MgSiOに基づいている。
【0097】
管状の支持体は、射出法および/または成形法、特に射出成形法によって形成されていてよい。特に管状の支持体は、多成分射出成形法によって形成することができる。
【0098】
円筒型の燃料電池は、特に多数の電極・電解質接合体を有することができる。
【0099】
なお、更なる利点および特徴については、本発明に係る方法、本発明に係る燃料電池システム、本発明に係るコージェネレーション設備もしくは本発明に係る車両に関連した詳細な説明、図面および図面の説明に詳しく記載してある。
【0100】
さらに、本発明は、少なくとも1つ、特に多数の本発明に係る燃料電池または本発明により製造された燃料電池を有する燃料電池システムに関する。
【0101】
なお、更なる利点および特徴については、本発明に係る方法、本発明に係る燃料電池、本発明に係るコージェネレーション設備もしくは本発明に係る車両に関連した詳細な説明、図面および図面の説明に詳しく記載してある。
【0102】
さらに、本発明は、たとえば住宅、商業施設、産業設備または発電所に用いられる、本発明に係る燃料電池システムを有するコージェネレーション設備または本発明に係る燃料電池システムを有する車両に関する。
【0103】
なお、更なる利点および特徴については、本発明に係る方法、本発明に係る燃料電池もしくは本発明に係る燃料電池システムに関連した詳細な説明、図面および図面の説明に詳しく記載してある。
【0104】
本発明に係る対象の更なる利点および有利な態様は図面に示してあり、以下で説明することにする。なお、念のために付言しておくと、図面には、これから説明する特徴だけが示してあるにすぎず、図面は、本発明を何らかの形で制限するために考えられたものではない。
【発明の効果】
【0105】
本発明によれば、電解質をより薄膜に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の実施の形態に係る燃料電池の概略的な横断面図である。
【図2a】本発明の実施の形態に係る製造法の第1の方法ステップを示すための概略的な横断面図である。
【図2b】本発明の実施の形態に係る製造法の第2の方法ステップを示すための概略的な横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0107】
以下に、本発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。
【0108】
図1には、本発明に係る燃料電池の1つの実施の形態が示してある。この燃料電池は、セラミックス製のかつ/またはガラス状の管状の支持体1を備えている。この支持体1の内面には、電極・電解質接合体2が被着されている。図面には示さないが、この電極・電解質接合体2は、別の択一的な実施の形態の範囲内で管状の支持体1の外面に配置されていてよい。
【0109】
図1に示したように、管状の支持体1は、電極・電解質接合体2に隣接した区分1aにガス透過性の複数の気孔を有している。言い換えると、電極・電解質接合体2は管状の支持体1の内面に正確に多孔質の区分1aの高さで配置されている。さらに、図1に示したように、管状の支持体1は引き続き一方の管端部でキャップ区分1bによって閉鎖されていて、開放した管端部には、ベース区分1cと、燃料電池を支持基板6に固定するための、いわゆる「組付けフランジ」とを有している。有利には、ベース区分1cは、ガラス状材料による付加的な密封なしに燃料電池を支持基板6にガス密に固定するために形成されている。キャップ区分1bとベース区分1cとはガス密に形成されている。図1に示したように、キャップ区分1bは、管状の支持体1内に導入可能なガス供給ランス5をセンタリングしかつ/または安定化させるための凹状の引込み部および/またはステーを有している。
【0110】
図1に示したように、電極・電解質接合体2を支持する中間の中空円筒状のガス透過性で多孔質の区分1aは、それぞれ結合範囲3において、一方ではキャップ区分1bに隣接していて、他方ではベース区分1cに隣接している。区分1a,1b,1cは互いに材料接続的に結合されている。
【0111】
図1に示したように、電極・電解質接合体2は、カソード2aと、アノード2cと、カソード2aとアノード2cとの間に配置された電解質2bとを有している。カソード2aと、電解質2bと、アノード2cとは、機能層列を形成している。この機能層列は、カソード2aが管状の支持体1に隣接していて、アノード2cが管状の支持体1の内室に露出されているように、管状の支持体1に配置されている。
【0112】
管状の支持体1は、特にイオン絶縁性のかつ/または電気絶縁性のセラミック材料および/またはガラス状材料から形成されている。
【0113】
図2aおよび図2bには、セラミックス射出成形をベースとした本発明に係る製造法の1つの実施の形態が示してある。
【0114】
このためには、図2aおよび図2bに示したように、キャビティを備えた射出成形金型10,11と、キャビティ内に挿入可能な円筒状の射出成形金型コア12とが準備される。射出成形金型10,11と射出成形金型コア12とは、キャビティ内への射出成形金型コア12の挿入によって、この射出成形金型コア12と射出成形金型10,11との間にほぼ管状の中空室が形成可能であるように形成されている。この中空室は、形成したい燃料電池の形成したい管状の支持体1の形状にほぼ対応している。
【0115】
図2aおよび図2bに示したように、射出成形金型コア12には、少なくとも1つ、特に多数の電極・電解質接合体2,2a,2b,2cを形成するためのサンドイッチ状の機能層列2,2a,2b,2cが配置されている。こうして、電極・電解質接合体が管状の支持体1の内面に配置された燃料電池を製造することができる。
【0116】
電極・電解質接合体が管状の支持体1の外面に配置された燃料電池を製造するためには、機能層列2,2a,2b,2cが、(図2aおよび図2bに示したような)射出成形金型コア12の代わりに、射出成形金型10,11の、キャビティを形成する面に被着されていてよい(図示せず)。
【0117】
図2aおよび図2bに示したように、サンドイッチ状の機能層列2,2a,2b,2cは、カソード層2aと、電解質層2bと、アノード層2cとを有している。電解質層2bは、カソード層2aとアノード層2cとの間に配置されている。
【0118】
図2aおよび図2bに示したように、射出成形金型コア12が射出成形金型10,11のキャビティ内に挿入され、次いで、射出成形金型コア12と射出成形金型10,11との間の中空室の少なくとも一部に少なくとも一種類の成分1が射出される。有利には、この少なくとも一種類の成分1は、セラミック材料および/またはガラス状材料を形成するための成分のほかに、形成したいセラミック材料および/またはガラス状材料に複数の気孔を形成するための少なくとも一種類の気孔形成剤を含有している。
【0119】
図2bに示したように、成分1の射出後、たとえば脱脂ステップおよび/または焼結ステップの前に射出成形金型コア12を取り外すことができる。このとき、形成された管状体1とサンドイッチ状の機能層列2,2a,2b,2cとは、物理的にかつ/または化学的に互いに結合されたままである。たとえば脱脂ステップおよび/または焼結ステップの間の熱処理によって、気孔形成剤が除去されて、気孔が形成される。
【符号の説明】
【0120】
1 支持体
1a 区分
1b キャップ区分
1c ベース区分
2 電極・電解質接合体
2a カソード層
2b 電解質層
2c アノード層
3 結合範囲
5 ガス供給ランス
6 支持基板
10 射出成形金型
11 射出成形金型
12 射出成形金型コア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒型の燃料電池を製造するための方法において、該方法が、以下の方法ステップ:すなわち、
a)キャビティを備えた射出成形金型(10,11)と、キャビティ内に挿入可能な射出成形金型コア(12)とを準備し、キャビティ内への射出成形金型コア(12)の挿入によって、該射出成形金型コア(12)と射出成形金型(10,11)との間にほぼ管状の中空室が形成可能であり、射出成形金型コア(12)にまたは射出成形金型(10,11)のキャビティ形成面に、少なくとも1つの電極・電解質接合体(2,2a,2b,2c)を形成するための、カソード層(2a)と、電解質層(2b)と、アノード層(2c)とを有するサンドイッチ状の機能層列(2,2a,2b,2c)が配置されており、
b)キャビティ内に射出成形金型コア(12)を挿入し、
c)特に機能層列(2,2a,2b,2c)に隣接した区分に、ガス透過性の気孔および/または開口が形成可能であるように、管状の中空室の少なくとも一部に、セラミック支持体材料および/またはガラス状支持体材料を形成するための少なくとも一種類の成分(1)を射出し、
d)該成分を固化、特に管状の中空室内に形成された物体(1)と、機能層列(2,2a,2b,2c)とを、たとえば1200℃以下の温度で同時焼結する:
を有していることを特徴とする、円筒型の燃料電池を製造するための方法。
【請求項2】
電解質層(2b)が、ナノスケールの電解質材料、特にナノスケールの二酸化ジルコニウム、たとえばナノスケールのイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を含有している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
セラミック支持体材料および/またはガラス状支持体材料を形成するための少なくとも一種類の成分(1)が、電気絶縁性のかつ/またはイオン絶縁性のセラミック支持体材料および/またはガラス状支持体材料を形成するために規定されている、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
カソード層(2a)が、機能層列の、射出成形金型コア(12)と反対の側にもしくは機能層列の、射出成形金型(10,11)のキャビティ形成面と反対の側に配置されているように、機能層列(2,2a,2b,2c)が、射出成形金型コア(12)にまたは射出成形金型(10,11)のキャビティ形成面に配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
射出成形金型コア(12)が、部分的にまたは完全に消失コアとして形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
射出成形金型コア(12)が、射出成形金型コアベースボディと、該射出成形金型コアベースボディに被せられる除去可能な支持スリーブまたは支持シートとを有していることによって、射出成形金型コアが、部分的に消失コアとして形成されており、機能層列が、たとえばスクリーン印刷、特にロータリスクリーン印刷によって、除去可能な支持スリーブまたは支持シートに被着されているか、または射出成形金型コア(12)が、完全に消失コアとして形成されていて、特に除去可能な射出成形金型コアまたは除去可能な射出成形金型コアスリーブの形で形成されており、機能層列が、たとえば曲面スクリーン印刷によって、除去可能な射出成形金型コアもしくは除去可能な射出成形金型コアスリーブに被着されている、請求項5記載の方法。
【請求項7】
除去可能な支持スリーブ、除去可能な支持シート、除去可能な射出成形金型コアスリーブまたは除去可能な射出成形金型コアの除去を少なくとも部分的に機械的に、少なくとも部分的に溶剤内での溶解によってかつ/または少なくとも部分的に分解、蒸発および/または溶融によって行う、請求項6記載の方法。
【請求項8】
方法ステップc)において、機能層列(2,2a,2b,2c)に隣接していない区分(1b,1c)が、ガス密に形成可能であるように、管状の中空室内に、セラミック支持体材料および/またはガラス状支持体材料を形成するための少なくとも二種類の成分を射出する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
管状の中空室が、形成したい管状の支持体(1)の形に少なくともほぼ対応しており、特に管状の中空室が、一端において、形成された円筒型の燃料電池を支持基板に固定するための開放したベース区分(1c)を形成するために形成されていて、他端において、閉鎖されたキャップ区分(1c)を形成するために形成されているか、または管状の中空室が、両端において、形成された円筒型の燃料電池を支持基板に固定するためのそれぞれ1つの開放したベース区分(1c)を形成するために形成されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
特に請求項1から9までのいずれか1項記載の方法によって製造された円筒型の燃料電池において、該円筒型の燃料電池が、管状の支持体(1)と、少なくとも1つの電極・電解質接合体(2)とを有しており、該電極・電解質接合体(2)が、カソード(2a)と、アノード(2c)と、カソード(2a)とアノード(2c)と間に配置された、特にガス密な電解質(2b)とを有しており、少なくとも1つの電極・電解質接合体(2)が、管状の支持体(1)の内面または外面、特に内面に被着されており、管状の支持体(1)が、一種類またはそれ以上の種類のセラミック材料および/またはガラス状材料から形成されており、管状の支持体(1)が、電極・電解質接合体(2,2a,2b,2c)に隣接した1つまたはそれ以上の区分(1a)に、ガス透過性の気孔および/または開口を有していることを特徴とする、円筒型の燃料電池。
【請求項11】
管状の支持体(1)の前記材料が、イオン絶縁性であり、かつ/または電気絶縁性である、請求項10記載の円筒型の燃料電池。
【請求項12】
管状の支持体(1)が、一方の管端部においてキャップ区分(1b)によって閉鎖されており、該キャップ区分(1b)が、ガス密に形成されている、請求項10または11記載の円筒型の燃料電池。
【請求項13】
少なくとも1つの電極・電解質接合体(2,2a,2b,2c)のカソード(2a)が、支持体(1)に隣接しており、特にアノード(2c)が、管状の支持体(1)の内室に露出されている、請求項10から12までのいずれか1項記載の円筒型の燃料電池。
【請求項14】
少なくとも1つの電極・電解質接合体(2,2a,2b,2c)のカソード(2a)が、導電性のかつガス透過性のカソード材料から形成されており、少なくとも1つの電極・電解質接合体(2,2a,2b,2c)の電解質(2b)が、イオン伝導性でガス密なかつ電気絶縁性の電解質材料から形成されており、少なくとも1つの電極・電解質接合体(2,2a,2b,2c)のアノード(2c)が、導電性のかつガス透過性のアノード材料から形成されている、請求項10から13までのいずれか1項記載の円筒型の燃料電池。
【請求項15】
管状の支持体(1)が、1つまたはそれ以上の多孔質の区分(1a)に気孔率20%以上の開気孔を有している、請求項10から14までのいずれか1項記載の円筒型の燃料電池。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【公開番号】特開2013−45772(P2013−45772A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−186622(P2012−186622)
【出願日】平成24年8月27日(2012.8.27)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】