説明

不混和性ポリマーブレンドから形成された繊維

本発明は、ソフトタッチ繊維およびかかる繊維から製造される不織布に関する。繊維は、ソフトタッチ品質につながる非相溶性ポリマー・システムを含む。繊維は、それぞれが異なる粘度を有する少なくとも2つの熱可塑性ポリマーの混合物であって、約0.5から約20mN/mの界面張力を有し、かつ、繊維表面の一部を構成する混合物を含む。繊維は、40から98パーセントのポリオレフィン連続相と2から60重量パーセントの非晶質熱可塑性樹脂分散相、例えばポリスチレンまたはポリアミドとを含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2003年1月30日出願の米国仮出願第60/443,740号の優先権を主張するものであり、その内容はその全体が参照により本明細書に含まれる。
【0002】
本発明は、ソフトタッチ繊維およびかかる繊維から製造される不織布に関する。繊維はソフトタッチ品質につながる非相溶性ポリマー・システムを含む。
【背景技術】
【0003】
ポリプロピレン不織布は、多くの医療および衛生用途で使用されている。これらの目的のためには、材料は機械的要件を満たさなければならないのみならず、許容される感触および外観をも持たなければならない。ポリプロピレン不織布はしばしば油状およびプラスチック様として記載されているので、かなり長い間、クロス様美感のポリプロピレン不織布を製造したいという要望が存在してきた。ポリプロピレン不織布の触覚を変える一つのアプローチは繊維の表面のきめ(surface texture)を変えることである。
【0004】
非相溶性ブレンドは不規則な繊維表面の繊維を形成するために使用されてきた。これらの繊維ははっきりと異なる感触を有する。しかしながら、それらは不満足な機械的性質を有し、紡糸するのが困難である。これらのブレンドを繊維の外層として、例えば複合繊維(bicomponent fiber)のシース成分として使用すると、所望の感触を与え、その上コアは紡糸性および機械的性質を提供することが見出された。
【0005】
本発明は、一連の不混和性ブレンドからの繊維の形成および生じた繊維の繊維特性の定量化に関するものであった。結果は、所望の風合いを得るための繊維表面構造の制御に究極的につながる、繊維モルフォロジーに影響を及ぼすパラメーターの理解を提供する。
【0006】
究極的目標はクロス様美感の不織布を生み出すことであるから、それらの特性を生み出すまたはそれに影響を及ぼすファクターは理解することが重要である。不混和性ブレンドが様々な条件下でどのように反応し、相互作用するかを理解することは、適切な材料選択に役立つ点で重要である。伸長流動は、最終繊維モルフォロジーを与えるであろう最終工程である。これは、繊維の表面のきめだけでなく機械的性質にも影響を及ぼすであろう。
【0007】
一般に手触りまたは風合いと言われる、布の感触は、通常品質に関連した非常に主観的な印象である。布の感触を説明するために用いられる多くの記述子がある。最も一般的なものの幾つかは滑らかさ、柔軟さ、堅さ、粗さ、厚さ、重さ、暖かさ、ざらつき、および剛性である。これらの用語は、ある特定の布がどのような感触を示すかを理解するのを助けるが、工学的目的のためには、この主観的印象を客観的に測定できる数量と関係づけることができることが重要である。カワバタ(Kawabata)は、布の機械的性質を手触りと有効に関係づけた最初の人であると一般に信じられている。カワバタ評価システム(KES)は、男性服地での使用のために1972年に開発された。KESは、布手触りを記述するために表1にリストされる16の機械的性質を用いる。
【0008】
【表1】

【0009】
Barker, R.およびScheininger, M.著、「簡単な実験室測定からの不織布の手触りの予測(Predicting the Hand of Nonwoven Fabrics from Simple Laboratory Measurements)」、Textile Research Journal、1982年に、KESの使用は布手触りを予測するのに有効であるが、実験を用いて布の一連の熱および湿気特性を測定することもまた示された。これらの特性は衣類向けを意図される布に顕著な影響を及ぼすことが示されてきた。Qmax値(伝熱の最大速度)は、布の感知される暖かいまたは冷たいタッチと良く相関する。湿気試験は、布の感知される粘湿さまたは湿気と良く相関する。
【0010】
Barkerはまた、2、3のKESパラメーターだけが布手触りの主観的な感知を予測するために必要とされることも示した。Barkerの相関のほとんどについて、2〜4の布特性だけが手触りの予測に必要とされる。重要な布パラメーターおよびKES評価から確立される相関は、布のタイプおよび最終用途の関数である。例えば、表面粗さおよび厚さはシングルニット布の手触りに良く相関するが、表面粗さおよび曲げヒステリシスはダブルニット布の手触りに良く相関する。これらの布の両方とも、重要な(相関する)測定可能なパラメーターの点で異なるが、Tシャツを製造するために使用される。
【0011】
固有特性は確かに布の美感に影響を及ぼすが、加工もまた顕著な影響を有する。不幸にも、加工がどのように特性に影響を及ぼすかの理解は定性的であるに過ぎないが、幾つかの重要な関係が観察されてきた。
【0012】
材料の輝きおよび光沢は、繊維のモルフォロジーおよびその断面によって大きく影響を受ける。布の透明性は繊維のモルフォロジーならびに糸および/または布の構造によってほとんど専ら決定される。風合いは3つのクロス特性(剛性、柔軟さ、および嵩高さ(単位重量当たりの厚さ))によって主として決定される。剛性のようなファクターは、ポリマーの固有の剛性によって影響を受けるであろうが、また(および時々より重要に)繊維加工および/または布構造によっても影響を受けるであろう。
【0013】
糸および/または布構造の影響は、材料の性質と同じくらい少なくとも決定的に重要である。剛性は、剪断弾性率および摩擦係数に依存する布の曲げ剛性によって決定され得る。これらの特性の両方とも膨潤および従って湿度によって影響を受ける。繊維および布の滑らかさの増加は布の柔軟さを増加させる。より高い嵩高さの糸は、より良好な風合いおよびドレープ性、より高い被覆率、ならびにより大きな着心地の良さの布を与えるであろう。風合いおよびドレープ性は布構造および布の後処理により強く影響を受ける。例えば、Van Krevelen,D.W.著、「それらの化学構造との相関関係;追加グループ寄与からのそれらの数値推定および予測(Their Correlation with Chemical Structure; Their Numerical Estimation and Prediction)」、ポリマーの特性(Properties of Polymers)、第3版、Elsevier, Amsterdam, Oxford, New York, Tokyo、1990年を参照されたい。
【0014】
ポリエステル繊維および布に関してヤマグチ(Yamaguchi)ら(米国特許第4,254,182号明細書)によって行われた先行研究は、繊維摩擦が布手触りとよく相関することを示している。布手触りの改善が実現されるために動摩擦係数は本質的に一定のままであるのに、静摩擦係数は増加すべきである。全体的な摩擦係数を単に増やすだけでは布手触りを改善しない。少なくとも1.7の静摩擦対動摩擦の比が布手触りを著しく変えるために必要とされる。該比の実際の値はポリエステルで見られるものとは異なりそうであるが、同様な傾向がポリオレフィン繊維についても予期される。
【0015】
複合繊維は、異なる化学的および/または物理的性質の2つのポリマーよりなり、同じ紡糸口金から押し出され、同じフィラメント内に両方のポリマーが含まれている。
【0016】
複合繊維構造物の多くの変形があり、2つの最も簡単なおよび最も一般的なものは、サイド−バイ−サイドおよびシース−コア構造物である。海島(islands-in-a-sea)構造の複合繊維といった、多くの他の複雑な複合構造物を、ユニークな繊維特性を生み出すために製造することができる。
【0017】
複合繊維紡糸は、モノフィラメント繊維紡糸に似ているが、多数の流れの組合せのためにより複雑である。最も一般的な二成分紡糸配置は、各成分につき1つの、2つの押出機および2つのメルトポンプを用いることである。次に2つの流れは紡糸口金で組み合わせられて所望の複合繊維を形成する。
【0018】
2つの成分流れを得るために用いられる方法に関係なく、それらはそれぞれ多数のチャネル中へ分割され、紡糸多岐管にフィードされる。二成分紡糸多岐管は、2つの別個のメルト流れを供給するよう特にデザインされる。明らかに、これらの多岐管は伝統的なモノフィラメント多岐管より複雑であるが、コンセプトは変わらない。2つの成分流れの多数のチャネルは、多数のより小さな流れへさらに分離され、紡糸口金開口部で、あるいはその直前で組み合わされる。
【0019】
2成分間の界面の形状は、紡糸口金内の分離要素の形状および位置を調節することによって変えられる。成分の比は、メルトポンプのスピードを単に調節することによって変えることができる。
【0020】
複合繊維の幾つかの現行用途は、バインダー繊維または自己捲縮繊維としての用途である。バインダー繊維は、バインダー材料をシースとして使ったシース−コア構造を利用する。PPコアおよびPEシースは、この目的のために用いられる一般的な複合繊維である。自己捲縮繊維はサイド−バイ−サイドまたは偏心シース−コア構造を利用する。シース−コア構造はまた、非対称断面で形成されてもよい。サイド−バイ−サイド構造は、界面で形成される内部応力による分割に関連した問題を有する傾向があるので、偏心シース−コアが多くの場合に好ましい。繊維にわたった配向の差は、繊維の一様でない収縮のために捲縮を引き起こす。シース−コア構造はまた、高価なポリマーまたは添加剤の便益をかなりのコスト節減で実現するために用いられる。コアは比較的安価なポリマーよるなるが、高価な成分はシースに加えられる。
【0021】
不織布は、製織またはニッティング以外の方法によって製造された布を記述するために用いられる広範な用語である。ポリプロピレンは、ステープルファイバーが475,000,000ポンド、メルトスパン布が400,000,000ポンド使用される状況において、年(1994年)当たりおおよそ10億ポンドの不織布に使用されている。個々の繊維は、ウェブと呼ばれる非接合収集物へ配置される。繊維ウェブを製造するための3つの一般的な方法(ドライ−レイド、ウェット−レイド、およびメルトスパン)がある。
【0022】
ドライ−レイド・システムは一般に長さ0.5〜1.5インチのステープルファイバーでスタートし、平方ヤード当たり1〜90オンスの基本重量の布ウェブを生み出すことができる。カーディングおよびエア−レイドが2つのドライ−レイド法である。カーディングは一連の針でカバーされたローラーを用いて繊維をウェブへ配置する。ウェブは優先的な流れ方向偏りを有する。布配向はカードウェブを交互の流れ方向に積み重ねることによって変更することができる。エア−レイド・システムは空気のジェットを用いて繊維を懸濁させ、ベルトまたはスクリーン上へそれらを沈積させる前に交差方向配向を追加する。この方法は、ある程度等方性のウェブを生じさせる。
【0023】
ウェット−レイド法は製紙で用いられる方法に非常に似ている。短いステープルファイバー(<10mm)を用いて平方ヤード当たり0.3〜16オンスのウェブを生み出す。繊維は化学薬品および水と混ぜ合わされてスラリーを形成する。スラリーは移動ワイヤ・スクリーン上へ沈積され、そこで過剰の水が乾燥前に除去される。一様なウェブがこの方法で迅速に生み出される。ウェット−レイド・システムは、ドライ−レイドより100〜1000倍速い速度で布を製造することができるが、システムを通してポンプ送液し、布から除去しなければならない大量の水のために、はるかに多いエネルギーを必要とする。
【0024】
メルトスパンまたはポリマー−レイド法はポリマー押出専用の装置を用いる。この方法は、紡糸口金を通して押し出された連続繊維を利用して平方ヤード当たり0.5〜20オンスのウェブを生み出す。押し出された繊維は移動ベルト上にレイダウン(laid down)されて連続ウェブを形成し、それは次に機械的にまたは熱的に接合される。
【0025】
繊維ウェブの接合は、機械的、熱的、化学的接合によって起こるが、これらの方法の組合せもまた用いられてもよい。機械的接合は、ニードル・パンチングまたはスパンレーシング法によって繊維を絡ませることによって機能する。これらの方法は、低重量布で顕著である繊維密度を(ウェブの全体にわたって)絡み合いが変えるので、高基本重量布に最も適している。
【0026】
ニードル・パンチングはとげのある針を用いてウェブ表面に垂直に繊維を絡ませる。針は、繊維ウェブに垂直に移動する板中へセットされている。針は繊維ウェブに貫入し、次に、取り出し時に繊維を引っ張り、繊維ウェブを絡ませ、不織布を形成する。接合は、針タイプ、濃度、および/またはウェブスピードを変更することによって容易に変えることができる。
【0027】
スパンレーシングはまた水絡ませ(hydroentangling)または液体ニードル・パンチングとも一般に言われる。そのコンセプトは、ニードル・パンチングに非常に似ているが、水ジェットが針の代わりに用いられる。ウェブは穴の開いたベルト上に置かれ、水ジェットの上方を通され、それは繊維を絡ませてウェブを形成する。
【0028】
熱接合は、熱および/または圧力を用いて熱可塑性繊維を融合するために用いられる。通気接合および放射熱源接合は、溶融して冷却時にウェブの全体にわたって溶接点を形成するバインダー繊維または粉末を使用する。超音波振動が、ウェブの局所的区域に迅速な圧縮力を加えるために用いられる。圧縮は、繊維を軟化させてそれらを接合する熱を生み出す。熱カレンダリングは2つの加熱ロールを用いて熱および圧力によって繊維を接合する。バインダー繊維が、溶融しない繊維の接合を改善するまたは接合を可能にするために使用されてもよい。ロールの1つは彫刻されていてもよく、それは布の全体にわたって接合パターンを形成するであろう。接合の量は、温度、圧力、および/または彫刻パターンを変更することによって変えることができる。
【0029】
化学接合は、ウェブに溶着され熱的に硬化されて接合構造を形成するポリマー溶液を使用する。ポリマー溶液はウェブ表面上へスプレーされ、ウェブ中へ飽和され、またはウェブ上にプリントされてもよい。スプレー接合は一般により弱いウェブをもたらすが、飽和接合は一般により堅い布をもたらす。プリント接合は様々な程度の接合を可能にし、布特性をより良く制御することができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の一態様は、不織布を形成するために使用される時に、許容される加工特性をまた維持しながら、許容される強度と共にクロス様美感を有する不織材料を生み出す繊維である。我々は、少なくとも3つの熱可塑性ポリマーを含む複合繊維であって、該ポリマーの少なくとも2つの混合物が0.5から20mN/mの界面張力、1.5以上10までの粘度比、または0.05以上0.1までの粘度比を有し、混合物が繊維表面の一部を構成する複合繊維を今見出した。この繊維は、良好な機械的性質を維持しながら、優れた手触りまたは感触特性を有する。
【0031】
本発明の別の態様では、我々は、0.5から20mN/mの界面張力、1.5以上10までの粘度比、または0.05以上0.1までの粘度比を有する、少なくとも2つの熱可塑性ポリマーの混合物を含む繊維であって、該混合物が繊維表面の一部を構成する繊維を見出した。好ましくは、この繊維は複合繊維、特にシース・コア複合繊維を含む。この実施形態では、混合物がシースを構成し、特に混合物は(全体繊維の)20容量パーセント未満を構成することがより好ましい。コアは、ポリプロピレンポリマー、例えばホモポリマープロピレンポリマーを含むことができる。
【0032】
複合繊維の追加の実施形態では、混合物はマトリックス・ポリマーと分散ポリマーとを含むことができる。マトリックス・ポリマーは少なくとも10℃もしくは分散ポリマーの融点より低い融点を有することができ、または分散ポリマーは非晶質であり、マトリックス・ポリマーの融点より10℃以下低いガラス転移温度を有する。より好ましくは、シース中のマトリックス・ポリマー、およびコアはそれぞれ互いから30パーセント内の粘度を有する。混合物は250℃で100 1/秒で170Pa・秒以下の粘度を有することができる。分散ポリマーは、1ミクロンより大きい平均厚さを有する微粒子形状にあることができる。好ましくは、シースは粒子の厚さより小さい厚さを有する。
【0033】
本発明の追加の態様では、繊維(例えば、ホモフィラメントまたはシース−コア複合繊維のシース)の表面は(a)40〜98重量パーセントのポリオレフィン連続相と(b)2から60重量パーセントの非晶質熱可塑性分散相(例えば、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド;スチレンコポリマー例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー);および/または熱可塑性ポリウレタンと(c)0から約20重量パーセントの相溶化剤とを含むことができ、ポリオレフィンのメルトインデックスに対する分散相のメルトフローレートの比は2未満である。
【0034】
別の態様では、我々は、少なくとも2つの熱可塑性ポリマーの混合物を含む繊維であって、該混合物が分散ポリマーとマトリックス・ポリマーとを含み、分散ポリマーが1ミクロンより大きいサイズを有する微粒子形状で存在し、繊維表面の一部を構成する繊維を見出した。好ましくは、分散微粒子は繊維表面上に凸凹を形成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
「マトリックス」とは、光学顕微鏡法で明らかなように、混合物の連続相を意味する。「分散」とは、同様に光学顕微鏡法で明らかなように、混合物の不連続相を意味する。
【0036】
繊維は、例えば、シース/コア、サイド−バイ−サイド、三日月、三葉、平坦(リボン様)、円形を含むがそれらに限定されない、多くの形状を有することができる。
【0037】
混合物から製造される加工品は、通常のポリオレフィン加工技術のすべてを用いて加工されてもよい。有用な物品には、一般に、フィルム(例えば、キャスト、ブローンおよび押出被覆)、繊維(例えば、ステープルファイバー(繊維の表面の少なくとも一部として本明細書で開示される混合物の使用を含む))、スパンボンド繊維またはメルトブローン繊維(例えば、米国特許第4,430,563号明細書、米国特許第4,663,220号明細書、米国特許第4,668,566号明細書または米国特許第4,322,027号明細書に開示されているシステムを用いる)、およびゲルスパン繊維(例えば、米国特許第4,413,110号明細書に開示されているもの)、織布および不織布の両方(例えば、米国特許第3,485,706号明細書に開示されているスパンレースド・システム)またはかかる繊維(これらの繊維と他の天然または合成繊維とのブレンドを含む)から製造された構造物および成形品(例えば、射出成形品、ブロー成形品またはロトモールド品)が含まれる。混合物はまた、真空成形操作のためのシート押出だけでなく、ワイヤおよびケーブル被覆用途でも有用である。
【実施例】
【0038】
非相溶性ブレンドのマトリックスおよび分散相のための材料は、ブレンド特性の範囲をカバーするように選択する。ダウ・ケミカル(Dow Chemical)によって生産される5D49ポリプロピレン(PP)は不織布で使用される標準PP材料であり、容易に紡糸でき、かつ、良好な機械的性質を有するので、それをこれらの実施例でコア材料として使用する。純粋なものから製造された繊維が実験のための対照である。
【0039】
ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン樹脂はコア材料と相溶性である(すなわち、シースとコアとの間が低い界面張力である)ので、それらをこれらの実施例でマトリックス材料として使用する。ブレンド・モルフォロジーに影響を有するかもしれない密度(結晶化度)の異なる2つのPE樹脂を使用している。ポリスチレン(PS)およびポリアミド−6(PA-6)はPEおよびPPの両方と不混和性であるので、それらを使用している。樹脂およびそれらの一般的な規格を表2にリストする。
【0040】
【表2】

1)ダウ・ケミカルによって生産された
2)BASFによって生産された
3)相対(溶液)粘度
【0041】
MFRはメルトフローレート(グラム/10分)であり、米国材料試験協会(ASTM)D1238、示された温度で2.16kg重量を用いて試験する。密度はASTM D792に従って測定する。PP−ホモ5D49はホモポリマーポリプロピレンである。PP−RCP6D43はポリプロピレンのランダムコポリマーであり、コモノマーとしてエチレンを使用する。アスパン6842は、チーグラー(Ziegler)タイプの触媒を用いて製造されるエチレン/1−オクテンコポリマーである。アフィニティ1300は、米国特許第5,272,236号明細書および米国特許第5,278,272号明細書に従って制約ジオメトリー触媒技術を用いて製造されるエチレン/1−オクテンコポリマーである。スタイロン484は耐衝撃性ポリスチレンである。本開示における複合フィラメントは、38MFRの通常のチーグラー−ナッタ(Ziegler-Natta)触媒ビスブロークン・ポリプロピレンホモポリマー、例えば米国特許第5,486,419号明細書(例えば8欄、行16を参照されたい)に開示されているもののコアを使用することができる。
【0042】
樹脂、特にポリエチレンおよびポリプロピレンは押出および繊維紡糸のために意図されているので、それは、熱および酸素への暴露中にその分子量および分子量分布を保持するために、当該技術で周知であるように、安定化を必要とする。かかる安定化は、触媒酸中和および熱安定化のために必要な化合物を含む。酸化防止剤およびホスファイトのクラスの後者化合物は、酸素の存在下で熱いポリマーメルト中に形成される酸素およびペルオキシラジカルを無効にするのに役立つ。
【0043】
好適な酸受容体は、金属ステアレート(例えば、Ca、Zn、またはMgのステアレート)、金属酸化物(例えば、ZnO)、ならびに中性および合成ハイドロタルサイトのような化合物を(必ずしも専らではなく)含むことができる。典型的なレベルは100〜1500重量ppm、好ましくは1000ppm未満、最も好ましくは200〜500ppmである。
【0044】
酸化分解に抗する安定化は、酸化防止剤(例えば、フェノーリック例えば、テトラキスメチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)メタン(CAS#6683−19−8)、またはオクタデシル3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート(CAS#2082−79−3)、またはトリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(CAS#27676−62−6)、または3,3’,3’,5’,5’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール(CAS#1709−70−2))およびプロセス安定剤(例えば、ホスファイト例えばトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(31570−04−4)、またはビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(CAS#26741−53−7)、またはテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレン−ジホスホナイト(CAS#38613−77−3))のクラスの化合物を最もしばしば使用する。かかる化合物(フェノーリックおよびホスファイト)は単独でまたは組み合わせて使用することができる。組合せでは、個々のフェノーリックまたはホスファイト化合物の濃度は、それぞれ典型的には250〜1500重量ppm、好ましくは1500ppm未満、最も好ましくは500〜1000ppmの範囲にある。PSおよびPA−6の使用は、探索されるべき界面張力の差だけでなく、粘度比の差も可能にする。2つのPA−6樹脂の使用は、同じ界面張力で異なる粘度比を可能にする。250℃で100〜1000 1/秒での各樹脂の粘度を図1に示す。各ブレンドの250℃での界面張力を表3に示す。
【0045】
【表3】

【0046】
すべてのブレンドを、30分間作動させる混練ブレンダーを用いて先ず乾式ブレンドする。6つのPA−6ベースのブレンドを、溶融ブレンディング前にノバテック(Novatec)ドライヤー中90℃で少なくとも24時間乾燥する。ドライヤーは25cfmの空気流量を有し、乾燥の継続期間中−40℃の露点を維持する。ブレンドをドライヤーから取り出し、押出機ホッパーに直接入れる。
【0047】
溶融ブレンディングは、32のL/DのZSK30mm共回転二軸スクリュー押出機を用いて達成される。ホッパーは振動フィーダーを用いて樹脂を押出機中へフィードする。低い湿気含有率を維持するために、3つの窒素パージ(ホッパー中、押出機の口中、および第2加熱ゾーンでの押出機のバレル中の)を用いる。
【0048】
これらのブレンドを製造するために使用するポリマーは不混和性であるので、高強度のスクリューデザインを高度の混合を可能にするために用いる。出口温度はすべてのブレンドについて250℃であったが、PA−6樹脂については温度プロファイルを変更した。ナイロン樹脂はPSブレンドのために用いられる条件ではうまく加工されない。それ故、PA−6ブレンドのより容易な加工を可能にするために温度プロファイルを高める。押出機のスピードをまた、溶融のためのより多くの時間を与えるために遅くする。押出機中の剪断速度はスクリューrpmとほぼ同じオーダーの大きさであると予期される。それ故、スクリュー・スピードの変更はブレンド・モルフォロジーに大きな影響を有するとは予期されない。
【0049】
ダイを出ると、ブレンドは水浴に入り、風乾され、ペレット形へチップ化される。あるナイロン・ブレンドは十分にチップにならず、短い水浴および高温のためにペレットの架を形成する。これらのブレンドを、架をバラバラにするために混練し、さらに手動で分離する。次にすべてのPA−6ブレンドを、ブレンディング前に用いたのと同じ条件下でノバテック・ドライーで乾燥し、窒素下でシールする。
【0050】
すべてのブレンドは、PEまたはPPマトリックス中に30パーセント(v/v)分散相(PSまたはナイロン)を含む。これは、分散相の最適レベルでありそうもないが、効果が目立つレベルであろう。分散相のこのレベルはまた、起こり得る相反転の領域(一般に40〜60パーセント)が避けられるであろうほど十分に低い。
【0051】
繊維紡糸
すべての繊維紡糸はヒルズ(Hills)複合繊維ラインで行う。該ラインは、2.4cc/回転メルトポンプに連結された2つの1インチ押出機を含む。3.4:1〜4:1 L/Dを有する144の0.35〜0.65mm丸穴付きで、シースとしてサイドAを、コアとしてサイドB付きの、ヒルズのシースおよびコア二成分紡糸パックをすべての繊維紡糸のために用いる。推定直径は、さらなる機械延伸なしに、溶融延伸によって得られる。ダイを出ると、冷やした急冷空気(14±2℃)を用いて溶融繊維を凝固させる。次に繊維を、巻取機で巻き取る前に2つのセラミック被覆冷ロール上で延伸する。冷ロールおよび巻取機の両方とも、何の冷延伸も起こらないように同じスピードで動作する。
【0052】
延伸速度の影響を、様々な紡糸スピードでサンプルを採取することによって調査する。すべてのサンプルについて、未延伸繊維を集める。紡糸可能であるそれらのサンプルについて、3つ以下の追加条件で(500mpm(巻取機での最低セッティング)で、4デニール繊維を生み出すために必要とされるスピード(20パーセント・シースについては1000mpmおよび12.5パーセントシースについては900mpm)で、ならびに破断なしの最速可能スピードで)サンプルを集める。所与の紡糸条件で破断が繰り返し起こる場合、ブレンドは当該スピードで紡糸不可能であると考え、より高速は試験しない。
【0053】
5D49PP樹脂がすべてのブレンドについてコア材料である。光学顕微鏡法下でシースおよびコア構造を観察することがより容易であるように、青いPP染料をおおよそ1〜2パーセント(v/v)でコアに添加する。ホッパーに入れる前に、染料を手動で添加し、5D49とドライブレンドする。未延伸繊維をカットし、生み出された繊維が所望のシース/コア構造を含むことを確実にするために断面を光学顕微鏡法下で観察する。
【0054】
PA−6ブレンドが湿気に暴露されないことを確実にするために特別の注意を払う。1回に1つの袋だけを開き、窒素パージを含むホッパーへ直接注ぎ込む。いったんブレンドをホッパーから取り出すと、再使用する前にそれを(ブレンドを最初に乾燥するために用いた同じ条件下で)再乾燥する。
【0055】
すべてのサンプルについて、両押出機を750psiの一定出口圧力で運転した。これはメルトポンプへの入口圧力である。両押出機中の温度プロファイルは、スピンヘッドもまた250℃に維持して、ゾーン1から4までそれぞれ189、225、235、250℃である。溶融温度はすべてのサンプルについて241から244℃の範囲である。
【0056】
シース対コア比の影響を観察するために、2つのシーツ対コア比を考慮する。シース対コア比は、メルトポンプのスピードを変更することによって変えられる。各ブレンドについて、コアを一定の67.2g/分(28rpm)でポンプ送液し、シースを16.8g/分(7rpm)および9.6g/分(4rpm)の両方でポンプ送液する。前者のシース流量は20パーセント・シース(容量で)の繊維を生み出すが、後者は12.5パーセント・シースの繊維を生み出す。これはまた、所与の紡糸スピードで繊維の全体厚さを増やすであろう。
【0057】
キャラクタリゼーション
レオロジー
レオロジー・データを、パラレルプレートおよびキャピラリーレオメーターを用いてすべての純樹脂およびブレンドについて得る。パラレルプレートレオメーターはレオメトリックス(Rheometrics)RMS−800(シリアルナンバー021−043)である。キャピラリーレオメーターはゲットフェルト・レログラフ(Goettfert Rheograph)2003である。パラレルプレートレオメーターのみに窒素パージを備え付ける。パラレルプレートレオメーターは0.1〜100ラジアン/秒のデータを与え、キャピラリーレオメーターは100〜10,000 1/秒のデータを与える。
【0058】
パラレルプレートサンプルについては、25mm直径、2mm厚さプラークを作製する。これは、先ず液圧プレスを用いて2mm厚さの正方形プラークを作り出すことによって行う。プレスは、PE、PPおよびPSサンプルについては405°F、PA−6サンプルについては450°Fの温度、および5分の滞留時間で動作する。一度取り出して、パンチを用いてレオメーターで使用される25mm直径ディスクを作製する。
【0059】
PA−6含有サンプルに対しては特別の注意を払う。すべてのPA−6サンプルは、試験前に、窒素下の真空オーブン中90℃で少なくとも48時間乾燥する。ナイロンを、プラークを作製する直前に真空オーブンから取り出し、できるだけ直ぐにレオメーター中に入れる。液圧プレスおよびレオメーターは両方とも窒素パージ下で動作する。
【0060】
パラレルプレートレオメーターは25mmプレートを使用し、250℃の温度で動作する。プレートは2mmプラークを1.5mm(またはそれ未満)に圧縮し、プレートのエッジ上の樹脂は取り除かれる。8分の平衡期間が、第1データ・ポイントが採取される前に用いられる。用いられる変換器は0.2〜200g・cmの範囲を有する。歪み速度を、第1データ・ポイントについて0.2g・cmより大きいトルク値を得るために調節する。次に0.1〜100ラジアン/秒の周波数掃引を各サンプルについて用いる。最高剪断速度は200g・cmより高いトルク値をもたらす可能性があり、それらは変換器範囲外であるので、それ故除外される。
【0061】
キャピラリーレオメーターもまた250℃で動作するが、窒素パージを持たない。しかしながら、ナイロン含有サンプルは試験前にパラレルプレートについて用いる同じ条件下で乾燥する。
【0062】
較正前に装置を少なくとも1時間運転温度に加熱する。12mm直径および20:1 L/Dのダイを用いる。200バール圧力変換器を用いる(すべての成分のメルトフローレートは十分に高いので)。試験を開始する前にポリマーを4分間溶融させる。100〜10,000 1/秒の周波数掃引を各サンプルについて用いる。
【0063】
繊維紡糸
このラインでの先行複合繊維作業に基づいて、凝固ポイントはすべての延伸繊維についてダイの下方おおよそ100cmであると予期される。これは、すべての繊維についておよそ10秒−1の伸長速度に相当する。
【0064】
表4は、20パーセント・シースおよび12.5パーセント・シースについて集められたサンプルを示す。より低いシース容量はより良好な紡糸性につながることが非常に明らかである。6D43ブレンドは所与の分散相用のどちらのPEマトリックス材料より高い粘度を有し、それはなぜ6D43ブレンドの紡糸性が最低であるかを説明しそうである。スタイロン・ブレンドは任意の所与のマトリックス材料について最高粘度を有し、それは繊維の紡糸性を最低であるようにする(任意の所与のマトリックス材料について)。BS−400ブレンドは所与のマトリックス材料について最低粘度を有し、それはそれらの紡糸性を最高であるようにする。
【0065】
【表4】

【0066】
すべてのサンプルにラベルを付け、ブレンド番号、シース比、および紡糸スピードに基づいて参照を付ける。対照繊維は「Cnt」としてリストされている。ブレンド番号は表4に示す数であり、シース比はメルトポンプのrpmによってリストされている(例えば、12.5パーセント・シースについては4および20パーセント・シースについては7)。「un」は未延伸繊維を表す。紡糸スピードはm/分単位でリストされ、サンプルは「ブレンド番号−rpm−紡糸スピード」としてリストされている。それ故、B8−4−500は、500m/分で延伸された12.5パーセント・シースのアフィニティ/BS−400よりなる繊維である。
【0067】
顕微鏡法
顕微鏡法を用いて元のブレンドならびにそれらから形成された繊維中の分散相のサイズを分析する。当初ブレンドを観察するために、9ブレンドのそれぞれの光学顕微鏡写真を撮る。各ブレンドのプラークを、少量(おおよそ2グラム)のサンプルを250℃に加熱し、それを2片のアルミニウム間で10,000psiで15秒間圧縮し、それを冷却して室温に戻すことによって作製する。
【0068】
3.5μm厚の切片を、−120℃で操作されるウルトラカット(UltraCut)Eミクロトームでダイヤモンド・ナイフを用いて各プラークのエッジから取る。該切片の幅は元のプラークの厚さに等しく、サンプル間で僅かに異なる。該切片を、一滴の液浸油を含むガラス顕微鏡スライドに移す。サンプルを、いかなる湿気も逃すために15分間カバーしないままにする。カバー・スリップを付け、画像を光学顕微鏡で観察して小水滴が存在するかどうかを測定する。画像を、40倍および100倍対物レンズの両方を用いるオリンパス・ヴァノックス(Olympus Vannox)S複合光学顕微鏡およびニコン(Nikon)DXMデジタルカメラを用いて集める。撮られた画像の例を図2に示す。
【0069】
分散相とマトリックス材料相との間には十分なコントラストがないので、画像処理ソフトウェアは該2層間を正確に識別することができない。しかしながら、相境界線は人間の眼では容易に識別可能である。それ故、画像を印刷し、薄い黒色マーカーを用いて分散領域のそれぞれの輪郭を描く。この新たな画像をスキャンして、アドビ・フォトショップ(Adobe Photoshop)5.0で開く。画像を二値画像に変換し、分散相のサイズを、ライカ・クイン(Leica Qwin)画像処理ソフトウェアを用いて計算する。該ソフトウェアは、各領域の長さを測定し、丸み係数を計算し、その係数から等価直径が求められる。
【0070】
繊維を横方向に観察するために、SEMおよび光学顕微鏡法技術を用いる。SEM画像を撮るために、各サンプルを、カーボンテープでカバーされたアルミニウム・サンプル・スタブ上に取り付ける。カーボンペイントを用いて繊維の末端をテープにさらに接着する。取り付けたサンプルを、デントン・バキューム(Denton Vacuum)DV−502Aクロム・スパッター・コーターを用いて200Åのクロムで被覆する。該コーターを最初に5×10−7トル未満に真空にし、次に5×10−3トルのアルゴンガスを導入する。4mAの電流を流してプラズマを生み出す。クロムターゲットを用いて固定サンプルを100Åにスパッタリングし、次にサンプルをおおよそ25rpmで回転させ、追加の100Åを付着させる。振動石英結晶を用いてスパッタリングされたコーティングの厚さを測定する。
【0071】
4パイ・デジタル画像収集システム付き日立S−4100電界放射型走査電子顕微鏡、NIH画像ソフトウェア、5kV加速電圧、および8〜12mmの作動距離を用いてSEM画像を撮る。画像を、すべてのサンプルについて50倍、100倍、250倍、500倍および1100倍で撮り、ティフ・フォーマット(tif format)に保存する。より高い倍率の画像(7000倍以下)をまた、個々のサンプルの特有の表面特徴を見るために撮ってもよい。
【0072】
SEM画像ははるかに良好な鮮明度を可能にし、光学顕微鏡法より視覚的によりアピールする画像を与える。しかしながら、画像処理ソフトウェアは暗画像と暗背景とを識別するのが困難である。従って、画像は現在入手可能な画像処理ソフトウェアでは容易に使用できない。加えて、画像全体に焦点が合っていて、より遠くの対象はより小さく見えるであろうから、高さを正確に測定することは困難である。これらの画像はまた、光学顕微鏡法画像より撮るのにより時間およびコスト集約的でもある(分対時間)。これらの画像は、繊維の表面特性への洞察を提供する点で、かつ、他の方法によって得られたデータを確認する点で有用であるが、何の定量的分析も行われない。
【0073】
繊維の定性的評価を可能にするために、個々の繊維をガラス顕微鏡スライド上に置き、各末端において両面接着テープで適所に保持する。当初ブレンドに対して用いたものと同じ顕微鏡およびデジタルカメラを用いて、しかしおおよそ600μmの長さを許容するために20倍対物レンズを使って、繊維を光学顕微鏡法下で観察する。画像処理ソフトウェアが繊維と背景とを識別できるようにアドビ・フォトショップ5.0を用いて、画像が水平であるように画像を回転させ、二値(黒および白)画像へ変換する。写真が水平であると見られるまで、写真をグリッドに対してマニュアルで回転させる。
【0074】
二値画像を、閾値限界をマニュアルで調節することによって生み出す。グレー−スケール写真中の目立った表面凹凸を観察し、背景を白に保持しながら凹凸が黒中に含まれるまで当該閾値を調節する。全体繊維が白背景上で黒であるように繊維の中心を塗りつぶす。元画像および二値画像の例をそれぞれ図3および図4に示す。
【0075】
表面凹凸を、光学顕微鏡法を用いる2つの方法によって定量化する。これらの方法は妥当ではあるが、光学顕微鏡法の使用は精度を制限する。サンプル間の小さい差(すなわちミクロンオーダー)は分からないであろうが、大きな差は容易に識別できるであろう。従って、これらの方法は相対比較、および他の方法の結果をサポートすることを意図される。第1方法(長さ−差方法)はサンプルの直線長さ、繊維表面の実際の長さおよびピークの数を与える。これは、繊維表面の凹凸の相対測定を提供する。第2方法(高さ分布方法)は、繊維表面の高さ分布および各凹凸の最大高さを与える。各方法は、各サンプルについて5反復実験を用いる。
【0076】
長さ−差方法は二値画像をトップおよびボトム部分へとカットする。ライカ・キューウィン(Qwin)ソフトウェアを用いて各二値画像の直線長さおよび各画像の表面長さを測定する。表面が完全に滑らかであれば、表面長さは直線長さに等しい。表面長さと直線長さとの大きな差は、大きいまたは多数の表面凹凸を示唆する。図5は、表面長さと直線長さとの間にかなりの差がある例を示す。
【0077】
データをエクセルへコピーし、曲線長さと直線長さとの差を、直線距離の100ミクロンにつき計算する。長さの差は表面凹凸の数を明らかにしない(すなわち、多くの小さな隆起は少ない大きな隆起と同じ結果を有する)ので、キューウィンはまた画像表面上のピーク(トップと言われる)の数もカウントする。キューウィンは、画像表面のトップ上のピーク測定できるに過ぎないので、ピークがカウントされるためにボトム画像を180°回転させる。トップの数を用いて高さの差を標準化する。これは比較的迅速で容易な試験であり、様々な繊維の定性的比較を可能にするが、ピークのサイズについて定量的値を与えない。
【0078】
高さ分布方法は、繊維表面上のピークのサイズを測定するために用いられる。各ピークの高さとシース厚さの和は分散相の直径に等しいと予期される。これは、分散相がシース中にだけ含まれる(すなわち、コア中へ貫入しない)こと、かつ、分散領域が球形であることを仮定している。フォトショップを用いて方法1で用いられた二値画像を2ピクセル離れて間隔の開いた一連の垂線へと変換する。これは、おおよそ475線の繊維画像の描写(図6)をもたらす。線入り画像をおおよそ半分にカットして2つの(トップおよびボトム)線入り画像をもたらす。各画像の線が測定され、記録される。
【0079】
このデータから、最小より上の繊維表面の高さ分布を生み出すことができる。多くのサンプルについて、ベースとなる繊維直径が一定ではないので、この情報は誤解を招く恐れがある。あるサンプルでは、直径は500μm長さにわたって5倍ほど変わるかもしれない。これは、繊維長さに沿って様々な部分で合体するシース材料のためであると考えられる。それ故、可動表面高さが繊維の各部分に必要とされる。可動表面高さは、繊維表面に沿って相対繊維最小および最大を見いだすことによって計算される。
【0080】
相対最小および最大を測定するために、イフ−ゼン(if-then)ステートメントをエクセルで用いてその周囲高さに対してある形体の高さを測定する。あるポイントでの高さが両方の周囲ポイントより高い場合、それは局所最大とみなされる。そのポイントが次のポイント未満であり、かつ、先行ポイントに等しいまたはそれ未満である場合、それは局所最小とみなされる。これは、平らな繊維表面の場合には、局所最小の先行ポイントが最小に等しいであろうから、平らな繊維表面を最小としてカウントすることを許容する。凹凸のサイズは、最も近い前のおよび先行する最小の平均値から該局所最大を差し引くことによって求められる。
【0081】
繊維摩擦
繊維摩擦は、ASTM D3412に記載されるキャプスタン(Capstan)法に類似の試験方法を用いて静的および動的条件で評価される。該標準は、図7に示されるように、一端に一定張力(T)および反対端に測定張力が加わった固定糸付き糸被覆シリンダーを回転させることを要求する。
【0082】
糸スプールを糸−被覆シリンダーの代わりに用いる。糸のある部分をスプール上に垂らしてかけ、10g質量を一端に取り付け、反対端を張力計に取り付ける。シリンダーの垂れ下がっている質量の側の90°に、で225mL容器を取り付ける。PPペレットの形で、増加質量を容器に追加して動きを誘発する。容器はおおよそ100gのペレットを保持することができる。追加質量が必要とされる場合、ポリマーを加える前に最初に100g質量を容器に加える。スプールが動き始めるまでゆっくりと質量を追加する。このセットアップの略図を図8に示す。糸の反対端における張力は、10毎秒の実効(平滑化)速度について毎100読みを平均して1000毎秒の走査速度で記録される。
【0083】
得られる最大張力(糸が滑り始める直前の張力)を用い、方程式(1)を用いて静摩擦係数を計算する。スプールは僅かに異なるサイズのものであるので、繊維接触の長さだけでなくラップ角もサンプル間で僅かに異なる。方程式(1)はラップ角の差を計上しているが、接触長さを計上していない。それ故、摩擦係数値は25cmの接触長さに標準化される。
【数1】

(式中、
=加えられるインプット張力(10g)
=測定される最大張力
θ=TとTとの間のラジアン単位のラップ角)
【0084】
引張試験
不混和性ブレンドの機械的性質への影響を測定するために、繊維サンプルを引張強度および伸びについて試験する。紡糸スピードだけでなく様々なシース組成物も試験する。シースは何の感知できる強度も持たないであろうと仮定する。従って、繊維の引張特性はコアのみの関数であろう。12.5パーセントおよび20パーセント・シースの繊維は対照材料の強度および伸び特性の87.5パーセントおよび80パーセントを有するであろうと予期される。表5は、引張試験を受ける繊維のまとめを示す。
【0085】
【表5】

【0086】
各繊維サンプルの4〜6反復実験を、ASTM D−882に従って、4インチのゲージ長さを有するインストロン(Instron)4501引張試験機および20インチ/分の速度を用いて行う。
【0087】
レオロジー
【0088】
【表6】

【0089】
繊維摩擦
【0090】
【表7】

【0091】
引張データ
【0092】
【表8】

【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】シース成分として使用される樹脂の250℃での粘度を示す図である。
【図2】スタイロン6D43の100倍でのミクロトーム画像を示す図である。
【図3】繊維の元の光学顕微鏡画像を示す図である。
【図4】繊維の二値画像を示す図である。
【図5】長さ−差方法についての例画像を示す図である。
【図6】繊維の線描写を示す図である。
【図7】キャプスタン糸摩擦装置を示す図である。
【図8】静摩擦試験セットアップを示す図である。
【図9】スプールへの質量の追加に対応した糸張力の増加を示す図である。
【図10】6D43ブレンドの250℃での粘度を示す図である。
【図11】アスパン・ブレンドの250℃での粘度を示す図である。
【図12】アフィニティ・ブレンドの250℃での粘度を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つの熱可塑性ポリマーを含む複合繊維であって、該ポリマーの少なくとも2つの混合物が0.5から20mN/mの界面張力および異なる粘度を有し、該混合物が繊維表面の一部を構成する複合繊維。
【請求項2】
前記混合物が1.5から10の粘度比、または0.1から0.05までの粘度比を有する請求項1に記載の複合繊維。
【請求項3】
それぞれが異なる粘度を有する少なくとも2つの熱可塑性ポリマーの混合物を含む繊維であって、該混合物が0.5から20mN/mの界面張力を有し、かつ、該混合物が繊維表面の一部を構成する繊維。
【請求項4】
第1熱可塑性ポリマーの粘度対第2熱可塑性ポリマーの粘度の比が1.5から10まで、または0.1から0.05までである請求項3に記載の繊維。
【請求項5】
複合繊維である請求項3に記載の繊維。
【請求項6】
前記複合繊維がシース・コア形状のものである請求項5に記載の繊維。
【請求項7】
前記混合物がシースを構成する請求項6に記載の繊維。
【請求項8】
前記シースが20容量パーセント未満を構成する請求項7に記載の繊維。
【請求項9】
前記混合物がマトリックス・ポリマーと分散ポリマーとを含む請求項1に記載の繊維。
【請求項10】
前記コアがプロピレンポリマーを含む請求項6に記載の繊維。
【請求項11】
前記コアがホモポリマープロピレンポリマーを含む請求項6に記載の繊維。
【請求項12】
前記マトリックス・ポリマーが少なくとも10℃または前記分散ポリマーの融点より低い融点を有する請求項9に記載の繊維。
【請求項13】
前記マトリックス・ポリマーがある融点を有し、そして前記分散ポリマーが非晶質であり、かつ、該マトリックス・ポリマーの融点より10℃以下低いガラス転移温度を有する請求項9に記載の繊維。
【請求項14】
前記シースおよびコア中のマトリックス・ポリマーがそれぞれ互いから約30パーセント内の粘度を有する請求項9に記載の繊維。
【請求項15】
前記混合物が250℃で100 1/秒で170Pa・秒以下の粘度を有する請求項3に記載の繊維。
【請求項16】
前記分散ポリマーが1ミクロンより大きい平均厚さを有する微粒子形状にある請求項9に記載の繊維。
【請求項17】
前記シースが前記粒子の厚さより小さい厚さを有する請求項16に記載の繊維。
【請求項18】
少なくとも2つの熱可塑性ポリマーの混合物を含む繊維であって、該混合物が分散ポリマーとマトリックス・ポリマーとを含み、該分散ポリマーが1ミクロンより大きいサイズを有する微粒子形状で存在し、かつ、該繊維表面の一部を構成する繊維。
【請求項19】
前記分散微粒子が繊維表面上に凸凹を形成する請求項18に記載の繊維。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2006−517008(P2006−517008A)
【公表日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503229(P2006−503229)
【出願日】平成16年1月30日(2004.1.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/002837
【国際公開番号】WO2004/067818
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】