説明

不焼成れんが耐火物

【課題】ARSC層を配合したろう石や炭珪を主成分とする不焼成れんが耐火物において、溶融金属処理用の容器に内張りされたれんが間の目地より使用中に地金が差込むのを防止するのを必要とする、1400℃で3時間加熱したときの線変化率が3.5%以上あるような不焼成れんが耐火物を提供する。
【解決手段】ARSC層を3mm以下の粒度に粉砕してバージン原料に10〜60質量%、好ましくは10〜40質量%配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属処理用の容器に内張りされていた、アルミナ・ろう石・炭化珪素(以下、炭珪という)・カーボン質使用済み耐火物を原料の一部として用いた不焼成れんが耐火物に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融金属処理用の容器に内張りされる耐火物には、アルミナ系、マグネシア系、アルミナ・シリカ系、ジルコン系、マグネシア・カーボン系、アルミナ・炭珪・カーボン系など種々の材質のものがあるが、いずれも使用による損耗が避けられず、規定回数使用されると、張り替えのため解体されている。
【0003】
解体された耐火物は廃棄処分されるが、近年ではこれを破砕して、そのまま或いは表面改質を行ってから耐火物の原料の一部としてリサイクルする試みが種々なされている。下記特許文献1に示されるものが、その一つの例で、この文献には、アルミナ・カーボン質の使用済み耐火物を3mm以下の粒度に粉砕したのち、これをそのまま40〜80質量%配合した不焼成れんが耐火物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−281039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のリサイクルは、高価な材料に対して考慮され、ろう石のような安価なものをリサイクルの対象とすることは考えられていなかった。
【0006】
本発明者らは、廃棄物を減少させ、資源を有効活用するという観点からろう石を主体とする使用済み耐火物を不焼成れんが耐火物の原料として再使用することを意図とし、その配合量について種々検討を重ねた。本発明は、この検討結果に基づいてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係わる発明は、ろう石や炭珪を成分の主体とする不焼成れんが耐火物において、アルミナ・ろう石・炭珪・カーボン質使用済み耐火物(以下、ARSC屑という)を3mm下の粒度に粉砕した粉砕物をそのまま原料の一部として10〜60質量%配合したことを特徴とする。
【0008】
本発明者らは、かねてより、溶融金属処理用の容器に内張りされたれんが間の目地より使用中に地金が差込むのを防止するには、れんがを1400℃で3時間加熱したときの線変化率が3.5%以上必要であることを経験則上知得していたが、ARSC屑を10〜60質量%配合したものは、れんが間の目地より地金が差込むのを防止するための上記条件を満たすことを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明のARSC屑の配合量を10〜40質量%としたことを特徴とする。
【0010】
本発明によると、バージン原料のみを使用した耐火物と同等以上の耐スポーリング性を有する耐火物を、ARSC屑を使用し得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例及び比較例のれんがの線変化率を示す図。
【図2】実施例及び比較例のれんがの耐スポーリング性(崩壊回数)を示すグラフ。
【実施例1】
【0012】
溶融金属処理用の容器に内張りされた使用済みれんがを張り替えのため解体したときに発生したアルミナ・ろう石・炭珪・カーボン質耐火物を破砕し、下記表1の粒度のリサイクル材を得た。このリサイクル材の成分は表2に示す通りである。このリサイクル材10質量%をろう石70質量%を主成分とするバージン原料に配合し、不焼成れんがを作成した。このれんがの成分はSiO263%、Al2O316%、SiC14%であり、見掛気孔率11.0%、かさ比重2.45、圧縮強さ33MPaでJIS R2554に準拠して求めた、1400℃で3時間加熱したときの線変化率は4.82%、1300℃で30分間加熱したのち、30分間の水冷を繰返し、れんがが崩壊するまでの回数(耐スポーリング性)を求めたところ、16回となった。
【0013】
【表1】

【0014】
【表2】

【実施例2】
【0015】
実施例1のリサイクル材20質量%を、ろう石60質量%を主成分とするバージン原料に配合し、不焼成れんがを作成した。このれんがの成分はSiO259%、Al2O320%、SiC14%であり、見掛気孔率11.1%、かさ比重2.45、圧縮強さ32MPaで、実施例1を同様にして求めた線変化率は4.58%、耐スポーリング性を示すれんがの崩壊回数は18回であった。
【実施例3】
【0016】
実施例1のリサイクル材30質量%を、ろう石50質量%を主成分とするバージン原料に配合し、不焼成れんがを作成した。このれんがの成分はSiO255%、Al2O324%、SiC14%であり、見掛気孔率12.4%、かさ比重2.44、圧縮強さ28MPaで、実施例1と同様にして求めた線変化率は4.43%、れんがの崩壊回数は14回であった。
【実施例4】
【0017】
実施例1のリサイクル材40質量%を、ろう石40質量%を主成分とするバージン原料に配合し、不焼成れんがを作成した。このれんがの成分はSiO249%、Al2O328%、SiC15%であり、見掛気孔率12.8%、かさ比重2.43、圧縮強さ26MPaで、実施例1と同様にして求めた線変化率は4.27%、れんがの崩壊回数は14回であった。
【実施例5】
【0018】
実施例1のリサイクル材50質量%を、ろう石30質量%を主成分とするバージン原料に配合し、不焼成れんがを作成した。このれんがの成分はSiO243%、Al2O333%、SiC15%であり、見掛気孔率13.3%、かさ比重2.42、圧縮強さ22MPaで、実施例1と同様にして求めた線変化率は4.27%、れんがの崩壊回数は11回であった。
【実施例6】
【0019】
実施例1のリサイクル材60質量%を、ろう石20質量%を主成分とするバージン原料に配合し、不焼成れんがを作成した。このれんがの成分はSiO238%、Al2O337%、SiC16%であり、見掛気孔率13.7%、かさ比重2.42、圧縮強さ20MPaで、実施例1と同様にして求めた線変化率は4.04%、れんがの崩壊回数は9回であった。
【0020】
比較例1
実施例1のリサイクル材70質量%を、ろう石10質量%を主成分とするバージン原料に配合し、不焼成れんがを作成した。このれんがの成分はSiO33%、AlO41%、SiC16%であり、見掛気孔率14.2%、かさ比重2.41、圧縮強さ19MPaで、実施例1と同様にして求めた線変化率は3.26%、れんがの崩壊回数は9回であった。
【0021】
比較例2
実施例1のリサイクル材80質量%をろう石を含まないバージン原料に配合し、不焼成れんがを作成した。このれんがの成分はSiO27%、AlO46%、SiC17%であり、見掛気孔率14.6%、かさ比重2.42、圧縮強さ18MPaで、実施例1と同様にして求めた線変化率は2.96%、れんがの崩壊回は8回であった。
【0022】
比較例3(従来例)
ろう石80質量%を主成分とするバージン原料にて不焼成れんがを作成した。このれんがの成分はSiO68%、AlO11%、SiC17%であり、見掛気孔率12.0%、かさ比重2.42、圧縮強さ34MPaで、実施例1と同様にして求めた線変化率は4.82%、れんがの崩壊回数は14回であった。
以上の結果を表3に示す。図1は線変化率、図2は耐スポーリング性(崩壊回数)を示す図である。
【0023】
【表3】

【0024】
前述したように、溶融金属処理用の容器に内張りされたれんが間の目地より使用中に地金が差込むのを防止するためには、れんがの線変化率は3.5%以上必要であるが、図1に示すように実施例1〜6のれんがはいずれもこの条件を満たした。また実施例1〜4のれんがは崩壊回数が比較例3のバージン原料のみで作成したれんがと同等以上であり、とくに実施例1及び2のれんがは、比較例3のれんがよりも崩壊に至るまでの回数が増加し、耐スポーリング性が向上した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろう石や炭化珪素を成分の主体とする不焼成れんが耐火物において、アルミナ・ろう石・炭化珪素・カーボン質使用済み耐火物を3mm以下の粒度に粉砕した粉砕物をそのまま原料の一部として10〜60質量%配合したことを特徴とする不焼成れんが耐火物。
【請求項2】
前記アルミナ・ろう石・炭化珪素・カーボン質使用済み耐火物の配合量を10〜40質量%としたことを特徴とする請求項1記載の不焼成れんが耐火物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−155764(P2010−155764A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−362(P2009−362)
【出願日】平成21年1月5日(2009.1.5)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【出願人】(591172526)昭和KDE株式会社 (17)
【Fターム(参考)】