説明

不燃材

【課題】本願発明は、軽量化、コストの低減及び設計の自由度を向上し、光透過性の低下を防止することができる不燃材を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る不燃材は、ポリカーボネート成形体を支持体とし、該支持体の少なくとも片面にアクリル系樹脂を主成分とする少なくとも1層以上の塗膜が形成され、前記アクリル系樹脂は、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂のうちいずれか1種以上であり、前記支持体の厚さが、1.0mmを超え3.0mm以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量化及びコストの低減が可能な不燃材に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両に使用される材料は、使用部位によって燃焼ランクが規定されており、不燃性、極難燃性、難燃性に分けて燃焼性規格が規定されている。特に、天井部位、内張、床などは、不燃性の規格を満たすことが義務付けられている(例えば、非特許文献1又は2を参照。)。
【0003】
鉄道車両用材料に対して要求される不燃性の規格を満たす材料として、難燃性であるフッ素樹脂などを、ガラスクロスに含浸させることで基材自体を不燃性とする技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。また、カーボンブラックなどの熱線吸収剤を混合したポリカーボネートシート上に、更にカーボンブラックなどの熱線吸収剤を添加したシリコーンハードコート層を設けた鉄道車両用ポリカーボネートシートが提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−252892号公報
【特許文献2】特開2004−83753号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】国土交通省通達鉄運第81号「電車の火災事故対策について」
【非特許文献2】国交省令第151号「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1などをはじめとする基材自体を不燃性とする技術は、不燃性の要件を満たすために基材自体の厚みを薄くすることが難しく、軽量化及びコストの低減を図ることができない。また、設計の自由度に乏しく、使用に適さない。
【0007】
特許文献2などをはじめとするカーボンブラックなどの熱線吸収剤を添加した塗料を塗布して不燃性とする技術は、車内広告カバー、天井材の一部分などの光透過性を必要とする用途には適さない。
【0008】
そこで、本願発明は、軽量化、コストの低減及び設計の自由度を向上し、光透過性の低下を防止することができる不燃材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る不燃材は、ポリカーボネート成形体を支持体とし、該支持体の少なくとも片面にアクリル系樹脂を主成分とする少なくとも1層以上の塗膜が形成され、前記アクリル系樹脂は、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂のうちいずれか1種以上であり、前記支持体の厚さが、1.0mmを超え3.0mm以下であることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る不燃材では、前記ポリカーボネート成形体は、難燃剤を含有しないことが好ましい。支持体の透明性を維持しつつ、耐熱性などの物性低下を防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本願発明は、軽量化、コストの低減及び設計の自由度を向上し、光透過性の低下を防止することができる不燃材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】鉄道車両材料用燃焼試験に使用した器具の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態に係る不燃材は、ポリカーボネート成形体を支持体とし、支持体の少なくとも片面にアクリル系樹脂を主成分とする少なくとも1層以上の塗膜が形成され、アクリル系樹脂は、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂のうちいずれか1種以上であり、支持体の厚さが、1.0mmを超え3.0mm以下である。本実施形態において、不燃材とは、国土交通省の鉄道車両用材料燃焼試験において「不燃性」の判定となるものをいう。
【0014】
支持体は、ポリカーボネート樹脂を成形して得られるポリカーボネート成形体である。ポリカーボネート樹脂は、熱可塑性樹脂の一種であり、通常、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるが、本実施形態では、その種類及びその分子構造に制限されない。その反応方法は、例えば、界面重縮合法、溶融エステル交換法、固相エステル交換法、開環重合法である。二価のフェノールとしては、一般に4,4’‐イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノールA)が使用される。カーボネート前駆体は、例えば、ホスゲン、ジフェニルカーボネート、塩化カルボニル、炭酸ブチルエステルである。本実施形態は、反応方法及び原料に制限されない。
【0015】
ポリカーボネート樹脂のガラス転移点(Tg)は、120〜160℃であることが好ましい。より好ましくは、145〜155℃である。120℃未満では、耐熱性が不足する場合がある。160℃を超えると、成形加工性が劣る場合がある。
【0016】
支持体の製造方法は、特に限定されず、通常の熱可塑性樹脂の加工方法で製造することができる。通常の加工方法とは、例えば、ポリカーボネート樹脂と副成分とを一軸押出機、二軸押出機などの溶融混練機を用いて混合したポリカーボネート樹脂組成物を製造し、その後、当該樹脂組成物を各種溶融成形法で使用部位に応じた様々な形状に成形する方法である。ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法は、例えば、原料の全てを一括して溶融混練する方法、又は原料の一部を予め混練し、その後、残りの原料と合わせて溶融混練する方法である。副成分は、例えば、顔料、可塑剤、滑剤、酸化防止剤、熱安定剤、離型剤、加水分解防止剤であり、本発明の効果を損なわない限りにおいて配合することができる。
【0017】
本実施形態に係る不燃材では、ポリカーボネート成形体は、難燃剤を含有しないことが好ましい。一般に、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカンなどの臭素系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水和物系難燃剤又はリン酸エステル、フォスファゼン化合物などの各種リン系難燃剤などの各種難燃剤を配合して成形することで、難燃性のポリカーボネート成形体が得られることが知られている。しかし、難燃剤を配合すると、コストが高くなるという問題がある。さらに、臭素系難燃剤は、燃焼時に発生する臭素ガスによる環境汚染の問題及び樹脂組成物の熱安定性が低下する問題がある。金属水和物系難燃剤は、透明性が悪くなるという問題がある。リン系難燃剤は、耐衝撃性などの機械物性及び耐熱性を低下させるという問題があり、また環境汚染問題を完全に解消するものではない。
【0018】
支持体の成形方法は、例えば、射出成形、押出成形、トランスファー成形、積層成形、圧縮成形、真空成形などの公知の成形方法である。本実施形態では、その成形方法に限定されない。また、支持体には、市販されているポリカーボネート成形体を使用することができる。市販品としては、例えば、タキロン社のPC−1600である。
【0019】
支持体の厚さは、1.0mmを超え3.0mm以下である。より好ましくは、1.2mm以上2.5mm以下であり、特に好ましくは、1.5mm以上2.0mm以下である。1.0mm以下では、難燃性の判定となるが、不燃性の判定とならない。3.0mmを超えると、本発明の目的である軽量化、コストの低減及び設計自由度の向上を達成することができない。
【0020】
支持体の少なくとも片面には、アクリル系樹脂を主成分とする少なくとも1層以上の塗膜が形成されている。アクリル系樹脂は、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂のうちいずれか1種以上である。
【0021】
アクリル樹脂は、塗料の分野において、公知のものを使用することができ、公知の方法で得ることができる。アクリル樹脂は、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの重合体である。アクリル酸エステルは、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n‐ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n‐アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n‐ヘキシルアクリレート、2‐エチルヘキシルアクリレート、n‐オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレートである。メタクリル酸エステルは、例えば、メチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n‐ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n‐アミルメタクリレート、n‐ヘキシルメタクリレート、n‐オクチルメタクリレート、2‐エチルヘキシルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレートである。これらは、任意の1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。本実施形態は、モノマーの種類及び重合方法に制限されない。
【0022】
また、アクリル樹脂は、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとエチレン性不飽和モノマーとの共重合体を包含する。アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルは、前記に例示したものであり、任意の1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。本実施形態は、モノマーの種類及び重合方法に制限されない。エチレン性不飽和モノマーは、例えば、2‐ヒドロキシエチルアクリレート、2‐ヒドロキシプロピルアクリレート、4‐ヒドロキシブチルアクリレート、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート、2‐ヒドロキシプロピルメタクリレート、4‐ヒドロキシブチルメタクリレートなどの水酸基を有するモノマー、2‐ヒドロキシエチルメタクリレートへのγ‐ブチロラクトンの開環付加物、2‐ヒドロキシエチルアクリレートへのε‐カプロラクトンの開環付加物、アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基含有モノマー、スチレン、α‐メチルスチレン、ビニルトルエン、パラメチルスチレン、クロロスチレンなどのスチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニルモノマー、アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N‐メチロールアクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリルアミド、メタクリロニトリルなどの窒素含有ビニル系モノマーである。エチレン性不飽和モノマーは、任意の1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。本実施形態は、モノマーの種類及び重合方法に制限されない。
【0023】
アクリルシリコン樹脂は、(A)塩基性窒素を有するアクリル樹脂と(B)一分子中にエポキシ基及び加水分解性シリル基を合わせ有する化合物との反応物である。(A)塩基性窒素を有するアクリル樹脂は、例えば、アミノ基含有ビニル単量体と、この単量体と共重合可能な単量体とを共重合して得られる。
【0024】
アミノ基含有ビニル単量体としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類;N‐ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N‐ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N‐ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N‐ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのN‐ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド類;t‐ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t‐ブチルアミノプロピル(メタ)アクリレートである。
【0025】
アミノ基含有ビニル単量体と共重合可能な単量体は、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、カルボキシル基含有ビニル単量体、不飽和二塩基酸のジアルキルエステル類、酸無水基含有ビニル単量体、カルボン酸アミド基含有ビニル単量体、スルホンアミド基含有ビニル単量体、(パー)フルオロアルキル基含有ビニル単量体、芳香族ビニルモノマーである。(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n‐プロピル(メタ)アクリレート、iso‐プロピル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、iso‐ブチル(メタ)アクリレート、tert‐ブチル(メタ)アクリレート、2‐エチルエキシル(メタ)アクリレートである。カルボキシル基含有ビニル単量体としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸である。不飽和二塩基酸のジアルキルエステル類としては、例えば、ジメチルマレート、ジメチルフマレートである。酸無水基含有ビニル単量体としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸である。カルボン酸アミド基含有ビニル単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N‐アルコキシ(メタ)アクリルアミドである。スルホンアミド基含有ビニル単量体としては、例えば、p‐スチレンスルホンアミドである。(パー)フルオロアルキル基含有ビニル単量体としては、例えば、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレートである。芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、α‐メチルスチレンである。
【0026】
(B)一分子中にエポキシ基及び加水分解性シリル基を合わせ有する化合物としては、例えば、エポキシ基及び加水分解性シリル基を有するビニル共重合体、エポキシ基を有するシランカップリング剤が代表的である。エポキシ基及び加水分解性シリル基を有するビニル共重合体は、例えば、エポキシ基を有するビニル単量体と、加水分解性シリル基を有するビニル単量体と、更に必要に応じてアミノ基含有ビニル単量体と共重合可能なビニル単量体に記載したような各種単量体とを共重合して得られる。エポキシ基を有するビニル単量体としては、例えば、(β‐メチル)グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルである。加水分解性シリル基を有するビニル単量体としては、例えば、γ‐(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ‐(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランである。エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、γ‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ‐グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ‐グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ‐グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランである。さらに、加水分解性シリル基を有する化合物には、アルコキシシラン類、アルケニルオキシシラン類、アシロキシシラン類、ハロシラン類のほか、例えば、アルコキシシラン類の部分加水分解縮合体、アルケニルオキシシラン類の部分加水分解縮合体がある。アルコキシシラン類としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランである。アルケニルシラン類としては、例えば、テトライソプロペニルオキシシラン、フェニルトリイソプロペニルオキシシランである。アシロキシシラン類としては、例えば、テトラアセトキシシラン、γ‐メルカプトプロピルトリアセトキシシランである。ハロシラン類としては、例えば、テトラクロルシラン、フェニルトリクロロシランである。これらは、任意の1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0027】
(A)塩基性窒素を有するアクリル樹脂と(B)一分子中にエポキシ基及び加水分解性シリル基を合わせ有する化合物との配合割合は、(A)に対して(B)が0.5〜8モル当量となるようにすることが好ましい。より好ましくは、1〜6モル当量である。0.5モル当量より少ないと、塗膜の機械的強度及び耐水性が劣る場合がある。8モル当量を超えると、支持体との密着性が劣る場合がある。また、塗膜が均一とならず、外観が劣る場合がある。
【0028】
アクリルウレタン樹脂は、アクリルポリオールとポリイソシアネート化合物との反応物である。アクリルポリオールは、1分子中に2個以上の水酸基を有するアクリル樹脂であり、例えば、水酸基含有アクリルモノマーの重合体である。水酸基含有アクリルモノマーは、例えば、2‐ヒドロキシエチルアクリレート、2‐ヒドロキシプロピルアクリレート、4‐ヒドロキシブチルアクリレート、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート、2‐ヒドロキシプロピルメタクリレート、4‐ヒドロキシブチルメタクリレートなどの水酸基を有するモノマー類、2‐ヒドロキシエチルメタクリレートへのγ‐ブチロラクトンの開環付加物、2‐ヒドロキシエチルアクリレートへのε‐カプロラクトンの開環付加物である。水酸基含有アクリルモノマーは、任意の1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。本実施形態は、モノマーの種類及び重合方法に制限されない。
【0029】
また、本実施形態において、アクリルポリオールは、水酸基含有アクリルモノマーと他のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体を包含する。水酸基含有アクリルモノマーは、前記に例示したものであり、それらは、任意の1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。本実施形態は、モノマーの種類及び重合方法に制限されない。他のエチレン性不飽和モノマーは、例えば、前記に例示したアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン誘導体、ビニルエステル、ハロゲン化ビニルモノマー、窒素含有ビニル系モノマーと同様のモノマーである。他のエチレン性不飽和モノマーは、任意の1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。本実施形態は、モノマーの種類及び重合方法に制限されない。
【0030】
アクリルポリオールの水酸基価は、5〜150mgKOH/gであることが好ましい。より好ましくは、10〜100mgKOH/gである。5mgKOH/g未満では、ポリイソシアネート化合物とのウレタン結合の架橋密度が十分得られず、塗膜の機械的強度及び耐水性が劣る場合がある。また、150mgKOH/gを超えると、ウレタン結合の架橋密度が過剰になることによって、塗膜の過剰な硬化収縮が生じ、支持体への密着性が低下する場合がある。
【0031】
ポリイソシアネート化合物は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であり、例えば、2,4‐トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン‐4,4’‐ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、n‐ペンタン‐1,4‐ジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートである。これらは、任意の1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0032】
アクリルポリオールとポリイソシアネート化合物との配合割合は、アクリルポリオールの水酸基に対して、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基が0.5〜8モル当量となるようにすることが好ましい。より好ましくは、1〜6モル当量である。0.5モル当量より少ないと、塗膜の機械的強度及び耐水性が劣る場合がある。8モル当量を超えると、支持体との密着性が劣る場合がある。また、塗膜が均一とならず、外観が劣る場合がある。
【0033】
アクリル系紫外線硬化型樹脂は、1分子中に1個以上の二重結合を有する紫外線硬化性ビニル化合物と光重合開始剤とを配合し、紫外線を照射して重合させた重合体である。
【0034】
1分子中に1個の二重結合を含む紫外線硬化性ビニル化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n‐プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert‐ブチル(メタ)アクリレート、n‐ヘキシル(メタ)アクリレート、n‐オクチル(メタ)アクリレート、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜18のアクリル酸アルキルエステルなどの(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4‐ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの炭素数2〜8のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε‐カプロラクトン付加物、2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとγ‐ブチロラクトンの付加物などの水酸基含有(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和二塩基酸の他に、ジメチルマレート、ジメチルフマレートなどのジアルキルエステル類などのカルボキシル基又はアルコキシカルボニル基含有ビニル化合物、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有ビニル化合物、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有ビニル化合物、スチレン、α‐メチルスチレン、ビニルスチレンなどの芳香族ビニル化合物、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアミノ基含有ビニル化合物をである。前記の化合物の他に、例えば、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンが使用できる。
【0035】
1分子中に2個の二重結合を含む化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートである。
【0036】
1分子中に3個以上の二重結合を含む化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートである。また、イソシアヌル酸誘導体を用いることができる。また、例えば、前記したアクリル酸エステルのモノマー、メタクリル酸エステルのモノマー又はエチレン性不飽和モノマーを使用可能である。これらは、任意の1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。前記ビニル化合物の他に、ウレタン変性(メタ)アクリレート、ポリエステル変性(メタ)アクリレート、エポキシ変性(メタ)アクリレートを用いることもできる。
【0037】
光重合開始剤は、アクリル系オリゴマー及びアクリル系モノマーを重合反応させるものであれば、公知の光重合開始剤を使用できる。光重合開始剤は、例えば、ベンゾイン、ベンゾインモノメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエール、アセトイン、ベンジル、ベンゾフェノン、P‐メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐1‐フェニルプロパン‐1‐オン、2‐エチルアントラキノン、チオキサントン、2‐クロルチオキサントン、2‐メチルチオキサントン、2,4‐ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、カンファーキノンである。
【0038】
光重合開始剤の配合量は、アクリル系オリゴマー及びアクリル系モノマー100質量部に対して、0.1〜20質量部とすることが好ましい。より好ましくは、1〜10質量部である。0.1質量部未満では、重合が開始しない場合がある。20質量部を超えると、塗膜の密着性が劣る場合がある。
【0039】
アクリル系樹脂の質量平均分子量は、5,000〜250,000であることが好ましい。より好ましくは、10,000〜200,000である。5,000未満では、塗膜強度が不足する場合がある。250,000を超えると、塗装作業性が劣る場合がある。
【0040】
アクリル系樹脂のガラス転移点(Tg)は、0〜120℃であることが好ましい。より好ましくは、15〜100℃である。0℃未満では、塗膜の強度が劣る場合がある。120℃を超えると、塗膜が硬くて、割れやすくなる、また付着性に劣る場合がある。
【0041】
アクリル系樹脂を主成分とする塗膜の製造方法は、アクリル系樹脂の種類によって異なる。次に、アクリル系樹脂の種類別に塗膜の製造方法の具体例を示す。なお、本実施形態は、塗膜の製造方法に限定されない。
【0042】
アクリル樹脂の塗膜は、例えば、前記アクリル樹脂に液状溶媒を配合して塗布に適した固形分濃度に調製したアクリル樹脂塗料を支持体上に塗布・乾燥することで得られる。
【0043】
液状溶媒は、公知の溶媒を用いることができ、例えば、ジエチルケトン(3‐ペンタノン)、メチルプロピルケトン(2‐ペンタノン)、メチルイソブチルケトン(4‐メチル‐2‐ペンタノン)、2‐ヘキサノン、5‐メチル‐2‐ヘキサノン、2‐へプタノン、3‐へプタノン、4‐へプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸‐n‐ブチル、酢酸イソブチル、酢酸‐3‐メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、γ‐ブチロラクトン、イソホロン、イソ酪酸ブチルなどのエステル類、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などの有機溶剤を使用することができる。さらに、環境負荷をさらに低減させるために、水系媒体を使用してもよい。水系媒体とは、水及び親水性のある有機溶剤の混合物である。親水性のある有機溶剤は、例えば、メタノール、エタノール、n‐プロパノール、イソプロパノール、n‐ブタノール、イソブタノール、1‐エチル‐1‐プロパノール、2‐メチル‐1‐ブタノール、n‐ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのアルコール類、テトラヒドロフラン、1、4‐ジオキサンなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸‐n‐プロピル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジメチルなどのエステル類である。本実施形態では、液状溶媒の種類に制限されるものではなく、任意の1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0044】
アクリルシリコン樹脂の塗膜は、例えば、前記(A)塩基性窒素を有するアクリル樹脂と前記(B)一分子中にエポキシ基及び加水分解性シリル基を合わせ有する化合物とを、塗膜形成時に一定の割合で混合し、更に液状溶媒を配合して塗布に適した固形分濃度に調製したアクリルシリコン樹脂塗料を、所定の時間内に支持体上に塗布・乾燥し、更に硬化処理することで得られる。液状溶媒は、前記の液状溶媒を任意の1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0045】
アクリルウレタン樹脂の塗膜は、例えば、前記アクリルポリオールと前記ポリイソシアネート化合物とを、塗膜形成時に一定の割合で混合し、更に液状溶媒を配合して塗布に適した固形分濃度に調製したアクリルウレタン樹脂塗料を、所定の時間内に支持体上に塗布・乾燥し、更に硬化処理することで得られる。液状溶媒は、前記の液状溶媒を任意の1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0046】
アクリル系紫外線硬化型樹脂の塗膜は、例えば、前記アクリル系オリゴマーと、前記アクリル系モノマーと、前記光重合開始剤とを混合し、該混合物に液状溶媒を配合して塗布に適した固形分に調製したアクリル系紫外線硬化型樹脂塗料を、支持体上に塗布・乾燥した後、紫外線を照射して得られる。この時、アクリル系オリゴマー及びアクリル系モノマーは、光重合開始剤の励起エネルギーによって、重合体となる。液状溶媒は、前述の液状溶媒を任意の1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0047】
塗膜の形成において、塗料の塗布方法は、例えば、ロールコート方式、スプレー方式、ディップ方式、はけ塗り方式などの公知の塗布方法を選択することができる。塗膜の厚さは、0.2〜120μmであることが好ましい。より好ましくは、0.4〜70μmであり、特に好ましくは、0.8〜70μmである。0.2μm未満では、不燃性の判定とならない場合がある。120μmを超えると、塗膜が凝集破壊する場合がある。また、作業性が悪くなり、経済的に好ましくない。1回の塗布で所望の厚さの塗膜を形成するか、又は複数回塗布することで所望の厚さの塗膜を形成してもよい。
【0048】
塗料には、必要に応じて添加される助剤として、顔料、無機フィラー、光輝材、可塑剤、分散剤、乳化剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤などを本発明の効果を損なわない限りにおいて添加することができる。
【実施例】
【0049】
次に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
アクリル樹脂としてアクリディックA‐166(不揮発分45%、質量平均分子量75,000、ガラス転移点50℃、DIC社製)100質量部と、溶媒としてメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びイソ酪酸ブチルの混合溶剤150質量部とを配合し、固形分濃度18質量%のアクリル樹脂塗料を得た。支持体として厚さが2mmのポリカーボネート成形体(ガラス転移点150℃、PC‐1600、タキロン社製)の片面上に、得られたアクリル樹脂塗料を乾燥後の厚さが0.4μmとなるようにスプレー塗布し、70℃で30分乾燥させた後、更に25℃で48時間静置して塗膜を形成し、不燃材を得た。
【0051】
(実施例2)
実施例1において、アクリル樹脂塗料を乾燥後の厚さが70μmとなるように塗布した以外は、実施例1に準じて不燃材を得た。
【0052】
(実施例3)
実施例1において、ポリカーボネート成形体の厚さを3mmとした以外は、実施例1に準じて不燃材を得た。
【0053】
(実施例4)
実施例3において、アクリル樹脂塗料を乾燥後の厚さが100μmとなるように塗布した以外は、実施例3に準じて不燃材を得た。
【0054】
(実施例5)
撹拌装置、温度計、還流冷却管、温度計、窒素導入管を備えた反応器に、トルエン420質量部と、iso−ブタノールの280質量部とを仕込み、窒素雰囲気中で80℃に昇温した後、(A)塩基性窒素を有するアクリル樹脂としてメチルメタクリレート650質量部、n−ブチルアクリレート220質量部及びジメチルアミノエチルメタクリレート130質量部と、アゾビスイソブチルニトリル(以降、AIBNと記す。)5質量部と、tert−ブチルパーオキシオクトエート5質量部と、トルエン200質量部とを混合した混合物を3時間滴下した。滴下終了後も同温度に2時間保持してから、更にAIBN5質量部と、トルエン265質量部と、iso−ブタノール20質量部とを混合した混合物を滴下した。その後も同温度に4時間保持して不揮発分が50%で、かつ、数平均分子量が15,000なる三級アミノ基を有するアクリル樹脂溶液を得た。この樹脂溶液60質量部に、(B)一分子中にエポキシ基及び加水分解性シリル基を合わせ有する化合物としてγ‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン10質量部及びテトラエトキシシラン類の部分加水分解縮合体(シリケート40、多摩化学社製)15質量部と、溶媒としてトルエン、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン及びエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートの混合溶剤115部質量部と、を混合し、固形分濃度27.5質量%のアクリルシリコン樹脂塗料を得た。支持体として厚さが2mmのポリカーボネート成形体(PC‐1600、タキロン社製)の片面上に、得られたアクリルシリコン樹脂塗料を乾燥後の厚さが0.4μmとなるようにスプレー塗布し、70℃で30分乾燥させた後、更に25℃で48時間静置して硬化処理して塗膜を形成し、不燃材を得た。
【0055】
(実施例6)
実施例5において、アクリルシリコン樹脂塗料を乾燥後の厚さが70μmとなるように塗布した以外は、実施例5に準じて不燃材を得た。
【0056】
(実施例7)
実施例5において、ポリカーボネート成形体の厚さを3mmとした以外は、実施例5に準じて不燃材を得た。
【0057】
(実施例8)
実施例7において、アクリルシリコン樹脂塗料を乾燥後の厚さが100μmとなるように塗布した以外は、実施例7に準じて不燃材を得た。
【0058】
(実施例9)
アクリルポリオールとしてアクリディック57‐773(不揮発分45%、質量平均分子量51,000、ガラス転移点55℃、水酸基価33mgKOH/g、DIC社製)100質量部と、ポリイソシアネート化合物としてデスモジュールN‐3200(住化バイエル社製)5質量部と、溶媒としてメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びイソ酪酸ブチルの混合溶剤100質量部とを配合し、固形分濃度24.4質量%のアクリルウレタン樹脂塗料を得た。支持体として厚さが2mmのポリカーボネート成形体(PC‐1600、タキロン社製)の片面上に、得られたアクリルウレタン樹脂塗料を乾燥後の厚さが0.4μmとなるようにスプレー塗布し、70℃で30分乾燥させた後、更に25℃で48時間静置して硬化処理して塗膜を形成し、不燃材を得た。
【0059】
(実施例10)
実施例9において、アクリルウレタン樹脂塗料を乾燥後の厚さが70μmとなるように塗布した以外は、実施例9に準じて不燃材を得た。
【0060】
(実施例11)
実施例9において、ポリカーボネート成形体の厚さを3mmとした以外は、実施例9に準じて不燃材を得た。
【0061】
(実施例12)
実施例11において、アクリルウレタン樹脂塗料を乾燥後の厚さが100μmとなるように塗布した以外は、実施例11に準じて不燃材を得た。
【0062】
(実施例13)
ウレタン変性アクリレートとしてユニディックC7‐164(DIC社製)50質量部と、アクリル系モノマーとしてジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレートの混合物(商品名アロニックスM‐402、東亞合成社製)50質量部と、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシル‐フェニルケトン(商品名イルガキュア184、BASF社製)5質量部と、溶媒としてメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びイソ酪酸ブチルの混合溶剤100質量部とを配合し、固形分濃度39.5質量%のアクリル系紫外線硬化型樹脂塗料を得た。支持体として厚さが2mmのポリカーボネート成形体(PC‐1600、タキロン社製)の片面上に、得られたアクリル系紫外線硬化型樹脂塗料を乾燥後の厚さが0.4μmとなるようにスプレー塗布し、70℃で5分乾燥させた後、更に、高圧水銀灯を使用して紫外線照射(最大強度80mW/cm、積算光量700mJcm)して塗膜を形成し、不燃材を得た。
【0063】
(実施例14)
実施例13において、アクリル系紫外線硬化型樹脂塗料を乾燥後の厚さが70μmとなるように塗布した以外は、実施例13に準じて不燃材を得た。
【0064】
(実施例15)
実施例13において、ポリカーボネート成形体の厚さを3mmとした以外は、実施例13に準じて不燃材を得た。
【0065】
(実施例16)
実施例15において、アクリル系紫外線硬化型樹脂塗料を乾燥後の厚さが100μmとなるように塗布した以外は、実施例15に準じて不燃材を得た。
【0066】
(比較例1)
実施例1において、ポリカーボネート成形体の厚さを1mmとした以外は、実施例1に準じて支持体上に塗膜を形成した。
【0067】
(比較例2)
実施例1において、ポリカーボネート成形体の厚さを1mmとし、アクリル樹脂塗料を乾燥後の厚さが70μmとなるように塗布した以外は、実施例1に準じて支持体上に塗膜を形成した。
【0068】
(比較例3)
実施例5において、ポリカーボネート成形体の厚さを1mmとした以外は、実施例5に準じて支持体上に塗膜を形成した。
【0069】
(比較例4)
実施例5において、ポリカーボネート成形体の厚さを1mmとし、アクリルシリコン樹脂塗料を乾燥後の厚さが70μmとなるように塗布した以外は、実施例5に準じて支持体上に塗膜を形成した。
【0070】
(比較例5)
実施例9において、ポリカーボネート成形体の厚さを1mmとした以外は、実施例9に準じて不燃材を得た。
【0071】
(比較例6)
実施例9において、ポリカーボネート成形体の厚さを1mmとし、アクリルウレタン樹脂塗料を乾燥後の厚さが70μmとなるように塗布した以外は、実施例9に準じて支持体上に塗膜を形成した。
【0072】
(比較例7)
実施例13において、ポリカーボネート成形体の厚さを1mmとした以外は、実施例13に準じて支持体上に塗膜を形成した。
【0073】
(比較例8)
実施例13において、ポリカーボネート成形体の厚さを1mmとし、アクリル系紫外線硬化樹脂塗料を乾燥後の厚さが70μmとなるように塗布した以外は、実施例13に準じて支持体上に塗膜を形成した。
【0074】
(比較例9)
実施例1において、塗膜をポリカーボネート成形体上にアクリルポリマー及びニトロセルロースの混合物であるアクリルニトロセルロース樹脂とからなる塗膜とした以外は、実施例1に準じて支持体上に塗膜を形成した。アクリルニトロセルロース樹脂塗料の調製は、アクリルポリマーとしてアクリディックA‐166(不揮発分45%、質量平均分子量75,000、ガラス転移点50℃、DIC社製)100質量部と、ニトロセルロース(商品名DLX8‐13、NOBEL社製)6質量部と、溶媒としてメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びイソ酪酸ブチルの混合溶剤194質量部とを配合し、固形分濃度16.4質量%に調製した。
【0075】
(比較例10)
比較例9において、アクリルニトロセルロース樹脂塗料を乾燥後の厚さが70μmとなるように塗布した以外は、比較例9に準じて支持体上に塗膜を形成した。
【0076】
(比較例11)
比較例9において、ポリカーボネート成形体の厚さを1mmとした以外は、比較例9に準じて支持体上に塗膜を形成した。
【0077】
(比較例12)
比較例9において、ポリカーボネート成形体の厚さを1mmとし、アクリルニトロセルロース樹脂塗料を乾燥後の厚さが70μmとなるように塗布した以外は、比較例9に準じて支持体上に塗膜を形成した。
【0078】
(比較例13)
実施例1において、支持体上に塗膜を形成しなかった。
【0079】
(比較例14)
実施例4において、支持体上に塗膜を形成しなかった。
【0080】
(比較例15)
支持体として厚さが1mmの難燃性ポリカーボネート成形体(N‐7S、三菱ガス化学社製)を用い、塗膜を形成しなかった。
【0081】
(比較例16)
支持体として厚さが2mmの難燃性ポリカーボネート成形体(N‐7S、三菱ガス化学社製)を用い、塗膜を形成しなかった。
【0082】
(比較例17)
支持体として厚さが3mmの難燃性ポリカーボネート成形体(N‐7S、三菱ガス化学社製)を用い、塗膜を形成しなかった。
【0083】
(参考例1)
比較例9において、ポリカーボネート成形体の厚さを3mmとした以外は、比較例9に準じて支持体上に塗膜を形成した。
【0084】
(参考例2)
参考例1において、アクリルニトロセルロース樹脂塗料を乾燥後の厚さが100μmとなるように塗布した以外は、参考例1に準じて支持体上に塗膜を形成した。
【0085】
実施例、比較例及び参考例で得られた不燃材、塗膜形成支持体並びに塗膜非形成支持体について、燃焼試験を行った。組成及び燃焼試験の区分を表1に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
(燃焼試験)
昭和44年5月15日鉄運第81号「電車の火災事故について」に規定された方法に従って、燃焼試験を行った。図1は、鉄道車両材料用燃焼試験に使用した器具の概略図である。図1に示すとおり、実施例、比較例及び参考例で得られた不燃材、塗膜形成支持体及び塗膜非形成支持体をB5判(182mm×257mm)に切断した供試材1を、45°傾斜に保持し、燃料容器2(鉄製、直径17.5mm、深さ7.1mm、厚さ0.8mm)の底の中心が、供試材1の下面中心の垂直下方25.4mm(1インチ)のところにくるように、低熱伝導材(コルク)からなる容器受台3上に載せ、燃料容器2に純エタノール0.5mlを入れて着火し、燃料が燃え尽きるまで放置した。試験室内は、雰囲気温度15〜30℃、雰囲気湿度60〜75%に維持して、空気の流動がない状態とした。なお、実施例1の供試材を使用して火炎側を塗膜形成面にする場合及び火炎側をポリカーボネート面(塗膜非形成面)とする場合において予め予備試験を行ったところ、いずれも試験結果が同じであったため、試験は供試材のポリカーボネート面が火炎側になるように保持した。燃焼性の判定は、エタノールの燃焼中と燃焼後とに分けて、判断した。燃焼中は、供試材への着火、着炎、発煙及び火勢状態を赤外線カメラ、ビデオカメラ及び目視で観察した。燃焼後は、残炎、残塵、炭化及び変形の状態を赤外線カメラ、ビデオカメラ及び目視で観察した。判定基準は、表2に示すとおりである。
【0088】
【表2】

【0089】
実施例1〜実施例16の不燃材は、いずれも不燃性であることが確認できた。また、いずれも透明性が高かった。一方、比較例1〜比較例6は、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂又はアクリルウレタン樹脂で形成したが、支持体の厚さを1mmとしたため、可燃性の判定となった。比較例7及び比較例8は、塗膜をアクリル系紫外線硬化型樹脂で形成したが支持体の厚さを1mmとしたため、難燃性の判定となった。比較例9及び比較例10は、塗膜をアクリルニトロセルロース樹脂で形成したため、難燃性の判定となった。比較例11及び比較例12は、塗膜をアクリルニトロセルロース樹脂で形成し、支持体の厚さを1mmとしたため、可燃性の判定となった。比較例13及び比較例14は、塗膜を形成しなかったため、可燃性の判定とならなかった。比較例15〜比較例17は、難燃性グレードのポリカーボネート成形体を使用したが、塗膜を形成しなかったため、可燃性又は難燃性の判定となった。
【0090】
参考例1及び参考例2は、支持体として厚さが3mmのポリカーボネート成形体と、該成形体上にアクリルニトロセルロース樹脂を主成分とする塗膜を形成した例であるが、支持体の厚さが3mmであったため、不燃性の判定となった。
【0091】
比較例1〜比較例17は、いずれも火炎の熱によって、支持体が変形すると、その変形部分において、更に火勢が大きくなり、難燃性又は可燃性の判定となった。一方、実施例1〜実施例16は、塗膜を形成することによって、支持体が変形するのを抑制することができたため、火勢が増すことがなく、結果として、不燃性の判定を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明に係る不燃材は、軽量化、コストの低減及び設計の自由度を向上し、光透過性の低下を防止することができるため、鉄道車両用内装建材に適している。さらに、店舗用、オフィス用、航空機用、車両用及び船舶用の各種内装建材に適している。
【符号の説明】
【0093】
1 供試材
2 燃料容器
3 容器受台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート成形体を支持体とし、
該支持体の少なくとも片面にアクリル系樹脂を主成分とする少なくとも1層以上の塗膜が形成され、
前記アクリル系樹脂は、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂のうちいずれか1種以上であり、
前記支持体の厚さが、1.0mmを超え3.0mm以下であることを特徴とする不燃材。
【請求項2】
前記ポリカーボネート成形体は、難燃剤を含有しないことを特徴とする請求項1に記載の不燃材。


【図1】
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【公開番号】特開2012−40724(P2012−40724A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182493(P2010−182493)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000103976)オリジン電気株式会社 (223)
【Fターム(参考)】