説明

不眠症の予防又は治療用組成物

本発明は、続断抽出物又は続断抽出物と遠志抽出物との混合物を有効成分として含む、不眠症の予防又は治療用組成物に関する。本発明は、新しい天然不眠症治療剤として続断及び遠志抽出物を提示して、特に、続断及び遠志抽出物を同時に使用する場合は、睡眠状態を正常的に回復させることができる。本発明の不眠症治療剤は、従来漢方薬材として使用されたもので、人体に安全である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不眠症の予防又は治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多い病理症状は、不眠症に起因すると知られている。不眠症症状を評価する時、医者は一般に、i)睡眠潜伏期(latency to sleep)、ii)睡眠持続期間(duration of sleep)、iii)睡眠の不安定なパターン、即ち、頻繁な夜間覚醒現象(frequent nocturnal wakening event)、並びにiv)眠りから覚める時の眠気(drowsiness)と認知及び運動機能の損傷のような残余二日酔い作用(residual hangover effect)などを評価する。
【0003】
不眠症に対する初期治療法では、バルビツール酸塩のような中枢神経系抑制剤を通常的に使用している。しかし、これらの化合物は、嗜眠、錯乱及び鬱病などの副作用があることが知られている。
【0004】
また他の薬物治療剤として、ベンゾジアゼピン類のような鎮静−睡眠剤(sedative-hypnotic)がある。しかし、この化学薬物種も、反復的な投薬による耐性の発生、投薬中止による反動不眠症などの副作用がある。
【0005】
また不眠症に対する他の化学薬物治療剤としては、ピラゾロピリミジン系睡眠剤、ゾルピデム及びザレプロンなどがある。
【0006】
しかし、現在まで開発された不眠症の化学薬物治療剤の大部分は、副作用を伴って、特に長期服用時には、薬物に対する中毒症状など、深刻な副作用を発生させるという問題点がある。
【0007】
本明細書全体にかけて多数の特許文献及び論文が参照されて、その引用が表示されている。引用された特許文献及び論文の開示内容は、その全体が本明細書に参照として取り込まれ、本発明の属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、副作用無しに不眠症が治療できる物質を開発するために鋭意研究した。その結果、続断抽出物又は続断抽出物と遠志抽出物との混合物が、不眠症で苦しんでいる患者らの睡眠状態を正常人と等しい水準まで回復させることができることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
したがって、本発明の目的は、不眠症の予防又は治療用組成物を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、不眠症の予防又は治療方法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的及び利点は、発明の詳細な説明、請求の範囲により、更に明確にされる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一様態によると、本発明は、続断抽出物を有効成分として含む、不眠症の予防、治療用又は改善用組成物を提供する。
【0013】
本発明の他の様態によると、本発明は、続断抽出物を対象(subject)に投与する段階を含む、不眠症の予防又は治療方法を提供する。
【0014】
本発明者は、副作用無しに不眠症(又は睡眠障害)が治療できる物質を開発するために鋭意研究した。その結果、続断抽出物又は続断抽出物と遠志抽出物との混合物が、不眠症で苦しんでいる患者らの睡眠状態を正常人と等しい水準まで回復させることができることを見出した。
【0015】
本発明は、続断抽出物又は遠志抽出物を有効成分として含む。
【0016】
有効成分の一つである続断(Phlomis umbrosa Turcz.)は、高さ1mの多年生草であって、巨大な丸い根をサツマイモのように五つ程度有するシソ科植物である。続断の有する伝統的な薬理効果は、肝臓と腎臓の保護である(参照:http://www.nanumy.co.kr/folk-remedy/documents/ic5.5-11.html)。本発明者は、このような効能を有する続断抽出物が人間の睡眠状態を改善するのに非常に効果的であることを見出した。
【0017】
また他の有効成分としての遠志(Polygala tenuifolia Willd.)は、遠志科の高さ25〜45cmの多年生草本であって、漢方では、急性及び慢性的な気管支炎、肺炎、喉頭炎に痰を除去する薬として使用されている。
【0018】
好ましくは、本発明における続断又は遠志抽出物は、(a)水、(b)炭素数1〜4の無水又は含水低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ノルマル−プロパノール、イソ−プロパノール及びノルマル−ブタノールなど)、(c)前記低級アルコールと水との混合溶媒、(d)アセトン、(e)エチルアセテート、(f)クロロホルム、(g)1,3−ブチレングリコール、(h)ヘキサン、又は(i)ジエチルエーテルを抽出溶媒として使用することができる。
【0019】
一方、本発明の抽出物は、上記の抽出溶媒だけではなく、他の抽出溶媒を使用しても実質的に同一な効果を示す続断又は遠志抽出物が得られることは、当業者に自明なことである。
【0020】
また、本発明の抽出物は、上述の抽出溶媒による抽出物だけではなく、通常的な精製過程を経た抽出物も含む。例えば、一定の分子量カットオフ値を有する限外ろ過膜を利用した分離、多様なクロマトグラフィー(大きさ、電荷、疎水性又は親和性による分離のために作製されたもの)による分離など、追加的に施された様々な精製方法を通じて得られた分画も本発明の抽出物に含まれる。
【0021】
本発明の抽出物は、減圧蒸留及び凍結乾燥又は噴霧乾燥などのような追加的な過程により粉末状態に製造できる。
【0022】
本発明の組成物は、続断抽出物と遠志抽出物のそれぞれを有効成分として使用することもできるが、好ましくは、続断抽出物と遠志抽出物との混合物を有効成分として使用する。下記の実施例で確認されたように、続断抽出物と遠志抽出物との混合物は、単独の抽出物を使用した場合に比べ、不眠症が大きく改善される。
【0023】
本発明の組成物において、有効成分として単独の抽出物が使用される場合は、続断抽出物又は遠志抽出物は、全体組成物を基準に1〜99重量%含まれることができる。
【0024】
本発明の組成物において、有効成分として続断抽出物と遠志抽出物との混合物が使用される場合は、全体組成物を基準に、続断抽出物は1〜99重量%、遠志抽出物は1〜99重量%含まれる。
続断抽出物と遠志抽出物との混合物が使用される場合、続断抽出物と遠志抽出物の含量比は、好ましくは、続断抽出物:遠志抽出物=10:90〜90:10であり、より好ましくは、20:80〜80:20であって、更に好ましくは、30:70〜70:30であり、最も好ましくは、40:60〜60:40である。
【0025】
本発明の組成物は、薬剤学的組成物又は食品組成物として提供できる。
【0026】
本発明の組成物が薬剤学的組成物として製造される場合、本発明の薬剤学的組成物は、薬剤学的に許容される担体を含む。本発明の薬剤学的組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常的に使用されるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、及びミネラルオイルなどを含むが、これらに限定されるものではない。本発明の薬剤学的組成物は、前記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などを更に含むことができる。適した薬剤学的に許容される担体及び製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences(19th ed.,1995)に詳細に記載されている。
【0027】
本発明の薬剤学的組成物は、経口又は非経口で投与でき、好ましくは、経口投与方式で適用される。
【0028】
本発明の薬剤学的組成物の適した投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、病的状態、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因により多様に処方できる。本発明の薬剤学的組成物の一般的な投与量は、成人基準で0.01〜1,000mg/kg範囲内である。
【0029】
本発明の薬剤学的組成物は、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できる方法により、薬剤学的に許容される担体及び/又は賦形剤を利用して製剤化することにより、単位容量形態に製造するか、又は多用量容器内に入れて製造できる。ここで剤形は、オイル又は水性媒質中の溶液、懸濁液、シロップ剤又は乳化液形態であるか、エキス剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤形態であってもよく、分散剤又は安定化剤を更に含むことができる。
【0030】
本発明の組成物が食品組成物として製造される場合、有効成分として続断及び遠志抽出物だけではなく、食品製造時に通常的に添加される成分を含むが、例えば、タンパク質、炭水化物、脂肪、栄養素、調味剤及び香味剤を含む。上述の炭水化物の例は、単糖類(例えば、ブドウ糖、果糖など)、二糖類(マルトース、スクロース、オリゴ糖など)、多糖類(例えば、デキストリン、シクロデキストリンなど)のような通常的な糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールである。香味剤として、天然香味剤[ソーマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウディオサイドA、グリチルリチンなど)]、及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を使用することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の特徴及び利点を要約すると、以下のとおりである。
【0032】
(a)本発明は、新しい不眠症治療剤として続断及び遠志抽出物を提示する。
【0033】
(b)特に、続断及び遠志抽出物を同時に使用する場合は、睡眠状態を正常的に回復させることができる。
【0034】
(c)本発明の不眠症治療剤は、従来から漢方薬材として使用されたもので、人体に安全である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、実施例を通じて本発明を更に詳細に説明するが、これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例に限定されないことは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとっては自明なことであろう。
【実施例】
【0036】
実施例1:続断及び遠志抽出物の製造
大韓民国キョンドン市場で購入した続断及び遠志のそれぞれ50gに蒸留水1.5Lを添加して、80〜90℃で6〜12時間加熱及び抽出し、水溶性抽出液0.7Lを得た。得られた抽出液0.7Lを常温で保管し、残存した薬材に、1次抽出時に加えた量の半分に該当する量の蒸留水を添加して、2次抽出を80〜90℃で6〜12時間加熱及び抽出した。1次及び2次にかけて得られた抽出液1Lを収集し、減圧乾燥(freeze dryer,Edwards USA)して粉末を得た。
【0037】
実施例2:続断及び遠志抽出物による不眠症治療実験
続断抽出物(グループI)、遠志抽出物(グループII)、又は続断と遠志の複合抽出物(グループIII、続断抽出物と遠志抽出物が同一含量比で混合されたもの)をそれぞれの不眠症に対する治療効果を確認する実験を進行した。
投与対象は、不眠症で1年以上苦しんでいる成人男女を対象にした。成人男女の年齢分布は、30〜65歳である。それぞれの投与グループ別に投与患者の群は、20名で構成した。投与方式は、口腔投与、投与量は100mg/回、投与回数は、1日1回とした。不眠症治療効果は、投与開始後、1ヶ月及び3ヶ月になる時点で評価した。
【0038】
不眠症治療効果の評価は、睡眠評価は、妥当度と信頼度が検証されたSt.Mary's Hospital(SMH) Sleep Questionnaire(Ellis BW et al.,The St.Mary's Hospital sleep questionnaire: a study of reliability,Sleep.4(1):93-7(1981))を利用して、次のような項目によって評価した:(a)睡眠潜伏期(latency to sleep、横になってから眠るまでかかった時間);(b)総夜間睡眠時間;及び(c)睡眠中覚醒回数。
【0039】
実験結果は、表1a及び表1bに記載されている。
【0040】
1ヶ月投与後の睡眠評価
【表1a】

【0041】
3ヶ月投与後の睡眠評価
【表1b】

【0042】
上記表1aから確認できるように、本発明の抽出物を1ヶ月間投与した場合、続断及び遠志抽出物のそれぞれは、三つの睡眠評価項目を全て改善する効能を示した。特に、続断と遠志の混合抽出物の場合は、三つの睡眠評価項目を大きく改善する効能を示した。
【0043】
本発明の抽出物を3ヶ月間投与した場合は、不眠症がより一層改善された(参照:表1b)。特に、続断と遠志の混合抽出物を投与した場合は、正常人とほぼ等しい水準まで睡眠状態が改善された。
【0044】
以上、本発明の特定の部分を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとっては、このような具体的な記述はただ望ましい具現例に過ぎなく、これに本発明の範囲が限定されないことは明らかである。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とその等価物により定義されると言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
続断抽出物を有効成分として含むことを特徴とする不眠症の予防又は治療用組成物。
【請求項2】
前記組成物は、遠志組成物を更に含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
続断抽出物を対象(subject)に投与する段階を含むことを特徴とする不眠症の予防又は治療方法。
【請求項4】
前記方法は、遠志組成物を更に含む請求項3に記載の方法。

【公表番号】特表2012−521413(P2012−521413A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501925(P2012−501925)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/KR2010/001678
【国際公開番号】WO2010/110552
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(511230266)ナチュラル エンドテック カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】