説明

不純物濃度分布の計算方法

【課題】 解析領域内における不純物濃度分布の計算方法に於いて計算量を削減すること。
【解決手段】 補助節点設定手順2は、解析節点を含み不純物の注入方向に直角な平面に所定の間隔で補助メッシュを設定し、該補助メッシュの交点を補助節点とし、補助節点無効手順2は、解析接点を中心とし、不純物の注入方向に直角な平面上に於ける所定の円外の補助節点を無効補助節点とし、層構造探索手順4は、無効補助節点を除く有効補助節点に基づいて、該有効補助節点の注入方向における層構造の探索を行い、寄与度算出手順5は、有効補助節点の注入方向における位置と、探索された層構造と、有効補助節点から解析節点までの水平方向の位置に基づいて、有効補助節点の不純物濃度分布による解析節点に対する寄与度を求め、濃度分布算出手順6は、解析節点に対する寄与度を前記有効補助節点の全てについて加算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特にイオン注入工程のシミュレーションに於ける不純物濃度分布の計算方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は、不純物濃度分布の説明図である。
この図は、同一材質の注入ターゲット(半導体基板)にマスク窓(幅Δx)から所定の注入条件でイオン注入した場合に於ける、深さ方向(Z軸)位置による不純物濃度分布を表す概念図(a)、及び水平方向(X軸)位置による不純物濃度分布を表す概念図(b)である。図中の不純物濃度分布は、特許文献1に詳細に記載されているようにガウス関数又はPearson関数等のモデル式を用いて深さ方向の分布が算出される。更に、ガウス補誤差関数又はPearson関数等を用いて水平方向の分布が算出される。
【0003】
次に、1例として、同一材質の注入ターゲット(半導体基板)の全面にわたって所定の同一注入条件でイオン注入(注入方向をZ軸方向とする)した場合に於ける、各解析節点での不純物濃度を算出する算出方法の1例についてステップS0−1からステップS0−5に分けて説明する。
【0004】
図8は、解析節点及び補助メッシュの説明図である。
(a)は、注入ターゲット(半導体基板)中に設定された解析節点及び補助メッシュの斜視図であり、(b)は、注入ターゲット(半導体基板)に設定された解析節点及び補助メッシュの平面図であり、(c)は、補助メッシュの拡大図である。
【0005】
ステップS0−1
解析接点の全てに補助節点を設定する。ここでは、同一材質であって、且つ、図に示すように、解析メッシュはX、Y、Z各方向に等間隔(1例)で設定されるものとする。更に、補助メッシュは、X−Y平面に解析節点を中心にして等間隔aでX方向、及びY方向へ各5本(1例)設定されるものとする。図(b)では、解析節点Pa(X=x0、Y=y0、Z=z0)における補助メッシュのみを表している。この補助メッシュの交点(25個)を補助節点(a1〜a25)(図(c))とする。
【0006】
ステップS0−2
(c)に於いて補助節点a1に於ける層構造探索を行って縦方向(深さ)位置による不純物濃度分布を算出する。ここでは、同一材質なので解析節点Pa(Z=z0)に於ける分布値は、縦方向位置による分布関数f(z)(図7(a)に該当するGauss分布)が算出され、求める分布値はf(z0)となる。
【0007】
ステップS0−3
補助節点a1の不純物濃度分布による解析節点Paに対する寄与度ΔC(Pa)a1を算出する。この寄与度ΔC(Pa)a1は、水平方向の分布関数(図7(b)に該当するGauss分布)をg(r)、補助節点a1から解析節点Paに至る距離をrと定めると、上記縦方向の分布値をf(z0)として、
【数1】

と算出される。ここで

はGause関数から
【数2】

として算出される。ここでDは、注入されるドーズ量(イオンの数量/面積)であり所定の注入条件によって定まる定数である。σLは、水平方向の散乱距離を表すパラメータである。又rは、解析節点から該当する補助節点までの距離を表すので
r={(x−x0)+(y−y0)1/2
Δr=(Δx+Δy1/2である。
【0008】
ステップS0−4
同様にして、上記ステップS0−2及びステップS0−3を補助メッシュ点a2〜補助メッシュ点a25について求め、その寄与度を全て加算して解析節点Paに於ける不純物濃度C(Pa)を算出する。ここで解析節点Paの不純物濃度C(Pa)は、(1式)を以下の式に代入して算出される。

【0009】
ステップS0−5
上記ステップS0−1〜ステップS0−4を全ての解析節点に於いて実行することにより、注入ターゲット(半導体基板)に所定の注入条件でイオン注入した場合に於ける、所定の深さ位置の解析節点に於ける不純物濃度分布が算出される。
【0010】
このように、同一材質の注入ターゲット(半導体基板)の全面にわたり、同一注入条件でイオンを注入した場合(最も計算し易い特殊な例)であっても各解析節点に於ける不純物濃度を算出するためには膨大な計算量になってしまう。現実には、半導体基板の層構造の違い等によって所定の深さ位置に於ける垂直方向への不純物濃度分布も異なってくるのが普通である。その結果材質毎に注入イオンの阻止能が異なり注入されたイオンの到達距離が異なるため、層構造の探索の繰り返しにも膨大な計算量が伴ってくる。また、水平方向には所定のマスクが設定されるので解析メッシュはX、Y、Z各方向に等間隔で設定されとは限らない。従って、計算量はより一層膨大になってしまう。そこで、計算量を少しでも減少させる計算方法の開発が強く求められている。
【特許文献1】特開2003−37078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
解決しようとする問題点は、従来の不純物濃度の計算方法では、その計算量が膨大であり、計算コストが大きくなってしまう点である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
解析領域内に所定の解析節点を設定し、該解析節点に基づいて上記解析領域内における不純物濃度分布を算出する不純物濃度分布の計算方法に関する第1の発明では、上記解析節点を含み上記不純物の注入方向に直角な平面に所定の間隔で補助メッシュを設定し、該補助メッシュの交点を補助節点とする手順と、上記解析接点を中心とし、上記不純物の注入方向に直角な平面上に於ける所定の円外の補助節点を無効補助節点とする手順と、上記無効補助節点を除く有効補助節点に基づいて、該有効補助節点の注入方向における層構造の探索を行う手順と、上記有効補助節点の注入方向における位置と、上記探索された層構造と、上記有効補助節点から上記解析節点までの水平方向の位置に基づいて、上記有効補助節点の不純物濃度分布による上記解析節点に対する寄与度を求める手順と、該解析節点に対する寄与度を上記有効補助節点の全てについて加算する手順を含むことを特徴とする。
【0013】
更に、第2の発明では、上記解析領域を材質の変化位置に基づいて不純物の注入方向に一群の短冊状補助バンドとして分割する手順と、上記解析節点を含み前記不純物の注入方向に直角な平面に所定の間隔で補助メッシュを設定し、該補助メッシュの交点を補助節点とする手順と、上記解析接点を中心とし、上記不純物の注入方向に直角な平面の所定の円外の補助節点を無効補助節点とする手順と、上記無効補助節点を除く有効補助節点が設定される上記短冊状補助バンドの各々毎に、該有効補助節点の注入方向における前記材質の変化位置を予め記憶する手順と、上記有効補助節点の注入方向における位置と、上記予め記憶する材質の変化位置と、上記有効補助節点から上記解析節点までの水平方向の位置に基づいて、上記有効補助節点の不純物濃度分布による上記解析節点に対する寄与度を求める手順と、該解析節点に対する寄与度を上記有効補助節点の全てについて加算する手順を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明による不純物濃度分布を算出する方法では、解析接点を中心とし、不純物の注入方向に直角な平面に於ける所定の円外の補助節点を無効補助節点とするので、該無効補助節点における不純物濃度分布による上記解析節点に対する寄与度を求める計算を実行する必要が無くなる。その結果、全体として計算コストを削減出来るという効果を得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
補助メッシュの間隔aは、上記(2式)に於けるσLの4〜5倍に設定し、解析接点を中心とし、不純物の注入方向に直角な平面上に設定される所定の円の半径rは、解析接点と、該解析節点から最も離れた位置に設定される補助節点との距離Rの

に設定することが好ましい。
【実施例1】
【0016】
散乱による注入イオンの分布は、同心円状であることが実験的に確認されたことに基づいて、本発明では、以下に記するように解析接点を中心とする所定の円内に位置する補助節点の不純物濃度分布のみによって解析接点に対する寄与度を算出することとする。
【0017】
図1は、実施例1による不純物濃度分布計算方法の手順説明図である。
実施例1の不純物濃度分布計算方法は、共通バスを介してROM8、RAM9が接続されているCPU7のコンピュータ制御手順によって構成され、図に示すように解析節点設定手順1と、補助節点設定手順2と、補助節点無効手順3と、層構造探索手順4と、寄与度算出手順5と、濃度分布算出手順6とを備える。
【0018】
解析節点設定手順1は、解析領域内に解析節点を設定する手順である。解析節点は、通常解析領域内における材質変化などに基づいて設定される解析メッシュの交点に設定される不純物濃度の算出ポイントである。
【0019】
補助節点設定手順2は、解析節点における不純物濃度の算出精度を向上させるために用いられる補助節点を設定する手順である。補助節点は、解析節点を含み不純物の注入方向に直角な平面に所定の間隔で補助メッシュを設定し、該補助メッシュの交点が補助節点として設定される。
【0020】
補助節点無効手順3は、計算量を縮小するために、所定の補助節点を無効にする手順である。本発明では上記解析接点を中心とし、不純物の注入方向に直角な平面上に於ける所定の円外の補助節点を無効補助節点とする。かかる無効補助節点を除く補助節点を有効補助節点とする。
【0021】
層構造探索手順4は、上記有効補助節点に基づいて該有効補助節点の注入方向における層構造の探索を行う手順である。この探索によって有効補助節点における縦方向(深さ方向)位置による縦方向の分布関数が取得される。
【0022】
寄与度算出手順5は、有効補助節点の注入方向における位置と、探索された層構造と、有効補助節点から解析節点までの水平方向の位置に基づいて、有効補助節点の不純物濃度分布による解析節点に対する寄与度を求める手順である。
【0023】
濃度分布算出手順6は、解析節点に対する寄与度を有効補助節点の全てについて加算し、解析節点における不純物濃度を求める手順である。
【0024】
CPU7は、ROM8に予め格納されている所定の制御プログラムを実行することによって、上記解析節点設定手順1と、補助節点設定手順2と、補助節点無効手順3と、層構造探索手順4と、寄与度算出手順5と、濃度分布算出手順6とを起動する中央演算制御装置である。
【0025】
ROM8は、上記CPU7が上記解析節点設定手順1と、補助節点設定手順2と、補助節点無効手順3と、層構造探索手順4と、寄与度算出手順5と、濃度分布算出手順6とを起動するために実行する制御プログラムと制御データとを予め格納するリードオンリーメモリである。
【0026】
RAM9は、上記CPU7が、上記解析節点設定手順1と、補助節点設定手順2と、補助節点無効手順3と、層構造探索手順4と、寄与度算出手順5と、濃度分布算出手順6とを実行する過程において必要になる演算領域を提供するランダムアクセスメモリである。
【0027】
次に、本発明による不純物濃度分布の計算方法(実施例1)をステップS1−1〜ステップS1−6に分けて詳細に説明する。
図2は、補助メッシュ及び補助節点の説明図である。
この図は、本発明を説明するために、3次元(X、Y、Z)空間に設定された解析節点(図中黒丸)と補助メッシュSmの位置関係を表す図である。(a)は、注入ターゲットの斜視図であり、(b)は、補助メッシュの拡大図である。(a)に示すように注入ターゲットは、材質Nで膜厚(z3−z1)のA層に、材質Mで膜厚(z1−z0)のB層が積層されているものとする。又、不純物の注入方向はZ方向であり、1例として、Z軸をZ=z2で切る平面Pに解析節点P1が設定されているものとする。但し解析節点P1は、(b)に示すように不純物の注入方向Zから見たときにA層のみの部分に設定されているものとする。
【0028】
ステップS1−1
解析節点設定手順1(図1)は、解析節点を図2(a)に示すように設定し、更に、補助節点設定手順2(図1)は、解析節点を含み不純物の注入方向(Z軸方向)に直角な平面Pに補助メッシュを設定する(図2(a))。図2(b)に示すように、ここでは、1例として補助メッシュは、等間隔aでX方向、及びY方向へ各11本設定する。この補助メッシュの交点、即ち、補助節点121個の番号を図中、左最上段から右最下段まで順番に(a1〜a121)とする。
【0029】
ステップS1−2
図3は、ステップS1−2の説明図である。
補助節点無効手順3(図1)は、図に示すように、上記ステップS1−1で補助節点121個が設定された平面Pに解析接点P1を中心とし、不純物の注入方向に半径5aの円を設定する。更に、半径5aの円外の補助節点(a1)〜(a5)、(a7)〜(a11)、(a12)、(a13)、(a21)、(a22)、(a23)、(a33)、(a34)、(a44)、(a45)、(a55)、(a67)、(a77)、(a78)、(a88)、(a89)、(a99)、(a100)、(a101)、(a109)、(a110)、(a111)〜(a115)、(a117)〜(a121)を無効補助節点とし、それ以外の補助節点を有効補助節点とする。
【0030】
ステップS1−3
層構造探索手順4(図1)は、有効補助節点anについてnが最も小さい節点を選出する。ここでは有効補助節点a6が選定される。この有効補助節点a6について層構造探索を行って縦方向の不純物濃度分布を算出する。ここでは、補助節点a6がA層のみの部分に位置しているので、A層(材質N)による注入イオンの阻止能のみ考慮して注入イオンの縦方向位置(深さ位置)による縦方向のGauss分布として分布関数f(z)が算出され、求める縦方向位置z2に於ける分布値はf(z2)として求められる。
【0031】
寄与度算出手順5(図1)は、有効補助節点a6についての水平方向の不純物濃度分布を算出し、有効補助節点a6の注入方向における位置と、探索された層構造(ここでは同一材質)と、補助節点a6から解析節点P1までの水平方向の位置に基づいて、有効補助節点a6の不純物濃度分布による解析節点P1に対する寄与度を求める。ここでは、水平方向位置によるGauss分布として分布関数g(r)が算出される。又、有効補助節点a6と解析節点P1との水平距離r、及びΔrは、図より、r=5a、及びΔr/2=a/2なので、解析節点P1における寄与度は、上記(1式)より、

と求められる。
【0032】
ステップS1−4
次に、層構造探索手順4(図1)は、有効補助節点a6を除いた有効補助節点anの内から最もnの小さい節点を選出する。ここでは有効補助節点a14が選定される。この有効補助節点a14について層構造探索を行って縦方向の不純物濃度分布を算出する。ここでは、有効補助節点a14が、図3中の左半分、即ち、A層にB層が積層されている部分に位置しているので、A層(材質N)による注入イオンの阻止能、及びB層(材質M)による注入イオンの阻止能を考慮し、注入イオンの縦方向位置によるGauss分布として分布関数F(z)が算出される(この式はA層のみの場合と異なる)。従って、求める分布値はF(z2)として求められる。又、寄与度算出手順5(図1)は、水平距離r、及びΔrは、図よりr=5a、及びΔr/2=5a/8なので、解析節点P1における寄与度は

と求めらる。
【0033】
寄与度算出手順5(図1)は、上記ステップS1−3、及びステップS1−4の演算を有効補助節点a15〜a20、a24〜a32、a35〜a43、a46〜a54、a57〜a65、a68〜a76、a79〜a87、a90〜a98、a102〜a107、a116の全てについて実行し、全ての有効な補助節点の濃度分布による解析節点P1における寄与度を求める。
【0034】
ステップS1−5
濃度分布算出手順6(図1)は、上記ステップS1−3、及びステップS1−4で求めた有効補助節点の内、A層(材質N)による領域のa6、a17〜a20、a28〜a32、a39〜a43、a50〜a54、a61〜a65、a72〜a76、a83〜a87、a94〜a98、a105〜a107、a116についての解析節点P1における寄与度ΔC(P1)a(α〜β)を全てを加算した値と、有効補助節点の内、A層(材質N)にB層(材質M)が積層された領域のa14〜a16、a24〜a27、a35〜a38、a46〜a49、a57〜a60、a68〜a71、a79〜a82、a90〜a93、a102〜a104、についての解析節点P1における寄与度

を全て加算した値とから解析節点P1の濃度C(P1)を、

として算出する。
ステップS1−6
上記ステップS1−1からステップS1−5を図2(a)に設定されている全ての解析節点について繰り返して実行し、注入ターゲット(半導体基板)のZ軸方向の解析基準点z0から深さ(z0−z2)の位置での不純物濃度分布を算出することが出来る。
【0035】
以上説明したように、本実施例による不純物濃度分布を算出する方法では、解析接点を中心とし、不純物の注入方向に直角な平面に於ける所定の円外の補助節点を無効とするので、補助節点における不純物濃度分布による上記解析節点に対する寄与度を求める計算量を、上記所定の円外の補助節点を無効とした分(1例として上記例では40/121)について削減出来るので、全体として計算コストを削減出来るという効果を得る。
【実施例2】
【0036】
図4は、実施例2による不純物濃度分布計算方法の手順説明図である。
実施例2の不純物濃度分布計算方法は、共通バス10を介してROM25、RAM9が接続されているCPU24のコンピュータ制御手順によって構成され、図に示すように解析節点設定手順1と、補助節点設定手順2と、補助節点無効手順3と、補助バンド設定手順21と、材質変化位置格納手順22と、寄与度算出手順23と、濃度分布算出手順6とを備える。実施例1との相違部分のみについて説明する。実施例1と同様の部分については、実施例1と同一の符号を付して説明を省略する。
【0037】
補助バンド設定手順21は、解析領域を不純物の注入方向に一群の短冊状補助バンドとして分割する手順である。通常、補助バンドの厚さは、材質の変化位置などに基づいて設定される。即ち、同一材質部分では補助バンドの厚さは厚く設定され、材質変化部分では補助バンドの厚さは薄く設定される。
【0038】
材質の変化位置格納手順22は、無効補助節点を除く有効補助節点が設定される上記短冊状補助バンドの各々毎に、該有効補助節点における不純物の注入方向における材質の変化位置を予め記憶RAM25へ格納する手順である。
【0039】
寄与度算出手順23は、有効補助節点の注入方向における位置と、予め記憶RAM25に格納されている層構造と、有効補助節点から解析節点までの水平方向の位置に基づいて、有効補助節点の不純物濃度分布による解析節点に対する寄与度を求める手順である。
【0040】
CPU24は、ROM25に予め格納されている所定の制御プログラムを実行することによって、上記解析節点設定手順1と、補助節点設定手順2と、補助節点無効手順3と、補助バンド設定手順21と、材質変化位置格納手順22と、寄与度算出手順23と、濃度分布算出手順6とを起動する中央演算制御装置である。
【0041】
ROM25は、上記CPU24が上記解析節点設定手順1と、補助節点設定手順2と、補助節点無効手順3と、補助バンド設定手順21と、材質変化位置格納手順22と、寄与度算出手順23と、濃度分布算出手順6とを起動するために実行する制御プログラムと制御データとを予め格納するリードオンリーメモリである。
【0042】
実施例2による不純物濃度分布の計算方法をステップS2−1〜ステップS2−8に分けて詳細に説明する。
図5は、補助バンド、補助メッシュ及び補助節点の説明図である。
この図は、本発明を説明するために、3次元(X、Y、Z)空間に配置された解析節点(図中黒丸)、補助バンド(図中点線)、及び補助メッシュの位置関係を表す図である。(a)は、注入ターゲットの側面図であり、(b)は、補助メッシュの拡大図である。(a)に示すように注入ターゲットは、材質Nで膜厚(z3−z1)のA層に、材質Mで膜厚(z1−z0)のB層が積層されているものとする。又、不純物の注入方向(Z軸方向)に図中左から厚さwの短冊状の補助バンドW1〜W5が設定されるものとする。1例として補助バンドW1〜W5の厚さを全てwとし、Z軸方向の解析基準位置z0から深さ(z3−z0)のX−Y平面上に、補助バンドの境界面近傍に解析節点Q1からQ4が設定されているものとする。
【0043】
ステップS2−1
補助バンド設定手順21(図2)は、注入ターゲットを1群の補助バンドに分割する。この補助バンドの境界には、A層のみの部分とA層にB層が積層された部分との境界を含ませることとする。ここでは、解析領域を補助バンドW1〜W5に分割する。補助バンドW3と補助バンドW4との境界にA層のみの部分とA層にB層が積層された部分との境界を含ませる。
【0044】
ステップS2−2
解析節点設定手順1(図1)は、解析節点Q1からQ4を図5(a)に示すようにZ軸方向の解析基準位置z0から深さ(z3−z0)のX−Y平面上に、補助バンドの境界面近傍に設定する。この補助バンドの幅wは、同一補助バンド内部での層構造が等しくなることを目処にして設定される。ここでは、補助バンドW1〜W3の層構造は、Z=z0からZ=z1までは材質Mであり、Z=z1からZ=z3までは材質Nである。又、補助バンドW4、及びW5の層構造は、Z=z1からZ=z3までは積層無しで、Z=z1からZ=z3までは材質Nである。この層構造は、材質変化位置格納手順22(図4)によって予めコンピュータ内部の所定のメモリに格納される。
【0045】
ステップS2−3
補助節点設定手順2(図4)は、解析節点を含み不純物の注入方向(Z軸方向)に直角な平面Qに補助メッシュを設定する。ここでは、解析節点Q3に設定された補助メッシュのみについて説明する。図5(b)に示すように、1例として補助メッシュは、等間隔bでX方向、及びY方向へ各11本(1例)設定する。この補助メッシュの交点、即ち、補助節点121個の番号を図中、左最上段から右最下段まで順番に(b1〜b121)とする。
【0046】
ステップS2−4
図6は、ステップS2−4の説明図である。
補助節点無効手順3(図4)は、図に示すように、上記ステップS2−3で補助節点121個が設定された平面Qに解析接点Q3を中心とし、不純物の注入方向に半径5bの円を設定する。更に、半径5bの円外の補助節点(b1)〜(b5)、(b7)〜(b11)、(b12)、(b13)、(b21)、(b22)、(b23)、(b33)、(b34)、(b44)、(b45)、(b55)、(b67)、(b77)、(b78)、(b88)、(b89)、(b99)、(b100)、(b101)、(b109)、(b110)、(b111)〜(b115)、(b117)〜(b121)を無効補助節点とし、それ以外の補助節点を有効補助節点とする。
【0047】
ここで、有効補助節点b14〜b16、b24〜b27、b35〜b38、b46〜b49、b56〜b60、b68〜b71、b79〜b82、b90〜b93、b102〜b104は、補助バンドW3の内部に位置している。即ち、A層(材質N)、及びB層(材質M)が積層されている部分に位置している(図中ハッチング部分)。有効補助節点b6、b17〜b20、b28〜b32、b39〜b43、b50〜b54、b61〜b65、b72〜b76、b83〜b87、b94〜b98、b105〜b108、b116は、補助バンドW4の内部に位置している。即ち、A層(材質N)のみの部分に位置している(図中空白部分)。
【0048】
ステップS2−5
寄与度算出手順23(図4)は、有効補助節点bnについてnが最も小さい節点を選出する。ここでは有効補助節点b6が選定される。この有効補助節点a6について、ステップS2−2で予めコンピュータ内部の所定のメモリに格納されている層構造を読み出す。ここでは補助バンドW4に属するので、層構造は、Z=z1からZ=z3までは材質Nであり、Z=z0からZ=z1までは積層無しである。ここでは、補助節点a6がA層のみの部分に位置しているので、A層(材質N)による注入イオンの阻止能のみ考慮して注入イオンの縦方向位置(深さ位置)による縦方向のGauss分布として分布関数f(z)が算出され、求める縦方向位置z2に於ける分布値はf(z2)として求められる。この分布関数f(z)は上記コンピュータ内部の所定のメモリに格納され、以後の処理では、自在に読み出される。
【0049】
寄与度算出手順23(図4)は、有効補助節点b6についての水平方向の不純物濃度分布を算出し、有効補助節点b6の注入方向における位置と、所定のメモリから読み出された層構造(ここでは同一材質N)と、補助節点b6から解析節点Q3までの水平方向の位置に基づいて、有効補助節点b6の不純物濃度分布による解析節点Q3に対する寄与度を求める。ここでは、水平方向位置によるGauss分布として分布関数g(r)が算出される。又、有効補助節点b6と解析節点Q3との水平距離r、及びΔrは、図より、r=5a、及びΔr/2=a/2なので、解析節点Q3における寄与度は、上記(1式)より、

と求められる。
【0050】
ステップS2−6
次に、寄与度算出手順23(図4)は、有効補助節点b6を除いた有効補助節点bnの内から最もnの小さい節点を選出する。ここでは有効補助節点b14が選定される。この有効補助節点b14についてステップS2−2で予めコンピュータ内部の所定のメモリに格納されている層構造を読み出す。ここでは補助バンドW3に属するので、層構造は、Z=z0からZ=z1までは材質Mであり、Z=z1からZ=z3までは材質Nである。即ち、A層にB層が積層されている部分に位置しているので、A層(材質N)による注入イオンの阻止能、及びB層(材質M)による注入イオンの阻止能を考慮し、注入イオンの縦方向位置によるGauss分布として分布関数F(z)が算出される(この分布関数f(z)は上記コンピュータ内部の所定のメモリに格納され、以後の処理では、自在に読み出される)。従って、求める分布値はF(z2)として求められる。又、水平距離r、及びΔrは、図よりr=5b、及びΔr/2=5b/8なので、解析節点Q3における寄与度は

と求められる。
【0051】
寄与度算出手順23(図4)は、上記ステップS2−5、及びステップS2−6の演算を有効補助節点b15〜b20、b24〜b32、b35〜b43、b46〜b54、b57〜b65、b68〜b76、b79〜b87、b90〜b98、b102〜b107、b116の全てについて実行し、全ての有効な補助節点の濃度分布による解析節点Q3における寄与度を求める。
【0052】
ステップS2−7
濃度分布算出手順6(図4)は、上記ステップS2−5、及びステップS2−6で求めた有効補助節点の内、補助バンドW4に属するb6、b17〜b20、b28〜b32、b39〜b43、b50〜b54、b61〜b65、b72〜b76、b83〜b87、b94〜b98、b105〜b107、b116についての解析節点Q3における寄与度

を全て加算した値と、有効補助節点の内、補助バンドW3に属するb14〜b16、b24〜b27、b35〜b38、b46〜b49、b57〜b60、b68〜b71、b79〜b82、b90〜b93、b102〜b104、についての解析節点Q3における寄与度

を全て加算した値とから解析節点Q3の濃度C(Q3)は、

として算出される。
【0053】
ステップS2−8
上記ステップS2−1からステップS2−7を図5(a)に設定されている全ての解析節点について繰り返して実行し、注入ターゲット(半導体基板)のZ軸方向の解析基準点z0から深さ(z0−z2)の位置での不純物濃度分布を算出することが出来る。
【0054】
以上説明したように、本実施例による不純物濃度分布を算出する方法では、解析領域を1群の補助バンドに分割し、そのバンド幅は、同一補助バンド内部での層構造が等しくなることを目処にして設定することによって、実施例1の効果に加えて、注入イオンの縦方向位置(深さ位置)による分布関数f(z)を所定のメモリから読み出して使用することが出来るので計算量が大幅に削減されるという効果を得る。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上の説明では、不純物の注入方向をZ軸方向に一致させた場合のみについて説明したが、本発明は、この例に限定されるものではない。即ち、不純物の注入方向がZ軸方向と所定の角度を有している場合であっても、不純物の注入方向に対して直角な平面に補助メッシュを設定する事によって、上記説明と全く同様に処理することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例1による不順物濃度分布計算方法の手順説明図である。
【図2】補助メッシュ及び補助節点の説明図である。
【図3】ステップS1−2の説明図である。
【図4】実施例2による不順物濃度分布計算方法の手順説明図である。
【図5】補助バンド、補助メッシュ及び補助節点の説明図である。
【図6】ステップS2−4の説明図である。
【図7】不純物濃度分布の説明図である。
【図8】解析節点及び補助メッシュの説明図である。
【符号の説明】
【0057】
1 解析節点設定手順
2 補助節点設定手順
3 補助節点無効手順
4 層構造探索手順
5 寄与度算出手順
6 濃度分布算出手順
7 CPU
8 ROM
9 RAM
10 共通バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
解析領域内に所定の解析節点を設定し、該解析節点に基づいて前記解析領域内における不純物濃度分布を算出する不純物濃度分布の計算方法であって、
前記解析節点を含み前記不純物の注入方向に直角な平面に所定の間隔で補助メッシュを設定し、該補助メッシュの交点を補助節点とする手順と、
前記解析接点を中心とし、前記不純物の注入方向に直角な平面上に於ける所定の円外の補助節点を無効補助節点とする手順と、
前記無効補助節点を除く有効補助節点に基づいて、該有効補助節点の注入方向における層構造の探索を行う手順と、
前記有効補助節点の注入方向における位置と、前記探索された層構造と、前記有効補助節点から前記解析節点までの水平方向の位置に基づいて、前記有効補助節点の不純物濃度分布による前記解析節点に対する寄与度を求める手順と、
該解析節点に対する寄与度を前記有効補助節点の全てについて加算する手順を含むことを特徴とする不純物濃度分布の計算方法。
【請求項2】
解析領域内に所定の解析節点を設定し、該解析節点に基づいて前記解析領域内における不純物濃度分布を算出する不純物濃度分布の計算方法であって、
前記解析領域を不純物の注入方向に一群の短冊状補助バンドとして分割する手順と、
前記解析節点を含み前記不純物の注入方向に直角な平面に所定の間隔で補助メッシュを設定し、該補助メッシュの交点を補助節点とする手順と、
前記解析接点を中心とし、前記不純物の注入方向に直角な平面の所定の円外の補助節点を無効補助節点とする手順と、
前記無効補助節点を除く有効補助節点が設定される前記短冊状補助バンドの各々毎に、該有効補助節点における前記不純物の注入方向における材質の変化位置を予め記憶する手順と、
前記有効補助節点の前記不純物の注入方向における位置と、前記予め記憶する材質の変化位置と、前記有効補助節点から前記解析節点までの水平方向の位置に基づいて、前記有効補助節点の不純物濃度分布による前記解析節点に対する寄与度を求める手順と、
該解析節点に対する寄与度を前記有効補助節点の全てについて加算する手順を含むことを特徴とする不純物濃度分布の計算方法。
【請求項3】
前記一群の短冊状補助バンドの分割位置は、前記不純物の注入方向における前記材質の変化位置に基づいて設定されることを特徴とする請求項2に記載の不純物濃度分布の計算方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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