説明

不織ウェブを加熱する方法

【課題】 伸張型の欠陥の少ない多成分不織布帛を得る方法が要望される。
【解決手段】 第1のポリマー成分と、第2のポリマー成分とを含んでなる多成分不織布帛を加熱処理する方法であって、第1のポリマー成分の融点または軟化点が、第2のポリマー成分の融点または軟化点より低く、不織布帛を0〜52.5N/mの任意の一方向で張力をかけながら、不織布帛を約(T−40)℃(Tは第1のポリマー成分の融点または軟化点である)より高いが(T−10)℃より低い温度まで加熱することを含んでなる方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織ウェブを熱処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不織、編および織布帛のようなシートタイプの材料を乾燥および熱処理する方法は当業界で知られている。例えば、プロセス中にシートを引っ張るのに用いられる比較的高い張力に耐えることのできるシート材料を乾燥するのに好適な空気衝突および浮遊乾燥機は当業界で知られている。多孔性シート材料もまた、布帛をドラムやベルトのような多孔性表面に留めて、空気のような加熱ガスを布帛を通して引くことにより低い張力で、または実質的に張力をかけずに、加熱することができる。例えば、スルーエアボンダにおいては、シートの片側のホットエアが、逆側に真空を与えることにより、シートを通して引かれる。真空はまたシートが支持されている多孔性表面にシートを留める役割も果たしている。布帛を蒸気缶に通過させることにより化学仕上げ組成物で局所的に処理しておいた不織ウェブから残渣の水を除去することも知られている。
【0003】
コートされたウェブを処理するためにマスコー(Mascoe)により開発された空気浮遊乾燥機は、非特許文献1に記載されている。浮遊システムは、搬送コンベヤやテンターを用いずに、そして10ポンド以下の直線張力を用いて何らかの支持表面と接触させることなく、幅60インチ、長さ50フィートまでのウェブを支持することができると記載されている。かかる乾燥機には、高速処理には容易に適用できないという制限がある。その他の低張力乾燥機は、非特許文献2に開示されている。一例を挙げると、布帛は、コンベヤベルトを用いて張力をかけない状態で、布帛をオーバーフィードし、交互の上下気流により波状に布帛が移動するセクションと、ベルト下で吸引がなされるセクションとの間を交互に搬送される。
【0004】
しかしながら、公知の乾燥プロセスだと、乾燥プロセス中に不織ウェブに欠陥、例えば、布帛シート中に波や皺が形成される可能性がある。布帛中のポリマーファイバー成分が比較的低融点の材料であるときはとりわけである。
【0005】
【非特許文献1】コート布帛ジャーナル(Journal of Coated Fabrics)、25巻、1996年1月、190〜204頁
【非特許文献2】インターナショナルダイヤー(International Dyer)、185、3番、27頁(2000年3月)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
比較的低融点のポリマーファイバー成分を含んでなる不織ウェブまたはシートに適用された化学仕上げ剤を乾燥および/または硬化したり、乾燥した不織シートまたはウェブに欠陥を生じることなく、かかる不織ウェブやシートを熱処理することができると有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施態様において、本発明は、熱可塑性ポリマーファイバーと、溶剤と少なくとも1種類の化学剤とを含んでなる化学仕上げ組成物とを含んでなる不織布帛を提供する工程と、不織布帛に張力を適用し、化学仕上げ組成物を含有する布帛を、第1の乾燥ゾーンを通して搬送する工程であって、不織布帛が第1の乾燥ゾーンを出る際に、不織布帛の溶剤含量が、不織布帛の乾燥重量に基づいて約2重量パーセント以上まで減じる工程と、第1の
乾燥ゾーンから第2の乾燥ゾーンまで不織布帛を搬送する工程であって、第2の乾燥ゾーンで不織布帛に適用された張力が、第1の乾燥ゾーンで不織布帛に適用された張力より少ない工程と、第2の乾燥ゾーンにおいて不織布帛を加熱して、不織布帛から溶剤を実質的に完全に除去する工程と、不織布帛を冷却ゾーンにおいて冷却する工程とを含んでなる化学仕上げ組成物が適用された不織布帛を乾燥する方法に関する。
【0008】
他の実施態様において、本発明は、第1のポリマー成分と、第2のポリマー成分とを含んでなる多成分不織布帛を加熱処理する方法であって、第1のポリマー成分の融点または軟化点が、第2のポリマー成分の融点または軟化点より低く、不織布帛を0〜52.5N/mの任意の一方向で張力をかけながら、不織布帛を約(T−40)℃(Tは第1のポリマー成分の融点または軟化点である)より高いが(T−10)℃より低い温度まで加熱することを含んでなる方法に関する。
【0009】
本発明の他の実施態様は、第1の加熱ゾーンと、第2の加熱ゾーンと、第1および第2の加熱手段の間に配置された張力分離手段とを含んでなり、張力分離手段は、第1の加熱ゾーンを通して搬送される際にシートに張力を適用して、シートが張力分離手段を出る際にシートにかかる張力を減じて、第2の加熱ゾーンを通して搬送される、シート材料を熱処理する装置に関する。
【0010】
本発明の他の実施態様は、ポリエチレンを含んでなるファイバーを含んでなる不織布帛であって、不織布帛に化学剤が適用されており、フレージャ空気透過率が少なくとも5m/分/mであり、1.2伸張型の欠陥/mであることを特徴とする不織布帛に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
熱可塑性ポリマーファイバーからできた不織布帛に張力をかけながら加熱すると、布帛中に波や皺として現れる欠陥が形成されることが分かっている。例えば、空気衝突および浮遊乾燥機、ならびに蒸気缶を利用したプロセスでは、加熱した布帛を引いたり、プロセスから取り出す際に、機械方向に張力をかける必要がある。実質的に布帛の面に張力をかけないようにしながら、布帛に吸引を与え、加熱中多孔性表面に布帛を留め、スルーエアボンディングプロセスでは、シートが十分な多孔性を有していて、シートを通して空気を引くことができる必要がある。透気性の低い不織布帛、例えば、化学仕上げ組成物で局所処理されたSMS(スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド)複合体不織布帛を乾燥するのにスルーエアプロセスを用いるときには、更に問題が生じる。かかる布帛を通過する加熱ガスの流れによって、加熱ガスが布帛を通して送られ引かれる際に仕上げの一部が失われる。
【0012】
本発明は、化学仕上げ組成物で局所処理された透気性の比較的低い不織布帛を乾燥するのに好適なプロセスに関する。本プロセスだと、伸張型の欠陥が形成されず、乾燥中に、局所的に適用された化学剤が大幅に失われることもない。
【0013】
本明細書において用いる「ポリエステル」という用語には、少なくとも85%の繰り返し単位がジカルボン酸とジヒドロキシアルコールの縮合生成物であって、結合がエステル単位の形成によりなされているポリマーが含まれるものとする。これには、芳香族、脂肪族、飽和および不飽和二酸および二アルコールが含まれる。本明細書において用いる「ポリエステル」という用語には、コポリマー(例えば、ブロック、グラフト、ランダムおよび交互のコポリマー)ブレンドおよびこれらの変性体も含まれる。ポリエステルとしては、エチレングリコールとテレフタル酸の縮合生成物であるポリ(エチレンテレフタレート)(PET)および1,3−プロパンジオールとテレフタル酸の縮合生成物であるポリ(トリメチレンテレフタレート)が例示される。
【0014】
本明細書において用いる「ポリエチレン」という用語には、エチレンのホモポリマーばかりでなく、少なくとも85%の繰り返し単位がエチレン単位であるコポリマーも含まれるものとする。
【0015】
本明細書において用いる「線状低密度ポリエチレン」(LLDPE)という用語は、約0.955g/cm未満、好ましくは0.91g/cm〜0.95g/cm、より好ましくは0.92g/cm〜0.95g/cmの密度を有する線状エチレン/α−オレフィンコポリマーのことを指す。線状低密度ポリエチレンは、エチレンを、少量のアルファ,ベータ−エチレン化不飽和アルケンコモノマー(α−オレフィン)で共重合することにより調製される。このα−オレフィンコモノマーはα−オレフィン1分子当たり3〜12個の炭素、好ましくはα−オレフィン1分子当たり4〜8個の炭素を有している。本発明において有用なLLDPEを生成するためのエチレンと共重合可能なアルファ−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンまたはこれらの混合物が挙げられる。α−オレフィンは1−ヘキセンまたは1−オクテンであるのが好ましい。かかるポリマーは、ポリマー「主鎖」から懸垂した重合モノマー単位の分岐鎖が実質的にないため、「線状」と呼ばれる。
【0016】
本明細書で用いる「不織布帛」および「不織ウェブ」という用語は、編布と異なり、不規則に配置されて、編布のような識別可能なパターンなしで平面材料を形成する個々のファイバー、フィラメントまたはスレッドの構造のことを意味する。不織布およびウェブとしては、スパンボンド連続フィラメントウェブ、メルトブローンウェブ、カードウェブ、エアレイドウェブおよびウェットレイドウェブが例示される。
【0017】
本明細書で用いる「メルトブローンファイバー」という用語は、メルト処理可能なポリマーを、複数の毛管から、溶融流れとして高速ガス(例えば、空気)流れに押出すことを含んでなるメルトブローンにより形成されるファイバーを意味する。高速ガス流は、溶融熱可塑性ポリマー材料の流れを減衰させて、その直径を減じ、直径約0.5〜10ミクロンのメルトブローンファイバーを形成する。メルトブローンファイバーは、通常、不連続ファイバーであるが、連続とすることもできる。高速ガス流れにより運ばれたメルトブローンファイバーは、通常、収集表面に堆積されて、不規則に分散したファイバーのメルトブローンウェブを形成する。
【0018】
本明細書で用いる「スパンボンド」ファイバーという用語は、熱可塑性ポリマー材料を、紡績口金の複数の微細な、通常は円状の毛管から、ファイバーとして押出し、押出されたフィラメントの直径を延伸および急冷により即時に減少させることにより形成されるファイバーのことを意味する。楕円、多葉等といったその他のファイバー断面形状もまた用いることができる。スパンボンドファイバーは、一般に、連続フィラメントであり、平均直径が約5ミクロンを超える。スパンボンド不織ウェブは、スパンボンドファイバーを、当業界で公知の方法を用いて、有孔スクリーンやベルトといった収集表面に不規則に配置することによって形成される。スパンボンドウェブは、スパンボンドウェブ表面に配置された複数の別個のサーマルボンドポイント、ライン等でウェブをサーマルポイントボンディングによる等、当業界に公知の方法によりボンドされる。
【0019】
本明細書で用いる「多成分ファイバー」という用語は、共にスパンされて単一のファイバーを形成する少なくとも2つの別個のポリマーから構成されるファイバーのことを指す。本明細書において用いる「ファイバー」には、連続フィラメントと不連続(ステープル)ファイバーの両方が含まれる。「別個のポリマー成分」という用語は、少なくとも2つのポリマー成分のそれぞれが、多成分ファイバーの断面を超えて別個の実質的に一定して配置されたゾーンに配置され、ファイバーの長さに沿って実質的に連続して伸張している
、例えば、サイドバイサイド、シース−コア、楔、中空楔または当業界に公知のその他の分節型断面にあるファイバーのことを意味する。多成分ファイバー中のポリマー成分は、化学的に異なっていても、同じ化学組成物を有していてもよいが、異性体、結晶度、収縮、弾性、分子量またはその他特性が異なっている。多成分ファイバーは、別個のポリマーのゾーンが形成されていないポリマー材料の単一の均一なメルトブレンドから押出されたファイバーとは区別される。しかしながら、多成分ファイバー中の1つもしくはそれ以上のポリマー成分は異なるポリマーのブレンドとすることができる。
【0020】
本明細書において用いる「多成分不織布帛」という用語は、多成分ファイバーを含んでなる不織布帛のことを指す。本発明のプロセスは、低融点ポリマー成分と高融点ポリマー成分とを含む多成分不織布帛の熱処理に特に好適である。低融点ポリマー成分は、高融点ポリマー成分の融点より少なくとも10℃低い融点を有しているのが好ましい。例えば、不織布帛は、コンジュゲート(2成分)ファイバーを含んでなるコンジュゲート(2成分)不織布帛とすることができる。
【0021】
コンジュゲート不織布帛を作成するのに好適なポリマーの組み合わせとしては、ポリエステル/ポリエチレン、ポリプロピレン/ポリエチレン、およびポリアミド/ポリエチレンが例示される。ポリエステル/ポリエチレンポリマーの組み合わせとしては、ポリ(エチレンテレフタレート)/線状低密度ポリエチレン、およびポリ(トリメチレンテレフタレート)/線状低密度ポリエチレンが例示される。各ファイバー中の2つのポリマー成分の比率は体積基準(例えば、定量ポンプ速度の比率として測定)で約10:90〜90:10、好ましくは約30:70〜70:30、最も好ましくは約40:60〜60:40である。
【0022】
「伸張型の欠陥」という用語は、不織布帛を加熱しながら、布帛に張力をかけたときに生じる欠陥を説明するのに本明細書では用いている。伸張型の欠陥は、欠陥の長さ方向が加熱中に張力をかけた方向と通常は並んでおり、長さが約2.5〜5.0センチメートルの波または皺として布帛に現れる。例えば、布帛を加熱プロセス中に機械方向に引くプロセスで生じるような、機械方向に布帛に適用された張力により欠陥が形成されるとき、皺は長く、機械方向に配向される。テンターフレームプロセスにおける等、布帛に交差方向の張力をかけるプロセスを用いる場合には、欠陥は交差方向配向で形成される。加熱中に布帛に適用される張力が増大する際に、欠陥はより顕著となり、波状欠陥の振幅および回数が増える。伸張型の欠陥の形成は、張力が適用された方向に垂直な不織布帛の寸法の減少を伴う。
【0023】
「蛇紋岩ロール」という用語は、不織ウェブまたはその他のシートタイプの材料を連続ロール下または上に向け、交互のロールが逆方向に回転するように互いに配置された一連の2本以上のロールを指すのに本明細書では用いている。
【0024】
図1は、本発明のプロセスおよび装置の実施態様を示す概略図である。溶剤と化学剤とを含んでなる化学仕上げ組成物で局所的に処理された熱可塑性ポリマーファイバーを含んでなる不織布帛1が、ディップ−スクイーズプロセスのような化学処理プロセス(図示せず)から第1の乾燥ゾーンを通して搬送される。本明細書において、「乾燥ゾーン」には、熱源が組み込まれて布帛を乾燥または加熱処理するのを補助する加熱ゾーンが含まれる。ただし、これに限られるものではない。同様に、乾燥は、真空蒸着のようなその他の手段または当業界に公知の方法によって影響を受け得る。
【0025】
局所的に適用される仕上げ成分に用いる化学剤としては、フルオロケミカル、難燃剤、湿潤剤、バインダー、帯電防止剤および着色剤が例示される。2種類以上の化学剤を仕上げ組成物に含有させることができる。溶剤を用いて、化学剤を溶解および/または分散し
て、不織布帛に適用される仕上げ組成物を形成する。溶剤は、通常、本発明のプロセスにおいて加熱により除去可能な1種類もしくはそれ以上の揮発性組成物を含んでなる。図1に示す実施態様において、第1の乾燥ゾーンは空気衝突浮遊乾燥機2を含んでいる。ホットエアは、布帛の両側に配置された複数の空気供給スロット3から送られる。衝突空気流によって、一組の3本の蛇紋岩ロール4により布帛に適用された張力により乾燥機から布帛を引くと布帛が浮遊する。ホットエアによって、布帛が乾燥機2を通して搬送される際に、化学仕上げ組成物から溶剤が蒸発する。溶剤が蒸発する際に、溶剤の蒸発熱のためにホットエアの温度に比べて布帛温度は比較的低いままとなる。溶剤を第1の乾燥ゾーンにおいて完全に蒸発させる場合は、布帛の温度が乾燥機のホットエアの温度まで即時に上昇する。本発明のプロセスにおいては、ウェブの温度が伸張型の欠陥を形成させるほど上がらないよう、第1の乾燥ゾーンにおいて溶剤を完全に除去しないことが重要である。例えば、ホットエア温度200°F(93℃)を用いて浮遊乾燥機において、スパンボンドファイバーが線状低密度ポリエチレンシースとポリエステルコアを含んでなる複合体SMS不織布帛を実質的に完全に乾燥させようとしたところ、伸張型の欠陥が形成された。コンジュゲートスパンボンドファイバーの高融点ポリエステルコア成分が、かかる条件下で伸張型の欠陥の形成を防ぐことが予測されていたため、これは意外であった。
【0026】
不織布帛が第1の乾燥ゾーンから出る際、不織布帛の乾燥重量に基づいて計算したところ少なくとも2重量パーセントの溶剤を含有している。不織布帛は第1の乾燥ゾーンを出る際、好ましくは約2〜40重量パーセントの溶剤、より好ましくは約2〜20重量パーセントの溶剤、最も好ましくは約5〜15重量パーセントの溶剤を含有している。十分な溶剤を蒸発させて、布帛から化学剤が大幅に失われることなく、部分乾燥された不織布帛にスルーエアタイプのプロセスを施すことができるよう、第1の乾燥ゾーンから出る布帛の透気率を十分に増大させるのが好ましい。スルーエアプロセスに用いるのに好適な布帛のフレージャ空気透過率は、通常、5m/分/m以上である。
【0027】
不織布帛が少なくとも2重量パーセントの溶剤を含んでなる限りは、不織布帛の温度は比較的低いままであるため、伸張型の欠陥を生じることなく、第1の乾燥ゾーンにおいて布帛には比較的高い張力を施すことができる。例えば、張力を布帛の幅で除算した布帛に適用される力として計算すると、0.3ポンド/直線インチ(52.5N/m)を超える張力、場合によっては0.4ポンド/直線インチ(70.1N/m)を超える、または0.5ポンド/直線インチ(87.6N/m)を超える張力を第1の乾燥ゾーンで用いることができる。不織ウェブが約(T−30)℃(Tは最低融点ポリマー成分の融点または軟化点(または、単一成分ファイバーの場合には1種類のポリマー成分))を超える、場合によっては約(T−40)℃を超える温度に達する場合、伸張型の欠陥は0.3ポンド/直線インチ(52.5N/m)と低い張力で形成できる。
【0028】
その他の乾燥手段を図1に示す空気衝突乾燥機の代わりに、またはそれに加えて第1の乾燥ゾーンで用いることができる。例えば、テンターフレーム装置を用いて、布帛をその端部に沿ってピンでフレームに取り付けて、ホットエアを布帛の片側または両側に衝突させることができる。ホットエアの代わりに、一連の赤外ヒータを用いたり、マイクロ波エネルギーを用いて溶媒(例えば、水)を蒸発させる領域に通過させることにより、布帛を加熱することができる。あるいは、布帛を蒸気缶のような加熱固体ドラム周囲に巻き付けることができる。
【0029】
第1の乾燥ゾーンで用いる乾燥手段は、不織布帛に適用された化学剤が大幅に失われないように選択するのが好ましい。第1の乾燥ゾーンから出る布帛は、布帛が第1の乾燥ゾーンに入ったときに元々含有されていた化学剤を合計で好ましくは少なくとも80パーセント、より好ましくは少なくとも約95パーセント、最も好ましくは少なくとも約98パーセント含有している。局所仕上げ処理を含む不織布帛の透気率が、第1の乾燥ゾーンに
入る際に低い場合には、濡れた布帛から空気が通過する際に化学仕上げ組成物の一部が布帛から押出されるため、第1の乾燥ゾーンでスルーエア乾燥方法を用いるのは、通常、好適ではない。非常に低いエアフローをスルーエア乾燥プロセスでは用いても、乾燥機は非常に大きく非効率なものとなってしまう。
【0030】
第1の乾燥ゾーンから不織布帛を引くのに与えられる張力に加えて、蛇紋岩ロール4はまた張力分離手段としても機能する。「張力分離手段」という用語は、布帛にかかる張力を減少または除去して、張力分離手段から出る布帛に適用された張力が、張力分離手段に入る布帛よりも低くなるようにする手段を説明するのに本明細書では用いている。張力分離手段から出る布帛にかかる張力は、張力分離手段に入る際に布帛に適用される張力より少なくとも50%低いのが好ましい。代替の張力分離手段は、2本のロール間に形成されたニップを有している。不織布帛が十分に乾燥されて、布帛がニップを布帛が通った結果、大量の仕上げが布帛から搾り出されない場合には、ウェブにかかった張力を分離するニップを用いるのが好適である。
【0031】
部分的に乾燥した不織布帛が蛇紋岩ロールを出たら、0.3ポンド/直線インチ(52.5N/m)以下の張力、好ましくは約0.1ポンド/直線インチ(17.5N/m)以下の張力で第2の乾燥ゾーンを通して搬送される。第2の乾燥ゾーンにおいて布帛の面の任意の方向の張力は、できる限りゼロN/mに近いのが好ましい。
【0032】
図1に示す実施態様において、蛇紋岩ロールを出る部分的に乾燥した不織布帛は、多孔性ベルト5と接触して、真空ベルト乾燥機6を含む第2の乾燥ゾーンを通して搬送される。布帛の上のブロワから提供されたホットエアを、布帛の下にある真空源7により布帛を通して引く。真空吸引によって、不織布帛が多孔性ベルトに留められて、不織布帛は第2の乾燥ゾーンを通して搬送され、布帛の面に張力が実質的に適用されずにベルトに留められる。不織布帛に残った溶剤は、第2の乾燥ゾーンにおいて実質的に完全に除去されて、布帛の温度を乾燥機内の加熱空気の温度に達する、またはこれに等しい温度まで上げる。溶剤蒸発の結果として、布帛の透気性が第1の乾燥ゾーンにおいて増大するため、第2の乾燥ゾーンにおいて布帛を通過する加熱空気のフローによって、不織布帛に含有される化学剤の量が大幅に減じることはない。第2の乾燥ゾーンから出る布帛は、布帛が第2の乾燥ゾーンに入ったときに含有されていた化学剤を好ましくは少なくとも95パーセント、より好ましくは少なくとも98パーセント含有している。
【0033】
不織布帛に適用された化学剤がフルオロケミカルのような硬化性材料である場合には、第2の乾燥ゾーンはまた硬化ゾーンとしても機能する。この場合は、第2の乾燥ゾーンにおいて硬化性材料を硬化するのに十分な温度まで十分な時間にわたって布帛を加熱する。本明細書において、「硬化」という用語は、不織布帛に適用された化学仕上げ組成物内に含有される化学剤の重合反応を完了、または修正する条件下で不織布帛を熱処理することを指す。例えば、熱処理によって、布帛表面の化学剤分子の再配向や化学剤の架橋がなされる。硬化によって、化学剤の性能が改善されたり、不織布帛に所望の特性が与えられる。例えば、化学剤が硬化性フルオロケミカルであるときは、硬化によって、未硬化のフルオロケミカルを含有する不織布帛に比べて、不織布帛の撥水性および撥アルコール性が改善される。
【0034】
その他の乾燥手段を図1に示すスルーエアタイプの乾燥機の代わりに、またはそれに加えて第2の乾燥ゾーンで用いることができる。例えば、交差方向の張力が0.3lb./直線インチ(52.5N/m)以下、好ましくは0.1lb./直線インチ(17.5N/m)以下となるように、ピン幅を調整し、空気を下から吹き付けることにより布帛を支持して、テンターフレームを用いることができる。
【0035】
布帛には、第2の乾燥ゾーンにおいて低い張力がかかるため、第2の乾燥ゾーンにおける布帛の温度を、これより高い張力だと布帛に伸長型の欠陥が形成される温度まで増大させることができる。例えば、不織布帛は、伸張型の欠陥を形成することなく、約(T−40)℃(Tは不織布帛における最低融点(または1種類のみの)ポリマー成分の融点または軟化点)より高い温度まで、場合によっては約(T−30)℃を超える温度まで加熱することができる。スルーエアボンディングプロセスとは異なり、第2の乾燥ゾーンにおける不織布帛の温度は、最低融点ポリマー成分の融点より大幅に低い。不織布帛は、不織布帛のファイバー中の低融点ポリマー成分の軟化または溶解により、不織布帛のファイバー間をさらにボンディングさせるほど高い温度まで加熱しない。これは、不織布帛を、最低融点ポリマー成分の溶解または軟化のためにファイバー間をボンディングさせるほど十分に高い温度まで加熱するスルーエアボンディングプロセスとは異なる。第2の乾燥ゾーンにおける布帛の温度は、好ましくは約(T−5)℃、より好ましくは約(T−10)℃、場合によっては約(T−15)℃未満である。
【0036】
乾燥した布帛が第2の乾燥ゾーンを出る際、プロセスから取り出すために布帛に大きな張力を適用する前に冷却ゾーンを通過する。図1に示す実施態様において、布帛を実質的に張力をかけない状態でベルトに留めたまま、布帛を通る周囲空気を引く冷却ゾーンは第2の真空源8を含んでなる。例えば、冷空気衝突プロセスまたは軽水スプレーといった他の低張力冷却方法を用いることができる。布帛は冷却ゾーンで、十分低温まで冷却されて、伸張型の欠陥を形成することなくベルトから出る際に、布帛に張力を適用して、例えば、布帛をロールに巻き付ける。例えば、布帛は、約(T−30)℃(Tは不織布帛における最低融点(または1種類のみの)ポリマー成分の融点または軟化点)未満、場合によっては約(T−40)℃未満の温度まで冷却することができる。布帛を低張力(例えば、約52.5N/m未満、好ましくは約17.5N/m未満)で集める場合には、布帛は冷却せずに集める。
【0037】
本発明の乾燥プロセスは、高ウェブ速度、例えば、150ヤード/分(137m/分)で実施することができる。ライン速度は好ましくは225ヤード/分(206m/分)を超える、より好ましくは、350ヤード/分(320m/分)を超える。
【0038】
本発明のプロセスに従って乾燥された不織布帛は、好ましくは1欠陥/yd(1.2欠陥/m)未満、より好ましくは0.5欠陥/yd(0.6欠陥/m)未満、最も好ましくは実質的にゼロの欠陥/mのレベルの伸張型の欠陥を有するのが好ましい。
【0039】
試験方法
上述の説明および後述の実施例において、以下の試験方法を用いて、様々な記録された特徴および特性を求めた。ASTMとは、アメリカ試験材料学会のことである。
【0040】
フレージャ透気率は、シートの表面間の指定された圧力差でのシートを通過する気流の尺度であり、本明細書に参照により援用されるASTM D737により実施され、m/分/mで記録してある。
【0041】
伸張型の欠陥のレベルは、機械方向に6yd(5.5メートル)、交差方向に0.5yd(0.46m)の寸法に切断した張力をかけていない布帛試料の反射光で目視検査により判定した。
【実施例】
【0042】
実施例で用いた不織布帛は、秤量が1.8oz/yd(61.0g/m)のスパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)複合体不織布帛であった。スパンボンド層を、シースが線状低密度ポリエチレン(エクイスター(Equistar)より入手
、融点125℃))とポリ(エチレンテレフタレート)コア(クリスター(Crystar)(登録商標)4449、デュポン(DuPont)より入手可能)のシース−コア断面を有するコンジュゲートファイバーから形成した。メルトブローン層は、線状低密度ポリエチレン(エクイスター(Equistar)、融点125℃))とポリ(エチレンテレフタレート)コア(クリスター(Crystar)(登録商標)4449、デュポン(DuPont)より入手可能)でできたサイドバイサイド断面を有するコンジュゲートファイバーから構成されていた。スパンボンドファイバー中のポリエステル成分対ポリエチレン成分の比率は重量基準で50:50であった。メルトブローンファイバーのポリエステル成分対ポリエチレン成分の比率は重量基準で80:20であった。
【0043】
比較例A
この例は、化学仕上げ組成物を含有するSMS複合体不織布帛を、プロセス中0.3lb./直線インチ(52.5N/m)以上の張力をかけながら、乾燥し、硬化した組み合わせ乾燥/硬化プロセスにおける張力と温度の影響を示すものである。2.5重量パーセントのフルオロケミカルと0.25重量パーセントの帯電防止剤を含有する水性仕上げを、ディップ−スクイーズプロセスを用いてSMS布帛に適用したところ、仕上げの約80重量パーセントの絞り率(wet pick up)となった。絞り率とは、不織布帛の乾燥重量に基づいて計算した布帛の溶剤の重量パーセント(この場合は水)として定義される。布帛中の溶剤の重量は、湿潤した布帛試料を秤量した後、オーブンで試料を乾燥して、実質的に全ての水を除去し、乾燥布帛を秤量し、湿潤布帛の重量から乾燥布帛の重量を減算して、水の重量を得ることにより計算した。SMS布帛を、機械方向のウェブ張力を測定するためのロードセルを備えた一組の3本の蛇紋岩ロール布帛を乾燥機を通して引くことによって、パイロット規模のメグテック(Megtec)製空気衝突浮遊乾燥機を通して搬送した。布帛にかかった張力は、入口ロール(ディップ−スクイーズプロセスの前にSMS布帛を巻き戻した)と蛇紋岩ロールの相対速度を調整することにより調整した。布帛の上下にあるエアバーが加熱空気を供給し、布帛が乾燥機を搬送される際に浮遊するように調整した。空気速度を6000ft/分(1829m/分)に設定した。乾燥機を3つのセクションに分割した。これらのセクションの最初の2つを、布帛を実質的に完全に乾燥するのと同じ温度まで加熱し、最後のセクションをフルオロケミカルを硬化する第2の温度まで加熱した。布帛を冷却するのに乾燥機を出た後、周囲空気を真空により布帛を通して引いた。撥アルコール性測定により、指定した温度で指定した時間について加熱した後、フルオロケミカル仕上げが硬化されたことが確認された。乾燥および硬化条件、ならびに1平方メートル当たりの伸張型の欠陥の数を表1に記してある。
【0044】
【表1】

【0045】
表1の結果によれば、52.5N/m以上の張力をかけてSMS複合体不織布帛を乾燥し硬化したときに、不織布帛を加熱した最高温度が、最低融点ポリマー成分(線状低密度ポリエチレン)の融点より低く、スパンボンド層のポリ(エチレンテレフタレート)の融
点より大幅に低い約26度であったときでさえも、伸張型の欠陥(布帛中に皺として現れる)が形成されたということが分かる。
【0046】
実施例1〜8
これらの実施例は、本発明によるプロセスにおける比較例Aに記載したSMS不織布帛の熱処理を例証するものである。SMS布帛を、乾燥機の第3のセクションで加熱せずに、空気衝突乾燥機を出た布帛が表2に示した水分含量を有していた以外は、比較例Aに記載したのと同じ仕上げで局所的に処理し、同じ空気衝突浮遊乾燥機を通して搬送した。最初の2つの乾燥セクションの空気温度は115℃、空気速度は8000ft/分(2,438m/分)、乾燥滞留時間は10秒であった。乾燥中に適用された張力は約0.5lb./直線インチ(87.6N/m)であった。実施例1〜4について、布帛に入り込んだ水(水分)含量は、100×(溶剤の重量/乾燥布帛の重量)で80%WPU(絞り率)であった。実施例4〜8について、入り込んだ水分含量は100%WPUであった。部分乾燥した布帛を、布帛が空気衝突浮遊乾燥機を出たときと実質的に同じ水分含量で、スルーエア真空ベルトオーブンのベルトに堆積させた。ベルトの下に配置された真空源により布帛を通して、表2に指定した硬化温度まで加熱された空気を引くことによって、真空ベルトオーブンのベルトに布帛を留めた。布帛に残る水を蒸発させて、布帛を加熱し続けてフルオロケミカル仕上げを硬化した。真空ベルトオーブンから出た際に布帛を短い冷却セクションに通し、そこで周囲空気を布帛を通して引いた後、布帛を収集容器へ自由降下させた。熱処理した布帛の撥アルコール性測定は、比較例Aで得られたのと同様であり、仕上げが硬化されたのが確認された。
【0047】
【表2】

【0048】
表2に示した結果によれば、比較例のものに匹敵する温度および張力で部分乾燥し、実質的に張力をかけない状態で線状低密度ポリエチレン成分の融点より低い25〜33℃の温度まで加熱したにも関らず、本発明のプロセスにより熱処理した布帛には伸張型の欠陥が形成されなかったということが示されている。
【0049】
本発明によるプロセスおよび装置を用いて、過剰の張力に感受性のある布帛に結晶化または捲縮のような熱処理を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施態様による乾燥プロセスを実施するのに好適な装置の側面概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポリマー成分と、第2のポリマー成分とを含んでなる多成分不織布帛を加熱処理する方法であって、第1のポリマー成分の融点または軟化点が、第2のポリマー成分の融点または軟化点より低く、不織布帛を0〜52.5N/mの任意の一方向で張力をかけながら、不織布帛を約(T−40)℃(Tは第1のポリマー成分の融点または軟化点である)より高いが(T−10)℃より低い温度まで加熱することを含んでなる方法。
【請求項2】
布帛が約(T−30)℃より高い温度まで加熱される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
布帛が(T−15)℃未満の温度まで加熱される請求項2に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−196105(P2008−196105A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71837(P2008−71837)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【分割の表示】特願2004−525014(P2004−525014)の分割
【原出願日】平成15年7月29日(2003.7.29)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】