説明

不織布の嵩の制御方法

【課題】巻回によって嵩が減少した不織布の厚みを回復させる際に、巻回圧が異なる不織布であっても、予め設定された基準の厚さとなるように嵩回復量を制御することができる不織布の嵩回復制御方法を提供する。
【解決手段】搬送されている嵩減少した不織布に熱処理を行うことで当該不織布の嵩を予め設定された基準厚みまで回復させる際の嵩回復量を連続的に制御する不織布の嵩の制御方法であって、熱処理後の不織布の厚みを検出し、その厚みと基準厚みとの差に基づいて嵩回復条件を調整し、嵩回復後の不織布の厚みが基準厚みとなるように制御する、不織布の嵩の制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻回圧によって嵩が減じられた不織布の嵩回復を制御する方法に関する。また、本発明は、嵩高の不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布の製造においては、所定の方法に従って製造した不織布をロール状に一旦巻回して保管し、これを別工程へ搬送することがしばしばある。そして、別工程において、不織布はロール(原反)から繰り出され、所定の製品の製造原料として用いられる。巻回状態にある不織布原反には、大きな巻回圧が加わることから、巻回圧によって嵩が減じられてしまうという不都合がある。この不都合は、不織布が嵩高であるほど顕著である。
【0003】
このため、捲縮を有する熱可塑性繊維を含み且つロール状に巻回されている不織布原反から不織布を繰り出し、熱風を前記不織布にエアスルー方式で吹き付けて熱処理を施し該不織布の嵩を増加させる嵩回復方法がある(例えば、特許文献1〜3を参照。)。これらの方法は、不織布に吹き付ける熱風温度と熱風速度を予め設定して、不織布の嵩を増加させる。
しかし、巻回状態にある不織布原反の巻回圧は、同じ原反であっても径によって異なる。一般には、径が小さい部分の巻回圧は大きく、径が大きい部分の巻回圧は小さい。従って、予め設定された熱風を不織布に吹き付けた場合、原反径の小さい部分の不織布では嵩の増加が若干小さく、原反の大きい部分の不織布では嵩の増加が若干大きい。また、不織布原反のロットの違いにより、巻回圧や不織布繊維の坪量が変動すると、嵩回復の量が変化する。
【特許文献1】特開2004−137655号公報
【特許文献2】特開2005−15938号公報
【特許文献3】特開2007−177364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、巻回によって嵩が減少した不織布の厚みを回復させる際に、巻回圧が異なる不織布であっても、予め設定された基準の厚さとなるように嵩回復量を制御することができる不織布の嵩回復制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、熱処理後の不織布の厚みを計測し、該計測結果に基づいて嵩回復条件(加熱温度など)を調整して、嵩回復後の不織布の厚みを予め設定された基準厚みに制御する方法を提供することにより前記目的を達成したものである。すなわち、本発明は、搬送されている嵩減少した不織布に熱処理を行うことで当該不織布の嵩を予め設定された基準厚みまで回復させる際の嵩回復量を連続的に制御する不織布の嵩の制御方法であって、熱処理後の不織布の厚みを検出し、その厚みと基準厚みとの差に基づいて嵩回復条件を調整し、嵩回復後の不織布の厚みが基準厚みとなるように制御する、不織布の嵩の制御方法を提供するものである。
また、本発明は、嵩減少した不織布の厚みを予め設定された基準厚みまで回復させる、嵩回復した不織布の製造方法であって、(a)搬送されている嵩減少した不織布に熱処理を行う工程、(b)熱処理後の不織布の厚みを検出する工程、及び(c)検出した厚みと基準厚みとの差に基づいて嵩回復条件を調整し、嵩回復後の不織布の厚みが基準厚みとなるように嵩回復量を連続的に制御する工程を含む、嵩回復した不織布の製造方法を提供するものである。
さらに、本発明は、搬送されてくる不織布に熱処理を行い当該不織布の嵩を回復する熱処理装置と、熱処理後の不織布の厚みを検出する厚み検出手段、不織布の厚みを検出して嵩回復条件を調整し嵩回復後の不織布の厚みを基準厚みに制御する嵩回復条件制御手段、熱処理装置の加熱温度を調整する温度調整手段を含む制御システムとを備えている、不織布の嵩回復装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、熱処理後の不織布の厚みを計測し、該計測結果に基づいて嵩回復条件(加熱温度など)を調整して、嵩回復後の不織布の厚みを予め設定された基準厚みに精度よく安定して制御することができる。
また、本発明によれば、巻回圧の異なる状態で嵩減少している不織布原反やロットの違いにより嵩が若干異なる不織布原反からでも、一定の厚さに嵩回復した不織布を製造することができる。これにより、製造原料としての不織布の品質を一定とすることができ、これを用いて製造する吸収性物品などの製品の品質を管理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明をその好ましい実施態様に基づいて、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の方法に用いられる装置の一例を示す模式図であり、本発明の嵩の制御方法を、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品の製造工程における、該吸収性物品の構成材料に用いられる不織布の嵩回復の制御に適用した一実施態様を模式的に示すものである。図1において、符号1は不織布の嵩回復装置、10は不織布の嵩回復を制御する制御システムである。
【0008】
本発明の好ましい実施態様における嵩回復装置1は、不織布原反21から繰り出される不織布を、熱処理装置である熱風吹き付け装置5を用いて嵩回復し、制御システム10により嵩回復後の不織布23の厚みを連続的に制御することで、一定の厚さに嵩回復した不織布を製造するものである。嵩回復装置1は、嵩減少した不織布を搬送する搬送手段と、搬送されてくる不織布に熱風を吹きつけて熱処理を施し当該不織布の嵩を回復する熱風吹き付け装置5と、熱風が吹き付けられた後(熱処理後)の不織布の厚みを検出する厚み検出手段11、熱風が吹き付けられた後の不織布の張力を検出する張力検出手段12、不織布の厚みを検出して嵩回復後の不織布の厚みを基準厚みとなるように嵩回復条件(加熱温度、熱風温度、熱風速度など)を調整する嵩回復条件制御手段13、熱風吹き付け装置5の熱風温度を調整する熱風温度調整手段14、および熱風吹き付け装置5の熱風速度を調整する熱風速度調整手段15を含んでいる制御システム10とを備えている。嵩回復装置1により所定の厚みとなった(嵩回復した)不織布は、吸収性物品などの製品の製造工程に合流し、そのまま製造原料として用いられる。
【0009】
本実施態様における不織布2は、別工程(不織布製造工程)にて任意の方法に従って製造されたものであり、ロール状に一旦巻回された不織布原反21として搬送されたものである。不織布2は、捲縮を有する熱可塑性繊維を含んでいる。本実施態様では、不織布原反21から繰り出されて嵩回復前の不織布22が搬送される。嵩回復前の不織布22は、不織布原反21のより内側に巻回されていたものほど大きな巻回圧がかかっており、より外側に巻回されていたものに比べて大きく嵩が減少している。すなわち、嵩回復前の不織布22は、同じ原反であっても嵩の減少量が異なる。
前記熱風吹き付け装置5を通過した不織布は嵩回復により厚みが大きくなり、嵩回復後の不織布23となる。本実施態様では、嵩回復後の不織布23の厚みは、所定の基準厚みとなるように制御される。基準厚みは、吸収性物品などの製品の製造原料として要求される厚みに応じて適宜決定される。
【0010】
本実施態様におけるダンサー位置検出手段3は、嵩回復前後の不織布22、23の張力変動により上下するロール32と該ロールの位置を角度で検出する角度検出器31を備えている。予め設定された基準位置よりロール32の位置が上にある場合は不織布原反21を繰り出す回転速度を若干速くし、基準位置よりロール32の位置が下にある場合は不織布原反21の回転速度を若干遅くすることで、嵩回復前後の不織布22、23の張力を一定に保つ。
【0011】
本実施態様における熱処理装置である熱風吹き付け装置5は、外気温度の空気を熱風に変えて不織布22に吹き付けるヒーターボックス51と、該ヒーターボックスから吹き出された熱風を吸引するサクションボックス52と、熱風吹きつけ部の不織布22を搬送するために駆動ロール53によって駆動されるコンベアベルト54とを備えている。熱風吹き付け装置5により熱風を不織布にエアスルー方式で吹き付け、サクションボックス52で吸引する熱風を不織布に貫通させることで、不織布の嵩が増加される。また、嵩回復後の不織布23は、駆動ニップロール6により搬送される。
【0012】
本実施態様における制御システム10は、不織布の厚みを検出する厚み検出手段11と、搬送される不織布張力を検出する張力検出手段12と、不織布の厚みを基準厚みに制御する嵩回復条件制御手段13と、熱風吹き付け装置5の熱風温度を調整する熱風温度調整手段14と、熱風吹き付け装置5の熱風速度を調整する熱風速度調整手段15とを備えている。さらに、制御システムは、不織布の搬送速度を調整する搬送速度調整手段を備えていてもよく、熱風吹き付け装置5の熱風量を調整する熱風量調整手段を備えていてもよい(図示せず)。
制御システム10により、嵩回復した不織布の厚みが基準厚みとなるように嵩回復条件が調整される。嵩回復条件としては、熱風温度、熱風速度、熱風量、搬送速度等が挙げられる。
【0013】
本実施態様における厚み検出手段11は、フリーロール41上に巻きかけられた不織布の厚みを撮像するCCDカメラ111と、該CCDカメラの撮像に必要な照明器112と、撮像した画像に基づいて不織布の厚みを検出する画像処理装置113とを備えている。
【0014】
本実施態様における張力検出手段12は、CCDカメラ111の下流に設置された張力を検出する検出器121と、検出した結果をアナログ信号に変換する変換器122とを備えている。検出器121は、CCDカメラ111の上流に設置してもよい。
【0015】
本実施態様における嵩回復条件制御手段13は、画像処理装置113で検出された厚みデータと変換器122で検出された張力データを、温度調整器141及び速度調整器151に応じた信号に変換する信号変換機能を有するシーケンサ(以下、単にシーケンサともいう)131と、画像処理装置113で処理された画像を表示する画面を備えると共にシーケンサ131の設定を行う表示・設定器132とを備えている。
【0016】
本実施態様における熱風温度調整手段14は、シーケンサ131から出力される温度設定データに基づいてヒーターボックス51内の温度を制御する温度調整器141と、ヒーターボックス51内の熱風温度を検出する温度センサ142と、外気温度の空気を熱風に暖めるヒーター143とを備えている。温度調整器141は、温度センサ142で検出した温度データがシーケンサ131から出力される温度設定データに等しくなるようヒーター143を加熱する。
【0017】
本実施態様における熱風速度調整手段15は、シーケンサ131から出力される熱風速度設定データに基づいてヒーターボックス51内の熱風速度を制御する速度調整器151と、風速を発生させるブロワ152とを備えている。速度調整器151は、シーケンサ131から出力される熱風速度設定データに基づいてブロワ152の回転速度を制御する。
【0018】
次に、本発明の好ましい一実施態様について、図1に示した嵩回復装置1を使用した不織布の嵩回復の制御方法に基づいて説明する。
【0019】
本実施態様の制御方法においては、先ず図1に示すように、不織布原反の搬送経路に嵩回復装置1を配置し、制御システム10により不織布の嵩回復を制御する。つまり、搬送されている嵩減少した不織布22に熱処理を施し、前記不織布の嵩を予め設定された基準厚みまで回復させる際の嵩回復量を連続的に制御する方法であって、熱処理後の不織布23の厚みを検出し、その厚みと基準厚みとの差に基づいて嵩回復条件を調整し、嵩回復後の不織布の厚みが基準厚みとなるように制御する、不織布の嵩の制御方法である。
【0020】
本実施態様では、不織布原反21から搬送される不織布22を熱風吹き付け装置5によって熱風を吹きつけて熱処理を行うことで嵩を回復した後、嵩回復後の不織布23の厚みを厚み検出手段11で検出する。具体的には、フリーロール41に対して直行方向もしくは不織布の流れ方向に沿うようにCCDカメラ111を配置し、フリーロール41の上に巻きかけられて搬送される不織布23の表面付近を撮像する。このとき、照明器112を、フリーロール41を挟んでCCDカメラ111に対向するように配置して、撮像領域周辺を照らした状態で撮像する。
【0021】
本実施態様における嵩回復後の不織布23の厚み検出は、CCDカメラ111で撮像されたフリーロール41の上に巻きかけられた不織布23の二次元の位置情報に基づいて画像処理装置113で行われる。不織布の厚みの検出について、図2〜6を参照しながら説明する。図2は、不織布の厚みの検出について説明する図であり、フリーロール41上に巻きかけられた不織布の撮像状態を表す正面図であり、図3は、撮像領域の画素データを示すグラフであり、図4は、検査領域の画素データを示すグラフであり、図5は、検査領域の積算平均化された画素データを示すグラフであり、図6は、図5の画素データを微分した結果を示すグラフである。
具体的には、図2に示すように、フリーロール41の上に巻きかけられた不織布23の厚みを拡大して撮像できるように、所定の画角で撮像された撮像領域200(不織布23の厚み方向x、幅方向y)が、CCDカメラ111の画素数分の画素データで表される。これにより、不織布23の厚み方向をx方向、幅方向をy方向とする二次元の画素データが得られる。1つの画素は、0〜255階調で表現される。例えば、撮像領域200のy方向y1の1画素に対するx方向の一次元画素データは、図3に示すようなグラフで表される。図3のグラフにおける縦軸は階調を表し、横軸は撮像領域内のx方向を表す。図3においては、不織布23のある部分(画像として暗い部分)の画素データの数値は小さく、不織布のない部分(画像として明るい部分)の画素データの数値は大きい。すなわち、図3のグラフにおける左側の階調データの大きい部分が不織布のない部分に相当し、右側の階調データの小さい部分が不織布のある部分に相当する。このような撮像領域に対して、不織布の表面位置210を検出するために、本実施態様では撮像領域200の中央付近に検査領域201を設ける。
【0022】
CCDカメラ111による撮像は、画像処理装置113の処理時間毎のタイミングで行う。あるいは、吸収性物品の製造工程の回転軸に取り付けられたドグを近接センサ(近接スイッチ)が検出するタイミングで行う。具体的には、前記回転軸には製品1個に対応したドグが取り付けられ、製品1個毎にドグを検出できるように近接センサが設置されており、近接センサによるドグの検出信号が画像処理装置113に入力される度に撮像が行われる。
【0023】
次に、撮像領域200における二次元の画素データに基づき、図2に示される検査領域201のy方向y1の1画素に対するx方向の一次元画素データを求める。この一次元画素データの一例は図4に示すとおりである。図4のグラフにおける縦軸は階調を表し、横軸は検査領域内のx方向を表す。この操作を検査領域201のy方向全ての画素に対して行う。これによって、検査領域201のy方向の画素数と同数のx方向の一次元データが求められる。そして、Y方向の検査領域幅の画素数と同数のx方向の一次元画素データをy方向にわたり積算平均化する。つまり、y方向の検査領域幅の画素数と同数のx方向のグラフを積算平均化する。これにより、平均化されたx方向の一次元画素データが得られる。その結果の一例は、図5に示すとおりである。図5のグラフにおける縦軸は階調を表し、横軸は検査領域内のx方向を表す。
【0024】
このようにして得られた、平均化されたx方向の一次元画素データに基づき、不織布の表面位置210を求める。前記で得られた、平均化されたx方向の一次元画素データ図5を微分し、図6に示されるように、微分されたx方向の一次元画素データの最大値及び最小値が±100%となるようにデータを変換する。図6のグラフにおける縦軸は階調の変化を表し、横軸は検査領域内のx方向を表す。不織布の表面位置210を特定するために、データ変換されたx方向の一次元画素データに対する閾値を予め設定しておく(図6参照)。この閾値に基づいて、x方向における不織布の表面位置210を求める。不織布の表面位置210は、図6の階調の変化量がマイナス側へ大きく変化した位置である。このため、閾値は、階調の変化量が微小である位置を誤検出しないレベルに設定する。図6に示すように、グラフの左から見て最初に閾値に到達した点が、検出位置(不織布の表面位置)となる。
【0025】
画像処理装置113では、下記式(1)で表されるように、予め設定されたフリーロールの表面位置211から求められた不織布の表面位置210を減算し、画素分解能(mm/画素)k1を乗算することで、不織布の厚み212を求める。この画素分解能は、CCDカメラ111の画素数と視野(視野はフリーロール41の表面からCCDまでの距離で決まる)によって決まる。
【0026】
【数1】

【0027】
このような不織布の厚み212の算出を画像処理装置113の処理時間毎または製品1個毎に行う。厚み検出手段11で検出された不織布の厚み212のデータは、画像処理装置113からシーケンサ131に送信される。
【0028】
張力検出手段12は、嵩回復後の不織布23の張力を検出する。嵩回復した不織布は、その後、吸収性物品などの製品の製造原料として、そのまま製品製造工程に搬送(合流)されることが好ましい。しかし、嵩回復後の不織布23は搬送による張力の影響を受けており、その後の製品の製造工程において製品に合流した不織布の厚みよりも厚みが小さく検出される傾向にある。つまり、搬送による張力が大きいほど製品に合流した不織布の厚みが小さく検出される傾向にある。そのため、搬送による張力の影響を考慮した上で、不織布の嵩回復量を制御することが好ましく、熱処理による嵩回復後の不織布の張力を検出し、張力検出データに基づいて厚み検出データを補正することが好ましい。これにより、製品に合流した不織布の厚みをより正確に求めることができ、不織布の厚みを精度よく制御することができる。張力の検出は検出器121で行い、変換器122によって張力データがアナログデータ(アナログ電圧)に変換されシーケンサ131に出力される。
【0029】
シーケンサ131では、変換器122から出力される張力データをアナログデータ(アナログ電圧)として受信する。既に述べたように、不織布の厚み212データは、フリーロール41において張力の影響を受けているので、不織布23が製品に合流した後の不織布の厚みより小さい。このため、製品合流後の不織布の厚みは、張力による補正量k2を用いて下記式(2)のように表わせる。
【0030】
【数2】

【0031】
前記補正量k2は、理想的には下記式(3)のk3のように、実際の製品合流後の不織布の厚みからフリーロール上の不織布の厚みを減算して得られるが、張力変動により補正量を調整するため下記式(4)の値を用いる。
【0032】
【数3】

【0033】
前記式(4)を前記式(2)に代入すると、下記式(5)のようになる。
【0034】
【数4】

【0035】
製品合流後の不織布の厚みは実測で得られ、フリーロール上の不織布の厚みは画像処理装置113で検出され、k3は前記式(3)で予め算出され、張力データは張力を検出してアナログ電圧で得られるため、前記式(5)から基準の張力データが予め得られる。従って、厚み検出手段11で不織布の厚み212(前記式(5)のフリーロール上の不織布の厚み)を検出し、張力検出手段12で張力(前記式(5)の張力データ)を検出すれば、前記式(5)より製品合流後の不織布の厚みを算出することができる。このため、k3と基準の張力データは、表示・設定器132から予め設定しておく。
【0036】
また、シーケンサ131では、予め不織布の基準厚みを表示・設定器132から設定しておく。そして、前記式(5)で求めた製品合流後の不織布の厚みが、基準厚みよりも大きい場合は、シーケンサ131から温度調整器141へ出力する温度設定値を小さくする、あるいはシーケンサ131から速度調整器151へ出力する速度設定値を小さくすることにより、不織布に吹き付ける熱風の熱量を小さくして不織布の嵩回復量を小さくする。また、熱風量設定値を小さくしたり不織布の搬送速度を速くしてもよく、これにより不織布に吹き付ける熱風の熱量を小さくして不織布の嵩回復量を小さくすることもできる。
反対に、前記式(5)で求めた製品合流後の不織布の厚みが、基準厚みよりも小さい場合は、シーケンサ131から温度調整器141へ出力する温度設定値を大きくする、あるいはシーケンサ131から速度調整器151へ出力する速度設定値を大きくすることにより、不織布に吹き付ける熱風の熱量を大きくして不織布の嵩回復量を大きくする。また、熱風量設定値を大きくしたり不織布の搬送速度を遅くしてもよく、これにより不織布に吹き付ける熱風の熱量を大きくして不織布の嵩回復量を大きくすることもできる。
【0037】
前記までは、張力検出手段を用いて製品合流後の不織布の厚みを制御する方法を示したが、張力検出を用いない場合すなわち製品の厚みデータに基づいて製品合流後の不織布の厚みを制御することもできる。この方法を以下に示す。
【0038】
シーケンサ131では、画像処理装置113から出力される不織布の厚み212のデータを受信する。このデータは、フリーロール41において張力の影響を受けているので、不織布23が製品に合流した後の不織布の厚みより小さい。このため、不織布の厚み212と製品合流後の不織布の厚み(実測で得る)より補正係数k4を下記式(6)により予め求め、表示・設定器132から設定しておく。
【0039】
【数5】

【0040】
前記式(1)と式(6)より、製品合流後の不織布の厚み(基準厚み)は、下記式(7)で求めることができる。
【0041】
【数6】

【0042】
製品合流後の不織布の厚み(実測で得る)とフリーロール上の不織布の厚み(画像処理装置113で検出)よりk4は前記式(6)で予め算出されるため、画像処理装置113でフリーロール上の不織布の厚み(=フリーロールの位置−不織布の表面位置)を検出すれば、前記式(7)より製品合流後の不織布の厚みを算出することができる。このため、k4は表示・設定器132から予め設定しておく。
【0043】
そして、前記式(7)で求めた製品合流後の不織布の厚みが、基準厚みよりも大きい場合は、シーケンサ131から温度調整器141へ出力する温度設定値を小さくする、あるいはシーケンサ131から速度調整器151へ出力する速度設定値を小さくすることにより、不織布に吹き付ける熱風の熱量を小さくして不織布の嵩回復量を小さくする。また、熱風量設定値を小さくしたり不織布の搬送速度を速くしてもよく、これにより不織布に吹き付ける熱風の熱量を小さくして不織布の嵩回復量を小さくすることもできる。
反対に、前記式(7)で求めた製品合流後の不織布の厚みが、基準厚みよりも小さい場合は、シーケンサ131から温度調整器141へ出力する温度設定値を大きくする、あるいはシーケンサ131から速度調整器151へ出力する速度設定値を大きくすることにより、不織布に吹き付ける熱風の熱量を大きくして不織布の嵩回復量を大きくする。また、熱風量設定値を大きくしたり不織布の搬送速度を遅くしてもよく、これにより不織布に吹き付ける熱風の熱量を大きくして不織布の嵩回復量を大きくすることもできる。
【0044】
更に、シーケンサ131では、製品合流後の不織布の厚みのデータを積算平均化または移動平均化することで、嵩回復の制御を安定させることができる。
【0045】
前記の嵩回復装置1を用いた本実施態様の不織布の嵩の制御方法によれば、以下の有利な効果(イ)ないし(ハ)が奏される。
【0046】
(イ)熱風吹き付け装置5を用いて嵩回復する不織布23の厚みを予め設定された基準厚みに制御できる。
(ロ)同じ原反で径が大きい部分と小さい部分の巻回圧が異なっても、嵩回復後の不織布23の厚みを予め設定された基準厚みに制御できる。
(ハ)不織布原反のロットの違いにより、巻回圧や不織布繊維の坪量が変動しても、嵩回復後の不織布23の厚みを予め設定された基準厚みに制御できる。
【0047】
本発明の不織布の嵩の制御方法は、前記実施態様に制限されない。例えば、シーケンサ131、温度調整器141を用いたが、これらの機能を備えた1つのコントローラに置き換えることもできる。また、シーケンサ131、変換器122を用いたが、これらの機能を備えた1つのコントローラに置き換えることもできる。
【0048】
また、前記実施態様においては、図2のように、撮像領域200の中央付近に検査領域201を設け不織布の表面位置210を検出し、予め設定されたフリーロールの表面位置211から不織布の表面位置210を減算して不織布の厚み212を求めていたが、CCDカメラ111を不織布の幅方向に移動し、図7のように、不織布の表面付近に検査領域201、フリーロールの表面付近に検査領域202を設け、不織布の表面位置210とフリーロールの表面位置211を画像処理装置113で検出し、フリーロールの表面位置211から不織布の表面位置210を減算して不織布の厚み212を求めることもできる。図7は、不織布の厚みの検出の別の好ましい手段について説明する図であり、フリーロール上に巻きかけられた不織布の正面図である。
【0049】
更に、前記実施態様は、本発明を吸収性物品の製造工程における不織布の嵩回復の制御に適用した例であるが、本発明の適用範囲はこれに限られず不織布の嵩回復を有するプロセスに広く適用することができる。
【0050】
また、熱処理は、前記実施態様に示した熱風吹き付けに限定されず、内部が加熱され周囲が囲まれたボックスに不織布を通し、ボックス内において不織布の下方から吸引することで熱風を不織布に貫通される方法や遠赤外線をあてる方法等を用いてもよい。この場合、嵩回復条件は、その熱処理方法に合わせて調整する。
【0051】
上記のように、不織布の厚みが基準厚みとなるように嵩回復量を連続的に制御しながら不織布の嵩を回復させることで、嵩回復した不織布を製造することができる。製造された嵩回復した不織布は、吸収性物品などの製品の製造工程において、そのまま製造原料として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、本実施態様に用いられる装置の一例を示す模式図である。
【図2】図2は、不織布の厚みの検出について説明する図であり、フリーロール上に巻きかけられた不織布の撮像状態を表す正面図である。
【図3】図3は、撮像領域の画素データを示すグラフである。
【図4】図4は、検査領域の画素データを示すグラフである。
【図5】図5は、検査領域の積算平均化された画素データを示すグラフである。
【図6】図6は、図5の画素データを微分した結果を示すグラフである。
【図7】図7は、不織布の厚みの検出の別の好ましい手段について説明する図であり、フリーロール上に巻きかけられた不織布の正面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 嵩回復装置
2 不織布
21 不織布原反
22 嵩回復前の不織布
23 嵩回復後の不織布
3 ダンサー位置検出手段
31 角度検出器
32 ロール
4 フリーロール
41 フリーロール
5 熱風吹き付け装置(熱処理装置)
51 ヒーターボックス
52 サクションボックス
53 駆動ロール
54 コンベアベルト
【0054】
6 駆動ロール
10 制御システム
11 厚み検出手段
111 CCDカメラ
112 照明器
113 画像処理装置
12 張力検出手段
121 検出器
122 変換器
13 嵩回復条件制御手段
131 シーケンサ
132 表示・設定器
【0055】
14 熱風温度調整手段
141 温度調整器
142 温度センサ
143 ヒーター
15 熱風速度調整手段
151 速度調整器
152 ブロワ
200 撮像領域
201 検査領域
202 検査領域
210 不織布の表面位置
211 フリーロールの表面位置
212 不織布の厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されている嵩減少した不織布に熱処理を行うことで当該不織布の嵩を予め設定された基準厚みまで回復させる際の嵩回復量を連続的に制御する不織布の嵩の制御方法であって、熱処理後の不織布の厚みを検出し、その厚みと基準厚みとの差に基づいて嵩回復条件を調整し、嵩回復後の不織布の厚みが基準厚みとなるように制御する、不織布の嵩の制御方法。
【請求項2】
捲縮を有する熱可塑性繊維を含み且つロール状に巻回されている不織布原反から不織布を繰り出し、熱風を前記不織布にエアスルー方式で吹き付けて熱処理を施し該不織布の嵩を増加させる、請求項1記載の不織布の嵩の制御方法。
【請求項3】
前記不織布の厚みの検出が、
(i)フリーロールの上に巻きかけられた不織布を撮像して、該不織布の二次元画素データを得る工程、及び
(ii)得られた二次元画素データに基づいて、前記不織布の表面位置を二次元的に検出する工程
を含む、請求項1又は2に記載の不織布の嵩の制御方法。
【請求項4】
前記不織布の厚みの検出が、
(i)フリーロールの上に巻きかけられた不織布を撮像し、不織布の厚み方向x、幅方向yとする該不織布の二次元画素データを得る工程、
(ii)得られた二次元画素データにおけるx方向の一次元画素データをy方向にわたり積算平均化する工程、
(iii)平均化されたx方向の一次元画素データを微分し、微分されたx方向の一次元画素データを最大値及び最小値が±100%となるようにデータを変換する工程、
(iv)変換されたデータと不織布の表面位置を特定するために予め設定された閾値とから不織布の表面位置を検出し、不織布の表面位置とフリーロールの表面位置とから不織布の厚みを算出する工程
を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の不織布の嵩の制御方法。
【請求項5】
熱処理後の不織布の張力を検出し、張力検出データと厚み検出データに基づいて嵩回復後の不織布の厚みを基準厚みに制御する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の不織布の嵩の制御方法。
【請求項6】
嵩減少した不織布の厚みを予め設定された基準厚みまで回復させる、嵩回復した不織布の製造方法であって、
(a)搬送されている嵩減少した不織布に熱処理を行う工程、
(b)熱処理後の不織布の厚みを検出する工程、及び
(c)検出した厚みと基準厚みとの差に基づいて嵩回復条件を調整し、嵩回復後の不織布の厚みが基準厚みとなるように嵩回復量を連続的に制御する工程
を含む、嵩回復した不織布の製造方法。
【請求項7】
前記の嵩回復した不織布が、引き続いて行われる吸収性物品の製造工程において製造原料として用いられるものであり、前記基準厚みが、前記の吸収性物品の製造工程における製造原料としての不織布の厚みである、請求項6記載の嵩回復した不織布の製造方法。
【請求項8】
搬送されてくる不織布に熱処理を行い当該不織布の嵩を回復する熱処理装置と、
熱処理後の不織布の厚みを検出する厚み検出手段、不織布の厚みを検出して嵩回復条件を調整し嵩回復後の不織布の厚みを基準厚みに制御する嵩回復条件制御手段、熱処理装置の加熱温度を調整する温度調整手段を含む制御システム
とを備えている、不織布の嵩回復装置。
【請求項9】
前記制御システムが、熱処理後の不織布の張力を検出する張力検出手段を含み、前記嵩回復条件制御手段が、不織布の厚み及び張力を検出して嵩回復条件を調整し嵩回復後の不織布の厚みを基準厚みに制御する、請求項8記載の不織布の嵩回復装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−155756(P2009−155756A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335121(P2007−335121)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】