説明

不織布ワイパー

【課題】 従来のワイピング材では、繊維の太さや繊維間隙と、拭取対象物との物理的な大小関係によって捕捉性能を期待するに過ぎず、繊維径よりも小さな塵埃に対しては実質的に拭き取り、捕捉することが難しいかった。従って、本発明では、熱融着繊維表面のタック性を利用し、拭取対象物を効率的に捕捉することが可能となる。
【解決手段】 本発明は、構成繊維と熱融着繊維とが繊維間接合されてなる不織布ワイパーにおいて、上述した熱融着繊維を構成する熱可塑性樹脂が、55以下のデュロメータ硬さ(HDD)を有するものである。また、上述した熱融着繊維を構成する熱可塑性樹脂として、ポリエチレン共重合体を採用するのが好ましく、特に、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、低密度ポリエチレン(LDPE)から選ばれた1種又は2種以上の混合物からなることが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、塵埃などの比較的小さな径を有する粒子を効率的に清拭、捕捉するための不織布ワイパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からテーブルや床を清拭し、土砂や塵埃を捕捉するためのワイパーとして、種々の技術が提案されている。その一例として特開平11−56727号公報(特許文献1)には、2種以上の不織布層を積層一体化してなるものであって、少なくとも一方の表面を、高捲縮繊維を主体として構成された表面不織布層とし、かつ熱融着繊維を主体として構成される強度付与不織布層を含んで成る不織布ワイパーが開示されている。この技術によれば、表面不織布層を主として構成する高捲縮繊維によって、比較的大きな粒子に対するワイパーの拭き取り効率を確保し、しかも、当該層と積層一体化した強度付与不織布層は熱融着繊維を主体とすることから、ワイパー全体に寸法安定性を付与することが可能である。
【0003】
また、特開2003−230519号公報(特許文献2)には、網状シートの片面または両面に熱融着性繊維を主体とする繊維ウエブを積層し、熱風貫通方式により溶融一体化した嵩高シートとして、床用清掃シートが提案されている。また、この公報技術では、上述した熱風貫通により網状シートを支持体とする凹凸が形成され、しかも、個々の繊維が溶融による点接着で接合し、シート内に多くの空隙を持った嵩高状態に形成される形態が開示されている。さらに、このような繊維ウエブは、PP/PE、PP/PP、PP/EVA、PET/PE、PET/PP、PET/EVA、PET/PETその他の熱融着性複合繊維を必須成分とする旨の開示がある。このような構成を採ることにより、熱風貫通方式であることから製造コストが比較的低く、個々の繊維が溶融による点接着で接合しているため、髪の毛等の捕捉性能に優れるなどの利点を有するとしている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−56727号公報([特許請求の範囲]、[発明の実施の形態]、[発明の効果])
【特許文献2】特開2003−230519号公報([特許請求の範囲]、[発明の効果])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来知られている技術は、特許文献1に開示されるような高捲縮繊維を利用した捕捉性能向上と、特許文献1並びに特許文献2に開示されるような一連の熱融着性繊維を採用することによる形状安定性若しくは捉えた土砂や塵埃等、繊維径と同等以上の粒径を有する拭取対象物を物理的にワイピング材の繊維間隙に保持することを期待するものである。しかしながら、何れの従来技術にあっても、ワイピング材を構成する繊維の太さや繊維間隙と、拭取対象物との物理的な大小関係によって捕捉性能を期待するに過ぎず、繊維径よりも小さな塵埃に対しては実質的に拭き取り、捕捉することが難しいと言う問題点が有った。
【0006】
本出願に係る発明者は、このような従来技術の問題点に鑑み、熱融着繊維表面のタック性を利用することで、広範な拭取対象物を捕捉すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。従って本発明の目的は、塵埃を効率的に捕集することが可能な不織布ワイパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的の達成を図るため、本発明の構成によれば、構成繊維と熱融着繊維とが繊維間接合されてなる不織布ワイパーにおいて、上述した熱融着繊維を構成する熱可塑性樹脂が、55以下のデュロメータ硬さ(HDD)を有することを特徴としている。ここで、「HDD」とは、JISのK7215(1986)である『プラスチックのデュロメータ硬さ試験方法』において、デュロメータDタイプで測定した硬さを意味し、上述した本発明の要件は「HDD55以下」と表記される。
【0008】
また、上述した熱融着繊維を構成する熱可塑性樹脂をポリエチレン重合体とするのが好適である。さらに、このポリエチレン重合体として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)及び低密度ポリエチレン(LDPE)から選ばれた1種又は2種以上の混合物とするのが好適である。
【0009】
また、本発明の不織布ワイパーの構成において、上述した構成繊維と上述した熱融着繊維との重量比率を80/20〜35/65の範囲とするのが好ましい。さらに、当該構成繊維として、ウエブ調製に当たっては後述する一般的な捲縮数を有し、その後の加熱処理によって多数の捲縮を発現する潜在捲縮性繊維とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る不織布ワイパーは、上述の構成を採用することにより、主として上述した特性を有する熱融着繊維の表面で比較的細かい塵埃を捕捉することができる。従って、本発明を適用することにより、塵埃等、繊維ウエブにおける物理的な空隙のみでは捕捉することが難しい拭取対象物を効率的に捕捉することが期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施に好適な形態につき詳細に説明する。まず、本発明の不織布ワイパーを構成する熱融着繊維について説明する。本発明で用いる熱融着繊維は、上述した構成繊維との間若しくは熱融着繊維自体が繊維間接合すると共に、少なくとも熱融着繊維の表面に露出状態(拭取対象物との接触が可能な状態を意味する)にある熱可塑性樹脂として、前述したHDD55以下のものが用いられる。デュロメータ硬さは、JIS K7100『プラスチックの状態調節及び試験場所の標準状態』に規定される標準状態、即ち標準温度状態2級(温度23±2℃)と標準湿度状態2級(相対湿度50±5%)において88時間以上状態調節されたプラスチックの硬度を定義する指標である。上述した数値条件以下の硬さを有する露出状態の熱可塑性樹脂を採用することにより、比較的可塑性に富む表面状態によって、一種のタック性を有することから、比較的小さな粒径を有する塵埃等の捕捉性能を発揮するものと考えられる(後段で詳述)。従って、本発明に適用し得る熱融着繊維の断面構成としては、サイドバイサイド型又は芯鞘型の複合繊維の形態を採ることが好ましく、特に、所定の熱可塑性樹脂の露出する割合がサイドバイサイド型に較べて大きく採り得る芯鞘型の熱融着繊維が良い。
【0012】
このようなHDD55以下を満たす好適な熱可塑性樹脂として、上述した熱融着繊維を構成する熱可塑性樹脂が、ポリエチレン共重合体を採用するのが好適である。このようなHDDを満たす熱可塑性樹脂を有する熱融着繊維とすることにより、ワイパーの拭取り面に一種のタック性を付与することとなるため、比較的小さな粒径を有する塵埃等の捕捉性能を発揮することができる。特に、このような熱融着繊維を構成する熱可塑性樹脂として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA:共重合体における酢酸ビニルの組成比率が6重量%の場合、HDD43)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA:共重合体におけるメチルアクリレートの組成比率が22重量%の場合、HDD28)といったポリエチレン共重合体単体、若しくは、これらと低密度ポリエチレンとの混合物を採用するのが最も好ましい。
【0013】
また、本発明の不織布ワイパーのウエブ調製に当たっては、乾式法、湿式法など、従来周知のウエブ形成技術を用いることができ、設計に応じた繊維強度を確保する目的でニードルパンチ法、高圧水流絡合など、種々の絡合技術を併用することもできる。このうち、例えば上述したEMAよりもHDDが低い場合、塵埃の捕捉効率は向上する反面、不織布ワイパーを調製する際に生産性の面から好適に用いられるカード機の通過性も低下し、繊維ウエブにネップを生じる場合がある。この様な場合には、EMAとLDPE又はEVAとの混合物で構成した熱可塑性樹脂の採用、若しくは、不織布ワイパーにおける構成繊維と上記熱融着繊維との重量比を80/20〜35/65の範囲とするのが好適である。このうち、繊維組成の重量比として、80/20を越えて所定の構成繊維を過剰に配合する場合、カード機通過性が確保できる反面、熱融着繊維による塵埃捕捉効率の向上を期待することが難しくなる。また、この重量比として35/65よりも構成繊維を少なく配合する場合には、塵埃捕捉効率に優れる反面、拭取時の滑り抵抗が大きくなり、しかも上述したカード機通過性の確保が難しくなる。
【0014】
次いで、本発明の不織布ワイパーにおける構成繊維として、他の好適態様につき説明する。本発明の構成繊維として種々の繊維を用いることができるが、当該繊維の一部を潜在捲縮性繊維として配合し、所定の熱処理によって捲縮発現させた高捲縮繊維とすることによって、前述した塵埃捕捉に加えて、比較的大きな粒径を有する土砂を捕捉することもできる。ここに言う高捲縮繊維とは、JIS L1015「化学繊維ステープル試験方法」の「8.12 けん縮」に記載の方法によって、一般にカーディング性が良好であるとされる単繊維の有する捲縮数9〜20個/25mmよりも多い状態で不織布ワイパー中に含まれる繊維成分を言う。その好適な高捲縮繊維として、ウエブ調製時には上述した一般的な捲縮数を有し、所定の温度による加熱処理を経て、例えば50個/25mm以上の多数の捲縮数となる潜在捲縮性繊維を用いるのが最適である。係る捲縮発現後の潜在捲縮性繊維を構成繊維として採用することにより、本発明の主たる特徴である熱融着繊維のタック性によって比較的粒径の小さい塵埃の拭取性に加え、比較的粒径の大きな土砂に対する捕捉性をも発揮することができる。
【0015】
また、上述の説明では、所定の構成繊維と所定の熱融着繊維とからなる場合を説明したが、不織布ワイパーの表面を構成する繊維層として、上述した所定の熱融着繊維を採用するもので有れば、当該繊維層と例えばスパンボンド不織布或いは特許文献2に開示される網状シートなどの支持体となる他の構成成分と積層構成しても良い。
【実施例】
【0016】
以下、本発明の不織布ワイパーの実施例につき説明する。以下の説明においては、本発明の理解が容易となる程度に、特定の数値的条件等を示すが、本発明はこれら条件にのみ限定されるものではなく、この発明の目的の範囲内で種々の変形及び変更を行い得る。
【0017】
(実施例1)
まず、本発明の実施例1に係るワイパーとして、エチレン−酢酸ビニル共重合体(融点97.6℃、共重合体における酢酸ビニルの組成比率6重量%、HDD43)を鞘部とし、芯部がポリエチレンテレフタレートで構成された芯鞘型の熱融着繊維『ダイワボウNBF SE』(大和紡績(株)製の商品名、繊度3.3デシテックス×繊維長45mm)を40重量%と、構成繊維として、ポリエチレンテレフタレート繊維『東レテトロン T−209』(東レ(株)製の商品名、繊度3.3デシテックス×繊維長64mm、捲縮数約11個/25mm)を40重量%、さらに、他の構成繊維としてポリエチレンテレフタレート高捲縮繊維『東レテトロン T−12』(東レ(株)製の商品名、繊度3.3デシテックス×繊維長51mm、捲縮数約14個/25mm)を20重量%、均一に混綿し、カード機でウエブ形成した後、交差角30°でクロスレイウエブを調製した。次いで、このウエブに50本/cmの針密度でニードルパンチを施した後、120℃の温度条件とした熱風乾燥機内で約1分間にわたって加熱処理することで繊維間接合を行い、面密度60g/mの実施例1に係る不織布ワイパーを得た。
【0018】
(実施例2)
上述した実施例1における熱融着繊維を、エチレン−メチルアクリレート共重合体(融点92.0℃、共重合体におけるメチルアクリレートの組成比率22重量%、HDD28)を鞘部、芯部にポリプロピレンを配置形成した『ダイワボウNBF XG』(大和紡績(株)製の商品名、繊度2.2デシテックス×繊維長45mm)としたことを除き、他の2つの構成繊維を配合後、均一に混綿した。然る後、実施例1と同一の条件でカード機によるウエブ形成、クロスレイ、ニードルパンチを経て、110℃の温度条件で3分間にわたって熱風乾燥機による熱処理を行い、面密度60g/mの実施例2に係る不織布ワイパーとした。
【0019】
(実施例3)
実施例3に係る不織布ワイパーでは、芯鞘型の熱融着繊維として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(融点97.6℃、共重合体における酢酸ビニルの組成比率6重量%、HDD43)と、低密度ポリエチレン(融点110℃、HDD50)との混合物として鞘部を構成し、芯部にはポリプロピレンを配置した『チッソポリプロ EAC021』(チッソ(株)製の商品名、繊度2.2デシテックス×繊維長38mm)を用いた。この熱融着繊維の鞘部を構成する熱可塑性樹脂は、HDD47、融点104℃である。このような熱融着繊維30重量%と、実施例1で用いた構成繊維のうち、ポリエチレンテレフタレート繊維『東レテトロン T−209』(東レ(株)製の商品名)70重量%とを混綿した。この後、繊維間接合における繊維間接合の温度条件を110℃としたことを除き、実施例1と同一の諸条件で面密度60g/mの実施例3に係る不織布ワイパーを得た。
【0020】
(実施例4)
実施例1で用いた熱融着繊維『ダイワボウNBF SE』(大和紡績(株)製の商品名)30重量%と、ポリエチレンテレフタレート繊維『東レテトロン T−209』(東レ(株)製の商品名)70重量%とを均一に混綿したことを除いては、実施例1と同一の条件で面密度60g/mの実施例4に係る不織布ワイパーを調製した。
【0021】
(実施例5)
上述した実施例4の熱融着繊維『ダイワボウNBF SE』(大和紡績(株)製の商品名)60重量%と、ポリエチレンテレフタレート繊維『東レテトロン T−209』(東レ(株)製の商品名)40重量%とを配合したことを除き、実施例1並びに実施例4と同一の条件で面密度60g/mの実施例5に係る不織布ワイパーを調製した。
【0022】
(実施例6)
実施例6に係る不織布ワイパーでは、芯鞘型の熱融着繊維として、エチレン−メチルアクリレート共重合体(融点92.0℃、共重合体におけるメチルアクリレートの組成比率22重量%、HDD28)で鞘部を構成し、芯部にはポリプロピレンを配置した『ダイワボウ NBF XG』(大和紡績(株)製の商品名、繊度2.2デシテックス×繊維長45mm)を70重量%と、実施例1で用いた構成繊維『東レテトロン T−209』(東レ(株)製の商品名)30重量%とを混綿した。この後、繊維間接合における繊維間接合の温度条件を110℃としたことを除き、実施例1と同一の諸条件で面密度60g/mの実施例6に係る不織布ワイパーを得た。
【0023】
(実施例7)
実施例7に係る不織布ワイパーでは、実施例1で用いた熱融着繊維『ダイワボウNBF SE』(大和紡績(株)製の商品名)20重量%と、構成繊維として市販の潜在捲縮性繊維『東レテトロン T−25』(東レ(株)製の商品名、繊度2.2デシテックス×繊維長51mm、加熱処理前の捲縮数約16個/25mm)40重量%、実施例1で用いた構成繊維『東レテトロン T−209』(東レ(株)製の商品名)40重量%を均一に混綿し、カード機によってウエブを調製し、前述した各実施例と同じ条件でニードルパンチを施した。然る後、当該ウエブを温度条件150℃の熱風乾燥機で2分間にわたって加熱収縮処理することで、上述した潜在捲性縮繊維を高捲縮繊維とし、面密度60g/mの実施例7に係る不織布ワイパーとした。
【0024】
(実施例8)
実施例8に係る不織布ワイパーでは、上述した実施例7の構成繊維において、潜在捲縮性繊維である『東レテトロン T−25』(東レ(株)製の商品名)30重量%と、実施例1等で用いた構成繊維『東レテトロン T−209』50重量%としたことを除いては、実施例7と同一の熱融着繊維を用い、同一の調製条件で不織布ワイパーとした。
【0025】
(比較例1)
比較例1に係る不織布ワイパーとして、前述した特許文献1に係る技術を適用したワイパーを調製した。まず、ポリエチレンテレフタレートと変性ポリエチレンテレフタレートをサイドバイサイド型に配置した市販の潜在捲縮性繊維『ユニチカエステル C−81』(ユニチカ(株)製の商品名、繊度2.8デシテックス×繊維長51mm、加熱処理前の捲縮数約11個/25mm)のみを用い、カード機によって面密度約17g/mの表層となるウエブを2枚調製した。次いで高密度ポリエチレン(融点130℃、HDD63)を鞘部に配置し、芯部にポリプロピレンを配置構成した熱融着繊維『チッソポリプロ ESC』(チッソ(株)製の商品名、繊度3.3デシテックス×繊維長64mm)のみを用い、面密度約17g/mの中層となるカードウエブを調製した。次いで、これら2種類のウエブ同士が互いに30°の交差角となるように、表層で中層を挟持した3層構造とし、前述した各実施例と同じ条件でニードルパンチを施した後、温度条件150℃の熱風乾燥機で1分間にわたって加熱収縮処理することによって、上述した潜在捲縮繊維を高捲縮繊維とし、面密度60g/mの比較例1に係る不織布ワイパーとした。
【0026】
(比較例2)
比較例2に係る不織布ワイパーとして、比較例1で用いた熱融着繊維『チッソポリプロ ESC』(チッソ(株)製の商品名)30重量%と、構成繊維『東レテトロン T−209』(東レ(株)製の商品名)70重量%とを均一に混綿して1層のみの構造とした繊維ウエブを調製した。続いて、比較例1と同一の条件でニードルパンチ、熱風乾燥機による熱処理を施し、比較例2に係る面密度60g/mの不織布ワイパーを得た。
【0027】
(比較例3)
比較例3として、比較例2の繊維配合の重量比を熱融着繊維60重量%と構成繊維40重量%としたことを除いて、比較例2と同一の条件で面密度60g/mの不織布ワイパーを得た。
【0028】
上述した一連の不織布ワイパーの繊維組成、並びにカード機通過性に関する評価結果を表1に示す。尚、同表において、繊維組成のうちの熱融着繊維については熱可塑性樹脂の略号とHDDの測定値とを熱可塑性樹脂の名称とし、不織布ワイパーにおける重量比(重量%)を示し、構成繊維については、その繊維名称で上記重量比を同様に示してある。また、カード機通過性は、約1メートル角の不織布ワイパー中に、肉眼で見出せるネップの有無及び厚さの均一性を観察することで行い、ネップを見出せず、かつ均一であった場合を○、多少のネップとムラとが観察され、使用上問題ないが、外観がやや劣る場合を△とした。
【0029】
【表1】

【0030】
次いで、上述した各不織布ワイパーを試料とし、拭取試験を実施評価した結果につき説明する。この評価試験は、予め塵埃等を清掃清浄化したエポキシ塗装の床面に下記2種類の試験粉体毎に、3.00gを30cm幅の帯状に散布した。市販のワイパー用アプリケーター『ボンドポルベックアプリケーター P−45』(コニシ株式会社製の商品名、ワイパーの拭取面に相当する装着面寸法は、上辺560mm×下辺515mm×高さ87mmの台形)に上述した各試料を装着し、試験粉体が散布された床面を含む1.5m角の床面内を8の字状に15往復して拭き取った。捕集量は、測定前後のサンプル重量から算出した。
【0031】
(1)JIS 二種試験用粉体(粒径5〜75μm:塵埃相当)
(2)JIS 一種試験用粉体(粒径45〜300μm:土砂相当)
【0032】
尚、一連の拭取試験は22〜30℃、相対湿度は35%の条件で実施した。各試料毎に、上記試験結果に相当する各々の捕捉量を表2として示す。
【0033】
【表2】

【0034】
上記表2並びに前述した表1から理解できるように、実施例1〜実施例8の各不織布ワイパーは、熱融着繊維の表面に露出した熱可塑性樹脂としてHDD55以下のものを採用したことにより、HDDが55よりも大きいものを採用した比較例1〜比較例3と較べて、一種のタック性を有することから塵埃捕捉量に優れることが確認された。また、実施例6より、HDD55以下の繊維の配合量が増加するほど、塵埃捕捉量は高くなる傾向を示す反面、実施例4及び実施例5、或いは実施例4及び実施例6の各々の比較から理解できるように、当該熱融着繊維の配合量を増加させるに従ってカード機通過性低下が確認された。従って、実施例5及び実施例6における観察から、塵埃の捕捉性能と不織布の生産性との双方を満足するため、本発明に係るHDDの要件を満たす熱融着繊維が不織布ワイパーに占める割合は、約65重量%以下とするのが良い。
【0035】
また、実施例7及び実施例8と、比較例4とは、何れもHDDが55以下である同一の熱融着繊維を20重量%と固定し、構成繊維における潜在捲縮性繊維由来の高捲縮繊維の重量比のみを変えたワイパーである。これらの比較から、当該高捲縮繊維の重量比を減じるに従って徐々に土砂、塵埃の双方の捕捉量低下が認められた。特に、比較例4では、先に述べた従来技術の比較例1のワイパーと土砂の捕捉量では優れた結果である反面、塵埃の捕捉量は同等となった。このことから、本発明の構成繊維における高捲縮繊維、即ち、捲縮発現された潜在捲縮性繊維の重量比率は、30重量%以上とすればよいことが理解できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成繊維と熱融着繊維とが繊維間接合されてなる不織布ワイパーにおいて、前記熱融着繊維を構成する熱可塑性樹脂が、55以下のデュロメータ硬さ(HDD)を有することを特徴とする不織布ワイパー。
【請求項2】
前記熱融着繊維を構成する熱可塑性樹脂が、ポリエチレン共重合体からなることを特徴とする請求項1に記載の不織布ワイパー。
【請求項3】
前記熱融着繊維を構成するポリエチレン共重合体がエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)及び低密度ポリエチレン(LDPE)から選ばれた1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする請求項2に記載の不織布ワイパー。
【請求項4】
前記構成繊維と前記熱融着繊維との重量比率を80/20〜35/65の範囲としたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の不織布ワイパー。
【請求項5】
前記構成繊維は潜在捲縮性繊維が加熱処理によって捲縮発現した高捲縮繊維を含むことを特徴とする請求項4に記載の不織布ワイパー。

【公開番号】特開2006−218289(P2006−218289A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374184(P2005−374184)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】