説明

不織布及びその製造方法

【課題】クッション性に優れた嵩高な不織布を提供すること。
【解決手段】本発明の不織布は、伸縮性繊維11と、熱融着性を示す第1成分及び該第1成分より高融点の第2成分を含む熱融着性複合繊維12とを混合状態で含んでおり、第1成分の溶融固化により伸縮性繊維と熱融着性複合繊維とが結合してなる繊維結合点13が3次元的に分散した状態に多数形成されている。本発明の吸収性物品は、肌当接面と非肌当接面との間に前記不織布が配されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布及びその製造方法並びに該不織布を用いた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生理用ナプキン等の吸収性物品において、着用者の体へのフィット性を向上させるために、吸収性物品の幅方向中央部に肌当接面側に突出した突出部を形成したものが知られている。また、その突出部を着用者に柔軟にフィットさせるために、該突出部にクッション性を付与した吸収性物品(特許文献1参照)が知られている。
また、吸収性物品の弾性又は伸縮性を要する部位に特定の弾性不織布を用いたものが提案されている(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】実開平3−118727号公報
【特許文献2】特開2003−135515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載の吸収性物品においては、突出部の内部に、疎水性のクッション材が配されているため、疎水性のクッション材の存在によって、クッション材の下方に位置する吸収層への液の移行が制限される。
また、特許文献2記載の弾性不織布は、面と平行な方向への伸縮性には優れるが、嵩高性及びクッション性に劣るものであった。そのため、吸収性物品の突出部に用いても、該突出部に充分なクッション性を付与できないものであった。
尚、クッション性とは、厚み方向の加圧に対して柔軟に変形し且つ開放後に厚みが充分に回復する性質である。
【0005】
従って、本発明の目的は、クッション性に優れた嵩高な不織布、該不織布を効率的に製造できる不織布の製造方法、及び該不織布を備え、フィット性や追従変形性に優れた吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、伸縮性繊維と、熱融着性を示す第1成分及び該第1成分より高融点の第2成分を含む熱融着性複合繊維とを含み、第1成分の溶融固化により伸縮性繊維と熱融着性複合繊維とが結合してなる繊維結合点が3次元的に分散した状態に多数形成されている不織布を提供することにより前記目的を達成したものである。
【0007】
本発明は、伸縮性繊維と、熱融着性を示す第1成分及び該第1成分より高融点の第2成分を含む熱融着性複合繊維とを混合し、カード法又はエアレイド法によってウエブを形成し、該ウエブにエアースルー法による熱処理を施して、前記不織布を製造する不織布の製造方法を提供することにより前記目的を達成したものである。
【0008】
本発明は、肌当接面と非肌当接面との間に前記不織布が配されている吸収性物品を提供することにより前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の不織布は、嵩高であり、クッション性に優れている。
本発明の不織布の製造方法によれば、クッション性に優れた嵩高な不織布を効率的に製造することができる。
本発明の吸収性物品は、フィット性や追従変形性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
先ず、本発明の不織布及び吸収性物品それぞれの一実施形態について説明する。
本実施形態の吸収性物品は、図1及び図2に示すように、生理用ナプキン1であり、本実施形態の不織布は、生理用ナプキン1におけるクッション層43の構成材料である。
【0011】
本実施形態の生理用ナプキン1は、通常の生理用ナプキンと同様に縦長の形状を有しており、図2に示すように、肌当接面Pと非肌当接面Qとの間に液保持性の吸収層4を備えている。吸収層4は、下部吸収層41、該下部吸収層41より肌当接面側に位置し該下部吸収層41より小型である上部吸収層42、及び下部吸収層41と上部吸収層42との間に配されたクッション層43を具備している。クッション層43は、本発明の不織布の一実施形態から形成されている。
【0012】
生理用ナプキン1における肌当接面Pは、図2に示すように、複合表面シート2から形成されており、非肌当接面Qは、液不透過性又は液難透過性の裏面シート3から形成されている。複合表面シート2は、液透過性の表面シート21と、表面シート21の両側にヒートシール部23を介して連設された一対のサイドシート22とからなる。サイドシート22は、液不透過性又は液難透過性であり、例えば撥水性の不織布からなる。
【0013】
生理用ナプキン1は、図1に示すように、その幅方向中央部に、肌当接面P側に突出(着用者の肌側に向かって突出)する中高部(突出部)5を有している。中高部5は、着用時に着用者の液排泄部に対向配置される排泄部対向部に形成されている。中高部5は、ナプキン1の長手方向における所定の長さに亘って延びており、概ね着用者の液排泄部から肛門のやや後方までに亘る長さを有している。
【0014】
生理用ナプキン1における吸収層4は、図2に示すように、下部吸収層41、上部吸収層42及びクッション層43を具備する。
下部吸収層41は、ナプキン1の長手方向と同方向に長い形状を有し、平面視形状は、長手方向の両端部が円弧状とされた縦長矩形状である。下部吸収層41は、非肌当接面Qを形成する裏面シート3上に配されている。非肌当接面Qには、ショーツ等の衣類にナプキンを固定するための粘着部(図示略)が形成されている。
【0015】
上部吸収層42は、中高部5における肌当接面Pの近傍に位置しており、より具体的には、肌当接面Pを形成する複合表面シート2の下面に隣接させて配されている。上部吸収層42は、下部吸収層41より小型であり、ナプキン1の長手方向及び幅方向の何れの方向の長さも下部吸収層41より小さい。上部吸収層42のナプキン長手方向の長さは、ウイング部6と同方向の長さと同程度である。ウイング部6は、下部吸収層41の両側縁から外方に延出した、裏面シート3と複合表面シート2のサイドシート22部分とから形成されている。上部吸収層42及びクッション層43は、何れもナプキン1の長手方向と同方向に長い矩形状に形成されている。上部吸収層42、下部吸収層41、クッション層43の幅は、中高部5の最も高い部分を通る、ナプキン幅方向の断面(図2参照)において測定する。
【0016】
クッション層43は、下部吸収層41と上部吸収層42との間に配置されている。
クッション層43は、その上下面間を液が透過可能になされている。上下面間を液が透過可能である場合には、着用中に加わる圧力による圧縮状態下のみにおいて液が透過可能な場合や、上部吸収層42からクッション層43への液の移行と、クッション層43から下部吸収層41への液の移行とが同時に起こらない場合も含まれる。
【0017】
中高部5は、図2に示すように、複合表面シート2における液透過性の表面シート21部分、上部吸収層42及びクッション層43から形成されている。中高部5は、着用者の液排泄部に柔軟にフィットし、該液排泄部から排泄された液をすばやく吸収する機能を有する。
【0018】
上部吸収層42は、クッション層43を介して下部吸収層41へ滞りなく液を移動させるため、好ましくは高吸水性ポリマーを含まないか、或いは下部吸収層41に散布される高吸水性ポリマー量より少ない散布量の高吸水性ポリマーを含む。
具体的には、下部吸収層41は、好ましい吸収性を達成する為、坪量が15〜150g/m2、特に25〜85g/m2の高吸水性ポリマーを含むことが好ましい一方、上部吸収層42は、好ましい液移動性を達成する為、坪量が50g/m2以下、特に2〜33g/m2以下の吸水ポリマーを含むことが好ましい。
【0019】
クッション層43を構成する、本発明の不織布の一実施形態としての不織布について説明する。
本実施形態の不織布は、図3に示すように、伸縮性繊維11と、熱融着性複合繊維12とからなる。
伸縮性繊維11は、ゴム状の弾性を有し、その長手方向に伸縮可能なものである。
伸縮性繊維11としては、そのような繊維を特に制限なく用いることができ、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー繊維、ウレタン系エラストマー繊維、スチレン系エラストマー繊維、及び水添ジエン−オレフィン系エラストマー繊維が好ましい。これらの伸縮性繊維は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせ用いることができる。これらの中でも、オレフィン系熱可塑性エラストマー繊維及び水添ジエン−低分子量オレフィン系エラストマー繊維が、第1成分12aに熱可塑性エラストマーを用いた熱融着性複合繊維12との相性が良く、繊維同士の結合角が変化しにくい、しっかりした繊維結合点13を形成し得ることから好ましい。
【0020】
オレフィン系熱可塑性エラストマー繊維としては、メタロセン触媒系ポリプロピレン、同ブテン、同ペンテン、及び同触媒系で、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテンから選択された2種又は3種の共重合物を繊維成形したもの等が挙げられる。
ウレタン系エラストマー繊維としては、各種ポリウレタン樹脂を繊維成形したもの等が挙げられる。
スチレン系エラストマー繊維としては、スチレン/エチレン・ブチレン/スチレン、スチレン/エチレン・ブチレン/オレフィン、スチレン/ブチレン/オレフィン共重合体などからなるエラストマー樹脂を繊維成形したもの等が挙げられる。
【0021】
水添ジエン−オレフィン系エラストマー繊維としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテンから選択された1〜3種の成分に、架橋用ジエンモノマーを加えた共重合物、又は該重合物に更に水素添加した化合物を繊維成形したもの等が挙げられる。
【0022】
熱融着性複合繊維12は、図4に示すように、熱融着性を示す第1成分12a及び該第1成分12aより高融点の第2成分12bを含む複合繊維である。
熱融着性複合繊維12としては、図4に示すように、芯鞘型の複合繊維やサイド・バイ・サイド型の複合繊維等が好ましく用いられる。芯鞘型の複合繊維は、偏芯芯鞘型の繊維であっても良い。第1成分12aは、熱融着性複合繊維12の表面の少なくとも一部を構成している。芯鞘型複合繊維においては、第1成分12aが鞘部を構成していることが好ましい。
【0023】
熱融着性複合繊維12の第1成分12aは、溶融固化して、伸縮性繊維11と熱融着性複合繊維12との間を結合している。即ち、本実施形態における不織布には、伸縮性繊維11,11と熱融着性複合繊維13とが結合してなる繊維結合点13,13が多数形成されている。
本実施形態においては、図3に示すように、熱融着性複合繊維12と熱融着性複合繊維12との間もそれらの第1成分12aが溶融固化することによって結合している。図3中の繊維結合点14が、熱融着性複合繊維12,12同士が結合した繊維結合点である。
【0024】
本実施形態の不織布においては、伸縮性繊維11と熱融着性複合繊維12とが混在し、両者が繊維結合点13,13において結合していることによって、不織布中に、図3に示すような、繊維のネットワーク構造が形成されている。このようなネットワーク構造により、本実施形態の不織布は、嵩高な不織布となっている。
【0025】
更に、該ネットワーク構造は、伸縮性で、弾性変形/弾性回復可能な繊維11からなる繊維部分と、非伸縮性で弾性変形しない熱融着性複合繊維12からなる繊維部分と、該熱融着性複合繊維の該第1成分12aが溶融固化して繊維間を強固に固定した繊維結合点13からなる。繊維の組み合わせに寄らず、形成された結合点13は硬く、結合に関る繊維のなす角度を固定維持する効果がある。
また、ネットワーク構造と伸縮性繊維11の弾性伸縮性/弾性変形性によって、不織布は、厚み方向に加圧されたときに、図3(b)に示すように伸縮性繊維が優先的に変形して、厚みが減少する方向に柔軟に変形する。このとき、繊維結合点13はいずれも変形せず、繊維間のなす角度を変形前の状態に保持し続けている。一方、その加圧力が除かれたときには、伸縮性繊維の優れた復元力と、繊維結合点の効果、即ち繊維間のなす角度を保持する効果により、ほぼ元の状態へと戻る。
そのため、本実施形態の不織布は、嵩高であると共に、クッション性に優れている。
【0026】
繊維結合点13,13に強い結合力及び高い形態保持性を与える観点から、熱融着性複合繊維12は、下記の繊維であることが好ましい。
(1)第1成分及び第2成分の合計量に対する第1成分の割合が40質量%以上で且つ第1成分がポリエチレンを主体とする繊維
(2)第1成分が変性ポリプロピレンを含む繊維
(3)第1成分が低融点且つ低分子量のポリエチレンを主体とする繊維
(4)第1成分がメタロセン触媒を用いて得られる低融点且つ低分子量のポリエチレンを主体とする繊維。
これらの熱融着性複合繊維は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせ用いることができる。
【0027】
熱融着性複合繊維12において、第1成分12aと組み合わせる第2成分12bとしては、ポリエステル系、ポリプロピレン、ナイロン系樹脂/これらの誘導体組成物、及びこれらを任意にブレンドした樹脂等が挙げられる。
また、第1成分12aの融点と第1成分12bの融点との差は、20℃以上が好ましく、45〜130℃がより好ましい。
【0028】
また、伸縮性繊維11と熱融着性複合繊維12の配合割合(前者:後者)は、35:65〜80:20が好ましく、より好ましくは40:60〜75:25である。伸縮性繊維11はネットワーク全体の変形性/回復性の主たる機能を担っている為、多いほど変形性は高まる方向にある。一方熱融着性複合繊維12が形成する結合点13は、繊維同士をネットワーク化する機能と、繊維の交差角度を固定することで、繊維の位置復元を可能にする(即ち回復性発現の機能の一端を担う)ため、熱融着性複合繊維12の配合比率が大きいほど、変形回復力の大きい繊維シートを形成する。従って、配合比率の全体的な傾向としては、伸縮性繊維11配合比率の高いシートほど柔らかくしなやか(だがややヘタリ易く回復性に劣り)、一方熱融着性複合繊維12配合比率の高いシートほど変形反撥力が高く回復性に優れる(一方、硬く、座屈しやすい方法)、という特性を有する。
【0029】
繊維シートの変形特性は、繊維太さでコントロールすることも可能である。基本的に該シートは柔らかく回復性に富むことが重要である為、熱融着性複合繊維12は伸縮性繊維11よりも、細いことが好ましい。伸縮性繊維11の繊度は1.2〜13dtexであることが好ましく、熱融着性複合繊維12の繊度は1.8〜8.7dtexであることが好ましい。
【0030】
熱融着性複合繊維12の機能では、特に第1成分の形成する結合点13が重要である。強固な結合点を形成するに、第1成分は30質量%以上が好ましく、35〜60質量%であることが更に好ましい。第1成分の比率が高すぎると結合点数が多くなりすぎて硬くなることがあるが、結合点強度と結合点数のバランスを取る為、第1成分が50質量%以上のときに、サイド・バイ・サイド型複合形態を選択する、または高捲縮度の繊維を選択することが有利な場合もある。
【0031】
本発明の不織布は、厚み方向の変形に対して十分なストロークを得る点から、その0.5g/cm2荷重下における厚みが2mm以上、特に3〜15mmであることが好ましい。この厚みの測定は、KES−G5(カトーテック株式会社製)により行われる。
また、本発明の不織布は、装着時に、低い装着圧でも体の形に従って潰れられる点から、その厚みを50%に圧縮したときの応力が20g/cm2以下であることが好ましい。
また、本発明の不織布は、上部吸収層の液を下部吸収層に伝達できる点から、少なくとも親水性であることが好ましく、そのクレム吸水度が5mm以上であることが更に好ましい。クレム吸水度は、JIS P8141に従って、着色した生理食塩水を試験液に用いて測定される。
【0032】
本発明の不織布は、本発明の効果が得られる限り、上述した伸縮性繊維及び熱融着性複合繊維に加えて、他の繊維を含んでいても良い。当該他の繊維としては、レーヨン、コットン、アクリル系繊維、熱可塑性ポリマー材料からなる繊維等が挙げられる。熱可塑性ポリマー材料としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミドなどが挙げられる。
【0033】
本発明の不織布は、熱融着性複合繊維に由来しない熱融着性成分により伸縮性繊維同士が結合してなる第2の繊維結合点15が、不織布中に3次元的に分散した状態に多数形成されていてもよい。このような繊維結合点15は、不織布の製造時に、伸縮性繊維11及び熱融着性繊維12からなるウエブに、ポリエチレン等の低融点樹脂からなる粒子や繊維を含ませ、該ウエブに熱処理を施すことにより得ることができる。
このような第2の繊維結合点15を形成することで、変形後のシート復元性を適度に高めることができる。柔らかく、かつ復元性に富んだシート変形特性を得るには、該熱融着成分の好ましい配合量は15%以下、特に7%以下である。
【0034】
伸縮性繊維11や熱融着性複合繊維12の繊維長は、不織布の製造方法に応じて適切な長さが選択される。例えば、不織布がエアレイド方式によって製造される場合、伸縮性繊維や熱融着性複合繊維それぞれの繊維長は、好ましくは7〜30mmである。一方、カード方式を用いる場合には、好ましくは35〜110mmである。
【0035】
次に、本発明の不織布の製造方法の好ましい一実施態様について説明する。
本実施態様の不織布の製造方法は、伸縮性繊維11と熱融着性複合繊維12とを混合し、カード法又はエアレイド法によってウエブを形成し、該ウエブにエアースルー法による熱処理を施して、伸縮性繊維11と熱融着性複合繊維12と含む前記不織布を製造する。
【0036】
詳述すると、伸縮性繊維11及び熱融着性複合繊維12を原料として用いる。必要に応じて他の原料を含めてもよい。これらの原料をエアレイド方式によって空気流で搬送し、混合積繊させて混合積繊物であるウエブを得る。あるいは、これらの原料をカード機にかけてカードウエブを得る。
次いで、得られたウエブに、エアースルー法による熱処理(熱風処理)を施し、熱融着性複合繊維12の第1成分12aを溶融させ、次いで冷却(強制又は自然冷却)させると、前述した繊維結合点13,14が形成され、上述した不織布が得られる。
この熱処理の温度は、熱融着性複合繊維12の第1成分12aの融点より高く第2成分12bの融点より低いことが好ましく、第1成分12aの融点より5〜50℃高い温度であることがより好ましい。また、この熱処理は、該第1成分12aが溶融拡散して、結合点13周辺全体を硬く固めてしまわないよう短時間で行われることが好ましい。具体的には、所定温度の熱風処理(いわゆるエアスルー処理)において、60秒以内、より好ましくは30秒以内の条件下に行うことが好ましい。
このようにして得られた不織布においては、繊維結合点13,14が、それぞれ、不織布内に3次元的に分散した状態に多数形成されている。
【0037】
本発明の不織布は、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド、使い捨ておむつ等の各種吸収性物品における吸収層の一部又は全部、表面シート等の各種構成部材に用いることができる。また、外科用衣類、清掃シート等の吸収性物品以外の各種用途に用いることができる。
本発明の不織布を一枚で用いる場合には、厚み(嵩)が不足する場合がある。その場合には、例えば、不織布を積層したり、折り重ねたり、丸めたりして、全体の厚みを高くして用いることができる。
【0038】
本実施形態の不織布によれば、前述の通り、嵩高であり且つクッション性に優れているため、本実施形態の生理用ナプキン1のように、中高部(突出部)5を形成するクッション層43に用いると、クッション性に優れた中高部(突出部)5を構成することができる。
図2に示す生理用ナプキン1においては、中高部(突出部)5の非加圧状態においては、上部吸収層42から下部吸収層41への液の移行がクッション層43によって妨げられ、中高部(突出部)の加圧状態においては、クッション層43の繊維密度が上昇して、上部吸収層42から下部吸収層41への液の移行が促進される。これにより、加圧下においては、上部吸収層42から下部吸収層41への液の移動がスムーズに進行する一方、液を吸収した後に、下部吸収層42から上部吸収層42、更には肌当接面Pへと液が逆戻りすることを効率的に防止することができる。上部吸収層42は、例えば、パルプ繊維及び合成繊維を主体として構成された吸収体等から構成することができ、下部吸収層41は、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを主体として構成された吸収体等から形成することができる。
また、本実施形態の不織布の製造方法によれば、該不織布を効率的に製造することができる。
【0039】
本発明は、前述した実施形態に制限されることなく、各発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
例えば、上述した生理用ナプキン1においては、図1及び図2に示すように、表面シート21は、中高部5を囲むように形成されたエンボス溝7において下部吸収層41と一体化されているが、エンボス溝7はなくても良い。
また、生理用ナプキン1等の吸収性物品は、ウイング部6や、ナプキンの後方部において側方に拡がる後部フラップ部8を有しないものであっても良い。また、中高部(突出部)5における表面シート21と上部吸収層42との間にクッション層43と同様の材料からなる薄型のクッション層を設けても良い。
また、図2に示す生理用ナプキン1における上部吸収層42及びクッション層43を、本発明の不織布から形成された一つのクッション層に置き換えることもできる。
更に、吸収性物品において吸収層及び表面シートの両方を、本発明の不織布から形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、本発明の吸収性物品の一実施形態である生理用ナプキンを示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す生理用ナプキンのII−II線断面図である。
【図3】図3は、本発明の不織布の繊維構造を示す模式図であり、図3(a)は無加圧下の状態を示し、図3(b)は加圧下の状態を示す。
【図4】図4は、熱融着性複合繊維の断面構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 生理用ナプキン(吸収性物品)
2 複合表面シート
21 表面シート
22 サイドシート
3 裏面シート
4 吸収層
41 上部吸収層
42 下部吸収層
43 クッション層
5 中高部(突出部)
11 伸縮性繊維
12 熱融着性複合繊維
13 伸縮性繊維と熱融着性複合繊維とが結合している繊維結合点
14 熱融着性複合繊維同士が結合している繊維結合点
15 伸縮性繊維同士が結合している繊維結合点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性繊維と、熱融着性を示す第1成分及び該第1成分より高融点の第2成分を含む熱融着性複合繊維とを含み、第1成分の溶融固化により伸縮性繊維と熱融着性複合繊維とが結合してなる繊維結合点が3次元的に分散した状態に多数形成されている不織布。
【請求項2】
前記伸縮性繊維が、オレフィン系エラストマー繊維、ウレタン系エラストマー繊維及びスチレン系エラストマー繊維からなる群から選択された一又は二種以上であり、
前記熱融着性複合繊維が、第1成分及び第2成分の合計量に対する第1成分の割合が40質量%以上で且つ第1成分がポリエチレンである繊維、第1成分が変性ポリプロピレンを含む繊維、第1成分が低融点且つ低分子量のポリエチレンを主体とする繊維、及び第1成分がメタロセン触媒を用いて得られる低融点且つ低分子量のポリエチレンを主体とする繊維からなる群から選択される一又は二種以上である、請求項1記載の不織布。
【請求項3】
前記熱融着性複合繊維に由来しない熱融着性成分により前記伸縮性繊維同士が結合してなる第2の繊維結合点が3次元的に分散した状態に多数形成されている請求項1又は2記載の不織布。
【請求項4】
伸縮性繊維と、熱融着性を示す第1成分及び該第1成分より高融点の第2成分を含む熱融着性複合繊維とを混合し、カード法又はエアレイド法によってウエブを形成し、該ウエブにエアースルー法による熱処理を施して、請求項1記載の不織布を製造する不織布の製造方法。
【請求項5】
肌当接面と非肌当接面との間に請求項1記載の不織布が配されている吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収性物品は、表面シート、裏面シート及び吸収層を備え、
前記吸収層は、上部吸収層及び下部吸収層を含み、該上部吸収層と該下部吸収層との間に、請求項1〜4の何れかに記載の不織布が配されており、
前記上部吸収層は、親水性繊維を主体として構成されており、且つ高吸水性ポリマーを含まないか、前記下部吸収層が含有する高吸水性ポリマーの坪量よりも少ない坪量の高吸水性ポリマーを含有する吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−255525(P2008−255525A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100044(P2007−100044)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】