説明

不織布溶着装置

【課題】縫製するための前準備や後処理を必要とせず年少者も簡単に不織布製品を作成することができる新しい発想の不織布溶着装置を提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂からなる不織布aを溶着して不織布製品を作成する不織布溶着装置Aであって、該不織布溶着装置Aは不織布aを載置する作業板2と、該作業板2上に載置された不織布aを溶着する溶着装置Bとで構成され、上記溶着装置Bは上記作業板2の上に載置した不織布aに当接する当接部3と、該当接部3内に配置され当接部3から下方に出没可能な作業軸4と、該作業軸4を回転駆動させるモータ5とで構成され、上記作業軸4の回転時には作業軸4と作業台2上に載置された不織布aとの間で摩擦熱が発生するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布溶着装置、詳しくは不織布を溶着して不織布製品を作成する不織布溶着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、2枚の布地を縫製する縫製玩具としてミシン玩具が提案されている(例えば、特許文献1)。このミシン玩具は、子供でも上糸の張力の調整を適性に行えると共に、上糸が糸調子器から外れることの無いような糸調子器を備えたものである。
【特許文献1】特開2005−349067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする問題点は、上述のミシン玩具は子供でも縫製ができるように工夫されているものであるが、あくまで本物のミシンを想定して考えられたもので、縫製するためには針や糸が必要になり、それらの物品の取り扱いが欠かせないものであり、前準備や後処理を行なわなければならず、必ずしも年少者に取り扱うことができない問題があった。
【0004】
本発明は、上記問題点を解決し、縫製するための前準備や後処理を必要とせず年少者も簡単に不織布製品を作成することができる新しい発想の不織布溶着装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明に係る不織布溶着装置は、熱可塑性樹脂からなる不織布を溶着して不織布製品を作成する、以下の要件を備えることを特徴とする。
(イ)上記不織布溶着装置は不織布を載置する作業板と、該作業板上に載置された不織布を溶着する溶着装置とで構成されていること
(ロ)上記溶着装置は上記作業板の上に載置した不織布に当接する当接部と、該当接部内に配置され当接部から下方に出没可能な作業軸と、該作業軸を回転駆動させるモータとで構成され、上記作業軸の回転時には作業軸と作業台上に載置された不織布との間で摩擦熱が発生すること
【0006】
なお、前記作業板と、作業軸とは熱伝導性の低い熱硬化性樹脂で形成することが好ましい。
【0007】
また、前記不織布溶着装置は前記モータの回転方向を選択する選択手段を備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作業板の上に不織布を載置し、溶着装置の当接部を不織布に押し当てれば、回転する作業軸と不織布との間で発生した摩擦熱で不織布を溶着することができるとともに溶着部から分離ができるので、従来のミシン玩具のように前準備や後処理などを必要とせず、簡単に縫製に代わる溶着を行なうことができ、年少者にも縫製と同様に楽しむことができる不織布溶着装置を提供することができる。
【0009】
請求項2の発明によれば、作業板と、作業軸とを熱伝導性の低い熱硬化性樹脂で形成したので、不織布と作業軸との間で発生した摩擦熱は作業板と作業軸を介して拡散することなく不織布に吸収されるので、モータを高回転で回すことなく不織布の溶着を効率的に行なうことができる。
【0010】
請求項3の発明によれば、モータの回転方向を選択する選択手段を設けたので、作業軸に対して移動させる不織布の溶着部を不織布の送り方向のどちらに形成させることができるかを自由に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明に係る不織布溶着装置の一例を示し、この不織布溶着装置Aは熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレン)からなる不織布を溶着装置Bで溶着して不織布製品を作成するもので、溶着装置Bは基盤1上に設けた作業板2上に重ねた状態で載置された不織布を作業板2に押し付ける当接部3と、この当接部3内に配置され当接部3から下方に出没可能な作業軸4と、この作業軸4を回転駆動するモータ5とで構成され、上記溶着装置Bはアーム6の先端に設けた保持部材7に着脱可能に保持されている。
【0012】
上記アーム6は後端が台座8上に固定された支持部材9に支軸10で上下に回動可能に支持されるとともにバネ部材11で下方に回動するように付勢されている。そして、アーム6の先端には平面視略U字状で先窄まりに形成された保持部材7がネジ12で固定されている(図2参照)。
【0013】
台座8は内部にモータ5を駆動する電源電池13が収容され、上面にはネジや接着剤などの適宜の固定手段で平面視略コ字状の固定枠14が固定され、この固定枠14に形成された係合溝14aに支持部材9の両端に突出形成された係合突縁9aを係合させることにより支持部材9を台座8に固定できるようになっている。また、モータ5の回転方向を選択する選択手段である選択スイッチ15が配置されている。
【0014】
不織布に形成される溶着部は、作業軸4に対して不織布の送り方向が同じであっても作業軸4の回転方向によって溶着部が作業軸4の左右何れか側に形成されるので、溶着部を送り方向のどちら側に形成するかによってモータ5の回転方向を選択スイッチ15で予め設定しておけばよい。
【0015】
そして、基盤1の前部には円形の凹部16が形成され、この凹部16には円板状に形成された作業板2が嵌め込まれている。この作業板2は硬くて熱に強く熱伝導性の低い熱硬化性樹脂(例えば、ベークライト)で形成されていればよい。
【0016】
溶着装置Bは、図3に示すように、筒状のフレーム17の内部に上下動可能に配置された摺動部材18に収容されたモータ5と、このモータ5の回転軸19に連結部材20で連結された作業軸4と、不織布を作業板2に押し付ける当接部3とで構成されている。
【0017】
上記摺動部材18は有底筒状に形成され、底板の中央には連結部材20を下方に突出させる開口部21が形成され、開口部21の両側には下方に突出して2本の軸部22が形成され、この軸部22はフレーム17の底板23に形成された穴部24から下方に突出し、その先端には穴部24より大きなワッシャー25がネジ26で取り付けられ、摺動部材18は軸部22の長さだけフレーム17内を上下動できるようになっている。
【0018】
そして、作業軸4の先端はフレーム17の底板23から下方に膨出して形成された有底筒状の当接部3の底部に形成された開口部27に対応し、摺動部材18(モータ5)の上下動に対応して開口部27から出没するようになっている。
【0019】
なお、アーム6はバネ部材11で下方に回動するように付勢されているので、溶着装置Bの当接部3は不織布を作業板2に押し付けた状態になっているが、不織布が作業板2に押し付けられた状態であっても作業板2上の搬送がスムースにできるように当接部3の底部3aは略半球状に形成されている。
【0020】
そして、上記作業軸4は上記作業板2と同じく硬くて熱に強く熱伝導性の低い熱硬化性樹脂(例えば、ベークライト)で形成されていればよい。
【0021】
また、フレーム17の下端と側面とには周面に沿って突縁28、29がそれぞれ形成されているが、この突縁28、29は上述したアーム6の先端に固定された保持部材7で保持したとき、保持部材7からフレーム17が上下方向にズレないようにするための位置決めの機能を備えたものである。
【0022】
なお、図1、2において、モータ5と電源電池13とは図示しないケーブルで電気的に接続されている。そして、モータ5をON/OFFするスイッチ30は、フレーム17の上板31に取り付けられている。
【0023】
上記不織布溶着装置Aで袋状の不織布製品を作る場合について説明する。先ず、選択スイッチ15でモータ5の回転方向を選択し、スイッチ30をONしてモータ5を回転させた状態で、図4に示すように、不織布aを重ねた状態で溶着装置B(当接部3)の下に差し込む。
【0024】
なお、不織布aはメーカーが不織布製品を作るためのサプライ品として供給する場合は溶着する部分が判るように予め目印mを表示しておいてもよいし、ユーザーがオリジナルの不織布製品を作成する場合は自分で目印mを筆記具で描いておいてもよい。
【0025】
溶着装置Bの下に差し込んだ不織布aは溶着装置Bを押し上げた状態になるので、作業軸4も押し上げられて先端が不織布aの上に接触した状態になっているが、作業軸4は回転しているので、作業軸4の先端と不織布aとの間で摩擦熱が発生し、作業軸4は不織布aを溶かしながら下降していくので2枚の不織布aは溶着した状態になる。
【0026】
引き続き不織布aを溶着装置Bの手前から奥に向かってゆっくり目印mに沿って搬送していくと、不織布aと作業軸4の周面との間で摩擦熱が発生し、発生した摩擦熱で不織布aは進行方向の右側に溶着部bが形成されるとともに溶断して左右に分離しながら搬送されていく(図5参照)。
【0027】
不織布aを作業軸4の下を完全に通過させれば、不織布aは左右に分離して、一方の端部には溶着部bが形成されているので、回転する作業軸4の下を搬送するだけで溶着しながら切断することができる(図6参照)ので、選択スイッチ15を操作してモータ5の回転方向を切り換え、もう一方の目印mに沿って同様に不織布aを搬送すればよい。
【0028】
なお、溶着部bは、不織布aの移動方向が同じであっても作業軸4の回転方向によって溶着部bが作業軸4を中心に異なる方向に形成される。この溶着部bは図7(a)に示すように、作業軸4が反時計方向に回転している場合は、作業軸4の右側に形成され、作業軸4が時計方向に回転している場合は、図7(b)に示すように、作業軸4の左側に形成されるので、モータ5の回転方向は選択スイッチ15で予め設定しておけばよい。
【0029】
溶着が終わった不織布aは溶着部bで左右に分離しているので、不用の部分を引き離し、裏返し、開口部側を折り返せば袋状の不織布製品Cができる(図8(a)参照)。
【0030】
さらに、図9は、不織布溶着装置Aの使用態様の他の例を説明するもので、溶着装置Bを保持部材7から外し、別途用意した作業板2´を上記不織布製品Cの中に差し込み、作業板2´と不織布製品Cとの間に他の不織布aを差し込み、溶着装置Bを手で持って当接部3を不織布製品Cの上に押し付けるようにしたものである。
【0031】
当接部3を不織布製品Cに押し付けるとその部分に作業軸4の先端が接触し、摩擦熱が発生して不織布製品Cと不織布製品C´とを溶着するので、溶着が終わったら溶着装置Bを持ち上げて不織布製品Cから離反させる。
【0032】
作業軸4が当接した部分はスポットで溶着部b´が形成されているので、複数箇所同様に溶着すれば確実に不織布同士を連結することができ、吊り手の付いた不織布製品Cを作成することができる(図8(b)参照)。
【0033】
なお、溶着部b´が見えないように飾りDを取り付ければ、可愛いバッグを作り上げることができる(図8(c)参照)。
【0034】
上述したように、線で溶着する場合は溶着装置Bをアーム6の先端に取り付け、当接部3の下に不織布aを差し込み、溶着させながら不織布aを搬送すればよいし、点で溶着する場合は、別途用意した作業板2´の上に不織布を載置し、溶着装置Bを保持部材7から外して手で保持した状態で必要な場所に当接部3を押し付ければよい。
【0035】
上述したように、電源をONして、不織布aを溶着装置Bの下に案内すれば、簡単に不織布aを溶着、切断することができるので、縫製するための糸を用意したり、縫製用の糸のセッティングをしたり、縫製後又は縫製前に必要な形状に切り取る鋏などの切断用具も必要とせず、誰でも簡単にしかも前準備や後処理を必要とせず、不織布製品を作成することができる使い勝手の優れた年少者も楽しむことができる不織布溶着装置を提供することができる。
【0036】
なお、上述の不織布溶着装置は熱可塑性樹脂からなる不織布を素材として不織布製品を作成する場合について説明したが、不織布に限定されずビニールを素材として用いても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る不織布溶着装置の斜視図
【図2】上記不織布溶着装置の構成を説明する分解斜視図
【図3】溶着装置の構成を説明する分解斜視図
【図4】上記不織布溶着装置の使用態様の説明図
【図5】上記不織布溶着装置の使用態様の説明図
【図6】上記不織布溶着装置で不織布を溶着する状態の説明図
【図7】(a)(b)は作業軸の回転方向と不織布の移動方向との関係で形成される溶着部の説明図
【図8】(a)〜(c)は不織布製品の説明図
【図9】上記不織布溶着装置の他の使用態様の説明図
【符号の説明】
【0038】
1 基盤
2 作業板
3 当接部
4 作業軸
5 モータ
A 不織布溶着装置
a 不織布
B 溶着装置
b 溶着部
C 不織布製品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる不織布を溶着して不織布製品を作成する、以下の要件を備えることを特徴とする、不織布溶着装置。
(イ)上記不織布溶着装置は不織布を載置する作業板と、該作業板上に載置された不織布を溶着する溶着装置とで構成されていること
(ロ)上記溶着装置は上記作業板の上に載置した不織布に当接する当接部と、該当接部内に配置され当接部から下方に出没可能な作業軸と、該作業軸を回転駆動させるモータとで構成され、上記作業軸の回転時には作業軸と作業台上に載置された不織布との間で摩擦熱が発生すること
【請求項2】
前記作業板と、作業軸とは熱伝導性の低い熱硬化性樹脂で形成した、請求項1記載の不織布溶着装置。
【請求項3】
前記不織布溶着装置は前記モータの回転方向を選択する選択手段を備えた、請求項1記載の不織布溶着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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