説明

不織材料および当該材料の製造方法

不織材料およびその成形方法を提供して、好ましくはエアレイド成形ヘッドを使用して、無機基材繊維と有機結合繊維とからなる実質的に平らまたは平坦で自立性の芯を形成する。特定の好ましい実施形態では、不織材料の坪量が約3,000gsm以上である。好ましくは、有機結合繊維は、単一繊維フィラメントに結合構成材と構造構成材とを有する。一態様では、有機結合繊維の構造構成材が、最小限の労力で不織材料を手で切断できるような強度を与えるのに効果的な組成物を有する。このような形態では、不織材料が、防音天井タイルとして機能するのに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この分野は、不織材料ならびにその製造方法に関し、特に、防音天井タイルとして用いるのに適した吸音性を得るのに効果的な不織材料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な防音天井タイルは、基材繊維と、充填材と、バインダーとで製造される芯を含む不織構造である。基材繊維は通常、ミネラルウールまたはガラス繊維である。充填材は普通、パーライト、クレー、炭酸カルシウムまたはセルロース繊維である。バインダーは一般に、セルロース繊維、スターチ、ラテックスまたは同様の材料である。乾燥時、バインダーが他の材料と結合し、芯に構造的な剛性を付与する繊維網が形成される。一般的な天井タイルとして使用するには、一般的な天井用タイル格子または同様の構造に固定できるよう、芯が実質的に平らで自立するものでなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
防音用天井タイル用として適したものとなる不織構造の場合、通常は火災等級と騒音減衰係数に関するさまざまな業界標準ならびに建築法規を満たしている。たとえば、業界標準では一般に、ASTM E84に準拠した天井タイルの火災等級をAクラスと規定しており、これには通常、火炎伝播指数が25未満、発煙性指数50未満である必要がある。騒音減衰係数に関しては、業界標準では一般に、ASTM C423に準拠した防音用天井タイルの騒音減衰係数を少なくとも約0.55と規定している。
【0004】
防音天井タイルは普通、水性媒体を用いてタイルの構成材を移送し、防音天井タイルの芯の形成に用いられる不織マットに成形する、湿式プロセスで形成される。基本的なプロセスでは、まずさまざまなタイル成分を水性スラリーに入れて混合する。次に、この水性スラリーをヘッドボックスに送り、移動している多孔性のワイヤウェブの上に流して所望の大きさと厚さの均一なマットを形成する。その後、脱水してマットを乾燥させる。乾燥後のマットに対してさらに切断や打ち抜き、タイルに対するコーティングおよび/または表面仕上げ材をラミネートして、天井タイル構造に仕上げてもよい。湿式プロセスでは、水がさまざまなタイル成分の移送媒体として機能する。この湿式プロセスは、高い製造速度を実現可能であり、なおかつ低コストの原料(リサイクルされた新聞用紙の繊維、再生段ボール紙、スクラップポリエステル繊維、コットンリンター、古布など)を使用できるため、受け入れられている。しかしながら、防音用天井タイルの製造に水を使用することには、プロセスおよび成形される製品をあまり望ましくないものにしてしまう多くの欠点がある。
【0005】
湿式プロセスでは、構成材を移送して天井タイル構造に成形するのに大量の水を使用する。この大量の水は、最終的には製品から取り除かなければならないものである。したがって、たいていのウェットプロセスでは、自然な排水、吸引、圧縮および/または蒸発の1工程以上をかけて脱水に対応している。これらのプロセス工程では移送と脱水に大きなエネルギ需要を伴う。タイルの成形で大量の水を扱うことやその後の脱水と水分の蒸発そのものが原因で設備費と運用費がかさむため、一般的な湿式プロセスは比較的費用のかかるものとなっている。
【0006】
また、吸音特性に優れた防音用天井タイルを湿式プロセスで成形するのは困難である。湿式プロセスでは、湿式成形における成分の性質がゆえに、成形される天井タイルの表面が密な状態になることが多い。表面が密な状態の天井タイルは通常、それほど効率のよい遮音材ではない。これはタイルの多孔性が低いためであり、そのタイルは音を吸収しにくくなる。タイルの表面が密であると実際に音が反射することもあるが、これは防音用天井タイルでは望ましくない特性である。
【0007】
これらの望ましくない吸音特性は、湿式プロセスで一般に用いられているタイル成分が親水性であることから発生すると考えられている。天井タイルの低コストのバインダーおよび充填材として普通に用いられているセルロース繊維(リサイクルされた新聞用紙など)は、非常に親水性が高く、多くの水を引きつける。ある程度はこのような親水性の構成材が原因で、湿式タイルは一般に、tipple含水量(すなわち、乾燥用のオーブンまたは炉に入れる直前のボードの水分量)が約65〜約75パーセントと高く、それがゆえに乾燥時の蒸発需要が増すことになる。結果として、乾燥時にこれらの親水性の構成材から脱水するにあたって、タイル成分に大きな表面張力が生じる。水すなわち極性分子は、他の構成材に表面張力を与える。この表面張力は通常、タイル表面を多孔性構造の少ない密な状態にする要因である。表面張力は、この過程でタイルの要素を互いに近づける方向に引き寄せて構造を過密化し、タイルの孔を閉じてしまうと考えられている。このため、湿式生成された天井タイルでは、許容可能な騒音減衰係数を達成するのにタイルに穿孔する処理がさらに必要になる。したがって、製造速度が高く低コストの材料を使用できるという点で湿式プロセスが許容可能な場合もあるが、製品に吸音特性が求められる場合には、移送媒体として水を用いるとプロセスならびに得られる製品がそれほどコスト効率のよいものではなくなってしまう。
【0008】
場合によっては、防音用天井タイルにラテックスバインダーを使用してもよく、それがミネラルウールを基材繊維として用いる湿式プロセスで好ましいこともある。しかしながら、ラテックスは通常、天井タイルの成形に用いられる最も高価な成分である。このため、このような比較的高コストの成分の使用を制限することが望ましい。天井タイルに普通に用いられている他のバインダーには、スターチならびに、上述したようにセルロース繊維がある。しかしながら、スターチおよびセルロースは親水性であり、加工時に水を引きつけて、上述した大きな表面張力による問題を生じやすい。
【0009】
おむつや清浄綿、濾過媒体、自動車用絶縁材などの他の不織構造は、不織材料を成形しているさまざまな成分用の移送媒体として空気を用いるエアレイドプロセスで成形されることがある。エアレイドプロセスでは、水を移送して除去する必要性がなくなる。しかしながら、成形品に含まれる構成材がいずれも空気流で移送できるものでなければならない。このため、重い繊維や高密度の繊維あるいは長い繊維ならびに液体の構成材は通常、エアレイドプロセスには適していない。すなわち、天井タイルの製造で普通に用いられる液体樹脂バインダーおよび/またはラテックスバインダーは通常、エアレイドプロセスには使用できない。したがって、一般的なエアレイドプロセスでは、基材繊維として用いられるガラスの短繊維(すなわち、長さ約10mm)を、一成分結合繊維または複合結合繊維などの熱融合性繊維または熱融着繊維と併用するほうが好ましい。不織材料として成形したあとは、所望の芯構造内の基材繊維構造を結合するために、熱融着繊維を加熱して繊維の一部を溶融させる。
【0010】
国際公開第2006/107847 A2号パンフレットには、複合熱融着繊維および合成またはセルロースマトリックス繊維を用いて自動車用絶縁材および天井タイル構造を形成するためのエアレイドプロセスが開示されている。一例をあげると、‘847公報には、市販の鉱物繊維およびガラス繊維天井タイルよりも吸音性を改善できる、複合繊維30パーセントとセルロース繊維(フラフ)70パーセントからなる天井タイル組成物が記載されている。吸音性を改善できるとはいえ、‘847公報に開示された天井タイル構造には、ほとんどが業界標準で定められた天井タイルとして使用する上での現行の消防法規等級に適合しないという欠点がある。天井タイルの70パーセントにセルロース繊維(ならびに有機繊維100パーセント)を用いると、‘847公報で形成されるベースマットは、セルロース繊維および有機繊維の使用率がこのように高いことから、天井タイルに対するASTM E84要件の消防法規等級に適合しないと想定される。
【0011】
上記の‘847公報ならびに米国特許出願公開第2006/0137799 A1号明細書には、ガラス繊維と複合繊維を併用するエアレイドプロセスを用いて不織構造を製造できることも示唆されている。ガラス繊維であれば業界標準に基づく火災等級を高められるであろうが、エアレイドプロセスに適した短いガラス繊維はさらに高価な原料であり、他の原料に比して健康や環境面での問題がある。たとえば、ガラス繊維は人間の皮膚や眼、呼吸器系を刺激することがある。多くの組織がガラス繊維を皮膚や眼、上気道に対する鋭い物理的刺激物であるとみなしている。通常、繊維が小さくなればなるほど、刺激がきつくなる。場合によっては、ガラス繊維への曝露時間が長くなると、繊維が刺激性皮膚炎や呼吸困難の原因にもなり得る。他の例では、ファイバーグラスが塵や埃、水分と一緒になると、カビ、真菌、いくつかの細菌の微生物増殖に都合のよい培地になり得ることを示している研究もある。
【0012】
上述したように、ミネラルウールも火災等級を上げる目的で防音用天井タイルに普通に用いられている。ミネラルウールは、融点が普通のガラス繊維よりもさらに高く最大で華氏2200度になり得るからである。ミネラルウールは普通、防音用天井タイルを成形するためのスターチまたはラテックスバインダーとの併用で湿式プロセスにて用いられる。しかしながら、一般的なミネラルウールの研磨性と高いショット含有率(すなわち、場合によっては最大約60パーセント)がゆえに、この原料は通常、エアレイドプロセスでの使用には推奨されない。なぜなら、ミネラルウール繊維の研磨性はエアレイド成形設備に対する破損の原因となり得るものであり、ショット含有率が高いと空気濾過システムが詰まって真空吸引ボックスの効率が低下する可能性があるためである。真空強度が下がると、エアレイド成形ヘッドで天井タイルに必要な剛性を得られるだけの十分な坪量の均一なマットを形成するのが困難になる。本明細書で使用する場合、ミネラルウールのショットは通常、直径が約45〜約500ミクロンの範囲にある非繊維性の鉱物粒子状物質を含むミネラルウール製造プロセスの副生物を示す。
【0013】
‘847公報には、エアレイドプロセスで用いるのに適した合成マトリックス繊維としてガラス繊維およびセラミック繊維が列挙されているが、ミネラルウールを許容可能な代用品として特段取りあげてはいない。通常理解されるように、ミネラルウール繊維は、ガラス繊維およびセラミック繊維とは異なるものであるとみなされている。このような繊維状のタイプはいずれも通常は人工または合成繊維ではあるが、原料源や製造方法がゆえにそれぞれ特徴や特性が異なる。ガラス繊維は、一般に所望のサイズに切断される連続フィラメントを形成する押出プロセスで製造される。結果として、ガラス繊維では一般に、ショット含有率がそれほどでもない。一方、セラミック繊維は一般に、ガラスよりも高価な原料を紡糸またはブロー成形する方法で製造される。セラミック繊維は一般に、ショット含有率がミネラルウール繊維よりも実質的に低い。
【0014】
しかしながら、上記にもかかわらず、エアレイド成形プロセスで用いられる普通の複合繊維における高融点構成材の強度がゆえに、既存の多成分繊維も強度(すなわち、破断荷重および伸び率)が比較的高い。これは、このタイプの繊維が普通に用いられている製品(すなわち、おむつ、清浄綿、濾過媒体、自動車用絶縁材)に望ましい特性である。しかしながら、防音天井タイルの消費者は、スプリンクラー、照明、HVACダクトなどの設置者が天井タイルに容易に穴を開けることができるよう、普通の万能ナイフを使うなどしてタイルを手で切断できることを想定している。また、一般的な懸垂天井では、縁または隅のために一部を切り欠いた大きさのタイルが必要になることも珍しくない。防音天井タイルは通常、標準的なサイズに固定されているため、設置者が個々のタイルを切断して天井格子の特定の要件に合うようにしなければならないことも多い。通常、市販の複合繊維は強度(すなわち、破断荷重および伸び率)が高いため、既存の複合繊維を用いる防音天井タイルの成形では、切断に余分な力が必要で繊維が引っ張られて出てしまうタイルになるが、これは消費者および設置者にとって望ましくない特性である。
【0015】
要するに、普通に用いられている入手可能な成分での既存の湿式プロセスおよびエアレイドプロセスでは、業界標準および建築法規標準(すなわち、吸音要件)をすべて満たし、なおかつ防音天井タイルの消費者の期待(すなわち、切断性、平坦さ、自立性など)に応える許容可能な防音天井タイルをコスト効率よく製造することができない。既存の湿式プロセスは、エネルギおよび資本集約的であり、吸音性がそれほど望ましくない天井タイルを生み出す。おむつ、濾材、自動車用絶縁材には適している場合もあるエアレイド不織材料のほうが、製造する上では経済的であるが、既存の配合およびプロセスは、消費者と業界仕様の両方を満たす防音天井タイルの製造には適さない。多量のセルロースおよび/または有機繊維を用いて形成されるエアレイド不織材料は通常、天井タイルに対する火災等級の業界標準を満たすことがなく、利用可能な複合繊維を用いると、これらの繊維の強度および伸び率が高いため、成形される材料の切断が困難になる。ガラス短繊維を天井タイルおよびエアレイドプロセスに使用することは可能であるが、ガラス繊維には桁違いの費用がかかり、健康および環境面の懸念も生じる可能性がある。
【0016】
したがって、複合繊維を含む平らで自立式の不織材料ならびに、湿式プロセスのエネルギと資本コストを割くことなく製造可能であり、切断性に対する消費者の期待にも応える、業界標準に基づいて防音天井タイル(すなわち吸音特性)として適した不織材料の製造方法が望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本明細書に記載の不織材料を成形するための代表的なエアレイドプロセスの概略図である。
【図2】代表的な不織物成形プロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
通常、不織材料は、無機基材繊維と有機結合繊維のブレンドを含んで提供される。ひとつの方法によれば、不織材料は、防音天井タイルとして用いられる不織材料で効果的な吸音性を得られる実質的に平坦で硬質かつ自立する芯が得られるだけの十分なあらかじめ定められた坪量と密度の芯またはベースマットに成形可能なものである。すなわち、たとえば不織材料は、好ましくはASTM C423による騒音減衰係数が少なくとも約0.55で、ASTM E84による火炎伝播指数が約25未満、発煙性指数が約50未満である火災等級Aクラスの自立式の芯を形成できるものである。しかしながら、不織材料の特徴は個々の用途に応じて可変であり得る。芯はまた、好ましくは曲げ強度の高いものであるが、それでもなお普通の万能ナイフを用いるなどして、従来の湿式天井タイルと似たような軽い圧力または最小限の圧力によって手で切断可能である。
【0019】
一態様では、無機基材繊維は、好ましくは、ショット含有率が最大約60パーセント、好ましくは約10〜約45パーセントのミネラルウール、スラグウール、ロックウールまたはこれらの組み合わせである。好適な無機基材繊維はThermafiber FRF(Wabash、Indiana)であるが、他の無機基材繊維を使用してもよい。ひとつの方法によれば、不織材料は、好ましくは約30〜約95パーセントのロックウールまたはスラグウールを含む。好ましくは、無機繊維は長さが平均で約0.1〜約4mmであり、直径が約1〜約15ミクロンである。
【0020】
もうひとつの態様では、有機結合繊維は、好ましくは同じフィラメント内に2つの構成材を有する複合熱融着繊維すなわち単フィラメントである。好ましくは、不織材料は約0.1〜約70パーセント、最も好ましくは5〜約50パーセントの複合繊維を含む。しかしながら、市販の複合繊維は通常、比較的高い強度(すなわち、破断荷重および伸び率)で知られているため、本明細書で用いる複合繊維を好ましくは改質し、成形される不織材料の切断性が従来の防音天井タイルに近くなるようにする。言葉をかえると、不織材料は、曲げ強度は高いが、それでもなお芯に複合繊維を使用する場合ですら、普通の万能ナイフを用いるなどして、従来の湿式天井タイルと似たような軽い圧力または最小限の努力だけで、手で切断可能な防音タイル芯を形成できるものである。この目的のために、改質後の複合繊維が、芯の無機基材繊維および他の構成材と実質的に類似のあらかじめ定められた強度(すなわち、破断荷重および伸び率)を有し、これが市販の複合繊維よりも通常は低めの強度であると好ましい。
【0021】
複合繊維は通常、化学的および/または物理的特性の異なる少なくとも2種類のポリマーまたは樹脂を含み、両方のポリマーが単フィラメントまたは繊維に形成される。たとえば、一方のポリマーが結合構成材として機能し、他方のポリマーが構造構成材として機能する。普通の複合繊維は、横に並んだ芯鞘、偏心芯鞘または結合構成材と構造構成材のアイランドシー構成を有する。通常は構造構成材である一方の繊維のポリマーは、他方の繊維のポリマーよりも融点が高い。この点に関して、成形後のマットを融点が低いほうのポリマーの溶融温度まで加熱すると、これが溶融して他のタイル成分同士を結合する。融点が高いほうのポリマーは繊維形態のままで変わらずに残り、不織材料に対してさらなる強度と構造を持たせることになる。冷却時、通常はベースマットの単一の繊維長に沿って複数の結合が形成される。代表的な複合繊維としては、通常、ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート(「PE/PET」)、ポリエチレン/ポリプロピレン(「PE/PP」)、ポリエチレンテレフタレートコポリマー/ポリエチレンテレフタレート(「CoPET/PET」)などのポリマーの組み合わせがあげられる。好ましくは、本明細書の不織材料は、PE/PETまたはCoPET/PETポリマーを鞘/芯構成で有する複合繊維を含む。鞘/芯では、ベースマットの構造的な完全性を維持したまま接触面積と強度を大きくできるため都合がよい。一実施形態では、鞘と芯の面積比が約80/20〜約20/80の範囲である。
【0022】
上述したように、複合繊維の一方の構成材(すなわち、結合構成材)のほうが他方の構成材(すなわち、構造構成材)よりも融点が低い。ひとつの方法によれば、結合構成材または第1のポリマー構成材は、融点が構造的または第2のポリマー構成材の融点よりも約25℃〜約50℃低い。このように、複合繊維では、2種類のポリマー間に、ポリマー構成材のうちの一方だけが加熱時に溶融するように不織材料で使用できるだけの十分な融点差がある。たとえば、不織材料で使用するのに好ましい複合繊維は、鞘融点が約100〜約220℃であり、芯融点が約150〜約270℃である。
【0023】
好ましくは、複合繊維は、従来技術においてデニールとして知られる線密度が約1〜約72グラム/9,000メートルである。しかしながら、使用する配合、特定の用途、他の要因次第では、他のデニールが適することもある。また、複合繊維は、好ましくは繊維長が約1〜約25mm、最も好ましくは1〜約10mmである。通常であれば防音天井タイルに適した芯の成形に好ましい無機繊維および有機繊維の具体的な特徴については上述したが、特定の用途およびプロセス次第では他の繊維特性を選択してもよい。
【0024】
背景で説明したように、不織布帛、おむつ、拭き取り綿、濾材、および自動車用絶縁材で一般に用いられている市販の複合繊維は通常、成形後のタイルを切断するのに過剰な力が必要となろうことから、防音天井タイルで使用するには強すぎる。これらの繊維の強度は、破断荷重と伸び率のパーセント(Din EN SSO 5079またはASTM D3217)の組み合わせによって求められる。以下の表に示すように、(通常は繊維の供給業者によって報告されているような)市販の複合繊維およびモノフィラメント繊維は一般に、破断荷重が約2〜約100グラムの範囲、伸び率値が約30〜約400パーセントの範囲と許容できないものである。これらの市販の繊維は、天井タイルで普通に用いられている無機基材繊維に似た特性を兼ね備えてもいない。理論に限定されることを意図するものではないが、これら既存の繊維のこのような繊維強度は主に、複合繊維の構造構成材の組成物によるものと思われる。
【0025】
【表1】

【0026】
しかしながら、既存の合成結合繊維のこうした強度レベルの高さは通常、切断にかなりの力を要する製品になる上、切断時に過度な量の繊維廃棄物が出ることから、天井タイル構造で使用するには許容できない。比較のために、天井タイルの製造で従来用いられているミネラルウールまたはファイバーグラスは、破断荷重が3.5グラム未満、伸び率値は約6パーセント未満である。良好な切断性のためには、ベースマットの成分が互いに物理的に相溶であるか、通常はその物性(たとえば、繊維強度など)が実質的に違わないことが望ましい。そうでなければ、個々の繊維の物性が実質的に異なると、マットに切断力が加わったときに一方の構成材が他の構成材から分離してしまいがちである。
【0027】
このため、本明細書における改質複合繊維は、物性または切断性がミネラルウールまたはガラス繊維に近いものであると好ましい。ひとつの方法によれば、改質複合結合繊維は、芯に用いられる無機基材繊維と類似のあらかじめ定められた強度(すなわち、破断荷重および伸び率)を提供する上で効果的な組成を有する。一態様では、改質複合繊維のあらかじめ定められた強度は、破断荷重約10グラム未満(好ましくは約1〜約10グラム、最も好ましくは約1〜約4グラム)、伸び率20パーセント未満(好ましくは約10パーセント未満、最も好ましくは約6パーセント未満)である。繊維の破断荷重は通常、繊維のデニールに比例する。一般に、繊維が細くなればなるほど、切断性もよくなる。好ましくは、本明細書で用いられる改質有機繊維のデニールが約0.7〜約1.7、好ましくは約1.1〜約1.7である。
【0028】
ひとつの方法によれば、改質複合繊維のあらかじめ定められた低めの強度(破断荷重および伸び率)は、この複合繊維の構成材の物性を変えるのに効果的な構造構成材の組成を提供することによって得られる。たとえば、熱可塑性樹脂と有効量の充填材とのブレンドを提供することで、繊維(その中にある構造構成材など)の強度を変えることができる。もうひとつの方法では、分子量があらかじめ定められた範囲にある樹脂などの材料を提供することで、構造構成材の強度を変えることができる。さらにもうひとつの方法では、構造構成材を形成するのに用いられる樹脂の結晶性領域と非晶質領域との相対量は、所望の強度を得る目的で変更可能である。必要に応じて、これらの方法の組み合わせを用いて所望の剪断強度レベルを達成してもよい。
【0029】
特に、複合繊維の構造構成材の成形に用いられるポリマー樹脂に充填材を加え、強度レベルを下げることが可能である。ひとつの方法によれば、ポリマー樹脂約100重量部あたり充填材約1〜約300重量部を樹脂に加え(すなわち、ポリマー樹脂中に充填材約0.25〜約75重量パーセント、好ましくは約5〜約50重量パーセント)、所望の強度を達成することが可能である。強度が抑えられるだけでなく、有機質量が減ることで、充填されたポリマーが繊維補強特性(モジュラス増加)を呈し、表面燃焼特性が改善される可能性もある。
【0030】
好適な充填材としては、粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、カオリン、タルク、シリカ、長石、霞石、雲母、珪灰石、パーライト、ガラス、シリケート、二酸化チタン、硫酸カルシウムなどならびに、これらの混合物があげられるが、これに限定されるものではない。また、酸化アンチモン、アルミナ三水和物、ホスフェートなどならびに、これらの組み合わせを繊維または樹脂に加えて、難燃性を得るようにしてもよい。充填材の大きさは通常、約3ミクロン未満でなければならず、好ましくは約0.1〜約2ミクロンである。しかしながら、この大きさも繊維の用途と大きさ次第で変更可能である。本開示では上述した材料の総称として「充填材」という用語を使用してはいるが、当該材料が各々防音用天井タイルの性能を向上し得る独特の特性を持つことは、当業者であれば理解できよう。
【0031】
理論に限定されることを意図するものではないが、ポリマー樹脂と充填材の組み合わせ(すなわち化合物)の強度(破断荷重および伸び率)は、樹脂に添加される充填材の量と関連している。通常、充填材を加えれば加えるほど、破断荷重および伸び率が低くなる。たとえば、Katzら、Handbook of Fillers and Reinforcement for Plastics、1978、第81〜118ページ(参照により本明細書に援用する)を参照のこと。
【0032】
添加される充填材の量は通常、特定の充填材のパラメータに左右されるが、これは少なくともその充填特性、大きさ、界面結合によって特徴付けることが可能なものである。ひとつの方法によれば、基材の材料における充填材(P)の最大容積充填率が、大きさの分布と充填材粒子の形状に基づくパラメータである。充填材の量がPに近づくにつれて、特定の化合物の充填材粒子が、樹脂の比較的薄い膜によってのみ部分的に分離されるようになると思われる。この状況で、ポリマー樹脂マトリックスの容積は最小になり、引張荷重を支えるための個々のセグメントまたはポケットとして機能する。引張荷重を樹脂に加えると、これらのマトリックスセグメントが伸びて粒子から離れ、高度に充填された化合物の強度が下がって伸び率も下がる。このため、破断荷重を抑えて伸び率も抑えるには、樹脂に配合される充填材の量が通常は特定の充填材のPに近づかなければならない。ひとつの方法によれば、改質複合結合繊維に用いられる充填材のPは通常、約0.32〜約0.83の範囲内になるが、これはポリマー樹脂に添加される充填材が約32〜約83容量パーセントの範囲であることを意味する。最も好ましくは、充填材の使用が約30〜約70重量パーセントになる。しかしながら、所望の繊維強度、繊維の特徴、特定の用途、他の要因に応じて充填材の量および大きさを変更可能であることは、理解できよう。
【0033】
好ましい不織材料は、ロックウールまたはスラグウール約30〜約95重量パーセントと、改質複合熱融着繊維約0.1〜約70重量パーセントとからなる芯またはベースマットを含む。一形態では、成形後のベースマットが、2インチ×4インチまたは2インチ×2インチのパネル(厚さは好ましくは約0.25〜約1.5インチ)など、自立し、比較的剛性で、実質的に平らなパネルである。このような形態では、ベースマットは、一般的な懸垂天井格子または同様の構造に設置するのに適している。
【0034】
長さ約0.1〜約4mmの範囲と短い芯の好ましい無機基材繊維(すなわち、ミネラルウール、ロックウールおよび/またはスラグウール)がゆえに、成形後の不織芯は、天井タイルとして用いるのに適した自立式の芯を製造するのに必要な剛性を達成するために、好ましくは坪量が比較的高い。たとえば、不織材料の坪量が少なくとも3,000グラム/m(gsm)であると好ましく、最も好ましくは、約3,000〜約5,000gsmである。また、不織マットは、好ましくは密度が約0.1〜約0.5g/cmである。上述したように、坪量および密度が高くても、成形後の天井タイルは、通常は改質複合熱融着繊維が取り込まれているがゆえに依然として万能ナイフを用いて最小限の圧力で手で切断できるものである。また、これらの不織マットは、好ましくは騒音減衰係数が約0.3〜1.0であり、最も好ましくは0.55〜1.0である。また、好ましい不織材料は、破壊係数(MOR)または曲げ係数が最小限の10ポンド/平方インチ(psi)であり、破壊荷重が最小限の約0.5ポンド(ASTM C 367−99)である。しかしながら、特定の用途で必要とされるような配合およびプロセスに応じて上記の特徴を変更可能であることは、理解できよう。
【0035】
任意に、不織材料は、芯に特定の用途で必要とされるような他の構成材を含むものであってもよい。特定の目的を達成するために天井タイルで使用できる、従来技術において周知の多数の別の構成材のいずれを使用しても構わないことは、理解されたい。たとえば、材料が、膨張パーライト、発泡ガラスなどの最大約70重量パーセントの顆粒を含むものであってもよい。ゼオライト、活性炭などの機能的化学物質をベースマットに加え、通常は空気浄化能を持たせるようにしてもよい。無機基材繊維および複合熱結合繊維に加えて、芯は、天然繊維(亜麻、竹、セルロース、サイザル麻など)、ガラス繊維、他の無機繊維、他の有機繊維およびこれらの混合物などの他の任意の繊維を必要に応じて含むものであってもよい。望ましければ、不織材料は、成形後のベースマットの1以上の表面に塗布またはこれに含浸され、さらに剛性を持たせるための液体またはラテックスバインダーを含むものであってもよい。たとえば、最大約30重量パーセントのラテックスバインダーを、ベースマットの1以上の表面に適用してもよい。
【0036】
また、成形後の芯は、不織材料の1以上の層を含むものであってもよい。多層の場合、各層が、特定の用途で必要とされるような同様または異なる坪量、密度、組成などの他の層と同様の特性を持ってもよいし、異なる特性を持ってもよい。複数のベースマットを一緒に積層することから複数の層を形成してもよいし、あるいはマルチヘッド成形装置を用いてインラインで成形してもよい。
【0037】
また、不織材料を、芯の片側または両側のスクリムまたは表面仕上げ材料と対応させてもよい。後述するように、表面仕上げによって、芯に装飾仕上げをほどこしたり、あるいはエアレイドプロセスでの製造対象となる好ましい無機基材繊維(すなわち、比較的短く研磨性で高ショット含有率の繊維)および有機結合繊維を用いる不織材料を許容するのに効果的な特性を持たせたりすることができる。
【0038】
不織材料成形の詳細に戻り、上述した不織材料から、当該不織材料を防音天井タイルとして使用可能にするのに必要な剛性が得られるだけの十分な坪量と密度の芯に成形するのに適した代表的なエアレイド製造プロセス10を示す図1および図2を参照して方法について説明する。本明細書の目的で、「エアレイド」とは、個々の成分を空気または他の気体流に浮遊させ、好ましくは多孔性のワイヤウェブまたは他の多孔性キャリア表面にウェブ、ベースマットまたは打ち延ばし綿を形成する方法または製造プロセスを示す。通常、図1を参照すると、防音天井タイル構造の成形に適したエアレイドプロセス10は、プロセスステップ(a)原料の分注とブレンド12、(b)原料の計量とヘッドボックスへの供給14、(c)エアレイドウェブ成形16、(d)任意の圧縮18、(e)加熱および冷却20、(f)任意のカレンダリング22、(g)任意のラミネート24、(h)仕上げ26を含む。
【0039】
上述したように、不織ベースマットを形成するための原料は、さまざまな無機繊維または有機繊維、合成繊維または天然繊維、粉末、樹脂、顆粒、他の構成材を含むものであってもよい。好適な原料の例として、ミネラルウール、ロックウール、スラグウール、ファイバーグラス、複合繊維、セルロース繊維、発泡ガラスビーズなどがあげられるが、これに限定されるものではない。好ましい原料として、ロックウールまたはスラグウールならびに複合繊維があげられる。上述したように、特に好ましい原料として、約30〜約90パーセントのロックウールまたはスラグウールと、約0.1〜約70パーセントの有機結合繊維(上述したような改質複合物など)があげられる。
【0040】
場合によっては、繊維状原料の多くが通常はエアレイド成形プロセスに適した形への調製を必要とする。したがって、プロセス10ではまず、分注とブレンドのステップ12を含む。たとえば、シート、ボード、ドライラップの形の繊維については互いに接着することが多く、エアレイド成形機に運ぶ前に繊維の解離が必要である。一般に、これらの原料ではHammer Millタイプの装置で繊維を解離できるが、これは供給シートの繊維を解離するための揺動式ハンマーのあるローターを含む。同様に、ミネラルウールまたは合成繊維など、ベールの形での原料を、ベールオープナーを用いてベンチレータを用いて事前に開いた上で計量タワー30に輸送することが可能である。異なる繊維流のブレンド32は、一方の流れを他方のあらかじめ定められた重量比に注入し、あらかじめ分散された繊維状の原料流34を形成する。
【0041】
次に、あらかじめ分散された繊維状の原料流34を空気流によって、最初の不織繊維状のマットが成形される格子ベルト(図示せず)を含む1以上の繊維タワー36に運ぶ。繊維の坪量は、好ましくは速度制御された坪量ベルトによって達成される。計量によって、エアレイド装置に対する原料の安定かつ一貫した供給が保証される。このような計量は、成形ベースマットの坪量の制御にも有用なことがある。計量後、移送ファンによって1以上のそれぞれのエアレイド成形ヘッド38に繊維状原料を供給する。フロースプリッターを用いて、成形ヘッド38の両側への流れのバランスを取ってもよい。図1では3つの別々の成形ヘッド38を示してあるが、プロセス10には、所望の厚さ、密度、坪量の不織構造を成形するための必要に応じていくつの成形ヘッドでも含むことが可能である。好ましくは、不織ウェブまたは打ち延ばし綿の成形をエアレイド成形ヘッドで実施する。好適なエアレイド成形ヘッドは、Dan−Web(デンマーク)、M&J Fiber(デンマーク)またはFormFiber(デンマーク)から入手可能である。しかしながら、他のエアレイド供給業者も適している。
【0042】
エアレイド装置10の一態様では、原料と直接接触する内面を、材料の強度の増加時に十分な強度/硬さを呈するまたは塗布があるあるいは、交換可能/硬化させた表面を提供する材料で作ると好ましい。たとえば、エアレイド装置10のパイプ、ブロワー、成形ヘッドなどの内面の少なくとも一部を、Brinell硬度が少なくとも250単位(ASTM E10)の材料で製造してもよい。もうひとつの例では、炭化クロムまたは同様の材料の層を装置10の内面に適用し、下にある材料を保護すると望ましいことがある。これらのコーティングは、有意な乱流が生じる装置部分で役立つことがある。さらにもうひとつの例では、45°以上の折り返しを含む装置位置において、長半径のエルボを設置および/またはエルボに交換可能な磨耗部品(炭化クロムまたは同様の材料で作られたインサートなど)を取り付けることが可能である。このような装置の詳細は、本方法の繊維の加工に適したエアレイド装置を提供するための少なからずある方法の一例にすぎない。もちろん、当業者なら本開示を読んだ後に自明であろう他の可能な方法もある。
【0043】
エアレイド装置10では、繊維状成分を、多孔性ワイヤウェブ、スクリムまたは他の多孔性材料などのキャリア表面40におかれる空気または他の気体流で流動化し、不織材料のウェブまたは打ち延ばし綿を成形する。さまざまな装置を用いて繊維または他の成分を空気中に浮遊させる。一例において、図1に示すように、成形ヘッド38は、幅方向にキャリア表面40の上で水平に配置される2つの回転式ドラム42を含むものであってもよい。この例では、ドラム42は、分注された繊維が各ドラム42を介して移動できるようにするためのスロットまたは穴を有するものであってもよい。場合によっては、繊維が2本のドラムの周囲を移動する際に回転流のパターンが形成されることもある。繊維を流動化するために、ドラムは各ドラムの内側に配置されたニードルロールを含むものであってもよい。繊維がスロットを介してドラムに入ったら、ニードルロールで繊維を攪拌して篩う。乱気流および投げ飛ばし効果によってさらに繊維を分散させる。もうひとつの例では、ドラムのない成形機に繊維を吹き込み、そこに並んだニードルロールで繊維を成形布帛の下のほうに追いやることも可能である。他のタイプの成形ヘッドが適することもある。一例において、適したエアレイドドラムが米国特許第4,640,810号明細書(参照により本明細書に援用する)に記載されている。
【0044】
繊維状の原料は、好ましくは両端の成形ヘッド38の1以上に供給される。使用するのであれば、粉末または顆粒状の構成材を異なる位置で供給することも可能である。繊維と粉末を均一にブレンドするには、各成形ヘッド38の上に粉末分注ユニット44を設置すればよい(この特定のバージョンは図示していない)。この場合、粉末と繊維を混合して、均一な混合物を作り出すことが可能である。ウェブ成形後に不織構造に適用される粉末化層に対しては、図1に示すように、1以上の成形ヘッド38の間またはその後ろに粉末分注ユニット44を設置し、不織材料の表面に1以上の別々の粉末層を得ることが可能である。
【0045】
成形ヘッド38に隣接して、1以上の真空吸引ボックス46を好ましくはキャリア表面40の下に装着する。真空で吸引力によって、成形ヘッド38内の空気と繊維をキャリア表面40に堆積させる。好ましくは、均一なマットを成形できるように、成形ヘッド38全体と真空ボックスの開口上全体において一定の空気速度を維持するよう真空ボックス46を設計する。
【0046】
上述した不織材料で好ましい比較的細かく短い無機基材繊維(すなわち、高ショット含有率かつ繊維長約0.1mmまで)がゆえに、従来の多孔性キャリア表面40の多孔度は通常、ミネラルウール、ロックウールおよび/またはスラグウールと、従来のエアレイド成形ヘッドとを用いて坪量3,000gsm以上の不織材料を成形するには不十分である。たとえば、多孔性キャリア表面40は繊維および他の成分を残しつつ空気を通すものではあるが、業務用エアレイド装置に用いられている一般的なキャリア表面40は、本明細書で用いる成分の一部が通るのを防ぐことができない。たとえば、ミネラルウール、ロックウールおよびスラグウールは、繊維長が約0.1mmまで短くなり、ショット含有率が最大約60パーセントであることが多い。場合によっては、これらの細かい材料が多孔性キャリア表面40を通り、空気濾過システムを詰まらせてしまう。
【0047】
このため、ひとつの方法によって、プロセス10は、成分を保持し、空気濾過システムの詰まりを防止するために多孔性キャリア表面40に配置された多孔性ライナまたは表面仕上げ材料50を使用することを含む。この目的のために、多孔性ライナ50は、好ましくは多孔度がキャリア表面40の多孔度より小さいが、不織マットを所望の密度と坪量で成形できるだけの多孔度である。好ましくは、多孔性ライナ50が、組織シート、ガラスマット、スクリムなどである。望ましければ、接着剤によって、あるいは加熱時に有機結合繊維を多孔性ライナ50に結合することで、不織材料を多孔性ライナ50に結合してもよい。この場合、多孔性ライナ50は、成形天井タイルの装飾用の外層を含むものであってもよい。図1に示すように、エアレイド成形ヘッド38よりも前で多孔性ライナ50をフィードロール52から巻き出す。しかしながら、ライナ50を成形ヘッドに供給するのは周知のどのような方法であってもよい。
【0048】
好ましくは、ライナ50は音響的に透明な表面仕上げ材料であり、エアレイドヘッド38および真空ボックス46を用いて坪量少なくとも約3,000gsmで無機基材繊維および改質複合熱融着繊維をベースマットに成形できる特性を有する。上述したように、ライナ50を成形芯に固定して、その外面で所望の見た目の美しさを達成してもよい。また、ライナ50によって、構造的な完全性を成形パネルに持たせてもよい。
【0049】
好適なライナ50は、エアレイドヘッドで所望の坪量を均一に形成できるだけの効果的な十分な多孔度であるが、比較的小さな繊維やショットが通過するのは制限する。ひとつの方法によれば、ライナ50の製造に使用する適した材料は、合成繊維または無機繊維と有機繊維の混合物から作られるファイバーグラスまたは他の不織布帛である。一態様では、ライナ50の坪量が、好ましくは約50〜約200gsm(ライナはファイバーグラスおよびバインダーで作られる)であり、好ましくは約50〜約125gsmである。もうひとつの態様では、ライナ50が、好ましくは最小引張強度約10psi(TAPPI T220)、Gurley剛性単位約500(TAPPI T543)である。さらに他の態様では、最大比通気抵抗性が通常約2000Pa−s/m(ASTM C522)である。しかしながら、好ましいライナは通気抵抗性が約50Pa−s/m以下である。以下の表2に、本明細書の方法を用いる防音天井タイルの製造時に適したファイバーグラスライナの例をあげておく。
【0050】
【表2】

【0051】
不織芯の成形後、未結合のウェブまたは打ち延ばし綿をニップロール60で圧縮し、その構造または強度を改善してもよい。ニップロールの圧力および温度は通常、異なる圧縮レベルを達成できるよう調節可能である。また、ニップロール60には通常、ウェブまたは打ち延ばし綿の厚さを制御するための調節可能なギャップが設けられている。ニップロール60は、結合前にマットの物理的完全性を維持する助けとなり、マット表面の粗さを減らすことができる。ひとつの方法によれば、ニップロール60は、低圧を利用することになる。
【0052】
上述したように、不織芯における成分の結合は、好ましくは改質複合熱融着繊維を用いることで達成される。しかしながら、特定の用途では改質複合繊維の代わりにあるいはこれと併用して、他の結合方法を利用してもよい。たとえば、不織材料を融合させるためのもうひとつの方法に、繊維とミネラルウールとのブレンド32の前にフェノールホルムアルデヒドまたは尿素ホルムアルデヒド樹脂などの熱硬化性樹脂を繊維に塗布することがある。あらかじめ定められた樹脂硬化温度まで加熱すると、樹脂モノマーの重合によって結合が形成される。さらにもうひとつの方法では、スプレー62を用いてラテックスバインダーをウェブ表面に与えるまたはウェブをラテックスプールに含浸させてもよい。また、ウェブを再度湿らせた後、カレンダーまたはニップロールによって密度を高めてもよい。ラテックスを用いると、ライナ50を芯に結合しやすくもなる。
【0053】
芯で不織材料を成形し、任意のバインダー材料をウェブに塗布したら、加熱およびカーリング20の準備が整う。ひとつの方法によれば、サーマルオーブンまたはドライヤー64を用いてウェブを少なくとも有機結合繊維における結合構成材の融点まで加熱し、繊維を繊維状マトリックスに融合させる。ウェブに水分が残っていたら、この水分をこの加熱ステップで蒸発させてもよい。周知のオーブンまたはドライヤーを使用すればよいが、オーブン内での熱の移動が伝熱性または対流性であると好ましく、空気流によるオーブンが最も好ましい。このようなオーブンは通常、加熱を加速し、必要なオーブンが小さくてすむためである。
【0054】
オーブン64から出したら、加熱されたウェブを好ましくはファン66からの冷気流に曝露して冷却する。あるいは、不織マットを圧縮して密度を高める冷気吸引ボックスに通して成形後の不織物品を冷却してもよい。望ましければ、冷気吸引ボックスを用いて物品の密度を制御することも可能である。
【0055】
任意に、ウェブの多孔性ライナ50とは反対側に別の表面仕上げ材料を提供するために、標準的なラミネーター70を用いてウェブを積層24してもよい。積層後のウェブに対して、所望の大きさに切断、最終製品にトリミングおよび/またはコーティングすることでさらに仕上げ26をほどこし、適切な大きさ、縁の細部、表面テクスチャ、色などの防音天井タイルを製造してもよい。
【0056】
このため、上述した不織材料は、好ましくはエアレイドプロセスで製造可能であり、依然として無機繊維(すなわち、ミネラルウール)と改質複合結合繊維を含み得るものである。このようなプロセスおよび配合は、これらの構成材を、防音および物理的要件を満たし、従来の湿式防音天井タイルにはない利点を提供する防音天井タイルとして適した芯構造に成形するのを可能にする。エアレイド成形プロセスでは実質的に水を使用しないため、繊維に加えられる表面張力が最小限であるか、好ましくは存在せず、吸音性が改善されたさらに高いまたは嵩高の構造が得られる。改質された好ましい複合繊維(合成繊維)を用いると、マットの嵩を維持したまま成形後のマットで構造的な完全性や曲げ強度、切断性が得られる。改質された好ましい結合繊維の独自性は、樹脂含有量を抑えて(すなわち、充填材含有量が増える)強度が高まる点ならびに、マットの切断性を維持したまま所望の強度が得られる点であり、これは設置者にとって重要な特徴である。また、改質された好ましい複合繊維には、表面燃焼性能がよくなる(すなわち煙発生率が低くなり、火炎伝播が遅くなる)という利点がある。これは、好ましくは無機充填材である充填材含有量が比較的高いためである。また、結合構成材の低融点を必要に応じてカスタマイズし、さまざまな材料をさまざまな結合温度で結合することも可能である。
【0057】
本明細書に記載の不織材料の利点および実施形態について、以下の実施例でさらに示す。しかしながら、これらの実施例にあげた特定の材料および量ならびに、他の条件や詳細は、特許請求の範囲を過度に限定するものと解釈されるべきではない。特に断らないかぎり、パーセンテージはいずれも重量比である。
【実施例】
【0058】
実施例1:
市販の複合繊維およびミネラルウールで不織材料を調製した。2.2デニールおよび長さ6mmのPE/PET複合熱融着繊維(T−255、Invista、Wichita、KS)に、あらかじめ開口を設け、開口を設けたミネラルウールとブレンドした。Invista PE/PET繊維は、芯の融点が250℃、鞘の融点が135℃である。この繊維状原料は、約90パーセントのミネラルウールと約10パーセントの複合繊維を含むものであった。
【0059】
繊維状混合ブレンドをLaroche計量タワー(Laroche、SA)で計量し、エアレイド成形装置(Dan−Web、デンマーク)の成形ドラムに供給した。成形ドラムでは、複合繊維およびミネラルウールを分注し、回転しているニードルと、2本の回転ドラムによって生じる剪断作用とによって、空気中に浮遊させた。真空ボックスのある成形用ワイヤを成形ドラムの下に配置した。真空によって繊維を移動しているワイヤの上に堆積させる際に、成形ワイヤでウェブまたは打ち延ばし綿を成形した。成形用ワイヤではミネラルウールのショット含有率を保つのに多孔度が高すぎることが明らかになった。このため、組織ライナを用いて繊維状材料を成形用ワイヤ上に維持した。
【0060】
成形後、打ち延ばし綿を135℃まで加熱して鞘の構成材を溶融させた。冷却時、ベースマットが剛性になった。成形後のベースマットには、限界切断性があった(過剰な力が必要で切断時に繊維が引っ張られた)。華氏90度で相対湿度90パーセントの室内に1週間おいた後、ベースマットの寸法の変化はほとんど認められなかった。以下の表3および表4に、成形後のベースマットの物性および吸音特性をあげておく。成形後のマットには、ライナまたはスクリムを使用しなかった。
【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
実施例2:
さまざまなデニールと長さの複合繊維を熱融着繊維として使用し、エアレイド装置(Spike System、FormFiber、デンマーク)にて防音天井タイルのベースマットを成形した。成形チャンバは、垂直に配置された2本のスパイクロールからなる。ベースマットは、表5に示すようにさまざまなパーセンテージのミネラルウール、裁断した新聞紙、サイザル麻繊維、PE/PP複合繊維(チッソ株式会社、日本)を含有する。芯(PP)の融点は162℃、鞘(PE)の融点は110℃であった。試料の吸音特性を試験し、結果を以下の表5および表6にあげておく。成形後のマットには、ライナまたはスクリムを使用しなかった。
【0064】
【表5】

【0065】
【表6】

【0066】
実施例3:
ミネラルウールと、バインダー繊維として1.1デニールで長さ6mmの約10パーセントの市販のPE/PET複合繊維(Hoechst−Trevira Type−255(Charlotte、NC))とを用いて、エアレイド装置で天井パネルを成形した。ミネラルウールと結合繊維を一緒にブレンドした後、1つまたは2つのLaroche計量タワーに供給した。まず原料を繊維セルに送って計量した後、移動しているベルトの上に落下させた。供給速度については、ベルトの速度を変更して制御した。移送用のファンを用いて原料をエアレイド成形ヘッドに供給した。
【0067】
突き合わせロールから巻き出したセルロース組織層またはファイバーグラススクリム(A125EX−CH02、Owens Corning)上にベースマットを成形した。ファイバーグラススクリムを用いて、真空引き抜きに影響することなく繊維を保持して運んだ。これは、パネルの前面層としても機能する。
【0068】
ベースマットを成形した後、加熱用のオーブンに入れる前にもうひとつの組織層、ファイバーグラススクリム(Dura−Glass 5017、Johns Manville)またはコーティングスプレーを任意にベースマットの上においた。オーブン温度は華氏約329とした。ラインスピードは1分あたり28インチとした。加熱用のオーブンから出し、成形パネルを室温まで冷却した。
【0069】
成形パネルは、以下の表7にあげたような特性を呈した。試料はいずれも繊維が縁の表面から引き出されて限界切断性を呈し、切断を終えるのに比較的強い力を必要とした。試料Hには有意なたるみが認められ、これが天井タイルに適さないことが分かった。前面ライナがあると、試料Iは低坪量であるわりにはたるみがかなり改善された。試料Jは剛性で自立した。試料Kには両面にライナを積層し、本質的にたるみがなかった。
【0070】
【表7】

【0071】
実施例4
約17.5%の複合繊維(T 255、1.1デニール、6mm)を含むベースマットを実施例3と同様にして成形した。このベースマットについては、ファイバーグラススクリム(A125EX−CH02、Owens Corning)上に成形した。成形後のベースマットに液体接着剤(HB Fuller糊)を約3.4g/ftでスプレーした。加熱後、これにもうひとつのファイバーグラススクリム(A125EX−CH02)を積層した。積層パネルの縁を切断し、前面ならびに縁を約10〜約12g/ftコーティングして、パネルを天井タイルとして仕上げた。コーティング組成物は、エチレン塩化ビニル(EVCL)ポリマー(Air Products、Allentown、PA)と、二酸化チタン(Huntsman、Billingham、英国)と、炭酸カルシウム(J.M. Huber、Atlanta、GA)と、クレー(J.M. Huber)とを含むものであった。パネルの平均厚は約0.76インチ、密度は約9.44lbs/ftであった。これで約2929gsmの坪量となった。ASTM C−423−07に準じて試験すると、この天井タイルの吸音係数は約0.8であった。この試料は、高破断荷重および伸び率の複合繊維を含むため限界切断性を呈したが、試料は自立性かつ剛性で、本質的にたるみがなかったことから、防音天井タイルに適しているであろうことが分かった。
【0072】
不織材料の性質とその製造方法について示すために本明細書で図示し説明した詳細事項、材料および部品や構成材の配置に対して、当業者であれば添付の特許請求の範囲に記載の原理および範囲内でさまざまな変更をほどこし得ることは理解できよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維および多構成材結合繊維と、
低融点構成材と高融点構成材とが単一繊維フィラメントに形成された多構成材結合繊維と、
融点が高融点構成材の融点よりも十分に低い低融点構成材と、
約3,000gsm以上の坪量と、を含む、不織材料。
【請求項2】
無機繊維が、ロックウール、スラグウール、これらの混合物からなる群から選択され、
無機繊維のショット含有率が最大約60重量パーセントであり、
不織材料の騒音減衰係数が少なくとも約0.55、火炎伝播指数が約25以下、発煙性指数が約50以下である、請求項1に記載の不織材料。
【請求項3】
片側に表面仕上げ材料をさらに含む、請求項1に記載の不織材料を含む天井タイル。
【請求項4】
エアレイドプロセスを用いて成形される、請求項3に記載の天井タイル。
【請求項5】
高融点構成材が、樹脂と充填材とを含む、請求項1に記載の不織材料。
【請求項6】
充填材が、高融点構成材の約5〜約50重量パーセントを占める、請求項5に記載の不織材料。
【請求項7】
無機繊維と多構成材結合繊維とを提供するステップと、
無機繊維と多構成材結合繊維とを不織ウェブに成形するステップと、
不織ウェブを加熱して無機繊維の少なくとも一部を多構成材結合繊維の少なくとも一部と結合させ、実質的に平坦かつ自立式の構造を成形するステップとを含む、請求項1に記載の不織材料の成形方法。
【請求項8】
不織材料が、樹脂に配合される約5〜約50重量パーセントの充填材を含み、
充填材が、炭酸カルシウム、クレー、タルク、シリカ、長石、霞石、雲母、珪灰石、パーライト、ガラス、シリケート、二酸化チタン、硫酸カルシウム、これらの混合物からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
無機繊維とその上の多構成材結合繊維とを結合時に実質的に保持する多孔性表面仕上げ材料を提供するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
多孔性表面仕上げ材料が、空気流抵抗約2000Pa−s/m以下、引張強度少なくとも約10psi、Gurley剛性少なくとも約500単位、坪量約50〜約200gsmである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
多孔性表面仕上げ材料を実質的に平坦かつ自立式の構造に取り付けるステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
無機繊維および多構成材結合繊維が、少なくとも1つのエアレイド成形ヘッドを用いて不織ウェブに成形される、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−516744(P2011−516744A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503129(P2011−503129)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/039076
【国際公開番号】WO2009/146056
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(510131007)ユーエスジー・インテリアズ・インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】