説明

不良検査方法及びその装置

【課題】物品の所定の位置に発生する不良を確実に検出することができる不良検査方法及びその装置を提供する。
【解決手段】物品2の被検査面の所定位置に発生する線状に延びる窪み部11を不良としてその有無を検査する不良検査方法であって、被検査面を撮像する第1撮像工程と第2撮像工程とを設ける。第2撮像工程に先立って、被検査面の中心を通る垂線を軸とした物品2の回転角度を検出する角度検出工程を行い、次いで、窪み部の長手方向に交差する光の照射方向を算出する照射方向算出工程を行う。第2撮像工程においては、照射方向算出工程によって算出された方向から被検査面に向かって傾斜する指向性を有する光を照射する光照射工程を行う。第2撮像工程の後に、第2撮像工程による画像から不良が発生する領域を抽出して検査画像を生成する検査画像生成工程を行い、次いで、検査画像から不良の有無を判定する判定工程を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の被検査面の所定位置に発生する不良の有無を検査する不良検査方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の不良検査において検査対象となる物品として、例えば、パネルにリベットを介してタブが取り付けられ、該タブの揺動操作によってパネルの一部に形成された破断開口部を開口する所謂ステイオンタブ式缶蓋が挙げられる。該缶蓋は、破断開口部の破断形状に沿って刻設されたスコアを備えている。該スコアはリベットとパネル周縁部との間に形成されており、前記タブの先端はリベットに近接するスコアの一部を介して破断開口部上に臨んでいる。
【0003】
ところで、該缶蓋においては、前記スコアの一部が不用意に破断されてクラックが生じていると、内容物が充填された缶胴に該缶蓋を巻き閉めても、缶胴内部を密封することができない。そのため、前記スコアにクラックが生じているか否かを検査することが行われる。従来、スコアのクラック検査として、缶蓋の表裏の一方側から光を照射して他方側への光の漏れを検出する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法によれば、スコアにクラックが生じていると缶蓋の表裏の一方側からクラックを通過した光が検出されるので、容易にクラックの有無を検査することができる。
【0004】
しかし、この種の缶蓋においては、リベットにタブが取り付けられるとき、リベットに沿って形成されているスコアにクラックが生じることがある。そして、リベットに沿って形成されているスコアは、タブの先端部が覆っているので、缶蓋の表裏の一方側から光を照射しても、タブの先端に光が遮られてクラックの有無を検出することができない不都合がある。
【特許文献1】特開2000−193426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる不都合を解消して、本発明は、物品の所定の位置に発生する不良を確実に検出することができる不良検査方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明は、被検査面を備える物品に対して、該被検査面の所定位置に発生する線状に延びる窪み部を不良として該不良の有無を検査する不良検査方法であって、前記被検査面を撮像する第1撮像工程と、該第1撮像工程により得られた画像に基づいて、被検査面の中心を通る垂線を軸とした物品の回転角度を検出する角度検出工程と、前記不良とされる窪み部の長手方向に交差する方向を光の照射方向として、該角度検出工程により検出された角度から、前記被検査面への光の照射方向を算出する照射方向算出工程と、該照射方向算出工程によって算出された方向から、前記被検査面に向かって傾斜する指向性を有する光を照射する光照射工程と、該光照射工程によって照明された前記被検査面を撮像する第2撮像工程と、該第2撮像工程により得られた画像から前記不良が発生する領域を抽出して検査画像を生成する検査画像生成工程と、該検査画像生成工程により生成された画像に基づいて、前記不良の有無を判定する判定工程とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明者は、物品の被検査面の所定位置に発生する線状に延びる窪み部を不良として該不良の有無を検査する場合に、不良とされる窪み部の長手方向に交差(好ましくは直交)する方向から光を照射することで窪み部に高輝度な反射が見られ、微細な線状の窪み部であっても画像処理により確認できることを各種の試験により知見した。ところで、不良とされる窪み部は、物品の被検査面の所定位置に発生するものの、物品の被検査面の向き(即ち、被検査面の中心を通る垂線を軸として回転した状態)が不明であると、窪み部に照射する光の方向を定めることができない。
【0008】
そこで、本発明の不良検査方法によれば、先ず、前記第1撮像工程により物品の被検査面を撮像する。次いで、前記角度検出工程により被検査面の中心を通る垂線を軸とした物品の回転角度を検出する。続いて、前記照射方向算出工程により被検査面への光の照射方向を算出する。これによって、前記光照射工程において、照射方向算出工程によって算出された方向から前記被検査面に向かって傾斜する光を照射することができる。
【0009】
そして、第2撮像工程により光照射工程によって照明された物品の被検査面を撮像し、この画像から前記検査画像生成工程によって不良が発生する領域を抽出して検査画像を生成する。このとき、被検査面に不良とされる窪み部が生じていれば、検査画像において前記光照射工程により高輝度とされた窪み部が確認でき、続く前記判定工程により不良とされる窪み部の有無が判定できる。
【0010】
このように、本発明によれば、物品の被検査面がその中心を通る垂線を軸とする回転方向の何れの向きにあっても、確実に窪み部の長手方向に交差する方向から光を照射することができるので、前記判定工程において窪み部の有無を確実に判定することができる。
【0011】
また、本発明の方法の前記光照射工程において、前記照射方向算出工程によって算出された方向から照射する光は、前記物品の被検査面の周囲に対応して環状に配設された複数の光源を備えて各光源を選択的に点灯自在の照明手段により、前記照射方向算出工程によって算出された方向に対応する光源のみを点灯させて得られる光であることを特徴とする。
【0012】
これによれば、複数の光源のなかから前記照射方向算出工程によって算出された方向に対応する光源のみを選択して点灯させるだけでよく、その制御を極めて容易に行うことができる。
【0013】
また、本発明の方法の前記光照射工程においては、前記照射方向算出工程によって算出された方向から照射する光よりも光量を小とする他の光を前記被検査面の対向位置から照射することが好ましい。不良とされる窪み部に対してその長手方向に交差する方向から光が照射されていると、被検査面に形成されている他の凹凸等にも当該方向からの光が当たって被検査面に影が生じる。この場合に、例えば、前記検査画像生成工程によって不良が発生する領域を抽出するとき、他の凹凸を基準として抽出する領域の座標を定めようとしても、前記影の影響により、座標の精度が低下するおそれがある。そこで、前記照射方向算出工程によって算出された方向から照射する光よりも光量を小とする他の光を前記被検査面の対向位置から照射することで、被検査面に形成されている他の凹凸等から生じる影を小とすることができ、前記検査画像生成工程による領域の抽出を高精度に行うことができる。
【0014】
また、本発明の方法において、前記物品は搬送路に沿って搬送されており、該搬送路に沿って所定位置に搬送された物品に対して前記第1撮像工程が行われ、該第1撮像工程を経てその下流位置に搬送された物品に対して前記光照射工程と前記第2撮像工程とが行われることを特徴とする。これにより、物品が何れの方向に回転した向きで搬送されても、前記光照射工程においては不良とされる窪み部の長手方向に交差する方向から光を照射することができ、搬送しながら前記判定工程を行うことができるので検査の効率を飛躍的に向上させることができる。
【0015】
また、本発明は、物品を搬送する搬送路に設けられ、該搬送路に沿って搬送される物品の被検査面の所定位置に発生する線状に延びる窪み部を不良として該不良の有無を検査する不良検査装置であって、前記搬送路を搬送される物品の被検査面を撮像する第1撮像手段と、該第1撮像手段により得られた画像に基づいて、被検査面の中心を通る垂線を軸とした物品の回転角度を検出する角度検出手段と、前記第1撮像手段の下流側に設けられ、該第1撮像手段を経て搬送された物品の被検査面に、該被検査面の周囲のうち選択的に何れか一方向から該被検査面に向かって傾斜する指向性を有する光を照射自在の照明手段と、前記角度検出手段により検出された角度から、前記不良とされる窪み部の長手方向に交差する方向を算出し、算出された方向を前記物品の被検査面への光の照射方向として前記照明手段を制御する照明制御手段と、前記照明手段により照明された前記物品の被検査面を撮像する第2撮像手段と、該第2撮像手段により得られた画像から前記不良が発生する領域を抽出して検査画像を生成し、生成された画像に基づいて前記不良の有無を判定する判定手段とを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の不良検査装置においては、物品が搬送路に沿って搬送されているとき、先ず、第1撮像手段により物品の被検査面が撮像される。次いで、角度検出手段により被検査面の中心を通る垂線を軸とした物品の回転角度を検出する。続いて、物品が下流に搬送されると、前記照明手段によって被検査面の周囲のうちの何れか一方向から該被検査面に向かって傾斜する光を照射する。このとき、該照明手段は、照明制御手段の制御により、不良とされる窪み部の長手方向に交差する方向から光を照射する。これにより、搬送路に沿って搬送されている物品の向きが、被検査面の中心を通る垂線を軸とする回転により何れの方向を向いていても、角度検出手段の検出結果に基づいて、確実に窪み部の長手方向に交差する方向から光を照射することができる。
【0017】
不良とされる窪み部の長手方向に交差する方向から光を照射すると、前述したように、窪み部に高輝度な反射が見られる。ここで、照明手段により照明された前記物品の被検査面が第2撮像手段により撮像され、前記判定手段により、第2撮像手段の画像から前記不良が発生する領域が抽出されて検査画像が生成され、その生成された画像に基づいて前記不良の有無が判定される。
【0018】
このように、本発明の不良検査装置によれば、物品が搬送路に沿って搬送されているときに、物品の被検査面がその中心を通る垂線を軸とする回転方向の何れの向きにあっても、確実に窪み部の長手方向に交差する方向から光を照射することができ、前記判定手段による窪み部の有無を確実に判定することができる。しかも、物品を搬送しながら不良検査を行うことができ、効率よく検査を行うことができる。
【0019】
また、本発明の不良検査装置において、前記照明手段は、環状に配列されて各別に点灯自在の複数の光源を備え、前記照明制御手段は、前記角度検出手段により検出された角度に基づいて算出された前記不良とされる窪み部の長手方向に交差する方向に対応する光源のみを点灯させることを特徴とする。
【0020】
前記照明手段によれば、複数の光源が環状に配列されて各別に点灯自在であるので、構造簡単として確実に所望の方向から物品の被検査面に向かって光を照射することができる。これにより、角度検出手段により検出された角度に基づいて、不良とされる窪み部の長手方向に交差する方向に対応する光源のみを点灯させるだけで、窪み部を高輝度に反射させることができる。
【0021】
また、本発明の不良検査装置においては、前記照明手段が設けられた位置に、該照明手段よりも光量を小とする光を前記被検査面の対向位置から照射する他の照明手段を設けることが好ましい。前記照明手段により不良とされる窪み部に対してその長手方向に交差する方向から光を照射すると同時に、他の照明手段により被検査面の対向位置から光を照射することで、被検査面において窪み部以外の他の凹凸等の影を小とすることができる。このとき、他の照明手段の光量が前記照明手段よりも小であることにより、不良とされる窪み部の高輝度な反射を阻害することがなく、前記判定手段による不良が発生する領域の抽出及び不良の有無の判定を高精度に行うことができる。
【0022】
なお、本発明の不良検査方法及び不良検査装置によって検査する物品としては、パネル表面にタブがリベットを介して固着され、該パネルの周縁部とリベットとの間のタブ先端が臨む位置にスコアにより破断可能に形成された破断開口部を備える薄板円形状の缶蓋が挙げられる。この缶蓋はステイオンタブ式缶蓋と呼ばれるものである。この缶蓋において、スコアに破断(クラック)が生じているものや破断の傾向があるとき、缶蓋のパネル裏面にはスコアに沿った線状の窪み部が形成される。そして、線状の窪み部は、その長手方向に交差する方向から指向性を有する光を照射することで、該光が高輝度に反射する。そこで、該缶蓋のパネル裏面を前記被検査面とし、前記不良をリベットに隣接して延びる部分のスコアの破断に伴って該破断されたスコアに沿って生じる線状の窪み部とすることで、従来では検査することができなかった缶蓋におけるリベットに隣接して延びる部分のスコアの破断を、本発明の不良検査方法及び不良検査装置によって確実に検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態の不良検査装置の概略構成を示す説明図、図2は要部の説明的斜視図、図3は照明手段の概略構成を示す説明図、図4は本実施形態の不良検査装置の作動を示すフローチャート、図5は缶蓋の裏面の基準画像を示す説明図、図6は検査対象の缶蓋の画像を示す説明図、図7は缶蓋の一部の断面説明図、図8は検査画像を示す説明図、図9は缶蓋の表側面を示す説明的平面図、図10は缶蓋の裏側面を示す説明的平面図である。
【0024】
本実施形態の不良検査装置1は、図1に示すように、缶蓋2を搬送する搬送路3に沿って設けられている。搬送路3における缶蓋2は、その裏側面を上方に向けて搬送される。なお、搬送路3ににおける缶蓋2は、図1に示すように、その向き(缶蓋2の表裏面の中心を通る垂線を軸として回転した状態)が不揃いである。
【0025】
該缶蓋2は、図9に示すように、その表側面の略中央部にリベット4が形成されており、該リベット4を介してタブ5が固着されている。該タブ5は、スコア6によって破断可能に形成された破断開口部7にその先端部5aが臨んでおり、該タブ5の後端部5bを引き上げることで揺動して破断開口部7が破断できるようになっている。また、缶蓋2には、前記リベット4をはじめ、タブ5の回り止め用の突起8や、タブ5を収容する凹部9といった複数の凹凸が形成されており、これらの凹凸は図10に示すように缶蓋2の裏側面においては反転された凹凸を形成している。
【0026】
本実施形態の不良検査装置1は、搬送路3に沿って搬送される缶蓋2の裏側面を被検査面とし画像を採取し、この画像処理によって、リベット4に隣接する一部のスコア6に生じたクラック(クラックが生じる傾向にある状態を含む)を不良として検出することにより缶蓋2の不良を検査するものである。ここで、本実施形態において検出する不良について説明する。リベット4に隣接するスコア6は、図7(a)に示すように、タブ5に覆われて、缶蓋2の表側面からは確認が困難である。一方、缶蓋2の裏側面においては、図7(b)に示すように、リベット4に隣接するスコア6にクラック10が生じていると、クラック10とリベット4との間に、スコア6に沿った線状の窪み部11が形成される。そこで、このような窪み部11を画像処理によって検出すれば、スコア6にクラック10が生じていることを確認することができる。ところで、このような窪み部11は極めて微細な線状に形成されるが、図7(b)に矢印で示す窪み部11の長手方向に交差する方向から指向性を有する光を照射することによって、図8に示すように窪み部11に高輝度の反射が生じ、明瞭に際立たせることができることは本発明者の知見によるものである。
【0027】
先ず、本実施形態の不良検査装置1の構成を説明する。図1に示すように、該不良検査装置1は、搬送路3に沿って搬送される缶蓋2を撮像する第1撮像手段12と、該第1撮像手段12の下流側に位置する第2撮像手段13とを備えている。第1撮像手段12により撮像された画像は、角度検出手段14により処理される。第2撮像手段13により撮像された画像は、判定手段15により処理される。また、第1撮像手段12と搬送路3との間には、第1照明手段16が設けられ、第2撮像手段13と搬送路3との間には、第2照明手段17及び第3照明手段18が設けられている。第2照明手段17は、照明制御手段19により制御される。
【0028】
図1及び図2に示すように、前記第1照明手段16はリング照明が採用されており、第1撮像手段12による撮像時に缶蓋2の裏側面を平坦に照明する。前記第2照明手段17は、本発明の照明手段であり、図3に示すように、同幅の複数の発光部20が環状に配列され、それぞれの発光部20が独立して発光可能とされている。各発光部20は、複数のLED21を指向性を有する光源として備えている。第2撮像手段13による撮像時に何れかの発光部20を発光させることにより、該第2照明手段17の直下の缶蓋2に対して該缶蓋2の径方向の所望の方向から該缶蓋2に向かって傾斜する光を照射することができる。前記第3照明手段18は、本発明の他の照明手段であり、図2に示すように、リング照明が採用されている。該第3照明手段18は、第2撮像手段13による撮像時に、前記第2照明手段17による照明を阻害しない光量で缶蓋2の裏側面を平坦に照明する。
【0029】
また、搬送路3には、図1及び図2に示すように、缶蓋2が第1撮像手段12の直下に位置したことを感知する第1トリガセンサー22と、缶蓋2が第2撮像手段13の直下に位置したことを感知する第2トリガセンサー23とが設けられている。第1トリガセンサー22は、搬送路3を介して互いに対向する投光部22aと受光部22bとによって構成され、搬送された缶蓋2が投光部22aの光を遮ることで缶蓋2を検知する。第2トリガセンサー23も第1トリガセンサー22と同様に投光部23aと受光部23bとによって構成されている。
【0030】
次に、以上の構成からなる不良検査装置1の作動を説明する。搬送路3に沿った缶蓋2の搬送が開始されると不良検査装置1の作動が開始される。そして、図4のSTEP1において缶蓋2が第1トリガセンサー22により検出され、第1トリガ信号が出力されると、図4のSTEP2に進み、第1照明手段16により照明された缶蓋2の裏側面が第1撮像手段12によって撮像され、その画像が角度検出手段14に取り込まれる(第1撮像工程)。
【0031】
次いで、図4のSTEP3に進んで、取り込まれた画像から、角度検出手段14により被検査面の中心を通る垂線を軸とした物品の回転角度を検出する。このとき、本実施形態においては、テンプレートマッチング方式、或いは、パターンマッチング方式が採用される。即ち、角度検出手段14には、図5に示すように予め基準となる方向を向けた缶蓋2の裏側面の画像24が記憶されており、図6に示すようにSTEP2において取り込まれた缶蓋2の裏側面の画像25との一致度を評価し、最も一致度の高い座標から回転角度θを求める(角度検出工程)。なお、本実施形態において、一致度の判定には正規化相関法が用いられる。次いで、図4のSTEP4に進んで、角度検出手段14は検出した角度を一時的に記憶する。
【0032】
続いて、缶蓋2が搬送路3に沿って搬送され、図4のSTEP5において缶蓋2が第2トリガセンサー23により検出され、第2トリガ信号が出力されると、搬送路3が缶蓋2を搬送する速度に同期して角度検出手段14から検出された角度が照明制御手段19に入力される。そして、図4のSTEP6に進み、照明制御手段19は角度検出手段14から検出された角度に対応する缶蓋2への光の照射方向を算出する(照射方向算出工程)。このとき算出される光の照射方向は、図8に矢印で示す方向であり、不良である窪み部11の長手方向に交差する(好ましくは直行する)方向である。次いで、図4のSTEP7に進み、照明制御手段19は、図3に示すように、第2照明手段17の各発光部20のうち、算出した照射方向に対応する発光部20を選択して点灯させる。なお、図3においては、複数(4つ)の発光部20を点灯させているが、単一の発光部20を点灯させてもよい。これにより、第2撮像手段13の直下に位置する缶蓋2の裏側面に第2照明手段17の選択された発光部20からの光が照射される(光照射工程)。なお、このとき、同時に、第2照明手段17から照射される光よりも小さい光量の光が第3照明手段18から缶蓋2に対して平面状に照射される。
【0033】
次いで、図4のSTEP8に進み、第2照明手段17及び第3照明手段18により照明された缶蓋2の裏側面が第2撮像手段13によって撮像され、その画像が判定手段15に取り込まれる(第2撮像工程)。判定手段15においては、図4のSTEP9に進んで、先ず、第2撮像手段13により撮像された画像から、図8に示すように、窪み部11が発生する位置であるリベット4近傍のスコア6を含む所定の領域を抽出して検査画像26を生成する(検査画像生成工程)。
【0034】
続いて、図4のSTEP10に進み、判定手段15が検査画像26に基づいて窪み部11発生の有無を判定する(判定工程)。即ち、リベット4近傍に窪み部11が発生している場合には、第2照明手段17から窪み部11の発生位置への光の照射によって窪み部11が高輝度に白色反射した検査画像が得られる。そして、判定手段15は、当該検査画像を2値化し、窪み部11の白色部分の画素数が予め定めた上限値を越えた場合に不良として判定する。そして、図4のSTEP11へ進み、判定手段15は缶蓋2の判定結果に関する信号を出力する。なお、判定手段15により不良とされた缶蓋2は、図4のSTEP11における出力信号に応じて搬送路3の下流に設けられた図示しない排出手段等により排出される。
【0035】
このように、本実施形態の不良検査装置1によれば、缶蓋2のタブ取付工程等の後に払い出し搬送される搬送路3に設けて、缶蓋2を搬送しながらリベット4近傍のスコア6に生じたクラック10やクラック10が生じる傾向にある状態を検出することができるので、極めて効率良く不良検査が行える。また、前記角度検出手段14及び照明制御手段19により、搬送される缶蓋2の向きが不揃いであっても確実に前記クラック10やクラック10が生じる傾向にある状態を窪み部11として画像処理可能とし、精度の高い検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態の不良検査装置の概略構成を示す説明図。
【図2】本実施形態の要部の説明的斜視図。
【図3】照明手段の概略構成を示す説明図。
【図4】本実施形態の不良検査装置の作動を示すフローチャート。
【図5】缶蓋の裏面の基準画像を示す説明図。
【図6】検査対象の缶蓋の画像を示す説明図。
【図7】缶蓋の一部の断面説明図。
【図8】検査画像を示す説明図。
【図9】缶蓋の表側面を示す説明的平面図。
【図10】缶蓋の裏側面を示す説明的平面図。
【符号の説明】
【0037】
1…不良検査装置、2…缶蓋(物品)、3…搬送路、4…リベット、5…タブ、6…スコア、7…破断開口部、11…窪み部、12…第1撮像手段、13…第2撮像手段、14…角度検出手段、15…判定手段、17…第2照明手段(照明手段)、18…第3照明手段(他の照明手段)、19…照明制御手段、20…発光部(光源)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査面を備える物品に対して、該被検査面の所定位置に発生する線状に延びる窪み部を不良として該不良の有無を検査する不良検査方法であって、
前記被検査面を撮像する第1撮像工程と、
該第1撮像工程により得られた画像に基づいて、被検査面の中心を通る垂線を軸とした物品の回転角度を検出する角度検出工程と、
前記不良とされる窪み部の長手方向に交差する方向を光の照射方向として、該角度検出工程により検出された角度から、前記被検査面への光の照射方向を算出する照射方向算出工程と、
該照射方向算出工程によって算出された方向から、前記被検査面に向かって傾斜する指向性を有する光を照射する光照射工程と、
該光照射工程によって照明された前記被検査面を撮像する第2撮像工程と、
該第2撮像工程により得られた画像から前記不良が発生する領域を抽出して検査画像を生成する検査画像生成工程と、
該検査画像生成工程により生成された画像に基づいて、前記不良の有無を判定する判定工程とを備えることを特徴とする不良検査方法。
【請求項2】
前記光照射工程において、前記照射方向算出工程によって算出された方向から照射する光は、前記物品の被検査面の周囲に対応して環状に配設された複数の光源を備えて各光源を選択的に点灯自在の照明手段により、前記照射方向算出工程によって算出された方向に対応する光源のみを点灯させて得られる光であることを特徴とする請求項1記載の不良検査方法。
【請求項3】
前記光照射工程においては、前記照射方向算出工程によって算出された方向から照射する光よりも光量を小とする他の光を前記被検査面の対向位置から照射することを特徴とする請求項1又は2記載の不良検査方法。
【請求項4】
前記物品は搬送路に沿って搬送されており、
該搬送路に沿って所定位置に搬送された物品に対して前記第1撮像工程が行われ、該第1撮像工程を経てその下流位置に搬送された物品に対して前記光照射工程と前記第2撮像工程とが行われることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の不良検査方法。
【請求項5】
前記物品は、パネル表面にタブがリベットを介して固着され、該パネルの周縁部とリベットとの間のタブ先端が臨む位置にスコアにより破断可能に形成された破断開口部を備える薄板円形状の缶蓋であり、
該缶蓋のパネル裏面が前記被検査面とされ、
前記判定工程により判定される前記不良は、リベットに隣接して延びる部分のスコアの破断に伴って該破断されたスコアに沿って生じる線状の窪み部であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の不良検査方法。
【請求項6】
物品を搬送する搬送路に設けられ、該搬送路に沿って搬送される物品の被検査面の所定位置に発生する線状に延びる窪み部を不良として該不良の有無を検査する不良検査装置であって、
前記搬送路を搬送される物品の被検査面を撮像する第1撮像手段と、
該第1撮像手段により得られた画像に基づいて、被検査面の中心を通る垂線を軸とした物品の回転角度を検出する角度検出手段と、
前記第1撮像手段の下流側に設けられ、該第1撮像手段を経て搬送された物品の被検査面に、該被検査面の周囲のうち選択的に何れか一方向から該被検査面に向かって傾斜する指向性を有する光を照射自在の照明手段と、
前記角度検出手段により検出された角度から、前記不良とされる窪み部の長手方向に交差する方向を算出し、算出された方向を前記物品の被検査面への光の照射方向として前記照明手段を制御する照明制御手段と、
前記照明手段により照明された前記物品の被検査面を撮像する第2撮像手段と、
該第2撮像手段により得られた画像から前記不良が発生する領域を抽出して検査画像を生成し、生成された画像に基づいて前記不良の有無を判定する判定手段とを備えることを特徴とする不良検査装置。
【請求項7】
前記照明手段は、環状に配列されて各別に点灯自在の複数の光源を備え、
前記照明制御手段は、前記角度検出手段により検出された角度に基づいて算出された前記不良とされる窪み部の長手方向に交差する方向に対応する光源のみを点灯させることを特徴とする請求項6記載の不良検査装置。
【請求項8】
前記照明手段が設けられた位置に、該照明手段よりも光量を小とする光を前記被検査面の対向位置から照射する他の照明手段を設けたことを特徴とする請求項6又は7記載の不良検査装置。
【請求項9】
前記物品は、パネル表面にタブがリベットを介して固着され、該パネルの周縁部とリベットとの間のタブ先端が臨む位置にスコアにより破断可能に形成された破断開口部を備える薄板円形状の缶蓋であり、
該缶蓋のパネル裏面が前記被検査面とされ、
前記判定手段により判定される前記不良は、リベットに隣接して延びる部分のスコアの破断に伴って該破断されたスコアに沿って生じる線状の窪み部であることを特徴とする請求項6乃至8の何れか1項記載の不良検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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