説明

不適切行為の撮影排除機能を有するカラオケシステム

【課題】 選曲予約を行った歌唱者の動きに追従して、当該歌唱者を撮影するとともに、当該歌唱者による不適切行為を識別して排除することが可能なカラオケシステムを提供する。
【解決手段】 撮影が指示された任意のカラオケ楽曲が演奏された場合に、歌唱者の移動に追従してパン・チルト機構23eを作動させて、撮影手段23の撮影方向を歌唱者の移動位置に一致させる被写体追従手段55と、歌唱者撮影エリアにいる歌唱者の体表温度を検知する被写体温度検知手段56と、歌唱者の撮像体表面における生体温度の割合が所定の基準値を超えた場合に、不適切行為が行われていると判断する不適切行為判断手段45と、不適切行為が行われていると判断された場合には、撮影手段23の機能を停止させる撮影機能制御手段46と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歌唱者を撮影する機能を有するカラオケシステムにおいて、歌唱者の不適切行為を識別して、その撮影を排除することを可能としたカラオケシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在のカラオケシステムでは、カラオケ演奏装置を用いて歌唱を行っている歌唱者の映像を録画し、これをウェブサイトで公開するサービスが実用化されている。このサービスは、歌唱者の映像を撮影してサーバに記録し、インターネット接続したパーソナルコンピュータや携帯電話を用いて当該映像を視聴できるものである。このサービスにより、カラオケ演奏装置を用いた歌唱姿態を、歌唱者自らが楽しんだり、友人等に見せたりすることができ、カラオケ演奏装置を用いた歌唱の楽しさにバリエーションを持たせることができる。
【0003】
ところで、上述したサービスにおいて撮影を行う場所が、個室のカラオケルーム等である場合には、酔客等により善良の風俗に反する姿態が撮影されるおそれがある。このような映像が公開されることは好ましくないため、カラオケ業者は録画映像を公開する前にチェックしている。しかし、公開を望む録画映像の数は膨大であるため、そのチェックには多くの人手と労力を必要とする。現在のカラオケシステムでは、歌唱者による不適切行為を自動的に把握する仕組みはなく、その対応に苦慮しているのが現状である。
【0004】
また、撮影機能を有するカラオケ演奏装置の本来の目的は、撮影を所望して選曲予約を行った歌唱者の映像を録画することにある。すなわち、カラオケルーム内に集合している利用者の中から選曲予約を行った歌唱者を特定して、当該歌唱者の映像を録画しなければならない。
【0005】
さらに、上述したサービスを利用するには、利用者の事前登録が必要である。このため、カラオケ業者にとってみれば、登録者の経歴情報を把握しており、仮に不適切行為を含む録画映像が撮影されたことが判明した場合には、当該利用者の登録を抹消する等の対処が可能である。一方、利用者にとってみれば、カラオケ業者に経歴情報を知られているため、これが抑止効果となって、ある程度は不適切行為の撮影及び録画を排除することができる。
【0006】
現在普及しているカラオケ演奏装置は、選曲予約を行う際に、楽曲IDに利用者IDを付帯させて予約待ち行列に登録している。すなわち、選曲予約されたカラオケ楽曲は、当該選曲予約を行った利用者により歌唱されるのが一般的である。通常の場合、良識ある利用者は、自らの利用者IDを用いて選曲予約を行ったカラオケ楽曲について、その歌唱姿態を録画して公開することを想定すると、上述した抑止効果により、不適切行為を行うことは稀であると考えられる。このため、適切な歌唱を行っている歌唱者を追尾して、その姿態を撮影することが効果的である。
【0007】
従来、ビデオカメラ等の撮影装置における被写体追尾装置が種々提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。
特許文献1に記載された技術は、ビデオカメラなどの撮像手段と、撮像手段で撮影された画像面から特定の被写体像を検出する被写体認識手段と、被写体認識手段が検出した被写体像が画像の所定位置に収まるように撮像手段の撮像方向を変更する撮像方向変更手段とを具備している。そして、撮像方向変更手段は、可動範囲が狭く比較的高速で追従する第1の撮像方向変更手段と、可動範囲が広く比較的低速で追従する第2の撮像方向変更手段と、第1の撮像方向変更手段と第2の撮像方向変更手段とが協調して動作するように働く協調手段と、を備えている。これにより、追尾範囲が広く応答追従性に優れた被写体追尾装置を実現することができるとしている。
【0008】
また、特許文献2に記載された技術は、撮影視野内の画像を取り込み、その画像の特徴抽出を行う画像検出手段と、画像検出手段の特徴抽出結果に基づいて、撮影視野内において主被写体となる可能性のある候補領域を認識する画像認識手段と、画像認識手段が認識した候補領域を表示する表示手段と、表示手段により表示された候補領域の中から、主被写体が存在する主被写体領域として少なくとも1つを選択する主被写体領域選択手段と、主被写体領域手段により選択された主被写体領域の画像について画像検出手段が抽出した特徴を特徴基準として記憶する主被写体領域記憶手段とを備えている。これにより、記憶した特徴基準を用いれば、主被写体が移動しても、主被写体の移動に追従することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−215422号公報
【特許文献2】特開2000−2833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、現在のカラオケシステムでは、歌唱者による不適切行為を自動的に把握する仕組みはないため、発明者は鋭意研究を重ねた結果、被写体となっている歌唱者の体表体温を検知することにより、少なくとも、裸体をさらけ出すという不適切行為の撮影を排除することができることに想到した。すなわち、着衣状態の歌唱者と、衣服を脱いでしまった歌唱者の体表温度を比較すると、衣服を脱いでしまった歌唱者の体表温度の方が高いため、裸体であることを検知することができる。
【0011】
また、選曲予約を行った歌唱者を特定して、当該歌唱者の映像を録画するのが、撮影機能を有するカラオケ演奏装置の本来の目的である。
しかしながら、上述した従来の技術では、撮影開始時にビデオカメラ等の撮影装置が向けられていた被写体を追尾することができるが、必ずしもその被写体が選曲予約を行った歌唱者であるとは限らない。例えば、カラオケ楽曲の演奏が開始された時点において、ビデオカメラ等の撮影装置がステージに向けられており、ステージ上の人物を捕捉していたとする。この場合に、ステージ上に選曲予約を行った利用者以外の他の利用者が立ってしまう場合には、演奏開始時点に合焦していた被写体である他の利用者の動きに追従して撮影が行われることになる。これでは、選曲予約を行った利用者の移動に追従してビデオカメラ等の撮影方向を変更することができない。
【0012】
また、選曲予約を行った利用者と、実際に歌唱を行っている歌唱者との異動を判断し、選曲予約を行った利用者のみに、その歌唱姿態の撮影を許可することにより、上述した不適切行為の抑止効果はより一層顕著なものとなる。
【0013】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、歌唱者による不適切行為を識別して、その撮影を排除することが可能なカラオケシステムを提供することを目的とする。また、本発明は、選曲予約を行った歌唱者の動きに追従して、当該歌唱者を撮影することが可能なカラオケシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の不適切行為の撮影排除機能を有するカラオケシステムは、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明の不適切行為の撮影排除機能を有するカラオケシステムは、撮影手段と、被写体追従手段と、被写体温度検知手段と、不適切行為判断手段と、撮影機能制御手段と、を備えている。
【0015】
撮影手段は、少なくともパン・チルト機構を有している。被写体追従手段は、歌唱者の移動に追従してパン・チルト機構を作動させて、撮影手段の撮影方向を歌唱者の移動位置に一致させるための手段である。被写体温度検知手段は、任意のカラオケ楽曲が演奏されるとともに、撮影手段による撮影が行われると、歌唱者撮影エリアにいる歌唱者の体表温度を検知するための手段である。不適切行為判断手段は、歌唱者の撮像体表面における生体温度の割合が所定の基準値を超えた場合に、不適切行為が行われていると判断するための手段である。撮影機能制御手段は、不適切行為が行われていると判断された場合には、撮影手段の機能を停止させるための手段である。
【0016】
このような構成からなる不適切行為の撮影排除機能を有するカラオケシステムでは、撮影が指示された任意のカラオケ楽曲が演奏されると、被写体追従手段の機能により、歌唱者の移動に追従してパン・チルト機構を作動させて、撮影手段の撮影方向を歌唱者の移動位置に一致させ、当該歌唱者の画像を撮影する。また、赤外線サーモグラフィカメラ等からなる被写体温度検知手段の機能により、歌唱者撮影エリアにいる歌唱者の撮像体表面の平均体表温度を検知する。
【0017】
そして、不適切行為判断手段の機能により、歌唱者の撮像体表面における生体温度の割合が所定の基準値を超えた場合に、不適切行為が行われていると判断する。例えば、歌唱者の撮像体表面における生体温度(36℃乃至37℃)の割合が70%以上であるか否かを判断基準として、このような状態である場合に、歌唱者が裸になっていると判断する。歌唱者が裸になっているという不適切行為が撮影されている場合には、撮影機能制御手段の機能により、撮影手段の機能を停止させる。
【0018】
また、本発明の不適切行為の撮影排除機能を有するカラオケシステムは、上述した構成に加えて、顔画像識別記憶手段と、利用者顔画像登録手段と、顔画像比較手段と、をさらに備えることが可能である。
【0019】
顔画像識別記憶手段は、歌唱者撮影エリアにいる歌唱者の顔画像を識別するとともに、撮影された当該顔画像を撮影顔画像データとして所定の記憶部に記憶するための手段である。利用者顔画像登録手段は、予め、利用者毎の顔画像データを利用者IDに紐付けして利用者顔画像データベースに登録するための手段である。顔画像比較手段は、利用者IDに紐付けして選曲予約されたカラオケ楽曲が演奏されているとともに、撮影手段により撮影が行われている場合に、撮影顔画像データと、当該利用者IDに紐付けされた登録顔画像データとを比較して歌唱者を特定するための手段である。
【0020】
このような構成からなる不適切行為の撮影排除機能を有するカラオケシステムでは、利用者顔画像登録手段の機能により、予め、利用者毎の顔画像データを利用者IDに紐付けして利用者顔画像データベースに格納しておく。そして、利用者IDに紐付して選曲予約されたカラオケ楽曲が演奏されるとともに、撮影手段による撮影が行われると、顔画像比較手段の機能により、現に撮影手段により撮影している撮影顔画像データと、選曲予約を行った利用者の登録顔画像データとを比較して歌唱者を特定する。
【0021】
そして、被写体追従手段の機能により、特定された歌唱者の移動に追従してパン・チルト機構を作動させて、撮影手段の撮影方向を前記歌唱者の移動位置に一致させる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の不適切行為の撮影排除機能を有するカラオケシステムによれば、撮影手段の撮影方向を当該利用者の移動に追従させる。そして、歌唱者撮影エリアにいる歌唱者が裸になり、その撮像体表面における生体温度の割合が所定の基準値を超えた場合には、不適切行為が行われていると判断し、撮影手段の機能を停止させる。したがって、歌唱者の動きに追従させて、常に撮像フレーム内に撮像体表面を欠損なく保持することで、動きのある歌唱者に対しても、撮像体表面の生体温度を適切に検知することができる。これにより、歌唱者の不適切行為を効率的に識別して排除することが可能となる。
【0023】
また、カラオケ楽曲の選曲予約を行った歌唱者以外の利用者が歌唱者撮影エリアにいた場合であっても、カラオケ楽曲の選曲予約を行った歌唱者を識別して追従できるので、その歌唱姿態を適切に撮影することが可能となる。
さらに、カラオケ業者に対して経歴情報が明らかになっている選曲者は、その利用者IDを用いたカラオケ楽曲の演奏において、自らの公序良俗違反の行為を公にしたくないという心理状態を利用して、より一層、不適切行為の排除効果を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る不適切行為の撮影排除機能を有するカラオケシステムを適用するカラオケ演奏装置のブロック図。
【図2】不適切行為の撮影排除処理の第1の実施形態を示すフローチャート。
【図3】不適切行為の撮影排除処理の第2の実施形態を示すフローチャート。
【図4】表示装置の表示画面に表示される警告メッセージの一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の不適切行為の撮影排除機能を有するカラオケシステムの実施形態を説明する。本発明の実施形態に係る不適切行為の撮影排除機能を有するカラオケシステムは、主な構成要素として、撮影手段と、被写体追従手段と、被写体温度検知手段と、不適切行為判断手段と、撮影機能制御手段と、を備えている。さらに、被顔画像識別記憶手段と、利用者顔画像登録手段と、顔画像比較手段とを備えることが可能である。なお、以下に示す実施形態は、すべての構成要素を含んだものである。図1に、本発明の実施形態に係る不適切行為の撮影排除機能を有するカラオケシステムを適用するカラオケ演奏装置の構成を示す。
【0026】
<カラオケ演奏装置>
本発明の実施形態に係るカラオケ演奏装置11は、図1に示すように、カラオケ本体21、カラオケリモコン装置22、撮影手段23、マイクロホン24、スピーカ25、ミキシングアンプ26、表示装置27を備えている。
【0027】
<カラオケリモコン装置>
カラオケリモコン装置22は、ユーザインタフェース機能を備えており、カラオケ本体21の送受信手段47に対して有線方式又は無線方式によりデータの送受信を行うようになっている。このカラオケリモコン装置22は、楽曲検索手段22aとして機能するプログラム、楽曲索引データベース22b、利用者ID取得手段22cとして機能する回路基板及びプログラム、データの送受信を行うための回路基板及びプログラム、フラッシュメモリ等からなる記憶手段(図示せず)を備えている。このカラオケリモコン装置22に付帯するスイッチ類や、入出力表示部(図示せず)に表示される各種のアイコン等を操作することにより、選曲操作、撮影指示操作等が行われる。
【0028】
<楽曲検索手段/楽曲索引データベース>
楽曲検索手段22aは、利用者の指示に基づき、楽曲索引データベース22bを参照して楽曲を検索するためのプログラムからなる。楽曲索引データベース22bは、カラオケ演奏装置11で演奏に供されるカラオケ楽曲についての属性情報を記述したデータベースであり、例えば、楽曲番号・曲名・歌手名・歌い出し部分の歌詞・流行時期・音楽ジャンル区分・デュエット曲か否かなど、種々の属性情報がこれに含まれている。
【0029】
<利用者ID取得手段>
利用者ID取得手段22cは、利用者がカラオケ演奏装置11を利用する際に、利用者が所持するID媒体31から利用者IDを取得するための電子回路及びプログラムからなる。利用者ID取得手段22cで取得した利用者IDは、RAMに一時的に記憶され、ログイン利用者管理手段49で管理される。ID媒体31は、例えば、非接触型のIDカード、携帯電話、携帯情報端末等からなり、利用者IDを記憶して、利用者ID取得手段22cとの間でデータの送受信を行うことができるようになっている。
【0030】
<撮影手段>
撮影手段23は、歌唱者の画像を撮影するための手段で、例えば、主たる構成要素であるビデオカメラと、その付帯装置から構成される。ビデオカメラは、撮像レンズ23a、撮像素子23b、フォーカシング機構23c、ズーミング機構23dを備えており、付帯装置としてパン・チルト機構23e、赤外線検出センサ23fを備えている。本実施形態の撮像レンズ23aは、複数のレンズ群から構成されるズームレンズからなり、この撮像レンズ23aにより、被写体からの光線を撮像素子23b上に結像させてビデオ信号に変換する。このビデオ信号、及び赤外線検出センサ23fにより検知した歌唱者の体表温度データは、カラオケ本体21に送信される。
【0031】
フォーカシング機構23cは、被写体像を撮像素子23b上に合焦して結像させるための機構であり、オートフォーカス機構を備えていることが好ましい。オートフォーカス機構としては、例えば、適宜な間隔を隔てて設置した2つのセパレートレンズを用いて被写体を撮影し、被写体像を撮像素子23b上に結像させ、両画像の位相差に基づいて物体距離を検知する方式や、被写体上に赤外光を照射して、被写体からの拡散反射光をレンズで集光し、その結像位置に基づいて物体距離を検知する方式や、撮像素子23bから被写体のコントラスト情報を抽出し、結像状態を直接判定する方式等が知られている。なお、被写界深度の深いレンズからなる固定焦点の撮像レンズ23aを用いることによりフォーカシング機構23cを省略してもよい。
【0032】
ズーミング機構23dは、ビデオカメラの画角を変更するための機構で、広角端から望遠端に至る所定の範囲で連続的に画角を変更できるようになっており、画角の変更を行うために、ズームレンズ群を構成する各レンズを光軸に沿って移動させるための機構を備えている。ズームレンズ群を構成する各レンズを光軸に沿って移動させるための機構は、例えば、レンズを光軸に沿って移動可能に支持する支持機構、及びレンズを光軸に沿って移動させるアクチュエータ等からなる。本実施形態のズーミング機構23dは、歌唱者の顔領域の大きさが予め設定した面積とほぼ等しくなるように自動的に画角調整を行う。なお、歌唱者が移動した場合であっても、歌唱者の顔領域の大きさが予め設定した面積とほぼ等しくなるような環境に撮影手段23が設置されている場合には、ズーミング機構23dを省略することができる。さらに、利用者の所望に応じて画角調整を行うようにしてもよい。
【0033】
パン・チルト機構23eは、ビデオカメラをパン及びチルトさせるための機構であり、互いに直交する2軸方向にそれぞれ回転するパンテーブル及びチルトテーブルと、このパンテーブル及びチルトテーブルを互いに直交する2軸方向にそれぞれ回転駆動するステッピングモータと、ステッピングモータの駆動制御装置とを備えている。
【0034】
さらに、本実施形態の撮影手段23は、被写体温度検知手段56の一部として機能する赤外線検出センサ23fを備えている。具体的には、撮影手段23を構成するビデオカメラに赤外線検出センサ23fを組み込むことにより、被写体温度を検知することができる。この赤外線検出センサ23fは、被写体から放出されている赤外線放射エネルギーを検出するためのセンサであり、被写体温度検知手段56は、この赤外線検出センサ23fの検出出力に基づいて見かけの温度を演算する。この場合、撮像レンズ23aに入射する被写体からの光線の一部を、ハーフミラーやプリズムにより、撮像素子23bへの光路と分離して赤外線検出センサ23fへの光路へ導き、この光路上の赤外線結像位置に、赤外線検出センサ23fを配置すればよい。なお、可視光線と赤外線とは結像位置が異なるため、撮像素子23bと赤外線検出センサ23fとでは、撮像レンズ23aからの光路長が異なっている。
【0035】
本実施形態では、撮影手段23に赤外線検出センサ23fを組み込んでいるが、撮影手段23とは別個に、赤外線撮像手段を設けてもよい。この場合には、撮影手段23のパン・チルト機構23eにより、あるいはこのパン・チルト機構23eに連動する他のパン・チルト機構により、撮影手段23の撮影方向と赤外線検出センサ23fの温度検知方向とを一致させる必要がある。
【0036】
<カラオケ本体>
カラオケ本体21は、中央制御手段41、ROM42、RAM43、HDD44、不適切行為判断手段45、撮影機能制御手段46、送受信手段47、予約管理手段48、ログイン利用者管理手段49、顔画像識別記憶手段50、利用者顔画像登録手段51、顔画像比較手段52、撮像データ受信手段53、撮影データ記憶手段54、被写体追従手段55、被写体温度検知手段56、報知制御手段57、A/Dコンバータ58、音楽再生制御手段59、映像再生制御手段60を備えている。
【0037】
<中央制御手段>
中央制御手段41は、カラオケ本体21を総合的に制御するための手段であり、例えばCPU及びその周辺機器により構成されており、CPU等がROM42等に記憶されたアプリケーションプログラムに従って動作することにより、制御機能を発揮することができるようになっている。
【0038】
<ROM/RAM>
ROM42は、カラオケ本体21を構成する各機器を制御するためのアプリケーションプログラムデータや数値データを記憶するための機器で、例えば半導体メモリ等で構成される。また、RAM43は、アプリケーションプログラムや各種データを一時的に記憶する一時記憶領域として機能するもので、例えば半導体メモリ等で構成される。なお、物理的な半導体メモリによりRAM43を構成するのではなく、ハードディスク記憶装置等を用いて仮想的なRAM43を構成してもよい。本実施形態では、RAM43に、予約待ち行列43a、撮影顔画像データ43b、撮影データ43cが記憶されるようになっている。
【0039】
<HDD>
HDD44は、大容量記憶装置として機能するもので、楽曲データベース44a、映像データベース44b、利用者顔画像データベース44c、判断基準値44d、警告メッセージ44eが格納されている。なお、HDD44に替えて、あるいはHDD44とともに、データを書き替え可能なDVD等の大容量記憶装置を用いてもよい。
【0040】
楽曲データベース44aは、演奏データ(MIDI(登録商標)データ)及び歌詞テロップデータが同期されて構成される楽曲データについて、楽曲IDと対応付けてそれぞれ格納したデータベースである。演奏データは各楽曲の演奏データをデジタル化したものであり、歌詞テロップデータは演奏データに同期されたカラオケ楽曲の歌詞文字データである。なお、歌詞文字データには、歌詞文字の表示色データ、色変わりデータ等が含まれている。映像データベース44bは、演奏されるカラオケ楽曲に対応した背景映像を、当該カラオケ楽曲の楽曲IDに対応させた映像ファイルとして所定数格納したデータベースである。
【0041】
利用者顔画像データベース44cは、利用者顔画像登録手段51の機能により、利用者IDに紐付けされた利用者の顔画像データを複数格納したデータベースである。この利用者顔画像データベース44cに格納された登録顔画像データは、顔画像比較手段52において、撮影顔画像データとの比較に用いられる。判断基準値は、不適切行為判断手段45において判断基準となるデータである。警告メッセージ44eは、報知制御手段57の機能により報知制御を行う際に、表示装置27に表示する警告メッセージを作成するためのデータである。
【0042】
<被写体温度検知手段>
被写体温度検知手段56は、任意のカラオケ楽曲が演奏されるとともに、撮影手段23による撮影が行われると、歌唱者撮影エリアにいる歌唱者の体表温度を検知するための赤外線サーモグラフィ機構からなる。具体的には、撮影手段23に組み込まれた赤外線検出センサ23fからの検出出力に基づいて、被写体温度を検知することができる。この被写体温度検知手段56は、赤外線検出センサ23fにより検出した被写体から放出されている赤外線放射エネルギーを、見かけの温度に変換する。この際、撮像視野内に存在する歌唱者領域を識別するために、例えば、特開2000−2833号公報(特許文献2)に記載されている技術を用いることができる。すなわち、エッジ検出により、撮影視野内に存在する画像の輪郭を抽出し、輪郭で囲まれた領域のうち所定の大きさの面積を有する領域を歌唱者領域として認識する。
【0043】
<不適切行為判断手段>
不適切行為判断手段45は、歌唱者撮影エリアにいる歌唱者の撮像体表面における生体温度の割合が所定の基準値を超えた場合に、不適切行為が行われていると判断するためのプログラムからなる。例えば、不適切行為判断手段45では、歌唱者の撮像体表面における生体温度(36℃乃至37℃)の割合が70%以上であるか否かを判断基準として、このような状態である場合に、歌唱者が裸になっていると判断する。不適切行為判断手段45で利用する判断基準値44dは、HDD44に格納されている。なお、基準となる生体温度や撮像体表面の割合は、カラオケ演奏装置11が設置された環境等に応じて適宜変更して実施することができる。
【0044】
<撮影機能制御手段>
撮影機能制御手段46は、不適切行為が行われていると判断された場合には、撮影手段23の機能を停止させるためのプログラムからなる。すなわち、歌唱者撮影エリアにいる歌唱者が裸になっているという不適切行為が撮影されている場合には、撮影機能制御手段46の機能により、撮影手段23の機能が停止させられ、当該歌唱者の撮影は行われない。
【0045】
また、撮影機能制御手段46の機能として、上述した機能に加えて、歌唱者撮影エリアにいる歌唱者の顔画像データ(撮影顔画像データ43b)と選曲予約を行った利用者の顔画像データ(登録顔画像データ)とが一致しない場合には、撮影手段23の機能を停止させることもできる。すなわち、選曲予約を行った利用者が被写体となっていない場合には、撮影機能制御手段46の機能により、撮影手段23の機能が停止させられ、当該歌唱者の撮影は行われない。
【0046】
<報知制御手段>
報知制御手段57は、撮影手段23の機能が停止させられた旨の報知制御を行うためのプログラムからなる。すなわち、歌唱者が裸になっているという不適切行為が撮影され、撮影機能制御手段46の機能により、撮影手段23の機能が停止させられた場合や、選曲予約を行った利用者が被写体となっていない場合に、その旨の報知制御処理が行われる。この報知制御手段57における報知制御処理では、例えば、表示装置27の表示画面に警告を表示することにより、不適切行為が行われている旨(図4参照)、あるいは選曲予約を行った利用者が被写体となっていない旨を報知する。
【0047】
<被写体追従手段>
被写体追従手段55は、歌唱者の移動に追従してパン・チルト機構23eを作動させて、撮影手段23の撮影方向を歌唱者の移動位置に一致させるためのプログラムからなる。なお、本実施形態では、撮影手段23がズーミング機構23dを備えているため、被写体追従手段55による被写体追従処理において、パン・チルト機構23eだけではなく、ズーミング機構23dも制御して、ビデオカメラの撮像レンズ23aを被写体に向けるとともに、画角を一定に保つことが好ましい。
【0048】
また、被写体追従手段55の機能として、後述するように、顔画像比較手段52の機能により選曲予約を行った歌唱者が特定された場合に、当該歌唱者の移動に追従してパン・チルト機構23eを作動させて、撮影手段23の撮影方向を歌唱者の移動位置に一致させることができる。
【0049】
この被写体追従手段55は、例えば、特開平11−215422号公報(特許文献1)、特開2000−2833号公報(特許文献2)に記載されている技術を用いることができる。すなわち、特開平11−215422号公報(特許文献1)に記載されているように、予め撮影対象となる被写体を認識して記憶し、この被写体が撮像画面中に常に存在するように、パン・チルト機構23e及びズーミング機構23dを制御することにより被写体を追尾すればよい。また、特開2000−2833号公報(特許文献2)に記載されているように、エッジ検出により、画像の輪郭を抽出し、抽出結果に基づいて、撮影視野内において被写体となる可能性のある領域、例えば、輪郭で囲まれた領域のうち顔領域として設定された面積を有する領域を顔画像領域として認識する。そして、認識した顔画像領域が撮像画面中に常に存在するように、パン・チルト機構23e及びズーミング機構23dを制御することにより被写体を追尾すればよい。
【0050】
<送受信手段>
送受信手段47は、カラオケ本体21とカラオケリモコン装置22との間で、データの送受信を行うための電子回路及びプログラムからなる。本実施形態では、赤外線通信により、カラオケ本体21とカラオケリモコン装置22との間で、データの送受信が行われる。
【0051】
<予約管理手段>
予約管理手段48は、利用者により楽曲検索手段22aの機能を用いて選曲され、送受信手段47を介して受信した当該選曲者の利用者情報(例えば利用者ID)及び選曲された楽曲IDを対応付けて予約待ち行列43aとしてRAM43に格納し、管理するためのプログラムである。なお、楽曲選択の表示や予約待ち行列43aの表示は、カラオケリモコン装置22の入出力表示部(図示せず)及び表示装置27のいずれか一方、あるいは双方で行うことができる。
【0052】
<ログイン利用者管理手段>
ログイン利用者管理手段49は、現に当該カラオケ演奏装置11にログインしている利用者を、利用者IDに基づき特定して管理するためのプログラムからなる。すなわち、ログイン利用者管理手段49では、利用者ID取得手段22cにより利用者IDが取得された場合に、この利用者IDに基づいてカラオケ演奏装置11にログインしている利用者を特定して管理する。取得した利用者IDは、選曲予約や顔画像データの比較を行う際に利用される。
【0053】
<顔画像識別記憶手段>
顔画像識別記憶手段50は、歌唱者撮影エリア(例えば、ステージ)にいる歌唱者の顔画像を識別するとともに、撮影された当該顔画像を撮影顔画像データ43bとしてRAM43に記憶するためのプログラムからなる。歌唱者の顔画像データを識別するためには、例えば、特開2000−2833号公報(特許文献2)に記載されているように、エッジ検出により、撮影視野内に存在する画像の輪郭を抽出する。そして、輪郭で囲まれた領域のうち所定の大きさの面積を有する領域を顔画像領域として認識する。続いて、顔画像領域内で、その輪郭、目、鼻、口の位置を利用して、被写体の顔画像の特徴を認識することにより、撮影した顔画像データを識別する。
【0054】
<利用者顔画像登録手段>
利用者顔画像登録手段51は、予め、利用者毎の顔画像データを利用者IDに紐付けして利用者顔画像データベース44cに登録するためのプログラムからなる。利用者の顔画像データは、例えば、撮影手段23の機能により取得することができる。撮影手段23の機能により取得された利用者の顔画像データは、利用者顔画像登録手段51の機能により、利用者IDに紐付けされて利用者顔画像データベース44cに登録される。なお、利用者IDは、利用者ID取得手段22cの機能により、ID媒体31から取得することができる。
【0055】
<顔画像比較手段>
顔画像比較手段52は、利用者IDに紐付けして選曲予約されたカラオケ楽曲が演奏されているとともに、撮影手段23により撮影が行われている場合に、撮影顔画像データ43bと、当該利用者IDに紐付けされた登録顔画像データとを比較して歌唱者を特定するためのプログラムからなる。例えば、撮影を所望して選曲予約されたカラオケ楽曲が演奏されると、予約待ち行列43aに記録された利用者IDに基づいて、利用者顔画像データベース44cに登録された当該利用者の顔画像データを登録顔画像データとして取得する。そして、撮影手段23の機能により撮影されて、顔画像識別記憶手段50により識別された歌唱者の顔画像データ(撮影顔画像データ43b)と、利用者顔画像データベース44cから取得した登録顔画像データとを比較し、両者の一致・不一致を判断して、歌唱者を特定する。両者の比較は、顔画像領域内における顔の輪郭、目、鼻、口の位置に基づいて行われる。具体的には、撮影顔画像データ43bと、登録顔画像データとにおいて、顔画像領域内における顔の輪郭、目、鼻、口の位置を比較してその一致度を数値化し、一致度数が所定の閾値以下の場合に、両者は異なるデータであると判断する。一方、一致度数が所定の閾値を超えていれば、両者は同一のデータであると判断する。
【0056】
この場合には、被写体追従手段55の機能により、特定された歌唱者の移動に追従してパン・チルト機構23eを作動させて、撮影手段23の撮影方向を歌唱者の移動位置に一致させる
【0057】
<撮像データ受信手段/撮影データ記憶手段>
撮像データ受信手段53は、撮影手段23からのビデオ信号を受信するための回路基板及びプログラムからなる。また、撮影データ記憶手段54は、撮影手段23により撮影され、撮像データ受信手段53により受信したビデオ信号と、マイクロホン24から入力された音声入力信号と、音楽再生制御手段59によりデジタル再生される演奏とを同期させて撮影データ43cを作成し、RAM43に記憶させるためのプログラムからなる。
【0058】
RAM43に記憶された撮影データ43cは、DVDドライブ等の記録装置及び書込ソフトウェアを用いてDVD等の記憶媒体に記憶したり、インターネット回線を介してサーバに蓄積させることによりウェブ配信したりすることができる。なお、このような撮影サービスは、カラオケ演奏装置11を利用したカラオケ楽曲の歌唱という基本サービスに付加するサービスであるため、一般的に有料となっていることが多い。そこで、撮影データ記憶手段54による撮影データ43cの作成及び記憶は、利用者の指示があった場合のみに行う構成とすることが好ましい。すなわち、利用者がカラオケリモコン装置22を操作することにより撮影データ43cの作成及び記憶を指示した場合に、撮影データ記憶手段54の機能により、撮影データ43cの作成及び記憶が行われる。
【0059】
<音楽再生制御手段>
音楽再生制御手段59は、楽曲IDに基づいて楽曲データベース44aから抽出された演奏データをデジタル再生するとともにアナログ変換してミキシングアンプ26に出力するための電子回路である。ミキシングアンプ26は、マイクロホン24から入力された歌唱者の歌唱音声信号と、音楽再生制御手段59から送出される演奏音声信号とをミキシングするとともに、アンプ機能により増幅してスピーカ25より出力させるための装置である。なお、本実施形態では、撮影データ記憶手段54において歌唱音声信号を利用するため、マイクロホン24からの歌唱音声信号がA/Dコンバータ58へ入力されている。
【0060】
<映像再生制御手段>
映像再生制御手段60は、カラオケ楽曲の演奏中に、映像データベース44bから抽出した映像データ及び楽曲データベース44aから抽出した楽曲データのうちの歌詞テロップデータ(歌詞文字データ)を、当該カラオケ楽曲の演奏データに同期させて表示装置27に出力するための電子回路である。この際、カラオケ楽曲の演奏進行に従って、歌詞文字が色変わりして表示される。
【0061】
<表示装置>
表示装置27は、カラオケ演奏時の映像、歌詞テロップ等を表示するための装置で、例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等により構成される。
【0062】
<不適切行為の撮影排除処理/第1の実施形態>
図2〜図4を参照して、本実施形態の不適切行為の撮影排除機能を有するカラオケシステムにおける不適切行為の撮影排除処理を説明する。図2は、不適切行為の撮影排除処理の第1の実施形態を示すフローチャート、図3は、不適切行為の撮影排除処理の第2の実施形態を示すフローチャートである。また、図4は、表示装置の表示画面に表示される警告メッセージの一例を示す模式図である。
【0063】
第1の実施形態に係る不適切行為の撮影排除処理では、予め利用者顔画像登録手段51の機能により、利用者IDに紐付けされた利用者の顔画像データが、利用者顔画像データベース44cに格納されているものとする(第2の実施形態においても同様)。
【0064】
第1の実施形態に係る不適切行為の撮影排除処理は、図2に示すように、まず、撮影が指示されたカラオケ楽曲の演奏が開始されたか否かを判断し(S1)、撮影が指示されたカラオケ楽曲の演奏が開始された場合には、撮影手段23の機能により撮影を開始する(S2)。なお、撮影開始時におけるビデオカメラは、ステージ等のデフォルト位置に存在する被写体を撮影するように、その向き及び画角が調整されている。また、撮影開始時に、パン・チルト機構23e及びズーミング機構23dを作動させて、歌唱者撮影エリアにいる歌唱者を探し出して、以降の処理を行ってもよい(第2の実施形態においても同様)。
【0065】
続いて、被写体追従手段55の機能により、撮影対象となる歌唱者の移動に追従するように、パン・チルト機構23e及びズーミング機構23dを作動させて、選曲予約を行った歌唱者の移動位置に撮影手段23の撮影方向を一致させるとともに、画角を一定に保つ(S3)。そして、不適切行為判断手段45の機能により、現に撮影対象となっている歌唱者の撮像体表面における生体温度の割合と基準値とを比較し(S4)、歌唱者の撮像体表面における生体温度の割合が基準値より小さいか否かを判断する(S5)。ここで、歌唱者の撮像体表面における生体温度の割合が基準値を超えている場合、すなわち、歌唱者が不適切行為を行っていると判断した場合には、撮影機能制御手段46の機能により撮影手段23の機能を停止させて、報知制御手段57の機能により、例えば図4に示すような報知を行うとともに(S6)、撮影を中止する(S7)。
【0066】
一方、歌唱者の撮像体表面における生体温度の割合が基準値より小さく、歌唱者が不適切行為を行っていないと判断した場合には、カラオケ楽曲の演奏が終了したか否かを判断し(S8)、カラオケ楽曲の演奏が終了するまでの間、上述した歌唱者追従処理(S3)以降の処理を繰り返し実行する。そして、カラオケ楽曲の演奏が終了すると、撮影を終了する(S9)。
【0067】
<不適切行為の撮影排除処理/第2の実施形態>
第2の実施形態に係る不適切行為の撮影排除処理は、図3に示すように、まず、撮影が指示されたカラオケ楽曲の演奏が開始されたか否かを判断し(S11)、撮影が指示されたカラオケ楽曲の演奏が開始された場合には、撮影手段23の機能により撮影を開始する(S12)。
【0068】
続いて、顔画像比較手段52の機能により、現に撮影手段23により撮影している歌唱者の顔画像データ(撮影顔画像データ43b)と、選曲予約を行った利用者の顔画像データ(登録顔画像データ)とを比較する(S13)。ところで、撮影開始直後には、ビデオカメラのデフォルト撮影位置であるステージ上に歌唱者がいるとは限らず、自らが選曲予約したカラオケ楽曲の演奏が開始されたことを認知した後にステージに上がったり、司会者に促されてステージに上がったりするため、撮影開始時(カラオケ楽曲の演奏開始時)には、歌唱者の顔画像データを取得することができない場合がある。そこで、撮影開始直後に顔画像データの比較を行うのではなく、所定時間経過後(例えば30秒経過後)に顔画像データの比較を行うことが好ましい。
【0069】
ここで、撮影顔画像データ43bと登録顔画像データの一致を確認し(S14)、撮影顔画像データ43bと登録顔画像データとが一致しない場合、すなわち、選曲予約を行った歌唱者が被写体となっていない場合には、報知制御手段57の機能により、その旨の報知を行うとともに(S15)、撮影機能制御手段46の機能により撮影手段23の機能を停止させて、撮影を中止する(S22)。
【0070】
一方、撮影顔画像データ43bと登録顔画像データとが一致している場合には、被写体追従手段55の機能により、撮影対象(選曲予約者)として特定された歌唱者の移動に追従するように、パン・チルト機構23e及びズーミング機構23dを作動させて、歌唱者の移動位置に撮影手段23の撮影方向を一致させるとともに、画角を一定に保つ(S16)。そして、現に撮影対象となっている歌唱者の撮像体表面における生体温度の割合と基準値とを比較し(S17)、歌唱者の撮像体表面における生体温度の割合が基準値より小さいか否かを判断する(S18)。ここで、歌唱者の撮像体表面における生体温度の割合が基準値を超えている場合、すなわち、歌唱者が不適切行為を行っていると判断した場合には、撮影機能制御手段46の機能により撮影手段23の機能を停止させて、報知制御手段57の機能により、例えば図4に示すような報知を行うとともに(S21)、撮影を中止する(S22)。
【0071】
一方、歌唱者の撮像体表面における生体温度の割合が基準値より小さく、歌唱者が不適切行為を行っていないと判断した場合には、カラオケ楽曲の演奏が終了したか否かを判断し(S19)、カラオケ楽曲の演奏が終了するまでの間、上述した歌唱者追従処理(S16)以降の処理を繰り返し実行する。そして、カラオケ楽曲の演奏が終了すると、撮影を終了する(S20)。
【0072】
このように、本実施形態の不適切行為の撮影排除機能を有するカラオケシステムでは、歌唱者がデフォルト位置から移動した場合であっても、その移動に追従して撮影手段23の撮影方向を変更するので、動きのある歌唱者に対しても、撮像体表面の体表温度を適切に検知して、不適切行為の撮影を効果的に排除することができる。また、撮影を所望して選曲予約を行った歌唱者が適切に歌唱を行っている場合のみに、その歌唱姿態の画像を録画することができるので、撮影を所望した歌唱者の要求を十分に満足させることができる。
【0073】
<他の実施形態>
本発明の不適切行為の撮影排除機能を有するカラオケシステム及びその周辺装置を構成する機器や手段は上述したものに限定されず、その利用目的に応じて、必要な機器や手段のみの構成としたり、適宜他の機器や手段を付加したりすることができる。また、各手段をそれぞれ別個のものとして構成するのではなく、複数の機能を統合した手段として構成してもよい。
【0074】
<ネットワークカラオケシステム>
また、上述した実施形態は、カラオケ演奏装置11をスタンドアロンで使用した例を示しているが、各カラオケ店舗等に設置されたカラオケ演奏装置11を端末装置とし、インターネット回線等を用いて、端末装置とホスト装置とをネットワーク接続した構成とすることもできる。この場合には、ホスト装置において、利用者IDや、これに紐付けされた利用者の顔画像データ等を集中管理することにより、ネットワーク接続された各カラオケ演奏装置11において同様のサービスを提供することができる。
【符号の説明】
【0075】
11 カラオケ演奏装置
21 カラオケ本体
22 カラオケリモコン装置
22a 楽曲検索手段
22b 楽曲索引データベース
22c 利用者ID取得手段
23 撮影手段
23a 撮像レンズ
23b 撮像素子
23c フォーカシング機構
23d ズーミング機構
23e パン・チルト機構
23f 赤外線検出センサ
24 マイクロホン
25 スピーカ
26 ミキシングアンプ
27 表示装置
31 ID媒体
41 中央制御手段
42 ROM
43 RAM
43a 予約待ち行列
43b 撮影顔画像データ
43c 撮影データ
44 HDD
44a 楽曲データベース
44b 映像データベース
44c 利用者顔画像データベース
44d 判断基準値
44e 警告メッセージ
45 不適切行為判断手段
46 撮影機能制御手段
47 送受信手段
48 予約管理手段
49 ログイン利用者管理手段
50 顔画像識別記憶手段
51 利用者顔画像登録手段
52 顔画像比較手段
53 撮像データ受信手段
54 撮影データ記憶手段
55 被写体追従手段
56 被写体温度検知手段
57 報知制御手段
58 A/Dコンバータ
59 音楽再生制御手段
60 映像再生制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歌唱者の不適切行為を識別して、その撮影を排除するためのカラオケシステムであって、撮影手段と、被写体追従手段と、被写体温度検知手段と、不適切行為判断手段と、撮影機能制御手段と、を備え、
前記撮影手段は、少なくともパン・チルト機構を有し、
前記被写体追従手段は、歌唱者の移動に追従して前記パン・チルト機構を作動させて、前記撮影手段の撮影方向を前記歌唱者の移動位置に一致させ、
前記被写体温度検知手段は、任意のカラオケ楽曲が演奏されるとともに、前記撮影手段による撮影が行われると、歌唱者撮影エリアにいる歌唱者の体表温度を検知し、
前記不適切行為判断手段は、前記歌唱者の撮像体表面における生体温度の割合が所定の基準値を超えた場合に、不適切行為が行われていると判断し、
前記撮影機能制御手段は、不適切行為が行われていると判断された場合には、前記撮影手段の機能を停止させる、
ことを特徴とする不適切行為の撮影排除機能を有するカラオケシステム。
【請求項2】
顔画像識別記憶手段と、利用者顔画像登録手段と、顔画像比較手段と、をさらに備え、
前記顔画像識別記憶手段は、歌唱者撮影エリアにいる歌唱者の顔画像を識別するとともに、撮影された当該顔画像を撮影顔画像データとして所定の記憶部に記憶し、
前記利用者顔画像登録手段は、予め、利用者毎の顔画像データを利用者IDに紐付けして利用者顔画像データベースに登録し、
前記顔画像比較手段は、利用者IDに紐付けして選曲予約されたカラオケ楽曲が演奏されているとともに、前記撮影手段により撮影が行われている場合に、前記撮影顔画像データと、当該利用者IDに紐付けされた登録顔画像データとを比較して歌唱者を特定し、
前記被写体追従手段は、前記特定された歌唱者の移動に追従して前記パン・チルト機構を作動させて、前記撮影手段の撮影方向を前記歌唱者の移動位置に一致させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の不適切行為の撮影排除機能を有するカラオケシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−256643(P2010−256643A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107241(P2009−107241)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(390004710)株式会社第一興商 (537)
【Fターム(参考)】