説明

両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンの製造方法

【課題】
高純度の両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンを生産性良く製造する方法を提供する。
【解決手段】
両末端ジオルガノハイドロジェンシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンと(メタ)アクリル酸アリルのヒドロシリル化反応による両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンの製造方法において、副生した片末端が(メタ)アクリロキシプロピル基で封鎖され、他末端が(メタ)アクリロキシ基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンと両末端(メタ)アクリロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンを加水分解し、生成したシラノール末端ジオルガノポリシロキサン同士を縮合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンの製造方法に関する。さらに詳しくは、両末端ジオルガノハイドロジェンシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンと(メタ)アクリル酸アリルのヒドロシリル化反応による両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンの製造方法において、副生物である、片末端が(メタ)アクリロキシプロピル基で封鎖され、他末端が(メタ)アクリロキシ基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンと、両末端(メタ)アクリロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンを加水分解し、生成したシラノール末端ジオルガノポリシロキサン同士を脱水縮合させることによる、高純度の両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンの製造方法に関する。さらには、より高重合度の両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
末端封鎖剤として1,3-ジ(メタクリロキシプロピル)テトラメチルジシロキサンを用いて酸触媒存在下にオクタメチルシクロテトラシロキサンを平衡重合することによる両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンの製造方法は公知である(例えば、非特許文献1)。
【0003】
この製造方法で使用する1,3-ジ(メタクリロキシプロピル)テトラメチルジシロキサンは、通常メタクリロキシプロピルジメチルクロロシランの加水分解によって製造される。メタクリロキシプロピルジメチルクロロシランはメタクリル酸アリルとジメチルハイドロジェンクロロシランのヒドロシリル化反応で製造されるが、この反応は極めてゲル化が起こりやすいという製造上の問題点があった。また、高純度品を得るには蒸留精製が必須であるが、蒸留時にも極めてゲル化しやすいため、1,3-ジ(メタクリロキシプロピル)テトラメチルジシロキサンを工業的に大量生産するには困難が伴っていた。
【0004】
他方、両末端ジオルガノハイドロジェンシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンと(メタ)アクリル酸アリルをヒドロシリル化反応することによる両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンの製造方法も報告されているが、この場合はプロペンと(メタ)アクリロキシシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンを副生する反応が生起し、反応生成物中の目的とする両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンの含有率は約50%程度であるという問題がある(非特許文献2, 非特許文献3, 特許文献1)。
【0005】
【化1】

【0006】
上記副反応を防ぐため、特許文献1には、ハイドロジェンシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンとメタクリル酸アリロキシエチルをヒドロシリル化反応させることによる製造方法が提案されている。しかしながら、メタクリル酸アリロキシエチルはメタクリル酸アリルより入手し難く、かつ、高沸点のためヒドロシリル化反応後に加熱減圧下でも除去し難く、場合によってはゲル化するという問題がある。
【0007】
【非特許文献1】Gol'din,G.S.; Muzychenko,T.A.; Averbakh,K.O.; Fedotov,N.S.; Mironov,V.F.USSR.Zhurnal Obshchei Khimii(1975),45(11),2451-4)
【非特許文献2】Speier, J.L.et al., J.Am.Chem.Soc.,79,1974(1957)
【非特許文献3】Ryan, J.W.et al., J.Am.Chem.Soc.,82,3601(1960)
【特許文献1】特開昭61-50988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このため、本発明者は、かかる問題点のない新規な製造方法を開発すべく鋭意研究した結果、高純度の両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンを生産性良く製造することができる新規な製造方法を発明するに至った。
本発明の目的は、容易に入手できる(メタ)アクリル酸アリルと両末端ジオルガノハイドロジェンシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンとのヒドロシリル化反応によりながらも、副生した(メタ)アクリロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンを有効活用することにより、高純度の両末端(メタ)アクリロキシプロピルシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンを生産性良く製造する方法を提供することにある。また、より高重合度の両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンを生産性良く製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、下記製造方法により達成される。
[1] 構造式(1):H(R)2SiO[(R1)2SiO]nSi(R)2H
(式中、Rは脂肪族不飽和結合を有しない一価炭化水素基、R1は脂肪族不飽和結合を有しない一価炭化水素基、nは0〜50である)で示される両末端ジオルガノハイドロジェンシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンと
式(2):CH2=C(R2)COOCH2CH=CH2
(式中、R2は水素原子又はメチル基である)で示される(メタ)アクリル酸アリルとをヒドロシリル化反応させることによる、
構造式(3): CH2=C(R2)COOCH2CH2CH2(R)2SiO[(R1)2SiO]nSi(R)2CH2CH2CH2OOC(R2)C=CH2
(式中、R、R1、R2、nは前記どおりである)で示される両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンの製造方法において、
(1)副生した構造式(4):
CH2=C(R2)COOCH2CH2CH2(R)2SiO[(R1)2SiO]nSi(R)2OOC(R2)C=CH2
(式中、R、R1、R2、nは前記どおりである)で示される片末端(メタ)アクリロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンと構造式(5):
CH2=C(R2)COO(R)2SiO[(R1)2SiO]nSi(R)2 OOC(R2)C=CH2
(式中、R、R1、R2、nは前記どおりである)で示される両末端(メタ)アクリロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンを加水分解し、(2)生成した構造式(6): CH2=C(R2)COOCH2CH2CH2(R)2SiO[(R1)2SiO]nSi(R)2OH
(式中、R、R1、R2、nは前記どおりである)で示される片末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサンと構造式(7): HO(R)2SiO[(R1)2SiO]nSi(R)2OH
(式中、R、R1、R2、nは前記どおりである)で示される両末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサンを縮合させて構造式(3)で示される両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンに変換することを特徴とする、両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンの製造方法。
[2] ヒドロシリル化反応の際に、アリル基/ケイ素原子結合水素原子の当量比を1以上とすることを特徴とする、[1]に記載の製造方法。
[3] ヒドロシリル化反応、ヒドロシリル化反応生成物の加水分解反応、及び、両末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサンの脱水縮合反応を、重合禁止剤及び/又は有機溶剤の存在下で行うことを特徴とする、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4] ヒドロシリル化反応触媒と重合禁止剤と必要により有機溶剤の存在下でヒドロシリル化反応を行い、その際に、(メタ)アクリル酸アリルとヒドロシリル化反応触媒と重合禁止剤と必要により有機溶剤の混合物中に、両末端ジオルガノハイドロジェンシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンを投入することを特徴とする、[1]又は[2]に記載の製造方法。

[5] ヒドロシリル化反応させる際に、ジオルガノハイドロジェンアシロキシシランを併存させることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6] ジオルガノハイドロジェンアシロキシシシランがジメチルハイドロジェンアセトキシシランであることを特徴とする、[5]に記載の製造方法。

[7] ヒドロシリル化反応生成物の加水分解を、アルカリ金属の水酸化物もしくは炭酸塩、または、アルカリ土類金属の水酸化物もしくは炭酸塩の存在下で行うことを特徴とする、[1]に記載の製造方法。
[8] 両末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサンの脱水縮合反応を、酸触媒の存在下で行うことを特徴とする、[1]または[7]に記載の製造方法。

[9] 両末端ジオルガノハイドロジェンシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンが、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンであり、(メタ)アクリル酸アリルがメタクリル酸アリルであり、両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンが両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジメチルポリシロキサンであることを特徴とする、[1]又は[6]に記載の製造方法。
【0010】
上記課題は、さらに下記製造方法により達成される。
[10] [1]の製造方法で得られた両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンとジオルガノシクロオリゴシロキサン及び/又は両末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサンとを、酸触媒を用いて平衡化共重合することを特徴とする、重合度が増大した両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンの製造方法。
[11] 両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンが両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジメチルポリシロキサンであり、ジオルガノシクロオリゴシロキサンがジメチルシクロオリゴシロキサンであり、両末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサンが両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサンであることを特徴とする、[10]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、容易に入手できる(メタ)アクリル酸アリルと両末端ジオルガノハイドロジェンシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンとのヒドロシリル化反応によりながらも、高純度の両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンを生産性良く製造することができる。また、得られた両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンを末端封鎖剤として重合して、より高重合度の両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンを生産性良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の製造方法は、 構造式(1):H(R)2SiO[(R1)2SiO]nSi(R)2H
(式中、Rは脂肪族不飽和結合を有しない一価炭化水素基、R1は脂肪族不飽和結合を有しない一価炭化水素基、nは0〜50である)で示される両末端ジオルガノハイドロジェンシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンと
式(2):CH2=C(R2)COOCH2CH=CH2
(式中、R2は水素原子またはメチル基である)で示される(メタ)アクリル酸アリルとをヒドロシリル化反応させることによる、
構造式(3): CH2=C(R2)COOCH2CH2CH2(R)2SiO[(R1)2SiO]nSi(R)2CH2CH2CH2OOC(R2)C=CH2
(式中、R、R1、R2、nは前記どおりである)で示される両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンの製造方法において、
(1)副生した構造式(4):
CH2=C(R2)COOCH2CH2CH2(R)2SiO[(R1)2SiO]nSi(R)2OOC(R2)C=CH2
(式中、R、R1、R2、nは前記どおりである)で示される片末端(メタ)アクリロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンと構造式(5):
CH2=C(R2)COO(R)2SiO[(R1)2SiO]nSi(R)2OOC(R2)C=CH2
(式中、R、R1、R2、nは前記どおりである)で示される両末端(メタ)アクリロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンを加水分解し、
(2)生成した構造式(6): CH2=C(R2)COOCH2CH2CH2(R)2SiO[(R1)2SiO]nSi(R)2OH
(式中、R、R1、R2、nは前記どおりである)で示される片末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサンと構造式(7): HO(R)2SiO[(R1)2SiO]nSi(R)2OH
(式中、R、R1、R2、nは前記どおりである)で示される両末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサンを縮合させることにより、構造式(3)で示される両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンに変換することを特徴とする。
【0013】
構造式(1):H(R)2SiO[(R1)2SiO]nSi(R)2H
(式中、Rは脂肪族不飽和結合を有しない一価炭化水素基、R1は脂肪族不飽和結合を有しない一価炭化水素基、nは0〜50である)で示される両末端ジオルガノハイドロジェンシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンは、構造式(3):
CH2=C(R2)COOCH2CH2CH2(R)2SiO[(R1)2SiO]nSi(R)2CH2CH2CH2OOC(R2)C=CH2
(式中、R、R1、R2、nは前記どおりである)で示される両末端(メタ)アクリロキシプロピル基(すなわち、アクリロキシプロピル基又はメタアクリロキシプロピル基)封鎖ジオルガノポリシロキサンを製造するための主原料である。通常、平衡化重合方法により製造される。したがって、構造式(1)中のnは平均値である。
式(2):CH2=C(R2)COOCH2CH=CH2
(式中、R2は水素原子またはメチル基である)で示される(メタ)アクリル酸アリル(すなわち、アクリル酸アリル又はメタアクリル酸アリル)のアリル基が、ヒドロシリル化反応により、分子鎖両端の水素原子結合ケイ素原子に付加する。その結果、式:CH2=C(R2)COOCH2CH2CH2で示される(メタ)アクリルプロポキシ基がジオルガノポリシロキサン末端のケイ素原子に結合する。
【0014】
構造式(1)中、Rは同じか異なる脂肪族不飽和結合を有しない一価炭化水素基、すなわち、脂肪族不飽和結合を有しない一価炭化水素基である。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基が例示される。製造容易性の点で、炭素原子数8以下のアルキル基、ついでフェニル基が好ましく、炭素原子数8以下のアルキル基のうちでもメチル基がもっとも好ましい。
【0015】
構造式(1)中、R1は同じか異なる脂肪族不飽和結合を有しない一価炭化水素基である。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基が例示される。製造容易性の点で、同一ケイ素原子に結合しているR1の一方がメチル基であり、R1の他方が炭素原子数8以下のアルキル基またはフェニル基であるものが好ましく、炭素原子数8以下のアルキル基のうちでもメチル基であるものがもっとも好ましい。
【0016】
構造式(1)中の主鎖として、ジメチルポリシロキサン、メチルアルキル(メチルを除く)ポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルアルキル(メチルを除く)シロキサンコポリマー、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサンコポリマーが例示される。構造式(3)中の主鎖も同様である。
【0017】
構造式(1)中のnは0〜50である。(メタ)アクリル酸アリルを分子鎖両端の水素原子結合ケイ素原子に付加する際に、副反応として生じる(メタ)アクリロキシ基のラジカル重合反応を抑制するためにはnが大きい方が好ましい。しかし、ヒドロシリル化反応後に副生成物である末端(メタ)アクリロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンを加水分解反応する際、この加水分解反応の反応性を向上させ、かつ、加水分解反応後に有機層と水層との分離性を向上させるためにはnが小さい方が好ましい。これらを考え合わせると、0以上50以下であり、0以上20以下が好ましい。
【0018】
構造式(1)で示される両末端ジオルガノハイドロジェンシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンと式(2)で示される(メタ)アクリル酸アリルとをヒドロシリル化反応させるため、ヒドロシリル化反応触媒を使用する。
ヒドロシリル化反応用触媒であれば、特に制限されず、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、ニッケルなどの第VIII族遷移金属あるいはそれらの化合物が例示される。このような化合物の具体例として、第VIII族遷移金属のクロロ錯体、オレフィン錯体、アルデヒド錯体、ケトン錯体、ホスフィン錯体、スルフィド錯体、ニトリル錯体などを挙げることができる。
【0019】
これらのうちでも、白金系触媒が好ましく、0価白金のオレフィン錯体、0価白金のビニルシロキサン錯体、2価白金のオレフィン錯体、アルデヒド錯体もしくはケトン錯体、2価白金のハロゲン化物、塩化白金酸、炭素担持白金微粉末、シリカ担持白金微粉末、白金黒が例示される。これらのうちでは反応活性の点で、白金の1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体、塩化白金酸の1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体、白金のオレフィン錯体、塩化白金酸がより好ましい。
【0020】
このヒドロシリル化反応段階で副反応として起こる(メタ)アクリロキシ基の重合反応を防止するために、反応系に、フェノチアジン,ヒンダードフェノール系化合物,アミン系化合物,キノン系化合物などの重合禁止剤を添加しておくことが好ましい。このような重合禁止剤の種類と量は、それらの添加によってヒドロシリル化反応の進行を妨げることなく、(メタ)アクリロキシ基、すなわち、アクリロキシ基またはメタアクリロキシ基の重合反応を防止することができれば特に限定されない。また、この重合反応を抑制するために、このヒドロシリル化反応は、酸素ガスを微量含有する窒素ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0021】
このヒドロシリル化反応は、無溶媒で行うことができるが、溶媒存在下でも行うことができる。使用できる溶媒としては、ベンゼン、トルエン,キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン,ヘプタン,シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;テトラヒドロフラン,ジエチルエーテル等のエーテル類;アセトン,メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル,酢酸ブチル等のカルボン酸エステル類が例示される。
【0022】
式(2)で示される(メタ)アクリル酸アリルのアリル基と、構造式(1)で示される両末端ジオルガノハイドロジェンシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンのヒドロシリル基との当量比([アリル]/[SiH])は1.0以上であることが非常に好ましい。この値が1.0未満の場合は、片末端にヒドロシリル基が存在し、他末端に(メタ)アクリロキシプロピル基が存在するジオルガノポリシロキサンが混入するからである。(メタ)アクリル酸アリルが多すぎても無駄になるので、該当量比は、1.1〜1.3が好ましい。
両末端ジオルガノハイドロジェンシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンの両末端のヒドロシリル基に確実に(メタ)アクリル酸アリルのアリル基を付加反応させるためには、化学量論量より過剰の(メタ)アクリル酸アリル、重合禁止剤、ヒドロシリル化反応触媒及び必要に応じて溶媒からなる溶液を調製しておき、加熱下撹拌しながら、構造式(1)で示されるジオルガノハイドロジェンシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンを滴下するという方法が望ましい。
【0023】
これは、ジオルガノハイドロジェンシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンと(メタ)アクリル酸アリルの混合物にヒドロシリル化触媒を添加した場合には、一度にヒドロシリル化反応が開始して、反応温度の制御が困難となり、極めて危険であると共に、副反応である(メタ)アクリロキシ基の重合反応が起こりやすくなり、反応系がゲル化しやすくなるからである。また、ジオルガノハイドロジェンシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンとヒドロシリル化反応触媒の混合物に、加熱しながら(メタ)アクリル酸アリルを滴下した場合には、副反応である脱プロペン化反応によって副生したプロペンにジオルガノハイドロジェンシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンが付加し、プロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンが副生して好ましくないからである。
【0024】
このヒドロシリル化反応において副生成物として生じる(メタ)アクリロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサン中の(メタ)アクリロキシ基は、次段階の加水分解反応において対応するシラノール基に変換され、本製造方法による最終生成物中には導入されない。従って、このヒドロシリル化反応における副反応をなるべく抑制して(メタ)アクリロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンの生成率を減らすことが、両末端(メタ)アクリロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンの収率を向上させるために重要である。
【0025】
このための添加剤として、特開2000-256374号公報で報告されているようにジオルガノハイドロジェンアシロキシシラン、とりわけ、式(8): R32Si(H)OOCR4 (式中、R3はアルキル基、フェニル基又はアルコキシ基であり、R4は水素原子、アルキル基、ハロアルキル基又はフェニル基である)で示されるジオルガノハイドロジェンアシロキシシランが有効である。
【0026】
具体例として、ジオルガノハイドロジェンホルミルオキシシラン、ジオルガノハイドロジェンアセトキシシラン、ジオルガノハイドロジェンプロピオニルオキシシラン、ジオルガノハイドロジェンブチリルオキシシラン、ジオルガノハイドロジェンラウロイロキシシラン、ジオルガノハイドロジェンステアロイロキシシラン、ジオルガノハイドロジェンベンゾイロキシシラン、ジオルガノハイドロジェンクロロアセトキシシラン、ジオルガノハイドロジェンジクロロアセトキシシラン、ジオルガノハイドロジェントリフルオロアセトキシシラン、ジオルガノハイドロジェンベンゾイルオキシシランを挙げることができる。
【0027】
更に具体的には、ジオルガノハイドロジェンホルミルオキシシランとして、例えば、ジメチルハイドロジェンホルミルオキシシラン、ジエチルハイドロジェンホルミルオキシシラン、メチルフェニルハイドロジェンホルミルオキシシラン、メチルメトキシハイドロジェンホルミルオキシシラン、メチルエトキシハイドロジェンホルミルオキシシラン、メチルイソプロポキシハイドロジェンホルミルオキシシラン、ジフェニルハイドロジェンホルミルオキシシランがある。
【0028】
ジオルガノハイドロジェンアセトキシシランとして、例えば、ジメチルハイドロジェンアセトキシシラン、ジエチルハイドロジェンアセトキシシラン、メチルフェニルハイドロジェンアセトキシシラン、メチルメトキシハイドロジェンアセトキシシラン、メチルエトキシハイドロジェンアセトキシシラン、メチルイソプロポキシハイドロジェンアセトキシシラン、ジフェニルハイドロジェンアセトキシシランがある。
【0029】
ジオルガノハイドロジェンプロピオニルオキシシランとして、例えば、ジメチルハイドロジェンプロピオニルオキシシラン、ジエチルハイドロジェンプロピオニルオキシシラン、メチルフェニルハイドロジェンプロピオニルオキシシラン、メチルメトキシハイドロジェンプロピオニルオキシシラン、メチルエトキシハイドロジェンプロピオニルオキシシラン、メチルイソプロポキシハイドロジェンプロピオニルオキシシラン、ジフェニルハイドロジェンプロピオニルオキシシランがある。
【0030】
ジオルガノハイドロジェンブチリルオキシシランとして、例えば、ジメチルハイドロジェンブチリルオキシシラン、ジエチルハイドロジェンブチリルオキシシラン、メチルフェニルハイドロジェンブチリルオキシシラン、メチルメトキシハイドロジェンブチリルオキシシラン、メチルエトキシハイドロジェンブチリルオキシシラン、メチルイソプロポキシハイドロジェンブチリルオキシシラン、ジフェニルハイドロジェンブチリルオキシシランがある。
【0031】
この他、ジオルガノハイドロジェンラウロイロキシシランとして、例えば、ジメチルハイドロジェンラウロイロキシシラン、メチルフェニルハイドロジェンラウロイロキシシラン、ジフェニルハイドロジェンラウロイロキシシラン、メチルメトキシハイドロジェンラウロイロキシシラン、メチルエトキシハイドロジェンラウロイロキシシランがある。
【0032】
ジオルガノハイドロジェンステアロイロキシシランとして、例えば、ジメチルハイドロジェンステアロイロキシシラン、メチルフェニルハイドロジェンステアロイロキシシラン、ジフェニルハイドロジェンステアロイロキシシラン、メチルメトキシハイドロジェンステアロイロキシシラン、メチルエトキシハイドロジェンステアロイロキシシランがある。
【0033】
ジオルガノハイドロジェンベンゾイルオキシシランとして、例えば、ジメチルハイドロジェンベンゾイルオキシシラン、メチルフェニルハイドロジェンベンゾイルオキシシラン、ジフェニルハイドロジェンベンゾイルオキシシラン、メチルメトキシハイドロジェンベンゾイルオキシシラン、メチルエトキシハイドロジェンベンゾイルオキシシランがある。
【0034】
ジオルガノハイドロジェンクロロアセトキシシランとして、例えば、ジメチルハイドロジェンクロロアセトキシシラン、メチルフェニルハイドロジェンクロロアセトキシシラン、ジフェニルハイドロジェンクロロアセトキシシラン、メチルメトキシハイドロジェンクロロアセトキシシラン、メチルエトキシハイドロジェンクロロアセトキシシランがある。
【0035】
ジオルガノハイドロジェンジクロロアセトキシシランとして、例えば、ジメチルハイドロジェンジクロロアセトキシシラン、メチルフェニルハイドロジェンジクロロアセトキシシラン、ジフェニルハイドロジェンジクロロアセトキシシラン、メチルメトキシハイドロジェンジクロロアセトキシシラン、メチルエトキシハイドロジェンジクロロアセトキシシラン、メチルフェニルハイドロジェントリクロロアセトキシシラン、ジフェニルハイドロジェントリクロロアセトキシシラン、メチルメトキシハイドロジェントリクロロアセトキシシラン、メチルエトキシハイドロジェントリクロロアセトキシシランがある。
【0036】
ジオルガノハイドロジェントリフルオロアセトキシシランとして、例えば、ジメチルハイドロジェントリフルオロアセトキシシラン、メチルフェニルハイドロジェントリフルオロアセトキシシラン、ジフェニルハイドロジェントリフルオロアセトキシシラン、メチルメトキシハイドロジェントリフルオロアセトキシシラン、メチルエトキシハイドロジェントリフルオロアセトキシシランがある。
【0037】
ジオルガノハイドロジェンベンゾイルオキシシランとして、例えば、ジメチルハイドロジェンベンゾイルオキシシラン、メチルフェニルハイドロジェンベンゾイルオキシシラン、ジフェニルハイドロジェンベンゾイルオキシシラン、メチルメトキシハイドロジェンベンゾイルオキシシラン、メチルエトキシハイドロジェンベンゾイルオキシシランがある。
【0038】
上記添加剤は、構造式(1)で示される両末端ジオルガノハイドロジェンシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンに添加してもよく、式(2)で示される(メタ)アクリル酸アリルに添加してもよく、両方に添加してもよい。添加量は、その効果を発揮させるために適切な量であれば良く、特に制限はない。しかし微量ではその効果が発揮できないため、具体的には、使用する(メタ)アクリル酸アリルのモル数に対して0.1モル%以上50モル%以下であることが好ましく、1モル%以上50モル%以下であることがさらに好ましい。
【0039】
ジオルガノハイドロジェンアシロキシシラン自体も(メタ)アクリル酸アリルとヒドロシリル化反応し、(メタ)アクリロキシプロピルジオルガノアシロキシシランが生成する。しかし、次の加水分解工程で(メタ)アクリロキシプロピルジオルガノシラノールに変換され、最後の縮合反応工程で両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンに取り込まれるので、大量に添加しても何ら生成物の純度を低下させることはない。
【0040】
ヒドロシリル反応温度は、通常、30〜120℃であり、好ましくは40〜80℃である。120℃より高い温度ではメタクリロキシ基の重合反応が起こりやすく、30℃未満ではヒドロシリル化反応自体が著しく遅くなるからである。本反応では、上記のようにして得られた反応混合物から、過剰の未反応(メタ)アクリル酸アリル等の低沸点物や使用した有機溶媒を、加熱減圧下で除去してヒドロシリル化反応生成物を単離する。この加熱減圧段階で副反応として起こる(メタ)アクリロキシプロピル基の重合反応を防止するために、反応系に上記したような重合禁止剤を添加しておくことが好ましい。
【0041】
以上のようにして得られたヒドロシリル化反応生成物は、主として、構造式(1) で示される両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサン、構造式(4)で示される片末端が(メタ)アクリロキシプロピル基で封鎖され、他末端が(メタ)アクリロキシ基で封鎖されたジオルガノポリシロキサン、構造式(5)で示される両末端(メタ)アクリロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンから成る。
ヒドロシリル化反応の選択性改良剤としてジオルガノハイドロジェンアシロキシシランを添加した場合には、上記に加え、(メタ)アクリロキシプロピルジオルガノアシロキシシランも生成する。
【0042】
このヒドロシリル化反応生成物中から(メタ)アクリロキシ基を除去するために、構造式(4)で示される片末端が(メタ)アクリロキシプロピル基で封鎖され、他末端が(メタ)アクリロキシ基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンと、構造式(5)で示される両末端(メタ)アクリロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンの加水分解反応を行う。
【0043】
その際に、上記のヒドロシリル化反応生成物を、アルカリ金属の水酸化物もしくは炭酸塩、または、アルカリ土類金属の水酸化物もしくは炭酸塩の存在下で加水分解することが好ましい。このアルカリ金属水酸化物として、具体的には水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムが例示され、アルカリ土類金属水酸化物として、具体的には水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムが例示される。アルカリ金属の炭酸塩として、具体的には、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウムが例示され、アルカリ土類金属の炭酸塩として、具体的には、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムが例示される。
【0044】
これらのアルカリ金属の水酸化物もしくは炭酸塩、または、アルカリ土類金属の水酸化物もしくは炭酸塩は、上記ヒドロシリル化反応の際の副反応で生じる(メタ)アクリロキシシロキシ基に対して1〜5倍当量併存させることが好ましく、1〜3倍当量併存させることがさらに好ましい。
また、この加水分解反応を促進するための触媒として、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジン、キノリン、ジエチルヒドロキシルアミン等のアミン化合物を存在させてもよい。
【0045】
この加水分解反応段階で副反応として起こる(メタ)アクリロキシ基の重合反応を防止するために、反応系に上記したような重合禁止剤を存在させておくことが好ましい。
【0046】
この加水分解反応は無溶媒下でも進行するが、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;クロロホルム、四塩化炭素、塩化メチレン等の塩素化炭化水素等の有機溶媒の存在下で行ってもよい。
【0047】
この加水分解の反応温度は、−10〜100℃であることが好ましく、0〜80℃であることがより好ましい。
【0048】
この加水分解反応の進行は、核磁気共鳴(NMR)分析等の分析方法により(メタ)アクリロキシシロキシ基の消失を確認することができるが、ヒドロシリル化反応生成物の分子量が比較的小さい場合にはガスクロマトグラフィーによっても確認することができる。
【0049】
上記の加水分解反応を、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の強酸触媒存在下に行い、副生した(メタ)アクリル酸、すなわち、アクリル酸またはメタアクリル酸を上記のアルカリ金属の水酸化物もしくは炭酸塩、または、アルカリ土類金属の水酸化物もしくは炭酸塩で中和しても良い。この操作によって副生した(メタ)アクリル酸は対応する塩に変換され、有機層から水層に移行し、分液操作によって容易に除去することができる。
【0050】
以上のようにして得られた加水分解生成物は、目的物である構造式(3)で示される両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンの他に、構造式(6)で示される片末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサンと構造式(7)で示される両末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサンから成る。ヒドロシリル化反応の選択性改良剤としてジオルガノハイドロジェンアシロキシシランを添加した場合には、上記化合物に加え、(メタ)アクリロキシプロピルジオルガノシラノールも生成する。
【0051】
構造式(6)で示される片末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサンと構造式(7)で示される両末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサン中のシラノール基を除去するためにシラノール基の脱水縮合反応を行う。この脱水縮合反応を促進させるために、通常は酸触媒を添加する。酸触媒として、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸、硫酸、塩酸等の強酸が好ましい。
【0052】
この縮合反応段階で副反応として起こる(メタ)アクリロキシ基の重合反応を防止するために、反応系に上記したような重合禁止剤を併存させることが好ましい。
【0053】
この縮合反応は、無溶媒でも進行するが、水と共沸混合物を生成する非反応性の有機溶媒中で行うことが好ましく、常圧または減圧下で加熱することにより副生する水を共沸脱水することが好ましい。使用できる有機溶媒として、具体的にはヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が例示される。
【0054】
この加水分解の反応温度は−10〜100℃であることが好ましく、30〜80℃であることがより好ましい。
【0055】
縮合反応の進行は、縮合水の生成量によってモニタリング(監視)できる。また、NMR分析によってシラノール基の消失をモニタリング(監視)してもよい。加水分解物の分子量が比較的小さい場合には、ガスクロマトグラフィーによってもモニタリング(監視)することができる。
【0056】
縮合反応後、この反応混合物に塩基性化合物を添加して、縮合反応に使われた酸触媒を中和する。
そのための塩基性化合物として、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの塩基性無機塩;トリエチルアミン、トリブチルアミン、アンモニア、ピリジンなどの有機塩基を用いることができる。生成塩の濾過性、安全性の点から、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸ナトリウムが望ましい。これら塩基性化合物の使用量は中和当量以上であり、縮合反応に使われた酸触媒に対して1当量以上10当量以下が例示される。この場合、中和反応の温度、時間は特に制限されない。
【0057】
中和反応後に、生成した中和塩と過剰の塩基性化合物を濾別した後、濾液中の低沸点物や溶媒を加熱減圧下で除去する。あるいは生成した中和塩と過剰の塩基性化合物を水洗して除去した後に、有機層から低沸点物や溶媒を加熱減圧下で除去することにより、目的の両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンを得ることができる。
【0058】
この加熱減圧段階で副反応として起こる(メタ)アクリロキシ基の重合反応を防止するために、反応系に上記したような重合禁止剤を併存させるこことが好ましい。
【0059】
このようにして合成した両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンは、より高重合度の両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンを、平衡化重合反応により製造する際に、末端封鎖剤として有用である。
【0060】
このようにして合成した両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンを末端封鎖剤とし、酸触媒を用いて、ジオルガノシクロオリゴシロキサン及び/又は両末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサンを平衡化重合することにより、末端封鎖剤として用いた両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンよりも重合度が増大した両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンを合成することができる。ただし、重合反応原料として上記両末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサンを用いる場合には、分子鎖末端にシラノール基が残存しないように、触媒存在下にシラノール基を脱水縮合させる必要がある。
【0061】
そのためのジオルガノシクロオリゴシロキサンは、酸触媒による開環重合に適したものであれよく、特に制限されない。下記一般式で示される環状体が例示される。
【化2】

【0062】
式中、Meはメチル基であり、Rは水素原子、水酸基、炭素原子数2〜30の一価アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数2〜30の一価弗化アルキル基、アミノ置換アルキル基及びアルコキシ基から選択される基である。
【0063】
は、具体的には、水素原子;水酸基;エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基などの一価アルキル基;ビニル基、アリル基、ヘキセニル基などの一価アルケニル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの一価シクロアルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基などの一価アリール基;これらの炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子が、部分的にハロゲン原子、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、メタクリル基又はメルカプト基により置換された一価炭化水素基が例示される。
【0064】
p及びqは0〜8の整数であり、3≦p+qとなる数であるので、3≦p+q≦16であるが、4≦p+q≦10であることが好ましい。
このようなジオルガノシクロポリシロキサンとして、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、1,1−ジエチルヘキサメチルシクロテトラシロキサン、フェニルヘプタメチルシクロテトラシロキサン、1、1−ジフェニルヘキサメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラシクロヘキシルテトラメチルシクロテトラシロキサンが例示される。
【0065】
さらに、トリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラ(3−アミノプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(3−メルカプトプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(3−グリシドキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(3−メタクリロキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(3−アクリロキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(3−カルボキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサンが例示される。
【0066】
さらに、1,3,5,7−テトラ(3−ビニロキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(p−ビニルフェニル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ[3−(p−ビニルフェニル)プロピル]テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ[3−(p−イソプロペニルベンゾイルアミノ)プロピル]テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(N−メタクリロイル−N−メチル−3−アミノプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(N−ラウロイル−N−メチル−3−アミノプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(N−アクリロイル−N−メチル−3−アミノプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(N,N−ビス(メタクリロイル)−3−アミノプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(N,N−ビス(ラウロイル)−3−アミノプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサンが例示される。
【0067】
そのための両末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサンは、酸触媒による平衡化重合に適したものであれよく、特に限定されない。25℃における粘度が0.65〜100,000mm/sの直鎖状ジオルガノポリシロキサンが好ましいが、若干分岐状であってもよい。直鎖状の両末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサンは、下式で表されるものが例示される。
【化3】


式中、Rは前記同様の基であり、m及びnは0以上の数であり、(m+n)は、25℃における上記ジオルガノポリシロキサンの粘度が0.65〜100,000mPa・sとなる数である。
【0068】
より具体的には、25℃における粘度が0.65〜100,000mPa・sの1,3−ジヒドロキシテトラメチルジシロキサン、1,7−ジヒドロキシオクタメチルテトラシロキサン、α,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン、α,ω−ジヒドロキシメチルビニルポリシロキサン、α,ω−ジヒドロキシメチルフェニルポリシロキサン、α,ω−ジヒドロキシメチル(3,3,3−トリフロロプロピル)ポリシロキサンが例示される。
【0069】
酸触媒は、上記のジオルガノシクロオリゴシロキサンや両末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサンの平衡化重合に適したものであれよく、特に制限されない。酸触媒として、無機酸、スルフォン酸、カルボン酸、固体酸が例示される。
【0070】
好ましい酸触媒は、塩酸,硫酸,硝酸等の無機強酸;トリフルオロメタンスルフォン酸;トリフルオロメタンスルフォン酸トリメチルシリルエステル,トリフルオロメタンスルフォン酸トリエチルシリルエステル等で例示されるトリフルオロメタンスルフォン酸トリアルキルシリルエステル,p−トルエンスルフォン酸,酸処理クレー(活性白土ともいう),スルフォン酸型イオン交換樹脂等が挙げられる。中でも、重合反応性の高さから、硫酸、トリフロロメタンスルフォン酸、スルフォン酸型イオン交換樹脂が好ましい。最も好ましくは、硫酸である。また、固体酸触媒であるスルフォン酸型イオン交換樹脂は、多孔性ハイポーラス型のスルフォン酸型イオン交換樹脂が好ましい。
【0071】
酸触媒の使用量は、平衡化重合を促進するのに十分な量であればよく、特に限定されないが、全体量の0.0001〜5.0重量%程度が好ましい。重合反応温度は、平衡化重合を促進するのに十分な温度であればよく特に限定されないが、0〜150℃程度で行えばよく、特に20〜100℃程度が好ましい。重合反応時間も平衡化重合を完了するのに十分な時間であればよく、特に限定されないが、30分〜20時間程度でよく、特に1〜5時間程度が好ましい。
【0072】
重合反応系の粘度を低下させるために、原料を有機溶媒で稀釈して重合してもよい。有機溶媒は、重合反応を阻害しない限り、特に制限はない。ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、メトキシエタノール、エトキシエタノール、ジメトキシエタノール、ジエトキシエタノール、酢酸メトキシメタノール、酢酸エトキシエタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類が例示される。
【0073】
重合反応終了後に、使用した酸触媒の残渣を塩基により中和し、生成した中和塩を濾別し、濾液を乾固すると、目的とする両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンを得ることができる。その重合度は、末端封鎖剤として用いた両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサン、原料であるジオルガノシクロオリゴシロキサン、および、原料である両末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサンよりも重合度が大きい。その粘度も末端封鎖剤や原料シロキサンの粘度よりも当然に大きい。目的とする両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンの重合度の上限値は通常730位であり、粘度の上限値は10,000mPa・s位である。しかし、これら上限値に限定されるものではない。
【0074】
目的とする両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンの主鎖であるジオルガノポリシロキサンは、原料であるジオルガノシクロオリゴシロキサンを構成しているジオルガノシロキサン単位と同一のジオルガノシロキサン単位、原料である両末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサンを構成しているジオルガノシロキサン単位と同一のジオルガノシロキサン単位、あるいは、原料であるジオルガノシクロオリゴシロキサンを構成しているジオルガノシロキサン単位と原料である両末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサンを構成しているジオルガノシロキサン単位とからなる。
【実施例】
【0075】
[実施例1]
攪拌機、温度計、冷却管を備えた0.2リットルの4つ口フラスコに、メタクリル酸アリル75g(594.5ミリモル)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルメチルジメチルアンモニウムクロリド(重合禁止剤)0.05グラムを投入し、さらに白金の1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン錯体を、白金金属がメタクリル酸アリルに対して重量単位で5ppmとなる量投入して撹拌した。この反応系を撹拌しつつ、酸素ガス2%含有窒素ガス雰囲気下で95℃に加熱し、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを少量滴下した。ヒドロシリル化反応の開始を確認した後、この反応系を保温、水冷または空冷によって90〜100℃に保ちながら、総量33.2グラム(247.7ミリモル)の1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを滴下した([アリル]/[SiH]の当量比=1.20)。滴下終了後、85℃〜100℃で1時間攪拌した。フラスコ内容物の赤外吸光(IR)分析を行ったところ、2130cm−1におけるヒドロシリル基(SiH基)の特性吸収は消失していた。
【0076】
次いでフラスコ内の低沸点物を加熱減圧下で留去することにより、ヒドロシリル化反応生成物76.6グラムを得た。このヒドロシリル化反応生成物をガスクロマトグラフィー分析及びNMR分析したところ、このヒドロシリル化反応生成物に含まれる各種生成物の質量割合、1,3−ジ(メタクリロキシプロピル)テトラメチルジシロキサン:1−メタクリロキシプロピル−3−メタクリロキシテトラメチルジシロキサン:1,3−ジ(メタクリロキシ)テトラメチルジシロキサンが約50:44:6であることがわかった。
【0077】
攪拌機、温度計、冷却管を備えた0.2リットルの4つ口フラスコに、このヒドロシリル化反応生成物20グラム、炭酸水素ナトリウム粉末5グラム(59.6ミリモル)、トルエン20グラム及び水40グラムを投入し、60℃で3時間撹拌した。ついでイソプロピルアルコール2グラムと塩化ナトリウム粉末4グラムを投入し、静置して相分離させた後、分液して下層(水溶液層)を抜き出した。残った上層(有機溶剤層)に硫酸0.03グラムを添加して撹拌し、pH試験紙で酸性であることを確認した。この硫酸を添加した有機溶剤層について、減圧しながら70〜80℃で共沸脱水を約2時間行った。約2時間後にはもはや縮合水の生成は見られなかった。フラスコ内を常圧に戻して、内容物の重量を測定したところ31グラムであった。
【0078】
この内容物を二等分し、以下の2種類の方法で目的物の単離を行った。
(1) 上記内容物15.5グラムがはいったフラスコに炭酸水素ナトリウム粉末0.05グラムと水15グラムを投入し、撹拌して中和反応を行い、静置して相分離させた。下層(水溶液層)を分液除去し、上層(有機溶剤層)をさらに水洗した。この有機溶剤層から、低沸点物と溶媒を加熱減圧下で除去して、目的の透明な液体である両末端メタクリロキシプロピルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルオリゴシロキサン7.2グラム(通算換算収率58%)を得た。
【0079】
(2) 上記内容物15.5グラムがはいったフラスコに炭酸水素ナトリウム粉末0.8グラムを投入し40〜50℃で7時間撹拌した。pH試験紙で中和反応が完結したことを確認した後、中和塩と過剰の炭酸水素ナトリウム粉末を濾別し、濾液から低沸点物と溶媒を加熱減圧下で除去して、目的の透明な液体である両末端メタクリロキシプロピルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルオリゴシロキサン6.9グラム(通算換算収率56%)を得た。
NMR分析によると、このジメチルオリゴシロキサンは平均重合度3.0であった。なお、この両末端メタクリロキシプロピルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルオリゴシロキサンは、両末端メタクリロキシプロピル基封鎖ジメチルポリシロキサンと表現することができる(以下、同様である)。
【0080】
[実施例2]
実施例1において合成したヒドロシリル化反応生成物20グラムを使用し、加水分解反応時の溶媒をトルエンから同量のヘキサンに換える他は、実施例1と同様の条件で加水分解反応および縮合反応を行い、次いで、上記(1)の単離操作を行うことにより両末端メタクリロキシプロピルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルオリゴシロキサン7.5グラム(通算換算収率60%)を得た。また、上記(2)の単離操作を行うことにより両末端メタクリロキシプロピルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルオリゴシロキサン7.0グラム(通算換算収率56%)を得た。NMR分析によると、このジメチルオリゴシロキサンは平均重合度3.0であった。
【0081】
[実施例3]
攪拌機、温度計、冷却管を備えた0.2リットルの4つ口フラスコに、メタクリル酸アリル36.9g(292.7ミリモル)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルメチルジメチルアンモニウムクロリド(重合禁止剤)0.05グラムを投入し、さらに白金の1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン錯体を白金金属がメタクリル酸アリルに対して重量単位で5ppmとなる量投入した。この反応系を撹拌しつつ、酸素ガス2%含有窒素ガス雰囲気下で95℃に加熱し、平均重合度6.5の両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンを少量滴下した。ヒドロシリル化反応の開始を確認した後、この反応系を保温、水冷または空冷によって90〜95℃に保ちながら、総量75グラム(122.0ミリモル)の上記両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンを滴下した([アリル]/[SiH]の当量比=1.20)。滴下終了後、85℃〜90℃で1時間攪拌した。フラスコ内容物のIR分析を行ったところ、2130cm−1におけるヒドロシリル基(SiH基)の特性吸収は消失していた。
【0082】
次いで低沸点物を加熱減圧留去することによりヒドロシリル化反応生成物95.6グラムを得た。NMR分析により、このヒドロシリル化反応生成物に含まれる各種生成物の質量割合は、両末端メタクリロキシプロピルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン:片末端メタクリロキシプロピルジメチルシロキシ他末端メタクリロキシジメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン:両末端メタクリロキシジメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンが約49:42:9であることがわかった。
【0083】
攪拌機、温度計、冷却管を備えた0.1リットルの3つ口フラスコに、このヒドロシリル化反応生成物20グラム、炭酸水素ナトリウム粉末1.9グラム(23.1ミリモル)、トルエン20グラム、トリエチルアミン0.07グラム及び水40グラムを投入し、60℃で6時間撹拌した。ついで、塩化ナトリウム粉末4グラムを投入し、静置して相分離させた後、分液して下層(水溶液層)を抜き出した。残った上層(有機溶剤層)に硫酸0.03グラムを添加し、pH試験紙で酸性であることを確認した。
【0084】
この硫酸を添加した有機溶剤層について、減圧しながら50〜70℃で共沸脱水を約0.5時間行った。約0.5時間後にはもはや縮合水の生成は見られなかった。フラスコ内を常圧に戻して、炭酸水素ナトリウム粉末0.05グラムと水30グラムを投入し、撹拌して中和反応を行い、静置して相分離させた。その下層(水溶液層)を分液除去し、上層(有機溶剤層)を水洗した。この有機溶剤層から、低沸点物と溶媒を加熱減圧下で除去して、目的の透明な液体である両末端メタクリロキシプロピルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン16.7グラム(通算換算収率71%)を得た。NMR分析によると、このジメチルポリシロキサンは平均重合度13.9であった。
【0085】
[実施例4]
攪拌機、温度計、冷却管を備えた0.5リットルの4つ口フラスコに、実施例3で合成したヒドロシリル化反応生成物70グラム、炭酸水素ナトリウム粉末7グラム(80.9ミリモル)、トルエン70グラム、及び水140グラムを投入し、60℃で6時間撹拌した。ついで塩化ナトリウム粉末14グラムを投入し、静置して相分離させた後、分液して下層(水溶液層)を抜き出した。残った上層(有機溶剤層)に硫酸0.12gを添加し、pH試験紙で酸性であることを確認した。減圧しながら50〜55℃で共沸脱水を約1時間行った。約1時間には、もはや縮合水の生成は見られなかった。
【0086】
フラスコ内を常圧に戻し、炭酸水素ナトリウム粉末0.3グラムと水105グラムを投入し、撹拌して中和反応を行い、静置して相分離させ、下層(水溶液層)を分液除去し、上層(有機溶剤層)を水洗した。この有機溶剤層から、低沸点物と溶媒を加熱減圧下で除去することにより、目的の透明な液体である両末端メタクリロキシプロピルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン62グラム(通算換算収率75%)を得た。NMRによると、このジメチルポリシロキサンは平均重合度13.5であった。
【0087】
[実施例5]
実施例3において、ヒドロシリル化反応時にメタクリル酸アリルを184.5グラム(1463.4ミリモル)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルメチルジメチルアンモニウムクロリド(重合禁止剤)を0.25グラム、平均重合度6.5の両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサンを375グラム(609.8ミリモル)([アリル]/[SiH]の当量比=1.20)、白金の1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン錯体を白金金属がメタクリル酸アリルに対して重量単位で5ppmとなる量を使用し、加水分解反応時に炭酸水素ナトリウムを43.7グラム(519.7ミリモル)、トルエンを450グラム、トリエチルアミンを1.6グラム及び水900グラムを使用し、縮合反応時に硫酸を0.6グラム使用した以外は、実施例3と同様の条件で反応させることにより、目的の透明な液体である両末端メタクリロキシプロピルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン397グラム(通算換算収率75%)を得た。NMR分析によると、このジメチルポリシロキサンは平均重合度14.4であった。
【0088】
[実施例6]
攪拌機、温度計、冷却管を備えた0.1リットルの3つ口フラスコに、メタクリル酸アリル20g(158.5ミリモル)、ジメチルアセトキシシラン0.21グラム(1.73ミリモル)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルメチルジメチルアンモニウムクロリド(重合禁止剤)0.015グラムを投入し、さらに白金の1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン錯体を白金金属がメタクリル酸アリルに対して重量単位で5ppmとなる量投入した。この系を酸素ガス2%含有窒素ガス雰囲気下で95℃に加熱し、別途調製した1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン8.62グラム(64.3ミリモル)とジメチルアセトキシシラン0.21グラム(1.73ミリモル)の混合物を少量滴下した。ヒドロシリル化反応の開始を確認した後、この反応系を保温、水冷または空冷によって、90〜95℃に保ちながら、残りの上記混合物を滴下した([アリル]/[SiH]の当量比=1.23)。滴下終了後、75℃〜90℃で1時間攪拌し、フラスコ内容物の赤外吸光(IR)分析を行ったところ、2130cm−1におけるヒドロシリル基(SiH基)の特性吸収は消失していた。
【0089】
次いで、低沸点物を加熱減圧下で留去することによりヒドロシリル化反応生成物22.7グラムを得た。ガスクロマトグラフィー分析及びNMR分析により、このヒドロシリル化反応生成物に含まれる各種生成物の質量割合は1,3−ジ(メタクリロキシプロピル)テトラメチルジシロキサン:1−メタクリロキシプロピル−3−メタクリロキシテトラメチルジシロキサン:1,3−ジ(メタクリロキシ)テトラメチルジシロキサンが約69:29:2であることがわかった。
【0090】
このヒドロシリル化反応生成物全量(22.7グラム)に炭酸水素ナトリウム粉末2.7グラム(32.3ミリモル)、トルエン20グラム及び水40グラムを投入し、60℃で3時間撹拌した。静置して相分離させた後、分液して下層(水溶液層)を抜き出した。残った上層(有機溶剤層)に硫酸0.03グラムを添加し、pH試験紙で酸性であることを確認した。減圧しながら70〜80℃で共沸脱水を約0.5時間行った。約0.5時間にはもはや縮合水の生成は見られなかった。
【0091】
フラスコ内を常圧に戻してから、炭酸水素ナトリウム粉末0.05グラムと水40グラムを投入し、撹拌して中和反応を行い、静置して相分離させた。その下層(水溶液層)を分液除去し、上層(有機溶剤層)を水洗した。この有機溶剤層から低沸点物と溶媒を加熱減圧下で除去して、目的の透明な液体である両末端メタクリロキシプロピルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルオリゴシロキサン18.8グラム(通算換算収率76%)を得た。NMR分析によると、このジメチルオリゴシロキサンは平均重合度2.7であった。
【0092】
[実施例7]
攪拌機、温度計、冷却管を備えた0.2リットルの4つ口フラスコに、実施例5で製造したポリシロキサン19.4グラム(13.4ミリモル)、オクタメチルシクロテトラシロキサン80.5グラム(272ミリモル)、水0.05グラムおよびトリフルオロメタンスルホン酸0.1グラムを投入し、70℃で3時間撹拌すると増粘が観察された。室温に冷却し、アンモニアガスを吹き込んで中和反応を行い、pH試験紙にて中和反応が完結したことを確認した。低沸点物と溶媒を加熱減圧下で除去し、室温まで冷却した後、トリフルオロメタンスルホン酸のアンモニウム塩を濾別することにより、透明な液状ポリシロキサン78グラムを得た(収率78%)。NMR分析によると、このポリシロキサンは両末端メタクリロキシプロピルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンであり、平均重合度は180であった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンの製造方法は、高純度の両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンを生産性良く製造するのに有用である。
本発明の両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンの製造方法は、原料シロキサンよりも高重合度の両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンを生産性良く製造するのに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式(1):H(R)2SiO[(R1)2SiO]nSi(R)2H
(式中、Rは脂肪族不飽和結合を有しない一価炭化水素基、R1は脂肪族不飽和結合を有しない一価炭化水素基、nは0〜50である)で示される両末端ジオルガノハイドロジェンシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンと
式(2):CH2=C(R2)COOCH2CH=CH2
(式中、R2は水素原子又はメチル基である)で示される(メタ)アクリル酸アリルとをヒドロシリル化反応させることによる、
構造式(3): CH2=C(R2)COOCH2CH2CH2(R)2SiO[(R1)2SiO]nSi(R)2CH2CH2CH2OOC(R2)C=CH2
(式中、R、R1、R2、nは前記どおりである)で示される両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンの製造方法において、
(1)副生した構造式(4):
CH2=C(R2)COOCH2CH2CH2(R)2SiO[(R1)2SiO]nSi(R)2OOC(R2)C=CH2
(式中、R、R1、R2、nは前記どおりである)で示される片末端(メタ)アクリロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンと構造式(5):
CH2=C(R2)COO(R)2SiO[(R1)2SiO]nSi(R)2 OOC(R2)C=CH2
(式中、R、R1、R2、nは前記どおりである)で示される両末端(メタ)アクリロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンを加水分解し、(2)生成した構造式(6): CH2=C(R2)COOCH2CH2CH2(R)2SiO[(R1)2SiO]nSi(R)2OH
(式中、R、R1、R2、nは前記どおりである)で示される片末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサンと構造式(7): HO(R)2SiO[(R1)2SiO]nSi(R)2OH
(式中、R、R1、R2、nは前記どおりである)で示される両末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサンを縮合させて構造式(3)で示される両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンに変換することを特徴とする、両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項2】
ヒドロシリル化反応の際に、アリル基/ケイ素原子結合水素原子の当量比を1以上とすることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ヒドロシリル化反応、ヒドロシリル化反応生成物の加水分解反応、及び、両末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサンの脱水縮合反応を、重合禁止剤及び/又は有機溶剤の存在下で行うことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
ヒドロシリル化反応触媒と重合禁止剤と必要により有機溶剤の存在下でヒドロシリル化反応を行い、その際に、(メタ)アクリル酸アリルとヒドロシリル化反応触媒と重合禁止剤と必要により有機溶剤の混合物中に、両末端ジオルガノハイドロジェンシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンを投入することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
ヒドロシリル化反応させる際に、ジオルガノハイドロジェンアシロキシシランを併存させることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
ジオルガノハイドロジェンアシロキシシシランがジメチルハイドロジェンアセトキシシランであることを特徴とする、請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
ヒドロシリル化反応生成物の加水分解を、アルカリ金属の水酸化物もしくは炭酸塩、または、アルカリ土類金属の水酸化物もしくは炭酸塩の存在下で行うことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
両末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサンの脱水縮合反応を、酸触媒の存在下で行うことを特徴とする、請求項1または請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
両末端ジオルガノハイドロジェンシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンが、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンであり、(メタ)アクリル酸アリルがメタクリル酸アリルであり、両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンが両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジメチルポリシロキサンであることを特徴とする、請求項1又は請求項6に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1の製造方法で得られた両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンとジオルガノシクロオリゴシロキサン及び/又は両末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサンとを、酸触媒を用いて平衡化共重合することを特徴とする、重合度が増大した両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項11】
両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジオルガノポリシロキサンが両末端(メタ)アクリロキシプロピル基封鎖ジメチルポリシロキサンであり、ジオルガノシクロオリゴシロキサンがジメチルシクロオリゴシロキサンであり、両末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサンが両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサンであることを特徴とする、請求項10に記載の製造方法。

【公開番号】特開2009−191207(P2009−191207A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35179(P2008−35179)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】