説明

両軸受リールの張力表示装置

【課題】糸長とスプールの回転数との関係を求めるときに、張力を精度良く表示できるようにする。
【解決手段】張力表示装置8は、表示器61とトルク検出用の電流検出部66aとスプールセンサ63と記憶部67と張力表示部73とを備える。張力表示部は、関係格納部74と、読み出し部75と、糸巻径算出部76と、張力算出部77と、有する。読み出し部は、関係格納部により関係を得るとき、スプールセンサで検出されたスプール回転数Xに応じた参照糸長を記憶部から順次読み出す。糸巻径算出部は、読み出し部が読み出したときのスプール回転数及び参照糸長と、以前に読み出したときのスプール回転数及び参照糸長とから糸巻径を順次算出する。張力算出部は、電流検出部で検出されたトルクと、算出された糸巻径とにより張力を算出する。張力表示部は、張力算出部が算出した張力に応じた張力情報を表示器に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、張力表示装置、特に、両軸受リールのスプールに巻き付けられる釣り糸に作用する張力を表示する両軸受リールの張力表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
両軸受リールにおいて、カウンタと呼ばれる水深表示装置を有するものが従来知られている。水深表示装置を有する両軸受リールでは、スプールから繰り出される釣り糸の糸長を表示して仕掛けの水深を表示する。糸長は、スプールの回転数に関連付けられる。釣り糸の太さが異なると、糸長と回転数との関係が変化する。このため、従来、糸長と回転数との関係が未知の釣り糸の関係を求める機能が水深表示装置付きの両軸受リールである電動リールには備えられている(例えば、特許文献1参照)。このとき、例えば、釣り人は指先で釣り糸を摘んで釣り糸に張力を付与しつつ、スプールに釣り糸を巻き付ける。釣り糸をスプールに巻き付ける際に張力が変動すると、糸巻径の増加割合が変動し、糸長と回転数との関係を精度良く求めることができない。このため、従来は、モータの負荷電流により張力を測定し、測定結果を表示している(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−204525号公報
【特許文献2】特許第2885356号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の構成では、糸長とスプールの回転数との関係を求めるとき、モータの負荷電流、すなわち、トルクによって張力を検出している。このため、巻取径が大きくなると、張力が同じでもトルク(負荷電流)は巻取径に応じて大きくなる。このため、実際の張力より大きい値が表示され、張力を精度良く表示できない。特に、巻取開始時の糸巻径と巻取終了時の糸巻径との差が大きい深溝のスプールの場合、回転数に対して糸巻径の変化の割合が大きいので、張力を精度良く表示できない。
【0005】
本発明の課題は、糸長とスプールの回転数との関係を求めるときに、張力を精度良く表示できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明1に係る両軸受リールの張力表示装置は、両軸受リールのスプールに巻き付けられる釣り糸に作用する張力を表示する装置である。張力表示装置は、表示器と、トルク検出手段と、回転数検出手段と、記憶手段と、関係格納手段と、読み出し手段と、糸巻径算出手段と、張力算出手段と、を備えている。トルク検出手段は、スプールに作用するトルクを検出する。回転数検出手段は、スプールの回転数を検出する。記憶手段は、参照釣り糸の参照糸長と回転数との関係が予め記憶されたものである。関係格納手段は、釣り糸の糸長と、回転数検出手段により検出されたスプールの回転数との関係を得て記憶手段に格納する。読み出し手段は、関係格納手段により関係を得るとき、回転数検出手段で検出された回転数に応じた参照糸長を記憶手段から順次読み出す。糸巻径算出手段は、読み出し手段が読み出したときの回転数及び参照糸長と、以前に読み出したときの回転数及び参照糸長とから糸巻径を順次算出する。張力算出手段は、トルク検出手段で検出されたトルクと、算出された糸巻径とにより張力を算出する。張力表示装置は、張力算出手段が算出した張力に応じた張力情報を表示器に表示する。
【0007】
この張力表示装置では、糸長と回転数との関係が未知の釣り糸をスプールに巻き付けると、糸長と回転数との関係を関係格納手段により得ることができる。このとき、読み出し手段により、記憶手段に記憶された参照釣り糸の参照糸長が、検出された回転数に応じて読み出される。読み出したときの回転数及び参照糸長と、以前に読み出したときの回転数及び参照糸長から糸巻径算出手段が糸巻径を算出する。例えば、読み出したときと以前に読み出したときの参照糸長の差を回転数の差で除算することにより、スプール一回転当たりの糸長を算出できる。この一回転当たりの糸長を円周率で除算することにより、糸巻径を算出できる。そして、検出されたトルクを算出された糸巻径で除算することにより張力を算出できる。この算出された張力が表示手段により表示器に表示される。ここでは、参照釣り糸の関係を用いて回転数に対応する糸巻径を算出し、トルクに対して糸巻径に応じて変化する張力を算出しそれを表示している。このため、糸長とスプールの回転数との関係を求めるときに張力を精度良く表示できるようになる。この表示を見て釣り人が一定の張力で釣り糸をスプールに巻き付ければ、糸長とスプールの回転数との関係を精度良く得ることができる。
【0008】
発明2に係る両軸受リールの張力表示装置は、発明1に記載の装置において、両軸受リールは、モータによりスプールを駆動可能な電動リールである。この場合には、電動リールにおいて、張力を精度良く表示できる。
【0009】
発明3に係る両軸受リールの張力表示装置は、発明2に記載の装置において、トルク検出手段は、モータに作用するトルクによりスプールに作用するトルクを検出する。この場合には、スプールと一体で回転するモータに作用するトルク検出することにより、スプールに作用するトルクを検出しているので、例えばモータに流れる電流値やデューティ比等のデータにより、磁歪素子等の専用のトルク検出手段を設けることなく、スプールに作用するトルクを検出できる。
【0010】
発明4に係る両軸受リールの張力表示装置は、発明2又は3に記載の装置において、電動リールは、スプールの前方にモータが装着される。この場合には、スプール内にモータが配置される電動リールに比べてスプールを深溝にできる。このような深溝のスプールであっても、糸巻径を順次算出するので、糸巻開始時から糸巻終了時に掛けて張力を精度良く表示できる。
【0011】
発明5に係る両軸受リールの張力表示装置は、発明3又は4に記載の装置において、トルク検出手段は、モータに流れる電流値によりトルクを検出する、モータに流れる電流の値はモータに作用する負荷に応じて変化するため、モータに作用するトルク、ひいてはスプールに作用するトルクに応じて変化する。ここでは、トルクを検出する手段を別に設けることなくスプールに作用するトルクを容易で検出できる。
【0012】
発明6に係る両軸受リールの張力表示装置は、発明5に記載の装置において、関係格納手段により関係を得るとき、獲得開始から所定時間の間、張力算出手段で算出された張力を低く補正する補正手段をさらに備える。電動リールの場合、モータの回転を減速する遊星歯車機構等の減速機構が通常設けられる。この減速機構内には、グリース等の潤滑剤が充填されている。この潤滑剤が暖まるまでの間、潤滑剤の流動性が低く潤滑剤の抵抗が大きいため、回転開始から所定時間の間モータに流れる電流値が大きくなる。このため、電流値でトルクを検出する場合、張力を低く補正して潤滑剤による影響を排除することにより、張力をさらに精度良く表示できる。
【0013】
発明7に係る両軸受リールの張力表示装置は、発明1又は2に記載の装置において、トルク検出手段は、スプールの回転軸に設けられる磁歪素子を有する。この場合には、スプールに作用するトルクをより精度良く検出できるため、張力をさらに精度良く表示できる。また、モータの有無に関わらずトルクを検出できるので、水深表示装置を有する手巻きの両軸受リール及び電動リールで手巻きでスプールの糸長と回転数との関係を得る場合であっても、張力を精度良く表示できる。
【0014】
発明8に係る両軸受リールの張力表示装置は、発明1から7のいずれかに記載のいずれかに記載の装置において、釣り糸の種類を設定するための糸種設定手段と、張力情報変更手段と、をさらに備える。張力情報変更手段は、糸種設定手段で設定された釣り糸の種類に応じて張力算出手段が算出した張力と張力情報との関係を変更する。この場合には、例えばポリエチレン繊維を複数合わせて編みこんだ釣り糸(以下、PEラインと記す)等の複数線の釣り糸及びフロロカーボン製の釣り糸(以下、フロロラインと記す)等の単線の釣り糸とで、異なる張力を同じ張力情報で表示できる。PEラインの場合、複数の繊維を編み込んでいるため、単線の釣り糸よりきつく巻く、すなわち、大きな張力を与えて巻かなければ、所定太さ(号数)で所定長さの釣り糸をスプールに全量巻き付けできないおそれがある。このような場合でも、上記のように釣り糸の種類によって張力情報と張力との関係を変更することにより、釣り人は、釣り糸の種類に関わらず一つの張力情報を覚えるだけで良い。このため、表示された単一の張力情報に合わせるだけで、釣り人は、釣り糸を一定の張力でスプールに巻き付けることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、参照釣り糸の関係を用いて回転数に対応する糸巻径を算出し、トルクに対して糸巻径に応じて変化する張力を算出しそれを表示している。このため、糸長とスプールの回転数との関係を求めるときに張力を精度良く表示できるようになる。この表示を見て釣り人が一定の張力で釣り糸を巻き付ければ、糸長とスプールの回転数との関係を精度良く得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態が採用された電動リールの斜視図。
【図2】その第2側カバー側の側面断面図。
【図3】図2のIII−III断面図。
【図4】カウンタケースの表示画面の一例を示す図。
【図5】リールの制御系の構成を示すブロック図。
【図6】記憶部の記憶内容の一例を示す図。
【図7】リール制御部の主制御動作を示すフローチャート。
【図8】スイッチ入力処理を示すフローチャート。
【図9】普通学習の前半の処理を示すフローチャート。
【図10】普通学習の後半の処理を示すフローチャート。
【図11】各動作モード処理を示すフローチャート。
【図12】張力情報記憶エリアの記憶内容の一例を示す図。
【図13】普通学習時の表示画面の一例を示す図。
【図14】下巻学習時の表示画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<リールの全体構成>
図1、図2及び図3において、本発明の一実施形態を採用した両軸受リールである電動リールは、外部電源から供給された電力により駆動されるとともに、手巻きリールとして使用するときの電源を内部に有するリールである。また、電動リールは糸繰り出し長さ又は糸巻取長さに応じて仕掛けの水深を表示する水深表示機能を有するリールである。
【0018】
電動リールは、ハンドル2を有し、釣り竿に装着可能なリール本体1と、リール本体1の上部に設けられたカウンタケース4(張力表示装置の一例)と、リール本体1の内部に配置された糸巻用のスプール10と、を備えている。また、スプール10を駆動するスプール駆動機構13をさらに備えている。
【0019】
リール本体1は、フレーム7と、第1側カバー8aと、第2側カバー8bと、前カバー9と、備える。フレーム7は、第1側板7aと、第2側板7bと、第1側板7aと第2側板7bとを連結する第1連結部材7c及び第2連結部材7dと、を有する。第1側カバー8aは、フレーム7のハンドル装着側と逆側を覆う。第2側カバー8bは、フレーム7のハンドル装着側を覆う。前カバー9は、フレーム7の前部を覆う。
【0020】
第1側板7aには、図3に示すように、スプール10が通過可能な円形開口7eが形成されている。円形開口7eには、スプール10のスプール軸14の第1端(図3左端)を回転自在に支持するスプール支持部17が芯出しされて装着されている。スプール支持部17は、第1側板7aの外側面にネジ止め固定されている。スプール支持部17には、スプール軸14の第1端を支持する第1軸受18aが収納される。
【0021】
第2側板7bは、各種の機構を装着するために設けられている。第2側板7bと第2側カバー8bとの間には、スプール駆動機構13と、後述するクラッチ機構16を制御するクラッチ制御機構20と、キャスティングコントロール機構21と、が設けられている。
【0022】
第1側板7aと第2側板7bとの間には、スプール10と、クラッチ機構16と、スプール10に釣り糸を均一に巻き付けるためのレベルワインド機構22と、が設けられている。クラッチ機構16は、スプール10に動力を伝達する動力伝達状態(クラッチオン)と動力を遮断する動力遮断状態(クラッチオフ)とに切り換える。リール本体1の後部において、第1側板7aと第2側板7bとの間には、クラッチ機構16をオンオフ操作するためのクラッチ操作部材11が揺動可能に設けられている。クラッチ操作部材11は、図2に実線で示すクラッチオン位置と、二点鎖線で示すクラッチオフ位置と、の間で揺動する。
【0023】
リール本体1は、第2側板7bの外側面に間隔を隔てて配置され、第2側カバー8bとの間の空間に上記の機構を装着するための機構装着板19をさらに備えている。機構装着板19は、第2側板7bの外側面にネジ止め固定されている。
【0024】
第1連結部材7cは、第1側板7a及び第2側板7bの下部を前後2箇所で連結する。第2連結部材7dはスプール10の前部を連結する。第1連結部材7cは、板状の部分であり、その左右方向の略中央部分に釣り竿に取り付けるための竿取付脚7fが一体形成されている。第2連結部材7dは、概ね円筒状の部分であり、その内部にスプール10駆動用のモータ12(図2及び図3)が収容されている。
【0025】
第1側カバー8aは、第1側板7aの外縁部に例えばネジ止めされている。第1側カバー8aの前部下面には、電源ケーブル接続用のコネクタ15が下向きに装着されている。
【0026】
ハンドル2は、第2側カバー8b側に設けられている。
【0027】
第2側カバー8bには、ハンドル軸30を回転自在に支持するための第1ボス部8cが外方に突出して形成されている。第1ボス部8cの後方には、スプール軸14の第2端を支持する第2ボス部8dが外方に突出して形成されている。第2側カバー8bの第1ボス部8cの上方には、モータ12を複数の段数SC(例えば31の段数)に制御するための調整レバー5(図1参照)が揺動自在に支持されている。調整レバー5には、図示しないロータリエンコーダが連結されている。
【0028】
前カバー9は、第1側板7a及び第2側板7bの前部外側面の上下2箇所で、例えばネジ止め固定されている。前カバー9には、釣り糸通過用の横長の開口9a(図2)が形成されている。
【0029】
<カウンタケースの構成>
カウンタケース4は、図1及び図2に示すように、第1側板7a及び第2側板7bの上部に載置され、第1側板7a及び第2側板7bの外側面にネジ止め固定されている。カウンタケース4の内部には、水深表示用の液晶ディスプレイからなる表示器61が収納されている。また、カウンタケース4の内部には、モータ12及び表示器61を制御する、例えばマイクロコンピュータからなるリール制御部60(図5)が設けられている。
【0030】
カウンタケース4の上面には、図4に示すように、表示器61が露出する矩形の開口4aが形成されている。開口4aは、合成樹脂製の透明なカバー部材4bによりカバーされている。表示器61の表示画面は、水深表示領域61aと、水深表示領域61aの後方に配置された段数表示領域61bと、段数表示領域61bの右方に配置された張力表示領域61cと、を有している。これらの各表示領域には、7セグメントで数値及び文字を表示可能である。水深表示領域61aには、仕掛けの水深、すなわちスプール10から繰り出される釣り糸の糸長が表示される。段数表示領域61bには、調整レバー5の段数が1から31の31段階に表示される。また、モードに応じて棚位置の水深や釣り糸の種類も表示される。張力表示領域61cには、釣り糸の糸長と回転数との関係を算出する学習モードでの釣り糸の巻取時及び速度モードまたは張力モードのとき、釣り糸に作用する張力が例えば9段階に表示される。なお、学習モードのときと速度モードまたは張力モードのときでは、同じ段階でも異なる張力が表示される。速度モードまたは張力モードでは、段階の数値は概ねそのときに釣り糸に作用している張力に近い値である。また、学習モードでも釣り糸の種類によって同じ段階でも異なる張力となる。なお、この実施形態では、学習モードとして普通学習と下巻学習とを例として説明する。普通学習は、1本の釣り糸の回転数と糸長との関係を学習する学習モードである。下巻学習は、スプールに例えばナイロンライン等の下巻糸を巻いてから、下巻糸に、例えばPEラインをつなげる下巻を行ったときの学習モードである。
【0031】
開口4aの後方(図4下方)には、操作キー部62が配置されている。操作キー部62は、左右に並べて配置されたモータ制御選択スイッチSW1と、0セットスイッチSW2と、高切れスイッチSW3とを有している。モータ制御選択スイッチSW1は、モータ12を張力一定モードで制御する張力モードと、速度一定モードで制御する速度モードとのいずれかを選択するためのスイッチである。0セットスイッチSW2は、釣りを行う前に、仕掛けを水面に配置して水深表示値を0にセットするためのスイッチである。高切れスイッチSW3は、釣り糸が途中で切れたとき、仕掛けを水面に配置して水深表示値を0にセットするためのスイッチである。
【0032】
<リールの制御系の構成>
図5に示すように、リール制御部60は、例えば、CPU、RAM、ROM、I/Oインターフェイス等を含むマイクロコンピュータや液晶駆動回路から構成される。
【0033】
リール制御部60には、調整レバー5と、操作キー部62と、スプールセンサ63と、スプールカウンタ64と、ブザー65と、モータ駆動回路66と、表示器61と、記憶部67と、他の入出力部と、が接続されている。操作キー部62は、前述したように3つのスイッチを有している。スプールセンサ63は、スプール10の回転数、回転方向及び回転速度を検出するために設けられる。スプールセンサ63は、図示しない磁石の磁力を検出可能な、例えば、ホール素子又はリードスイッチからなる2つの磁石検出素子を有している。いずれの磁石検出素子が先に磁石を検出したかにより、スプール10の回転方向を検出できる。磁石はスプール10の回転に連動して回転する。スプールカウンタ64は、スプールセンサ63から出力されるパルスを計数するものである。スプールカウンタ64の出力により、巻初めからのスプール10が何回転したかのスプール回転数X及びスプール10の回転速度を検出できる。
【0034】
ブザー65は、水深表示等で各種の報知を行うために設けられている。モータ駆動回路66は、モータ12をパルス幅変調(Pulse Width Modulation)制御により速度一定又は張力一定駆動するために設けられている。モータ駆動回路66は、モータ12に流れる電流を検出する電流検出部66aを有している。電流検出部66aはトルクセンサの一例である。記憶部67は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)及びフラッシュメモリ等の書換可能な不揮発メモリで構成されている。記憶部67には、図6に示すように、棚位置データ記憶エリア67aと、学習データ記憶エリア67bと、所定糸データ記憶エリア67cと、速度データ記憶エリア67dと、トルクデータ記憶エリア67eと、張力情報記憶エリア67fと、その他のデータ記憶エリア67gと、が設けられている。
【0035】
棚位置データ記憶エリア67aには、釣りを行っているときにセットされた棚位置等の表示データが記憶される。学習データ記憶エリア67bには、学習モードにより得られた実際の糸長とスプール10の回転数との関係を示す学習データが記憶される。所定糸データ記憶エリア67cには、例えば、PEラインの6号300m等の所定太さ及び長さの釣り糸の参照糸長とスプール10の回転数との関係が予め記憶されている。この関係を学習モード時に張力を算出する際に利用する。速度データ記憶エリア67dには、段数SC毎のスプール10の巻き上げ速度(rpm)の上限値が予め記憶されている。トルクデータ記憶エリア67eには、段数SC毎のモータ12の巻き上げトルク(アンペア)の上限値が予め記憶されている。
【0036】
速度データ記憶エリア67dには、例えば、段数SCが1速の場合に上限の速度データSS=257rpm,2速の場合にSS=369rpm,3速の場合にSS=503rpm,4速の場合にSS=665rpm,5速の場合にSS=1000rpmがそれぞれ記憶されている。また、トルクデータ記憶エリア67eには、例えば、段数SCが1段の場合に上限のトルクデータTS=2A,2段の場合にTS=3.5A,3段の場合にTS=5A,4段の場合にTS=6.5A,5段の場合にTS=8Aがそれぞれ記憶されている。トルクに関しては糸巻径に応じて張力に補正される。
【0037】
張力情報記憶エリア67fには、学習モード時の張力表示領域61cで表示する1−9の9段階の張力情報、及び速度モードまたは張力モードで表示する0−9の10段階の張力情報が記憶される。速度モードまたは張力モードで表示する9段階の張力情報は、概ね実際に釣り糸に作用する張力である。例えば張力情報が「1」の場合、0.3kg−1.5kgまでの張力であり、張力情報が「9」の場合、8.5kg以上の張力である。
【0038】
学習モード時の各段階での張力を図12に示す。学習モード時には、釣り人は、一定の張力で釣り糸を巻き取るのが好ましい。このとき、伸びにくいPEラインと伸びやすいフロロラインとで、同じ張力で巻き取るのではなく、伸びにくいPEラインは、伸びやすいフロロラインより大きな張力できつく巻き取る必要がある。そこで、図12に示すように、釣り糸の種類によって同じ張力情報であっても、異なる張力となっている。例えば、PEラインの張力情報「3」での張力は、1.0kg〜1.4kgであり、フロロライン(FL)の張力は、0.5kg〜0.8kgである。これにより、釣り人は普通学習のときに釣り糸の種類に関わりなく、例えば、張力情報「3」となるように釣り糸をスプール10に巻き付ければよい。
【0039】
その他のデータ記憶エリア67gには、PWM制御用のデューティ比のデータや各種の一時的なデータが格納されている。また、各トルク段数SCの最大デューティ比及び最小デューティ比のデータも格納されている。
【0040】
リール制御部60は、ソフトウェアで実現される機能構成として、モータ12を制御するモータ制御部70と、表示器61を制御する表示制御部71と、を有している。表示制御部71は、水深表示領域61aに水深を表示する水深表示部72と、張力表示領域61cに張力を表示する張力表示部73と、を有している。張力表示部73は、関係格納部74と、読み出し部75と、糸巻径算出部76と、張力算出部77と、補正部78と、糸種設定部79と、張力情報変更部80と、を有している。関係格納部74は、普通学習時に、糸長とスプール回転数との関係が未知の釣り糸の糸長と、スプールセンサ63により検出されたスプール10の回転数との関係を得て、スプール10の回転数に関連付けて糸長を記憶部67の学習データ記憶エリア67bに格納する。
【0041】
読み出し部75は、関係格納部74により上述の関係を得るとき、スプールセンサ63で検出された回転数に応じた、所定糸データ記憶エリア67cに格納された参照糸長(例えばPEライン6号300mの糸長)を記憶部67から順次読み出す。糸巻径算出部76は、読み出し部75が読み出したときのスプール回転数X1及び参照糸長LN1と、直前に読み出したときのスプール回転数X2及び参照糸長LN2とから糸巻径SD1を順次算出する。具体的には、読み出したときの糸長LN1から直前の糸長LN2を減算した糸長(LX1−LX2)をスプール回転数の差(X1−X2)で除算することにより、スプール一回転当たりの糸長Lを算出する。糸長Lをπで除算することにより糸巻径SDを算出できる。
【0042】
張力算出部77は、電流検出部66aで得られたトルクデータTRを求められた糸巻径SDで除算して張力Tを算出する。補正部78は、巻初めのときの所定時間(例えば30秒間)の算出された張力を補正する。これは、巻取開始時は、スプール駆動機構13の後述する遊星歯車機構26の内部に充填されたグリースの粘度が高くなっているため、グリースの抵抗が大きいからである。このため、巻取開始から所定時間経過してグリースの影響が少なくなるまで、算出された張力Tを経過時間tに応じて補正量を小さくする。例えば、最初の5秒間は、張力Tに補正係数0.5を乗算し、次の5秒ごとに補正係数を0.1ずつ増加する。これにより、巻取開始直後の張力Tを表示の変動抑えることができる。なお、巻取開始直後は、どのような張力Tが算出されても、それに関わりなく例えば張力情報「3」を表示してもよい。
【0043】
算出又は補正された張力Tに応じた張力情報を張力表示部73が表示器61の張力表示領域61cに表示する。
【0044】
糸種設定部79は、普通学習時にスプール10に巻き付ける釣り糸の種類を設定するためのものである。この実施形態では、PEラインとフロロラインとの二種類の釣り糸を設定できる。張力情報変更部80は、糸種設定部79で設定された釣り糸の種類に応じて張力算出部77が算出した張力と張力情報との関係を変更する。
【0045】
普通学習では、釣り糸の種類に関わらず、張力情報が「3」を示すようにして釣り糸をスプール10に巻き付ければよいように張力情報と張力との関係を設定している。張力情報変更部80では、普通学習のとき、巻き付ける釣り糸の種類に応じて、表示する張力情報に対する張力Tを、例えば図12に示す関係で変更する。したがって、PEラインのほうがフロロラインより同じ張力情報であっても大きな張力になる。
【0046】
算出又は補正された張力Tに応じた張力情報を、張力表示部73が表示器61の張力表示領域61cに表示する。
【0047】
これらの表示器61、電流検出部66a、スプールセンサ63、記憶部67、及び張力表示部73により本願発明の両軸受リールの張力表示装置6が構成される。
【0048】
<スプールの構成>
スプール10は、スプール軸14に一体回転可能に装着されている。スプール10は、筒状の糸巻胴部10aと、糸巻胴部10aの両側に一体形成された大径の第1フランジ部10b及び第2フランジ部10cと、を有している。スプール10は、糸巻胴部10aの直径が第1フランジ部10b及び第2フランジ部10cの直径よりかなり小さい(例えば半分以下の直径)直径を有する深溝型のものである。スプール軸14は、糸巻胴部10aの内周部に圧入等の適宜の固定手段により固定されている。
【0049】
スプール軸14の第1端は、前述したようにスプール支持部17で第1軸受18aにより支持されている。スプール軸14の第2端(図3右端)は、第2側カバー8bの第2ボス部8dに第2軸受18bにより支持されている。
【0050】
スプール軸14は、スプール10が固定された大径部14aと、大径部14aの第1端側の第1小径部14bと、大径部14aの第2端側の第2小径部14cと、を有している。大径部14aのスプール固定部分より第2小径部14c側には、クラッチ機構16を構成するクラッチピン16aが径方向を貫通して装着されている。
【0051】
<クラッチ機構及びクラッチ制御機構の構成>
クラッチ機構16は、クラッチピン16aと、後述するピニオンギア32の図3左側端面に径方向に沿って十字に凹んで形成されたクラッチ凹部16bと、を有している。ピニオンギア32は、クラッチ機構16を構成するとともに後述する第1回転伝達機構24を構成している。ピニオンギア32は、スプール軸14方向に沿って、図3に示すクラッチオン位置とクラッチオン位置より図3右側のクラッチオフ位置との間で移動する。クラッチオン位置では、クラッチピン16aがクラッチ凹部16bに係合してピニオンギア32の回転がスプール軸14に伝達され、クラッチ機構16は、クラッチオン状態になる。このクラッチオン状態では、ピニオンギア32とスプール軸14とが一体回転可能になる。また、クラッチオフ位置では、クラッチ凹部16bがクラッチピン16aから離反してピニオンギア32の回転がスプール軸14に伝達されない。このため、クラッチ機構16は、クラッチオフ状態になり、スプール10は自由回転可能になる。
【0052】
クラッチ制御機構20は、クラッチ操作部材11の図2に実線で示すクラッチオン位置と図2に二点鎖線で示すクラッチオフ位置との間の揺動によりクラッチ機構16をクラッチオン状態とクラッチオフ状態とに切り換える。
【0053】
<スプール駆動機構の構成>
スプール駆動機構13は、スプール10を糸巻取方向に駆動する。また、巻取時にスプール10にドラグ力を発生させて釣り糸の切断を防止する。スプール駆動機構13は、図2から図4に示すように、モータ12と、モータ12の糸巻取方向の回転を禁止する逆転禁止部23と、第1回転伝達機構24と、第2回転伝達機構25と、を備えている。第1回転伝達機構24は、モータ12の回転を減速してスプール10に伝達する。第2回転伝達機構25は、ハンドル2の回転を、第1回転伝達機構24を介して増速してスプール10に伝達する。
【0054】
モータ12は、前述した第2連結部材7dの内部に収容されている。モータ12は、ローラクラッチの形態の逆転禁止部23により糸繰り出し方向の回転が禁止れている。
【0055】
第1回転伝達機構24は、モータ12の出力軸12aに連結された遊星歯車機構26を有している。遊星歯車機構26は、モータ12の回転を1/20から1/30程度の範囲の減速比で減速してスプール10に伝達する。遊星歯車機構26は、モータ12の出力軸12aに連結された第1遊星減速機構27と、第1遊星減速機構27に連結された第2遊星減速機構28と、を有している。遊星歯車機構26は、第2側板7b及び機構装着板19に両端を回転自在に支持されたケース40内に収納される。ケース40の内周面には、第1遊星減速機構27及び第2遊星減速機構28の内歯ギアが形成されている。第1遊星減速機構27の太陽ギアは出力軸12aに一体回転可能に連結される。第2遊星減速機構28の太陽ギアは、第1遊星減速機構27のキャリアに一体回転可能に連結される。ケース40に形成された内歯ギアの出力がスプール10に伝達される。
【0056】
第1回転伝達機構24は、図2及び図3に示すように、第1ギア部材81と、第1ギア部材81に噛み合う第2ギア部材82と、第2ギア部材82に噛み合うピニオンギア32と、をさらに有している。第1ギア部材81は、遊星歯車機構26のケース40の外周に形成されている。したがって、第1ギア部材81は内歯ギアと一体回転可能である。第1ギア部材81は、レベルワインド機構22の従動ギア55にも噛み合っている。第2ギア部材82は、機構装着板19と第2側板7bの外側面との間に配置されている。第2ギア部材82は、第1ギア部材81の回転をピニオンギア32に回転方向を整合させて伝達するための中間ギアである。第2ギア部材82は、機構装着板19に回転自在に支持されている。ピニオンギア32は、第2側板7bにスプール軸14回りに回転自在かつ軸方向移動自在に装着されている。ピニオンギア32は、クラッチ制御機構20により制御されて軸方向にクラッチオン位置とクラッチオフ位置との間で移動する。
【0057】
第2回転伝達機構25は、図2、図3、図4及び図5に示すように、ハンドル2が一体回転可能に連結されたハンドル軸30と、ドライブギア31と、第3ギア部材83と、ドラグ機構29と、を有している。
【0058】
ハンドル軸30は、図3に示すように、第2側板7b及び第2側カバー8bの第1ボス部8cに回転自在に支持されている。ハンドル軸30には、ドラグ機構29のドラグ座金37が一体回転可能に装着されている。ハンドル軸30の先端には、ハンドル2が一体回転可能に連結されている。またハンドル軸30には、第1ワンウェイクラッチ34のラチェットホイール35が一体回転可能が装着されている。ラチェットホイール35は、軸方向内方(図4左方)への移動が規制された状態で装着されている。ラチェットホイール35は、図示しないラチェット爪により糸繰り出し方向の回転が禁止される。ハンドル軸30の基端は、第2側板7b図示しない軸受により回転自在に支持されている。また、ハンドル軸30は、ローラ型の第2ワンウェイクラッチ36により第2側カバー8bの第1ボス部8cに支持されている。ハンドル軸30は、第1ワンウェイクラッチ34により糸繰り出し方向の回転が禁止されている。ハンドル軸30の糸繰り出し方向の回転を禁止することによりドラグ機構29が動作可能になる。第2ワンウェイクラッチ36は、ハンドル軸30の糸繰り出し方向の回転を迅速に禁止する。
【0059】
ドライブギア31は、ハンドル軸30に回転自在に装着されている。ドライブギア31は、ドラグ座金37により押圧される。ドライブギア31は、ドラグ機構29により糸繰り出し方向の回転が制動される。これにより、スプール10の糸繰り出し方向の回転が制動される。
【0060】
第3ギア部材83は、ハンドル2の回転をスプール10に伝達するために設けられている。第3ギア部材83は、第2遊星減速機構28のキャリアに一体回転可能に連結されている。第3ギア部材83は、ドライブギア31に噛み合い、ハンドル2の回転を第2遊星減速機構28のキャリアに伝達する。キャリアに伝達された回転は、第1ギア部材81及び第2ギア部材82を介してピニオンギア32に伝達される。第3ギア部材83から第2ギア部材82までの減速比は概ね「1」である。
【0061】
ドラグ機構29は、ドラグ座金37と、ドラグ力を調整するためのスタードラグ3と、を有している。ドラグ機構29は、スプールの糸繰り出し方向の回転を制動して釣り糸の切断を防止するために設けられる。ドラグ機構29は、設定されたドラグ力以上の力がスプール10に作用するとスプール10を糸繰り出し方向に空転させる。
【0062】
<その他の機構の構成>
キャスティングコントロール機構21は、図3に示すように、スプール軸14の両端を押圧してスプール10を制動する機構である。キャスティングコントロール機構21は、第2ボス部8dの外周面に螺合する制動キャップ51と、第1制動プレート52aと、第2制動プレート52bと、を有している。第1制動プレート52aは、スプール支持部17内に配置されスプール軸14の第1端に接触する。第2制動プレート52bは、制動キャップ51内に配置され、スプール軸14の第2端に接触する。
【0063】
レベルワインド機構22は、第1側板7aと第2側板7bに両端が回転自在に支持された螺軸53と、螺軸53に係合する釣り糸ガイド54と、を有している。螺軸53の外周面には交差する螺旋状溝53aが形成されている。螺軸53の、図3右端には、スプール駆動機構13に連結された従動ギア55が一体回転可能に装着されている。釣り糸ガイド54は、螺軸53の軸方向に沿って案内される。釣り糸ガイド54は、螺軸53の螺旋状溝53aに係合し、螺軸53の回転により螺軸53に沿って往復移動する。これにより、スプール10の糸巻取方向の回転に連動して釣り糸がスプール10に概ね均一に巻き取られる。
【0064】
<リール制御部の制御動作>
リール制御部60の制御動作について、図7から図11に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、図7から図11に示すフローチャートは、制御手順の一例であり、本発明の制御手順はこれに限定されない。
【0065】
本発明では、スプール一回転当たりの糸長Yとスプール回転数Xとの関係を一次直線に近似させることができることを利用して糸長Lを算出している。
【0066】
太さと全長が不明な釣り糸を糸巻径Bmmからスプール10に層状に巻き付けていき、c回転で全ての釣り糸を巻き終わったとする。次に、その状態からSmm釣り糸を繰り出したとき、スプール10がd回転したとする。
【0067】
いま、スプール回転数Xとスプール一回転当たりの糸長Yとの関係を、横軸にスプール回転数Xを、縦軸にスプール一回転当たりの糸長をとると、一次直線で定義できるので、傾きをAとすると、下記式で表せる。
【0068】
Y=AX+Bπ (1)
上記(1)式の傾きA及び切片Bπを求めることにより糸長Yを算出する。
【0069】
具体的には、4つのデータ、すなわち、繰り出し長さS,胴径B,スプール回転数c,繰り出し回転数dから一次直線の傾きAを下記式で求めることができる。
【0070】
A=2(S−Bπd)/d(2c−d)
例えば、スプール10が巻き初めから2000回転で巻終わり、そこから10m繰り出したときにスプールが60回転した場合、スプール10の糸巻胴径(糸巻径)が30mmであったとすると、一次直線の傾きAは下記のようになる。
【0071】
A=2(10000−94.2*60)/60(2*2000−60) (2)
=0.0368
そして、傾きA,切片Bπの近似の一次直線が決定できれば、一次直線をスプール一回転毎に積分処理(面積算出処理)することで巻き初めから巻終わりまでの例えばスプール一回転毎の糸長L1〜LNを求める。そして、巻終わり時のスプール回転数rのときの水深LXを「0」にセットしてそれから巻き初めまでの水深LX(=LN)とスプール回転数Xとの関係を算出して記憶部67の学習データ記憶エリア67bに例えばマップ形式(LX=MAP(X))で記憶する。
【0072】
実釣り時にスプール10が回転すると、そのときにスプールセンサ63が検出したスプール回転数Xに基づき、記憶部67のマップから糸長LNを読み出し、読み出した糸長LNに基づいて仕掛けの水深(釣り糸先端の水深)を表示器61に表示する。
【0073】
次に、リール制御部60によって行われる具体的な制御処理を、図6以降の制御フローチャートに従って説明する。
【0074】
電動リールが電源コードを介して外部電源に接続されると、図6のステップS1において初期設定を行う。この初期設定ではスプールカウンタ64の計数値をリセットしたり、各種の変数やフラグをリセットしたり、モータ制御モードを速度モードにし、表示モードを上からモードにする。上からモードは、水深表示領域61aに水面からの水深を表示するモードである。
【0075】
次にステップS2では表示処理を行う。表示処理では、水深表示等の各種の表示処理を行う。ここで、速度モードのときには、段数表示領域61bに調整レバー5により操作された速度段数が、張力モードのときには張力段数が表示される。また、速度モードと張力モードとのいずれか制御モードが表示される。
【0076】
ステップS3では、操作キー部62のいずれかのスイッチ又は調整レバーが操作されたか否かを判断する。ステップS4ではスプール10が回転しているか否かを判断する。この判断は、スプールセンサ63の出力により判断する。ステップS5ではその他の指令や入力がなされたか否かを判断する。
【0077】
操作キー部62のいずれかのスイッチ又は調整レバー5が操作された場合にはステップS3からステップS6に移行してスイッチ入力処理を実行する。またスプール10の回転が検出された場合にはステップS4からステップS7に移行する。ステップS7では各動作モード処理を実行する。その他の指令あるいは入力がなされた場合にはステップS5からステップS8に移行してその他の処理を実行する。
【0078】
ステップS6のスイッチ入力処理では図8のステップS11で調整レバー5が押されたか否かを判断する。ステップS12では、モータ制御選択スイッチSW1が押されたか否かを判断する。ステップS13では、0セットスイッチSW2と高切れスイッチSW3とが同時に2秒以上長押し操作された否かを判断する。ステップS14では、その多のスイッチ操作(例えば、0セットスイッチSW2や高切れスイッチSW2の短押し操作及び長押し操作等)がなされたか否かを判断する。この長押し操作は、スプール10に巻き付けられる釣り糸の糸長LNとスプール回転数Xとの関係を獲得して記憶部67にマップ形式(LX=MAP(X))で格納する学習モードに入るための操作である。
【0079】
調整レバー5が操作されたと判断すると、ステップS11からステップS15に移行する。ステップS15では、調整レバー5の段数SCを取り込む。ステップS16では、調整レバー5の段数SCが「0」可否かを判断する。調整レバー5の段数SCが「0」の場合は、モータ12をオフする。調整レバー5の段数SCが「0」ではないときは、ステップS16からステップS18に移行する。ステップS18では、モータ制御モードが速度一定モードか否かを判断する。速度一定モードのときは、ステップS19に移行し、調整レバー5の段数SCに応じた速度となるようにモータ12を制御し、ステップS12に移行する。速度一定モードではないときは、ステップS18からステップS20に移行し、釣り糸に作用する張力が調整レバー5の段数SCに応じた張力になるようにモータ12を制御し、ステップS12に移行する。
【0080】
モータ制御選択スイッチSW1が操作されたと判断すると、ステップS12からステップS21に移行する。ステップS21では、速度一定モードに設定されているか否かを判断する。速度一定モードに設定されている場合は、ステップS22に移行してモータ制御モードを張力一定モードにセットする。これは、速度一定モード中にモータ制御選択スイッチSW1が押されるということは釣り人が張力一定モードにしようとするためである。これにより、調整レバー5の操作に応じて張力制御が行われる。速度一定モードではなく張力一定モードに設定されている場合はステップS21からステップS23に移行し、モータ制御モードを速度一定モードにセットする。ステップS22及びステップS23の処理が終わるとステップS13に移行する。
【0081】
0セットスイッチSW2と高切れスイッチSW3とが同時に2秒以上長押し操作されたと判断すると、ステップS13から学習モードを行うステップS24に移行する。ステップS24では、釣り人のスイッチ操作に応じて学習モードが普通学習か下巻学習かを判断する。学習モードに入り、釣り人が0セットスイッチSW2を操作するとステップS25の普通学習に設定される。このとき0セットスイッチSW2を操作する代わりに釣り人がモータ制御スイッチSW1を操作し、0セットスイッチSW2を操作すると、ステップS26の下巻学習に設定される。これらの設定が終了するとステップS14に移行する。
【0082】
他のスイッチ入力がなされると、ステップS14からステップS27に移行し、例えば、現在の水深を棚にセットするなどの操作されたスイッチ入力に応じた他のスイッチ入力処理を行い、図7に示すメインルーチンに戻る。
【0083】
ステップS25の普通学習処理では、図9のステップS31で巻取開始操作がなされたか否かを判断する。普通学習処理では、普通学習で釣り糸の巻き取りを開始する場合又は巻き取りを終了する場合に0セットスイッチSW2が用いられる。巻き取りが開始されていない場合は、ステップS32に移行し、図13(a)に示すように、釣り糸の種類を表示する。釣り糸の種類は段数表示領域61bに、釣り糸種類を示す「PE(PEライン)」又は「FL(フロロライン)」が点滅表示される。また、水深表示領域61aには、いずれの種類の釣り糸の学習処理をしているかを示す「E1(PEラインの学習処理)」又は「E2(フロロラインの学習処理)」が表示される。
【0084】
ステップS33では、モータ制御選択スイッチSW1が操作されたか否かを判断する。普通学習処理では、モータ制御選択スイッチSW1は、釣り糸の種類の選択するために用いられる。モータ制御選択スイッチSW1が操作されるとステップS33からステップS34に移行する。ステップS34では、ステップS32でPEラインが表示されている、つまりPEラインがすでにセットされている場合は、ステップS35に移行する。ステップS35では、釣り糸の種類をフロロラインに切り換える。ステップS32でフロロラインが表示されている場合は、ステップS34からステップS36に移行し、釣り糸の種類をPEラインに切り換える。これらの切換により、普通学習時における9段階の張力情報が選択された釣り糸の張力情報にセットされる。これらの処理が終わるとステップS31に戻る。また、ステップS33で、モータ制御選択スイッチSW1が操作されるまでステップS31に戻る。
【0085】
釣り糸の種類の選択が終わると釣り人は、0セットスイッチSW1を操作してスプール10への釣り糸の巻き取りを開始する。釣り糸の巻き取りが開始されると、ステップS31からステップS41に移行する。ステップS41では、学習開始から所定時間(例えば20秒から40秒であり、この実施形態では、30秒)の経過を計測するためのタイマをスタートさせる。このタイマは、学習開始時の張力表示に対して、遊星歯車機構26に充填されたグリースの影響を排除する補正を行うためのものである。釣り糸の巻き付けが開始されると、図13(b)から図13(d)に示すように、検出された張力に応じた張力情報が張力表示領域61cに表示される。また、スプール10の回転数(回転位置)に応じた数値が水深表示領域61aに表示される。ここでは、例えば、実際の回転数の1/6の数値が表示される。したがって、図13(c)では、表示が20であるので、実際はスプール10が120回転していることを示している。さらに、どの種類の釣り糸の普通学習であるのかを示す情報が段数表示領域61bに表示される。釣り人は、張力表示領域61cに表示される張力情報を「3」に合わせて釣り糸を巻けば、精度が高い学習を行える。
【0086】
ステップS42では、スプール回転数Xをスプールカウンタ64の値に応じて増加させる。例えば、スプールセンサ63がスプール一回転当たり10パルス出力し、スプールカウンタ64がスプール一回転当たり10ずつ増加するときには、スプールカウンタ64が10増加するとスプール回転数Xを1増加する。ステップS43では、電流検出部66aで検出された電流値iを取り込む。ステップS44では、スプール回転数Xを取り込む。ステップS45では、記憶部67の所定糸データ記憶エリア67cに記憶された参照釣り糸のステップS44で取り込んだスプール回転数Xでの糸長を読み出す。ステップS46では、読み出したときのスプール回転数X1及び参照糸長LN1と、直前に読み出したスプール回転数X2及び参照糸長LN2とにより、前述した読み出し部75での処理に示すように糸巻径SDを算出する。ステップS47では、算出された糸巻径SDと検出された電流値iとから張力T(T=i/D)を算出する。ステップS48では、タイマがタイムアップしたか、すなわち、釣り糸を巻き付けてから30秒経過したか否かを判断する。タイムアップしていない場合は、ステップS48からステップS49に移行する。ステップS49では、検出された電流値に応じた張力Tを、補正張力Tamに補正市、ステップS50に移行する。補正張力Tamは、例えば最初の5秒間は、張力Tに補正係数0.5を乗算し、次の5秒ごとに補正係数を0.1ずつ増加する。これにより、巻取開始直後の張力を表示の変動抑えることができる。
【0087】
タイマがタイムアップした場合は、ステップS49をスキップしてステップS50に移行する。ステップS50では、ステップS33では、PEラインが選択されたか否かを判断する。PEラインが設定されている場合は、ステップS50からステップS51に移行する。ステップS51では図12に示した張力情報と張力の関係のうち、PEライン用の張力と張力情報の関係を用いて算出した張力に応じた張力情報を、図13に示すように、張力表示領域61cに表示する。また、フロロラインが設定されている場合は、ステップS50からステップS52に移行する。ステップS52では、図12に示した張力情報と張力の関係のうち、フロロライン用の張力と張力情報の関係を用いて算出した張力に応じた張力情報を張力表示領域61cに表示する。この表示において、いずれの釣り糸においても張力情報が「3」の場合に普通学習に最適な張力となるように張力情報と張力との関係が設定されている。このため、釣り人は、普通学習では、釣り糸の種類に関わらず、張力情報が常に「3」になるように釣り糸をスプール10に巻き取ればよい。ステップS51又はステップS52の処理が終わると、図10のステップS61に移行する。
【0088】
ステップS61では、釣り糸の所定長さの巻き取りが終了したか否かを判断する。この判断、釣り人が釣り糸の巻き取りを終えてから0セットスイッチSW2の操作を行ったことにより判断される。糸巻き取りが終了した後、例えば10m釣り糸を繰り出してスプール回転数とスプール一回転当たりの糸長との関係を学習するのであるが、ステップS62では、その10mの繰り出しが終了したか否かを判断する。この判断も0セットスイッチSW2の操作がなされたか否かにより判断する。なお、釣り糸に例えば10m毎に異なる色づけがなされている場合には、上記繰り出し操作が行えるが、釣り糸によっては色づけがなされていない場合がある。このような場合には、10mの釣り糸を先端に結んでさらに10m釣り糸を巻き取ってもよい。釣り糸の10mの繰り出しが終了していない場合には、図9のステップS31に戻る。
【0089】
糸巻き取りが終了してスプール10の回転が停止するとステップS61からステップS63に移行する。ステップS63では、巻き取り完了したときのスプール回転数Xを総回転数cにセットする。ステップS64では、釣り糸の繰り出しに応じてスプール回転数Xを減じていく。この減算もステップS43と同様に例えばスプールカウンタ64が10ずつ減じていくとスプール回転数Xを1減少させる。
【0090】
糸繰り出しが終了するとステップS62からステップS65に移行する。ステップS65では、スプール総回転数cから繰り出しにより減少したスプール回転数Xを減算し、減算値を繰り出し回転数dにセットする。この繰り出し回転数dが10m釣り糸を繰り出したときのスプール10の回転数である。ステップS66では、記憶部67から糸巻径Bπ及び繰り出し長さSを読み出す。この2つのデータは、あらかじめ記憶部67の学習データ記憶エリア67bに書き込まれている。
【0091】
ステップS67では、得られた4つのデータc,d,Bπ,Sにより前述した(2)式により近似一次直線の傾きAを求め、近似一次直線を算出する。これにより、糸径及び長さが未知の釣り糸の全長にわたる、スプール一回転長さYとスプール回転数Xとの関係が決定される。このスプール一回転長さYを用いて糸巻径SD(Y/π)を求め、張力モードのときの設定トルクを糸巻径SDにより補正して張力が一定になるようにしている。
【0092】
ステップS68では、得られた一次直線を積分処理して巻き初めから巻終わりまでのスプール回転数Xと糸長LNとの関係を算出する。そして、巻終わりを水深0にセットして糸長LNを水深LXに変換する。これによりスプール回転数Xと水深LXとの関係が決定される。
【0093】
ステップS50では、得られたスプール回転数Xと水深LXの関係をマップ形式で記憶部67に記憶してメインルーチンに戻る。これにより、前述した学習処理が実行され、釣り糸全体にわたる学習を行うことなく最終部分のみの学習で糸巻径により変化するスプール回転数と糸長との関係を補正できる。これらの処理が終了するとスイッチ入力ルーチンに戻る。
【0094】
図9のステップS26の下巻学習処理では、詳細な説明を省略するが、普通学習処理と同様な操作を、下巻糸とそれに巻き付けられる上巻糸とで2回行う。このとき、下巻糸では、フロロラインを基準にして張力段階が表示され、上巻糸では、上巻糸の種類を基準に張力段階が表示される。例えば、PEラインが上巻された場合は、PEラインを基準にした張力段階に表示が変更される。
【0095】
この場合の表示器61の表示画面の推移を図14により説明する。釣り人が学習モードに入って、下巻学習を選択すると、図14(a)に示すように、段数表示部61bに下巻学習であることを示す「−−」が点滅表示される。また、水深表示領域61aには、下巻学習を示す情報「E3」が表示される。この状態で0セットボタンSW2が操作されると、釣り人は下巻糸の巻き取りを開始する。すると、図14(b)〜図14(d)に示すように、検出された張力に応じた張力情報が張力表示領域61cに表示される。このときの、張力情報は、フロロラインを基準とした段階で表示される。また、下巻学習を示す「E3」が段数表示領域61bに表示される。釣り人が巻き取りを開始すると、張力表示領域81cに張力段階が表示される。また、水深表示領域61aにスプールの回転数に応じた値が表示される。ここでも、普通学習と同様に実際のスプール10の回転数の1/6の数値が表示される。下巻糸の巻き取りが終わると、釣り人は、上巻糸を下巻糸に結んで釣り糸を10m巻き取る操作を開始するために、再度0セットスイッチSW2を操作する。すると、図14(e)に示すように、張力表示領域61cの表示が消えるとともに水深表示領域61aの数値が「0」になる。張力表示領域61cの表示の表示が消えている場合は、調整レバー5によるモータ12の駆動が無効になる。この点は普通学習モードでは画面を表示していないが同じである。釣り人が上巻糸を10m巻き取ったときの画面を図14(f)に示す。こでは、段数表示領域61cの表示は消えたままである。10mの上巻糸の巻き取り操作が終わると、釣り人は、再度0セットスイッチSW2を操作する。すると図14(g)及び図14(h)に示すように、段数表示領域61bに上巻糸の巻き取り動作を示す「U」の文字が表示され、張力表示領域61cにフロロラインではなく、PEラインを基準にした段階で張力情報が表示される。また、この巻き取り作業では張力情報が表示されるため、モータ12を使用可能である。上巻糸の巻き取りを完了すると、釣り人は、再度0セットスイッチSW3を操作する。これにより下巻学習が終了する。
【0096】
ここでは、下巻糸と上巻糸との張力を変更することにより、伸びやすいナイロンラインを用いた下巻糸を弱い張力で巻きととることができる。このため、PEラインと同じ張力で巻き取る場合に生じる不具合を生じにくくすることができる。すなわち、伸びやすい下巻糸を伸びにくいPEラインの上巻糸と同じ張力で巻き取ると、下巻糸の長さが予め決められている場合、下巻径が小さくなるという不具合が発生する。また、下巻径が予め設定されている場合、下巻糸の糸長が長くなるという不具合が発生する。さらに、下巻糸をPEラインの強い張力で巻き取ると、スプールが変形するおそれがある。
【0097】
図7のステップS7の各動作モード処理では、図11のステップS71でスプール10の回転方向が糸繰り出し方向か否かを判断する。この判断は、スプールセンサ63のいずれの磁石検出素子が先にパルスを発したか否かにより判断する。スプール10の回転方向が糸繰り出し方向と判断するとステップS71からステップS72に移行する。ステップS72では、スプール回転数Xが減少する毎にスプール回転数Xから記憶部67に記憶されたデータを読み出し水深LXを算出する。この水深LXがステップS2の表示処理で表示される。ステップS73では、得られた水深LXが底位置又は棚位置に一致したか、つまり、仕掛けけが底又は棚に到達したか否かを判断する。底位置又は棚位置は、仕掛けけが底又は棚に到達したときに0セットスイッチSWを長押しすることで記憶部67にセットされる。ステップS74では、他のモードか否かを判断する。他のモードではない場合には、各動作モード処理を終わりメインルーチンに戻る。
【0098】
水深が底位置に一致するとステップS103からステップS105に移行し、仕掛けが底又は棚に到達したことを報知するためにブザー65を鳴らす。他のモードの場合には、ステップS74からステップS76に移行し、指定された他のモードを実行する。
【0099】
スプール10の回転が糸巻き取り方向と判断するとステップS71からステップS777に移行する。ステップS77では、スプール回転数Xから記憶部67に記憶されたデータを読み出し水深LXを算出する。この水深LXがステップS2の表示処理で表示される。ステップS78では、水深が船縁停止位置に一致したか否かを判断する。船縁停止位置まで巻き取っていない場合にはメインルーチンに戻る。船縁停止位置に到達するとステップS78からステップS79に移行する。ステップS79では、仕掛けが船縁にあることを報知するためにブザー65を鳴らす。ステップS80では、モータ12をオフする。これにより魚が釣れたときに取り込みやすい位置に魚が配置される。この船縁停止位置は、例えば水深6m以内で所定時間以上スプール10が停止しているとセットされる。
【0100】
このような構成の本実施形態では、スプール回転数と糸長との関係が既知の参照釣り糸の関係を用いてスプール回転数Xに対応する糸巻径SDを算出し、トルクに対して糸巻径に応じて変化する張力を算出しそれを表示している。このため、糸長LNとスプール回転数Xとの関係を求めるときに張力を精度良く表示できるようになる。この表示を見て釣り人が一定の張力で釣り糸を巻き付ければ、糸長とスプール回転数との関係を精度良く得ることができる。
【0101】
<特徴>
上記実施形態は、下記のように表現可能である。
【0102】
(A)張力表示装置6は、両軸受リールのスプール10に巻き付けられる釣り糸に作用する張力を表示する装置である。張力表示装置6は、表示器61と、トルク検出手段としての電流検出部66aと、スプールセンサ63と、記憶部67と、張力表示部73と、を備えている。張力表示部73は、関係格納部74と、読み出し部75と、糸巻径算出部76と、張力算出部77と、有している。電流検出部66aは、スプール10に作用するトルクを検出する。スプールセンサ63は、スプール10の回転数を検出する。記憶部67は、参照釣り糸の参照糸長と回転数との関係が予め記憶されたものである。関係格納部74は、釣り糸の糸長LNと、回転数検出手段により検出されたスプール回転数Xとの関係を得て記憶部67に格納する。読み出し部75は、関係格納部74により関係を得るとき、スプールセンサ63で検出されたスプール回転数Xに応じた参照糸長を記憶部67から順次読み出す。糸巻径算出部76は、読み出し部75が読み出したときのスプール回転数X1及び参照糸長LN1と、以前に読み出したときのスプール回転数X2及び参照糸長LN2とから糸巻径SDを順次算出する。張力算出部77は、電流検出部66aで検出されたトルクと、算出された糸巻径SDとにより張力Tを算出する。張力表示装置6は、張力算出部77が算出した張力に応じた張力情報を表示器61に表示する。
【0103】
この張力表示装置6では、糸長LNとスプール回転数Xとの関係が未知の釣り糸をスプール10に巻き付けると、糸長LNとスプール回転数Xとの関係を関係格納部74により得ることができる。このとき、読み出し部75により、記憶部67に記憶された参照釣り糸の参照糸長が、検出されたスプール回転数に応じて読み出される。読み出したときのスプール回転数X1及び参照糸長LN1と、以前に読み出したときのスプール回転数X2及び参照糸長LN2から糸巻径算出部76が糸巻径SDを算出する。例えば、読み出したときと以前に読み出したときの参照糸長の差(LN1−LN2)をスプール回転数の差(X1−X2)で除算((LN1−LN2)/(X1−X2))することにより、スプール一回転当たりの糸長を算出できる。この一回転当たりの糸長を円周率で除算することにより、糸巻径SDを算出できる。そして、検出されたトルクを算出された糸巻径で除算することにより張力Tを算出できる。この算出された張力に応じた張力情報が表示手段により表示器に表示される。ここでは、スプール回転数と糸長との関係が既知の参照釣り糸の関係を用いてスプール回転数に対応する糸巻径を算出し、トルクに対して糸巻径に応じて変化する張力を算出しそれを表示している。このため、糸長とスプールの回転数との関係を求めるときに張力を精度良く表示できるようになる。この表示を見て釣り人が一定の張力で釣り糸をスプールに巻き付ければ、糸長とスプールの回転数との関係を精度良く得ることができる。
【0104】
(B)両軸受リールの張力表示装置6において、両軸受リールは、モータ12によりスプールを駆動可能な電動リールである。この場合には、電動リールにおいて、張力を精度良く表示できる。
【0105】
(C)張力表示装置6において、電流検出部66aは、モータ12に作用するトルクによりスプール10に作用するトルクを検出する。この場合には、スプール10と一体で回転するモータ12に作用するトルク検出することにより、スプール110に作用するトルクを検出しているので、例えばモータ12に流れる電流値やデューティ比等のデータにより、磁歪素子等の専用のトルク検出手段を設けることなく、スプールに作用するトルクを検出できる。
【0106】
(D)張力表示装置6において、電動リールは、スプールの前方にモータ12が装着される。この場合には、スプール内にモータが配置される電動リールに比べてスプール10を深溝にできる。このような深溝のスプール10であっても、糸巻径を順次算出するので、糸巻開始時から糸巻終了時に掛けて張力を精度良く表示できる。
【0107】
(E)張力表示装置6において、モータ12に流れる電流値によりトルクを検出する。モータ12に流れる電流の値はモータ12に作用する負荷に応じて変化するため、モータ12に作用するトルク、ひいてはスプール10に作用するトルクに応じて変化する。ここでは、トルクを検出する手段を別に設けることなくスプール10に作用するトルクを容易で検出できる。
【0108】
(F)張力表示装置6において、張力表示部73は、関係格納部74により関係を得るとき、関係の獲得開始から所定時間の間、張力算出部77で算出された張力を低く補正する補正部78をさらに備える。電動リールの場合、モータ12の回転を減速する遊星歯車機構等の減速機構が通常設けられる。この減速機構内には、グリース等の潤滑剤が充填されている。この潤滑剤が暖まるまでの間、潤滑剤の流動性が低く潤滑剤の抵抗が大きいため、回転開始から所定時間の間モータ12に流れる電流値が大きくなる。このため、電流値でトルクを検出する場合、張力を低く補正して潤滑剤による影響を排除することにより、張力をさらに精度良く表示できる。
【0109】
(G)張力表示装置6において、トルク検出手段は、スプールの回転軸に設けられる磁歪素子を有する。この場合には、スプールに作用するトルクをより精度良く検出できるため、張力をさらに精度良く表示できる。また、モータの有無に関わらずトルクを検出できるので、水深表示装置を有する手巻きの両軸受リール及び電動リールで手巻きでスプールの糸長と回転数との関係を得る場合であっても、張力を精度良く表示できる。
【0110】
(H)張力表示装置6において、釣り糸の種類を設定するための糸種設定部79と、張力情報変更部80と、をさらに備える。張力情報変更部80は、糸種設定部79で設定された釣り糸の種類に応じて張力算出部77が算出した張力と張力情報との関係を変更する。この場合には、例えばポリエチレン繊維を複数合わせて編みこんだPEライン等の複数線の釣り糸及びフロロカーボン製のフロロライン等の単線の釣り糸とで同じ張力情報で異なる張力を表示できる。PEラインの場合、複数の繊維を編み込んでいるため、単線の釣り糸よりきつく巻く、すなわち、大きな張力を与えて巻かなければ、所定太さ(号数)で所定長さの釣り糸をスプールに全量巻き付けできないおそれがある。このような場合でも、上記のように釣り糸の種類によって張力情報と張力との関係を変更することにより、釣り人は、釣り糸の種類に関わらず一つの張力情報を覚えるだけで良い。このため、表示された単一の張力情報に合わせるだけで、釣り人は、釣り糸を一定の張力でスプールに巻き付けることができる。
【0111】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0112】
(a)前記実施形態では、両軸受リールとして電動リールを例に本発明を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、モータを有さない手巻きの両軸受リールにも本発明を適用できる。この場合、モータに流れる電流値でトルクを検出できないため、専用のトルクセンサを設ける必要がある。トルクセンサとしては、スプール軸に取り付けられた磁歪素子と、磁歪素子の出力を読み取るコイルとを用いても良い。コイルは、例えばリール本体に取り付けられる。また、歪みゲージ等によりスプールに作用するトルクを検出しても良い。
【0113】
(b)前記実施形態では、スプール一回転当たりの糸長とスプール回転数との関係が一次関数出あることに着目して糸長とスプール回転数との関係を学習したが、釣り糸に接触する糸長検出器を装着したり、二次関数で糸長とスプール回転数との関係を求めたりしても良い。
【0114】
(c)前記実施形態では、張力情報「3」を普通学習時の張力の最適値としたが、本発明はこれに限定されない。
【0115】
(d)前記実施形態では、参照釣り糸として予め記憶部67に記憶された釣り糸を用いたが、本発明はこれに限定されない。例えば、先に普通学習で糸長とスプール回転数との関係が定められた釣り糸を参照釣り糸として用いても良い。
【0116】
(e)前記実施形態では、調整レバーにより速度又は張力の段数を設定しているが、操作スイッチにより速度又は張力の段数を設定しても良い。この場合、操作時間又は操作回数に応じて段数を増減するようにしても良い。
【0117】
(f)前記実施形態では、モータ12がスプール10の前方に配置される電動リールを例に本発明を説明したが、本発明はこれに限定されない。スプール内にモータが配置される電動リールやリール本体の外側にモータが配置される電動リールにも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0118】
6 張力表示装置
10 スプール
10a 糸巻胴部
60 リール制御部
61 表示器
63 スプールセンサ
66a 電流検出部
67 記憶部
67b 学習データ記憶エリア
67c 所定糸データ記憶エリア
67f 張力情報記憶エリア
73 張力表示部
74 関係格納部
75 読み出し部
76 糸巻径算出部
77 張力算出部
78 補正部
79 糸種設定部
80 張力情報変更部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両軸受リールのスプールに巻き付けられる釣り糸に作用する張力を表示する両軸受リールの張力表示装置であって、
表示器と、
前記スプールに作用するトルクを検出するトルク検出手段と、
前記スプールの回転数を検出する回転数検出手段と、
参照釣り糸の参照糸長と前記回転数との関係が予め記憶された記憶手段と、
前記釣り糸の糸長と、前記回転数検出手段により検出された前記スプールの回転数との関係を得て前記記憶手段に格納する関係格納手段と、
前記関係格納手段により前記関係を得るとき、前記回転数検出手段で検出された回転数に応じた前記参照糸長を前記記憶手段から順次読み出す読み出し手段と、
前記読み出し手段が読み出したときの前記回転数及び前記参照糸長と、以前に読み出したときの前記回転数及び前記参照糸長とから糸巻径を順次算出する糸巻径算出手段と、
前記トルク検出手段で検出されたトルクと、算出された前記糸巻径とにより前記張力を算出する張力算出手段と、を備え、
前記張力算出手段が算出した張力に応じた張力情報を前記表示器に表示する両軸受リールの張力表示装置。
【請求項2】
前記両軸受リールは、モータによりスプールを駆動可能な電動リールである、請求項1に記載の両軸受リールの張力表示装置。
【請求項3】
前記トルク検出手段は、モータに作用するトルクにより前記スプールに作用する前記トルクを検出する、請求項2に記載の両軸受リールの張力表示装置。
【請求項4】
前記電動リールは、前記スプールの前記釣り糸繰り出し側に前記モータが装着される、請求項2又は3に記載の両軸受リールの張力表示装置。
【請求項5】
前記トルク検出手段は、前記モータに流れる電流値により前記トルクを検出する、請求項3又は4に記載の両軸受リールの張力表示装置。
【請求項6】
前記関係格納手段により前記関係を得るとき、獲得開始から所定時間の間、前記張力算出手段で算出された張力を低く補正する補正手段をさらに備える、請求項5に記載の両軸受リールの張力表示装置。
【請求項7】
前記トルク検出手段は、前記スプールの回転軸に設けられる磁歪素子を有する、請求項1又は2に記載の両軸受リールの張力表示装置。
【請求項8】
前記釣り糸の種類を設定するための糸種設定手段と、
前記糸種設定手段で設定された前記釣り糸の種類に応じて前記張力算出手段が算出した張力と前記張力情報との関係を変更する張力情報変更手段と、をさらに備える、請求項1から7のいずれか1項に記載の両軸受リールの張力表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2013−48594(P2013−48594A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189064(P2011−189064)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】